二次創作小説(紙ほか)

Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.149 )
日時: 2018/03/29 20:45
名前: テール (ID: LAu9zylb)

第九章 復讐の剣



騎士団の下へ、ティシャルと白髪の少年が現れた。

「弟、来たぞ。」

ティシャルはそういうと、少年の背中をたたく。
白髪の短髪、緑色の瞳の、まだまだ垢抜けない子供のように見える。
魔道士特有の白いローブの下に青い胸当て、白いシャツ、
黒いズボンと、魔道騎士のようであった。

「は、はじめまして!僕はレイガ・・・レイガ・レガシー・サードと申します!」
「レイガは俺の・・・いや、勝手についてきてるだけだ。」
「えぇ、まだ僕認められてません!?」

ティシャルの言葉にレイガはすぐさまツッコミを入れる。
ティシャルはレイガを見下ろし、鼻を鳴らす。

「ふん、弓を扱う気になったら仲間として認めてやろう、それまでは下僕だ。」
「そ、そんなぁ・・・」

ティシャルの言葉に泣き出しそうな声でうなだれるレイガ。

「ただ、剣筋は悪くないな、
 それでさらに弓を持てばお前は育つぞ。」
「ほ、本当ですか!?」

まるで漫才のような掛け合いを見て、テオドールは吹き出す。

「・・・やっと笑ったな弟。
 お前は少々張りつめ過ぎだぞ。」
「・・・!す、すみません。」
「なぜ謝る?」

テオドールの謝罪に首をかしげるティシャル。

「いえ、私は・・・・」
「ふん、まあいい。あと私に遠慮はするな、共に剣を交えた仲間だろう。」

ティシャルはそういうと、立ち去った。
レイガもそれについていく。


「意外にいい奴ですね、殿下。」

ラーマは頷きながらティシャルを褒める。

「第一印象最悪ですけどね」

エルドゥは笑いながらラーマに同意する。












大陸歴983年3月4日

騎士団は連合王国で準備を整え、旅立った。
テオドールは、ルクスの話を聞き冷静ではいられなくなっていた。
邪竜復活の贄として、自分が捧げられるのはまだいい、
セリカの事が気がかりであった。

自分のせいでたった一人の姉が巻き込まれている・・・・
そう思うと、怒りがこみ上げてくる。


ふと、ルーネがテオドールの手をそっと取る。

「テオ、お姉さまはきっと大丈夫ですよ。・・・・大丈夫です。」

精一杯笑うルーネに、テオもつられて笑った。

「・・・・はい。」

ルーネは、久しぶりに見るテオドールの笑顔に、顔を真っ赤にさせた。
テオドールはその様子に首をかしげる。

「どうしたんですか、ルーネ?」
「い、いえ!なんでもないです!」

というと、ルーネは顔を伏せながらテオドールから離れた。


「テオの笑顔・・・久しぶりに見ました・・・」
















騎士団は北上し、とある廃墟へとたどり着いた。

フィーがその場所を見て、眉間にしわを寄せる。
クララはその様子に、思わず尋ねた。

「フィーちゃん、どうしたの?」
「・・・・。」

フィーは無言でそっぽを向く。


「ここは、戦禍に巻き込まれた場所だな。」

ティシャルは腕を組みながらつぶやく。

「聖戦の?」
「ああ、おそらく、砂漠を超えた帝国軍がこの街をおとして、
 連合王国侵略の拠点にするつもりだったんだろう。」

アルトの問いにティシャルは答える。



約20年前・・・
この街は「ヴィツィオ市街」という名前であった。
主に悪族が暮らす、小さな市街であったが、突如帝国軍の手に堕ちた。
街の人々は次々に殺され、女子供は奴隷として帝国軍の下へ連れていかれた。
しかし、王都から騎士団が派遣され、侵略は免れた。
だが時すでに遅く、市街の人々は全滅寸前、市街はやむなく捨てられた。
そして、今日まで誰が住み着くまでもなく、放置されていたのである。


「今夜はここに泊まるとしよう。」

ティシャルは提案した。
クラルは驚く。

「えぇ!?今の話の流れで!?」
「もう日暮れだ、アンヘル砂漠まではあと6日くらい歩かねばたどり着けん。」

ティシャルの言葉に、アルトは頷く。

「それもそうですね、場所は悪いですが、このまま真っ暗になってしまえば、自由に歩くこともままなりません。」
「私も賛成です。」

アルトにメルシアも賛成する。
テオドールはそれに頷いて、騎士団に指示を送った。

「では、今夜はここに天幕を張り、休みましょう。
 皆さん、寝心地は悪いと思いますが、ゆっくりと休んでください。」

騎士団の皆は、崩れた瓦礫などを利用して、天幕を張り始めた。
炎族の騎士は火を起こし、水族の騎士は水を汲みに近くの川へと急いだ。


Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.150 )
日時: 2018/03/30 22:37
名前: テール (ID: LAu9zylb)



