二次創作小説(紙ほか)

Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.206 )
日時: 2018/05/18 12:10
名前: テール (ID: X9g0Xy3m)

第十九章 我が剣は明日のために


<全く忌々しい・・・まるで「あの時」のようだ>

ヒュドラは恨めしそうに声を出す。
その場にいる全員が武器を構え、ヒュドラの出方を窺う。

ヒュドラが咆哮を上げ、先制攻撃とばかりに、闇の塊を放つ。
それを合図とばかりに、弓兵が一斉に矢を放った。
双方にダメージが入る。

アルトは馬を走らせ、突撃した。

「兵士!全力で行きますよ!!」
「おおおぉぉ〜〜〜っ!!!」

アルトの呼びかけに兵士達はアルトに続く。
ラーマも竜騎士たちにピラムを投げさせ、ヒュドラに攻撃を与える。

ヒュドラは口から黒い炎を吐き、兵士達を焼く。

「でえぇぇぇっ!!」

エルドゥは聖斧を振り上げ、ヒュドラを叩き切る。
すぐさま、クラルも魔導書を開き、手をヒュドラにかざした。

「爆炎ブレイズホルン!」

ヒュドラに劫火が広がり、クラルの手元の魔導書が灰になる。
クララも前にいる騎士団に続き、ルーンランスを持ち突撃する。
クラルとリースは、後ろから魔術で皆の援護を行った。



ティシャルの指示で、弓兵たちが矢を放つ。
ヒュドラは弓兵を睨むと、闇の塊を弓兵たちに向かい、放った。
しかし、それをアクライとシーナが阻止する。



「遅れて来た、弓が折れたのでな。」

そこへ、ディーノ、アッシュ、ジーヴァが現れ、先制攻撃に矢や短剣を放つ。

「ここが我らの見せ所でござるよ、師匠!」
「・・・・アルマさんが男だったとは・・・」

アッシュはアルマが目に入った瞬間、そんなことをつぶやく。
どうやら真実を目の当たりにし、それが原因で遅れていたようだ。

「男同士で恋愛はいかがでござるか」
「いや、天地がひっくり返ってもそれは絶対やらない。」
「お前たち、早く援護しろ。」

ディーノはアッシュとジーヴァに半ば怒っているような様子で指示をする。
二人は「へーい」と返事をして、武器を構えた。



ヒュドラは尻尾を振り上げ、兵士達に襲い掛かる。
アルトは避けるように指示したが、逃げ遅れた者がいた。


ヒュドラの攻撃を受け止めたのは、メルシアであった。

「早くお逃げください!」

メルシアは、ヒュドラの尻尾を受け止めながら、逃げ遅れた兵士を逃がす。
そこへ、剣がヒュンヒュンと音を立て、ヒュドラの尻尾を切り裂く。

ヒュドラが尻尾をひっこめ、地面に刺さった剣を抜いたのは、
ジョリーであった。

「ジョリーおじさん!」
「おう、坊主、それに王子・・・待たせたな!」

ジョリーはにやっと笑い、皆に手を振る。


「マイトアトラス!」

突如ヒュドラに竜巻が巻き上がり、天高く暴風が巻き起こる。
ヒュドラを切り裂きながら、暴風は止み、バキッという音と共にゼウラがゆっくり歩み寄る。

「やっぱり俺の調整じゃ、使いきりだな・・・1回が精いっぱいだ・・・」
「おう、でもあの邪竜にダメージは通ってるみたいだぜ」

ジョリーはかかかっと笑い、ゼウラの肩をたたく。

「さて、これ以上の好き勝手は、魔神が許してもこの俺が許さんぞ。」
「そうです。貴方を倒し、大陸の未来に栄光を・・・!」

ジョリーとメルシアが剣を構え同時に叫ぶ。


『剣と風の導きを!』





皆が交戦中、遅れて騎兵の軍勢が現れる。

「遅れてきちゃった〜」
「兄上、あれが邪竜ヒュドラのようです。」

ローブを羽織るプラタが指さす、黒い竜。
メルは魔導書を手に取る。

メルはプラタを呼ぶために一度騎士団から離れていた。
プラタはというと、兵士をかき集め、メルと共に進軍してきていた。
プラタは状況を素早く判断し、察する。

「どうやら、ルーネを器にヒュドラが復活したようだね。」
「あの、ルーネさんとヒュドラを引き離す方法というのは・・・」
「わかんない・・・だけど、今はぼくらも加勢すべきだ。」

