二次創作小説(紙ほか)
- Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承-【オリキャラ数名募集】 ( No.17 )
- 日時: 2018/02/05 20:01
- 名前: テール (ID: LAu9zylb)
第一章 テオドールの出撃
大陸歴982年11月24日・・・
ディーテ共和国 首都レーベンの元老院議事堂にて、
青い髪の男・・・アタール・ディ・ユーファは、
テオドールと議員を集め、議会を開いていた。
「さて、皆さま、お集まりいただき、感謝いたします。」
アタールはひとつ咳払いをしてから、議員全員に一礼する。
「まずはご紹介させていただきたい。
こちらにおられるテオドール殿は、17歳という若者ながら
すでに数年、実戦を少なからず経験してこられた・・・
レヴィア王国第一王子であり、騎士団をまとめるお方です。」
アタールの話に、少し赤面するテオドール。
そして、議員に向かって軽く頭を下げた。
「知ってのとおり、ディクシィ帝国とレヴィア王国は、
「大陸聖戦」が休戦中の間も険悪な関係にありました。
・・・・そしてついに、帝国軍は王国を攻め入ったのです。
王国はいとも容易く陥落し、国王陛下は消息不明となってしまいました。
そんな中、国王陛下はテオドール殿に騎士団を任せ、
この国へと亡命するよう命じられたのです。」
アタールは苦虫を噛み潰したような表情で議員に訴えるが、
少し深呼吸をして続ける。
「我が国は、正義と信義を重んじる高潔な国であります。
こちらにいるテオドール殿をしばらくの間
帝国からの魔手から救うべく、我が国にとどまることを
許可していただきたいと思うのですが・・・・」
「閣下、質問が。」
突然、一人の議員が手を挙げ異議を唱えた。
「オルダン議員、どうぞ。」
オルダン議員と呼ばれた、金髪の少し老けた男がその場に立ち上がる。
「私の記憶が正しければ、その王子殿下は、
閣下の甥のような気もするのだが、いかがかな?」
「・・・はい、テオドール殿は私の兄の息子ですので、
甥という関係で間違いはありません。」
「・・・・聞きましたかな、議員諸氏。」
アタールの答えに、議員を見渡して訴えるオルダン。
「どうやら閣下は己の身内のために、
共和国を戦乱の渦中に放り込むおつもりのようだ。」
オルダンは議員達を煽るように声を荒げた。
「我が国は、中立を国是とし、
建国以来戦いに関与せず、平和を築いてきた。
それは英雄ティル・ソティスの思いであり、願いである。
もし今王国の王族など匿えば・・・
帝国からは敵視され、傭兵しか持たぬこの国は、
あっという間に蹂躙されてしまうだろう!」
議員たちはざわめき始める。
「私は、彼らを捕らえ、帝国に引き渡すことこそ、
共和国を守る唯一の道だと信ずるものですが・・・
議員諸氏はいかがお考えかな?」
オルダンは一息ついてにやりとアタールを見る。
しかし、アタールはにっこりと笑い、軽く手を叩いた。
「ははは、博学を持って知られる
オルダン卿とは思えぬ発言ですね。」
「なっ・・・なんですと!?」
アタールの失言に激昂するオルダン。
アタールは続ける。
「あの暴君と畏れられる皇帝が支配するディクシィ帝国と
対等に付き合っている国が・・・大陸のどこに存在するというのです?
・・・あればぜひお教え願いたいものだ。」
アタールは淡々と質問を投げかけた。
オルダンは慌てて反論する。
「しっ・・・・しかし!
例えそうだとしてもだ!
