二次創作小説(紙ほか)
- Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.143 )
- 日時: 2018/03/16 14:44
- 名前: テール (ID: LAu9zylb)
「まず、近日に連合王国の王を決める「武闘大会」が開催されるんだ。」
「それって、五年に一度開催されるという、「大武闘大会」のことでしょうか?」
アルトは手元にある資料を眺めながらルーレフに尋ねる。
「よく知ってるな、そうそう。
まあ俺も十年前に武闘大会に出場して優勝して今の地位にいる。
元々は俺もメイベルの近くにある公国の公子だったんだぜ」
「なるほど・・・・それで我々は何をすれば?」
「そこで取引なんだ。
俺の代理としてその武闘大会に出て、優勝してほしい。
さすれば兵をお前らに貸してやろう。」
ルーレフはそういうと、テオドールは驚く。
「それは、私たちは問題ありませんが、他者が関与してもよいのですか?」
「ルール上、傭兵を雇って代理で参加させるのはアリなんですよ、殿下。」
テオドールの疑問にアルトが答える。
さらに、ルールブックを読むアルトが続ける。
「この武闘大会は、活気盛んな国民、貴族などのガス抜き目的らしいです。
戦いが大好きな連合王国の国民たちが多数参加し、力を示して頂点に立つ。
頂点に立てば晴れて「ドレール」の名を受け継ぐことができて、
この国の王になれます。」
「国民や王の権力を狙う者からすれば、またとないチャンスだろうよ。
勝ち続ければ最高権力を手にできるんだからな。」
ルーレフは肩をすくめる。
「しかし、今俺が王を下りる訳にはいかんのだ。」
ルーレフの顔つきが厳しいものになった。
「小耳にはさんだんだが、俺が目を付けてる貴族共が帝国軍と手を組んでる
・・・という話を聞いてな。
そいつらが仮に王になれば、この国は崩壊する。
だからこそ、お前たちに頼みたい・・・
セリカの弟と、その部下であるなら信頼に値する。」
「あの、陛下・・・姉上とはどういった関係なのでしょうか?
テオドールは疑問に感じていたことを尋ねる。
ルーレフは笑いながら答えた。
「20年前だったかなぁ、セリカが連合王国との親睦を深めるために、
5年くらい滞在してたことがあったんだよ。」
ルーレフの話によると、
戦乱途中、王国はセリカを派遣し、
連合王国に親善大使として5年ほど滞在していた。
その時にルーレフ、ティシャルはセリカと出会い、共に過ごしていたという。
当時はセリカもお転婆で、毎日のように騒ぎを起こしていたらしい。
「それでティシャル殿は・・・」
「まあそれはさておき、どうする、出場するか?」
ルーレフはテオドールを見て、尋ねる。
「わかりました、取引に応じ、我らテオドール騎士団は武闘大会に出場し、
陛下の期待に応えてみせましょう。」
テオドールがそういって頭を下げる。
後ろにいる3人もテオドールと同じく頭を深く下げた。
「そう答えてくれると思ったよ。よろしく頼むよ、テオドール殿。」
そしてルーレフは思い出したかのように指を立てる。
「ああ、あとうちのティシャルも騎士団に加えてやってくれ。
あいつ傲慢で嫌な奴だけど、ホントはすごいいい奴なんだ。」
テオドールは「はい!」と返事をし、謁見の間を後にした。
- Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.144 )
- 日時: 2018/03/18 21:58
- 名前: テール (ID: LAu9zylb)
テオドールたちは、騎士団に
数日後に大武闘大会があることを伝えた。
大武闘大会のルールは、5人で出場し、先に相手チームを全員倒した方が勝ちという、シンプルなものである。
膝をついたり、尻もちをついた時点で戦闘不能とみなし、失格となる。
その話を聞いて、テオドールは自身の決めたメンバーで出場することにした。
メンバーは、テオドール、アルト、フィー、メルに決定した。
残り一人は、ルーレフが遣すティシャルである。
本人は当日直接闘技場に行くと、使いの者が知らせてくれた。
騎士団は武闘大会が終わるまでの間は自由時間とし、
メイベルを出ない限りは自由に出歩いて構わないと、伝令して解散した。
各々休憩や武器の見直し、資金の管理など、自由時間を有効利用していた。
「わあっ!」
「おっと!・・・・すまんな坊主。」
ジョリーは一人街を歩いていると、突然死角から白い髪の少年が飛び出し、ぶつかってしまった。
「あ、いえすみません!こちらも急いでいまして・・・!失礼します!」
少年は走り去ってしまった。
「慌てん坊だなぁ・・・ん?」
ジョリーは足元に何かが落ちていることに気が付き、拾ってみる。
それは腕輪であった。
腕輪には、「レイガ・レガシー・サード」と彫られている。
金色でかなりの一級品だということがわかる。
「さっきの坊主が落としたんだな、やれやれ・・・」
ジョリーは頭をボリボリかきながら、先ほど走り去ってしまった少年を追うことにした。
マトイとルーネは街で買い物をしながら談笑していた。
「マトイのお話は面白いですね。もっと聞かせてくれませんか?」
「そうだなぁ・・・私はルーネの話も聞きたいわ。」
「私ですか?」
マトイがルーネの顔を見て、目を輝かせながら詰め寄る。
「だって、「星の神子」様のお話とか、
神子修行とか、いっぱいいっぱいききたいことがあるんだもん!
