二次創作小説(紙ほか)

Re: 東京喰種−夢月− ( No.1 )
日時: 2019/01/26 12:13
名前: azuno* (ID: s00TEuml)

美音は書いた原稿用紙を出版社に渡して家へ向かった。
作家だが心理カウンセラーをしていたこともあり、CCGでも彼女は働いている。
美音「そういえば夜はなるべく早く家に帰るようにって言われてたっけ?でもどうしよう、
買い物もしておきたいんだよな…はわっ!?」
左腕を引っ張られ強制的に路地裏に連れてこられてしまった。
美音が前のめりに倒れ彼女が顔を上げるとそこには話に聞いていた喰種が数人、囲っていた。
美音「な、なななっ!?ち、ちょっと待って、私にはまだ書かなきゃいけない作品が!!」
喰種「いただきぃぃぃぃぃ!!」
大きな赫子が美音に向けて振り下ろされた。鞄を顔の前に突き出し目を閉じた。
何か鈍い音と呻き声が聞こえそっと鞄を下に下げ目を開く。目元を黒い狐の仮面で隠した
もう一人の喰種だ。その男の首から下げられているネックレス、それは美音の持っている
物と違い青い光を放っている。そのネックレスの持ち主は美音より年上でいつの間にか
居なくなってしまった人物かも知れない。
喰種「ひ、ひぃ!?黒狐だ、黒狐が出た!!に、逃げろ」
黒狐「…死んで行け、それで許してやる」
あっという間に喰種たちが倒れ、黒狐はその喰種を喰らい始めた。
黒狐「…逃げないんだな。次に殺されるのはお前かも知れないのに」
美音「逃げない理由は貴女が一番知ってるんじゃないの?助けてくれてありがとう、咲斗さん」
黒狐と呼ばれた男が仮面を取るとその顔は美音が知っている水城咲斗そのものだった。
咲斗「久し振りだな…まさかこうやって正体を晒すことになるとは…」
美音「Sレート黒狐、たまにCCGでカウンセリングの仕事をしているときに調べたの。
本来はAレートで留まるはずだったけど喰種と人間の大量捕食によりSレートに引き上げたって」
咲斗が少し目線を下げた。
美音「喰種は人間の食べ物を食べられない。人間を食べないと生きていけないんでしょ?
私はまぁ仕方ないと思ってるよ。悪い人じゃないもの咲斗さんは」
咲斗「…他の喰種が来る前にさっさと帰れ」
美音は立ち上がり鞄を手に持って駆け足で路地裏を出た。彼女の背中を見送ってから彼も
路地裏を出た。

Re: 東京喰種−夢月− ( No.2 )
日時: 2019/01/26 14:31
名前: azuno* (ID: s00TEuml)

美音はテレビを見ていた。喰種関連の放送が多いが…。
美音は時計を見て家を出た。つい先日、再会した咲斗と「あんていく」で会う約束を
していたのだ。

〜あんていく〜
店の扉を開けると珈琲の匂いがほんのり漂っていた。
近くのカウンターで一人の女性と話している咲斗を見つけた。
咲斗「美音か、ちゃんと時間は守るんだな」
美音「貶されてるの?」
???「この子は咲斗の恋人?なんていうの?私は入見カヤよ」
咲斗「オイ、コイツは別に恋人じゃ」
美音「幼馴染です。私は月待美音って言います」
???「ふーん、無愛想な奴にも一応友達っているんだ」
咲斗「董香ほど乱暴な女はほとんどいない」
董香「はぁ!?首飛ばされたいわけ!?」
董香の怒りを無視し咲斗はカヤから渡されたカップに入っている珈琲を一口飲んだ。
美音はノートパソコンを開き、あるページを開いた。
カヤ「自殺願望をお持ちの方、募集…?」
美音「CCGで言われてる掲示板です。これ、自殺したい人は色々そこに行く日とか
その時の服装とか書いてるんです。で、この場所に行った人が死んでるんです。そこに
行っても死体もないから。この掲示板を作ったであろう喰種をCCGは自殺者と呼んでいます」
董香「自殺したいって奴、ホントにいるんだ」
美音「まぁ世の中、ありますよ。だって気に入らない奴がいたら嫌でしょう?とか、この人が
気に入らないからって虐めとかは起きていますから」
咲斗「…Sレート、か。少し興味が湧いた」

