二次創作小説(紙ほか)
- Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.134 )
- 日時: 2018/03/11 20:49
- 名前: テール (ID: LAu9zylb)
テオドールたちが外に出ると、そこには村の空を覆うくらいの巨大なドラゴンが出現していた。
「あれ、アイスワイバーン!?」
「そのようだね・・・・しかしあのような巨大なものは見たことがない。」
驚くルーネを横目に冷静に分析するカグラ。
テオドールは剣を抜いた。
「・・・・このワイバーン、野生のものではなさそうです。
多分「ドラゴンテイマー」が遠くから操っているものと。」
「ドラゴンテイマー」
ドラゴンを操る魔道士の事である。
生き物を操る術というのは、高位魔術であり、
かなりの手練れでなければすぐに操っている生き物が暴走してしまうリスクがある。
そして、術者は操っている間、無防備となる。
そのため、身を隠すかしなければすぐに見つかり、攻撃されてしまうのである。
だが肝心の術者が見つからない、
建物や木々に紛れて隠れているのであろう。
そう考えたカグラは、紫色の双角錐の形をした宝石を取り出して、
テオドール、ルーネ、マトイに向かって叫ぶ。
「3人とも、僕がワイバーンを食い止める!
その間に術者を叩くんだ!」
カグラは石を額に当てる。
すると、青白い炎がカグラの全身を覆い、その炎はやがてカグラの屋敷よりも巨大なものになっていく。
炎が消え、蒼銀の毛並みを持つ九尾の狐が現れ、ワイバーンに向かって咆哮した。
「あれが、伝承にある九尾の狐か・・・!」
「テオドール様、早く術者を探しましょう!」
「ええ!」
「あれは、伝承にある九尾の狐だね。生で見たのは初めてだよ!」
アクライが呑気な事を言いながらカグラとアイスワイバーンの戦闘を眺めている。
「そ、そんなに落ち着いてる場合じゃないですよ!」
「あ、ごめん。」
シーナのツッコミに思わず謝るアクライ。
「あんなに巨大だと、俺の矢は通用しない。」
「なんとか援護できないかなぁ」
ディーノとクラルはため息交じりにそういった。
そこでリースが提案する。
「あのワイバーンは誰かが操ってるみたいだ。
その誰かを叩けばおとなしくなると思うよ」
「じゃあ、手分けして探しましょ!」
エルドゥの提案に皆は頷く。
マトイは気づいた。
「そうだ、私、村の屋根を飛び回って探してみます!」
「え、ちょっとマトイ!?」
マトイは助走もなく、ぴょんとその場を蹴って高く飛び上がった。
そして、屋根を蹴って飛び上がってそのまま見えなくなってしまった。
「・・・わ、私たちも探しましょ、テオ。」
「あ、うん。そうだね。」
テオドールとルーネも地上から術者を探すことにした。
マトイは怪しい人物がいないか必死に見回す。
・・・・ふと、黒いローブを羽織った人物がいることに気づいた。
「発見!」
マトイは黒いローブの人物を追うことにした。
屋根をつたって走る。
ふと、ローブの人物もこちらに気づいたようで、
手に持つ開いたままの魔導書を持ってその場から走り出した。
「待って!!」
マトイは負けじと走る。
そしてローブの人物を四隅が民家に囲まれた場所へと追い詰めた。
「もう逃がさないわ、覚悟して!」
マトイは手に持っている短剣をローブの人物に向ける。
その短剣は、刀身から絵まで純白に染まる、美しい短剣であった。
「馬鹿な・・・周りを見ろ。」
ローブの人物はマトイの後ろを指さす。
マトイは気づいて周囲を見渡すと、黒い鎧を着た騎士が囲んでいた。
「なっ・・・!?まさか最初からこれが狙いで!?」
「「マトイ・サザンカ」・・・
我が主が貴様の魔力片を欲しがっている、共に来てもらおうか」
「魔力片・・・あなた、それがどういうものかわかっていっているの!?」
「当然だ。」
男は感情のない声で淡々と口にする。
マトイは、さっさと男の持つ魔導書を斬ってしまおうと構える。
「うおぉぉぉ!」
しかし、騎士の一人がマトイに向かって槍を突きつける。
マトイはそれをしなやかに仰け反って避け、騎士の顎を蹴る。
それが合図かのように、騎士たちが一斉にマトイに飛びかかるが、