この前はいろいろあって聞けなかったけど・・・
教えてくれないかな?」
「あまり面白くないお話ですけど、だいじょうぶでしょうか?」
「聞きたい!」
マトイの必死なお願いに、ルーネはふうっとため息をついて苦笑いする。
「じゃあ、お話してあげますね。
ここじゃなんですし、あちらのカフェでお茶にしましょうか。
荷物も重いですしね。」
「よーし、いこいこ!」
カフェの片隅にて、二人は紅茶を飲みながら話を始めた。
「まず星の神子・・・というより「伍色の神子」は・・・」
ルーネは、伍色の神子について話を始めた。
元々、神竜アナンタは、5人の少女を選んで聖痕を身体のどこかに刻み、
「伍色の神子」として、人々を導く力を与えた。
あゆる闇を浄化し、かつて大陸を脅かした邪竜ヒュドラを封印しているのである。
そして、邪竜ヒュドラの命の欠片ともいえるのが、神器に埋め込まれた伍色の宝玉。
伍色の宝玉が存在する限り、邪竜は不完全なのである。
かつて邪竜ヒュドラは、英雄ファータを始めとする「五人の英雄」に打ち滅ぼされ、
その身を「神剣アストライア」で斬られた時、
伍色の輝きへと変わり、それが石となった。
ティル・ソティスは、伍色の宝玉を、伍色の神子に渡し、
遠い未来も復活できないよう、肌身離さず持つよう伝えた。
そして代が変わってもその思いが消えぬように、宝玉を埋め込んだ神器を作る。
伍色の神子と神器は存在するだけで、邪竜を封じているのである。
しかし、仮に神子と神器が失われた場合、
バランスが崩壊し始め、邪竜を封印し続けるのが困難になる。
だからこそ、伍色の神子は成人を迎えるまで、任意でファータ教国の神殿にて保護を受けることができる。
神殿には悪しき者が入れぬよう、結界が施されていて、安全であると教皇はいう。
「というのが、私たち「伍色の神子」の在る意味なのです。」
「すごいね、そんな役目を持っているなんて・・・!」
ルーネの話に、マトイは感心する。
神子と言われても、正直何がすごいのかようわからなかったマトイは、
ルーネの話を聞いて目を丸くし、考え方を改めた。
「ですが、現在月の神子ルル・アルバーニャ、太陽の神子ミカヤ・アヤメが行方不明らしくて、
捜索途中らしいのです。」
「えぇ、なんで!?」
「わかりません・・・・私も聞いただけで真相は・・・」
ルーネはうつむいて暗い顔をする。
マトイはお茶を飲んで一息つけた。
「無事だといいんだけどね・・・」
「はい・・・。
- Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.145 )
- 日時: 2018/03/19 20:27
- 名前: テール (ID: LAu9zylb)
「やはりアルスランに頼りっきりもよくはないな・・・」
テオドールは街の武器屋に来ていた。
武器はすぐに壊れるものである。
どんな武器も必ず、砕け散ってしまうのが「モノの性」というものである。
だからこそ、テオドールは一つの武器に頼りっぱなしにせず、
「影打」に一般的な剣を選び、それを使う。
「真打」とは、本当に必要になった時のみ使うべきだと、父から教わったことを、今でも覚えていた。
「兄ちゃんの腕っぷしなら、こいつはどうかな」
武器屋の職人は、少し大きめであるが、手に馴染む刀剣・・・
「セイリュウトウ」を差し出した。
テオドールはおもむろに手に取り、空を斬ってみる。
「・・・ちょっと重いですね・・・」
「あら、そうかい。まあ、さっききた兄ちゃんなら扱えるかもな。」
「さっきの?」
テオドールは首をかしげる。
「ああ。白髪の布を目に巻き付けた強面の兄ちゃんだよ。」
「フィーもきてたのか・・・」
「まあ兄ちゃんは力で攻めるよりは身軽さで勝負したほうがいいな。」
職人はそういうと、一本のカトラスを出す。
「これは?」
「「オーバカトラス」。カトラスと同じ重さだが、丈夫だし、威力もある。
値段は結構張るがな。」
