二次創作小説(紙ほか)
- Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.158 )
- 日時: 2018/04/12 22:15
- 名前: テール (ID: LAu9zylb)
「はあぁぁーっ!!」
ヒスイはマグニスに斬りかかるが、マグニスはそれを剣で受け止める。
そこへ、シミターは、右手の剣に魔力を込め、ヒスイに斬りかかる。
しかし、ヒスイはそれを空いている剣で受け止めた。
「くっ・・・!」
「すげえな、素手で俺の剣を受け止めたか!
だが、これは魔法剣・・・油断してっと腕が使い物にならなくなるぜ?」
「・・・・「レーヴァテイン」!」
ヒスイは足で二人の剣を蹴り上げて宙返りで後退した。
「レーヴァテイン」・・・それは、炎の魔力を帯びる魔法武器の一種である。
かつて冥府の三竜の一体である、「ヴァイス」の眷属の名前がつけられ、一般に流通している。
魔法武器とは、威力は一般的な武器と変わりはないが、
使用者の魔力次第で、絶大な威力を誇る武器である。
開発者であるクララは、魔道の素質がありながら魔術に頼らず、武器をとる騎士が戦いやすいようにと、
魔力を武器に込めるという技術を発案したのである。
「まったく、便利なものを作ったもんだ」
ヒスイは、シミターの持つレーヴァテインを見ながら、唇をかむ。
「ヒスイ・・・」
「ニナ、俺は心配いらねえから、支援頼むな。」
「わ、わかったのです!」
ニナはヒスイの言う通り、竪琴を取り出し、歌を歌った。
ポロンと竪琴が旋律を奏でる。
「ニナ、俺がやられそうになったら、全力で逃げろよ。
・・・あと、コハクにもよろしく伝えておいてくれ。」
ヒスイは顔を見せずにニナに小声で伝えた。
「え、縁起の悪いこと言わないでくださいです!」
ニナは竪琴でヒスイの支援を行う。
「うおりゃあっ!!」
ヒスイは倒れていた帝国軍の剣を奪い取り、
二人の剣を受け止める。
「二刀流ですか・・・やりますね。」
マグニスは不敵に笑う。
激しい剣の打ち合いに、拾った剣はすぐに折れてしまう。
「ちっ・・・ナマクラなんか持ってくんじゃねえよ!」
ヒスイは舌打ちをしながら別の剣を抜く。
シミターはヒスイに突進し、剣を振り上げる。
「ハハハハッ!隙だらけなんだよ!!」
「うっせえな、邪魔すんなタコ!」
ヒスイは悪態をつきながら、シミターの剣を受け止める。
衝撃が走り火花を散らして、剣にひびが入った。
「・・・・お前、なかなかやるなぁ。
特別に俺様の真の剣技ってやつを見せてやるよ」
シミターはヒスイの剣技を見て笑い、腰に下げていたもう一本の剣を抜く。
「・・・・それが貴様の真打ちか!」
ヒスイは本気で死を覚悟した。
この大陸では、「二刀流」はあくまでその場しのぎのような流派である。
「二刀流」を完璧にマスターするのは、物好きくらいだ。
その物好きが今目の前にいる・・・・
いよいよ後がなくなってきたヒスイは、まるで猫に追い詰められた鼠のようである。
だが、鼠も追い詰められれば、猫を噛むこともある。
「俺はまだ死ねん!」
ヒスイはナマクラの剣と聖剣ウイルメックを握りしめ、シミターに突進した。
先制攻撃とばかりに、ヒスイはシミターの顔を斬ろうと振り下ろす。
シミターはそれを剣で受け止める。
さらに、ヒスイはもう一本の剣でシミターの腹を狙う。
シミターはそれも受け止める。
剣と剣で激しく打ち合い、鋭い音と剣と剣が打ちあう音がその場に鳴り響く。
そして、ヒスイの持っていた帝国軍の剣が折れてしまった。
「そこだッ!」
シミターはヒスイの急所に向かって剣を持って刺突する。
「・・・ッ!」
ヒスイは見切ったかのように、ひらりとかわし、シミターの胸ぐらをつかんだ。
