二次創作小説(紙ほか)

その10兄弟って割と似てないことが多い ( No.10 )
日時: 2018/08/26 17:52
名前: にゃあこ (ID: s00TEuml)

後ろ髪が少し長い黒髪の男はある場所へ向かって歩いていた。
その男を早苗や銀時たちは見ていた。
「あの顔…どっかの誰かに似てるような…?」
「銀ちゃん、どうしたアル?」
銀時は店の中に戻った。
****

真選組道場内。
「で、近藤さん伝えたいことってのは?」
土方は近藤に呼ばれ道場内に残っていた。
「まぁ待て。もうすぐ時間だし、お前も絶対喜ぶぞ!」
「え!?近藤さん!!?」
土方の目には布が巻かれた。真っ暗な視界になり何がしたいのかも
分からない。
「俺が許可するまでそれは取るなよ」
道場に足音がする。隊士だろうか?
「…いいぞトシ」
近藤に言われ土方は目隠しの布を取ってゆっくり目線を上へ向けた。
土方に似た凛々しい目つき、少し長い黒髪の男。目は開いてはいるがその目には暗闇しか見えない。
「よぉ!久しぶりだなトシ」
「あ、兄貴!!!?」
土方勇次郎、鬼の副長と呼ばれる土方十四郎の実兄である。
「いやぁ久しぶりに弟に会えて俺は嬉しいぜ!!驚かせようと
思って何も伝えずに来てやったぜ!!」
「何事ですかい、近藤さん、土方さ‥‥はぁ!?」
騒ぎに驚いて様子を見に来た沖田は勇次郎を見て思わず
そう言ってしまう。
「よぉ!沖田坊、お前も久しぶりだな。でっかくなったな」
「勇次郎さん…相変わらずですね。ホントに土方さんの兄なのか
疑いたくなります」
沖田は呆れ気味にそう言った。隣に立っていた山南も開いた口が
塞がらない。
「おぉ!山南坊じゃねえか、相変わらず色白だな!!それに聞いたぜ?」
「え、えっと何を、ですか?」
山南の肩に勇次郎の腕が回る。
「子ども好きの優しい警察がチンピラ警察の中にいるってな!
お前のことを店員に聞いただけで店員も客も集まって来やがった」
「そ、そんなに…ですか。なんか恥ずかしいです」


その11自分にないものを持っている人を妬む ( No.11 )
日時: 2018/08/26 19:33
名前: にゃあこ (ID: s00TEuml)

すでに勇次郎の目は閉じられていた。
「そうかトシは副長か。まぁプライドが高いもんなぁ。昔は
一緒にチャンバラごっことかもしてたけどなぁ」
ニヤニヤと笑いながらそう話した。
「う、うるせぇ!!」
土方は頬を赤らめた。
「トシ、月は見えるか?」
勇次郎は空を指差す。土方も空を見上げる。
「月なら出てるぞ。三日月だ、星も見える」
「そうかそうか、悪いなトシ俺も目が見えれば良いんだがな」
「…仕方ねえだろ」

「土方さん、早苗ちゃんが来ました」
沖田は早苗の背中を軽くパシッと叩いた。
ふわふわした癖毛の黒髪をした早苗は土方と勇次郎を交互に見る。
「…へ?土方さん」
「なんだ?」
「土方さんのお兄さん?」
「俺の兄貴」
口パクで「はいぃ!?」と言い目を見開いた。
「初めまして俺はトシの兄、勇次郎だ。よろしくな」
「わ、私は千葉早苗です。よろしくお願いしますね」
勇次郎は少し微笑んだ。

「勇次郎さん、誰か何かを妬んだことなんてあるんですかい?」
「どうしたんだ沖田坊。突然」
勇次郎は逆に聞き返した。
「いいじゃないですか。聞かせてくだせぇ」
「…土方家は今、俺やトシ以外が継いでいる。本来は俺が継ぐはず
だったが何も見えない故、継ぐこともできない…トシは真選組に
入った。でも俺は入ることはできないさ。盲目では足を引っ張っちまう
目も見え何不自由なく生きていける弟が妬ましかったな」
勇次郎は片手で閉じ切った両目を覆った。
静かに近寄った土方はこっそり勇次郎の隣に立った。
「…分かってるぞトシ。いるのは」
「だぁ〜クッソ〜…」
「土方さんでもお兄さんには勝てないんですね」
「う、うるせぇな。兄貴が俺を妬んでたってのは初耳なんだが」
勇次郎は少し目線を横にずらす。

その12どんな人にも苦手なものはある ( No.12 )
日時: 2018/08/26 20:00
名前: にゃあこ (ID: s00TEuml)

今日の天候…雷雨。雷が鳴り響き雨がザァーザァーと音をたてていた。
土方は兄である勇次郎を探していた。土方だけでなく早苗や近藤も
手伝っていた。
「ここか?」
土方は勇次郎がいる部屋の戸を開けた。布団と蒲団の間から乱れた
黒い髪が少し覗いていた。
「(まだ克服してなかったのか!?)」
そっと近付き蒲団を掴み力を入れる。
「や、やめろ!トシ!捲るんじゃない!!」
「はぁ…起きろ!兄貴!雷にビビってんじゃねえ!!」
その怒声は辺りに響いた。それを聞き全員が集まってきた。
「トシ!どうしたんだ朝っぱらから!!」
「仕方ないじゃないですか!!この兄貴、雷が苦手なんだよぉぉぉぉ!!!」

数時間かけてようやく雷も収まり勇次郎は布団から出た。
「ったく何時間も使わせやがって」
「あはは…申し訳ない!」

「トシ…今、晴れてるか?」
「あぁ、雨も止んだからな。太陽が出てるぞ」
薄っすらと勇次郎の眼は開かれ灰色の瞳に青い空が映った。それでも
勇次郎には暗闇しか見えなかった。勇次郎はトシの頭に手を置き
優しく撫でた。この年になったからやめてくれ、と言いたげな顔を
土方はしていたが言わなかった。

その13やっぱり年上が先に逝く ( No.13 )
日時: 2018/08/27 16:01
名前: にゃあこ (ID: s00TEuml)

翌日の朝、雨が降っていて雷も鳴っていた。
予想通り勇次郎は蒲団と布団の間で蹲っていた。
早苗はもう帰っている。
「起きろ、兄貴!…兄貴?」
蒲団はあっさり捲ることができ小さく縮こまっている勇次郎が
いた。だが彼の手はひんやりとしていて脈も打っていたなかった。
それはつまり死んだということだ。

土方の叫びが全員の耳に入った。
「…副長」
「山崎、今はそっとしておけ」
声をかけた山崎に近藤はそう言い仕事を進める。
山南は勇次郎が使っていた布団やらを片付けていた。そこで
見つけたのは大量の手紙だった。
「これは…」
「どうしたんですか、山南さん」
沖田はその字を見て目を見開いた。

雷が苦手でなければ自慢できる兄だった勇次郎。だが土方は彼に
大切にされていたことを山南が見つけた大量の手紙で知ることになる。
「間違いねぇ…兄貴の字だ、少し震えてるがな」
その手紙には俳句などがたくさん書かれていた。その内容は
ほとんど土方に向けてだった。
【今日は晴れているだろうか?】
外の雨は止み、虹が出ていてそよ風が吹いていた。