二次創作小説(紙ほか)
- Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.120 )
- 日時: 2018/03/08 22:42
- 名前: テール (ID: LAu9zylb)
キャラクターエピソード 「アルト、ラーマ、エルドゥの出会い」
「ニナ、気になるのです!」
突然ニナが叫んだ。
騎士団は朝食を食べるために、各々集まって共に食事を楽しんでいた。
「騎士団はいかなる時も食事の場合は皆で集まること」
それが初代騎士団長が定めた決まりであり、
仲間と唯一コミュニケーションが取れる場でもある。
「な、なんだよいきなり!?」
ラーマが食べていた野菜をこぼしかけるが、辛うじて口の中に放り込んだ。
アルトもエルドゥもなんだなんだとニナに顔を近づける。
「アルトとエルドゥ、ラーマはなんでそんなになかよしさんなんです?」
「えっ!?・・・・うーん・・・・」
ニナの質問に頭を抱えるエルドゥ。
「いやあ、僕らだって3年くらいしか付き合いないですよ」
アルトはパンを頬張りながら答える。
「きっかけってなんだったんです?」
「きっかけかぁ・・・思えば僕ら、出会い始めは仲悪かったんですよ。」
アルトは遠い目をしながら、語り始める。
エルドゥも目の前の目玉焼きとソーセージをガツガツ食べながら
アルトの話を聞く姿勢になっていた。
大陸歴979年4月18日
この日は、レヴィア王国の新入騎士が国王と謁見し、自分のこれからの目標、
そして騎士になってのこれからの意思を伝える儀式のようなものがあった。
アルト、ラーマ、エルドゥももちろん新入騎士の中に混じっており、
自分の順番が来るのを待っていた。
「アルト・フェーム・・・先代フェーム軍師の跡継ぎですか」
謁見の間に入ったアルトは跪き、国王セリカリーズの御前にいた。
「はっ!まだ幼く、未熟と自覚しておりますが、
先代と同じくして、皆を導き、陛下のお役に立てればと思います!
騎士として、軍師として・・・王国の民を守りたいと存じます!」
まだ11歳のアルトだが、声をはっきり出し、大人びた顔つきでセリカを見る。
「フェーム軍師には大変お世話になりました。
あなたも先代・・・いえ、先代以上の働きを期待しております。」
「はっ、ありがたきお言葉・・・・確かに頂戴いたしました!」
アルトは深く頭を下げて、「失礼しました!」と一声、謁見の間を出た。
アルトが少し顔を緩ませていると、青い髪のがっちりした身体の騎士とぶつかった。
「ああ、すみません。」
アルトは謝るが、騎士はアルトを見るや、舌打ちをする。
「・・・・ガキか」
「・・・・は?」
アルトは顔に血管を浮かべて騎士を怒りの眼差しで見る。
騎士は続ける。
「ガキが来る場所じゃねえんだよ、戦場ってのはな。
さっさと帰るんだな」
騎士は謁見の間へと吸い込まれていった。
「・・・・・。」
アルトは騎士の顔を思い出しながら、はーっと大きなため息をつく。
昼食時・・・
王城の食堂にて、騎士達が集まっていた。
皆鎧を脱いで、ひと時の食事を楽しんでいる。
仲間たちとの会話を楽しみながら食事をするもの、
一人で黙々と食べるもの、食事の絵を描いて満足しているもの、
様々だが、皆時間がある限り自分の時間を過ごしていた。
「あ、ガキんちょ。」
「今朝の騎士様・・・」
青髪の騎士とアルトはばったり出会ってしまった。
騎士団の食事は基本ビュッフェ形式であり、
自分たちの好きなものをとって、会計するのであった。
そこに、二人は隣同士で並んでしまったものだから、
隣り合わせの二人は険悪な雰囲気を醸し出し、他の騎士たちは困惑しながら二人を見る。
「今朝は忠告頂き、感謝しますよ騎士様。」
「は?なにがだ」
アルトの発言に騎士はイライラしながら尋ねる。
「「ガキが来る場所じゃねえんだよ」でしたっけ?
子供だからって気遣ってくれたんですよね、ありがとうございます。」
「どーいたしまして。
なんだ、ちゃんとお礼が言えるじゃねえかガキが」
「ただ初対面に対してその態度はないんじゃないですか?
「ガキ」に対する教養がなってませんよ、騎士様」
「そりゃすまんな、俺はてめえみてえに何の苦労もせず
騎士団入りしてる奴を見るとすっげぇ腹が立ってな。」
「・・・・!
何も知らないくせに知ったかぶりで話さないでくださいよ」
険悪な二人に後ろにいる騎士が恐る恐る声をかける。
「あ、あのさ・・・早く前に・・・」
二人は気付いて、そそくさと前に進む。
二人は、残り一本のソーセージにトングを伸ばす。
しかし、二人のトングがぶつかり合って音を立てた。
「邪魔すんじゃねえよ!」
「あなたもですよ、僕がとろうとしてたんですよ!?」
ギャアギャアと言い争っていると、やはり後ろの騎士が恐る恐る声をかけてくる。
「早く行ってほしいんだけど・・・」
二人は騎士に一礼してそそくさと前を歩いた。
「なんでここにいるんですか」
「そりゃこっちの台詞なんだが」
二人は偶然にも互いに顔が見えるように同じテーブルの向かい合わせで座っていた。
アルトも騎士も非常にイライラした顔つきで互いの顔を見合わせる。
「というか、声がでかいだけで役に立たねえオンバーンが騎士とか、
笑わせてくれるんじゃねえの」
「・・・・はぁ、挑発のつもりですかそれ?