「何っ!?」
「武器だけ振り回すだけが、剣技じゃねえ!」
シミターを捕らえたヒスイは、思いっきり頭突きをぶちかました。
ゴンっと小気味のいい音が鳴り響き、
シミターは目を白黒させる。
「が・・・・な、なめやがっ・・・・」
「隙だらけだぞ!」
ヒスイがそう叫ぶと、シミターの腹を思いっきり蹴る。
「ごはぁっ!!」
シミターは吹き飛ばされ、倒れた。
「ははは、流石は王国魔道騎士様・・・・だが。」
マグニスが拍手をして、ニナを持ち上げる。
「ひゃあっ!」
「ッ・・・・ニナ!」
「おっと。」
ヒスイが近づこうとすると、マグニスがニナの首元に剣を近づける。
「動けばニナさんの首が吹き飛ぶことになります。
・・・取引しませんか、ヒスイ殿。」
「・・・・取引だと?」
マグニスは頷いて、にまーっと笑う。
「なあに、簡単なことです。
我らディクシィ帝国の騎士になっていただけませんか?」
「・・・・何?」
ヒスイは怪訝な顔でマグニスを見る。
「あなたの剣技は素晴らしい。
その力があれば、クラウス閣下もお喜びになられる。」
「・・・・クラウス、だと?」
マグニスの言葉に、ヒスイは眉を顰める。
「まあ、取引に応じなければ、この娘をこの場で斬り捨てますが。」
「だ、ダメです!こんな奴の言う事を聞いちゃだめです!!」
ニナは必死に叫ぶ。
「あなたは黙ってなさい。
で、どうしますか、ヒスイ殿。我らと共に未来を変える気は?」
ヒスイはギリッと歯ぎしりをする。
「お断りだ、クラウスの飼い犬など、死んでも御免だ!」
「・・・では、ニナさんとは、ここでお別れですね。」
マグニスがニヤッと笑い、ニナに向かって剣を振り上げた。
「・・・っ!!」
「ニナっ!!」
「ママ、パパ!・・・ニナに、ニナにちからをくださいっ!!」
ニナは両手を組んでそう叫び、剣は無慈悲にも振り下ろされた。
「ニナァァァァーッ!!」
- Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.159 )
- 日時: 2018/04/13 20:57
- 名前: テール (ID: LAu9zylb)
ニナはぎゅっと目をつむる。
すると、その瞬間・・・ニナの身体が青く光り始めた。
「・・・!!これは!?」
思わずマグニスは剣をひっこめる。
ヒスイもその様子に目を奪われた。
「ヒスイ!・・・・あれは!?」
そこへテオドールとコハクが走ってやってくる。
「あれは、「魔竜の覚醒」です!」
「魔竜の覚醒?」
コハクが指をさして叫び、テオドールが聞きなれない単語を繰り返した。
「「魔竜」というのは、力の弱い吟遊詩人の相棒的存在でして、
所謂想像の具現化というものなのですが・・・
吟遊詩人の心から生まれ、意思の強さによって色や形が変わる思念体の竜なんです。
吟遊詩人は、魔竜から魔力をもらって魔術を放つことができるんです。」
コハクが説明している間に、ニナの身体から、一匹の竜が姿を現した。
青い鱗を持ち、赤い瞳で世界を見据える竜。
翼を広げて、咆哮を上げた。
「「魔竜」・・・・!あの娘・・・「トルバドール」か!?」
「な、なんですかこの子!?」
マグニスもニナもその竜を見て驚く。
「だが、今のうちに潰しておけば問題はない!」
「させるか、シルフィーウインド!」
ヒスイは、風の魔力を剣に込めて振り上げて放った。
竜巻がマグニスを襲い、命中する。
「くぅ・・・!?」
「ニナ、今のうちに何か魔術を放て!」
ヒスイはニナに叫ぶ。
「えぇ!?えっと、えっとです・・・」
「おのれぇ、やらせませんよッ!!」
マグニスはニナに再び斬りかかろうと、剣を振り上げる。
ヒスイはそれを剣で受け止めた。
