二次創作小説(紙ほか)
- Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.173 )
- 日時: 2018/04/27 07:02
- 名前: テール (ID: 9RGzBqtH)
第十三章 魔女と黒狼
大陸歴983年5月24日
ハイランド公国跡を後にし、先へ急ぐテオドール一行。
東へ進み、森を抜け、川を渡り、帝都へ着実に近づいた。
そして・・・辺境の村へとやってきた一行。
村へここまでの経緯を話すべく、村長の下にやってきたテオドールたちは、
村の中央にある「魔女のアトリエ」へと案内された。
「村は魔女様によって統治されております。
まずはこちらでご挨拶を済ませてくだされ。」
「村長が村を治められてるのでは?」
村長は首を振る。
「私はあくまで名目上。諸々の管理は魔女様がされております。」
村長はそういうと、アトリエのドアをノックする。
「魔女様、レヴィアの王子テオドール様とその御付きの者が、ご挨拶に。」
「入るがよいぞ」
中から、幼い少女の声が響く。
テオドールについてきていたアルトは、女の子?と首を傾げた。
「では、失礼のなきよう・・・」
村長はそういうと、一礼してから自宅へと戻った。
テオドールは、「失礼します」と一言・・・ドアを開けた。
中に入ると、何とも言えぬにおいが立ち込めており、
テオドール達は顔をしかめて前へと進む。
大きな窯、ボコボコという音、乱雑にばらまかれている魔導書や資料などの分厚い本の数々・・・
薄暗いが、奥にいる人物が見える程度には明るい。
「よくきたのう、レヴィアの王子よ・・・・」
ふふふと笑う人物。
テオドールとアルト、そしてエルドゥ、ラーマはその人物を見て驚く。
「お、女の子!?」
「ふっつーに反応しててつまらんな。」
テオドールたちの反応に、目の前の人物ははーっとため息をつく。
赤紫の腰まである長い髪をピンクのリボンでまとめ、
金色の瞳、紫色の大きなムウマージの特徴的な帽子、
おそらく腕の倍くらいはある長い袖をヒラヒラと振り、
帽子と同じ色のローブと濃い紫のカボチャパンツと・・・
伝承にある「魔女」という存在そのものである姿であった。
やる気のない半目でテオドールたちを見る。
「いえ、申し訳ありません、魔女様・・・
意外に幼い姿に少々驚きまして・・・」
「ふん、まあよいわ。そういや名を名乗ってなかったのう。
わしは「アリスドール・ジ・ディクシィ」。
「アリス」と呼ぶがよい。よろしく頼むぞ王子。」
アルトは名前を聞いて驚く。
「「アリスドール・ジ・ディクシィ」!?」
「知ってるの?」
エルドゥの質問にアルトは慌てる。
「彼女、「グレンシア・ジ・ディクシィ」の実妹ですよ!
しかも、年齢はおそらく57歳です!
なぜこのような少女の姿に・・・!?」
アルトの説明に「きひひひっ」と笑うアリス。
「そうじゃぞ軍師。わしこそが「バカ皇帝」の王妹じゃ。」
「ば、バカ皇帝・・・」
アルトは呆れていいやらなんやらで複雑な気分である。
「じゃよ。「バカ兄」は戦争を起こして、「聖戦」とか抜かして
いろんな方面に喧嘩を売った愚王じゃわ。
ヤツが死んで、そのあと「バカ息子」が帝国の政治を担ったんじゃが、
なんじゃったかな・・・
「クラウス」とかいう参謀を招き入れてからバカ息子がおかしくなっちまってのう。
バカ兄と同じような独裁を始めたんじゃよ。
宰相もクラウスがくるまではバカ息子を導く良いヤツだったんじゃが、
帝国はクラウスがきてからおかしくなっちまったわい。」
アリスははあーっとため息をつきながら愚痴をぼやく。
