二次創作小説(紙ほか)

Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承-【オリキャラ募集】 ( No.75 )
日時: 2018/02/24 21:25
名前: テール (ID: LAu9zylb)

テオドールが目を閉じた時、クラルはなおも必死にテオドールの名を呼び続けた。

「王子様!ねえしっかりしてよ!!」
「くっ・・・手遅れだったのか・・・!」

アタールも首を振り、うなだれる。

と、次の瞬間、テオドールの胸元が鈍く光った。
その光は温かく、やがて紫色に染まる。

「こ、これは!?」

クラルがその光を見て驚いていると
パキッという砕ける音と共に光が消え去った。

そして、テオドールが目を開けたのだ。


「王子様!」
「テオ!」


テオドールは二人の顔を見て、驚く。
先ほど、冥府の使者がテオドールを迎えに来たと思えば、
急に先ほどまでの寒気や苦痛が霧が晴れたかのようになくなっていたのだ。

「クラル、叔父上、叔母上・・・」

テオドールは上半身を起こし、3人を呼んだ。
3人は心底安心したという顔でテオドールを見た。

・・・と、テオドールは胸元に違和感を感じて、胸元に手を入れる。

「あっ・・・」

テオドールは何かを取り出して声を漏らす。
その理由は、ルーネがテオドールに渡したお守りが、紫色に変色し砕けていたからだ。

「それ、兄ちゃんの作ったアクセサリーの、「みがわりペンダント」だよ」

クラルはお守りを指さしながら呟いた。
テオドールは首をかしげる。
クラルはその様子を見て説明した。

「銀はね、昔から厄除けの効果があるんだよ
 その銀に自分の魔力を込めて作ったのが、それ。
 一度だけ持ち主の身代わりになって持ち主が辿るはずだった厄災を受け止めてくれるお守りなんだ。」

テオドールはクラルの説明を聞いてもう一度お守りを見る。
そのお守りは毒々しい紫色に染まり、砕けていた。
もしこのお守りがなければ、テオドールはこのお守りのように・・・
考えただけでも恐ろしい、そうテオドールは目を閉じた。

