王子を匿って、共和国になんの利益があるというのだ!」
「そう、まさにそれをお話したく存じていました。」
アタールは一息おいて、ゆっくりと続けた。
「私が王子殿下の滞在を願うのは、身内をかばうためではなく、
この共和国の利益を願っての事。」
「共和国の利益・・・?」
「それを今からご説明いたします」
アタールは、地図を取り出し、長机の上に広げた。
「ふん、また閣下の詭弁か・・・」
オルダンは呆れ気味にため息をつく。
「まず、皆さんもご存じのとおり、
我が国の領地である2つの州は、現在・・・
目下バール山賊団によって占領されています。」
アタールは、共和国の地図を赤い筆でマークする。
「彼らの軍勢は、もはや共和国全域を飲み込む勢い・・・
ですが、この首都レーベンは、辛うじて
ベラーディ将軍の傭兵団によって、首都を守っていただいております。
しかし、彼らは首都以外に出撃することを拒み、
それに傭兵ですので・・・いつ我々を裏切るかわかりません。」
「だから何だというのだ!」
アタールの説明が終わり、再び異議を唱えるオルダン。
「そのことと、閣下の甥を匿う事と一体何の関係があるのだ!」
「先ほど申しましたように、殿下は優秀な騎士です。」
アタールは落ち着いて答える。
「彼は優秀な部下を多数擁しております。
山賊団の討伐など、他愛もないことでしょう。」
「・・・つまり?」
「また、オルダン卿のご指摘もあったように、
殿下は我が兄の息子であり、信用に足る誠実な人柄だと言う事を
私が補償いたします。
つまり、我々は安全かつ強力な軍隊を得るという
またとない機会に恵まれたわけであり・・・
すこし失礼な言い方をいたしますが・・・」
アタールは申し訳なさそうに笑う。
「これを利用しないのはよほどのバカか、
何かよからぬことを考えている者以外にないと思うのですが
・・・議員諸氏はいかがお思いですか?」
「ぐ、ぐぬぬぅ・・・」
アタールの意見に、オルダンは歯ぎしりする。
「・・・・では特に反対意見はありませんので、
テオドール殿とその一行を、我が共和国の賓客とし、
あわせてバール山賊団の討伐を依頼いたします。」
議員たちは、拍手をし、賛同の意を示した。
「ふん、まあいいだろう・・・ところで閣下。」
オルダンは意地悪く質問した。
「テオドール殿はいつまでに山賊団を討伐していただくのですか?
それを聞かねば、我々は同意しかねる。」
「それは、テオドール殿と相談の上、後日返答を・・・」
「いや、閣下に聞いてもわかるまい、本人に聞いた方が早いだろう。」
アタールを遮り、オルダンはアタールの隣に立つテオドールに
質問を投げかける。
「三月とあれば、山賊団を掃討いたします。」
テオドールは冷静に答える。
「なるほど!三月ですか・・・
では、三月までに山賊団を討伐し、議会に戻ってこられなければ、
閣下も失脚を免れぬ。
テオドール殿もこの国にいられなくなるが、依存はあるまいな?」
「・・・・!!」
オルダンの思いがけない返答に驚いて声が出ないテオドール。
そしてオルダンはにやにやと笑う。
「くくく・・・いいだろう。
では、楽しみにしているぞ、テオドール殿。」
- Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承-【オリキャラ数名募集】 ( No.18 )
- 日時: 2018/02/09 07:16
- 名前: テール (ID: LAu9zylb)
「なんなんですか、あの議員!態度が本当に腹が立ちます!」
アルトは、頬を膨らませながらぶつぶつとつぶやいた。
テオドール騎士団は現在、山賊討伐のために進軍をしていた。
首都を出るとそこは、のどかな草原が広がり、
ふと南側を見ると青い海が広がっていた。
アルトの態度を見かねたラーマは呆れながら
「お前それ、何回言ってんだよ・・・
もう耳にタコができちまうくらい言ってるよな」
とため息交じりにアルトにつっこむ。
そして黄土色の髪の女騎士・・・エルドゥは、アルトに質問した。
「それよりもアルト、
三月で山賊掃討なんてできるの?」
「自信は無いですが・・・・
事前に閣下にお話を聞きました。
山賊の親分である、バールは、ここから半月ほど歩いた先にある
鉱山の街レビジュを根城にしているらしいです。
そこを目指し、急げば約2ヶ月で行って戻れる計算です
その前に、リマニ市街が半日歩いた先にありますので、
今夜はそこで補給を済ませていきましょう。
・・・・何も起きないといいんですけどね。」
アルトは最後ごにょごにょとごまかした。
エルドゥは素っ頓狂な顔でアルトの顔を見る
「えっ、半日も歩くの!?」
「お前歩兵だろ、歩けよ。」
ラーマは半笑いで茶化した。
「ラーマぁ・・・マリーちゃんに乗せて」
「それはダメだ、こいつは人見知りだからな。」
ラーマの答えに青い飛竜・・・マリーはぐるると喉を鳴らした。
リマニ市街、地下牢にて・・・
冷たい石の壁に囲まれたこの場所は、
何か赤黒い染みが部屋中に染み込んでおり、血なまぐさい臭いが立ち込めていた。
「おい、いつまで俺をここに閉じ込めておくつもりだ?