また別の客が入ってきてカヤたちは二人から離れた。
???「そこに自殺するなら男のほうが喰種は喜ぶらしいよ?」
二人の間から顔を覗かせた男がそう言った。咲斗は彼から何かを感じた。
咲斗「なら翌日の夜、お邪魔させてもらおうか…」
美音「??」

Re: 東京喰種−夢月− ( No.3 )
日時: 2019/01/26 15:11
名前: azuno* (ID: s00TEuml)

その翌日の夜、上に紺色の上着を羽織った美音は困惑しつつ歩いていた。
美音「ねぇホントに大丈夫なの?」
咲斗「人間であるお前の匂いがあれば簡単に釣れるだろ」
美音「まさか戦うために?」
咲斗「最近はそこまで戦闘はしてない。腕が鈍りそうだ」
美音は長いため息を吐いた。待ち続けて数十分、美音は大きく伸びをしてから欠伸をする。
夜11時。
咲斗「釣れたな」
美音「え?」
咲斗「昨日は助言、助かった。お陰でアンタを釣ることができた」
美音「昨日?ってことは…あの時の」
咲斗の背中から赤黒い鱗赫が二本現れる。男は甲赫と鱗赫を持っている。美音がゆっくりと
後ろに下がっていく。
???「仕方ない予定変更だ。喧嘩は売られたら買う、今回は腹ごしらえができそうだ」
咲斗「眠らせてやるよ、永遠になぁ!!」
咲斗の鱗赫を男は甲赫で弾いた。弾いたすぐあと、男は咲斗との距離を縮め殴り掛かった。
その拳を咲斗は両腕を交差させ防ぐも壁まで吹き飛ばされた。咳き込む咲斗に休む間も
与えず彼の脇腹を男の先端が鉤爪のような形をした鱗赫が抉り取った。
レートは同じだが相手のほうが戦闘経験豊富なようだ。それは咲斗も分かっていた。
咲斗「…お前如き余裕で倒せるって顔だな」
???「そう見えるかい?」
咲斗「見えるから言うんだ…」
咲斗は自ら自身の右腕を斬り落とした。思わぬ行動に男が驚いた。男はその腕を拾い上げると
マジマジとそれを見つめた。
???「細身の割には筋肉質なんだな」
咲斗「それで十分だろ。俺は帰る」
???「ちょっと待った。折角だし互いに名乗ろうよ、俺は五十嵐世影」
咲斗「…咲斗」
それだけ言い残し咲斗は美音を抱き抱え家の屋根に跳び乗り去っていく。

Re: 東京喰種−夢月− ( No.4 )
日時: 2019/01/26 17:39
名前: azuno* (ID: s00TEuml)

あんていく、美音は最近ここに寄るようになった。
芳村「そうか美音ちゃんは咲斗君と幼馴染か」
美音「はい。昔私が住んでいた家の近くには同い年の子もいなくて近所だった咲斗さんと
よく遊んでいたんです」
芳村「そうか、だからこそ彼は君にだけ少しずつ心を開き始めているのかもしれないね」
芳村はカップを拭く手を止めた。
芳村「君と彼が再会したのは一週間ぐらい前だよね。それよりも前の彼は私たちの
誰とも口をきこうとはしなかった」
それを聞いて美音は驚いた。
カヤ「本当よ。あの頃は彼も暴食だったからっていうのもあったかもしれないけど
とても怖かったわ。殺されるかと思った」
芳村「…彼を支えてあげられるのは君だけかもしれない」