そこへ、黒髪の少年がドアを開けてお茶をテオドール一行に出す。
黒い髪を赤い宝石の髪飾りでまとめ、右肩に垂らし、
赤い瞳は炎が燃えているような色をしている。
服装は黒く薄いインナーの上に、雪里ツワブキで見たような深緑の上着を着こなす、
身体は割とがっちりしている、弓兵のような姿であった。
「おう、遅いぞ「ルカ」ちゃま。
お客様が入室してから3秒以内にお茶を出せと何度も言ってるじゃろ」
「無茶言わないでください師匠。
3秒でお茶なんかだしたら、美味しくないモノになってしまいます。
「お客様には最高のもてなしを」って何度も言ってるのは師匠じゃないですか。」
「口答えするなよひよっこが。
主の得意技の占いで予知すりゃよいじゃん」
「占いは予知能力じゃないですよ。」
アリスとルカが言い争っていると、テオドールが困惑していた。
「あ、あ、でも、このお茶、とてもおいしいですよ。
ありがとうございます。・・・・えーっと」
「あ、僕は「ルカ・アストロロージア」。アリス師匠の弟子です。」
ルカはにこりと笑うと、部屋を出ていった。
「ところで、王子。」
アリスは頭の後ろに腕を組み、足を組んで椅子にもたれかかる。
「帝都を攻めるなら、公開処刑日当日が良いぞ。」
「・・・・!?な、なぜですか!?」
テオドールは驚きと怒りの声を上げ、椅子から立ち上がる。
アリスははあっとため息をついて、やる気のない半目でテオドールを見た。
「わしらの準備がまだできてないんじゃよ。
わしらも帝都を攻める準備を密かに行ってたんじゃが、
まだ帝都を攻めるには兵力が足りん。
最低でも1万の兵がないと、帝都にいる兵士の圧倒的な量で
押し負けてしまうぞ。」
「・・・・確かに、今帝都を攻めるにしても、場数が足りなさすぎます。
殿下、残り一か月はアリス殿との相談の上、
兵力を増強及び、士気の上昇を率先すべきだと、僕は思います。」
「軍師の言う通りじゃ。
・・・・急ぐ気持ちはわかる。だが、焦りは周囲を見失う。
用心せよ、王子。」
アリスはそういうと、背伸びをする。
「とりあえず、今は休むがいい。
1か月は長い・・・・長いようで短いからの。」
アリスの言葉に、一行は頷いた。
テオドールは、腰から下げている「星剣アルスラン」を見る。
「姉上・・・・」
- Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.174 )
- 日時: 2018/04/27 22:10
- 名前: テール (ID: AuRKGmQU)
アリスの計らいで、村の民家に兵士を収容した騎士団。
元々この村は、帝国軍の駐屯地であったが、戦争が休戦して使われなくなったため、
アリスが勝手に改造して村にしたらしい。
アリスは来るべき時がくるまでこの村を管理していたという。
村長は、アリス直属の部下であり、村人たちも村長の部下である。
帝国と対等に戦うには、他国の協力あってこそと、
密かに連合王国、共和国にも協力を促していたのであった。
アリスなりに、帝国の未来を想っての戦乱の準備というわけである。
「だが、クラウスは一筋縄ではいかん。
ヤツはかなり用心深く、魔力も底を知れん。
で、モノは相談なんじゃが。」
アリスはテオドールににーっと笑いかける。
「騎士団の魔道士、魔道騎士を全員数日借りてもよいじゃろうか?」
「ぜ、全員ですか!?」
テオドールは驚いて冷や汗をかく。
「なーに、わしのミラクルな訓練で魔力増強を行うだけじゃ。
なんてったってわし、「マジカルスター」じゃし♪」
「マジカルスター、ですか?」
「おうよ、この大陸で一番の大魔法使いじゃ!