俺ァお前みたいな暑苦しい男より、かわいこちゃんとお茶でも飲みたいぜ?」
両腕を拘束されているにもかかわらず、
不敵な表情で目の前の山賊らしき大男を見る男が笑いながら質問する。
その男は、右目を皮の眼帯をつけており、
金髪の髪を後ろに縛る、海賊のような奇抜な服を着ていた。
左腕の袖は、何かに食いちぎられたかのように根っこから破られている。
そんな男を見て、大男は鼻で笑う。
「残念だが、かわいこちゃんはいねえが、
お前にくれてやれるのは、地獄への片道切符だぜ」
「ほお・・・てめえ、この俺が命乞いでもすると思ってんのか?」
大男は刀身が長く重量のある大剣を眼帯の男の首近くに寄せる。
一振りで眼帯の男の首は落とされるが、男は表情を動かさなかった。
「顔色をかえねえか・・・お前の部下は地獄で泣いているだろうなあ・・・、
ジョリーよ。」
ジョリーと呼ばれた男は笑いながら答える。
「そうだな、俺には「恐怖」ってもんがねえからな。
殺すならさっさと殺せ、下衆野郎」
「・・・ならばお望み通り」
「おかしらァ!」
大男が剣を振り上げた瞬間、バンダナを巻いた子分らしき男が
部屋へと飛び出してきた。
「大変です!騎士団の連中がレーベンから・・・!」
「なにっ!?」
「はーっはっはっはっは!
年貢の納め時だなスタロン!さっさと捕まるかくたばりやがれ!」
ジョリーは、話を聞いて今まで以上に笑う。
スタロンは、一筋の汗を額から流し、慌てて指示を出した。
「ちっ・・・!おい、街で遊んでる連中を全員動かせ!
騎士団を迎え撃つぞ!」
- Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承-【オリキャラ数名募集】 ( No.19 )
- 日時: 2018/02/08 20:47
- 名前: テール (ID: LAu9zylb)
一方、テオドール一行は、リマニ市街近辺までたどり着いていた。
「テオ、腕に矢が・・・」
ピンク色の髪を、白いリボンでまとめた、可憐な少女・・・
ルーネがテオドールの腕を見て指をさした。
「あ・・・先ほどの戦闘で受けていたんでしょう・・・
私も指揮に無我夢中で・・・」
「じっとしててください、今治療します。」
ルーネは、テオドールの腕から矢を引き抜き、
手に持っていた、青い宝石が先端に埋め込まれた杖をかざした。
すると、杖は淡く青い光を発し、テオドールの腕の傷が塞がっていった。
「・・・ありがとうございます、ルーネ。
もう大丈夫です。」
「でも私、こんなことしかできなくて・・・お姉さまと逃げていた時も、
何もできなくて・・・」
ルーネは暗い表情でうつむいた。
テオドールは首を振り、柔らかい表情でルーネを見つめる。
「いいえ、こうして治療してくださるだけでもありがたい。
私や騎士団の皆さんはルーネに助けられてばかりです。
これからも、共に戦っていきましょう、姉上のために、祖国のために。」
「・・・・はい!」
ルーネは明るい表情で返事をした。
その様子をアルト、ラーマ、エルドゥは微笑みながら見ていた。
「いいないいな、やっぱり若いって!」
「エルドゥ、お前に言われると俺が傷つくからやめろ」
「でもあのお二人も、なかなかいい雰囲気ですね、
早くくっついちゃえばいいのになぁ」
「軍師!リマニ市街は、山賊と海賊によって占拠されている模様!」
目の前を歩いていた兵士が指さす方向に街があった。
しかし、兵士の言う通り、武器を持った男がわらわらと、街からこちらへ向かってくるのが見えた。
アルトは、すぐさま臨戦態勢に入る。
ラーマはマリーと共に上空に飛び立ち、エルドゥは斧を構えた。
「全軍、警戒!リマニ市街は既に占拠されています!
