二次創作小説(紙ほか)

Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.121 )
日時: 2018/03/09 20:11
名前: テール (ID: LAu9zylb)

第七章 雪を纏う椿



大陸歴983年2月16日

アルトは、軍を二分割し後にルフト・ド・ドレール連合王国側のふもとで落ち合うことを提案した。

確かにいきなり千名の軍隊が雪里に押し掛けては、雪里の人々も驚くであろう・・・
そう考えたテオドールは、軍を分けることにした。

最初の隊が出て、2日後に次の隊が出発するということで話が決まり、
先行するのは、
テオドール、ルーネ、エルドゥ、ディーノ、クラル、リース、シーナ、アクライの部隊。
そしてテオドールの部隊は山脈を歩み出した。



辺り一面が銀世界であり、
木々も地面も雪で埋め尽くされたこの山は、氷族が暮らすのに最適であった。
道も雪で埋もれているため、通行は困難を極めたが、
なんとか前へ、前へと進んでいった。


「みんな、防寒はしっかりできているか?」

テオドールは皆に声をかける。


竜族と草族は基本寒さに弱い。
ルーネは平気そうな顔であったが、他は寒そうに防寒着をぎゅっと握りしめている。

そもそもポケタリア大陸自体、全域の気温が高めである。
なので、いきなり雪山に放り込まれてすぐに慣れるものでもない。
さらに、道を進むたびに風も強くなっていく。
風と雪が騎士団を襲い、歩幅も少しずつ狭くなってきている。


ふと、テオドールが前を見ると、
アイスブルーの髪の少女が現れ、目が合った。

少女は白を基調とした見慣れない服で、白いマフラーが風になびいていた。
前髪はきっちりとそろえて切ってあり、耳の上には、溶けない氷のアクセサリーがついている。

第一印象は「雪女」だと思ったテオドールは、少女を見て固まった。
一方、少女の方は、テオドールたちを見て、顔をぱぁっと明るくさせた。

「あ、もしかして・・・お客様ですか?」

少女はテオドールに尋ねる。

「お、お客様?」
「はい、「雪里ツワブキ」を経由して連合王国側に行く方々ですよね?
 案内しますよ!」

少女は手に持っている薪をぎゅっと握りしめながら、テオドールたちに
「こっちです」と声をかけながら道案内する。





「わぁ!すごいです!」

ルーネは驚嘆の声を上げる。
案内された場所は、見たことのない建物ばかりの、集落であった。
かなり規模は小さく、人口は450名くらいかと推測できる。

「建築物の屋根がすごく急なものになっているね。」
「はい、あれは雪を落とすために急な角度にしているんですよ。」

リースが感心しながらつぶやくと、少女がすかさず答える。

「あの、代表者の方は・・・」
「私ですが。」
「あ、じゃあ、村長にご挨拶ください!ここに来た時のしきたりなんです。」

少女がそういうとテオドールの手を引いて村の中へと消えていった。

「王子様行っちゃったね。」
「仕方ない、ここで待ってようよ。」

クラルのつぶやきに、アクライがそう提案する。














「よくぞおいでなさいました、テオドール殿。」

蒼銀の髪の男が、テオドールが入るなり、名指しで歓迎する。

男は髪が長く、頭の上から狐の耳が生えていて、
服装は隣にいる少女と同じく見たことのない形と素材。
九本の巨大な尻尾が見えていることから、伝承にあるキュウコン族だということがわかる。

テオドールは彼の青い瞳を見て驚く。

「なぜ私の名を!?」
「僕はこれでも陰陽師をやっててね、ある程度の事は占ったり
 祈祷することでよくわかるのさ。」

男は笑いながら答える。

「ああ、申し遅れた。僕は「カグラ・シラヌイ」。
 この里の責任者であり、創始者だよ。あと、五人の英雄たちの友でもある。」

カグラはにっと笑いながらテオドールを見た。
テオドールはカグラのさらっと口にした発言に再び驚く。

「五人の英雄の友ですか!?」
「はははっ、やっぱりそういう反応するよね!
 そりゃそうだ、僕は千年以上生きているんだ。
 彼らが邪竜ヒュドラを封印するところだって見たし、
 今でも彼らとの旅路が昨日のことのように思い出せるよ。」

カグラは金色のキセルを口にしながらテオドールに説明する。
ふと、カグラは目線を外にやる。

「マトイ、テオドール殿の付き人達は?」

マトイと呼ばれた少女は、はっと気づく。

「あ、外でお待たせしてるんでした!!」
「凍死する前に村に案内して温めておやり」
「は、はいぃ!!」

マトイは慌てた様子で外に飛び出していった。


「ま、今日はゆっくりしていくといいさ。
 明日には後続もくるんだよね?」
「え、なぜそれを・・・!?」

テオドールはカグラに驚きっぱなしである。
それがおかしいのか、カグラも笑う。

「僕らキュウコン族は「神通力」が使えるんだよ。
 神の化身とかなんとか言われてるけど、僕自身もよくわからん。
 でも、持ってても困らないし、気にしていないんだけどね。」


カグラの話によると、
「神通力」とは、雪里ツワブキの守り神であるウカノミタマがキュウコン族に与えた、何事も自由自在になしうる力である。
しかし、キュウコン族はすでに数が激減しており、大陸でももう数名しか存在しない種族となっている。
キュウコン族は寿命が半永久であるが、不死身ではない。
カグラ以外のキュウコン族は、皆邪竜によって殺されたという。

途方もない話で、にわかに信じがたいが、
それを証明する人物が目の前にいる以上、それを信じるしかなかった。


「ま、僕の前で嘘は付けないってことさ。
 それよりもテオドール殿、君の話も聞かせてほしいな。」

カグラは笑顔でテオドールを見る。
テオドールは照れながらもカグラに今迄の経緯を話し始めた。