二次創作小説(紙ほか)

Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.196 )
日時: 2018/05/10 13:57
名前: テール (ID: X9g0Xy3m)

第十七章 真実


テオドールは、再び騎士団を招集し、ファータ教国へと向かう。
帰国した者たちは、ファータ教国にて合流するという話になり、
テオドール騎士団は再び発足を始めた。

一方、ファータ教国では・・・すでにクラウスが教国の騎士を洗脳し、進軍を始めていた。
操られた神官騎士は容赦なく友や家族の首を斬りおとしていく。


「他愛もない、これなら予定より早く目的を達成できそうだな。」

クラウスはほくそ笑む。
隣に、無表情で立っているルルと、ルカが複雑な表情でうつむいていた。


「ルル、ルーネ殿を連れ、邪竜の袂に行け。」
「は・・・。」

ルルはルーネを連れてその場を走り去っていった。
ルカは不安そうな顔で、クラウスに尋ねる。

「クラウス様・・・約束は果たしました!
 姉さんを・・・姉さんを返してください!」
「そういえば、そんな約束もしていたな・・・」

クラウスはそういうと、白い服をルカの前に放り投げる。
ルカは見開きそれを見て、クラウスの方へ向き直る。
絶望をしたような表情を見て、クラウスはにやっと笑う。


「クラウス・・・さま・・・これ・・・・は・・・・!?」
「お前の姉「ミカヤ・アヤメ」が来ていた衣服だ。
 ・・・生贄としては役に立ったぞ、くくく・・・・」
「そんなことを聞いてるんじゃない!!」

ルカは手を振り上げて叫ぶ。
そして拳を握りしめ、怒りを露わにした。

「姉さんは・・・・姉さんを返してくれるという約束は!?
 ルーネさんを連れてくれば、姉さんを返してくれるってッ!!」
「ふん、どちらにせよ、貴様の姉には死んでもらう予定だった。
 ・・・・弟の貴様もな。」

クラウスはそういうと、ルカに向かって手をかざし、膨大な魔力を放つ。
ルカは盛大に吹き飛ばされ、壁にたたきつけられた。

「がァ・・・ッ!!」

うつぶせに倒れ、口から咳き込んで血を吐く。

「貴様は用済みだ「メウルカ・アヤメ」・・・
 せめて姉と同じところに送ってやろう。」

クラウスはそう言い放つと、黒い表紙の魔導書を開き、黒い光に包まれる。





「ライトニングスター!」

クラウスに向かい、青い雷が落ちる。
クラウスはそれを避け、青い雷は爆発したかのようにバンッと弾ける。

ゆっくりその場に歩いてきたのは、アリスであった。

「久しいのう、クラウス。
 小童風情がよもやここまでやるとは、思わなんだぞ。」
「・・・アリスドールか・・・」
「し、ししょ・・・」

アリスはルカの姿を見て、クラウスを睨む。

「よくもわしの弟子をこんな目に合わせたのう・・・・
 たっぷり礼はしてくれようぞ。」
「くくく・・・弟子だと?
 笑わせる、そいつはお前を裏切った愚かな「メウルカ・アヤメ」だぞ!?」

アリスはそれを聞いて、吹き出して大笑いした。

「な、何がおかしい!?」
「「メウルカ」ぁ・・・・?
 そんな奴は貴様に殺されて死んだわ。
 今そこに転がっているのは、「クラウスに攻撃されて死にかけてるルカ・アストロロージア」じゃ。
 ・・・・弟子の仇は取らせてもらうぞ、覚悟せよ。」

「し、師匠・・・俺は・・・・!!」

アリスはルカに近づいて、肩を貸す。

「泣くな、男じゃろ。」
「・・・・は、い・・・・。」


クラウスはそれを見て、声を上げて笑う。

「ははははっ・・・・はーっはっはっはっは!茶番だな・・・全くお笑いだ・・・・っ!!」
「くさい口を閉じろ、一人じゃ何もできんドブネズミが。」

アリスは低い声でクラウスを睨む。
その様子は、今迄見せることがなかった姿であった。

「姉弟の気持ちを踏みにじった貴様は、屑以下じゃわ。下衆が。」
「・・・・ならば、試してみるか?
 俺と貴様の魔力が、どちらがより優れているかをな・・・!!」
「きーひっひっひ!!よかろう、ここで白黒つけんといかんなっ!!」

