二次創作小説(紙ほか)

Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.92 )
日時: 2018/02/28 20:56
名前: テール (ID: LAu9zylb)


「ッ・・・!!」

突然、仮面をつけた少年が、剣を持って踊るように切り込む。
揺れる金髪と灰色のマントが水と共に舞い、
ディーノとサラを捕らえようと近づいた兵士たちが一掃される。
ディーノとサラは驚いて目を見開いた。

「な、なに!?」

サラは思わず口に出した。

兵士たちが全員倒れたが、ルルは微動だにしなかった。
ディーノは、仮面の剣士に尋ねる。

「お前はだれだ?」
「僕はルクス。ルクス・イルミナル。」

ルクスは振り返らずにそう名乗った。


「ルクス・イルミナル・・・・最近閣下を嗅ぎ付けているドブネズミか。」

ルルは感情のない声だが、忌々しそうに唇をかんでいた。


「あなた方が「魔力片プラグ」を大量に集めてることはわかっている、
 神竜の名において、あなた方を拘束する!」

ルクスは剣をルルに向け、強い口調で叫ぶ。
そして、サラとディーノに顔を向けた。

「おふたりはここから脱出し、王子殿と合流してください!」

ディーノは、無言でうなずいて、サラを抱きかかえ、全力で出口へと走った。

「あ、え、ちょっと!?」

状況を理解できていないサラは、ディーノの腕の中で戸惑っていた。
ルルはそれを見て、ディーノに向かって短剣を投げつけた。
しかし、ルクスが短剣を叩き落とす。


「・・・・・ルクス、貴様は生かして帰さない。」

ルルは剣を構えた。
ルクスはそれに応じて無言で武器を構えた。

(月の神子ルル・アルバーニャ・・・一瞬の隙も許されないだろう・・・)

ルクスは額から一筋の汗を流した。




















「ディーノさん!私、走れますから!」

ディーノに抱かれたままのサラは顔を真っ赤にしてディーノに叫んだ。

「ん?そうか。」
「えっ!?きゃあっ!!」

ディーノはパッと立ち止まり、サラを放した。
ばしゃんと音を立てて水しぶきが飛び、サラは尻もちをついた。

「もう、ひどいです、いきなり放すなんて!」
「すまん。」






二人は下水道の出口を目指しつつ、歩いていた。

「あ、あの、聞きたいことがあるんですけど・・・」

サラはディーノに恐る恐る質問する。

「なんだ?」
「さっきルクスさんが言ってた、「魔力片プラグ」ってなんですか?」

ディーノは気難しい顔をしたが、すぐに答える。

「サラ、ポケモンたちはなぜ魔術が使えるかわかるか?」
「え?・・・・いいえ。」

「ポケモンの神官や魔術師の心臓には魔力の源である魔力片が存在する。
 魔力片は、人によって色も輝きも違う。
 そして、魔力片を体内に取り込むと、魔力も強くなる。
 だが、問題がある。」

ディーノは言葉を詰まらせる。
サラはすかさず聞いてみた。

「問題、ですか?」
「魔力片は、心臓を潰さない限り手に入らない。」

サラは、ぎょっと体を震わせた。
ディーノは続ける。

「魔力片は命そのもの、それを手に入れるのは
 禁忌を犯していると同義。
 だから魔力片という言葉自体口に出す事すら忌み嫌われてる。」

ディーノが話を終えると、出口の光が差し込み、
思わず二人は目を伏せる。


「・・・・なるほど、そうだったんですね・・・」

サラは頷いて納得した。























「サラ!ディーノ!無事で!」

サラとディーノを見つけて、リラは歓喜の声を上げた。

「センパイ〜!」

サラはリラに抱き着こうとしたが、リラは顔をしかめて少し引いた。

「すっごい臭うわね・・・」
「あ、う・・・」

リラの言葉にがっくりとうなだれるサラ。


「それよりも重要な情報を得た。」

ディーノがリラの後ろにいた仲間たちの方を見る。
クラルはメモを用意して、顔を近づけた。

「どんなどんな!?」

ディーノは下水道で見た光景を淡々と説明した。
ジョリー、フィーは無言で考え込んだ。



「皆と合流した方がいいわね。」

と、クララは真剣な表情で提案する。
ジョリーもそれに頷く。


「そうだな、情報を整理する必要がある。」
「よし、みんなを探そうよ!」

クラルは明るく振る舞った。

Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.93 )
日時: 2018/03/02 09:21
名前: テール (ID: LAu9zylb)