ま、わしが勝手に名乗ってるだけじゃがの・・・
だが最近、わしのこの称号を騙る者がおるから、一発シメてやらんと気が済まん。
・・・てことで、早速魔道兵を全員、この場所に集まるよう伝令しておくれ。」
アリスは地図を指さす。
そこは、集会場らしき場所であった。
「わ、わかりました。アルト、お願いしますね。」
「は、はい!」
アルトは返事をすると、慌てて外へ出た。
「で、まあ、魔道の素質がない兵士共は、
武器の整理、毎日の訓練を欠かさずにの。
あと、「助っ人」もおるからのう、そいつに鍛えてもらうがよい。
そいつにはもう伝えておるからの。」
「助っ人・・・?」
「ふっ・・・」
アリスは含み笑いをすると、外へ出て行ってしまった。
「と、とりあえず殿下。武器の整理をしましょうよ。」
「・・・・そうですね。」
テオドールは頷くと、ラーマとエルドゥに輸送隊の物資の整理を指示した。
「あの、ルカさん」
ルーネは、ティシャルやディーノと共に弓の練習をしているルカに声をかける。
ちょうど三人と騎士団の弓兵達は、的に矢を当てる訓練をしているのであった。
ルカは弓を引きながらルーネに応える。
「どうしましたか、ルーネさん」
ルーネは、ルカが壁にかけている青色の弓を指さして尋ねた。
「あれは、神器「雷弓アズサユミ」ですよね。
・・・・なぜあなたが持っているんですか?」
「あれは、友人から預かっているものです。」
ルーネは、少し考える。
「「ミカヤ・アヤメ」さんとご友人なのですか?」
「そうですよ。・・・ミカヤさんとご関係が?」
ルカはルーネに尋ねながら、矢を放った。
矢は的の中央に刺さる。
「はい、昔、ちょっとお話をしたことがある程度ですが・・・」
「なるほど・・・」
ルカは再び弓を引き、狙いを定める。
「あの、ミカヤさんは今・・・」
ルカはそれを聞くと、矢を放つ。
的から大きくそれて、ディーノは無言でルカを見る。
「・・・・ミカヤさんなら大丈夫ですよ」
ルカはそれだけ言うと、再び弓を引いた。
「・・・・」
- Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.175 )
- 日時: 2018/04/28 21:50
- 名前: テール (ID: AuRKGmQU)
テオドールとラーマ、エルドゥが帝都周辺の地図を見ながら、作戦会議をしていると・・・・
「テオドール殿下ぁぁ〜!!」
遠くから女性の声が聞こえた。
「あれ、この声・・・・」
「あ、殿下・・・空の上!」
エルドゥは上空を指さす。
上空には白い翼を広げた、赤い装甲を装備するグリフォンが、
こちらに向かって飛んできていることがよくわかる。
「あれは・・・ファラ隊長!」
ファラとファラのグリフォン「フィルマー」が地上に降り立ち、
ファラはフィルマーから降りて、テオドールに近づいた。
「お久しぶりです、殿下。」
ファラは頭を下げた。
「こちらこそ・・・どうしたんですか?」
「はい、共和国の治安が良くなり、閣下の許可を頂きましたので、
ウラノスネーバ隊を率いてこちらに参りました。
・・・まあ、少数ですけれども・・・・・」
ファラはそういうと、空を指さす。
数十名のバードナイトが、こちらに向かって飛んできていた。
「殿下、私たちウラノスネーバ隊は、全力を以ってあなたの力となりましょう。
・・・・必ず、レヴィアの国王セリカリーズ陛下をお救いいたします。」
ファラはテオドールの前で跪き、剣の刃を自身に向け、
柄をテオドールの方へ持ち上げた。
「ありがとうございます、ファラ。」
テオドールは胸に手をあてて、頷いた。
「ファラ隊長ぉぉぉ〜っ!!」
すると、ファラの名前を呼びながらこちらへ突進してくる人影が・・・。
サラとリラ、そして二人についていたウラノスネーバ隊であった。
「隊長!お久しぶりです〜!」
サラはファラに向かって突撃し、ファラを押し倒して抱き着く。
「ちょ、サラ!動けないわ・・・!」
「すみません隊長!久しぶりすぎて・・・隊長ふかふかです!」
「くすぐったいから、ちょっと・・・離れなさい!殿下の御前よ!」