テオドールはオーバカトラスを握り、空を斬る。
持ちやすく、結構軽いため扱いやすい。
テオドールは満足げに頷いた。
「これにします。」
「毎度!」
ニナはアクライとシーナの下にやってきていた。
「アクライ、シーナ!」
「どうしたの、ニナ?」
アクライが尋ねる。
ニナはお気に入りの竪琴を取り出して目を輝かせていた。
「ニナ、竪琴の練習がしたいので、二人とも付き合うのです!」
「え、また藪から棒に・・・」
「シーナはおうたがうまいってルーネがいってたのです、
だから付き合うのです、一緒に歌うのです!」
シーナは少し考えて、周りを見る。
周囲は人が少ない時間帯なので、人がいない。
シーナは頷いた。
「いいですよ、ニナ。」
「わーいなのです!」
そして3人は近くの公園まで来ていた。
陽は傾いていたが、まだ明るい。
ニナはシーナから「クラシオンの旋律」のメロディを教わって
竪琴をポロンと鳴らす。
「上手ですね、流石吟遊詩人です。」
「ママからいっぱい教わったのです、当然なのです!」
ニナはふんぞり返ってふふんと鼻を鳴らす。
「ニナのママさんってどんな人なの?」
アクライはニナに尋ねる。
「ママは厳しくて意地悪言うのです。
「おやつは虫歯になるから食べ過ぎちゃだめ」とか
「夜更かしはだめ」とか「ピーマンとニンジンも残さず食べなさい」とか
「竪琴の練習は毎日2時間やりなさい」とか・・・」
アクライとシーナは苦笑いする。
しかし、ニナの表情が曇りだす。
「厳しかったですけど、いなくなると胸がぎゅーって苦しくなるのです。
夜、真っ暗になると怖くて仕方ないのです・・・・。」
「ニナ・・・」
ニナは涙で瞳を濡らしていた。
アクライは困った顔でシーナを見つめる。
「ニナ、一緒に歌いましょう」
シーナは突然ニナに提案する。
そしてニナの顔を見つめ、目を合わせる。
「寂しい時こそ歌を歌うんですよ。
遠い場所に行ってしまったママやパパに歌を届けるんです。」
シーナはにこりと笑う。
「・・・・パパとママに届くですか?」
「絶対届きますよ、歌にはそういった力がありますから!」
「・・・わかったのです、一緒に歌うのです!」
ニナは返事をして、精一杯笑う。
シーナもアクライもその笑顔を見て、笑った。
- Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.146 )
- 日時: 2018/03/22 22:58
- 名前: テール (ID: LAu9zylb)
大陸歴983年3月1日
王都メイベルの闘技場にて、武闘大会が開催された。
手練れの戦士たちがその日を待っていたかのように、鼻息を荒くしている者が多数いた。
テオドールたちも案内された控室にて、名前を呼ばれるまで待機していた。
そこには、アルト、フィー、メルもいたが、
ティシャルのみそこにはいなかった。
「あのティシャルという男、いまだ来ませんね。」
「ああ、何かあったんだろうか・・・」
アルトとテオドールがそんなことを言っていると、
「何もなかったぞ、余計な心配など不要だ。」
そこへティシャルが入室してきていた。
相変わらず傲慢そうに腕を組んで、テオドールたちを睨んでいる。
「もう、あなた!ギリギリまで来ないとかホントなんなんですか!?」
アルトが指をさしてティシャルに怒鳴るが、メルがそれを窘める。
「まあまあ、間に合ったんだし、いいじゃないか。」
「ふぅ、そうなんですけど・・・」
ティシャルは、無言でアルトを見る。
「お前が騎士団の軍師か。」
「なんですか、何か文句があるんですか?」
アルトはティシャルとにらみ合う。
すると、ティシャルは意外なことを口にした。
「お前、もっと女らしくしたらどうだ」
「・・・・はぁ?」
「そんな恰好では華が咲かぬだろう。」
「僕は男です、わかりませんか!?」
アルトは半分怒りながら反論する。
その様子にさすがのティシャルもたじろぐ。
