二次創作小説(紙ほか)

Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承-【オリキャラ数名募集】 ( No.32 )
日時: 2018/02/15 23:28
名前: テール (ID: LAu9zylb)

第三章 鉱山の制圧



その日は、強い雨が打ちつける日だった。


「父さん、やっぱり俺も行くよ!」

俺がいる・・・、目の前には父さん・・・
ッ!!ここで父さんを止めないと・・・!!


「ダメだ、フィルシルド。お前はここにいなさい・・・」
「でも・・・」
「いいから。」

ダメだ父さん!ここで行ってしまったら・・・・
父さんが死んでしまう!

「・・・・・うん。」
「いい子だ、父さんはすぐに戻る。お前は待ってるんだぞ。」
「・・・すぐ戻ってきてね」
「ああ、俺は約束を必ず守る」

行かないでくれ、父さん!



ああ、また・・・俺は・・・・














「・・・・・!!」

暗い牢獄の中、床に腰かけて眠っていた男が目覚めた。
その男は、白髪のショートヘア、赤い瞳。
左目を紺色の布を巻き付けて隠しており、
東洋を思わせる奇抜な服装である。

男は左目に手をあてて、軽く目を閉じた。

「・・・・またあの夢か・・・」



「あのぉ・・・・」
「・・・・」

同じ牢獄の中から、これまた奇抜な服装の、ほんわかとした女性が
男に話しかけたが、男は無視した。

「あの!無視しないでください!」

女性はしびれを切らして叫んだ。
女性は紫色の髪を二つに結わえ、
服装は暗い藍色を基調とした胸を強調する大胆な服装で、
胸と肩を露出する割には、下半身の露出は皆無だった。

「・・・・なんだ、俺に用があるのか?」
「んもう、あるからこうやって話しかけてるのよお」

女性は少し機嫌を損ねた様子だったが、
すぐに機嫌を戻し、本題に入る。

「わたくしたち、もうここに閉じ込められて1週間でしょう?
 そろそろここを出るために協力しましょうよ。」

しかし男は鼻で笑う。

「ふん、武器もないのに協力なんかできるのか?」
「あ、そういえばそうねえ・・・」

武器がないことに気づく女性。

「というか、まだ自己紹介してないわねえ。
 わたくしはクランライン・ディリティリオっていうのよお。
 あ、「クララ」って呼んでちょうだいねえ。」

クララは自己紹介し、にっこりと笑う。
男は少し沈黙し、口を開いた。

「フィルシルド・ルヴトー・・・・」
「フィルシルド・・・・長いからフィーちゃんって呼んでいいかしら?」

クララはフィーに向かって笑顔で尋ねる。

「・・・・好きにしろ。」

フィーは少し顔を赤らめてそっぽを向いた。



突如、牢獄の外から軽い足音が響いた。


「・・・!足音!」
「あらあら、だれかしらあ?」






足音が檻の前で止まり、扉の開く音が重く響き渡った。

扉を開いたのは、
白いフードで顔を隠しているが、華奢な体格の少女であった。

「出ろ、今なら山賊はいない。」

少女は低く、感情のない声で牢獄から出るよう二人に促した。


「誰だ、貴様は。」

フィーが警戒しながら尋ねた。

「・・・・名乗る義理はない。」

少女の淡々とした答えにフィーはさらに警戒する。

「誰ともわからない奴の言う事を簡単に聞くほど、俺は愚かではない」
「ならここを出なければいい。
 私はあなたがたが死のうが関係ないのだから。」

すると、少女はフィーとクララの持ち物と思われる荷物を
牢獄へと投げ入れた。

荷物が音をたてて地面に転がり落ちる。

「あなた方の荷物だ、それで山賊と戦えるだろう」

そして少女は入ってきた方向へと振り返り、歩き始めた。

「お、おい!」
「あとはあなた方の自由だ。」

フィーが呼び止めるも、少女は無視して去ってしまった。


「フィーちゃん、ここはあの人を信じて脱出しましょう」

クララは自分の荷物を持って、フィーに笑いかけた。
フィーは、やれやれといった様子で自分の荷物を持った。


「・・・なるべく山賊たちに見つからないように逃げるぞ」
「ええ!」



フィーとクララは、少女が去った方向へ走り出した。

Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承-【オリキャラ数名募集】 ( No.33 )
日時: 2018/02/16 20:14
名前: テール (ID: LAu9zylb)

