二次創作小説(紙ほか)

第一夜 人間の妹、喰種の兄 ( No.1 )
日時: 2018/03/25 10:18
名前: にゃあこ (ID: s00TEuml)

友達数人には苗字、結月と呼ばれていてその他には星来(せいら)と
呼ばれている。
元々は一人っ子だが義理の兄がいた。顔はまだ見たことがないが
母は彼が喰種だという。
「えっと確か『あんていく』って言ってたよね。じゃあここか」
結月 星来は扉を開け中に入った。
「やぁいらっしゃい」
店長さんらしき老けた男の人がそう挨拶する。
「あ、あの貴方が芳村さん、ですか?」
「なぜ私の名を?」
こう聞いてくることは予想通りだった。
「あ、私の友だちが結構ここに詳しいらしくて…それと色々
 喰種のことを知りたいなーって…」
「なんで君は知りたいんだい?」
それを聞かれ少し戸惑ってしまう。
「私、助けられたことがあるんですよ。その喰種に…黒い鬼の面を
 つけていてもしかしたら知ってる人がいるんじゃないかって…
 会えたらお礼を言いたくて…」
「あぁ、その子なら…」
そう言って芳村はテーブルを拭いている少年を呼んだ。
どうやら常盤 唯斗(ときわ ゆいと)というらしい。
彼も驚いていた。
「黒い面をつけた喰種、妖怪と呼ばれているのは彼だ」
少し驚いてしまったが結月は椅子から降りて彼の前に立った。
「えっと一昨日、助けてくれてありがとう」
「そんな御礼なんて良いのに…」
タジタジになりながら彼はそう言った。
こうして結月はそれからというもの何度もここに来るようになって
いった。

 ■

「どうしたんだ?ずっとあの人間の子を見張るなんて」
天狗の面をつけた少年は黒い狐の面をつけた青年にそう聞く。
「…いやなんでもない」

第二夜 黒い竜の喰種 ( No.2 )
日時: 2018/03/25 12:01
名前: にゃあこ (ID: s00TEuml)

またまたあんていくに結月は来て勉強していた。
もちろん店長である芳村の許可を得て。
「や、やっと終わった…」
早一時間、勉強道具と向かい合っていたようだ。
「お帰り竜牙くん」
いらっしゃい、ではない言葉を聞き結月は扉のほうを見た。
黒いコートを着た少年がいた。
「そうだ、結月ちゃん、ちょっとおいで」
名指しされ結月は全教科書を閉じ芳村たちのほうへ向かう。
「竜牙くん、こちらは結月 星来ちゃんだ。きっと良い仲間に
 なるはずだよ。で、結月ちゃん、こっちは沙川 竜牙くん
 黒竜と呼ばれている喰種だ」
結月は礼をした。年上にしか見えない、さらに初対面。
「結月ちゃん、だっけ?そんなに硬くなるなよ、よろしく」
「うん、よろしく」

 ■

結月は夜の街並みを見ながら歩いていた。
ゆっくり話をしていたらいつの間にか夜。
「なぁ嬢ちゃん」
ガシッと腕を掴まれる。
ガラの悪そうな男どもだ。
「ちょっとこっち来いよ」
ズルズルと引きずられながら路地裏に連れてこられた。
「嬢ちゃん美味そうだな…」
「ッ、喰種…!?」
逃げる準備をしていたがそれは無理。絶対。
すでに後ろも前も右も左も喰種に囲われていた。
これこそ四面楚歌というのだろう。尻尾のようなものが振るわれる。
あれは確か赫子というやつで何種類かあるらしいがあれは尾赫、
だったはず。
頭を抱えその場に伏せた。

第三夜 対面、黒い狐 ( No.3 )
日時: 2018/03/25 18:47
名前: にゃあこ (ID: s00TEuml)

