二次創作小説(紙ほか)

従者同士の戦い ( No.9 )
日時: 2018/05/22 16:29
名前: アプフェルシュトゥルーデル (ID: KpEq4Y5k)

「貴方の相手は私よ、月の兎。」
大きく飛び上がった吸血鬼の従者が冷たく眼を光らせて言う。次の瞬間には数え切れないナイフが鈴仙を襲った。

「今は地上の兎よ、吸血鬼の従者。あの我が儘お嬢様に許可は頂いたのかしら?」
バックステップを踏んでナイフを避けながら私は首を傾げて挑発したが、咲夜は動じなかった。ナイフの段幕を投げながら開けた外への退路を防ごうとして来る。

「その口を縫い付けて差し上げましょうか?お嬢様からは必ず勝つように言われているの。貴方にはお嬢様の為に犠牲になってもらうわ。」

しかしそれは私にとって悪手だ。迷いの竹林で戦い慣れている私は狭い玄関ホールの方が都合が良い。私はルナティックガンを二丁取り出すとナイフを寸分違わず撃ち抜いて行く。

次の瞬間、時を止めたのか全方位にナイフが並んでいた。完全に逃げ場が塞がれている。私は瞬時に能力を使い、自分の位置を曖昧にした。これで殆ど私に干渉することが出来ない。

「あの兎、何処に隠れたのかしら。」
透明になった私は相手が見えず、警戒している咲夜とこっそり目を合わせた。これで咲夜は感づいてしまったが、目を合わせただけで十分だ。能力を発動し、相手の感情を短気にする。

「散符 栄華之夢(ルナメガロポリス)改!」
何となく癖で宣言してしまったが、効果は変わらない。実際の戦闘用に殺傷力をかなり高めた高密度の段幕があちこちに散らばる。これで時を止めても動きにくくなった筈だ。

「甘いわね。」
能力を使ったのか、段幕が一部私に戻ってきた。時を戻すのは殆ど無理だと聞いたが、物は動かせるらしい。更にガコンッという音と共に一瞬で大広間の椅子が降り注ぐ。何故か椅子がとてつもないスピードで落ちて来る。一つが真上から当たった。
「ぐへっ」
椅子の運動量を空間を操って増やしたのかもしれない。
「そこよ、メイド秘技 殺人ドールッ!」
椅子の隙間を縫って走る私に過去と未来のナイフを出現させ、追撃してくるが、無駄だ。
「無駄よ。」
能力で椅子を数個隠し、隙間の位置をずらしておいたのだ。中にはばらばらに方向転換し、向かって来るナイフもあるがこれくらいは問題無い。数本掠ってもまだ充分戦闘可能だ。
「あら、まだあるわよ?」
しかし、戻ってきた栄華之夢の弾幕を過去の弾幕が更に追撃を繰り返し、無限ループで追いかけて来る。時間を更に早く巻き戻したのか高速で幾つかの弾幕が近くで弾け、思わず鈴仙は感心した。

「お見事。」
相手から放たれた弾幕を時間を巻き戻して押し返す事で相手に弾幕が戻って行き、自動的に追尾弾が出来上がる。未来と過去の弾幕を出現させれば無限に追尾弾が放てるのだ。
「それはどうも、ありがとう。」
霊力は少々消費するだろうが、能力の工夫でここまで出来るとは。それにしてもめんどくさい弾幕。波長を操る能力で強行突破するのが早いわね。

私は全ての弾幕、ナイフ、椅子と咲夜との位置を曖昧にして彼女の額にルナティックガンを押し付けた。
「でも詰みよ。」

弾幕、ナイフ、椅子の波長を操り、咲夜を囲む。一瞬固まった隙に手首を掴めばチェックメイトだ。ところが咲夜は不敵に笑った。

「そんなにすぐに降参するとでも思ったかしら?」
油断した瞬間、時を止め、拘束していない片手でルナティックガンを握ったまま体勢を変えたらしい。更に、銃身からナイフの刃が生えている。

「良く斬れるナイフね。」
私は表情を変えずに言うと咲夜も同様に私の目を見て警戒したまま返した。
「切れ味なら冥界の庭師のが上よ?」

「引っ掛かったわね。」
私は瞬時に能力を発動し、相手の感覚を狂わせる。目眩がし、玄関ホールがとてつもなく広く見える。永遠亭の廊下を長く見せたのと同じ技だ。

「えっ?」
予想通り、咲夜は分が悪いと判断し、時を止めて外に出ようとしたらしい。ところが出たのは変わらず玄関ホール。位置関係を曖昧にして簡単な迷路を作ったのだ。

「へ?」
今度は私が驚く番だった。咲夜はそのまま玄関ホールを出ると、私に向かって目にも止まらない速さでナイフを投げて来る。状況が暫く理解出来ず、ナイフを避けているとようやく分かった。
「舐めてもらっては困るわ。」

「そういうことね。でも、そろそろ決着を着けましょう。」
成る程、時間を急速に早めて能力の保てる時間(霊力を保てる時間)を終わらせたのね。道理で身体が重いと思ったわ。見ると、ナイフにも相当運動量と速さを付与しているみたい。でも、そろそろ彼女も潮時ね。

「ふっ」
次の瞬間、真剣な顔になった咲夜が攻撃を開始した。過去、未来、現在全てのナイフが現れ、360度無限に向かって来る。運動量と速さを足されたたった数本ナイフの衝撃で床がひび割れる。

「残念。」
私は残り少ない霊力を使って位置関係をずらし、擬似的に分身を作るとナイフを抜け出した。そのまま目を逸らそうとした咲夜に能力を使う。

波長を操り、戦意を喪失させる。
「王手。」