二次創作小説(紙ほか)
- 人脈 ( No.17 )
- 日時: 2018/04/19 18:38
- 名前: 未碧 (ID: KpEq4Y5k)
ダンブルドアが沈黙した大広間に向かって話しかけた。
「さて、最後の新入生の組み分けも終わった。食事の前に二言、三言言わせてもらう。そーれ、わっしょい、どっこらしょい、そらっしょい! 」
グリフィンドールの新入生は戸惑ったように食器を見つめた。いつの間にか食べきれないほどの料理が溢れかえっている。ミルドレットは苦笑いをした。
「ダンブルドア校長は呆けているんですか?」
栗毛の少女がずけずけと上級生の一人に聞く。少年は「監督生」と書かれたバッジを見せびらかす様に胸を張り、真面目な口調で言った。
「...いや、よく言うだろう。馬鹿と天才は紙一重なんだ。」
監督生と似た顔つきの双子らしき少年がそれを聞いて噴き出した。
ミルドレットは食事を楽しむような顔をしながら少女の話を聞いていた。
こういうジョークも生徒たちに親近感を沸かせたり油断をさせる戦術なのかしら。だとしたらダンブルドアが吸魂鬼を退治する時は多分タヌキの守護霊ね。
彼女の考えていた吸魂鬼を追い払う守護霊の呪文は普通、一年生は知らないのだが。
彼女は過激な魔力酔い体質のだ。そのためまずは実技よりも知識をより多く得ようという結論に至る。だから知識だけならかなりのレベルなのだ。
「ねえ、君、どうして一番最後に入って来たんだい?特急に乗り遅れたとかか?」
そばかすに赤毛の男の子が興味津々といった様子でミルドレットに聞く。ミルドレットは口調や仕草に慎重になりながら言った。
「他の人よりも早くホグワーツに着いてたの。だから別の部屋で待ってたんだよ。」
ミルドレットはいつもの栄養摂取第一の食事の仕方にならないよう、テーブルを見渡しながら言う。ついでにニコニコと笑みも作った。
「そうなのか?でも君を見た覚えはないけどな。僕はロン。ロン・ウィーズリーさ。君は...えーっと?」
ウィーズリーは困ったように言った。するとさっき噴き出した双子が現れる。
「これはこれは」
「弟が失礼した、お嬢さん。」
お嬢さんということはこの双子も私の名前を覚えてないのかしら。普通お嬢さんなんて言わないもの。
ところでこの双子もウィーズリーならあの監督生もそう?みんな赤毛にすばかすね。分かりやすくて良いわ。
でもみんなウィーズリーね。普通の人はロンと呼ぶ?任務ばかりで学校に通ったことが無いのは失敗だったわ。ティーンエイジャーの演技は面倒ね。
「それにしても面白そうだな。」
「久々の組み分け困難者が今年は二人。」
「ハリー・ポッターも取ったしな。」
ミルドレットは思わず声を上げた。
「ハリー・ポッター?!」
「そうよ。彼がハリー・ポッター。貴方、組み分けが全部終わった後に来たから知らないのね。貴方の名前はミルドレット・アールチェでしょ?ミルドレットって呼んでも良いかしら?私はハーマイオニー・グレンジャー。マグル生まれなの。だから魔法界の事をあまり知らないけれど大丈夫かしら。とても心配だったから教科書は全部暗記してきたけれど、貴方はどう?」
グレンジャーのマシンガントークは非常に聞き取りにくいわ。やっぱりもういっそのこと全員名前で呼ぼうかしら。
「うん、良いわ。私もマグル生まれだよ。実技はムリだけど、知識はそれなりに覚えたと思う。でも凄いね、全暗記するなんて。」
彼女は態度からしてプライドが高そうね。適当に褒めて友人だと思ってくれれば利用のし甲斐はありそう。同じマグル生まれとして心強いし。
でもティーンエイジャーとして友人を利用するために近づくのは駄目ね。もっと無邪気に振る舞おうかしら。
