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第72話

幸い、枕返しは、自分のお気に入りの枕を洗濯していたようで家にいた。
鬼太郎が代表して事の顛末てんまつを手短に伝えると、枕返しはううむ…とうなり、こう言った。

「お前ら、よく聞いとけ。“夢魔”ってやつはな、勝手に人間の夢の中に入り込んで、そいつの寿命を食う……とされている」

その言葉に、俺を含む全員が息を飲むような気配があった。
あまりの驚きに、思うように息が吐き出せない。

「退治することはないことはないが、夢の世界に入らないとならねえ。…それでも、やるか？」

枕返しは、俺たちの目を覗き込みつつ、そう付け足す。

俺は夢の世界には行ったことはないが、鬼太郎や猫娘の話を小耳に挟んだ限りでは、とても壊れやすく、危うい場所のようだ。

何となく試されている気がした。
それでも、梨緒を救わなくてはならない。
いつにもない正義感に心が突き動かされていた。