あっという間に喰種たちもいなくなってホッとしている。
だが三人の目の前に黒い狐の仮面をつけた男が現れた。
「…(アイツ確かssレートの黒狐だったか?)」
「あの貴方は?何か御用とか?」
喰種にはもう慣れた。そのため結月の声はハキハキとしていた。
「……」
黒狐は二人を鱗赫で二人を吹き飛ばし結月の前に立つ。
仮面を少しずらし右目の赫眼で結月を見据える。
「この野郎!」
二人が同時に黒狐に攻撃を仕掛ける。だが…。
「‥‥」
彼の回し蹴りで二人はその場に倒れた。
「ふ、二人とも!」
結月は二人に駆け寄る。喰種なだけあり体は頑丈らしい。
「安心しろ殺してない」
凛とした声がする。
「黒狐と呼んでくれ。二人に手をかけて申し訳ない」
「そんな大丈夫です。生きているなら…」
「…ホントにお前は喰種の心を惑わせる。そして俺の心を
 癒してくれる…」
「え?」
小さい声で呟いていたから結月には聞こえなかった。
黒狐はポケットに手を入れ赤い糸を見せた。すると糸が鎖に
変わった。
すぐに元の細い糸に戻る。
「これ、やるよ。役に立つ」
「…?」
「光彩、それがその糸の名前…また会いに来る」
それだけ言い残し黒狐は鱗赫を使い空へ去って行った。
彼の口調はどこか自分のことを知っているような口調だった。
「(あの人、心を癒してくれるとか言ってたな…何か辛いことが
 あったのかな?会えたら聞いてみようかな…)」
結月はまだ目を覚まさない二人を見つめる。

 ◆

黒い狐の面を外し黒狐は素顔を見せた。整った顔に綺麗な肌
風に黒い髪が揺れていた。
「その顔だと彼女に会ったみたいだね、黒狐」
「…」
もう一人の男も天狗の面を外した。橙色の瞳と髪をした好青年だ。
二人は互いに黒狐と天狗と呼び合っている。
「彼女のおかげでスッキリしたかい?黒狐」
「…おかげでな」

第四夜 狙われる理由 ( No.4 )
日時: 2018/03/25 19:58
名前: にゃあこ (ID: s00TEuml)

「あークッソ!」
竜牙は少し苛ついていた。二人でかかったのに黒狐には
傷一つ付けられなかった。
「ま、まぁまぁ落ち着こうよ」
「何言ってるのさ結月!もし何かされてたら!!」
「だーかーらー!!落ち着こう!!その話はもうお終い!」
ついしびれを切らしテーブルを叩いた。

 ◆

結月は外に出た。夕日が出ていて桜が咲いていた。
「少しいいかな?」
結月の肩に触れ一人の少年が声をかけてきた。
二人が構えようとするも結月がそれを制しした。
「何ですか?なるべく手短にお願いします」
少年はマジマジと結月を観察する。
「俺は和也、よろしく」
「私は結月 星来です。よろしく」
和也は結月を見て笑った。
「お前、喰種に狙われやすいだろ?」
「なんかそれ、何度も聞かされました。なんで狙われるんだろう?」
結月にはその理由は分からなかった。確かに最近
喰種に関わることが多くなってきた。
「匂い、だな。たぶんだけど…それに逃げないから新鮮で
 面白いんだろうよ」
「そういうものなんですか?」
あの時、黒狐が言っていたことを聞こうとしたがやめた。
「ねぇ和也が持ってる仮面って狐?もしかして和也はSレート喰種の
 狐?」
「あぁ、後巻き込むことがあったらごめん。先に謝っとく。
 それじゃ」
そう言って彼は消えて行ってしまった。

第五夜 黒狐と狐 ( No.5 )
日時: 2018/03/25 21:21
名前: にゃあこ (ID: s00TEuml)