「あら、ありがとう。」
ハーマイオニーは嬉しそうにしている。それはいいとしてハリー・ポッターだ。アイドルなどには全く興味の無いミルドレットだが、死の呪文を破った方法は気になる。しかも素人ではなくヴォルデモートだ。
といっても方法を知ってミルドレットが酔って気絶せずに成功するかは分からないが。
ミルドレットは顔に笑みを貼り付け、名前も覚えていない女の子とどうでもいい話をしながら考えていた。
「さて、食事が終わった後でいくつか注意がある。まずは廊下で魔法を使ってはいけないと、管理人のフィルチさんからじゃ。次に、ホグワーツ敷地内にある森に入ってはいけない。最後に、とても痛い死に方をしたくなければ今年一杯は四階の廊下に立ち入り禁止じゃ。では、寝る前に校歌を歌おう。それぞれ好きなリズムで、そーれ1,2,3!」
こう見ると寮の性質が分かる。ふざけて歌うグリフィンドール、楽しそうなパッフルハフ、不協和音に顔を顰めて真面目に歌うレインブクロー、そして嘲るような表情で黙っているスリザリン。
教員は何人か耳当てをして歌っているわね。羨ましい。
- 権力とガールズトーク ( No.18 )
- 日時: 2018/04/19 18:39
- 名前: 未碧 (ID: KpEq4Y5k)
駆け足で寮に向かうと、胸を張った監督生がまた立っていた。彼の態度、まるで政府の高官みたいね。将来権力に溺れそうだわ。
「ここが談話室への入り口だ。合言葉が無ければ入れないからよく覚えておくんだ。カプート・ドラコニス。」
内装も見ずににミルドレットは窓や高さを見回り始めた。万が一に備えて脱出経路を考えているのだ。部屋に感嘆しているふりをしながらミルドレットは歩き回り、脳内に寮の情報を叩きこむ。
「あら、同じ部屋ね。よろしく、ミルドレット。」
ハーマイオニーに挨拶をし、ラベンダー・ブラウンとパーバティ・パチルという少女にも挨拶をしてミルドレットは全員が寝静まるのを待つ。
全員が寝てから変装を解き、朝まで持つように強力な変身術を自分に掛けて容姿を誤魔化す必要がある。特にハーマイオニーは聡明だ。ばれると面倒になる。
マグル生まれだから当然指名手配の事は知っているだろう。クレアレネッサはイギリスでも捜査されているのだ。
だがラベンダーとパーバティはずっと恋愛について話しており、ハーマイオニーは教科書を読み込んでいて寝静まる気配が全くない。ミルドレットは心の中で溜め息を着いた。
「ミルドレットはどう思う?」
ラベンダーが聞く。ミルドレットは曖昧な笑みを浮かべる。彼女の恋愛の話には全く興味を示していなかったのだ。
「もう、聞いていなかった?グリフィンドールにはそこそこカッコいい男子がいると思わない?って聞いたの。」
ミルドレットは本格的に困り始めた。傭兵には色仕掛けの専門家の男性もいるため、容姿の良い男性は見慣れているのだ。ラベンダーの基準がよく分からない。それに周りを見ていない。結局正直に言うことにした。
「うーん、よくわかんないかなぁ。あまり周り、見てなかったの。」
「そうなのね。ごめんなさい。」
パーバティ、ハーマイオニー、ラベンダーはやっと寝る支度を始めた。ミルドレットは寝たふりをしながら薬について考える。
魔力酔い止め、足りるかしら。ふくろう通販で材料を買い足して、必要の部屋に行きましょう。あと2日分しか無いじゃない。それに化粧代も馬鹿にならないわね。貯金は幾ら残っていた?
ミルドレットはベッドのカーテンを閉めると手鏡と化粧落としを取り出し、慎重に変身術を掛け始めた。錠剤を飲むのも勿論忘れない。全てが終わったとき、ベッドサイドの時計を見ると午後11時32分だった。10時に始めたのに慣れずに随分時間が掛かった。