「もうちょっとこのまま・・・」
「離れなさいったら!!」
ファラにサラが抱き着いて離れないので、リラはサラを引きはがす。
「コラ、サラ!隊長が困ってるじゃないの!」
「ぶー、いいじゃないですか、減るもんじゃないですし。」
サラは頬を膨らませて抗議するが、リラはキッとにらみつけた。
サラはそれを見て、身体をビクッと震わせる。
テオドールたちはその様子を見て、力なく笑っていた。
そして、ラーマにウラノスネーバ隊を村の各所を案内させ、
テオドールはふうっとため息をつく。
「殿下、ウラノスネーバ隊が来てくれて、安心ですね!」
「だが、まだ兵士が足りない。
アルトの推測によると、帝都にいる兵士はおよそ3万。
アリス殿は「最低1万」と言っていたが、1万では及ばないだろう・・・」
テオドールはそう推測する。
「父上ならこの状況・・・どうする?」
亡き父の立場になって考えてみる。
ノルド・ルツ・レヴィアなら・・・
そう考えながら帝都周辺の地図を凝視していた。
「ふん、聞いた通り岩みてえなカタブツだな。・・・テオドール王子。」
突然、背後から声をかけられ、すぐに振り向くテオドール。
そこには、黒髪、赤い瞳の灰色のファー付きジャケット、
黒いチョーカーをつける、狼の耳と尻尾が特徴的な少年が立っていた。
腰に手をあてて、テオドールを鼻で笑う。
「あなたは・・・?」
「俺は「ロードアイランド・グランダー」。「ロード」って呼べや。」
「変な名前ね。」
エルドゥはきょとんとした顔でつぶやく。
ロードはキッとエルドゥを睨む。
「・・・ロード、何の用でこちらに?」
「決まってらァ。」
ロードは突如腰から下げていた黒い剣を抜いて構える。
「てめえを殺すためだテオドール。・・・・サシで勝負しやがれ。」
「!?」
- Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.176 )
- 日時: 2018/04/29 10:58
- 名前: テール (ID: AuRKGmQU)
「ちょっと、あんた何を!?」
「メスゴリラは黙ってろ」
「メ、メスゴリラですってぇ!?」
エルドゥはロードの挑発に乗り、激昂する。
テオドールは静かにエルドゥをなだめた。
「エルドゥ、易々と挑発に乗ってはいけません。」
「・・・し、失礼しました!」
エルドゥは慌てて胸に手をあてて落ち着こうと深呼吸する。
「・・・・。」
ロードはその様子を見てふんっと鼻を鳴らす。
「王子、手加減は抜きだ、どちらかが死ぬまでの勝負だ。抜かるなよ。」
「・・・わかっている。」
ロードは手に持つ黒い剣を構え、テオドールは腰に下げていた「星剣アルスラン」を手に取り、構える。
先手はロードがとり、ロードはテオドールをたたき切ろうと飛び上がる。
テオドールはロードの剣を受け止め、素早く、ロードの懐へと潜りこんだ。
ロードはそれを見切って、素早くを身を引き、
テオドールの心臓に向かって剣を刺突させる。
「っ・・・!」
テオドールは刺突した剣を右手でつかんで寸でのところで受け止めた。
「ほお・・・」
ロードは感心して声を漏らす。
わずかだが楽しそうに笑っていた。
「でやっ!」
テオドールは左腕に持つ星剣をロードに向かって振り上げた。
が、ロードは素早く宙返りでそれを避けた。
着地と共に、再びテオドールに突進するロード。
テオドールは腰を低くして彼を迎え撃つ。
剣と剣がぶつかり合い、金属音が鳴り響いた。
二人は激しく剣をぶつけ合って、隙を一切見せない戦いを繰り広げる。
「剣を振るだけが剣術じゃねえぞ」
ロードはそう笑うと、テオドールの足を払う。
「そんなことはわかっている!」
テオドールは足を踏みしめ、ロードの腕をつかんで振り下ろす。
「おわっ!?」
ロードは驚いて地面にたたきつけられる。
テオドールはそこを狙い、顔を狙って剣を突き刺す。
ロードは素早くそれを避けるが、顔に切り傷がついてしまった。
「・・・こりゃ一筋縄じゃ行かんわけだなあ・・・」
