二次創作小説(紙ほか)
- いつもの幻想郷 ( No.1 )
- 日時: 2018/03/26 22:40
- 名前: 未碧 (ID: eD.ykjg8)
日本のどこか、結界に囲まれた楽園、幻想郷。
その中、毒茸の胞子が飛び交う魔法の森。森の中、人と妖怪が共存する幻想郷で人間が多く集まる人里に近い場所。そこには一軒の家が建っていた。
そこに住むのは人形の様な少女。彼女の名を、アリス・マーガトロイドという。その彼女は今、交渉の真っ最中だった。
相手は幻想郷の妖怪の賢者であり管理人、八雲紫。
アリスは上海人形にお茶をつがさせると、小さくため息をついた。
「完全自律人形を作る目的も、意味が分からなくなってきているわ。」
最近、完全自律人形は生き物と変わらないのではないか、と思うことが多い。それに反対に使いにくいかもしれないと思うこともある。
紫は上品な仕草でティーカップを傾けると言った。
「つまり、貴方は自分の目的が詰んでいるから、一旦魔術の研究に戻って、外の世界の魔術を学びに行きたい、とおっしゃるのね。」
アリスは紫を見ると、頷く。本当に、この妖怪は考えていることが分からないから苦手だ。
「ええ。」
紫は口を開いた。
「そう。申し訳ないけれど、ここの住民をそう簡単には外の世界に行かせることは出来ませんわ。」
アリスはその返事を予想していたため、小さく肩を竦めた。
「何か条件付きでなら、どう?」
紫は一瞬考え込んだ。
「それでも、貴方を外に行かせることはできません。でも、そうね。幻想郷に外の世界の調査として行ってくれるのなら許可しますわ。」
アリスは暫くの間紫の考えを読もうと首を傾げていたが、頷いた。
「それで良いわ。ありがとう。」
紫は扇をぱっと広げるとゆったりと扇ぎながら胡散臭い笑みを浮かべた。
「それでは、宜しくお願いしますわ。次の新学期、貴方にはイギリスのホグワーツ魔法魔術学校に入学してもらいます。詳しい事はまた後日、お話いたしますわ。それでは御機嫌よう。」
紫はくるりと後ろを向くと端をリボンで結ばれた目玉がうごめく空間、
スキマに入っていった。
アリスは気持ちを切り替え、蓬莱人形にティーセットを片付けさせると言った。
「さてと、交渉も終わったことだし、霊夢のところにでも遊びに行きましょうか。上海、戸締りをして頂戴。」
本当はいきなり調査をするのならと、許可した紫がどういう思惑で自分が外の世界に出るのを容認したのかが気になったが、彼女の言動をいちいち考えていても結果は出ない。
アリスは立ち上がるとスカートの皺を払い、家の外に出た。鬱蒼と木が茂る森の中を抜け、人里を歩く。暫くすると知人の銀髪の三つ編みが見えてきた。
「こんにちは、アリス。買い出しに来たのかしら?」
丈の短いエプロンドレスにホワイトブリム。吸血鬼、レミリア・スカーレットに仕えるメイド長の十六夜咲夜だ。
アリスは首を振った。
「いいえ。適当に霊夢の所にでも行こうかと思っていたのだけれど。パチュリーは今、空いてるかしら?」
偶然咲夜に会ったのだから、紅魔館に行ってパチュリーに外の世界に調査に行くことを報告しておこうと思ったのだが、今日も魔理沙に振り回されているのだろうか。
咲夜は頷いた。
「ええ、でも魔理沙が一騒動起こした後だからお休みになっていると思うわ。」
予想は当たっていた様だ。パチュリーが気の毒になってくる。でも報告はしておきたい。
「そう。ついて行っても?」
咲夜は快諾した。
「ええ、ご自由にどうぞ。」
アリスは咲夜の右側を歩きながら思案した。
一体どんな魔術が普及しているのかしら。画期的な技術は存在する?紫は私にどんな調査をさせようというのかしら。