二次創作小説(紙ほか)

苦しみと嘆き ( No.22 )
日時: 2018/05/20 15:36
名前: 未碧 (ID: KpEq4Y5k)

白い空間が何処までも続く部屋。クレアレネッサはそこに立ちすくんでいた。着ている黒い安物のワンピースから覗く懐中時計が十二時を示し、小さく震える。

頭の中が誰かに踏みにじられた様に明らかな不快感で満たされていく。組分けの時にも聞こえた声が小さく囁いた。
(...貴方は私。私は私。私の物。)

透き通ったガーネットの様な目は何処も見ていない。地面が歪み、天井が沈む。光は点滅を繰り返し、自分が膝を着いたという事だけが分かった。

空間の何かが膨れ上がった。クレアレネッサは揺さぶられ、弄ばれる。頭の中が狂気に染まった。

「...やっと出れたのね。貴方は邪魔。」
クレアレネッサの目が焦点を合わせ、白い空間の中で爛々と輝く。三日月型に歪められた真っ赤な唇からは鋭い犬歯が覗く。するすると背中から羽が伸びる。色は今の自分と同じ、漆黒。
. .
彼女がそこに立っていた。
「ふふ。みんな、消えてしまえば良いのにね。」
どす黒い何かに侵食されていく瞳が一層光を帯びた。彼女を中心に空間も、彼女自身も闇に染まっていく。

(...出て来ないで。止めて。)
幾ら叫んでも、彼女には聞こえない。幾つもの光景が目の前を通り過ぎる。

「出来損ないの、居候が。住まわれているだけ、有り難く思え。」
見下された無機質な眼。
「貴方等、生まれなければ良かったのに。」
暗い後悔が襲い掛かる。
「失敗作のお姉様、遊びましょうよ?」
生まれを信じない、正直で残酷過ぎる気持ち。

「拒否権なんか、あるわけないじゃない。貴方は私に遊ばれるのよ。」「出来損ないなんでしょ?役立たずの、半端者なんでしょ?なら、遊びましょうよ、お姉様?所詮貴方なんて姉じゃなくて、玩具なんだから。」

自分なのに、他人。もう一人のクレアレネッサが現れた。