「ところで、まだ自己紹介をしていませんね、ティシャル殿。」
「テオドール・ルツ・レヴィア、メルキュリオ・ズィルバー、アルト・フェーム、フィルシルド・ルヴトー。
そうだろう?」
ティシャルは全員の名前を言い当て、一同は驚く。
ティシャルはその様子に鼻を鳴らす。
「ふん、共に戦う「仲間」だ。
仲間の情報を知っておくのは、戦略の基本だろ?」
そして、ティシャルは皆を見る。
「私は「ティシャル・フォン・ティラトーレ」。
ティラトーレ公国の公子であり、次期公爵だ。」
自己紹介を終えると、テオドールを再びにらみつける。
「セリカの弟というからには、俺を失望させるような戦いを見せるなよ。」
「承知しております、私は姉上に恥じぬよう、勝利を掴んでみせましょう。」
それを聞くとティシャルは、再び鼻を鳴らした。
武闘大会は36組の参加者によって、トーナメント形式で勝ち抜け、
決勝戦に勝利すれば、王になれるというシンプルなもの・・・。
参加者たちは皆個性あふれる姿であり、
様々な種族が王の権利を求めて5年間修行してきたんだと見て取れる。
それに加え、連合王国の人々の元々の血気盛んな者たちが、
今日という日を待ち望んでいたことがよくわかる。
「皆手練れの戦士ばかりですね。」
テオドールが控室にいる戦士たちを見てつぶやく。
「怖気づいたか?」
「・・・まさか。」
ティシャルの冷やかしに、肩をすくめて笑うテオドール。
何年かぶりの模擬戦を思い出す。
(あの頃は姉上と一本勝負をしていた・・・。)
セリカとの木刀での勝負を思い浮かべる。
<テオ、剣を振るだけなら誰にでもできるのよ。>
(剣を振るだけなら・・・・)
<動きを見るの、時には剣を捨てて体術を使う事も大事なことよ。>
(・・・・よし。)
テオドールは姉に教わった事を思い出し、剣を素振りした。
ヒュンッと風を斬り、小気味いい音が鳴る。
「殿下、ご準備は?」
「問題ありません。」
そして、重い音を響かせながら格子が上がり、光が差し込む。
テオドール達は、一歩、また一歩と前を踏み出して、競技場へと進んだ。
- Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.147 )
- 日時: 2018/03/26 15:42
- 名前: テール (ID: LAu9zylb)
テオドール達は戦士たちと剣を交えた。
武器と武器がぶつかり合い、鋭い音を放つ。
「はあっ!」「せいやあっ!!」
テオドールはできるだけ戦士たちを傷つけずに倒す。
テオドールの指示により、ほかの4人もできるだけ血を流さずになぎ倒していた。
「甘い」と言われればそうかもしれないが、これは殺し合いではない。
殺し合いでなければ血を流す必要がない。
それをティシャルに説明すると
「セリカ似の甘い奴だな」と鼻で笑われた。
そうかもしれない。
「ですが、それは姉上の目指す王国の在り方です。」
「・・・・まあ、あいつが言いそうなことだな。」
ティシャルはそういうと、にわかに口元が笑っていた。
そしてテオドール達は決勝戦へと勝ち進む。
テオドールは相手のチームを見る。
相手のチームには白い鎧を着こむ騎士四人と、
仮面をつける少女のように華奢な少年剣士が立っていた。
「あなたがテオドール殿ですね?」
仮面剣士はテオドールに声をかけた。
「そうですが、あなたは・・・?」
「僕はルクス・イルミナル。この大陸の闇に光を照らす者だ。」
ルクスはそう答えると剣を構える。
「決勝戦だ、テオドール殿。
この戦いに勝利すれば、僕の知るすべてを君に話そう。」
「あの人、すごい気迫だね〜」
メルは魔導書を取り出しながらつぶやく。
「皆、ルクスは私が相手をする。他の対処は任せた!」
テオドールはそういうと、アルトは頷く。
「わかりました。」
「ふん、仕方がない、今回は命令に従ってやろう。」
ティシャルはそういうと、乗っている馬の鞍をつかむ。
背中に背負う青い弓が、鈍く光った。
