二次創作小説(紙ほか)

Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.129 )
日時: 2018/03/11 06:44
名前: テール (ID: QxkFlg5H)

「ツバキ!突然どうしたの?」

マトイが少年・・・ツバキに声をかける。

髪と目の色はマトイと同じだが、体つきは少し華奢だが男らしくがっちりしている。

そんなツバキは、ルーネを睨みつけて叫ぶ。

「おい、姉さんを誑かそうたってそうはいかないぞ!
 お前らよそ者はとっとと里から出ていけ!」
「ツバキ!やめなさい、お客様の前よ!」

マトイはむっとした表情でツバキに対し、言葉を強める。
ツバキはマトイに向かって続ける。

「姉さん忘れたのか!?よそ者が3年前何をしたのか・・・!!」
「忘れるわけないわ・・・だけどあの人達とこの方たちは違う!」
「何が違うんだ、同じよそ者だろ!?」

マトイとツバキが言い争っていると、
カグラとテオドールが騒ぎを聞きつけて歩み寄ってくる。

「どうしたんだツバキ、マトイ。」
「村長!なぜいまだによそ者を招き入れるんだ!?」

ツバキはカグラに対し怒鳴りつける。
カグラは鋭い目線でツバキを見た。

「この場所は我らだけのものではない。
 共和国から連合王国へ、はたまた逆からくる人々が安心して一晩休憩できる場所だ。
 僕はそう言い聞かせてきたはずだぞツバキ。」

ぐっと言葉を詰まらせるツバキ。

「君たちの母君の事は、本当に申し訳ないと思っている。
 だが、この方々は関係ない。」
「でも・・・・!」

ツバキは反論しようと口を開こうとするが、これ以上は無駄だと判断し、
その場を立ち去った。
カグラは表情を元の優しいものに変えてテオドールたちに頭を下げる。

「すまない・・・・」
「いえ・・・それより、何かあったのですか?」

テオドールは尋ねる。
カグラは周りを見て自分の屋敷を指さす。

「ここではなんだ、我が家で温まりながら話をしよう。
 ぜひ、星の神子様も。」
「は、はいっ!」
























カグラは温かいお茶と茶菓子を用意して、
マトイとツバキの身の上話を始めた。

マトイは暗い表情でうつむいている。



カグラの話によると、
3年前のある日の正午、いつものように旅人がツワブキへと足を運んできた。
里の住人もカグラも、もちろんマトイとツバキ、そして二人の母は歓迎した。

しかし、その旅人は最初からツワブキの民家を狙う盗賊であり、
留守の民家に空き巣に入った。

それを目撃したマトイとツバキの母は、
盗賊を捕らえようとしたが、逆に盗賊の仲間に捕らえられた。

ツバキは母の悲鳴を聞きつけて、幼いながら槍を持って盗賊に切り込んだ。
だが、力量の差ははっきりしている。
ツバキは捕まってしまい、抵抗もむなしく武器を取り上げられてしまう。

そこへツバキの母は、ツバキを解放するべく激しく抵抗、
だがそれがいけなかった。

突然取り乱した母をおとなしくさせるために盗賊はツバキの槍を母に突き刺したのだ。

その後、カグラとマトイが駆けつけ、盗賊たちを捕らえ、
母の治療を行ったが、手遅れであった。

間近で見ていたツバキは酷くショックを受け、だんだん調子を戻していくと同時に、よそ者への警戒心と憎悪でいっぱいになる。
ツバキはそれから、よそ者を追い出そうとし始めた。



それを聞いたテオドールとルーネは、何とも言えない表情で二人を見る。

「そんなことが・・・・。」
「ひどい・・・・。」

カグラはキセルを口にして、ふうっと息を空中に吐く。

「ま、だれかれ構わず旅人を泊めている僕の責任だと思うが・・・
 だがこの村は氷族にとっては唯一の住処なんだよ。
 ここを失えば氷族は居場所を失う。
 それに、共和国と連合王国を渡るには、ここを経由しなければいけない。
 だから僕個人の身勝手でここを閉鎖する訳にはいかないんだ。」
「ええ、私もそう思ってます。荒野の多いこの大陸では、
 氷族が唯一住める場所はここだけですし。」

マトイもカグラに同調する。
カグラは湯呑に入っている茶を一気飲みする。
カグラは「あづっ」と顔をしかめた。

すると、屋敷の玄関の扉が急に開いた。

「村長!大変です!!」
「・・・!!」

カグラはすくっと立ち上がって、無言で外に出た。