メルは魔導書を手に取る。
そして、プラタの肩を叩いた。

「大丈夫、いつだってテオがいい結果に導いてくれてた。
 今回だって・・・・絶対いい方向へみんなを導いてくれるはず。
 ぼくらは、テオの手助けをして、支えてあげればいい。
 絶対大丈夫だって、ぼくは信じてるよ。」
「・・・・はい。」

プラタは元気よく返事をすると、ランスを取り出し、構える。


「全軍、目標はヒュドラ!
 絶対に生きて帰るぞ、進撃開始!」

プラタの伝令に、兵士たちは武器を天に掲げ、雄たけびを上げる。
そして、馬を走らせた。


Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.207 )
日時: 2018/05/18 21:52
名前: テール (ID: X9g0Xy3m)


「兄様、大丈夫ですか?」
「・・・なんとかな・・・殿下は?」

コハクとヒスイは、起き上がって周りを見る。
テオドールは、ヒュドラと交戦中であった。

「竜神ウイルメック・・・」

ヒスイは剣に呼びかける。
すると、剣が突然光始め、低く威厳のある声が響き渡る。

<呼んだか、ヒスイ>
「・・・この戦いの勝算は?」

<ヒスイ、私の答えを聞いて納得できるのか?>

ウイルメックの質問に、ヒスイはふっと笑い、剣をくるりと回して構える。

「できるわけない。だから、この戦い・・・必ず勝たせてくれ。」
<・・・・よかろう。私はグリモアール家と契約を結んでいる身・・・
 必ずお前たちの勝利を約束しよう!>

ウイルメックがそう答えると、ヒスイは頷く。
そして、コハクを見る。

「コハク、俺達はいつだって一緒だ。
 いつだって二人一緒にいた。
 いつだって二人一緒に陛下を・・・セリカを守ってきた。」
「は、はい!」

コハクは慌てて返事をした。

「今度は、殿下を守る。・・・・セリカを守れなかったが
 ・・・セリカのためにも、レヴィアのためにも大陸のためにも!
 この戦い、必ず生きて帰るぞ、みんな一緒にな。」