アリスは声を上げて笑い、魔導書を開く。
クラウスも魔導書を開いた。


Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.197 )
日時: 2018/05/10 22:59
名前: テール (ID: X9g0Xy3m)


「殿下・・・・神殿内はすでに火中にあるようです。」

「聖馬」と呼ばれる純白の馬に乗るアルト。
その姿は、さながら聖騎士といったところである。
そして、上空には竜騎士部隊、団長のラーマ、
聖斧エルドノルラを軽々と肩に乗せる将軍のエルドゥ。

魔導書を持ち、馬に乗る賢者メルや、
今迄ついてきてくれていたテオドール騎士団の面々が揃っていた。

テオドールはアルトの言葉に頷いて、剣を天に掲げる。

「皆、これが本当の戦いになる!・・・・教皇をお救いし、
 すべての決着をつけるぞ!・・・・進軍開始ッ!!」

兵士たちはテオドールの叫びに呼応し、咆哮を上げる。
そして神殿内に突撃した。








ルルは眠っているルーネを抱きあげて、神殿の奥へと進む。
ルルには思惑も感情もなく、淡々と自分に課せられた使命を全うしているだけであった。
奥の大陸全体が見渡せる展望台のような場所、邪竜を封印する祭壇にたどり着いたルル。
ルルはルーネを祭壇の上に置いた。


「待て、ルル・アルバーニャ!」

背後から、少年の声が響く。
ルルが振り向くと、傷だらけで、仮面が半分割れているルクスが
荒い呼吸でルルを睨んでいた。

「・・・・君はそんなことをしていい人間じゃないッ!!」

ルクスは剣を抜くと、ルルに突進した。
が、簡単に受け止められ、いとも容易く捻じ伏せられてしまう。

「あっ・・・くぅ・・・」
「その傷で私とどう戦うというの?」

ルクスの腕を踏み、動きを止めるルル。

「あぁっ・・・!!」
「かわいそうな子・・・男になり切れなかった女の子。」
「!!」

ルクスはルルを見上げる。
ルルは、にたりと笑うが、目には光はない。

「閣下から聞いたわ。あなた、「ルーナ・イルミナル」という名前でしょう?
 「ルクス・イルミナル」はあなたの双子の兄。
 兄を殺した人物を追っているのよね?
 いいこと教えてあげる、あなたのお兄さんを殺した人の事・・・」
「・・・・え」

ルクス・・・・否、ルーナは腕や顔から血の気が引いていく。
それ以上の事を聞きたくないと、耳を塞ぎたくなり、その場から走って去ってしまいたい・・・
そう思ったが、ルルは容赦なく聞きたくもない「答え」を口にした。






「あなたのお兄さんを殺したのは、私よ。・・・愚かな妹さん」


Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.198 )
日時: 2018/05/11 21:26
名前: テール (ID: X9g0Xy3m)


ルーナはその言葉を聞いて、剣を握りしめる。

「・・・・だから、あなたを憎めば、兄上が戻ると?」

ルーナは静かにそうつぶやく。


「そうじゃない。・・・兄上は天に召されました。
 もう戻らない、そんなことはわかっているんです。
 ・・・・だから、私は・・・・!!」

ルーナが声を張り上げて、ルルの足元を斬ろうと剣を振り上げる。
ルルはそれを避け、後退した。

「私は、「光を照らす者」です!
 兄上の代わりでもない、私という一人の人間です!!」

ルーナはそう叫ぶと、剣を握りしめルルに突進した。
ルルの瞳に、ルーナの顔が映った。


















「がはっ・・・・かっ・・・あ・・・・」

アリスはその場にうつぶせになる。
クラウスはアリスを見下ろしていた。
二人は傷だらけで、服も刃物のようなものでズタズタに切り裂かれたように、ボロボロであった。
互いに致命傷を負い、生きているのが不思議なくらいである。


