二次創作小説(紙ほか)
- 国際指名手配犯と愛 ( No.12 )
- 日時: 2018/04/09 18:34
- 名前: 未碧 (ID: eD.ykjg8)
あの対面の数日後、クレアレネッサは校長室に来ていた。偽名や設定、入学準備について話す機会がなかなか無かったため、渋々校長室に自分から出向かう事になった。
クレアレネッサは不機嫌そうに溜息をつくと、ガーゴイルの石像の前で止まる。
「...砂糖羽ペン」
ガーゴイルが飛び退くのを忌々しそうに見ながら、クレアレネッサは階段を駆け上がった。知らない声がしているが、そんな物不機嫌なクレアレネッサの知った事ではない。
クレアレネッサは仰々しい校長室の扉を蹴り開けた。中に居た知らない人物が驚いたようにクレアレネッサを見る。ダンブルドアはクレアレネッサを見ると溜息をついた。
「...ミス・ブランドン「その名前を他人に言わないで。」...ノックして蹴破らずに入室して欲しいのう。」
クレアレネッサはダンブルドアを尋常ではない殺気を漏れ出させて見ながら言った。
「貴方が呼んだんでしょう。他人が居ようが私の知った事じゃないわ。」
知らない人物はクレアレネッサの殺気に暫く呆然としていたが、ダンブルドアに小さく頭を下げて退室しようとした。しかしクレアレネッサの次の言葉にまた固まる。
「貴方、人狼?」
ダンブルドアは困ったようにクレアレネッサを見て、知らない人物を見る。知らない人物は小さく頷いて、言った。
「そうだよ。私はリーマス・ルーピンだ。君は?」
クレアレネッサは暫く思案した後、言う。
「クレアレネッサ・ブランドン。ダンブルドアに誘拐されているわ。」
「誘拐とは人聞きが悪いことを言うのう。」ダンブルドアが口を挟むと、クレアレネッサは歪んだ笑みを浮かべた。
ルーピンは一目で自分を人狼と見破り、ダンブルドアに誘拐されたという少女を疑るように見た。
「君は一体...。」
クレアレネッサは自嘲するかのように次々と言葉を並べ立てる。
「ルーモス程度の魔法で魔力酔いをする魔法薬以外取り柄の無い国際指名手配犯よ。」
クレアレネッサはマクゴナガルによると全身金縛り呪文、というものを習得しようとこの数日間実技に取り組んでいた。しかし、ルーモスやレパロといった比較的魔力放出量の少ない呪文でさえクレアレネッサは酔ってしまうことが分かったのだ。
ルーピンが更に驚いたようにクレアレネッサを見る。
「国際指名手配犯だって?君は一体何者なんだい?」
ダンブルドアでさえ国際指名手配されていることを知らなかったのか、厳しい顔でクレアレネッサに言った。
「お主は一体何をしたのじゃ。」
ルーピンを気遣う様に見ながらダンブルドアはクレアレネッサに聞く。
クレアレネッサは歪んだ笑みを更に強めながら言った。
「何をって?CIAのエージェントを数人殺しただけよ。それだけ。」
ダンブルドアはルーピンと顔を顰めて聞いた。
「「CIAとは?」」
クレアレネッサは不意に無表情になると、抑揚のない声で言った。嫌なことを思い出していたのだ。
「アメリカの国の情報局に所属する職員。国に所属するエージェント達は敵国の職員を暗殺すると国家問題になるもの、傭兵にそういう汚れ仕事が周って来るっていう訳。」
クレアレネッサはその日、既に3人のエージェントを暗殺していた。4人目を殺そうとし、ふとクレアレネッサは冗談のつもりで聞く。
「最後に言い残すことは?」
その殺された男は思い出したように不安げな笑みを浮かべ、言った。
「妻のリジーによろしく言っておいてくれ。」
その時は夫を殺した張本人がのこのこ挨拶に行くなんて、と呆れていたのだが。クレアレネッサはせめてでも遺品くらいは届けようと男の荷物を探るとき、この男がかなり家族を愛している事に気が付いたのだ。
それを知ってからクレアレネッサはずっと不快感を感じていた。彼女は生まれて物心ついたときから孤児だったし、愛など理解していないし、しようともしなかった。そのため、男の心情が全く理解できずもやもやしていた。
いきなり無表情に黙り込んだクレアレネッサを気遣ったのか、ダンブルドアはクレアレネッサに声を掛けず、静かにルーピンを返した。
- sideダンブルドア ( No.13 )
- 日時: 2018/04/09 19:01
- 名前: 未碧 (ID: eD.ykjg8)
アルバス・ダンブルドアは今、厳しい表情をしていた。そのまま何かをさらさらと紙に書き、魔法の炎で燃やし尽くす。暫くしてマクゴナガルとスネイプが校長室に現れた。
「アルバス、一体こんな夜中に何です。緊急で知らせる事とは。」
マクゴナガルは訝し気にダンブルドアを見る。スネイプも不機嫌そうに無言で同意した。
「クレアレネッサ・ブランドンの事なのじゃが。」
ダンブルドアは今、物凄く焦っていた。
今はあまり活発ではない不死鳥の騎士団についてリーマス・ルーピンと話していたのじゃが、彼女がマグルの間で国際指名手配までされているとは思わなかったのう。おまけにそれについて明確に話しすぎているのじゃ。
彼女の裏の面をミネルバとセブルスに調べさせたのじゃが。テディベアに向かって針を投げる以外おかしな所も見つかって居ない筈が今になって見つかるとはのう。
「いきなりしもべ妖精を呼びつけ、ナイフや針を要求する以外は何もありませんでしたよ、アルバス。」
ダンブルドアは溜息をつくと言った。
「彼女は国際指名手配犯なのじゃ。」
セブルスが驚いたように顔を顰めると言った。
「ご冗談でしょう、校長。」
「本人によるとアメリカの情報局員を数名殺害したとの事なのじゃ。その時はリーマスがいたのじゃが、後で彼女に直接聞くとインターポールなどという組織に捜査されているとのこと。」
「インターポールとは何なのでしょう。」
ミネルバが聞く。
「国際刑事警察機構、という国際犯罪を捜査している組織らしいのう。なんでも今フランスに住んでいるのはその本部がフランスにあるため、国際犯罪を捜査している組織の近くに潜んで欺く為、との事なのじゃ。」
2人は絶句していた。
「さて、伝えることは伝えた。彼女には警戒が必要な用じゃが。レモンキャンディーは要るかの?」
2人を疲れさせてしまったようじゃの。しかし、本当にクレアレネッサ・ブランドンは何者なのじゃろうか。