二次創作小説(紙ほか)

Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.83 )
日時: 2018/02/27 19:23
名前: テール (ID: LAu9zylb)

翌朝、テオドール騎士団は調査のために若干名が
ファクトライズ公国へ出向く準備をしていた。


「ゼウラく〜ん!!」

クラルは朝だというのに騒がしくゼウラの下へやってきた。

「おはよう、クラル。」
「おはよっ!いろいろわかったんだよこの魔導書の特性!
 すっごい珍しいんだよ、少なくとも地上で作られたものじゃないんだ!」

クラルは目を輝かせて早口で語る。
ゼウラは困り果てた顔で魔導書を受け取った。

「あとね、ウィングルスの技術を生かして作った「疾風の短剣」をあげる!」

クラルはズボンのポケットから鞘に納められた短剣をゼウラに渡した。

「お、俺、短剣は使えないんだが・・・」
「これ、特殊な短剣で、魔道の適性があれば自然と使える魔法の短剣だよ。
 護身用だから切れ味とかは悪いかもしれないけどね・・・」

ゼウラは「ありがとう」といって、ローブの中に短剣をしまった。
そしてクラルは隣にいるメルシアにも、何かを渡した。

「メルシアさんには、「アクロメニア」の技術を参考にして作った
 「蒼海のカトラス」をあげるね!」

その手に持っているものは蒼く美しい宝石が埋め込まれた
片手でも扱えそうな片手剣。

「これはね、海の女神「セドナ」様の涙って言われてる特別な宝石で、
 水族のポケモンが持ってると力を与えてくれる・・・・らしいんだよ。」
「そんな特別な宝石が埋め込まれた剣を、私にいいのですか?」

メルシアの質問に、クラルは腕を頭の後ろで組んでにこりと笑う。

「いいよ、ボク作ったり直したりするの好きだし、壊れたら直すから遠慮なく言って!」
「ありがとうございます、クラル。」

メルシアはぺこりと頭を下げた。

「あ、そろそろ時間だね、一緒に行こうよ!」

二人は頷いて、クラルと共に集合場所へと向かった。

















テオドールを始めとする、
アルト、ラーマ、エルドゥ、メル、ジョリー、
クラル、クララ、フィー、ディーノ、リラ、サラ、メルシア、ゼウラ
・・・・その他各部隊の約100名程度の部隊が北西のファクトライズ公国へと向かっていた。

ここ共和国は緑と水源、陽の光があり、
大陸でもっとも豊かな国だといわれている。
そのため、炎族、水族、草族にとって住みやすく、まさに理想郷であった。

そんな共和国の村や町を通り抜け、
テオドールたちはついに目的地である公国にたどり着いたのであった。









「公爵、首都からの使者「テオドール・ルツ・レヴィア」と名乗る者が、謁見を申し出ております。」

公国の城の「フィズィ・ケナ・ファクトライズ」の自室に一人の兵士が
テオドールたちの謁見の申し出を報告に入室し、
深緑の長い髪、金色のサークレット、蛇のような鋭く冷たい眼差しをした高貴な女性・・・
フィズィは、兵士に振り向き、口を開いた。

「「テオドール」・・・・。ふむ、謁見を許そう、通せ。
 妾もすぐに向かおうぞ。」
「は!」

兵士は短く返事し、部屋を出た。
フィズィは、その様子を見届け、
口から二股に分かれた長い舌を出し、にやりと笑う。

「レヴィアの王子殿、か・・・くくく、ようやく妾の前に現れたか・・・」

Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.84 )
日時: 2018/02/26 19:52
名前: テール (ID: LAu9zylb)

ファクトライズ公国に入る数十分前・・・・


「二手に分かれる?」

テオドールはアルトの言葉を繰り返した。
公国へ入る直前にアルトが提案したのである。

「はい。・・・・なんか妙に奥歯が痛むんですよね、
 こういう時は絶対悪いことが起きますから、念には念をと。」
「・・・・確かに殿下、私も嫌な予感がします。
 これは何かが起きるかもしれません。」
「・・・・・。」