リマニ市街出発当日・・・

クラルは真新しい鎧を持ってアルトの元まで来ていた。
アルトは傷こそは治ったものの、まだ痛みがある様子だった。

「アルトくーん!じゃーん!
 見てみてこれ、君の鎧を改造したんだ!」

と、クラルはアルトに鎧を差し出す。
新品同然のその鎧は、アルトの装備していた鎧と全く同じ見た目であった。

「クラル、ありがとうございます!
 よかった、改造されるって聞いたから、どんなふうに仕上がるか不安だったよ」

アルトは鎧が元通りになって、胸をなでおろしていた。
クラルは鎧を指さしながら説明する。

「元に戻しただけじゃなくって、鎧にミラーコーティングしてみたんだ。」
「ミラーコーティング?」

聞きなれない単語に、アルトは目が点になる。

「あ、ミラーコーティングってのはね、
 魔力を反射する効果を鎧につけることをいうんだよ。
 つまり!魔法を反射するミラーコートみたいなものだね!
 鎧の方はアルトくん、なんだか思い入れがありそうだったから、
 なるべく元の形に戻してみたけど・・・・」

「・・・・いえ、ありがとうございます。
 大切なものだったんで、うれしいです。」

アルトは、鎧をぎゅっと抱きしめた。

「その鎧、何か思い出でもあるの?」

「はい。父の形見なんです。」
「そっか。」

クラルは一言呟いて目を細めた。
















テオドール騎士団は、リマニ市街を旅立ち、
山賊を討伐しながら各地を転々としていた。

各地を回っていると、山賊たちに苦しめられ、嘆く人々の声が直に聞こえた。
山賊に腕を斬られた者、家を奪われた者、財産を奪われた者、
家族を奪われた者・・・・
それらを見た騎士団の騎士たちに
戦乱の渦中に嘆いた祖国の人々、自らの過去を思い出させるには十分であった。


ジョリーローグ・スカイを始めとする、
ディーテ共和国の人々の話によると、
首都レーベンは、貴族たちが平和に暮らしているが、
それ以外の各地は山賊たちに支配され、
今日まで貧困にあえいでいたという。


そんな中、騎士団は目的地である鉱山の街レビジュの近辺へとたどり着いたのであった












テオドールたちは、レビジュの付近の平原まで来ていた。
川が流れ、穏やかな風が吹き、
任務の途中でなければ、エルドゥが原っぱの真ん中で寝転がりだすところである。


「ボク、この辺の村でお姉ちゃんと待ち合わせしてるんだ!」

クラルが突然飛び跳ねた。

「そうなんですね、ちなみにどこに?」

テオドールが尋ねる。

「ポルニって場所!」
「ポルニ・・・レビジュの近くにある小さな農村ですね。」

アルトが地図を見ながらテオドールに説明する。

「この辺はかなり複雑な地形になっていますね。」

テオドールは地図を見ながら口元に指をそえる。
そして、少し考えてから山々が連なっている場所を指さした。

「この辺から奇襲をかけられませんか?」
「そこは危険です、殿下。」

テオドールの提案にアルトはすぐさま否定する。

「そこは「氷結の谷」といって、フェティエ山脈のふもとにある、
 氷に閉ざされた渓谷ですよ。
 そこにはアイスワイバーンやフリーズドラゴン、
 さらには氷の部族「ソリン族」が暮らしています。
 近づくだけでも危険ですので、やめた方がいいですよ。」
「なるほど、ここはなしですね・・・」