「ひ、い、いやだーーーー!!!」
グシャッという音がし喰種が倒れた。黒狐はその右腕を噛み千切り
飲み込んだ。
「…」
「へぇアンタがSSレート黒狐、だよな?」
違うデザインの狐の面をつけた青年が黒狐の前に立つ。
「…狐、か」
「俺のことを知ってるのか?それは光栄だな」
狐は二本の鱗赫を出す。黒狐も彼よりも少し黒い鱗赫を出す。
同時に二人が動いた。狐の拳と黒狐の蹴り、二人の手と脚が
ぶつかる。
「やっぱりSSレートなだけはあるな!今までの雑魚とは桁違いだ!
 やっぱり楽しいなぁ…」
「誉め言葉は有難くもらっとく。だが…あまり舐めるなよ?」
力入れ黒狐が狐を吹き飛ばす。壁に背中をぶつけ狐はむせ返るも
すぐに体勢を立て直した。
黒狐は慌てて体を横に逸らす。だが間に合わず狐の鱗赫を赫眼では
ない左目に受けその部分だけかけてしまった。そこからは綺麗な
黒い瞳があった。
「…ならアンタの素顔、見せてもらうぜ?」
「チッ」
流石に分が悪いと考え黒狐は赫子を使い上へ逃げた。

 ◆

「はぁ…はぁ…「ここか」ッ!?」
狐は彼を追いかけてきていた。黒狐は目を見開き、すぐに
脚を動かすがその前に彼を狐の鱗赫が捕らえていた。
「捕まえた。アンタには教えてほしいことがたくさんあるんだ。
 お前、結月 星来とどんな関係があるんだ?」
それを聞き黒狐は下唇を噛んだ。
「……他人に教える義理はない」
黒狐が少し力を入れると狐の鱗赫が破裂する。

第六夜 アオギリと天狗と妖怪と ( No.6 )
日時: 2018/03/25 22:00
名前: にゃあこ (ID: s00TEuml)

しまった…。そう結月は心の中で絶望した。
白スーツ確かヤモリとか呼ばれているドSの男と霧島絢都という
青年に絡まれた。
「(光彩でどう切り抜ければいいんだろう?)」
赤い糸を握りどうにか逃げたい、そう思ったとき。
赤い糸が二本になり壁にくっつく。それだけでどうすればいいか
分かった。
結月はジャンプし壁に着地する。
「なっ!?人間ごときが…!!」
「ヤバッ!」
もう一度ジャンプし地面に着地した。ヤモリの拳で壁に穴が
できた。
「ッ、結月!?」
「妖怪、だったか」
絢都が舌打ちする。
「いったん逃げるぞ!危なすぎるし戦闘は控えたほうがいい!」
彼が手を握り上へ逃げる。だが…。
「がぁっ!?」
「ッ!?」
唯斗、妖怪の鳩尾が殴られ彼は血を吐き出した。
彼は逃げろと言わんばかりの目を向ける。
だが何もできない結月も見捨てるつもりはなかった。
光彩を手に持ちあちこちを行き交うように走り再び彼の前で止まる。
「これは…」
「今の私には足止めしかできないから…」
赤い壁ができあがっていた。
 
 ◆

上空から全部を見ている青年がいた。
「あの子、中々の勇者だね。あのアオギリの樹を前に逃げないなんて
 じゃあそんな君に俺が手を貸してあげよう」
天狗の面を被り直し降りていく。

妖怪は今、二対一対で戦っていた。だが不利であることに変わりは
なかった。
「やぁやぁ妖怪くん、俺と交代してくれよ」
「ッ!?Sレートの天狗」
天狗は結月の耳元で囁く。
「来れない黒狐の代わりに助けに来た」
「え?」

第七夜 天狗の誘い ( No.7 )
日時: 2018/04/27 21:19
名前: にゃあこ (ID: s00TEuml)

「その羽赫…本物の天狗のようだな」
天狗の羽赫はガス状ではあるが鳥の翼のような形をしていた。
「お前のような喰種がなぜ人間を庇う?なぜ弱者を庇う?」
絢都の言葉には怒りが籠っていてドスが聞いていた。
そんな空気の中、天狗は少し間を開け口を開いた。
「そうだなー…強いて言えば恩返しだな」
「お、恩、返しぃ?」
「そうだけど、まぁいいや。とりあえず」
天狗は正拳突きでヤモリの巨体を壁にぶっ飛ばして見せた。
「邪魔なんだよ、そこに立ってると」
「テメェ——ガフッ!?」
天狗は素早く貫手で絢都の急所ギリギリを貫いた。