「フィーちゃん、見張りご苦労様」

クララがたき火を見ているフィーの下へと歩み寄り、隣にちょこんと座る。

「ああ、お前ももう寝ろ。」
「フィーちゃん、聞きたいことがあるの。」

クララは今迄に見せない表情で、フィーを真剣に見つめる。
フィーはその様子に少したじろぐ。

「・・・・どうした?」
「この廃墟に来てからフィーちゃんってば怖い顔をしているんだもの、
 ・・・この街での出来事を何か知っているんじゃないかしら」

フィーはそっぽを向く。

「気のせいだろう」
「気のせいなんかじゃないわ。」

フィーをじっと見つめて離さないクララ。
フィーは「はあ」とため息をついて、周りに誰もいないか確認し始めた。


「誰にも言うなよ。
 この廃墟・・・いや、ヴィツィオ市街は俺の生まれ育った街なんだよ」

フィーはたき火に薪をくべながらはっきりとそういう。

「だから、張りつめたような顔をしていたのね。」

クララの問いに、無言でうなずくフィー。

「そうだな、あれは20年前・・・ここに来た時にティラトーレ公子が言っていただろう。
 俺はあの戦渦に巻き込まれたんだ。」
























20年前のヴィツィオ市街・・・・

荒野に囲まれた街で、草木は少ないが、
住人たちは知恵を絞り、そこで暮らしていた。


「フィー!」
「はあい、どうしたの父さん?」

白い髪の30代くらいの男性が、同じく白髪の少年を呼んだ。
少年・・・いや、フィーは元気に父の下へと駆け寄る。

「今日は天気がいいから、干し肉を作るんだ。
 手伝ってくれないか?」
「干し肉!いいよ!!」

フィーは干し肉と聞いて喜んだ。

「ははは、お前は干し肉が好きだもんなあ。
 だが保存用だからすぐには食べられんぞ。」
「し、知ってるよ!」

父は笑いながらフィーに言ってやると、フィーは頬を膨らませる。
それを見て、父は再び大きく笑った。







しばらくして、肉を全て干し終えた二人。

「これで今日一日天日干しにすれば、干し肉の出来上がりだ。」
「上出来だね」

父もフィーも頷きながら肉を見ていた。

「あなたー、フィー!」

突然、家屋の窓から女性が顔を出す。
フィーの母であった。

「肉を干してたのね、こんなにもたくさん!」
「母さん、見てみてこれ、俺も手伝ったんだ!」

フィーは無邪気に干してある肉を指さす。
母はにこやかに微笑む。
そして、フィーにバスケットを渡した。

「フィー、いつもの山にいって、ベリーを採取してきてくれないかしら?」

フィーはバスケットを受け取る。

「いいよ、いっぱいつんでくるよ!」
「日が暮れないうちに帰ってくるのよ」

うん!と元気よく返事をしたフィーは走り出し、後ろを向きながら手を振った。

Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.151 )
日時: 2018/03/31 23:02
名前: テール (ID: LAu9zylb)


フィーは目的地の森まで歩いているその途中、
子供の飛竜がフィーを見つけ、頭を擦り付ける。

「うわっ!ああ、お前かぁ。」
「クゥ〜♪」

飛竜は白い鱗を持ち、翼の形がまるで鳥のようである。
青い瞳でフィーを見て、甘えている様子であった。

フィーは数か月前、雨に打たれて弱弱しく鳴く白竜を見つけ、
雨が上がるまで自分の服を包ませて温めていた。
雨が上がり、親竜を探したが見つからず、
弱っていく竜の姿を見て、急いで家へと連れて帰った。
そして温かい粥を食べさせて看病した後、
元気になった竜を帰したが、フィーになついてしまい、度々会いに来ているのである。