ヒスイがコハクの肩をつかみ、コハクの琥珀色の瞳を見る。


「・・・・はい、お供致します。必ず、勝利をこの手に。」

コハクの笑みに、ヒスイは口元を緩ませる。
そして二人はヒュドラの方へと向いた。

「いくぞ、殿下をお守りする!」
「はい、兄様!」











テオドールは右手に「神剣アストライア」を握りしめる。
その赤い瞳でヒュドラを見据え、ヒュドラを倒すと決意を固める。

そして、左手に「星剣アルスラン」を握る。
全ては、民のため。
全ては、生きる者のため。
全ては、ルーネのため・・・・。

テオドールは剣を両手に、ヒュドラに斬りかかった。
鮮血が飛び散り、ヒュドラは苦悶の表情を浮かべる。

「殿下!援護いたします!」
「テオ、待っててね〜!」

背後からテオドールを呼ぶ声が聞こえる。
テオドールは同時に安心感を覚え、瞳を閉じ深呼吸する。

ヒュドラはテオドールに向かって咆哮を上げ、黒い炎を吐く。
テオドールはそれを避け、ヒュドラを切り裂く。

<ば、馬鹿な・・・こんな小僧のどこにこんな力が・・・・!?>

ヒュドラは動揺を隠せない様子で声を上げる。
テオドールの猛攻は止まらず、兵士達もテオドールに続き、
仲間たちはテオドールの援護で、ヒュドラの身体に傷をつける。

必ず生きて帰る・・・その強い思いが、皆の力となった。


「弓兵、撃ち方続け!」

ティシャルの指示に、弓兵は弓を引き、矢を放つ。

「魔道兵、弓兵に後れを取るな!」

ベリスも負けじと指示を送る。
魔道兵はヒュドラに向かって魔術を放ち続けた。


<おおおぉぉ〜〜〜〜っっ!!>

ヒュドラが耳を裂くような悲鳴を上げる。
テオドールはその瞬間を待っていたかのように、ヒュドラの頭部近くまで飛び上がる。



「うおおぉぉぉぉぉーーーーっっ!!!」

テオドールが喉が潰れるのではないかという程の咆哮を上げ、
ヒュドラに両手に握りしめる剣を振り下ろした。
ヒュドラは切り裂かれた傷口から鮮血を飛び散らせながら背後に倒れる。

黒い靄のようなものを発しながら地上に倒れ、消え去る。

そして、ルーネが消えた靄の中から現れ、うつ伏せになって倒れていた。


テオドールは、ルーネ・・・・否、ヒュドラに近づく。


「・・・な、なぜだ・・・この私が・・・・二度もその剣に敗れるなど・・・」

ヒュドラは、起き上がろうと力を振り絞り、テオドールを睨む。

「この剣だけではありません。
 ・・・・・皆の思い、力、そして絆が、貴方を打ち砕いた。」
「・・・・くくっ・・・・くくく・・・・・」

ヒュドラは突如引き笑いをする。

「・・・・前に「ティル」や「あの小僧」もそんなことを言っていましたね・・・
 全く、虫唾が走る・・・くくくっ・・・・」


そしてヒュドラはテオドールを見てにやりと笑う。

「一ついいことを教えて差し上げます・・・・


 「私」を殺せば、ルーネも死にます。この意味がわかりますか?」


その場にいる全員が、ヒュドラの言葉を耳にし、目を見開き、衝撃が走る。
テオドールも、驚いて口をぽかんと開ける。

その様子を見て、ヒュドラは高笑いを上げた。


「あははははっ!!
 その顔・・・やはり傑作ですね!」

「そ、それじゃ、ルーネ様は・・・!?」
「いや、こいつの言うことを鵜呑みにするなど・・・!」


テオドールは唇をかむ。
ここまで来て、ルーネを犠牲にするか、はたまた別の方法を・・・・
だが、別の方法なんて考えられない。

誰かが犠牲になるのは、もういやだ。



テオドールは顔を強張らせて拳を握りしめる。










「諦めないでください、テオドール殿下」

突如耳元に囁かれるように近く慈悲のある声音の声が聞こえる。
驚いて振り向くと、そこにはアナスタシアが立っていた。


「アナスタシア教皇!?」
「・・・・・あなたは歩むべき未来がある。進むべき方向みちがある。」


アナスタシアはゆっくりとヒュドラに近づく。


「だから、見失わないでください。」

アナスタシアがテオドールの方を向いて笑顔を見せる。
そして、ヒュドラに触れた。


「・・・・!?」


その瞬間、眩い光が一帯を包み込んだ。

「教皇!?」
「これは・・・・ノルド陛下と同じ・・・!?」

コハクは光に目を凝らして、叫ぶ。
約10年前・・・・ノルドもテオドールを救うべく、自らを犠牲にして、
テオドールの中に闇竜を封じ込めたのである。


「教皇!」


テオドールがアナスタシアに向かって手を伸ばした。
アナスタシアは振り向いて、笑みを見せる。





「さようなら、明日を信じる大陸の皆さん。
 そして、「テオドール・ルツ・レヴィア」王子。
 次に会う日が、今日より少しだけ、いい日でありますように。」



光は一層強くなり、テオドールは目を瞑る。