「おっと、急所は外したつもりだったけど少し抉っちゃった
 みたいだな」
仮面をずらし、左手に着いた血液を大胆に舐めた。
すぐに彼は結月のほうを向いた。
「イヤァ、君も災難だったね!コイツらに絡まれるなんてさ」
「は、はい…でも私、いつもみんなに助けられてばかりで…
 まぁ何もしてあげられないのは事実なんですけどね」
照れながら笑顔でそう言った。

「あ、そうだ!明日の午後一時、ここに来てほしいんだけど
 いいかな?」
そう言って彼はズボンのポケットから一枚の紙きれを取り出し
差し出した。
「え、これって」
「じゃあ、そこで明日待ってるよ!」
それだけ言い残し彼はまたどこかへ消えた。

 ◆

あんていく。
「いらっしゃい」
「よっす、店長さん、トーカちゃん、カヤさん!」
お面を外した天狗はそう挨拶した。
「アンタさ、結月に恋してるわけ?」
トーカの言葉に笑顔が消えた。
「ん〜…知らね。まぁでも助けられたのは事実だしぃ?
 アンタら同様、俺の命の恩人だからな。ってことで、明日の
 午後一時にさ、結月が来るから来たら席に案内してよ」
「了解」
カヤは少し笑みを浮かべながら頷いた。

第八夜 天狗と結月 ( No.8 )
日時: 2018/04/27 21:55
名前: にゃあこ (ID: s00TEuml)

あんていく、店長の芳村に言われた席へ向かうとそこには橙色の
髪と瞳をした青年が座っていた。
「時間ぴったりだな!結月ちゃん」
「へ?」
開いた口が塞がらなかった。子どもっぽい笑顔を浮かべた彼を
見てぽかんとしながら席に座った。
「改めて俺は朱堂 優、もちろんここにいるんだ俺は天狗。
 よろしく!あぁ、それと俺と話すときぐらい敬語なんて硬いことは
 なしにしてくれよな!」
「り、了解!あの私を呼んだ理由は?」
結月は本題に入った。
「俺さ、結構前にお前らに助けられたんだよな。覚えてないだろうが
 その日から俺は人間が好きになったんだぜ」

 ◆

今から約十年ほど前。
その頃の優は欲を抑えるのに必死だった。
理由は自身で大切な人を喰らってしまったから、それからは
食べられなくなってしまったのだ。
「…腹、減ったなぁ。何日喰ってねえんだろ俺」
「はわっ!」
ちょうどその腹辺りに衝撃があり、食欲をそそる良い香りがした。
「セイラ!ごめんなさい」
その香りはセイラと呼ばれた少女からする香りだった。
そのうち彼は欲に耐え切れなくなりついには…。

第九夜 命の恩人 ( No.9 )
日時: 2018/04/27 22:08
名前: にゃあこ (ID: s00TEuml)

軽くだが彼は幼い結月の細い腕にかぶりついた。
「んくっ…うまっ!」
このまま喰いちぎってやろうとも思ってしまったがすぐに我に
帰り彼女の細い腕から離れ口の周りに着いた彼女の血を舐めとった。
やらかした、そう思ったが彼女らがとった行動は違った。
「お腹、空いてるの?」
「ッ!?」
伸びてきた細い腕に目を向けた。噛み付きそうになるも自身の
腕を噛み千切り欲に耐えていた。
「貴方、ヒト食いさんだったのね?」
「ち、ちがっ!!や、ヤダ!モットタベタイ!!違う!」
彼女の母親も袖をまくり彼に差し出した。
母親からも良い香りが漂っていた。
「我慢してはダメよ?貴方優しい怪物さんなのね。私ので
 良ければ全部とはいかないけど血ぐらいなら良いわよ」
二人の笑顔に彼は負け彼女の白い腕に噛み付き血を啜った。

