二次創作小説(紙ほか)
- 私のせいで ( No.7 )
- 日時: 2018/05/03 20:51
- 名前: マスカット (ID: KpEq4Y5k)
走り出したエスティルを気の毒そうにしていたお爺さんが見て、歪んだ笑みを浮かべていたことなんか知らない。
お爺さんが数ヶ月前からエスティルの事を魔女と繋がっていると疑っていたことなんて知らない。
お爺さんが魔女を突き出して出世しようと企む貴族だったなんて知らない。
お爺さんが孤児院を出世の為に燃やしたなんて知らない。
けれど、悪いのは全部私のせいだ。
私が孤児院を見て、魔女の仕業だと言われて、いつも先生の言う冷静な判断が出来なかったせい。
先生の隠れ家で故郷の洞窟にまで警備隊の人達を連れて来てしまったせい。
お爺さんが孤児院を燃やしたと聞いて、怒って制御出来ていない魔法を使ったせい。
私が魔女との繋がりを隠し切れなかったせい。
そのせいで、
孤児院が燃えて、
家族が死んで、
先生の隠れ家を吹き飛ばして、
お爺さんの顔を火傷させて怒らせて、
先生が警備隊に連れていかれて、
先生が一生を賭けて作っている大事な魔法の杖を完成出来なくなって、
私は貴族を傷つけた犯罪者になって、
ただ逃げ続けるだけの中途半端な魔女になった。
「魔女エメラルディア、お前を国家反逆罪を犯した重罪人として逮捕し、直ちに国王の元で裁判に掛ける為、逮捕する!これで出世出来るぞ、感謝してやる。」
先生はエメラルディアって言うんだ。初めて知った。
いつかはこの時が来るかもしれないと分かっていたけど、現実じゃないみたい。
私は何も出来なかった。
目の前で先生が生霊力を封じる手錠を付けられた。先生がぐるぐる巻きに縛られる。鎖で犬みたいに引きずり回される。
私の足は所有権を失ったみたいに動かなかった。きらきらと光る鎧を着た兵士が私を軽々と押さえ込んでいた。息が出来ない。
「こいつはどうしましょうか。」
先生は唇を指差した。兵士の隙を突いてゆっくりと口の形を変える。
じゅ・う・た・ん・の・し・た・の・と・び・ら
絨毯の下の扉。
「ただの子供だ。そのうち野垂れ死ぬだろう。」
私だけ半分壊れた洞窟に残される。
「魔女になろうとしたら地の果てまで追いかけるからな。王都に言ったらお前にわしを傷つけたとして賞金首に掛けてやる。精々一時の自由を楽しむんだな。その前に死ぬかもしれないが。」
賞金首?言葉が頭の中を素通りして理解出来ない。先生の口がまた動いた。
イル・ペスカ・リャシャ・クフィ・シュリラ
魔女のみぞ知る、古代の生霊言語、エンシェルティトゥー。
先生の言った意味は、
さ・よ・う・な・ら