「・・・・公爵、お時間を取らせてしまい、申し訳ありません。
 これにて我々はレーベンへ帰還します。」

テオドールはフィズィに頭を下げた。
アルト、ラーマ、エルドゥも跪いたまま頭を下げていた。

ふとアルトは周囲を見る。

(・・・・鏡に誰か映ってる・・・、兵士じゃないみたい。白髪・・・・?)

アルトは鏡に映っていそうな人物を目で追うが、それらしき人物はいない。
いよいよ怪しくなってきたので、アルトはクラルからもらっていた短剣をローブの袖に忍ばせた。
そして、ラーマとエルドゥを見てアイコンタクトを送る。
ラーマはそれを見て頷いた。
エルドゥも無言で右手の親指を立てる。


そんなテオドールの部下たちの行動に気を止めず、
フィズィは突然玉座を立ち上がった。

「レヴィアの王子よ、待つがよい。」
「いかがされましたか?」

フィズィは唐突に右腕をテオドールたちに向けて、声高らかに叫んだ。

「皆の者、こやつらをひっ捕らえよ!」

「なっ・・・!?」
「ちょ、聞いてないわよ!」

フィズィの突然の言動に戸惑うテオドールたち。

「レヴィアの王子は生かしておけ、他は殺してもかまわぬ!」

周りにいた兵士たちは、テオドールを捕らえようと武器を持ち、
こちらに向かってくる。

「やっぱりこうなると思ったんですよね!」

アルトは短剣を取り出し、向かってくる兵士の首を掻っ切る。
ラーマもエルドゥもそれぞれ武器を持つ。
いずれもクラルからもらった強化した武器である。

「公爵、突然何を!?」
「「あのお方」が貴様を帝国に送るよう命が下ってのう・・・
 本来なら妾から出向く手はずだったが
 貴様が此処に来てくれるとは、レーベンまで行く手間が省けたぞ。」

フィズィはテオドールを見下し、嘲笑する。
テオドールは舌打ちをし、兵士たちを居合い切りでなぎ倒した。

「殿下、ここは逃げまあぐぁ・・・ッ!」

アルトはテオドールに向かって叫んだが、そこを兵士に狙われ、
腹に槍を貫かれる。

「アルトッ!・・・野郎!!」

ラーマは激昂し、その兵士に向かって強化したピラムを投げつけ、倒すが
兵士は次々に現れる。

「あんたたち、いい加減に・・・!」

エルドゥが斧を振り回す。
しかし多勢に無勢、3人はたちまち取り押さえられてしまった。


「みんな!今・・・」

テオドールが3人の下に近づこうとした瞬間、
フィズィはテオドールを睨んだ。

「・・・!?」

テオドールは身体が突然しびれて動けなくなり、そのままその場に倒れた。
フィズィはテオドールを見下ろし、くくくと笑う。


「ふん、他愛もない・・・・連れてゆけ。」
「ハッ!」

Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.94 )
日時: 2018/03/02 10:59
名前: テール (ID: LAu9zylb)

メルとプラタは、何やら騒々しいので、隠れながら謁見の間の中の様子を見ていた。

テオドールたちの抵抗もむなしく、4人が取り押さえられていたのであった。
プラタは飛び出して助けようとしたがメルはそれを止める。

「兄さん!何で止めるの!?」
「落ち着いてプラタ。この大人数相手じゃぼくらも・・・」
「う、ぐ・・・」

プラタはうなだれる。
そして目の前で理不尽に捕まってしまう王子一行を助けられないという
歯がゆさも増して、ただ指をくわえてみてるだけの自分が情けなく感じた。

「プラタ、兵士が出てくる、一旦ここは退いてテオ達を助けよう。」

プラタは頷いてその場から離れた。








重苦しい音と共に牢獄の鉄格子が閉まり、中にいるアルト、そしてラーマ、エルドゥは、うなだれていた。

「アルト、無事か?」

ラーマはアルトに声をかけながら、ローブを脱がせて
貫かれた腹の応急処置を行った。

木綿糸の柔らかい布を傷口に貼り、そのあと包帯で腹全体を巻き付けて完了だ。
出血はすでに止まっているので、今はそれだけで十分であった。
幸い急所を外した上に思ったより傷も浅かったので、運がよかったとしか言いようがない。