「大丈夫?怪物さん」
二人は彼の顔を除く。
「ありがとう…二人とも」

 ◆

「あ、そういえば確かにそんなことがあったかも?」
結月は首を傾げながらもそう言った。
「それと、黒狐のことなんだけどアイツ、自分で伝えたいって
 また明日同じ時間にここに来てくれってさ」
「り、了解です!じゃあ私、先に帰るね」
「おう、じゃあな!」

第十夜 寡黙の黒狐 ( No.10 )
日時: 2018/04/27 22:22
名前: にゃあこ (ID: s00TEuml)

あんていく。
芳村は黒髪の青年と話していた。
「黒羽くん、もう決心はついたのかい?」
白風 黒羽、彼が黒狐の正体だった。彼は表情一つ変えずに
頷いた。
「黙ってても伝わらない。俺を知ってるのは俺と優だけ」
「なら私は言うことはないね。君も結月ちゃんと出会って
 人間が好きになったのかい?」
彼は黙ってうなずいた。
そのまま彼は何も言わずに出て行ってしまった。
「何アイツ!黙ってばかりで」
トーカは苛つきながらそう言った。
カヤや西尾は何か分かっているらしく黙っていた。
「董香ちゃん、彼はね不器用なんだよ。元々寡黙だから
 上手く人に自分の思いを伝えられない。そんな彼が
 自分から彼女に思いを伝えようとしてるんだ。応援して
 あげようじゃないか」

 ◆

店を出た黒羽は優のもとに帰ってきた。
「よし黒狐!頑張れよ!」
「?」
優に頑張れと言われる理由が分からなかった。
「分かんねえのか?お前の過去を知っても結月はお前を
 嫌ったりしねえよ!」
「…」
無言を貫く彼に呆れながら優はため息を吐いた。

第十一夜 狐の涙目 ( No.11 )
日時: 2018/04/28 15:54
名前: にゃあこ (ID: s00TEuml)

また翌日、今回は結月のほうが先に到着した。
何度か黒狐と会ったとき、なんとなく察していた彼の雰囲気。
それがどうしても知りたかった。
「…結月」
「え?」
その顔に結月は見覚えがあった。

「やっぱりまだ覚えてる、よな…俺の本名は白風 黒羽」
黒羽は結月を見据えながらそう言った。
「話したいんだ。せめてもの償いに…、とても遅くなってしまった。
 でもゴメン、俺がアンタの父さんを…食べてしまった」

 ◆

数年前。黒羽はセイラの父と仲が良くて時折彼女とも会っていた。
「黒羽」
外から雨の音が聞こえ、彼の耳に黒羽を呼ぶ声がした。

「なんですか?」
「黒羽…もし困ったら俺を喰ってくれ」
「…は?」
突然のことで黒羽は驚いた。
彼には妻も娘もいて幸せなのになぜ?
「俺はもう寿命がないんだ。倒れた時は…」
彼は病気を持っていてもう助からないと言われた。だからこそだった。

その瞬間、鈍い音と共に彼は倒れた。
「お、オイ!」
「黒羽!…影からでいい、アイツらを頼む」
幼いセイラはその様子を見てしまった。
「何、してるの?」
掠れた声で彼女はそうつぶやいた。
そっと母親は彼女の眼を、耳を塞いでやった。
黒羽はそのまま彼を骨も血も残らずに食べ切った。
「ごめんなさい」

 ◆

「…もう気にしてないですよ」
「え?」
黒羽は顔を上げた。そこには微笑む結月がいた。
「だって父が自分から頼んだんでしょう?なら私がどうこう
 言うことはありませんよ。何度も助けてくれたじゃないですか。
 私は…貴方みたいに優しい喰種は大好きです!」
彼は再び顔を伏せた。なぜそうしたかはすぐわかった。

「ありがとう…」