二次創作小説(紙ほか)

Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.153 )
日時: 2018/04/07 12:02
名前: テール (ID: fE.voQXi)

第十章 残酷な騎士二人


次の日、騎士団は野営の片づけをして、北上する準備に取り掛かっていた。


「気持ちのいい朝なのです!」

ニナはうぅーんと背伸びをする。
隣にアッシュが歯を磨きに来ていた。

「ニナ、歯磨きは良いのか?」

口に歯ブラシをくわえてニナに尋ねる。

「アッシュ、お行儀が悪いのです!」
「悪ぃ・・・・いやお前も朝の歯磨きくらいしろ!」
「うぐぅ・・・!」

アッシュに痛いところをつかれて、しぶしぶ歯磨きをする。

「アッシュはママみたいに意地悪なのです」
「意地悪じゃないさ、お前が立派に育つように言ってるだけだ。」
「ニナは10年後になったら立派なレディになってるのです!」
「だったら立派なレディになるために歯を大事にしないとな。」

アッシュは笑いながらニナに諭すが、ニナは納得いかない様子である。

「ママみたいです・・・・」

ニナは頬を膨らませてそっぽを向いた。








ジョリーがメルシアに近づく。

「よお、メルシアさん。」
「ああ、ジョリー・・・・どうしたんですか?」

ジョリーは今までにない真剣な顔つきでメルシアを見る。

「お前・・・・———だったな。」
「えと、はい・・・そうですよ?」
「・・・・ハイランド公国って知ってるか?」

ジョリーは少し考えてから「ハイランド公国」について、メルシアに尋ねた。

「えっと、祖父の出身地ですね。
 独特の流派の剣技の騎士や剣士がいらっしゃるっていう・・・」
「・・・・そうか、やはりそれくらいか・・・・」

ジョリーは頷く。
メルシアは首をかしげてジョリーに尋ねた。

「あの、それが何か?」
「ん?ああ、いや・・・すまんな、忘れてくれ。」

ジョリーはそういうと、いつもの笑顔を見せて歩いて行ってしまった。

「・・・・?」


Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.154 )
日時: 2018/04/10 21:35
名前: テール (ID: LAu9zylb)