「叔父上と叔母上はここでお待ちください。
 全てを終わらせて参ります。」

テオドールとクラルは、アタールとリノンに牢獄へ残るように言った。
リノンはテオドールの頬に手を当てる。
その表情は、涙にぬれていた。

「テオ、あなたにばかり苦労を掛けて申し訳ありません、
 無事に帰ってきてくださいね」
「はい、叔母上・・・。いこう、クラル!」
「ほいほーい!」

テオドールはアタールとリノンを背に、クラルと共に仲間たちがいる
議事堂前へと走り出した。



「リノン、テオは大丈夫ですよ。」

アタールは、少しも心配していない様子で、テオドールの背を見つめた。













議事堂前では、ベラーディが姿を露わにし、
騎士団たちと戦闘していた。

「我が槍、キラースピアをとくと味わうがいい、ひよっこ共!」

騎士団の兵士を薙ぎ払い、圧倒的な力量差を見せつけるベラーディ。
たった一人の大男相手に、騎士団はなす術がない。

「ぐ、軍師!全く歯が立ちません!」
「くっ・・・・やはり将軍・・・敵ながらあっぱれです。」

アルトは何か策がないかと、白紙の紙切れを取り出して、
自分の傷口から血をすくいとり、紙切れに策を記していた。


「だったら二人同時に!ウィングルス!」

とゼウラが叫び、魔導書から白い鳥の群れが現れ、ベラーディを襲う。
と、同時に、メルシアは水色の剣を持ってベラーディの懐へもぐりこんだ。


「舐めるなよ小僧に小娘!」

ベラーディはメルシアの胸ぐらをつかみ、槍で白い鳥を薙ぎ飛ばす。
そしてメルシアをゼウラに投げつけた。

「きゃあっ!!」「うわあっ!!」

ゼウラを下敷きにメルシアは倒れる。
しかし、全力疾走でこちらに向かってくる騎兵がいた。


「いくわよサラマンダーちゃん!」

水色のランスを構え、全力疾走で馬に駆けるクララの姿が見えた。
猛突進するクララは、ランスでベラーディを串刺しにする。

・・・が、ベラーディは非常に小さな動きでクララのランスを避けた。

「なんてこと!?」

ベラーディはクララに向かってピラムを投げつけた。
ブン!という重い風を切る音と共に、ピラムがクララを襲う。

しかし、そのピラムを真っ二つに斬り捨てるフィー。
その表情には焦りがあった。

「クララ、こいつ・・・やはりかなりの手練れだぞ!」
「これは一筋縄ではいかないわねえ・・・」

珍しく困惑の表情を浮かべるクララ。


「でやあああっ!」
「うおりゃああああああっ!!」

巨大な斧を振るエルドゥと、上空から奇襲をかけるラーマ。
ベラーディはその両方の動きを見極め、斧と槍を腕で受け止め、
武器を持った二人を地面にたたきつけた。

「う・・・げほっ、げほっ」
「ち、畜生・・・なんなんだよこいつ・・・」



そこへ、メルはエメラルド色の魔導書を持って
ベラーディに向かって手をかざす。

「旋風マイトアトラス!」

ベラーディの足元から、空まで届くほどの巨大な竜巻が襲った。
その竜巻の風に当てられ、立っていられない者が何人かいた。

やがて風は晴れたが、その風を切りメルに向かって
ピラムが猛スピードで飛んでくる。

「ま、まさか!?」

メルは判断が遅れて避けられなかった。

「あがっ!」

メルの横腹に命中し、メルは小さく叫んで倒れた。
風が完全に晴れると、そこには不敵に笑うベラーディが姿を現した。
もちろん、無傷で。



騎士団はベラーディという男を見て、息を荒げた。
焦り、恐怖し、絶望している。
この化け物をどうやって倒せるのか・・・
否、倒せない。と悟る。



しかし、そこに緑の髪をなびかせた少年がベラーディに切り込んだ。
テオドールだ。

「はああぁぁぁっ!!」

テオドールはレイピアを刺突する。
しかし、レイピアをつかみ、へし折るベラーディ。

「・・・!!」
「小僧、やっとお出ましか・・・待ちわびたぞ!」

ベラーディは無邪気な声を上げて歓喜する。
テオドールは、一歩後ずさる。

そして折れたレイピアを投げ捨てた。


「小僧、武器なしでわしとどうやって戦うというのだ?」
「・・・・姉上、この剣を使わせていただきます。」

テオドールは瞳を閉じて、腰から下げていたもう一本の剣を鞘から抜く。
その剣は、鞘から抜き出された瞬間、星色に発光し、
見る者を魅了するほどの輝きを放った。

「あ、あれ・・・まさか・・・・!」

アルトはその剣を見て驚きを隠せなかった。

「「星剣アルスラン」!!」



テオドールは星剣アルスランを構え、ベラーディに剣を向ける。

「そんな剣を持ったところで、わしには勝てぬぞ!」
「だとしても、ここで止まるわけにはいかないんだ!!」

ベラーディの槍の突きを見極め、それを避け、
テオドールはベラーディの鎧の隙間を剣で斬る。

「なにっ!?」
「僕は僕のために戦っているわけではない!」

テオドールは、ベラーディの懐に潜り、さらに隙間を斬る。

「ぐあっ!!」
「僕は・・・いや」

テオドールは全ての力を籠め、ベラーディの急所へと
剣を深く突き刺した。

「私は・・・民のため、そして仲間のために剣を振るうのです!」

ベラーディは口から血を大量に吐いた。
しかし、苦悶の表情はなく、不敵な笑いがそこにあった。

「は・・・はは・・・なるほど・・・・それが、貴様の・・・・信念か・・・・」

そう言い残すと、ベラーディは事切れた。
テオドールは、剣を天高くに掲げる。
そして、都市全体に響き渡るような声量で、騎士団とウラノスネーバ隊に告げた。





「皆聞け!我々騎士団の勝利だ!」

Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承-【オリキャラ募集】 ( No.76 )
日時: 2018/02/24 23:14
名前: テール (ID: LAu9zylb)

