二次創作小説(紙ほか)
- ホグズミード村 ( No.29 )
- 日時: 2018/07/19 21:49
- 名前: 未碧 (ID: KpEq4Y5k)
現在、クレアレネッサはミルドレットではない魔法使いに変装している。というのも、ホグズミード村に行くためだ。
先日の満月で自分が半吸血鬼だと認識してから、決して潤わない以上な程の喉の渇き。魔力酔いとは違った軽い目眩や、不意に起こる脱力感、他人を「人間」という食料として見てしまう事。それに時間が経つごとに増す残虐な思考。
自分がまだ暗殺者でも無かった、遠い昔まで記憶を辿れば、症状が吸血衝動だとすぐに分かる。幸いにして、過去に瀕死に至る程の吸血衝動を耐え切った事もあり、これくらいの症状では怪しまれずに演技も出来た。
しかし人間の血液、それも新鮮で純度の高い物というのは、見付かれば奇跡だと思える程に売られて居ない。
薬の素材としては、普通の薬問屋ではまず買えない。つまり、ダイアゴン横丁の通販では買えない。ノクターン横丁では買えない事は無い。ボージン・アンド・バークスでは希に売っているし、ノクターン横丁にも薬問屋はある。しかし、営業日がどこも不定期で確実な量の血液が買えない。
一軒だけ、人肉専門店があり、其処では血液を取り扱っていた。しかし、その値段は僅か100ミリリットルあたり23ガリオンもするのだ。
仕事が出来ればまだ良いが、ホグワーツで迂闊に血塗れの姿を見られでもしたら、生徒以外に教員にも怪しまれる。ホグワーツをさっさと退学はしたいが、本性がばれて退学するのは最悪だ。
結局、一番ホグワーツで身近なホグズミード村でアルバイトでもして稼ぐのが良いと言う結論に至った。
今の自分の名前はフローリー・ブラックスミスだ。首までの濃い茶色の巻き毛に、灰色の目をした女性で、マグル生まれ、17歳。将来はカフェの経営が夢で、魔法学校を卒業したばかりの凡人。
取り敢えず「三本の箒」にでも雇って貰えれば上出来、と言った所だろうか。ホグワーツの授業がある為来れる日はかなり少ない。上手く臨時の雑用として雇って貰えれば良いが、そう上手くは行かないだろう。
満月ごとに必要だと思われるのは過去からして約400ミリリットル。つまり1ヶ月につき23×4=92ガリオンも稼がなければいけない。まあ、そんなに稼げるとは思っていないけれど、血液も無いよりはある方がましでしょうね。
金曜日の午後から4時間、土日は7時間働いたとして、時給を14シックル(840円程度)とすると、大体一週間につき14から15ガリオン、1ヶ月では56ガリオンから75ガリオン。やはり足りない。
フローリーは「ゾンコ」のショーウィンドウで、見た目が17歳に見えるよう変身術が掛けられたか確かめ、着ていたワンピースの襟を正すと「三本の箒」の店内に入った。
放課後に来てみたが、結構賑わっているわね。ホグワーツの学生、教員は居ない様だけれど、甘ったるい香りのビールを飲んでいる客でどこも混んでいるもの。これは、店員に話し掛けれそうにないわね。
取り敢えず、何か注文して店員をぼ呼びましょうか。いきなり採用するように言うのは失礼だものね。
「御注文は?」
店員を呼ぶと、フローリーはざっとメニューを捲り、答えた。
「ホットワインをお願いしますね。」
ホットワインは自分のお気に入りの飲み物だ。真夏に好きかと聞かれると微妙だけれど、普通よりは好きな方ね。
「…畏まりました。」
「失礼。あの、オーナーを呼んで頂けます?」
店員を呼び止め、そう言うと慌てた様子で戻って行く。
そう言えば、年齢確認は大丈夫だろうか。変身術で適当に偽物の身分証明書を作り、持ってはいるけれど、どうせ雇用の話になれば年齢も聞かれるでしょう。
「何の御用です?」
周りの客が「ロスメルタ」と呼んでいた女性がオーナーの様だ。フローリーは真面目な表情を作ると言った。
「すみません、私をここで雇って頂けませんか?」