「ラーマ、ありがとうございます。
 僕、死んじゃったかと思いました」

アルトは若干苦しそうではあったが笑顔を浮かべる。

「これからどうしよう、殿下はどこかに捕まったみたいだし・・・」
「うーん、なんとか外にいる連中にこのことを伝えられるいい方法がないもんか・・・」

エルドゥもラーマも頭を抱えて悩んでいた。
するとアルトがバッグから紙を取り出していた。

「ラーマ、エルドゥ、これを使ってください。」
「・・・これは?」

アルトが取り出した紙は、どこからどう見ても普通の紙、
紙の端にクララのサインが描かれている以外真っ白である。


「これは紙伝書鳩、クララさんが何かあった時にって事前に持たせてくれた魔法の紙です。
 これにメッセージを書いて4つ折りにすると、魔法が働いて鳩の形になって
 どこから飛ばしても目的地に必ずつくという
 便利ですけどかなりコストが高いものです。」

アルトの説明にラーマもエルドゥも紙を凝視する。

「とりあえず、今の現状をこれに書いて、奴らに伝えれば・・・!」

ラーマはアルトから借りた羽ペンを使って、
今置かれている状況を詳しく書いて、紙を4つ折りにした。

すると、紙はふわっと浮遊し、手に触れていないのに紙が折れ、形を整えていった。
そして、ハトの形になるとラーマの手のひらに止まった。

「それを飛ばしてみてください。」

ラーマはアルトの言われるがままに鳩を空中に投げる。
それは不思議なことに、ばさっと翼を広げて壁を通り抜けて飛んで行ってしまった。


「すげえな・・・」
「あとは、皆さん次第ですね・・・・」

アルトはまだ痛む腹を押さえてぽつりとつぶやいた。


















別室の暗く冷たい牢獄に、両腕を手枷で繋がれ、壁に磔にされるテオドールは、
一人天井から差し込む一筋の光を見て、捕まってしまった3人を思う。

「アルト、ラーマ、エルドゥ・・・」

テオドールはぽつりとつぶやいた。

Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.95 )
日時: 2018/03/02 23:48
名前: テール (ID: LAu9zylb)

「メルシアさん!ゼウラくん!」

クラルは情報をまとめているメルシアとゼウラを見つけ、手を振りながら近づく。
クラルと共にいたほか全員も無事合流した。

「お、クラル、そっちの首尾はどうだ?」
「重要なことが発覚したんだよ!」
「重要なことですか?」

そこでディーノが一歩前に出て、今迄に得た情報を二人にも共有する。


「なるほど、魔力片か・・・だったら今迄の公国の国民たちが何かに怯えていた様子も合点が行く。
 逆らえば拷問、最悪死刑だからな。」
「なんと恐ろしいことを・・・」

ゼウラはこの場からでも見える公国の城を睨みつけ、
メルシアは両手を強く握り、うつむいた。


と、そこへ白い何かが一行の下に舞い飛んできた。


「あら、あれはアルトちゃんあげた紙伝書鳩だわあ」

クララが呑気なことを言いながら、紙でできた鳩に手を伸ばす。
鳩はクララの手のひらに乗ると、くしゃくしゃと音を立てて4つ折りの紙に変形した。

「なんて書いてあるの?」
「ちょっと待ってねえ」

クララは紙を広げ、読み上げた。
紙にはこう書かれていた。



公爵に捕まった
助けに来てほしい

ラーマ



「あの3人、捕まったようだな。
 おそらく、王子も。」

ジョリーは顎に手をあてて推測した。
そこにフィーが突っ込む。

「しかしどうやって助ける?
 こちらは少数、あちらはこちら以上の兵力だ。」




「二手に分かれて城に侵入してみてはいかがでしょう」

ふとリラは提案した。
ディーノは城をよく見て、周りも見まわす。

「リラの提案、悪くない。
 俺が城の見張りを撃ち落せば、侵入できる。」
「それに二手に分かれて敵さんの不意を打てば、簡単に事が運ぶかもしれません!」
「というか、事は一刻を争うんだ、それでいこう!」

