二次創作小説(紙ほか)

Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.139 )
日時: 2018/03/15 07:38
名前: テール (ID: Uj9lR0Ik)

第八章 光を照らす者


「おう、来たか!待っておったぞ。」

大きな紫色の帽子を被った少女が、腕の倍ある服の袖を振って、
入ってきた少年を招き入れた。

「この空間は「ゼロ時空」。わしらしかおらぬ故、自由にくつろぐがよいぞ。」

少女は、やる気のない半目で少年を見る。
少女の言う通り、床から天井まで、星々が輝く、長時間いると平衡感覚が狂ってしまいそうな、空間に、
皮のソファが二つ、茶色のテーブルをはさんであるだけの部屋である。

ソファに座る少年と少女。
真ん中には茶が入ったティーカップとティーポット、茶菓子が置いてあった。


「で、本題に入れ。」

少年は、黒い髪を揺らし、黒い目で少女を見据える。
少女ははいはいとやる気のない返事を返した。

「せっかちさんじゃのう・・・まあええわい。
 ・・・・テオドール騎士団の事は把握してるかえ?」

少年は頷く。

「多少はな、今帝国に幽閉されているセリカリーズ国王の弟だろう。」
「情報が早いのう〜♪」

「いつまでそんな猿芝居してるんだおまえは・・・」

少女の態度に少年はいらだち始めていた。
少女はやれやれと肩をすくめた。

「あのセリカリーズを捕らえるよう指示したのは、皇帝ではないことはご存知ですか?」

少女は先ほどまでの態度とは一変、
清楚で聡明な女性のように、振る舞った。

「ああ、最近帝国の兵を掌握してる「クラウス・アイン・フェルマー」っていう新参が、
 セリカリーズを捕らえろと命を下したらしいな。」
「ええ、あの魔道士は、「邪竜の復活」を目論んでいるらしいのです。」

カップの茶を口にする少年。

「邪竜の復活には「王族の血」、「神子の魂」、「神聖な器」が必要だからな・・・
 セリカリーズを餌に、テオドールを呼び出そうって魂胆だろ。」
「本来ならば、テオドール殿を祖国へ帰すべきですが・・・」
「そりゃ無理だな。奴らはもう歩き始めてら。」

少年は足を組んでため息をつく。


「これから、彼らを迎える準備をせねばなりません、
 協力をしていただけませんか?」
「・・・・嫌つっても無理やり引っ張るだろ、とことん付き合うさ。」

少女は、少年に対し、にーっとわらった。

「それでこそ、男じゃのう♪」

Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.140 )
日時: 2018/03/15 21:32
名前: テール (ID: LAu9zylb)


テオドール騎士団は、後続と無事合流し、フェティエ山脈を通過できた。

そして数日進み、連合王国王都「メイベル」へとたどり着いた。
ここメイベルは大陸で一番の人口密度と面積を誇る。
王都だけあって、店の数、人の数、施設の数・・・
それらはレヴィアの王都ナーガラージャと比べ物にならないくらい多いのである。

美しい景観、巨大な王城、時計台、闘技場など
見たことのない光景に騎士団の皆は驚きを隠せずにいた。




「すごいのです!ラーマ、あれってなんですか?」
「はしゃぐなはしゃぐな!」

ニナがいつも以上に飛び跳ね、それをラーマは追いかける。

「皆、ここまで疲れたでしょう、
 私とラーマ、エルドゥ、アルトで陛下と謁見します。
 皆は少々待っていてほしい。」

テオドールがそう伝えると、3人を連れて、王城へと向かった。







「失礼、ルーレフ・ド・ドレール陛下に謁見を申し出たいのですが」

王城を守る兵士に声をかけるテオドール。
兵士は、テオドールと、後ろの3人を見て、尋ねる

「失礼ですが、どなたでしょう?」
「レヴィア王国の第一王子「テオドール・ルツ・レヴィア」と申します。」
「・・・!陛下がお待ちです、ご案内いたします。」

兵士はすぐさまテオドールを案内した。

「意外にあっさり・・・?」
「いえ、多分予測していたのでしょうね。」

エルドゥの疑問にアルトは答えた。
すんなりと謁見の間へと通されたテオドールたちは、
玉座に座る、男を見て、跪く。

男は白い髪を後頭部で一つにまとめて垂らした髪型、前髪は赤く、頭の上から白い獣の耳が立っていて、瞳は銀色である。
服装は黒の長そでインナーの上に、灰色のシャツを着て、
青色の腰巻の上に紫色の宝石をベルトのように巻いている。

王のように見えない風貌であるが、眼孔は王そのものであった。


「よう、お前がセリカの弟か?」

男は気さくにテオドールに話しかける。
テオドールは驚いて男を見る。
あまりにも気さくな態度にすぐに返事ができなかった。

「あ、えっと・・・
 姉上の事をご存じなのですか?」
「ああ、ご存じも何も、ちっせぇころにこっちにきて一緒に遊んでたんだぜ」

「え、と・・・」
「ん、何困ってんだ?」

男は困惑しているテオドールを見て楽しんでいるかのように質問攻めをする。

「あ、いえ・・・あまりに気さくな方で少々・・・」
「ルーレフ、呼んだか?」

そこへ、青い髪の、前髪で右目を隠した男が割り込んでくる。

男は貴族なのか、かなり高貴な服装で、右胸に青い胸当てを装備している、
傲慢そうに腕を組んでいた。

「ティシャル、やっときたか。セリカの弟がきているぞ。」
「・・・・お前が噂の、「姉を見捨てて逃げてきた愚か者」か」

ティシャルはテオドールを見て怒りを露わにする。
テオドールはその言葉を聞いて身体を震わせた。
いつかは誰かにそういわれる覚悟はできていたが、やはり実際に面と向かって言われると、
胸に刺さる。

「・・・ティシャル」
「こいつは、保身のために姉であるセリカを捨てて、
 のこのこ共和国まで亡命するような「臆病者」だぞ!」
「おい、よせ。」
「己かわいさに逃げてきた者がなぜここに立っていられるのだ!
 この「愚弟」が!!」
「やめろティシャル!」

ティシャルの容赦ない罵倒がテオドールに突き刺さる。
そこにアルトとエルドゥが立ち上がり、ティシャルに反論する。

「あなたに何がわかるというのですか!」
「そうよ、大体あなたは陛下に何したっていうのよ!」
「よせ二人とも、陛下の御前だぞ!」

二人に強い口調で叫ぶラーマ。
ティシャルは鼻で笑う。

「部下のしつけもなっていない・・・呆れた「愚弟」だな貴様は。」
「ティシャル、俺はお前にそんなくだらないことを言わせるために
 ここに呼んだわけではないぞ。」

ルーレフも静かな怒りを感じさせる声でティシャルを睨む。

「セリカは弟を帝国に渡さないために自らが囮になったのだ。
 あいつがそういう性格だってことは、お前も知ってるだろ。」
「・・・・。」

ティシャルは少し黙り込む。

「・・・・俺は貴様の事など認めんからな。」

そう吐き捨てると、ティシャルは謁見の間から出ていった。



「・・・・すまない。」
「いえ、事実です・・・。」

テオドールは顔を上げず、返事をした。


「と、ところで陛下、相談がありまして。」
「ああ、わかってるよ。兵力を貸してほしいんだろ?」

テオドールの頼みを見透かすルーレフ。
テオドールは静かに頷いた。

「その前に取引しないか、王子。」
「・・・・取引、ですか?」
「ああ。」

ルーレフは、取引の内容を順を追って話し始めた。