試合が開始し、互いのチームは武器を交える。
ティシャルは矢を引いて、一番小さな騎士を狙った。
小さな騎士は矢を見切って避けたが、矢が旋回し、騎士の背中に命中する。
「・・・!?」
「俺の持つ弓、「蒼穹フェルノート」は「命中の弓」と呼ばれる必中の武器だ、避けられんぞ。」
ティシャルがそういうと、2本目の矢を引く。
「好きにはさせんぞ!」
剣を持った騎士がティシャルを狙うが、フィーがティシャルをかばうように
騎士の剣を受け止める。
剣と剣がぶつかり合い、大きな音を立てた。
「貴様ッ!!」
「攻撃の最中を狙うなど見切っている。」
フィーはそう静かに言う。
「サンダーボルト!」
そこにメルは剣を持つ騎士を狙い、雷の束を放った。
剣を持つ騎士にそれは命中し、騎士は膝をついた。
「よし、まずは一人!」
メルはガッツポーズを決めた。
「やるね、君の部下たちは。」
ルクスはテオドールと剣をぶつけ合いながらそう言う。
「当然です、優秀な仲間ですから。」
「なるほどね・・・」
ルクスはテオドールの足を払う。
「っ・・・!?」
「隙ありだ!」
テオドールはバランスを崩す。
そこにルクスは剣の柄をテオドールにぶつけようとしたが、
テオドールはその柄を掴んでふんばり、持ち直す。
「やるね」
「ああ・・・!」
ルクスは久しぶりに本気で剣を交えられる喜びに、奮え立つ。
それはテオドールも同じであった。
互いの一歩も譲らない戦いに、観客も息をのむくらいである。
「はあぁっ!!」
「でやあ!!」
再び剣をぶつけ合い、鋭い音を放つ。
ルクスは剣を一旦退き、テオドールの腹を狙うが、
テオドールはそれを読み、剣を受け止める。
武器と武器のぶつかる音が響き、やがて剣にひびが入り始めた。
テオドールは、ルクスの胸ぐらをつかんで、思いっきりルクスの頭に頭突きする。
「がっ・・・!?」
ルクスは悲鳴を上げる。
目を白黒させ、テオドールを見ようとするが焦点が合わず、テオドールを見失う。
「でやぁぁぁーっ!!」
テオドールは腹を蹴って吹き飛ばす。
「うわぁっ!」
ルクスは悲鳴を上げて吹き飛ばされ、倒れ込んだ。
「ルクス・イルミナル、戦闘不能!」
審判がそう叫ぶと同時に、後ろで騎士と戦っていた仲間たちが
騎士たちを倒していた。
審判は戦闘不能と判断し、右腕を上げた。
「勝者、テオドール騎士団!」
審判はテオドールたちを指して勝敗を決めた。
観客たちは歓声を上げる。
テオドールは倒れるルクスに近づき、手を差し伸べた。
「すまない、思いっきり蹴ってしまったが、大丈夫ですか?」
「はは・・・いや。僕は平気だ。」
ルクスはそういうと、テオドールの手を取り立ち上がる。
「剣を交えて分かった、君の覚悟は相当のもののようだね。」
「・・・・いや、私は」
「謙遜しないでほしい・・・約束通り、僕の知っていることを話そう。
騎士団の皆と共に謁見の間へと来てほしい。」
ルクスはそれだけ伝えると、倒れた騎士たちに声をかけて肩を貸して退場していった。
- Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.148 )
- 日時: 2018/03/27 21:39
- 名前: テール (ID: LAu9zylb)
「いやあ、さっすがテオドール騎士団!なかなかのものだったなあ。」
謁見の間にて、テオドールたちを待っていたルーレフ。
隣に、ティシャルが相変わらず腕を組み、険しい顔でテオドールたちを見下ろす。
「まあ、セリカ程ではないがな。」
「素直になかなかやるな!って言えばいいのにこのツンデレ。」
「〜〜〜〜〜ッ!!」
ティシャルは顔を真っ赤にしてルーレフを睨みつけた。
それを横目にルーレフは笑顔でテオドールたちを見る。
「それはそうと、取引は成立したぞ。
お前たちに少ないが1000の軍隊を貸してやろう。
ついでにティシャルと「レイガ」もな。」
「ありがとうございます、陛下。」