マトイはその場から高く飛んで、クナイを懐から取り出し、騎士の首元に向かって投げた。
「うぎゃあっ!」「ぐっ!!」
首元に命中し、血液が飛び散る。
騎士たちはその場に倒れ、残るはローブの男のみであった。
「さあ、残るはあなただけよ!」
マトイはローブの男に向かって叫ぶ。
「なかなかやるな。だが貴様、後ろを取られているぞ?」
「えっ———」
マトイが振り向いた瞬間、腹に衝撃が走り、マトイはぷつんと意識が途切れた。
- Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.135 )
- 日時: 2018/03/12 12:22
- 名前: テール (ID: LAu9zylb)
「ッッ!姉さんッ!!」
その直後、槍を持って走ってきたツバキは、
気絶したマトイを抱える騎士と、魔道士を発見した。
「お前ら・・・・!!」
ツバキは槍を魔道士と騎士に向けて吠える。
「姉さんを放しやがれッ!!」
「弟がいたのか・・・やれ。」
感情のない声で魔道士は騎士に指示する。
騎士はこっくりと頷いて剣を構えた。
その腕にはマトイを抱えたままである。
おそらく盾に使うつもりなのだろうとツバキは察した。
「お前・・・きたねえぞ!!」
「使える駒は有効利用せねばいかんのでな」
騎士は答え、ツバキに剣で斬りかかる。
ツバキはそれを避け、騎士に向かって槍で刺突したが
マトイを盾にされ、動きが止まる。
「・・・・ッ!!」
「隙ありだ!」
騎士はツバキを剣で斬る。
しかしツバキは手に持っている槍でそれを防いだ。
あまりに重い一撃に、ツバキは苦悶の表情を浮かべる。
「きたねえ真似しやがって・・・!」
ツバキは騎士の足に向かって蹴りを入れる。
しかし、騎士はそれを見計らってツバキの足を踏みつけた
「なっ・・・!?」
「死ね!」
騎士は足元にいるツバキに剣を振り下ろした。
武器と武器がぶつかり合う音が響く。
「まだ・・・だッ!!」
ツバキは足を踏まれながらも剣を槍で受け止めて持ちこたえる。
騎士の重い一撃は、長時間耐えられるものではない。
「足をどかせッ!!」
騎士に踏みつけられてる足を槍で思いっきり蹴る。
しかし、槍で剣を受け止めている状態では力が入らない。
そして、剣が槍を滑ってツバキの頭のすぐ横に刺さる。
ツバキは汗を流してその剣を見る。
「次は外さん。」
騎士は剣を振り上げた。
「絶氷アブソリュート!」
突然、騎士は凍り始める。
物凄い冷気によって、周りがピキピキと音を立てて、氷が広がっていく。
「なにっ!?」
魔道士は驚いて声を上げる。
「大丈夫?ユキワラシの人!」
「えっ、ああ・・・」
突然クラルが走ってきて、ツバキの手を引いて離れる。
そして氷はバリンという音を立てて崩れ去り、その中から騎士が姿を現す。
とくにダメージはなさそうであった。
「この程度で俺が倒せるとでも?」
「そんなの思ってないよ、威嚇用に調整したんだ。」
手に持っている真っ青な魔導書が、氷と共に砕け散り、その手を握りしめるクラル。
「お、おい、大丈夫なのかよお前?」
「大丈夫、ボク強いもん!」
クラルはツバキに向かってにっと笑う。
「早く始末しろエイト!」
魔道士はクラルとツバキに向かって指をさし、
エイトと呼ばれた騎士は剣を構える。
「クラルッ!!」
突然蔦が地面から伸び、エイトと魔道士を締め上げた
「な・・・にっ・・・!?」
エイトは思わずマトイを腕から落としてしまう。
ツバキはすかさずマトイを抱き寄せた。
「無事っぽいね、よかった!」
突然背後から深緑の鱗を持つ竜が姿を現せた。
「アクライ!他の皆は?」
「多分こっちに来てると思うよ」
アクライの言葉通り、後ろから皆走ってくる。
「チェックメイトだよ、魔道士さんと騎士さん!」
クラルは蔦によって締め上げられる二人に指をさした。
ツバキは、魔道士が手に持っている魔導書を取り上げて、
ビリッという音を立てながら破り捨てた。
「・・・・ワイバーンが・・・」
カグラと交戦中であったアイスワイバーンは、
急に周囲を見回し、氷結の谷の方向へと飛び去ってしまった。
「皆・・・なんとか助かったぞ!」
カグラは狐の姿で、里の人々に高らかに宣言した。
里の人々は歓声を上げて喜んだ。
陽はまだ高く、里の皆を照らしていた。