二次創作小説(紙ほか)

Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承-【オリキャラ募集】 ( No.77 )
日時: 2018/02/25 13:56
名前: テール (ID: LAu9zylb)

第五章 きょうだいの絆

大陸歴983年1月22日


アタールはテオドール、ルーネ、アルトを自室へ呼び出していた。

「閣下、お話とは?」

テオドールが尋ねる。
アタールは、何か複雑な者を抱えているような、そんな顔でテオドールたちを見ていた。

「ええ、少し・・・あなた方に依頼を頼みたくってね。」
「依頼、ですか?」

アタールはこくりと頷く。
そして共和国の地図を取り出し、目の前のテーブルに広げた。

「まず、ここに「ファクトライズ公国」があるんだが・・・」

アタールは首都から遥か北西・・・共和国の中央部分を指さす。
そこには「ファクトライズ公国」という文字があった。
アルトは補足する。

「とても治安が良い、平和な国だと聞き及んでおります。
 なんでも、公爵は珍しく女性の方で、慈悲のある心で民を愛する」
「表はね。」

アルトの説明を遮るようにアタールは重く鋭く口にした。

「しかし、ふたを開けてみれば、公爵は民たちを虐げ、
 自分を支持する貴族のみ匿い、逆らう者は拷問にかけた挙句死刑に処す・・・
 という噂があるんだよ。」
「それは本当ですか!?」

ルーネは珍しく怒りのこもった声で目の前のテーブルをたたいた。

「落ち着きなさいルーネ、確証はない。
 そもそもあそこにはオルダン卿の息がかかっていた。
 調査しようにも、オルダン卿及びオルダン卿の腰巾着の議員たちが
 それを許さなかったのです。」
「それで、我々は一体何をすれば?」

アタールはテオドールの質問に目つきを変える。



「君たちには、ファクトライズ公国の調査を行い、
 もし噂通りの国であれば、公爵を拘束し首都に送ってほしい。」

「テオ、どうします?」

ルーネの問いにテオドールは頷いて答えた。

「その依頼、お引き受けいたします。」
「ありがとう、オルダンの息がかかってない今、
 公国の真実を暴くチャンスなのです、頼みましたよ。」
「はっ!」

テオドールたちは短く返事をすると、アタールの自室を出た。

















テオドールは騎士団を集めて、作戦会議を行った。
作戦を聞いたメルは、終始暗い顔でうつむいていた。
・・・暗い顔というよりは、何かを畏れているように冷や汗をかいていた。

「以上が閣下からの依頼です。質問がある人は?」
「はいっ!」

テオドールが言い終わる前にクラルが右腕を上げた。

「その公国に、「クランリース」って人がいるかもしれない。」
「なぜそう思う?」
「兄ちゃん、そこに行ってから消息を絶った・・・って情報屋から聞いたんだよ。
 だから、その点も含めて調査に同行してもいいかな?」

クラルに続いて、クララも手を挙げた。

「わたくしも同行するわ」
「わかりました、ではクラル、クララも調査隊に加えます。」

テオドールは頷いた。
「クランリース」とは、大陸でも名を馳せる有名な細工師で、
彼の作る装飾品は老若男女問わず大人気で、
各地の出店や装飾品を取り扱う店などで流通している。
テオドールの姉セリカも彼の作った装飾品を大絶賛し、度々王城に招いていたことをよく覚えている。

しかしそんな彼が突然消息不明とは、やはり公国で何かあったに違いない。
そう思った。



「ほかに質問はないか?・・・なければ明朝に出発する。
 今日は明日のためにゆっくり休むように。・・・解散!」






















「殿下、ちょっと。」

ラーマはメルを引き連れテオドールを呼んだ。
ちょうどルーネと話をしていた最中であった。

「どうしたラーマ、それにメル。」
「メルの過去ってご存知ありますか?」

ラーマは真剣な表情でテオドールを見据える。

「いや、レヴィア王国のズィルバー伯爵の養子に迎えられる前の事は、
 一切口にしないものだから・・・」
「メルキュリオ・ケナ・ファクトライズ・・・・それがメルの養子に入る前の名前です。」
「・・・・!?」

テオドールとルーネは驚いて声が出なかった。
「ケナ・ファクトライズ」・・・・。
まさにファクトライズ公国の公爵の姓であったからだ。

「メルはファクトライズ公爵の実の子です。
 ですが、公爵はメルを「自分に似ていない」という理由で
 拷問に近い虐待を行っていた・・・と。」

ラーマの話によると、
メルはある日公国を抜け出し、首都レーベンまでボロボロになりながら歩いてきたという。
それを見つけたアタールは彼を保護し、事情を聴き、ファクトライズ公国へ抗議に行った。
しかし公爵は「子供の話に振り回される愚か者」とアタールを嗤い、
議会に提出し、アタールはオルダンによってファクトライズ公国への一切の関与を禁止された。
その後、メルをなんとか救出したいと思ったアタールは、
ファクトライズ公爵に取引を申し出る。

