二次創作小説(紙ほか)
- Re: 進撃の巨人 もう一人の人物 ( No.19 )
- 日時: 2018/05/03 15:44
- 名前: けんぬん (ID: Do1fG5Tg)
- プロフ: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12230
>>17の続きです。
大通りに近い食堂だ。いい匂いが漂っている。
見れば店先で、同じ訓練兵のサシャが物欲しそうな顔をしていた。
ザビニは、訓練所時代の彼女のことを思い出す。彼女はいつも腹を減らしていた。勝手に調理場から芋を持ち出して食べて、教官から大目玉をくらったりしたこともある。
あいかわらずひもじそうに、よだれまでたらしている。みっともない……。
「おいおい、商売のジャマだろ。蹴り出されるぜ」
近くを通りかかったコニーも呆れて、そんなことを言っている。
- Re: 進撃の巨人 もう一人の人物 ( No.20 )
- 日時: 2018/05/04 09:31
- 名前: けんぬん (ID: Do1fG5Tg)
- プロフ: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12230
店の主人らしき男が出てきて言った。
「あんたたちは訓練兵だろ。未来の兵士にごちそうさせてくれ」
そう言ってテーブルに招いた。湯気のたった皿を持ってくる。
「な、なな、なんと、いい人なのでしょうか!」
サシャは感涙にむせんだが、遠慮もせず皿にとびついた。
「ほれ。あんたたちも、若い者が遠慮するんじゃない」
そう言われて、ザビニとコニーも食事をごちそうになることになった。
訓練所の食事よりもおいしい。芋のシチューだった。贅沢な材料とはいえないが、現在の街の豊かさと、この店の主人の誠実さが感じられた。
サシャは「あの〜。に、肉のカケラとか、入っておりませんでしょうか」
そんなことを言い出した。
コニーが「タダで食わせてもらってるのに、ずうずうしいヤツだな!」と、その頭をこづいた。
店の主人のほうは、気を悪くした様子もなく笑って言った。
「5年前から領地が減って、家畜の数も制限されているからな。いまは肉なんぞ食べられるのは、この街でも大商人か、兵団の上級士官だけだろう」
ザビニは、サシャたちと共にお礼を言って、この店を出た。
- Re: 進撃の巨人 もう一人の人物 ( No.21 )
- 日時: 2018/05/05 09:19
- 名前: けんぬん (ID: Do1fG5Tg)
- プロフ: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12230
市街地に、小山のような大岩がある。掘り出し工事をしているようだが、かなりの大きさの岩だ。周囲を掘っても、動かすのは難しいだろう。道行く人が話をしている声がする。
「壁が壊れたときに、それを塞ぐために兵団が掘り出しているんだとさ」
「たとえ掘り出せたとして、どうやって壁まで運ぶんだ?まったく兵団もムダ飯食いだな」
- Re: 進撃の巨人 もう一人の人物 ( No.22 )
- 日時: 2018/05/05 09:43
- 名前: けんぬん (ID: Do1fG5Tg)
- プロフ: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12230
市街地にある兵団本部の建物だ。街のなかでもひときわ高く、ほかの建築物とはまるで違う、石造りの堅固な建物だ。ちょっとした城塞のような外観だった。
外から窓の数を数えると7階建てだが、1階から4階は天井も高く、そのぶんだけ建物が大きい。特に1階に当たるフロアは、馬車がそのまま出入りできるほどだ。各種の物質、立体起動装置用のガスタンクや、交換用部品などの補給物資が集積されている。
トロスト区守備隊の司令部であり、補給基地である拠点である拠点だ。
ここには大勢の兵士が出入りしている。
「訓練兵か」と声をかけてきた年上の兵士がいた。胸の記章は”二輪の薔薇”。駐屯兵団だ。
敬礼すると、彼女も敬礼を返した。太い眉毛で鋭い目。眼鏡の女性だ。
ザビニが建物を見ていたのを知ったのか、彼女もそれを見上げ、こう言った。
「兵団本部は頑丈に出来ている。たとえ巨人が押し寄せても耐えきれるほどにな。……もっとも、巨人がここまで来るような状況になったら、もうおしまいなんだが」
- Re: 進撃の巨人 もう一人の人物 ( No.23 )
- 日時: 2018/05/06 16:13
- 名前: けんぬん (ID: Do1fG5Tg)
- プロフ: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12230
通りの石畳の上で、子どもたちが遊んでいた。
ザビニが訓練兵だとわかると、寄ってきた子たちがいた。
元気な男の子、おとなしそうな男の子、女の子の3人だ。10歳ぐらいだろうか。
「ねえねえ。あんたも兵士だろっ」と、元気な男の子が顔を紅潮させている。
「今朝、『門』から出発していった調査兵団はかっこよかったなあ。オレも大きくなったら、調査兵団に入るんだ!『リヴァイへいちょう』みたいにかつやくするぜ!」
女の子もザビニに寄ってくる。彼らにとっては兵団は憧れなのだろう。
ザビニもちょっと嬉しくなる。
「おにいちゃんや、おねえちゃんたちが……巨人を倒してくれるんだよね!」
ふたりの友達らしい、おとなしそうな男の子は、おずおずしながら、ザビニに話しかけた。
「巨人はこわいけど、壁の外には行ってみたいなあ」そんなことを言った。
