二次創作小説(紙ほか)

邪悪な意識 ( No.28 )
日時: 2018/07/14 21:36
名前: 未碧 (ID: KpEq4Y5k)

噂話の後朝食をさっさと済ませ、なんとか授業開始時間2分前には教室に入ったミルドレットは、部屋の中に足を踏み入れた途端目眩に襲われた。

…何なの、これは。魔力酔い…かなりの重症かしら。

酔い止めが全く効かない。でも意識がまだあった事は良かっただろう。こんな所で自分の弱点を晒すのは、かなり困る。特にクィレルという正体不明の存在が近い時には。

不味い、気付かれていないのが幸いかしら。ラベンダー、パーバティ、ハーマイオニー、ネビル、ロン、ハリー、シェーマス、それに見たのは一回だけだが確かディーン・トーマスと言った生徒。それに教師のクィリナス・クィレル。

それとなく誰も自分の異常に気付いていないのを確めた後、教室の観察に移る。

魔力酔いを引き起こしそうな物は特に無い。部屋に吊るされた大量のニンニクの吸血鬼への影響は考えられない。人間とのハーフの自分はニンニク程度少し臭い程度しか思わない。

今は授業用に酔い止めを多く服用しているから隠れん防止機、又はスニーコスコープ程度でここまで酔う事は有り得ない。

他に目立つ物も無いなら次に怪しいのはクィレルだ。魔力酔いの存在はクィレルは知らない筈だ。だから何か精神に干渉する系統の呪文を使っている可能性が高い。

只、そもそも杖を取り出していない。屋敷しもべ妖精の様に杖無しで魔法を使うにしても、目眩の効果を持続させている素振りもないもの。

「…レジリメンス。」
気付かれない様にクィレルと何気無く目を合わせ、一瞬目を細めて口を動かさず、囁いて唱える。

幽閉中、簡単な呪文なら無言でも使える位には練習したが、開心術は余り練習していない。

練習する相手が居なかったもの。だから無言では不可能だけれど、読唇術を警戒して口を動かさず、囁けば警戒されるのはある程度防ぐことが出来る。

それでもクィレルは警戒する素振りを見せたが。結局心を読み取る事は叶わなかった。ただこの重度の魔力酔いの原因だと思われる、漠然としたどす黒い意識を感じただけ。

「…こ、今日は。」
か細いおどおどした態度でクィレルが挨拶すると、数人の生徒が馬鹿にした様に鼻を鳴らしたのが聞こえた。

「や、闇の、魔術、に、対する、防衛術、の、授業、をは、初めよう。教科書を、開いて。」

神経質そうに言ったクィレルは目を泳がせ、教科書を捲った。

目配せして来たラベンダーに応え、ミルドレットは教科書を見る振りをしながらクィレルを見る。

相変わらず落ち着き無く視線をさ迷わせるクィレルは、シェーマスが質問しようと呼び掛けると飛び上がった。

どうやらターバンはゾンビを退治したお礼としてインドの王子に貰ったという事だけれど、怪しいものね。

シェーマスは、ゾンビの倒し方を若干期待した様子で質問した。しかし、クィレルが明らかに天気の話をして誤魔化したのを見て失望した様だ。

他の生徒も闇の魔術に対する防衛術と聞いて格好の良い攻撃呪文でも期待していたのか、特に男子生徒が肩透かしを食らった様な顔をしている。

マグル生まれの生徒も居ると言うのに、しかも魔法生物の退治でも一年生でするようなものでは無いというのに、一年生でまともに攻撃呪文を習う訳が無い。

ミルドレットは授業の終了を待ち詫びながら溜め息をついた。