アルトもラーマも気難しい顔をしていた。
テオドールもなんだか胸騒ぎが収まらないでいる。

「わかりました、二手に分かれましょう。」

テオドールは提案をのんだ。
そこでアルトはさらに提案する。

「公爵に会う班は、なるべく少人数がいいと思います。
 あくまで「調査」ですから、あまり目立たない方がよいかと。」
「一理ありますね、では、私を始めとするメンバーを・・・・」




そして、テオドールとアルト、ラーマ、エルドゥが
首都からの使者として公爵へ謁見することになった。

そのほかは、公国の情報収集や怪しい場所への侵入など、各々別行動となった。















「わかっているな、フィズィ。貴様を公爵まで仕立て上げたのは私だ。
 必ずテオドール・ルツ・レヴィアを生かして捕らえ、こちらに送るのだ」

「・・・・御意。」

「失敗は許されぬ、監視もそちらに送っている。」

「・・・・・全ては、———様のために。」


鏡に向かってフィズィは誰かと会話をしていたようだが、
すぐに謁見の間へと歩み出した。



「母上!」

そこへ、フィズィと同じく深緑の短い髪を揺らす赤い瞳の高貴な服装の少年・・・
プラタ・ケナ・ファクトライズが廊下を急ぎ足でフィズィの下へやってきた。


「母上、また「あの男」と話されていたのですか?」
「なんのことじゃ、プラタ。
 それにそなたを謁見に同行させるつもりなどない、自室に戻るがよい。」

プラタは負けじと口調を強める

「もうあの男と関わるのはおやめください!母上はあの男にだまされているのですよ!」
「口を慎むがいいプラタ!」

フィズィはプラタに怒声を浴びせる。
プラタは一瞬ビクッと身体を震わせた。

「あのお方を愚弄するのであれば、貴様とて容赦はせぬぞプラタ!下がれ!」
「・・・・。」

プラタはうぐっと声を漏らして、肩を落としながら自室へと向かった。
そして、フィズィは何事もなかったかのように、謁見の間へと歩んだ。


















テオドールたちは、謁見の間にて、周りを見ていた。
高級な調度品の数々、エルドゥぐらいありそうな大きなシャンデリア、
埃一つ落ちてない綺麗な内装・・・・

レヴィアの王城程ではないが、広く開放的でケチの一つもつけようがない場所であった。


「外の班は大丈夫でしょうか?」
「まあ、心配ないだろう・・・」
「いざとなれば私たちが命を張って殿下をお守りすればいいじゃない」
「そういう問題じゃないですよ!」

アルトとラーマ、エルドゥの三人は周りに聞こえないように
ヒソヒソと声を殺して会話していた。



「待たせたのう、レヴィアの王子よ。」

そこへ、フィズィが堂々と入って、玉座に腰かけた。

「して、妾に何用じゃ?」
「・・・・はい、アタール閣下の命により・・・」

テオドールは、アタールの気がかりや公国の現状を知るために、
用意していた疑問をフィズィに投げかけた。

























「みんな何かに怯えてるみたいだな
 誰も公爵についてなにも吐いてくれないや。」

ゼウラがふと口に出した。

「公国の平和はハリボテだった・・・という可能性が高くなってきましたね。」

メルシアは公国の名物だという「フルーツミルク」を飲みながらゼウラに返事をした。

「・・・・・。」

ゼウラは肩をすくめて呑気なメルシアに声も出ず呆れていた。


「しかし、「黒い魔道士」が度々城に訪問していた・・・って情報は気になるな。
 これは王子にも報告した方がいいと思う。」
「そうですね。」



「それ飲んだら、聞き込み調査の続き、いくぞ。」
「はい!」

メルシアは真顔で元気よく答えた。

Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.85 )
日時: 2018/02/26 22:21
名前: テール (ID: LAu9zylb)