「メルをレヴィア王国のズィルバー伯爵の下へ養子に送る代わりに、
 今までの無礼を不問にしてほしい。」

公爵はメルを心底憎んでいたようなのか、その取引はすんなりと通り、
メルは「メルキュリオ・ズィルバー」としてズィルバー伯爵のもとに引き取られた。





「・・・・なるほど、でもメル、いいのか?
 もし君の母と戦うことになってしまったら・・・」
「その時は、ぼくも覚悟を決める。」

メルはいつもののほほんとした雰囲気とは打って変わって、真剣な顔つきであった。
テオドールもそれを見て頷いた。


「それよりも、オルダンの息がかかっていたというのが気になる。
 その時からすでにオルダンは入れ替わっていたと言う事か?」
「いえ、オルダンは当時は大統領でしたが、
 アタール閣下の努力と信頼の勝ち取りで、大統領から降ろされたのでしょう。」
「・・・・なるほど。」

ラーマの説明に納得したテオドール。


「あとね、テオ。」

メルは口を開いた。

「もし「プラタ・ケナ・ファクトライズ」を見つけたら、
 彼には一切攻撃を仕掛けないでほしい。」

テオドールは首をかしげる。
メルは続けた。

「プラタは、ぼくが拷問を受けていた時に何度も助けてくれた弟なんだ。
 彼は公爵に溺愛されてたから、危ない目に合ってないしこちらの味方になってくれるなんて保証はないけど、
 それでも・・・・大事な弟だから。」

テオドールは頷いた。

「わかった、プラタという人を傷つけないように、だね。」

Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.78 )
日時: 2018/02/25 13:01
名前: テール (ID: LAu9zylb)

「ゼウラく〜ん!」

クラルはメルシアと会話していたゼウラに元気よく話しかける。

「ああ、クラルか、どうした?」
「君の魔導書「ウィングルス」に興味あってさ!
 明日の朝までちょっと貸してくれないかな〜って。」

ゼウラは戸惑った。

「あ、いやそれは・・・・」
「お願い、悪いようにしないし、大事に扱うから!」

クラルは手を合わせてゼウラに頭を下げた。
メルシアはクラルに尋ねる。

「クラル、なぜウィングルスを貸してほしいのですか?」
「見たことない魔導書だから、興味があってさ・・・
 それに他の武器や魔導書を改造するときに役に立つかもしれないんだ!」

クラルの訴えにゼウラはしばらく考えて

「しょうがないな、ちゃんと返してくれよ?」
「わーい!ありがとう、じゃあちょっと待っててね!!」

クラルはゼウラからウィングルスを受け取ると、
物凄い勢いで走り去ってしまった。

「・・・・あわただしい奴だなぁ・・・」













フィーが、調理場近くを歩いていると

「・・・・!!」

鼻を劈くようなきつい刺激臭が漂っていた。
フィーは顔をしかめ、調理場に入るとクララが鍋を回していた。

「クララ、なんだこれは」
「あらフィーちゃん、今調合してるところなの。」

フィーが鍋の中身を見ると、毒々しい色の液体が
ボゴボゴと音をたてて煮立っていた。
見ているだけでキツいが、一応聞いてみた。

「何を調合している?」
「うーん、もうちょっとまっててねえ。」

クララがそういうと、さらに鍋を回す。
すると、急にカッと鍋が光り・・・

「・・・・!?」

フィーはとっさに伏せた。
その瞬間、鍋がボンッという爆発音を上げて、爆発した。

「できたわあ〜」

爆発に巻き込まれたクララは、顔を真っ黒に染めていたが、
気の抜けた声で手に何かを持っていた。
フィーは立ち上がり、クララの手に持っているものを指さした。

「それはなんだ?」
「これは魔封じの秘薬。前にフィーちゃんを助けた
 魔術の効果を消し去る秘薬よお。」

瓶に入った緑色の液体を指さす。

「なんか嫌な予感がするから調合して作ったのよ。
 一応5個くらい作ってあるから、フィーちゃんにもあげるわねえ」

クララは瓶をフィーに手渡した。
フィーは瓶を受け取り、胸元に入れた。

「感謝する。」

























その場所には、光が差し込まず、全てが闇に包まれていた。
空気もよどみ、腐臭が鼻をつくその場所で、
一人の神官が弱弱しく・・・ただ生きたいと望み、冷たい地面に倒れていた。
立ち上がろうにも、既に衰弱し、そのような力は残っていない。

「だ・・・・だれか・・・・」

神官は声を出した。
その声はひどくしわがれていた。

「クラル・・・・クララ・・・・ぁ・・・・」

神官の声がその場所に響くが、しんとした空気と不安になるほどの深い闇だけがそこにあり、
誰かの返事などはなかった。

「ここから・・・・だしてくれ・・・・・・」

神官はそう言い残して、再び地面に顔を突っ伏した。