アルトの説明にテオドールは再び考え込む。

「殿下、私が偵察に行ってまいります。」

そこへラーマが提案した。

「・・・お願いできますか、ラーマ。」
「はい、殿下達はポルニにてお待ちください!
 いくぞ、マリー!」

ラーマは、マリーに声をかけると、
マリーは一度吠えて、空へと舞い上がった。


ラーマが見えなくなり、テオドールは騎士団に伝令した。

「これより、農村ポルニに向かう!
 道中山賊団が現れる可能性がありますので、注意して進んでください!」

Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承-【オリキャラ数名募集】 ( No.34 )
日時: 2018/02/17 22:22
名前: テール (ID: LAu9zylb)

「クソッ、なんだってこんなところに将軍クラスの兵士がいるんだよッ!」

フィーは、黒色の鎧を身にまとった、鋼色の髪の大男と
剣と斧を打ち合っていた。


「はははっ!なんだその貧弱な剣は・・・・
 その程度でオレ様の首を討ちとれると思っているのか!?」

男は笑いながら巧みな技で、フィーの切り込みをすべて受け止め、跳ね返していた。


「フィーちゃん!今助けるわ!!」

そこへクララは水色のランスを持って全力疾走で突撃した。



「・・・・。」

しかし、そのランスを受け止めたのは、
水色の髪の少女だった。
幼い顔の割には非常に大人びており、服装からして、
ディクシィ帝国の魔道兵だろう。

「あらら・・・」

クララは一旦少女から一歩後ずさった。


「魔道兵なのにランスを受け止めるなんてすごいわねえ」
「か、感心してる場合じゃないだろ!」

クララの呑気な言葉に思わず突っ込みを入れるフィー。
そこに、大男は斧を振り下ろした。

「クソッ!」

フィーは剣で斧を受け流してそれを回避した。
そして、そこへ少女は魔法を撃ち込んだ。

「シルフィーウインド」
「何っ!?」
「フィーちゃん!!」

すかさずクララが少女の魔導書から放たれた竜巻に向かって蓋の空いた薬瓶を投げつける。
すると、竜巻は消え、空になった薬瓶は地面に落ちて割れた。

「・・・錬金術士」

少女はクララを睨みつける。

「あらら大変、怒らせちゃったみたいねえ」

クララは困った顔でランスを構えた。






少女は魔導書を取り出し、クララに向かって手をかざし、静かに呟いた。

「・・・・バインド」
「・・・・!?」

クララは突然、身体に力が入らなくなったかのように、
その場に座り込んで、そのままうつぶせに倒れた。

「クララ!?」
「よそ見してんじゃねえぞ!」

大男はフィーの腹に蹴りを入れた。
フィーはそのまま吹き飛んだ。

「ぐあぁ!!」


クララにそっと近づく少女。

「これで終わり・・・」

少女はそっと呟いて、魔法を唱える。
突如、少女の背後から、黒いフードを被った死神を思わせる半透明の骸骨が現れた。
死神は手に巨大な大鎌を持ち、クララを狙う。

「・・・・暗黒魔法・・・」

クララは、そっと呟いた。


「ブラックガイド」

少女はそうつぶやくと、死神はクララに向かって大鎌を振り下ろした。

「・・・・!!」

クララは覚悟を決めて目をぎゅっとつむった。

















しかし、死神が斬ったのはクララではなく、フィーであった。

「っ!?フィーちゃん!」

驚くことに、吹き飛ばされたところから、走ってきて、クララの盾となったのだ。
フィーは肩から腹にかけて斬られ、大量の血液を流した。

「フィーちゃん!フィーちゃん、しっかりして!」

だが、フィーは糸の切れた人形のように動かない。
クララはなおもフィーに呼びかけるが、返事はない。


「・・・・次は外さない」

少女は静かに冷たくクララを見下ろす。

「死んでね」

少女は再び魔導書を開いた。



















突如、少女の下へ剣士が斬り込んだ。

「でやぁぁっ!!」

少女の魔導書は真っ二つになり、
少女は驚きの表情で剣士を見つめた。
大男も突然現れた剣士に戸惑いを隠せずにいた。
そして、剣士に向かって尋ねた。

「誰だ、貴様は・・・?」





「僕はルクス。ルクス・イルミナル。」

ルクスは静かにそう答えた。

Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承-【オリキャラ数名募集】 ( No.35 )
日時: 2018/02/17 23:12
名前: テール (ID: LAu9zylb)