美音が店を出ていき数分後に咲斗がやってきた。いつものようにカウンターに座り
珈琲を頼み本を読み始めた。
董香「アンタその本の作者って」
ニシキ「美音って奴だろ」
咲斗「…」
二人の言葉に耳も貸さず本と向かい合っている。
芳村「二人とも仕事をしなさい。読書の邪魔をするわけにはいかないだろう」
店長である彼にそう言われ渋々二人は仕事に戻った。彼らが去ると咲斗は本に栞を挟み
彼に話しかけた。
咲斗「…入れ違いだったのか」
芳村「美音ちゃんとかい?彼女も作家だからね仕事があるんだろう。君は彼女のことが
好きなのかい?」
咲斗はサッと視線を逸らした。好きだ、とは言いたくないようだ。だが彼の気持ちを察した
芳村はそっと微笑んだ。
咲斗「俺は喰種だし…アイツを好きになることはできない」

Re: 東京喰種−夢月− ( No.5 )
日時: 2019/01/26 18:20
名前: azuno* (ID: s00TEuml)

???「へぇアンタがあの黒狐か?」
トンネルにはチカチカと灯りが光っている。そこで咲斗は一人の青年に声を掛けられた。
その男はニヤニヤと笑っている。
咲斗「…」
咲斗の目が微かに見開かれる。
???「俺は暴食の黒狐のことを知ってるぜ。なぁ、もう一度暴れてみないか?俺ぁ見たくて
仕方ねえ」
咲斗「…無駄な戦闘は控えてるんだ。Sレートの蝙蝠、蛇足だが俺はお前より上だ。
つい最近SSレートに引き上げられた」
そう言って咲斗は何事もなかったかのように歩いていく。そんな彼を蝙蝠は引き留めた。
???「いいのか?もう俺はお前の匂いを覚えたぜ?SSレート黒狐、水城咲斗。俺は蝙蝠、
三雲竜星だ。っと話の続きだが俺は欲を抑えるのが苦手でね。下手したらお前の大切な奴を
殺しちまうかもな?」
咲斗が足を止めた。瞬間、咲斗の腰辺りから赤黒く鋭い鱗赫が竜星に襲い掛かる。
それを見た竜星は笑みを浮かべ鱗赫を躱し反撃する。
竜星「お前の知り合いってのは月待美音って奴か?随分と可愛らしいし、美味そうじゃねえか」
咲斗「だから何だ、それぐらいじゃ俺は暴れたりしねえよ」
竜星「じゃあこうすりゃあいいか?」
竜星の腰から一本の青みを帯びた赤い鱗赫が伸び何かを絡めとる。それを見て咲斗は目を
見開く。
竜星「気絶してるだけだ。コイツを見れば少しぐらい——ガァッ!?」
咲斗の鱗赫で竜星が薙ぎ倒された。咲斗は美音を抱き抱え竜星を睨んだ。咳き込む竜星は
苦笑し降参と呟く。
美音「ん…って、さ、さささ咲斗さん!?」

Re: 東京喰種−夢月− ( No.6 )
日時: 2019/01/27 15:01
名前: azuno* (ID: s00TEuml)

CCG本部、喰種たちのカウンセリングを終え美音は同じく喰種たちのカウンセリングをする
牧田瑠海に声を掛けられた。
瑠海「大人気だね美音さんの本」
美音「うん…まさかここまでとはっていうのが本音だよ」
近くの椅子に座り美音はあることを心配する。
美音「瑠海ちゃん、盗撮っていう喰種とは何か関係があるの?」
盗撮、その喰種は瑠海に異常なほど執着している。彼女を盗撮していたところを喰種捜査官が
見つけたところその捜査官が喰種に殺された。
瑠海「小さい頃に引っ越してきたのが彼で、一緒に遊んだりしてたの。そういう美音さんもでしょ」
美音「あー…うん」
彼女だけ美音が黒狐、咲斗との関係を知っていた。
美音「話は変わるけどさ喰種を人間に戻す方法とかあればいいのにね」
瑠海「うん…そうすればコクリアにいる人たちもきっと幸せになれたのに…」
美音と瑠海が見てきた喰種は普通の精神状態の喰種から廃人状態など様々だった。酷い人では
ずっと俯いたまま何も話さないなどもある。