臨戦態勢に入ってください!」
大きな声での伝令に、騎士団は武器を構える。
その声があちら側にも届いたのか、市街から山賊が次々と現れた。
「殿下、ご指示を!」
アルトはテオドールに指示を求める。
アルトは軍師だが、指示を出すのは、現騎士団団長であるテオドールだ。
テオドールは、腰に下げていたレイピアを右手で持ち、
天高く掲げた。
「全軍・・・これより山賊の討伐及び、市街の制圧に入る!
・・・・気を抜くな、突撃!」
「おおおおおぉぉぉーっっ!!」
テオドールが掛け声を上げ、力強く剣を市街の方向へ突き出した。
その合図とともに、騎士団は市街へと突撃した。
- Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承-【オリキャラ数名募集】 ( No.20 )
- 日時: 2018/04/01 12:39
- 名前: テール (ID: xV3zxjLd)
激しい攻防戦・・・
騎士団と山賊たちの戦いは、すでに始まっていた。
アルトは魔導書に手を当てた。
すると、赤い光を発し、アルトは山賊に向かって手をかざした。
「行きますよ、ファイアー!」
アルトの掛け声と共に炎の弾が山賊たちを襲う。
「このクソガキ!」
山賊がアルトに向かって斧を振り上げる。
「・・・ッ!」
「アルト!」
ヒュンッという音が鳴り、アルトの横を長い棒のようなものが駆け抜ける。
ラーマは上空から投げ槍・・・ピラムを山賊に投げつけ、山賊に命中した。
「ぐぎゃっ!」
山賊の急所に当たり、山賊はその場に崩れ落ちた。
「アルト、油断するな!まだまだいるぞ!」
「ええ・・・」
「でやあああぁぁっ!!」
斧を振り回すエルドゥ。
力任せのその技は、山賊たちを薙ぎ払い、蹴散らしていった。
「な、なんだあの女・・・!」
「落ち着け、多人数で攻めれば大丈夫だろう!」
山賊たちは、エルドゥを囲んだ。
「なっ・・・女の子一人に多人数で相手するなんて、あんたたちプライドってもんはないの!?」
「へっへっへ・・・そんなもん、とっくに犬の餌にしちまったぜ」
「よっしゃ、全員かかれ!」
山賊たちは一斉にエルドゥに襲い掛かる。
「エルドゥ!」
その瞬間、テオドールの切り込みに山賊たちの陣形が崩れた。
テオドールはエルドゥに手を差し伸べる。
「無事か!?」
「は・・・はい!殿下、ありがとうございます!」
エルドゥはテオドールの手を取り、立ち上がった。
「お、おい・・・なんかヤバイぜ」
「そうだよなあ・・・こりゃズラかった方がいいんじゃねえか?」
次々に倒れていく仲間たちを見て、
鉢巻を巻いた山賊と、スカーフを巻いた盗賊がヒソヒソと話をしていた。
そこへ、大男スタロンが現れる。
「ほお、てめえら・・・今すぐここで死にてえのか」
「・・・・!!?」
「お、おかしら・・・!?」
「奴らに殺されるか、俺に殺されるか、どっちか選ぶといい。」
スタロンは斧を構え、二人を脅す。
「・・・・うおおおおおっ!」
「畜生、やるしかねえ!!」
二人は遮二無二騎士団の下へ走っていった。
「殿下、あそこに市街館が!」
「!・・・・あれはこの辺の山賊の親玉か!」
「おそらく。奴を叩けば山賊たちも・・・」
「・・・わかった。」
テオドールは、市街館へと走っていった。
「俺は殿下の手助けに行く、アルト、エルドゥ!