ディーノもサラもゼウラも同意した。

「どうチームを分ける?」
「そうだなぁ・・・」

フィーの質問にクラルが頬に人差し指をあてて考える。










相談の後、

城の西からは、ジョリー、サラ、フィー、クラル。
城の東からは、メルシア、ゼウラ、リラ、クララが攻めることにした。

ディーノは自身の自慢の弓「千里の弓」で城外の邪魔な兵士を討つということで
一行は後に城内で落ち合うことを約束した。

「ゼウラ、しっかり女の子たちを守るんだぞ」
「わ、わかってるさ!」

ジョリーの励ましに顔を赤らめながらゼウラは声を荒げている。


「じゃ、俺は見晴らしのいい場所に行く。
 見張りがいなくなったら侵入を開始してくれ。油断するな。」

ディーノはそう言い残すと、颯爽と走り去ってしまった。

「よし、いこう!」
「うん!」

フィーの言葉にクラルが元気よく返事をする。


「私たちも・・・」
「ええ、テオちゃんもアルトちゃんもラーマちゃんもエルちゃんも無事だといいわねえ。」

クラルはのんびりとした口調で皆を心配していた。




各自、公国の城を目指し、歩み始めた。
ディーノはというと、既に城の周りにある木々に紛れ、
姿を隠しながら弓を引き矢を放つ。

流木でできているとは思えない頑丈な弓は、素早く兵士たちを静かに射貫いていった。


「な、なん・・・ぐあっ!」
「しんにゅ・・・げぇっ!!」

次々と矢を放ち、巧みに兵士を倒していく。

「うん、今日は調子がいい。」

ディーノはあらかた倒していくと、ぽつりとつぶやいた。
その顔は普段仲間に見せるような顔ではなく、口元に笑みが見えた。


Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.96 )
日時: 2018/03/03 20:22
名前: テール (ID: LAu9zylb)

ルルとルクスは互いの剣を打ち合わせていた。
激しい打ち合い、一歩も譲らない戦いが続いている。

「くっ・・・!せやぁっ!!」

ルクスは剣を刺突させ、ルルに切り込んだ。
しかし、ルルはそれを舞うように剣で受け流す。
鋭く剣がこすり合う音が響き、水しぶきが舞い上がる。
ルルが反撃し、ルクスの顔に切れのある重い一撃を与える。

「あがぁっ・・・!!」

ルクスは顔に衝撃が走り、その拍子に仮面が外れてしまう。
仮面は宙を舞い、下水の中に水しぶきを上げて落ちた。

ルクスは長い前髪で顔がよく見えなかったが、
ルルからの場所であるなら顔がよく見えた。
ルルは無言で仮面の外れたルクスの素顔を見る。


「女か・・・」

ルルはつぶやいた。



ふとルルは勢いよく振り向き、何かを凝視していた。


「・・・・?」

ルクスはルルの様子を窺う。
ルルはキッとルクスを睨みつけ、無言でくるりと振り返って走り去った。

「待て!」

ルクスはそれを追うが、ルルはくるりと回りながらルクスに向かって短剣を投げつけた。

「・・・・!」

ルクスはとっさに剣で短剣を弾いた。
その隙にルルは走り去ってしまった。


「くっ、逃がしたか・・・」

ルクスはふと弾いた短剣を拾って、じっくり眺める。
その短剣には「ラーマ・ラインバルディ」と刻まれていた。

「「ラーマ・ラインバルディ」・・・確かレヴィア王国竜騎士団副団長だったか・・・」

ルクスはふと、魔力片が大量に積んであるトロッコを見る。

「やれやれ、やることが多いな。」

ルクスはため息交じりにそうつぶやき、トロッコへと歩んだ。
















メルとプラタは、牢獄近くにたどり着いていた。


「テオ達はここに?」
「たぶん。」

声を殺してひそひそと会話をする二人。
プラタはともかく、メルは見つかればひとたまりもないだろう。
二人は牢獄の様子を窺っていた。


「牢獄の見張りは1、2人くらいしかいないんだ。
 緩んでいる隙を見て、兄さんの魔法と、僕の投げナイフで見張りを倒してしまえば、
 多分皆さんを助けられるはず。」
「そうだね、それでいこう!」