仕事も終わり瑠海に「あんていく」を紹介した。
瑠海は嬉しそうに店内を見ていた。
瑠海「ここが美音さんがいつも来ているお店か。確かに作家さんがいそうな場所」
芳村「美音ちゃん、咲斗君なら奥の窓側の席にいるからね」
美音「あ、なんかいつもすみません」
瑠海「咲斗って…あの人?あの人、喰種には見えないけど」
小声で瑠海が呟く。
美音「うん…って私が咲斗さんのことを話したってのは内緒にしてね」

Re: 東京喰種−夢月− ( No.7 )
日時: 2019/01/27 15:26
名前: azuno* (ID: s00TEuml)

???「君、あんていくの常連さん?」
白髪の隻眼の喰種は殺した喰種を捕食していた咲斗にそう声を掛けてきた。最後まで
残した赫包を呑み込んだ彼はその喰種を見据える。
咲斗「誰だ、お前。アンタみたいな奴、俺は知らねえぞ」
???「金木研、覚えてないの?咲斗君」
咲斗が少し驚く。記憶に残る彼と随分と違う。
金木「覚えてなかったのも当然か…でも君も隻眼だったんだ」
咲斗「…何してんだ、お前。お前、あんていくで働いてたんだろ」
咲斗は仮面を外し、彼にそう聞いた。咲斗と美音、金木は知り合いだ。
金木「皆を守るためにアオギリに入ってる」
咲斗「お前アオギリのことを知らないワケじゃねえだろ…」
そう言って去ろうとした咲斗の体が壁に吹き飛ばされた。何事も無かったかのように咲斗は
立ち上がり何者かと見た。
金木「あ、絢都君!その人は」
咲斗「…無駄なことはしない。別に戦っても構わないが…」
霧島絢都は身構える。だが次に咲斗が目を開くと赫眼が消えていた。
咲斗「友人の友人を殺すのは好きじゃない」
そう言って彼は路地裏を出ていった。追いかけようとする彼を金木は止めた。
絢都「なんで止めんだ!」
金木「咲斗君は君が思っている以上の強さだ。分かっているはずだよ」

Re: 東京喰種−夢月− ( No.8 )
日時: 2019/01/27 18:00
名前: azuno* (ID: s00TEuml)

咲斗「オイ俺、帰っていいか」
美音「何度もダメって言ってるでしょ」
咲斗「腹だった減るんだ。食われてもいいのかよ」
美音「大丈夫、芳村さんが咲斗さん用の人肉を渡してくれたから」
そう言って美音は少し大きめの紙袋を咲斗に渡した。咲斗はその中から一切れだけ手に取り
かぶり付いた。
咲斗「…どうせ戦いに巻き込みたくないからって芳村さんに言われたんだろ。ったく…」
美音「いいじゃん今日だけなんだから我慢してよ」
その時、家のインターホンが鳴った。そこにはスーツを着た一人の喰種捜査官がいた。
彼は美音に二つの箱を渡して去っていった。
美音はその箱を開ける。箱の中身は弓型のクインケと小太刀と普通の太刀のクインケが
入っていた。弓のほうが村雲、二本の太刀を宵月と名前がついている。
咲斗「この赫包…」
箱の中には水城佑斗と書かれていた。その男は咲斗の父親であり二種持ちの喰種だ。
鱗赫と羽赫の二つ。

やがて夜は明け、戦いが終わった。その3年後。
クインクスたちのサポート役を任された美音は白いパンツスーツを着ていた。彼女の隣には
白いコートを着た咲斗がいた。その数日前、有馬貴将に美音は土下座していた。
美音「お願いします!SSレートの黒狐をここのサポートにさせてもらえないでしょうか!!
彼は人間に友好的です。新しく作られたクインクスの班員に赫子の使い方などを
教えられるはずです!勿論、彼の管理は私がします。何かあった場合、私にも罪はあると
認め牢屋行きでも構いません!」
咲斗「オイ…俺は!」
有馬は腕を組んで咲斗を見た。
有馬「…分かった。正し彼は半赫者だ。暴走したらその時点でSSレート黒狐を駆逐対象にする。
肉はこちらで用意し定期的に渡しておく。仕事を任せるときは必ず美音が近くにいること、
それを守れるなら許そう」
咲斗「アンタ、いいのかよ。喰種を殺すのがお前らの仕事だろ」
有馬「いいのさ」