「お前も来てくれるか?
 ベリーをいっぱい集めるんだ。」
「くるる・・・」

竜は返事をしてフィーについていく。
子供だが、フィーの身長の3分の2くらいはある。
親だともっと大きいんだろうなと、フィーは思った。

この辺りは獰猛な獣はいないが、野犬などがたまにいるため、注意せねばならない。






しばらく歩いて、ベリーがたくさん実る森へとたどり着いた。

「いっぱいなってる、でもあんまり取らないようにしないとな。」

フィーはそうつぶやきながら、
竜と協力してベリーを採取する。
あまり奥に行かないように、注意した。







「よし、このくらいでいいかな」

フィーはベリーがこんもりと入ったバスケットを持ち、満足げに頷く。
竜も喜んでいるのか、目を細めていた。

「よし、もう日も傾いてきたし、帰ろうぜ」
「きゅう〜!」

フィーの言葉に返事する竜。
そして、帰路についた。


「お前は帰らなくていいのか?」
「・・・?」

竜は首を傾げた。
フィーは、帰る場所がないのかと察する。

「親がどこにいるかわからないのか?」
「きゅ?」

やはり首をかしげる。
子供だからかな、とフィーは考えた。



そして、森を抜けて、市街へと帰るフィーと竜。
しかし、街の様子がおかしかった。
警鐘が鳴り響き、木と人の焼ける臭いがしたからだ。

「・・・・な、なんだ!?」

フィーは思わずバスケットを落とし、街へと走り出す。

「きゅう〜!!」

竜はフィーの様子に慌ててその場をグルグルと回転した。
突然のフィーの行動に驚いたのだろう。
そして、竜は何かを思いついたかのように、街の反対側へと飛び立った。










「どうなってるんだ・・・父さんと母さんは・・・!?」

フィーは辺りを見回す。
街は炎に包まれており、所々で人が倒れていた。
よく見ると、血を流しているため、死んでいるんだと嫌でもわかる。


「父さーん!」

フィーはそう叫びながら走る。

「フィー!」

フィーの父が姿を現した。
安堵に包まれた顔であった。

「父さん、見つけた!
 ねえ、何があったのこれ!?」
「今は説明をしている暇はない・・・フィー、お前は隠れるんだ。」

父は険しい顔でフィーを見る。

「え?どういうこと・・・?」
「今母さんを探している最中なんだ、ちゃんと母さんを連れて戻るから、
 ここで待っていなさい。」

フィーが困惑していると、突然、雨が降ってきた。


「俺達にもわからんが、黒い鎧の騎士がこの街を攻めてきてな・・・」

父はフィーをかまどの中に押し込む。
煤だらけだが、雨風、外からの脅威から身を守ってくれるだろうという判断からだ。

「俺達は抵抗したが、抵抗もむなしく街は燃えたわけだ。」

父の話を聞き、無言で考える。
雨はさらに強く打ち付けてきた。

「父さん、俺も行くよ!」
「ダメだ。」

父はぴしゃりと口調を強める。

「お前はここにいなさい、母さんを見つけたらすぐに戻るから。」
「でも・・・・」
「いいから。」

父は、かまどの蓋を手に持つ。
フィーはうつむいて小さく返事をする。

「・・・・・うん。」
「いい子だ、父さんはすぐに戻る。お前は待ってるんだぞ。」
「・・・すぐ戻ってきてね」
「ああ、俺は約束を必ず守る」

そういって、かまどの蓋を閉じた。

Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.152 )
日時: 2018/04/05 22:13
名前: テール (ID: LAu9zylb)