「壁の外って、この街のなかの何倍も広いんでしょ?鳥みたいに空を飛ぶ乗り物とかあれば、巨人に会わずに、壁の外に行けるかなあ」
空を飛ぶ乗り物? ……面白いことを考える子どもがいるもんだ。そんなものがあったら、巨人との戦いや壁外調査もずいぶんと便利になるだろう。
(「へいちょう」と、ひらがなにしたのはわざとです)
- Re: 進撃の巨人 もう一人の人物 ( No.24 )
- 日時: 2018/05/08 19:03
- 名前: けんぬん (ID: Do1fG5Tg)
- プロフ: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12230
街の大通りだ。石畳の、舗装された広い街路がある。この通りは馬車や荷車が多い。通りに面して、荷下ろし場があちこちにあった。並ぶ建物も、商店やその倉庫が多いようだ。
ザビニと同じ訓練兵のジャンとマルコ、そして小柄で坊主頭のコニーの姿があった。
3人は、配属希望の兵団の話をしていたようだ。
- Re: 進撃の巨人 もう一人の人物 ( No.25 )
- 日時: 2018/05/09 18:11
- 名前: けんぬん (ID: Do1fG5Tg)
- プロフ: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12230
ジャンが聞こえよがしに「そりゃ憲兵団に決まっているぜ」と言った。
そういえば、ここにいる3人はみんな成績上位だ。希望すれば、王都のエリート部隊である憲兵団に行くことができるだろう。
「わざわざ調査兵団なんか希望するやつの気がしれねぇ」ジャンはニヤニヤしながら、続けた。
「お前らもそうだろ?」
コニーは「ちっ」と舌打ちした。ジャンの態度を、少々腹立たしく思っているようだ。
たしかにジャンは訓練所でもあまり好かれてはいなかった。こんな言い方をするヤツだし。特にエレンとウマがあわないようで、いつも口ゲンカして、殴りあいも珍しくなかった。
「うん、そうだね」マルコのほうは穏やかな口調で答えた。
「僕も、憲兵団に入るのは、ずっと憧れだったからね」
ちょっと気まずそうな言い方だった。彼は気配りのきく少年で、ジャンとは正反対の温厚な性格もみんなから好かれていた。そんな性格の彼だから、気をつかっているのかもしれない。憲兵団は、成績が優秀な者しか入ることができないからだ。
しかし、優秀な兵士ほど、実戦から遠い憲兵団に配属されるとは、なんとも矛盾を感じる話だ。
マルコのような人格者こそ、実戦で指揮官になってほしいものだが……。
- Re: 進撃の巨人 もう一人の人物 ( No.26 )
- 日時: 2018/05/10 19:02
- 名前: けんぬん (ID: Do1fG5Tg)
- プロフ: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12230
ここは、広い表通りから離れた、少し目立たない狭い街路だ。
訓練兵仲間の、ライナー、ベルトルト、アニの3人が、何か話をしていたところのようだ。
3人とも同期の成績10位以内の優秀な訓練兵だ。
「じゃあ、また後でな」と声が聞こえ、アニはその場を去っていく。
- Re: 進撃の巨人 もう一人の人物 ( No.27 )
- 日時: 2018/05/12 09:22
- 名前: けんぬん (ID: Do1fG5Tg)
- プロフ: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12230
ライナーはがっしりした体つきで、頼れる兄貴肌の少年だ。対してベルトルトのほうは背が高いが気弱そうな少年。雰囲気も対照的なふたりだが、仲がいいらしく一緒にいることが多い。
いまは何か話をしながら、街並みを観察している。「襲撃想定訓練」のためだろうか。もう訓練も卒業試験も終わったから、意味はないはずだが……。
ザビニが声をかけると、ベルトルトは妙にあせった様子でうろたえた。
「い、いやその。もうすぐこの街とお別れだと思うと、ちょっと……」などといい始めた。
ライナーのほうは、いつもの落ち着きのある態度で、
「ああ。巨人が襲撃してきたときのことを考えていたんだ」と言った。
「ラ、ライナー。な、何を言っているんだい?」どういうわけかベルトルトは、ますますあせった様子になったが、ライナーのほうは真面目な顔でさらに言う。
「そんなおかしなことか? 俺たちは兵士だ。あらゆる状況を想定しておくのは当然だろう」
たしかにそうだ。ライナーは真面目すぎるような気もするが、さすが成績優秀者だ。
- Re: 進撃の巨人 もう一人の人物 ( No.28 )
- 日時: 2018/05/13 09:29
- 名前: けんぬん (ID: Do1fG5Tg)
- プロフ: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12230
アニは、人通りの少ない裏路地を歩いていた。
スタイルがよく金髪の彼女は美少女といってもよい容貌だが、彫りが深くワシ鼻ぎみの顔が険しい印象を与えていた。目付きも鋭く、どこか人を寄せ付けないような雰囲気もある。
訓練所時代も、無口で感情を滅多に表すことがなかった。目立って親しい者は特に誰もいなかったようだ。彼女が成績上位の4番目であることを、ザビニは思い出す。
ザビニが呼びかけると、アニは立ち止まって振りかえった。
「ああ。あんたかい」無関心そうな目で、そう答えた。
「なんか話でもあるのかい?」