二次創作小説(紙ほか)
- Re: 幻想紀行文 ( No.4 )
- 日時: 2019/11/20 21:05
- 名前: 水無月匣 (ID: xs5T8t9X)
紀行文とも言い難いけど中々良いじゃない。
紫は椿が書いた文章を読んで笑顔になった。同時に椿にはこれからも起こった事を
綴ってほしいと思った。稗田阿求のような第三者視点からではなく当事者たちの視点から
書く歴史書、戦記にも近いかもしれない。
「紫様、何故彼女にこのような事を?」
藍もまた椿が書いた文章に目を通していた。
「私の娯楽。以外とあの子、作家の才能があるわね。それともう一つぐらい出来たら
正式な本にしようと思ってるの」
◆◆◆◆
とある日、椿は自分と同じく外来人を名乗る男、十神久遠と出会い仲良くなった。
やはり同じ境遇の人間がいると親近感が湧くらしい。
「同じ外来人と言えど同じ時代から来たとは言えない。過去、現在、未来、何処からでも
とりあえず忘れられていれば幻想郷には来れるからな。後はまぁ…能力とか紫の
能力が関係してくるかもしれない」
「アンタは?」
勾時は少し驚き後から名乗っていないことに気が付いた。
「博麗勾時、お前は十神久遠だろ?よろしく頼むよ」
「待て!博麗って…霊夢の兄か?」
突然、顔を近づけそう何度も聞いてくる久遠に勾時は困惑した。それを椿は微笑みながら
見守っていた。久遠は勾時に霊夢の姿と重ねる。顔立ちは霊夢を男にしたような顔立ちで
霊夢のリボンと同じ色合い、模様のネクタイをしていた。
「…?どうしたんだ久遠。俺の顔ばっかり見てさ」
「あ、すまない。いや…やっぱり兄妹だなぁっと思って」
「そういえば」と勾時は何かを思い出した。
「大したことじゃないがよく言われてたなぁって…似てることは否定しないというか
出来ないけどな。それと椿、紫からの伝言だ」
「え?私?」
「これからも起こった異変や日常をしっかり書き記しておくように、だってさ」
- Re: 幻想紀行文 ( No.5 )
- 日時: 2019/11/21 17:16
- 名前: 水無月匣 (ID: xs5T8t9X)
霧の湖、そこで集まって遊ぶのはチルノと大妖精とルーミアだった。彼女たちは湖の上に
立つように宙を浮く男に声を掛けた。
「あの貴方は?椿さんと同じ外来人の人ですか?」
「?君は…大妖精かな?そっちの子はチルノちゃんとルーミアちゃんだね。いつもここで
楽しく遊んでいるのを見るよ」
淡い水色の長髪を揺らし彼はそっと微笑んだ。ルーミアはふと彼の袖から見える
キラキラ光る何かに目がいった。それは鱗、彼が人間ではないことを示すものである。
そして尾、狐のような尾ではない。どちらかと言えば蛇のような尻尾だ。
「うわぁ!!何だこれ!?ピカピカ光ってるぞ、大ちゃん!」
「綺麗だよ〜!!」
「あ、二人とも!そんなにべたべた触ったらこの人も困っちゃうよ〜」
袖を捲り男の右腕についた鱗に目を輝かせる二人に迷惑になるんじゃないかと心配する
大妖精。しかし彼は嬉しそうに笑顔を浮かべ左手で大妖精を撫で彼女の手を自身の右腕へと
乗せた。
「減るようなものじゃない。僕は知ってるよ、ずっと昔からここにいるんだ…」
◆◆◆
チルノたちは博麗神社に遊びに来ていた。ここに来ると霊夢は気分次第だが椿や久遠が
遊んでくれる。椿は外の世界での遊びを色々教えてくれるのだ。やはり人間で言えばまだ
子ども、色々な遊びを知っている様だ。
「あれ?なんかぐしゃぐしゃになっちゃった…」
「あーこれは何処かで間違えちゃったのかな」
椿は笑いながらチルノに丁寧に説明している。その様子を久遠は眺めていた。チルノはふと
霊夢と勾時が広げている巻物を見た。
「なぁ霊夢、これって?」
「竜神よ。確か青龍ね…幻想郷にもいた気がするけど滅多に姿を現さないのよ」
「あ!私たちの話を聞いてください。実は霧の湖で男の人に会ったんです。鱗があって
蛇みたいな尻尾があって…」
「私たちの名前も知ってたんだぞ〜」
- Re: 幻想紀行文 ( No.6 )
