二次創作小説(紙ほか)

第9訓親切者は大抵ツライ過去を乗り越えている ( No.9 )
日時: 2018/06/17 19:25
名前: にゃあこ (ID: s00TEuml)

「はぁぁ?山南の過去が知りたいだと?」

近藤と土方は二人して首を傾げた。

山南悠助の過去を知りたい、そう数人のメンバーが
言って来た。

「まぁ…いいんじゃないか?トシ」
「近藤さん…分かった。だけどこれ1回だけだぞ?それと
 俺たちが話したことは心の中にしまっておけ、いいな?」

 ◇

真選組結成前。
江戸。

「黎介、おいで。黎介」

彼は元々山南黎介という名前を持っていた。
なぜ改名しているのかはこの後だ。

彼は両親にとても愛されていた。

今と同じように背も低く、色白で愛嬌のある顔をしていた。
そういう容姿が良い、そう思う人もいるだろう。
だが世の中そう甘くない。

「なんでこんなチビが俺たちよりも」
「見てよあの子、私たちより小さいわよ」

いつも通り竹刀を持ち鍛錬しに行く途中だった彼の耳に
そんな言葉が飛んできた。

「黎介」

道場で竹刀を振るっていると母の声が聞こえた。

「母さん!」
「黎介。また虐められていたの?」

その言葉を聞き少し反応に困った。

「…大丈夫だよ母さん」

そう言うと彼女は彼を抱きしめた。

「お母さんが護ってあげるからね、黎介」
「え?うん…」

「ここにも道場があったのか…」

何人かの男たちが中に入って来た。

第10訓どんな人も死ぬときは死ぬ ( No.10 )
日時: 2018/06/17 19:49
名前: にゃあこ (ID: s00TEuml)

彼は母の前に立ち竹刀を構えた。

「すまんすまん、驚かせて。だがそんな——ッ!?」

彼の刃は男、近藤の頬を掠った。

「(なっ!?さっきのを避けられた)」
「黎介、話を聞いてあげましょう」

母に言われてはしょうがないと彼は力を抜いた。

「それでここに何の用ですか?」
「君の剣術は素晴らしい、並みの鍛錬をしていないことが分かる」

「彼は剣道の皆伝なのよ。私の自慢の息子です」

「息子!?ははぁ、随分と可愛らしいですね…。それと貴方の
 その手紙、少し見せてください」

彼女から土方は紙きれを奪い封筒を破り捨てた。

その内容を聞き彼らは目を丸くした。

「『山南、自身の死か息子の死か、どちらか選べ』だと?わざわざ
 手紙 で予告してくるなんてな」
「ど、どういうことなんですか!?母さん!!なんで俺には…
 何で俺に教えてくれなかったんだ!?」

「…ごめんなさいね。でももう私は長くないから」
彼女はそう言って微笑んだ。

「言ったじゃない。私は貴方を守るわ。そのためなら私は
 喜んで死にましょう。喜んで毒も呑みましょう。
 
 いい?黎介、貴方は優しい。その心を大事にしなさい。
 時には心を鬼にして相手を叱りなさい…そして
 人を、命を大事にしなさい」

「か、母さん…母さん!!!」


第11訓死んだ人は帰ってこない ( No.11 )
日時: 2018/06/17 20:45
名前: にゃあこ (ID: s00TEuml)

「じゃあ今の悠助って名前は局長たちが?」

山崎はそう聞いた。

「あぁ、彼を守るためにはそうするしか思いつかなくてな」
「まぁ本人が名乗ってだからいいだろ…さぁ仕事だ、仕事」

 ◇

「沖田さん、土方さん。お仕事の帰りですか?」

「千弦さん?夫は家出ですか?」

沖田はニヤニヤしながらそう言った。もちろんからかっただけだ。
千弦はハリセンで沖田を叩いた。

「ンもう!からかうのも程々にしてください!それに
 千歳さんは家出なんてしません!」

千弦は長い黒髪を結い直した。

「あーいつも将軍様と一緒にいる人か」
「あ、そうだ。二人ともおにぎりを作ったので一緒に食べませんか?
 お茶も出しますよ。千尋おいで。私は準備をしてくるから」

「おーおー、一段と大きくなったな千尋」
「こりゃ千弦さんに負けず劣らずの女になりそうだ」

二人は彼女を見てそう言った。

今、千弦の美しい笑顔はない。でも今は千尋の美しい笑顔が
ある。

 ◇

「今も千弦さんが生きてたら…」

土方はそんな想像をした。

「土方さん、大丈夫ですか?」

「あぁ」