メルとプラタは様子を窺って見張りが手薄になるのを待ち構えていた。


















ジョリー組は、無事西の大窓から侵入を成功し、
見張りを一人ひとり倒しつつ、進んでいた。


「やっぱり、お城は広いね。」
「城だからな。」

クラルが城内を見回しながら感心していた。

「しっ、隠れろ!」

フィーは声を押し殺し、隠れるよう促す。
4人は物陰に隠れて様子を見た。



「レヴィアの王子、捕まってから無言でうつむいているんだ。」
「まあ、満身創痍だったしなぁ・・・
 しっかし、公爵の考えてることはわからんぞ。
 王子なんか捕まえてどうすんだ?」
「さあ・・・あとあの3人の処理はどうするよ」
「あいつらの事はどうにでもしていいって言ってたしなあ。
 まあ、女は娼婦としてアバルで売って、男は処分だな」

兵士が二人、会話をしながら歩いて行った。
サラは会話を聞いて慌てた。

「あわわ、早く助けないと!!」
「しかし、場所がわからん・・・
 話を聞く限り、王子と3人組は別々に収容されてるみたいだしな。」
「・・・・。」

ジョリーの言葉に考え込むフィー。

「ねね、兵士さんを一人捕まえて案内させるって言うのはどうかな?」

クラルは提案する。

「まあ手っ取り早いのはそれだが・・・吐くか?」
「実力行使で吐かせる。」
「お、穏便に行きましょうよ・・・」

フィーの目つきに怯えるサラ。
ジョリーもフィーに賛同した。

「まあ、自分の命を量りにかけりゃ簡単に吐くだろ」
「じゃ、次に通りかかった兵士さんを捕まえよう!」

そして4人は、周りに注意しながら、兵士が来るのを待った。






















一方、ゼウラ組はというと・・・

ジョリー組と同じく東から無事に侵入できていた。


「ジョリーたちは大丈夫でしょうか」

メルシアは剣を握りしめながらつぶやく。

「ジョリーちゃんなら大丈夫よ、クラルちゃんがついているもの」

クララはのんびりした口調でにっこり笑う。



そして、見張りに注意しながら奥へと進む。
すると、大きな重い扉の前にたどり着いた。

「あら、ここ・・・」
「しっ、中から何か聞こえます!」

クララが扉を見上げていると、リラが静かにするよう呼びかける。
4人は、扉に耳をあてて、中の様子を窺う。



「うがあぁぁぁっ!!」

少年の叫び声が中から響いた。
あの凛とした声・・・・テオドールのものであった。


「ふん、この程度でこたえるか・・・
 やはり薬が効いておるようじゃのう」

女の人の声も聞こえる。
喋り方からしておそらく公爵のものだろう。

「・・・くっ、私は・・・・がっ!ああっ!!」
「ほほほ、もっと叫ぶがよい!気が遠くなるまでのう!」


メルシアは青ざめた顔をして、剣を持って中に飛び込もうとした。
しかし、それをゼウラに引き留められる。

「落ち着け!今飛び込んでヤツへの勝算でもあるのか!?」
「で、でも!」

メルシアは居ても立っても居られない様子である。
さらにテオドールの悲鳴が中から響く。

「があああぁぁぁっ!!」

「殿下・・・・!なんとかならないのですか!?」
「・・・・ッ!」

リラも冷静さを欠き、クララもいつもとは違い、汗を一筋流す。


「侵入者か!?」
「くっ、まずい!」

見張りが4人を見つけ、バタバタと走り迫る。
4人は一旦その場から退くことにした。