- 日時: 2019/11/21 17:52
- 名前: 水無月匣 (ID: xs5T8t9X)
「じゃあ本物の青龍かもな。幻想郷になる前のあの湖は龍の住まう湖として知られていたんだ。
その湖は昔の人間の子どもたちの遊び場だった。そこを守るために人間は湖の神を祀った。
お前たちの元気に遊ぶ姿に懐かしさを感じたんだろう」
勾時が説明すると三人は嬉しそうに笑った。
「そうだ!ならみんなで会いに行こうよ!あたいの親友として紹介してやるぞ!!」
「何でアンタが上から目線なのよ」
「まぁ良いじゃないか霊夢」
少し苛立つ霊夢を勾時が抑える。全員が博麗神社を離れ霧の湖へ向かう。霧の湖に到着し
椿が水面を覗き込んだ時、事件は起こった。何かに手を掴まれ中に引きずり込まれる。
寸前で大きく息を吸い息を止めた。あっという間に椿は湖の中に消えていった。
「椿!!ど、どうしよう!?ねぇ霊夢、もう椿、戻ってこないの?」
不安そうにチルノは霊夢を見つめる。霊夢は横目でチラッと兄の勾時を見た。彼がふと
何かを感じ、霊夢に合図する。「構えろ」という合図だ。水飛沫を上げて現れたのは
巨大な龍、青龍そのものである。
「やはりここの守り神の龍か。何故椿を沈めた?」
龍は体をうねらせ大きく咆える。そして全員を呑み込まんと口を開き突進。勾時は辺りに
目を向ける。久遠は刀を構えていた。恐らく椿のいた外の世界は治安が良い場所だろうが彼が
いた場所は治安が悪い場所なのだろう。そうでなければ刀を構え、あんなに生き生きとしては
いないはず。
「勾時、お前…それなりに強いんだろ。まさか俺一人でやれとは言わないだろうな」
「ッ!っと、すまない。そうは言わないから好きなだけやると良い。俺がサポートする」
一方、湖に引きずり込まれた椿は青龍の事を知った。古くから湖を守り、またそこで遊ぶ
子どもたちを守り続けていた。何時しか自分も遊びたくなっていたがそれは叶わなかった。
長い時が経ち湖は埋め立て地に変わってしまった。
- Re: 幻想紀行文 ( No.7 )
- 日時: 2019/11/21 18:52
- 名前: 水無月匣 (ID: xs5T8t9X)
「殺すなって…俺は手加減できないんだが」
勾時の言葉に久遠は目を細めて告げた。
「努力はしてみろ。もう知りたいことは分かったからな。あれを殺してはいけない、あの龍は
ずっと前からチルノたちを守っていた」
霊夢はふぅと息を吐いた。辺りから消えていく弱い妖怪たち。彼らは自分たちよりも弱いと見た
チルノたちをつけ狙っていたのだ。
「そうみたいね。でも何時気が付いたの?」
「ついさっきだ。噂で聞いただけだが霧の湖の水を飲んだ人間が妖怪の山で遭難した。
襲われそうになったがその妖怪は人間を妖怪の山の外へと連れて行って逃げていくように
去ったという」
青龍の力が染み込んだ、聖水と言っても良い程の湖。そこで遊んでいたチルノたちを青龍は
誰にも気付かれずに守っていたという。龍が苦しみだし空に向けて大きく咆哮する。
雲がかかり雨が降る。何故か心が落ち着く。龍の鈍い青色が明るい青色に変わった。
青龍が口に咥えているのは大きな球体、その中には手を振る椿がいた。球体が消え椿は地面に
降りた。
「良かったぁ…生きてるよ私!」
椿が無事に戻って来たことに安堵しチルノたちは青龍に礼を述べた。
「アタイたちをずっとまもっててくれたんだよね?ありがとう!!」
龍の姿は人型になった。チルノたちが見たあの男である。
「礼には及ばない。僕はね、ここに来る悪人を追い払うだけだよ。ねぇ人間の子ども、君だよ
名前は?僕の事は青龍で構わないから」
「私は椿、有栖川椿です!」
「そうか…椿か。君もそしてここにいる人間全員、命は大切にしなさい。例え望まれない形で
生まれた命だとしてもそれは金では買えない、何を犠牲にしてもその魂は一つだけだから…
死して罪を償うということは記憶を捨てると言うこと。きっと一つや二つはあるだろう?
捨てられない理由が…」