「ディーノさん!あっちの方とか怪しくないですか?」

サラとディーノは公国の街中を探索していた。
サラが指さしたのは、クレープの屋台であった。

「・・・・サラ。」

ディーノが心底呆れた顔でサラを見た。
するとサラはふくれっ面でその場でびょんびょんと跳ねる。

「いいじゃないですかー!歩いてばっかじゃいい案も浮かびませんよ!」
「さっき休憩した。これ以上休むならリラに報告する。」

ディーノの言葉に「うぐっ」と詰まらせるサラ。
クレープ屋に未練タラタラ、横目に先を歩くディーノについていく。


「サラ、あそこは確実に怪しい。」

ディーノはふと指さした場所は、下水道の入り口であった。

「えぇ!?あそこに入るんですか・・・・?」
「ああいう場所に秘密がある、これ相場。」
「そ、そういうものなんですか・・・?」

ディーノがずいずいと入っていくので、独りになりたくないサラは
ディーノについていった。

入ってみると、下水道内は外より湿気があり、むわっと暖かいのである。

「やっぱ雰囲気悪いですよディーノさん・・・」
「下水道だからな」

ディーノは靴の中に下水が入ろうが、関係なしに進んでいく。
サラはそれを見て、「男らしいなぁ・・・」と感心混じり呆れ混じりで見ながらついていった。



しばらく歩いていると、重そうな扉を発見する。
その扉の前には見張りがいて、厳重に周りを監視していた。

「あんな場所になんで扉が?」
「・・・・それよりも、こんな場所に見張りを置くのはおかしい。何かある。」

ディーノが推測していると、トロッコのようなものが走ってきた。
トロッコの中身はよく見えないが、金色の何かであると予測できた。

「あれは・・・?」
「わからん、ここからじゃよく見えない。」

サラはもう少しよく見ようと、木箱から顔を出す。

「誰だッ!?」
「ひゃうっ!?」

サラは思わず首をひっこめた。
ディーノは弓を構え、攻撃のチャンスを窺う。
しかし、こちらに気づいたわけではなさそうである。

見張りの前に現れたのは、白いフードの女・・・ルルであった。


「首尾はどうか」

ルルは見張りに尋ねた。
相変わらず感情のない声であった。

「あ、あの人は?」
「ルルだ。俺の元雇い主の側近みたいで、金魚の糞みたいについていってる。」



ルルと見張りがしばらく会話して、ルルはその場から離れようとした。


しかし、ルルはディーノとサラが隠れている木箱に近づいた。

「ルル様、どうされました?」
「ネズミが紛れ込んでいる。」

ルルは右手に黒い剣を構えている。
サラは真っ青な顔をして、ディーノに抱き着いた。

「ディ、ディーノさん!」
「しっ、なんとか凌ぐぞ。」
「う、うう・・・!」

ディーノは手に流木で作った弓に矢を引き、構えた。
サラは斧を構えて、臨戦態勢に入る。


「・・・・やはりネズミか」

ルルは木箱の上からディーノとサラを見下ろしていた。

「!?」
「上から!?」

二人は驚いてルルを見た。
ディーノは咄嗟に矢を放つが、ルルはそれを避けた。
そして、ディーノに斬りかかる。
しかし、その間を割って、サラは斧でルルの剣を受け止めた。

「ディーノさん、ここは一旦退きましょう!」
「兵士!こいつらを逃がすな!」

ルルは兵士たちを呼び、ディーノとサラを取り囲んだ。

「そ、そんな・・・!」
「逃げられない、捕まる。」

「貴様らネズミでも人質として役に立つだろう、捕らえよ」

ルルは兵士に命じる。
兵士たちは二人を捕らえようとじりじりと近づいた。



「年貢の納め時、すまんアッシュ」
「副長〜!!」