「お姉ちゃんがいないよ、どうしよう!どうしよう!」

農村ポルニにて挙動不審になっているクラル。
姉の姿が見えないので、心配になっている様子であった。

「お、落ち着いてクラル!」

エルドゥはクラルの様子に慌てる。

「でも、ここで待ってるって言ってたんだ・・・
 ど、どうしようどうしよう!お姉ちゃん知らない人にもホイホイついて行っちゃうから・・・」

クラルは涙をぽろぽろ流して泣き声を上げた。

「既に山賊団に捕まっている可能性がありそうですね・・・」

アルトは地図を見ながらつぶやいた。
クラルは涙目でアルトの肩をつかんで叫ぶ。

「山賊団の本拠地ってどこにあるの!?ボクすぐに行くよ!
 お姉ちゃんを助ける!!」
「お、落ち着いてくださいクラル!」
「そうだぞ嬢ちゃん、そんな取り乱してちゃ何も見えなくなるだろう」

アルトとジョリーがクラルを窘め、
クラルは荒い息を吐いている。


「ご、ごめん・・・
 ボク、お姉ちゃんが心配で・・・・」
「大丈夫だよクラル、今ラーマが山賊の偵察に行ってるみたいだし、
 何よりこっちには最高の軍師がいるんだから。」

「・・・・う、うん。」

メルの励ましに涙を拭いて顔を上げるクラル。


「殿下、ここで立ち往生しても仕方ありません、
 すぐにレビジュへ向かいましょう。」
「・・・・そうですね、山賊の制圧を先に済ませましょう。
 ラーマもすでにレビジュに向かっている可能性もありますしね。」

テオドールはアルトの提案に頷き軍に進軍を伝令した。
























「・・・・細っこいガキ一人で何ができる?」

大男は若干怒りのこもった声で金髪の少年・・・ルクスに斧を向けた。
ルクスは仮面で顔を隠しており、
分厚い灰色のマントで身を包み、ベルトを体に巻き付けた
華奢な少年の姿であったが、
斧を向けられても怯える様子を一切見せなかった。


「その前に質問に答えてほしい。
 あなた方の名前は?」

「そうだな、まあ名前を名乗るのは最低限の礼儀だ。
 俺はイアン・ラージェス・レイ。
 こっちのはアイス・ラージェス・レイだ。」
「なるほど。ではもう一つ質問だ。
 あなた方ディクシィの兵士がなぜこんな辺境にいるのです?」

ルクスはイアンに質問する。

「答える義理はねえな」

イアンは鼻で笑った。


「そこの錬金術士さん、そこの傭兵さんを連れて早く逃げるんだ!」

ルクスは魔法が解けて自由に動けるようになったクララに向かって叫ぶ。
クララは、フィーを抱いてルクスを見た。

「ルクスちゃんは?」
「僕は平気、民を守るのが僕の役目です。」

クララはその言葉を聞いて、フィーを背負い、走り出した。

「逃がさんぞ!」

イアンは斧を逃げるクララに向かって投擲した。

しかし、ルクスは斧を斬り、両断する。


「無力の女性に手を挙げるのが、帝国のやり方か?」

ルクスの隙のない動きに、
イアンもアイスも息をのむ。






「・・・!」

突然、イアンとアイスは勢いよく振り向いた。

「・・・・」
「ちっ、帰るぞアイス。」

イアンとアイスはルクスに背を向けて、どこかへ去ろうと歩き出した。

「・・・・どこにいくんだい?」

「オレ様の役目はいったん終了してな、
 帰って来いと命が下ったんだよ、命拾いしたな。」
「あなた、次に会ったら容赦しない。」


二人は去っていった。





「・・・・ふぅ、正直危なかったかな。」

ルクスは緊迫した状況から解かれたかのようにため息をついて安堵した。