二次創作小説(紙ほか)

初めての授業 ( No.20 )
日時: 2018/05/03 11:33
名前: 未碧 (ID: KpEq4Y5k)

無事変装も終え、ミルドレットは鞄に教科書を詰め込む。幽閉中にぎりぎり完成した奥の手も準備万端だが、油断するつもりは全く無かった。

あのハリー・ポッターと同級生で7年間無事で済む保証は無い。何故ダンブルドアが自分を幽閉したのか不明だが、隙をついて途中で自主退学するつもりだ。

さあ、朝食の時間よ。精々周りの生徒達を利用して生き残りましょうか。

「ミルドレット、一緒に朝食に行かない?ハーマイオニーは先に行っちゃったみたいだし。」
ラベンダーが首を傾げて聞いてくる。ミルドレットは早速頷いてにっこりと笑みを浮かべた。

「ええ。ありがとう。」

慣れている素振りを見せないよう、適度に迷いながら大広間に辿り着いたミルドレットはダンブルドアの小話を聞き流しながらサラダを摘まんだ。

「ミルドレット、来たのね。私、もう行かなくちゃ。初日から授業に遅れては最悪だもの。貴方たちも急がなくちゃ。ホグワーツはとっても複雑な造りをしているのよ。それに初めはマコグナガル先生の授業だもの。遅刻なんかには厳しくなさると聞いたし。」

早口で捲し立てた後駆け足で大広間を去っていったハーマイオニー。彼女に向かって小さく舌を突き出すラベンダーを戒めながら、ミルドレットは考える。

ハーマイオニーは態度からして後々孤立するわね。ハリー・ポッターとロンにも鬱陶しがられているし、あまり仲良くするのは取り敢えず控えましょう。でも、如何にもがり勉の彼女がレインブクローではなくグリフィンドールに入ったのだから、何かあるのかもしれないわね。出方を慎重に見てから付き合いを考えましょう。

ミルドレットはさっさと朝食を済ませるとラベンダーを急かしながら教室へ駆け足で向かった。
授業開始10分前きっかりだ。こういう所はミルドレット、クレアレネッサどちらも細かい。教卓の上に角縁眼鏡の模様が入った猫が乗っていた。

ミルドレットは自分で魔力酔い止めの薬を作ろうと思い、魔法薬の素材について本を読み始めた。ラベンダーが本を覗き込み、その難解さに呆れ果て、一時間目のチャイムが鳴ってもマクゴナガル先生は現れなかった。

「マクゴナガル先生、どうしたのかしら。」
ハーマイオニーが不安そうに言うと、パーバティも言った。
「確かに、厳しそうよね。授業に遅れるようには見えないわ。」

ミルドレットは幽閉時に本を読み漁っていたため、目の前の猫が先生自身だと気づいていた。全魔法使い中数人しかいない難解な術を学生時代に成功させたと書かれていた。動物もどき、というらしい。特定の動物に変身できるのは戦闘において使えるかもしれないと思っていたのだ。

これ以上パーバティが失言をしないように助けてあげましょうか。
「マクゴナガル先生は絶対に遅れないって聞いたよ。変身術の先生だし、何かに変身して部屋にいるのかも。」

ハーマイオニーが叫んだ。
「それよ!動物もどきだわ。マクゴナガル先生は猫に変身できるの。きっとこの猫がそうだわ!」

「お見事。私の変身を見破れた人はそういませんよ。グリフィンドールに5点。」
猫が教卓から飛び降りると同時にマクゴナガル先生が教壇に立ち、言った。ハーマイオニーは頬を染めて嬉しそうにしていた。

「それからポッター、ウィーズリー。間に合ってはいませんよ。貴方達を時計に変えて差し上げれば遅刻せずにすむのでしょうか。グリフィンドール、10点減点。」
ハーマイオニーは一転して2人を睨んだ。

「さて、変身術とは実に危険な学問の一種です。不真面目な生徒はこの授業を受けさせませんから、覚えておくように。」

今回の課題はマッチ棒を針に変える事だ。理論を頭に叩き込む。ミルドレットは既に理解していたため、ノートをさっさと写し取ると適当に杖を振った。

針に変わったマッチ棒を一旦元に戻し、隣に座ると言って聞かなかったハーマイオニーのプライドを刺激しないようにする。

「皆さん、グレンジャーが成功させましたよ。グリフィンドールに五点。」

そのまままた針に変える。

ミルドレットに気づく前にチャイムが鳴る。次は魔法史だ。

「魔法史の先生はゴーストなんですって。どんな先生か楽しみだわ。」
ハーマイオニーが教科書を纏めながら言った。