そこへ、テオドールたちがやってくる。

「アリス殿!」

テオドールはそう叫んでアリスの下へとやってきて、介抱する。
アルトは倒れて気絶しているルカを介抱し、シスターを呼ぶ。


「テオドール・・・・・」

クラウスはテオドールを見てそうつぶやく。
今にも倒れそうではあるが、辛うじて立っていた。

「クラウス・・・あなたに一つ聞きたいことがある・・・
 なぜ・・・なぜ姉上を殺したんだ!?」

テオドールは燃え上がるような怒りをクラウスにぶつけ、歯を食いしばってにらみつけていた。
「誰に何を言っても姉は戻ってこない」と自分に言い聞かせてはいたものの・・・
やはり彼の中では納得できないものがあった。

クラウスは膝をつく。
そして、ひゅーと乱れた呼吸で、口を開く。


「俺は・・・・この大陸のダークライ族の生き残りだ・・・
 俺の故郷は、ディクシィ帝国の帝国軍によって滅ぼされたんだよ・・・
 俺達は・・・ただ静かに暮らしていただけなのになぁ・・・・」

クラウスはそういうと、崩れている天井から見える空を見上げる。

「俺は復讐を誓い、大陸を回った・・・
 そして「邪竜ヒュドラ」の話を聞いて、俺は・・・・
 俺は、邪竜ヒュドラを復活させ、大陸を滅亡させようと考えた。」
「な、なぜです!?」

テオドールはクラウスの肩をつかみ、揺さぶる。

「「ダークライ族は不吉なもの」と差別していた人間を・・・・
 差別するような感情を持つ存在を根本から消したかったんだよ・・・
 俺自身も含めて、な・・・」

クラウスはそういうと、ふふっと笑う。

「だが、テオドール・・・
 残念だ。・・・・お前たちのような人間に会わなかったことが・・・・」

クラウスはそう言い残すと、瞼を閉じた。
テオドールはその様子を見て、瞳を閉じ、頭を下げる。



「・・・・哀れな男じゃのう。まっこと。」

アリスはその様子を見て、ため息交じりにつぶやいた。




















ルルは腹に深々と剣が刺さっていた。

「・・・・これが、因果応報ってやつか・・・」

一歩歩くたびに血がしたたり落ちる。
祭壇にいるルーネの下へと歩み寄っていたのだ。

ルーナは、胸に剣が2本刺さっており、眠るように事切れていた。

ルルはゆっくりと祭壇に近づく。



「ルル!」

背後から、声が聞こえる。
聞き覚えのある声である。
ルルは振り向くと、そこには、青い髪の竜騎士が立っていた。

「・・・・」

ルルはぼんやりと記憶をたどる。
以前、どこかで・・・・そうだ、なぜ忘れていたんだろう・・・
とても大事な人だ。

「ラーマ・・・・?」

ラーマはそれを聞いて、ルルに向かって駆け出し、ルルを抱き寄せた。
そして、倒れているルーナを見て、何もかも察した。

「・・・ごめん、お前ばっかりひどい目に合わせちまって・・・」
「・・・・思い出してきた・・・そっか、私はあなたの恋人で・・・
 「月の神子」だったね。」

ルルはラーマの腕の中で全てを思い出す。
だが、身体が冷め切ってきているのがわかる。
視界もぼやあっと歪んで、ラーマの顔を見ることも叶わない。
・・・・もうすぐ死ぬのだと、察する。

「久しぶりに会えたのに・・・ごめん・・・・
 もうラーマの顔も見えない・・・」
「・・・・すまん」

ラーマはそれだけ言うと、ルルを抱きしめた。

「でも、ありがとう・・・・最期はあなたの腕の中で逝けるのが・・・・」

ルルはそういうと、静かに眠るように動かなくなる。
ラーマはそれを見て、ルルの手をぎゅっと握りしめた。












「茶番ですねぇ、まったく。」

突如、背後から低い声が聞こえる。
その気配は、今迄に感じたことのない悪寒に近いモノ・・・
恐怖を感じる。

ラーマは振り向くと、目を見開いた。

「なっ・・・・・!?」




そこへ、テオドールたちもその場にやってくる。

「殿下、あれ!!」
「・・・・な・・・・・っ・・・・」

テオドールはアルトの指さす方向を見て、絶句する。
その人物は、テオドールたちを見て、にこりと笑った。





「はじめまして、愚かな人間達。」

そう口を開いたのは、ルーネであった。