「やらせるかよ!」
「くっ、邪魔ですよ!」
冷静沈着である彼の顔に、焦りの表情が見える。
それほどまでに、魔竜の魔術とは脅威なのである。
「思いつきました!えーっとえっと!」
ニナはいつの間にか炎が渦巻く絵が描かれた表紙の魔導書を取り出し、
手を天に掲げた。
「ピュルガトワールなのです!」
ニナがそう叫ぶと、急激に周りの気温が上がり、
まるでガスが爆発したかのような音と、煉獄を思わせる勢いの炎が上がり、
周囲を劫火で包んだ。
「うおぉぉぉーっ!!?」
マグニスは劫火に包まれ、叫びをあげた。
「ニナ、逃げるぞ!」
「えっ!?あ、はい!」
「ヒスイ!」
「兄様!」
ニナを抱えたヒスイを追いかけるテオドールとコハク。
「殿下!コハクも!」
「ご無事で何よりです!」
「今は逃げましょう・・・一刻も早く。」
テオドールがそういうと、ヒスイとコハクは頷いて、全力で騎士団のいる場所まで向かった。
「くっ・・・う・・・・ゆ、油断しました、ね・・・」
マグニスがそうつぶやきながら、起き上がる。
炎に身体が焼かれたはずだが、鎧に煤がついた程度で済んだのである。
「これがなければ、灰になっていたところでしたよ」
マグニスはそういいながら、懐から真っ黒に焼けているお守りを取り出す。
お守りは、灰となって砕け散った。
「シミターさん、いつまで寝てらっしゃるのです?」
「あ、だだ・・・あいつ、手加減なんかしやがって・・・」
シミターもよろよろと起き上がる。
「クラウス閣下が戻るように言っておられます。
一旦帝国へ戻るとしましょう。また魔竜の術に当てられたら、
確実に灰になりますからね。」
マグニスはそういうと、魔術書を取り出した。
「ああ、そうだな・・・・ヒスイ・ロル・グリモアール・・・・
あいつ、ぜってえぶち殺す。」
「心配には及びません、奴らは帝国に来る予定ですから・・・
またお会いできるはずですよ。」
マグニスはシミターをなだめると、黒い光に包まれ、消えてしまった。
「ニュナンビュス・エクリッスィルナ・・・
ようやく彼女の中の魔竜が目覚めたようだね。」
その様子を少し離れた場所で見ていた、仮面の剣士・・・
ルクス・イルミナルがそうつぶやいた。
そして、ルクスはマントを翻して、どこかへ去っていった。
「殿下!よかったご無事で!」
エルドゥが涙で顔をぐしゃぐしゃにしていた。
「ヒスイもよがっだぁぁぁ〜〜〜っ!!!」
エルドゥはそういってヒスイに抱き着く。
「ぐ、ぐるじ・・・死ぬ・・・・・・ッ!!」
ヒスイはエルドゥに抱きしめられ、呼吸ができないでいた。
その様子に、あわあわとコハクが見ていた。
「殿下、ご無事で何よりです。」
アルトがテオドールに近づく。
そして、ニナを見る。
「おお、魔竜が覚醒したんですね!
おめでとうございます、ニナ。」
「え、えっと・・・よくわかんないですけど、これってなんですか?」
ニナが困惑して、魔竜を指さす。
魔竜はニナを見て首をかしげていた。
「この子はですね、あなたの使い魔ですよ。
ニナ自身は魔術を使う事ができませんが、魔竜を通して魔術が使えるようになったんです。」
アルトがそういうと、ニナはぱっと表情を明るくさせた。
「じゃあこの子はニナの「あいぼー」なのです!」
「ふふっ、相棒なら名前をつけてあげないとね。」
テオドールが優しくニナに伝えた。
「うーんうーん・・・・なにがいいですかねー・・・・」
ニナは腕を組んで悩む。
そして、ニナは叫んだ。
「思いつきました!「ピナ」にするのです!」
ニナは魔竜を指さし、叫んだ。
「ピナ」は「きゅうっ!」と返事をして、ニナに頬をこすりつけた。
「くすぐったいのですピナ!えへへ、よろしくなのです!」
ニナは笑顔でピナに抱き着いた。