二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【終わりのセラフ】——君ニ染マル—— ( No.1 )
- 日時: 2018/06/08 19:07
- 名前: 無印 (ID: rBo/LDwv)
恐怖に顔を歪める人間を眺めながら、ボクは無造作に剣を振った。
**********
「リーフェちゃん、暇ー?」
「……?」
慣れ親しんだ気配だから、本から目を話さずにいたら、考えてもみなかった言葉に私は本を近くのデスクに置き、彼を見上げた。
少なくとも、初めてあってから変わらない美貌が近くにあった。
というか、ズルい。
「銀髪で長髪が似合うイケメン、ズルいですフェリドさん」
「……相変わらず、思考が迷走しているね。リーフェちゃんは」
思わず呟いてしまった心の声に反応された。
迷走、少なくとも
「フェリドさんよりはマシですかね」
「そして正直」
ニコニコと楽しそうに笑いながら、向かいの椅子に腰掛けるフェリドさん。
イケメンは、何をしても絵になる。足を組む姿とか特に。
ただ興味深そうに、部屋を見渡し首をかしげられた。
「で、暇?」
部屋を見渡したわりには、部屋のことは突っ込まず、自分の用を言う姿は、流石である。
「流石にそれだけじゃ、わかりませんよ。」
「楽しいことかな?」
楽しいこと。とても魅力的な言葉ではあるが、フェリドさんは吸血鬼である。人間と感覚が違う。もっというなら、フェリドさんは人間で言う変人である。いや、吸血鬼だから変吸血鬼か。
不完全とはいえ、人間から外れた吸血鬼の私の楽しいことと一致するかはまた別問題である。
「ちなみに、クローリー君もよびます」
「喜んでお付き合いさせていただきます」
私は欲望に忠実である。フェリドさんの言葉に、私は手を握り締める。
すぐ会えるフェリドさんと違って、クローリーさんとはたまにしか会えないのだ。会いに行こうにも、五月蝿いのが近くにいるから我慢していた。
そのクローリーさんに会えるなら、参加する価値は充分にある。
それを力説すれば、フェリドさんは「あいかわらずだね〜」と苦笑する。
そうだろうか。少なくとも、昔はこんな性格ではなかった気がする。まぁ、自分では客観的にみれているかは分からないから、案外こんなもんかもしれない。
「じゃあ、リーフェちゃんは参加と。」
話は終わったのだろうと判断した私は、立ち上がり扉へ向かう。
「行ってらっしゃ〜い。あ、会議には出席してね」
後ろからかけられた声に、振り向く。ツッコミたい所は、たくさんある。表情は相変わらずニコニコと楽しそうで、何が楽しいかとか。ここは私の家ではあるけど、フェリドさんの家じゃないから「行ってらっしゃい」は違うんではないかとか。でも何よりも
「フェリドさんも、ほどほどにした方がいいですよ」
流石に私でも、フェリドさんが何かをやっているのは分かる。ぽかんとしているフェリドさんを見ながら、私は首をかしげ言う。
「何事も、命あってのことですからね」
こればかりは人も吸血鬼も変わらない。死んだらそれまでた。人と吸血鬼が変わる事といえば、どの程度の傷で死ぬかだろうか。人で即死の傷でも、吸血鬼で即死はしないだろう。だが、吸血鬼も万能のようで不便である。吸血鬼にも死は訪れる。必ず。
「死んだら、それまでですから」
**********
私の正体を知り、ある意味で私と同質の存在になった彼は、私を責めることはなかった。
「なにか用、リーフェちゃん」
そして、初めて会った日から変わらない態度をとってくれる。
「んー」
それが、なんだか心地いい。ある意味では、私は彼等の敵になりえる存在なのにだ。
多分、問い掛けには答えは必要なかったのだろう。彼は、私の曖昧な態度を気にすることなく言った。
「優ちゃんを助けたい。力を貸してくれ」
あの時から変わらない、真っ直ぐな瞳。私は答えることなく、椅子から立ち上がり背を向けた。
「そうだ。同じ部隊みたいだよ」
ただ、一言告げて
**********
おそらく撤退するだろう。人間の本隊が到着した今、わざわざ死に急ぐ必要はない。
きっと、フェリドさんの目的も達成している。心配事は優とミカだろうか。
優はやさしい。やさしすぎるのだ。おそらく、皆殺しにして撤退したら悔やむのだろう。
そして、優第一のミカも同じだ。何だかんだ、ミカは優を尊重する。それなら、優の事を今回は諦める必要がある。
ミカが大人しく撤退できるか。まぁ、フェリドさんがなんとかするだろう。
だとしたら問題は一つだけ。出来るだけ先程の出来事から目をそらさせる必要がある。箝口令が出されようと、記憶に熱烈に刻まれてしまえば……。
フェリドさんがミカを連れ撤退するのを見送り、聞こえているかは分からないが 「ちょっと、遊んでから帰ります」と言う。
耳のいいフェリドさんのことだ。多分、聞こえているだろう。
逃がすとでもと、目の前の人間はほざくが違う。逃がせざるおえない状況に追い込んでやるだけだ。
そしたら、身体能力の高い彼等は勝手に撤退する。
「遊ぼうか、人間」
先程の出来事を考えられないように、暴れまわろうか。
さて、何人殺せば諦めて退くかな。
剣を抜いたと共に、何かが吹き飛ぶ。ひょっとしたら、身内もやったかもしれない。だが、逃げ遅れた彼等が悪いと開き直る。
「余所見していると、死ぬよ」
可愛らしく忠告をしてあげながら、ボクは剣を持つ手を振った。