同じく空を飛ぶしか能のないボーマンダがなぜここにいるのか聞きたいですね」
「てめえには関係ねえだろ、つーか、空を飛ぶだけしか能がないって・・・
ブーメラン刺さってるぞてめえ」
「いえいえ、どうせどこかの田舎から出てきたんですよねあなたも。
田舎では礼儀もわきまえなかったんですか?」
騎士はその言葉を聞いて、怒りを爆発させて立ち上がった。
「てめえに何がわかるんだよ!!」
アルトも対抗して大声をあげて立ち上がる。
「それはこっちの台詞ですよ!さっきから言いたい放題いって・・・!
ムカつくんですよ!!」
周りの騎士たちは静寂し、二人が言い争っているのを見る。
すると、一人の女騎士が立ち上がった。
女騎士はかなり身長が高く、すたすたと二人の横までくる。
「どぅらああああああぁぁぁぁーっ!!」
「うわぁぁーっ!?」
「きゃあぁぁーっ!?」
女騎士は二人の首根っこを掴み、両手を高く上げて二人を宙づりにする。
二人はまるで首根っこを掴まれてぶらんと下がる猫のように縮こまった。
「ケンカするな!食事中よ!!」
女騎士はそういうと、二人を睨んだ。
二人は女騎士を見て、怯えた表情でうんと静かに頷いた。
「そんな感じが俺たちの出会いだなぁ」
ラーマはスープを飲みながら言った。
「いやあ、第一印象最悪でしたよね。
でも、ある事件が起きて、僕らは常に3人一緒にいられる関係になったんです。」
アルトはグラスの茶を飲みながら続けた。
「で、初任務になぜあなたがいるんですか?」
「そりゃこっちの台詞だっつの」
アルトと青髪の騎士・・・・ラーマは互いを睨みあいながら進軍していた。
騎士としての初任務は、密猟する盗賊団の制圧。
ベテランの騎士であれば簡単な仕事だが、新入騎士ばかりの構成であると、
かなり骨の折れる任務である。
「おいそこ!うるさいぞ!!」
上司らしき竜騎士がアルトとラーマを一喝する。
二人はしゅんっと肩を落とす。
「いいかお前たち!今回の任務は盗賊団の制圧。
決して楽な仕事ではないからな・・・
軽率な行動は控えるように、命を大切にしろ。」
先ほどの竜騎士が全軍に伝える。
盗賊団のアジトらしき場所にたどり着くと、周囲はすでに暗くなっていた。
明かりと言えば、アジトから漏れる光くらいである。
「・・・・盗賊の皆さんはまだこちらには気づいていないようですね。」
「そうだな」
アルトとラーマは真っ暗なので互いに気づいていなかったが、
声を聴いた瞬間、見合わせる。
「なんでここにいるんですか」
「そりゃこっちの台詞だっつの」
昼間の食事時と同じ台詞を再び互いに掛け合う。
「というか騎士様、飛竜にのってあいつらを何とかできませんか」
「できるわけねーだろ、アホか。
弓持ってる奴がちらほらいるだろ。」
ラーマの言う通り、弓を持っているならず者が複数いた。
あれでは飛竜でおそかかった瞬間、飛竜が落とされてしまうだろう。
「じゃあ、誰かが囮になって後ろから攻め込むってのはどうかな」
「そうですねぇ・・・だれかが・・・えっ!?」
アルトが後ろを振り向くと、お昼にアルトとラーマを持ち上げた女騎士・・・・
エルドゥがいた。
「問題は囮はだれがやるかって話だけどさ。」
「急に出てきて馴染んでやがんなお前」
ラーマは呆れながらエルドゥを見る。
アルトは考える。
山に囲まれた場所、こちらの姿は見えていない・・・
絶好のチャンスであるが、あちらの人数が多すぎる。
「父上だったらこの状況・・・どう打開するか・・・・」
アルトは地面に絵を描き始める。
オンバーン族は基本夜行性のため、暗闇でも物が見えるのである。
突然、盗賊団の一人が大声を上げた。
「おい、誰かいるぞ!」
アルトは驚いて盗賊団を見る。
しかし、アルトたちを見つけたのではなく、同じく新入騎士であった。
気弱そうなジヘッドの少女が盗賊に連れられていた。
「た、助けなきゃ!」
「待てお前・・・今でたってあの子を助けられない!」
「・・・・でも目の前の仲間が・・・・!!」
「・・・・・。」
ラーマも歯を食いしばってそれを見る。
「こいつ、なかなかいいカラダしてんじゃねえか?」
「や、やあ!やめてください!!」
盗賊の一人が少女の鎧を脱がし始める。
「・・・っ!!あんにゃろう!!」
「ちょっと!?」
ラーマは頭に血が上って盗賊団に割って入り、攻撃を仕掛けた。
盗賊の一人が胸を槍に貫かれ、血を流し倒れる。