ロードはそうつぶやくと、口元を三日月のように歪めて笑う。
「・・・おもしれえ!」
ロードはそういうと、先ほどとは打って変わり、かなり俊敏な動きに変わった。
その動きを見切れず、テオドールは顔をこわばらせる。
ロードは右から、左から・・・・
あるいは前方から、後方からテオドールを斬りつけて、テオドールに傷とダメージを与える。
「動きが読めない・・・・ッ!?」
「はははっ、この程度かレヴィアの王子!期待外れだったぜ!」
ロードの動きはだんだん早くなる。
テオドールは動きが読めず、焦る。
「とどめだ!」
ロードはとどめとばかりに、再びテオドールの心臓に向かって剣を突き立てた。
だが、テオドールはそれを読んで、腕を前に出す。
腕に剣が突き刺さり、血が舞い散る。
「ぐっ・・・ああああぁぁっ!!」
テオドールは苦悶の表情を見せながら、ロードの肩から腹にかけて
剣で叩き切った。
「うごっ・・・・!?」
ロードは血を流し、ふらついた。
テオドールは素早く突進し、丸腰になったロードの腕をつかんで
思いっきり地面へと叩きつける。
「がぁっ・・・!!」
ロードは口から血を吐く。
テオドールはロードに向かって剣を突き刺そうとする。
ガッという音共に、ロードの顔の真横に星剣アルスランが突き刺された。
テオドールは腕から黒い剣を抜いて、静かにロードに宣言する。
「私の勝ちです。」
「・・・・ちっ。」
ロードは舌打ちの後にため息をつく。
「殿下!腕の傷が・・・!」
「私はいい、それよりも、彼を治療してやってくれ。」
「でもあいつ・・・!」
エルドゥは戸惑っていた。
「その心配はないぞよ〜」
そこへアリスがやってきて、倒れたロードに近づく。
「イヌコロ、主ももうちょっとやってくれるかと思ったが、
情けないのう。・・・・王子にとどめ差すときに油断したじゃろ」
「・・・してねえ。」
「嘘つけ、思いっきり油断しとったわ。」
「・・・・あ、アリス殿?」
「ん?」
テオドールは戸惑ったようにアリスに尋ねる。
「その方との関係は・・・?」
「ああ、こいつが件の「助っ人」。わしの同胞じゃよ。」
「え、えぇぇぇっ!?」
エルドゥは驚いて大声を上げる。
「こいつに頼んで、王子の力量を見定めさせてもらったが、概ね合格じゃよ。」
「たく、人使いが荒いっての。
・・・・ま、なかなか面白かったぜ、王子。」
ロードはそういって笑う。
「ほれ、回復してやろう。」
アリスはそういうと、薬の瓶のふたを開けて、二人の傷口に薬を塗り込んでいった。
「で、王子も騎士団もそれなりの信念と力強さがあるとわかった。
だがな、やはり場数、兵力が圧倒的に足りんのじゃ。
これでは、わしらは負け戦に足を踏み入れるようなもんじゃよ。」
アリスはテオドールにため息をつきながら話す。
テオドールとロードは、アリスの調合した薬で、傷が塞がった。
だが、疲労感は回復していないのか、ロードは眠そうに目をこする。
「この戦に勝利するには・・・まずは地形を知り、利用すること。
そして相手を知り、自身も鍛える。
兵一人ひとりが屈強になれば、勝てぬ戦はないという・・・
英雄「ルドガー・アルタイル」の根性論じゃ。」
アリスはそういうと、ティーカップをおもむろに持ち、中身を飲み干す。
「我々はあと1か月、何をすれば・・・?」
「イヌコロ、貴様が王子らを鍛えるんじゃよ。」
アリスはロードに向かって指をさす。
ロードは舌打ちをして、頭をぼりぼりとかく。
「・・・・ったく、なんで俺が・・・・」
「貴様をファータ教国に突き出してもいいんじゃぞ」
「ぐっ・・・う・・・・わかったよやりゃいいんだろ!!」
ロードは半ばヤケになりながら肯定した。
「それでこそ、男ってもんじゃ♪
てことで王子、残り1か月・・・休みなく鍛えるがよい。
・・・・姉上を救いたいという気持ちが本物であればの。」
「はい、ありがとうございます、アリス殿。」
テオドールはそう答えると、ロードにも頭を下げた。
- Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.177 )