テオドールは首を垂れる。
アルトは手を静かに上げて、質問した。
「「レイガ」という方はどなたですか?」
「ああ、お前たちには会わせたことがなかったな」
ルーレフは顎を撫でながら笑う。
「レイガはティシャルの子分だな。」
「違う、勝手についてきているだけだ!」
ティシャルはすぐさま否定する。
「俺は認めんぞ、弓を使わない弟子など・・・!」
「なんでだよ、良い子でかわいいじゃねえか、素直だし。」
「俺は弓兵だぞ、弓を使わぬ弟子も子分もいらんわ!!」
「冷てえ奴だなあ・・・なんだかんだついてきてくれるのが嬉しいんだろ?」
「別に、弓を使い始めたら認めてやらん事もない。」
「そういうとこ面倒くさいぞお前。」
ティシャルとルーレフがそんな言い争いをしていると、
「あ、あの、陛下・・・」
アルトが困惑した顔で声をかける。
ルーレフはそれに気づき、咳払いをする。
「ま、ティシャルとレイガはそれなりに役立つだろうから、
じゃんじゃんこき使ってやってくれ。」
「は、はあ・・・」
テオドールが困惑しきった顔で返事を返すと、
「陛下、失礼いたします。」
後ろの扉を開けて、金髪の少年が謁見の間へと入る。
ルクスであった。
「おお、ルクス。待ってたぞ!」
ルーレフはルクスに向かって手を振った。
「テオドール殿、先ほどの約束を果たしにきたよ。陛下。」
ルクスはルーレフに向かって声をかけ、ルーレフは静かに頷いた。
「テオドール殿、まず初めに・・・
「邪竜ヒュドラ」をご存じですか?」
ルクスの質問にテオドールは頷いた。
「邪竜ヒュドラは、五人の英雄によって現在のファータ教国の神殿地下に封印されている、
強大な闇の力を持つ「ギラティナ」なんだ。」
「しかし、今は何百年もの間眠っているはずです。」
アルトが書物を確認しながらルクスに言う。
ルクスは頷いて口を開いた。
「今はまだ。」
ルクスは続ける。
「しかし、現在黒い魔道士が邪竜の復活を目論んでいるようなんだ。」
「邪竜の復活!?」
テオドールが驚く。
「ああ。すでに彼の手中に「神子の魂」がある。
・・・次は「王族の血」を狙っている。
おそらく、セリカリーズ国王を幽閉しているのは、君の血を欲しているからだろう。」
「!!?」
ルクスの言葉に、テオドールの後ろにいる、ラーマ、アルト、エルドゥが立ち上がった。
「ということは、帝国に行くこと自体罠に飛び込むようなものじゃないですか!」
「そういうことだ。
で、テオドール殿、君に質問がある。」
ルクスは、テオドールに尋ねる。
「君は、それでも君の姉君を助けに行くというのかい?」
テオドールは答える。
「はい、私は・・・姉上と約束しましたから、
「必ず生きて再会する」と。」
ルクスはその答えを聞き、ふっと口元を緩める。
「その答えを聞いて安心したよ、僕も全面的に協力しよう。」
「あの、ルクスさん」
突然、エルドゥが右腕を上げて質問する。
「「黒い魔道士」って誰の事?」
「「クラウス・アイン・フェルマー」。ダークライ族の貴族だよ。」
ルクスはそういうと、ラーマに近づく。
「ラーマ・ラインバルディさん・・・で、合ってる?」
「ああ、私に何か?」
「クラウスの配下がこれを。」
ルクスはラーマに短剣を手渡す。
ラーマはそれを見て、目を見開き、形相が変わった。
「これをどこで!?」
「ファクトライズ公国で。」
「・・・・っ!!」
ラーマは唇をかみしめる。
「ここからの戦いは困難と過酷を究めるだろう、騎士団の皆さん。
だからこそ、僕らは協力し合わなければならない。」
ルクスはそういうと、ルーレフに向かって一礼してから、謁見の間を退出しようとする。
「待ってくれ、ルクス。」
テオドールはルクスを呼び止めた。
「君は一体、何者なんだ?
なぜ私たちに助言を・・・・?」
ルクスは静かに答えて、扉の向こうへと去っていった。
「僕は「光を照らす者」。
この大陸に光をもたらし、平和と安寧を築きたいだけだよ。」