フィーはそこまで話すと、一息ついて、たき火を見る。
クララは、その様子に首を傾げた。

「フィーちゃん?」

フィーは、口を開く。

「そのあとのことはあまり覚えていない。
 確か、父さんが遅かったから、かまどから出ちまったんだよ。」





















「父さん・・・・」

フィーは打ち付ける強い雨の中、必死に街を歩く。
血と泥と煤の不快なにおいが鼻につく。
だが、父は母を連れて必ず戻ると約束したのだ。

フィーはそんな事を考えていると、ふと前を見る。

そこには、変な形の傘を差した全身が白い少女が立っていたのだ。


「・・・・・。」

少女は青い瞳でフィーを見る。
まつ毛まで白いその少女は、不思議な雰囲気を醸し出していた。


「き、君は?」
「あなたの目、きれいね。」

少女はフィーに近づく。
一瞬の間にフィーの目の前に現れ、フィーは驚いて後ずさりした。

「どうしてそんなにきれいなの?」

少女はフィーの顔を覗き込み、両頬を両手で触れる。
驚くほど冷たい手に、フィーは恐怖感すら覚えた。



その瞬間、左目が急激に熱を帯びたような感覚が襲った。

「ッ!?」

フィーは少女の手をパシンと音を立て叩く。
左目に触れるが、熱はやがて痛みに代わる。

「い、いだ・・・!」

フィーの左目から赤黒く、ぬるっとした液体が流れ、止まらない。

「あ、ああ・・・」

声を上げようにも、息苦しいほどに脈打つ心臓が痛み、呼吸もままならない。

「め、が・・・ァ!!」


少女はフィーが左目を抑えてその場にうずくまっている様子を見て、
無表情でフィーから抉った眼球を見る。

「きれい・・・」

少女は赤黒い液体を手に染めて、愛おしそうに見る。

その瞬間、少女に向かって手斧が飛んできた。
が、少女はふわりと避け、手斧を見る。

「・・・・だれ。」


「てめえを殺す人間だよ。」

低い声が、その場に響き渡り、黒い帽子を被った男がゆっくりと歩いてくる。
黒いマントを羽織り、服装はシャツの上にベストを着たシンプルなものだった。


少女は男を見ると、むっと機嫌を悪くする。

「あなた、きらい。」
「俺もだよ、奇遇だな。
 相変わらず趣味の悪い奴だなてめえも。」

斧を少女に向けて、威嚇する男。
少女は黒い表紙の魔導書を取り出し、魔法を放とうとする。


しかし、

「おい、帰るぞ。」

と少女に声をかける細っこい靄が現れる。
黒く、ぼやけているため、男か女かわからない。

「でも・・・」
「主上の命だ」
「・・・・」

少女は恨めしそうに男を睨み、黒い靄の中に消えた。


「ふん。・・・・おい小僧。」

男はうずくまるフィーの目の前に剣を向ける。

「お前、生きたいか?」

フィーは力なく男を見る。

「この街の連中は全員死んだ。
 さっきの白い奴に操られた帝国軍の手によってな。」
「・・・・あんた、だれ?」

フィーは半目で男を見据え、力なく尋ねた。

「・・・・その前に答えろ。
 お前は生きたいのか?父も母も死んだこの大地で。」
「・・・・・。」

フィーは雨のうちつける空を見上げる。

「・・・・く・・・ぅ・・・・」

次第に涙がとめどなくあふれてくる。
何もできなかった自分に、父と母と、街の人達を見殺しにしてしまった自分に
怒りすら覚えた。


「生き・・・・たい・・・・!
 生きて、さっきの奴を殺してやりたい・・・!!」

フィーの右目から光が消え、自身の唇をかみしめた。
白い少女が何者かはわからないが、
家族と居場所を奪ったそいつが許せないでいる。

男はその様子を見て、一本の銀色の大剣をフィーの前に突き刺した。

「生きたいなら、その剣を手放すな。」

男はそういうと、後ろへ一周して回り、歩き出した。

「ま、待って!」

フィーは剣を持って叫ぶ。

「お、俺を弟子にしてください!俺に剣を教えてください!お願いします!」

男はフィーを見て頭をぼりぼりとかく。

「俺は剣を教えてるわけじゃねえんだよ。
 それに・・・・って、だーもう!」

フィーが泣きながらこちらを見るので男はうなだれた。

「はーっ、男が泣いてんじゃねえよ・・・・ったく。
 いいか、その剣を手放すなよ、あと遅れたらおいていくぞ!」
「・・・・はい!」

フィーは決意した目で剣を握りしめ、男についていった。


















「そのあと、俺は師匠に剣を教わって、一人で生きていけるようになって師匠から離れた。
 まあ、事実上の破門だがな。」

フィーは話を終えると、周りを見る。
クララは一つ、フィーに尋ねた。

「ねえ、一緒にいた竜の子供ちゃんはどこに?」

フィーはクララの質問に、傍に置いていた剣を指さす。

「これだ。」
「・・・・?」

クララは首を傾げた。

「師匠を呼んできたのはあいつでさ、
 雨に打たれて、師匠の下にやってきたときには、かなり衰弱していたらしい。
 それで、竜が最後の力を振り絞ってこの剣の形に変身した・・・って聞いた。」
「それって・・・もしかしたら「銀竜」ね。」

クララは手に持っていた図鑑を広げ、「銀竜ルーフラガ」の頁をフィーに見せた。

「「銀竜」は死ぬ間際に剣に変形する特殊な竜でね。
 数が少ない希少種なのよ。
 その剣は、竜個体によるけれど、かなりの強度の剣よ。」
「・・・・・。」

フィーは剣を見る。

「そうか、あいつが・・・」

フィーは口を緩めた。




「もう遅いな、クララ。お前はもう寝ろ。」

フィーは周りを見てクララに寝るように促す。
周りでは仲間たちがもうすでに天幕の中で眠っている様子であった。

「わたくし、ここで寝てもいいかしらあ?」

クララは笑顔でフィーを見る。
フィーは、顔を赤らめて、そっぽを向いた。

「・・・・好きにしろ。」


その顔は、少し笑みを含んでいた。