二次創作小説(紙ほか)

Re: 幻想紀行文 ( No.8 )
日時: 2019/11/21 19:18
名前: 水無月匣 (ID: xs5T8t9X)

全員が同じものを見た。紫も含めてその過去の持ち主も、だ。それを見せた張本人は驚いた。
その過去に、ではなく過去を見た一人の人間に。

「あー、アイツかな…」

久遠は呟く。人としての死を選んだ過去はあまりにも暗すぎる。元より人として作られた
体ではなく、霊力、神力、妖力、魔力、全てを練り込んで作り上げた人工物。兵器である。
狂った人間たちによって人間を殺すために作られていた。だが彼らに彼を扱うことは
出来なかった。気が付けば久遠は万単位の人々を殺していた。

「ってか、お前。察するの早すぎだろ勾時」
「使用できるかどうかは俺には自由に分かるんでね。解けばお前の体は人間ではなくなる、
空気になるってな」
「もうどうして教えてくれなかったのよ兄さんったら!」
「まぁでも今さら、こんなのを教えられても何も感じないぜ。私たちは過去なんてどうでも
いいからな!そうだろ?椿」
「え?何で私が全員のリーダー的な扱いを受けてるのかな?」
「そりゃお決まりだから?」

霊夢に言われて椿は少し困惑した。お決まり、とは?偉そうに咳ばらいを一つして椿は
一呼吸して話し出す。

「大丈夫だって。過去なんて関係ないでしょ?そんなんで死ぬなんて言ったら、ねぇ?
青龍が言ってたじゃん。命は大切にしなさいって、望まれない形じゃなかったとしてもって…
久遠は…死にたいの?自殺願望者?」

あぁ、そうか…。
椿の言葉に少し救われた気がした。まさか年下に論破されるとは…。死にたくない、だが持って
数年の命で良いという願いは唯逃げているだけだったなぁ…。ゆっくりと何かが動き出した。
それは普通、人間になら必ずある心である。そして生への願望である。

◆◆◆
紫は目を通してフッと笑みを零した。十神久遠は平穏に暮らせる外の世界へ普通の人間としての
新たな一歩を踏み出していった。そして椿は第一作品を作り上げたのだった。