「姉上、この剣は?」

王城の一室・・・・そこでセリカがテオドールに、一振りの剣を手渡していた。

「これは、王国の最後の希望であり、大陸を照らす光でもある・・・
 「星剣アルスラン」。」

セリカは剣をテオドールの手に渡すと、
机の傍らにあるティーカップに入った紅茶を口にする。
テオドールは首をかしげてセリカに尋ねる。

「これは一体?」
「星獣さまをご存じありますか?」

セリカは質問で質問を返すようにテオドールに尋ねる。
テオドールは少し考えたが、すぐに首を横に振る。

「遥か空の上に住んでおられる、獣のことよ。
 太陽の星獣「ミスラ」様と月の星獣「ルナリス」様。
 その星獣さまが英雄ティル・ソティスに授け、
 戦いを捨てた彼女は、レヴィア王国建国者である英雄レイ・レグルスに譲渡し、
 その剣はレヴィア王国王族に代々紡がれてきたの。
 そういう伝承があるのがこの「星剣アルスラン」。」

セリカの説明を聞いていたテオドールはさらに尋ねた。

「なぜ僕にこの剣を?」
「・・・時が来るからよ」

セリカは顔に影を落とした。
テオドールはよくわからないでいた。

「テオ、覚えておいて。
 その剣は誰かを傷つけるためのものではないわ。
 民や仲間を救うためにあるものなの。」

セリカは、真剣な眼差しでテオドールに強くはっきりと伝えた。
























首都レーベンの騒動は鎮圧し、驚くべき事実が明らかになった。

まずは、オルダン卿は実は帝国が雇った盗賊が成り代わっていて、
本物のオルダンは、すでに黒い魔道士によって殺害されていたことが分かった。
成り代わっていた盗賊は、ゾロアーク族の「アッシュ・ヨーク」であり、
報酬を前金で受け取り、共和国を内部から崩壊させようとオルダンに化けていたと自白した。

現在、黒い魔道士の居場所までは知らないという。

アッシュやアッシュに協力していた帝国軍は、捕虜という扱いで監獄へ入れられている。
ディーノは、騎士団に雇われているというので、
騎士団に活躍を貢献するという条件で不問となった。




大陸歴983年1月20日

共和国は落ち着きを取り戻したが、まだまだ復興ができていない状態であった。
そして、帝国の神官による暗黒魔法で操られていた王国軍は、
今だに昏睡状態に陥っている。
レーベンの教会にいたファータ教国の神官たちが治療を施している最中であった。

そして、教国の使者がアタールの下へ現れ、
シアンを成人を迎えるまで教国で守ると告げ、アタールはそれをのんだ。
再び先の騒動が起きてしまえば、
シアンの安全を保障できないからである。

リノンもすぐには割り切れなかったが、シアンを守るためと了承した。



この騒動は、騎士団、傭兵、首都、共和国が大きな爪跡を残して終息したのであった。








「殿下、お話が。」

あの騒動が起こって1週間がたったある日の事、
ファラがテオドールの下へ部下を何人か連れて訪ねてきた。

「ファラ隊長?」
「殿下、我が部下数名を騎士団に加えてほしいのです。」

ファラの後ろにいる、リラ、サラ、その他ウラノスネーバ隊隊員達が
テオドールに向かって一礼する。

「なぜ我が騎士団に?」
「悔しながら、我らウラノスネーバ隊は知識不足です。
 騎士団に加え、殿下をお守りしながら世界を教えてやってほしいのです。」

それを聞くと、テオドールは微笑んだ。

「そういうことでしたら、もちろん喜んで。」
「ありがとうございます、殿下。」

ファラは頭を下げた。









そうして、レーベンにて、騎士団は束の間の休息をとったのであった。



しかし、まだ共和国には蛇の眼差しを持つ魔女が潜んでいたのだ・・・。