- 日時: 2018/04/29 22:55
- 名前: テール (ID: AuRKGmQU)
そして数日後・・・
魔道兵たちがアリスの修行から帰ってきていたが、
皆やつれた顔でため息をついていた。
「・・・・アルト、一応聞いておくが、何があった?」
ラーマは疲弊しきった表情を見せるアルトに声をかける。
アルトはうなだれながら弱弱しい声をしぼりだす。
「・・・・この世に地獄ってものがあるんでしたら・・・
多分あれのことを言います。」
「な、なにがあったんだ・・・・」
ラーマは想像したくはないが、とんでもないことがあったんだなと悟る。
「ゼウラ、お疲れのところ悪いんじゃが〜」
アリスは相変わらずやる気のない半目でゼウラの下へやってくる。
「な・・・あの・・・あれ以上になにをやらせるってんだ・・・!?」
ゼウラも疲弊しきっている顔で声を絞り出していた。
「場所を変えるか、こっちにくるがいい。」
アリスはそういうと、手招きをする。
ゼウラははあっとため息をついてアリスについていくことにした。
たどり着いた場所は森や空を見渡せる、崖の上であった。
風が心地よく、ゼウラは思わずその景色に安堵の笑みを浮かべる。
「お主の魔力はなかなかのもんじゃが・・・
お主のばあ様、父上に比べりゃまだまだじゃのう。」
アリスは不意にゼウラを見上げてそういう。
「父さんの事を知っているのか?」
「おうとも、名前を聞いてから確信しておったわ。」
アリスはそういうと、崖からの景色を見る。
「自然の力を魔力に変えて戦う魔術師・・・・か、
本来魔術師は、自分の魔力片から魔力の供給を行い、
魔術を使うというものなんじゃがな。」
「・・・・?」
ゼウラは首をかしげる。
アリスはにっと笑ってゼウラを指さした。
「主は「特別な魔術師」なんじゃよ。大陸でも珍しいものでな。
わしも最初に見た時は驚いたもんじゃわ。」
「・・・詳しく、教えてくれ。」
ゼウラはアリスに静かに尋ねた。
「お主のばあさま、父上は「エレメンタリシア」という名の魔術師での、
自然に漂う微々たる魔力を自身の魔力へと変換させる、
自然の魔力が尽きない限り無限に魔術を放つことができる
ある意味では最強の魔術師なんじゃよ。
というわけで、お主イズ最強の魔術師・・・エレメンタリシアなんじゃよ。」
「お、俺が・・・?」
「うむ」とアリスは頷く。
「ただ欠点が、適性に合う属性でしか使えないのが欠点じゃ。
それに、接近戦でははっきり言うが、「足手まとい」になる。」
「そ、そこまではっきり言わなくても・・・」
「すまんな。・・・で、それを補うために、主には新技を習得してもらうぞ。」
アリスは腰に手をあてて鼻息を荒くした。
ゼウラはそれを聞いて、あからさまに嫌そうな顔でアリスを見た。
「まだ何かやらせようって・・・?」
「たりめーじゃ、わしより強い魔術師が目の前にいるのに、
その弱点が接近戦などと、情けなくて涙が出るわい。」
「さっきから辛辣過ぎて俺が泣きそうだけど。」
すると、アリスはゼウラの懐から短剣を取り出した。
クラルからもらった「疾風の短剣」であった。
「まずはこれを扱えるようになるべきじゃ。
せっかくクラルからもらったのに、いまだに使ってないんじゃ・・・
短剣が泣くぞい!」
「・・・なんでそれを・・・」
「魔女の勘♪」
アリスはゼウラに短剣を持たせると、指を鳴らした。
すると、木でできた箒が猛スピードでアリスの下へと飛んできて、地面に刺さる。
「うおぉ!?」
「わしが相手になる。修行じゃ」
アリスは箒を倒して、箒の上に立って乗る。
すると、ふわっと浮かび、上空に舞い上がった。
「いくぞよ〜、死んだらごめんな」
「さらっと不吉なことを・・・畜生、やってやるよ!」
ゼウラは半泣きになりながら、短剣を構えた。
アリスはニヤッと笑い、魔導書を開く。
そしてその後・・・大陸歴983年6月26日・・・・
帝都へ進軍する準備を終えたテオドール騎士団。
剣を構え、槍を天に掲げ、斧を握り、魔導書を開く。
レヴィアの国王、セリカリーズを救う戦いが、幕を開けようとしていた。