二次創作小説(紙ほか)

影表し、影遊び ( No.3 )
日時: 2018/04/06 14:04
名前: マスカット (ID: eD.ykjg8)

2週間もかけて、やっとのことで「新月の誕生の杖」が出来た。

両端の太さが違う黒檀の真っ黒い棒に、光に透かすとうっすら光る青色の木に刻まれた模様。杖の太い方の端は先が丸っこくて穴が開いている。穴には凧糸くらいの細さの細かい組紐が結びつけてある。

エスティルの棒は綺麗な真っ直ぐじゃなくて、穴も歪んでいるけど組紐だけは会心の出来だと思う。

棒に刻んだ模様に塗る青い塗料はラピスラズリを使っているらしい。それが光できらきら輝くのは、凄く神秘的に見える。

先生が言う。
「さて、この杖を使う魔法を影表し、又は影遊びと言います。自分の影の形を変えたり、影の中に入ったり、影の中に物を隠したりできます。エスティル、よく見ていなさい。」

先生はそのまま大きく息を吸い込んだ。そのまま詩みたいに言葉を紡いでいく。
「新月は影、光の狭間、始まりのお終い、誕生の闇の中」

杖を掲げると先生の上半身がゆっくり近くの切り株の影に沈んでいく。あわてて覗き込むと、手だけで制止された。

そのまま完全に先生の身体が影の中に沈む。心配になってじっと影を覗き込むと、いきなり誰かに後ろから肩を叩かれた。

もしかして一般人の人に「魔女」の事がばれた?慌てて振り向くと、先生がにっこり笑っていた。

「切り株の影から貴方の影に移動したんですよ。さて、練習しましょうか。」

それから練習を始める。呪文には息継ぎのタイミングも重要になってくるし、杖の掲げる角度も重要らしい。流石に一日では魔法は習得できなかった。