「今日もいい天気なのです!」

ニナは前進して、周りを見る。
この辺は砂漠が近いからか、荒れた土地が多く、歩きづらかった。
川もなく、木々もないため、直射日光は容赦なく騎士団を襲う。


「干し肉を作っておいた、この辺は動物も住まないから、
 食材の確保は困難を極める。」

フィーはそういうと、少量であるが、干し肉をラーマに渡す。

「おう、助かる。ありがとな。」






「兄様・・・」

コハクは水晶玉の中を見て、顔を引きつらせる。

「・・・・殿下に報告だ、俺が先行する。」
「一人で大丈夫ですか・・・?」
「平気だ、足止めだけなら、俺でも事足りる。」

ヒスイはそういうと、走って先行し始めた。








「殿下、この辺は見晴らしがいいですが、
 気温が高いので、兵士の体力は徐々に奪われています。
 休息を挟みながら砂漠へと近づいた方がよいかと。」

アルトが周りを見ながらテオドールに伝える。
テオドールも騎士団が長旅で疲弊している様子を見て、頷く。

「そうですね。
 ・・・そろそろ休息をとりましょう。」

テオドールがそう提案する。
周りを見ると、泉が沸き、草木が生えている場所が見える。
エルドゥがそこへ近づいて、泉に手をやる。

冷たくて心地いい水が湧き出ていた。

「この水、飲めますよ!」
「ありがとうエルドゥ!」

エルドゥが手を振りながら叫び、アルトもそれに返答する。


「殿下、失礼します!」
「コハク?どうしました?」

そこへコハクが慌てて飛び出してきて、テオドールは驚いた。

「実は、帝国軍と思しき集団が、こちらに近づいてくるのを感知しました。」

コハクは手に持つ水晶玉をテオドールに見せる。
水晶玉には、魔道騎士と思しき人物が二人、歩いている映像が映し出されている。

「現在、兄様が足止めに向かっています。しかし、単独での行動ですので・・・」
「わかった、すぐに向かおう。皆はここで待っていてください。」

テオドールはそういうと、だっと走り出す。

「あ、殿下!」
「私も参ります!」

コハクもテオドールを追って走り出した。














「みんな情けないのです。おいてきちゃったのです。」

ニナは一人、荒野の真ん中を歩いていた。
彼女はまだ幼い少女であり、戦争というものが理解できていなかった。
だからこそ、危機感がないでいる。

「それにしても暑いのです・・・」

日差しが強く、ニナに差し込んだ。
それでも歩き続けるニナ。



「お嬢さん、こんなところでどうされましたか?」
「ん?・・・おじさん、誰ですか?・・・ニナはニナなのです。」

ニナは突然声をかけられ、振り向くと、馬に跨る黒い騎士が一人。
その冷たい瞳にひるむことなく、ニナは返事を返した。

「ニナさん・・・ああ、騎士団が保護しているという少女でしたね。」
「・・・・?おじさん、なんですか?誰ですか?」

ニナは困惑した顔で、騎士を見上げた。

「私は帝国の騎士です。
 あなたはたった今から人質として役に立っていただきましょうか。」

騎士はそういうと、ニナに手を伸ばした。

Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.155 )
日時: 2018/04/11 22:30
名前: テール (ID: LAu9zylb)



「そいつから離れろ!」

ヒスイはそう叫んで、騎士に向かって風の刃を放った。

「おや。」

騎士はそういうと、剣を抜いて風の刃を斬る。
騎士は笑みを浮かべた。

「あなたは確か・・・レヴィア王国魔道騎士、ヒスイ・ロル・グリモアールでしたね?
 お会いできて光栄です。」

その笑みは、張り付いた笑顔で、不気味にも見える。
ヒスイはニナに向かって叫んだ。

「ニナ!全力でこっちに走って来い!」
「させませんよ!」

騎士はニナを捕まえようと手を伸ばすが、
ヒスイはすかさず魔力を込めた剣を振り上げる。
風の刃が生まれ、騎士に向かって放たれた。

「ちっ!」

騎士は舌打ちをする。

「ヒスイ!怖かったですよ!」

ニナはその隙をついて、ヒスイの陰に隠れて涙を流した。

「ああ、ちょっと待ってろ。こいつを片付け・・・!?」

ヒスイは周りを見た。
周りは帝国軍が囲んでおり、ヒスイに武器を向けていた。

「・・・・マジかよ・・・・」
「とんだマヌケもいたもんですね、敵の存在を気付かないとは。」

騎士はにやっと笑う。
そこへ、もう一人の騎士が現れる。

「おい、マグニス。こんな雑魚一匹にいつまで時間をかけてやがる」
「それもそうですね。
 ・・・しかし本命がまだきていません。」

マグニスと呼ばれた男は、もう一人の騎士を見る。

「こいつをシメときゃいつか来るだろ?」
「ふふ、そうですね・・・・
 あなたたち、白いフードの騎士を殺さない程度に痛めつけてやりなさい。」

マグニスがそう命じると、帝国の騎士たちが、ヒスイに襲い掛かった。

「なめんじゃねえ!」

ヒスイは剣の刀身を握りしめると、手から血が流れ、
その血が地面に魔法陣を描いていった。

「ウイルメック!」

ヒスイがそう叫ぶと、ヒスイの頭上に翡翠色の竜が現れ、
暴風を巻き起こした。


「うおぉ!?」「うわぁぁーっ!!」

帝国軍は暴風に巻き込まれ、吹き飛ばされていく。
ニナも吹き飛ばされそうになったが、ヒスイをつかんでいたため、かろうじて飛ばされずに済んだ。

「くっ・・・流石風の竜神・・・・!」
「やはり、レヴィアで1、2を争うってのはあながち嘘でもいなさそうだな!」

マグニスともう一人の騎士は、地面に剣を突き刺して、暴風をやり過ごしていた。




ウイルメックが消えるとともに、暴風も止む。

帝国軍はほぼ吹き飛ばされ、気を失っていた。


「やりますね、ですが甘いですね。
 敵は確実に息の根を止めねば、後悔することになりますよ。」
「王国の流儀だ、気にすんじゃねえよ。」

ヒスイは額の汗をぬぐいながらふうっと一息ついた。

「ヒスイ、大丈夫ですか・・・?」
「ニナ、俺は大丈夫だ。」

ニナの質問にヒスイはニッと笑う。
そして、周りを見る。
周りには人はおろか、建物や木々もない・・・・ニナを逃がすのは困難であった。

「さて、ではそろそろ私もヒスイ殿と御手合わせ願いたいと思っていました。」

マグニスはそういうと、腰から下げていた剣を抜く。

「我が名は「マグニス・T・アーケディア」。帝国所属魔道騎士でございます。」

マグニスがそういうと、もう一人の騎士も剣を抜いた。

「俺様は「シミター・G・インヴィディア」。お前を殺す男の名だ、
 あの世で死神にでも伝えておけ!」


「俺はヒスイ・ロル・グリモアール。
 レヴィア王国の名において、貴様らを倒す!」

ヒスイはそう叫ぶと、二人に向かって剣を構え、突進した。