「な、なんだてめえ!?」
「こいつの仲間か!?」
「だったらなんだよ、てめえら・・・・全員ぶっ殺してやらあ!!」
ラーマは叫んで盗賊たちをなぎ倒していく。
「ああ、もう!なんなんですか!!」
アルトもラーマを助けるべく、飛び出す。
エルドゥも大きな斧を持ってアルトに続いた。
「フレイムバースト!」
アルトは赤い魔導書を開いて炎を放った。
炎は盗賊団に命中した後、爆発して3人ほど巻き込む。
「でやぁぁぁーっ!!」
エルドゥも負けじと斧を振り回した。
斧は盗賊団を何人もなぎ倒していく。
「お、おかしら!あいつら・・・王国の騎士ですぜ!」
「やむをえん!バリスタで奴らを殺せ!!」
ボスらしき人物が現れ、部下に命じる。
すると、大きな石弓が、ゴロゴロと音を立て、姿を現す。
それの先端をラーマに向けて、狙いを定めた石弓は、矢を放った。
「・・・・!?」
「危ないっ!!」
咄嗟の判断で、アルトはラーマをどんっと強く押した。
アルトが石弓の方を見た時には、
矢がアルトの胸に命中し、アルトはその場で倒れた。
「・・・・・お、おい!」
ラーマは声を上げる。
アルトは、目を見開いたまま倒れて返事をしない。
そこへ、新入騎士と隊長が現れて、盗賊団に攻撃を仕掛けた。
3人がある程度盗賊団の人数を減らしていたので、
制圧はスムーズに進んだ。
アルトが目を覚ますと、そこは医務室の中であった。
「お、目が覚めたか」
ラーマがアルトに声をかけた。
隣にはエルドゥも笑顔でアルトの顔を見る。
「ぼ、僕・・・・死んだはずじゃ・・・・」
「ばーか、俺が応急処置してここまで運んだんだっつの。」
ラーマは笑いながらアルトの背中をたたく。
「あいたたた!」
するとラーマはついでとばかりにアルトに声をかける。
「つーかお前、応急処置んときに気づいたけど
女だったんだな」
「うん、中性的な顔立ちだったから気付かなかったわ」
アルトはぽかんと二人を見ていた。
そして、顔がだんだん真っ赤に染まり・・・
「あっ・・・・あああああああああっ!!
見たの!?見たんですねッ!!?僕の、僕の・・・・
アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
大声をあげて発狂した。
「う、うるせえな、大丈夫かよ」
「大丈夫じゃないですよ!んもう、何でこんな形で・・・・ッ!!」
アルトは頭を抱えてベッドのシーツに顔を埋める。
「なんで男の子だって偽ってるの?」
エルドゥはなんとなく聞いてみた。
アルトは顔をあげて訳を話す。
「先代軍師である、テノール・フェーム軍師は名軍師でした。
父上である彼の功績は陛下も評価していて、
僕は先代の活躍に負けないようにと思って・・・・
それで男として生きていこうと思ったんです。」
アルトは顔を真っ赤にして再びシーツに顔を埋める。
「僕がここまでこれたのは、もちろん誰かの助けを借りたわけでも
親の七光りでもなく、自分の力だと思ってます。」
ラーマは、昨日の昼に軽率な事をアルトにぶつけたことを詫びた。
「すまん、昨日は・・・」
「いえ、僕もあなたにひどいことを言ってしまいました。」
「そうだな、あんた、あん時は止めてくれてありがとな。」
ラーマはエルドゥに頭を下げた。
エルドゥはにっこり笑って二人の背中をたたく。
「気にしないでよ!えーっと・・・」
「あ、僕はアルト・フェームです。これでもソーサラーです。」
「俺はラーマ・ラインバルディ。竜騎士だ。」
「私はエルドゥ・ノーラ!斧騎士やってるわ!」
アルトは話を終えると、ニナは目を輝かせる。
「じゃあ3人はすっごいなかよしさんです!」
「アハハ、あんな事件が起きなきゃ今も険悪なムードだったな。」
ラーマは笑いながら皿のパンを腹に入れる。
エルドゥもため息交じりで笑う。
「まあ、でもホント、アルトがラーマを庇ったときはびっくりしたわね。」
「だな、バリスタの矢がアルトの急所を外したから助かったものの、
ホントおまえは危なっかしいぞ」
「む・・・そこは反省してます・・・・」
ラーマの注意にアルトはがっくりとうなだれて、
周りは再び笑った。
そして、アルトはラーマとエルドゥにひそひそと声をかける。
「あ、あえて僕が女だってことはニナには伏せましたけど、
僕の性別は口外禁止ですよおふたり!したらひどいですよ!!」
「わ、わかってるって」
「もちろんよ・・・」