部下の指示を頼むぞ!」
ラーマもそれに続いて飛び立った。
「よし、僕だって・・・!」
アルトは魔導書を開き魔法を放った。
「ちぃ、どいつもこいつも役立たずばかりだ!」
スタロンは焦っていた。
そこへ、テオドールが現れた。
「もう逃げ場はない、おとなしく降伏してください!」
「・・・・誰がするかよ!」
スタロンはテオドールへ斧を振り下ろした。
テオドールはそれを避け、スタロンの懐に潜り込み、
レイピアを刺突した。
しかし、それをすんでのところで避ける。
そしてスタロンは、斧で追撃した。
「殿下!」
ヒュンッと風を切る音共に、ピラムがスタロンの斧をはじいた。
「ちっ・・・」
「隙ありです!」
その隙を突き、テオドールのレイピアを振るう。
レイピアは、スタロンの腹を貫いた。
「ごあぁっ・・・・」
スタロンはまだ息がある。
しかし、テオドールはレイピアを引いた。
「その傷ではもう戦えない、降伏してください。」
「は、はは・・・甘いんだよ小僧!」
スタロンは力いっぱい斧を振り上げた。
「確かに私は甘い・・・だからこそ、姉上の理想を・・・・」
テオドールは斧を受け止め、一瞬だが悲しそうな表情を見せた。
「でやあっ!!」
そして、斧を弾き飛ばし、斧は砕けた。
「ち、畜生・・・・!」
「殿下、素晴らしい剣さばきでした。」
「ラーマ、ありがとうございます。
この者を拘束してください。」
「ハッ!」
ラーマは、兵士と共にスタロンを拘束した
「殿下!ご無事で!」
そこへアルトとルーネがテオドールの下へ走ってきた。
「テオ、怪我は・・・」
「ルーネ、私は無事です。」
「・・・・それならよかった・・・」
「山賊たちは、親玉を叩いたことにより、士気が下がり、
降伏しています。いかがいたしましょう。」
「降伏したものを拘束し、レーベンに送ってください。
然るべき処罰は、議会に任せましょう。」
「はいっ!」
テオドールの指示にアルトは兵たちに山賊を拘束させた。
「おお、あなたが・・・レーベンからきたという騎士様ですか」
突然、市街館から、金髪の細い男が現れた。
「あなたは?」
「私はこの市街の市長をやっております。
先ほど、騎士様方に解放していただきまして。」
市長はテオドールに頭を下げた。
「本当にありがとうございます、テオドール様。
あなたのおかげで、この市街は救われました。
感謝してもしきれません。」
「頭を上げてください、市長。
私たちはアタール閣下の命により動いていたまでです。」
テオドールは慌てて訂正した。
「おお、なんと謙虚な方だ・・・
何かお困りごとがあれば、なんでもお申し付けください!
リマニ市街は、テオドール騎士団の皆さまを歓迎いたします!」
山賊たちを拘束し、レーベンへ送ったその後・・・
テオドールとアルトは、市街館の地下牢へ
捕らわれた市民たちを解放していた。
「ここで最後みたいです、殿下。」
「・・・・」
アルトは、牢の鍵を開けた。
その中には、金髪の男・・・ジョリーが座り込んで、テオドールたちを見ていた。
「おう、お前が・・・レーベンからきた騎士様か」
「・・・あなたは?」
「ただの海賊だよ」
ジョリーはそう名乗った。
「海賊がなぜ、こんな場所に拘束されていたんです?」
「この街の連中に大きな借りがあってな・・・
この街を守る代わりに衣食住を提供してもらってたんだよ」
アルトの問いにジョリーは答える。
「私は、テオドール・ルツ・レヴィア、あなたは?」
「レヴィ・・・そうか。
俺は、ジョリーローグ・スカイ。ジョリーって呼んでくれ。」
テオドールの名を聞いて、微かに眉を動かすが、すぐさま自分も名乗りだした。
「ところでテオドールさん、急ぎの頼みがあるんだが」
「なんでしょうか?」
「・・・この市街の子供たちが海賊にさらわれちまったんだ、
南の孤島に子供たちを助けに行ってくれねえか?」
「!・・・詳しく教えてください!」
アルトはジョリーに詰め寄った。
「実は、昨日だったかに、海賊が子供たちをさらって
「アバルの奴隷市場」に売りに行く・・・って話を聞いちまってよ」
「「アバルの奴隷市場」・・・・名前だけは聞いたことがあります。
ディクシィ帝国のどこかにある人身売買する市場でしたね・・・・」
「そうだ、だからこそ今行かなければ、子供たちは・・・」
「殿下、どうされますか?」
アルトの問いに、テオドールは了承した。
「すぐにでも行きましょう。そんな非道は許されません!」
「・・・いいのか、俺は海賊だ、お前らを貶めようとしているかもしれないぜ?」
ジョリーは揺さぶりをかけるが、アルトは首を横に振る。
「本当の悪党は、揺さぶりなんかかけないですよ。
案内をお願いします、ジョリー。」
それを聞いて、ジョリーは柔らかい表情を見せた。
「・・・ありがとうな。
よっしゃ、善は急げだ、船を出すから待ってろ王子殿!」
ジョリーはすっと立ち上がり、外まで走り出した。