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第75話

「……夢魔、その子を離すんだ」

いつもより声のトーンを1つか2つ下げて、鬼太郎はそう投げかけた。

夢魔は、凶悪な見た目からして話が通じない妖怪かと思ったが、その思いに反して、鬼太郎の言葉に反応し、ゆっくりと振り向く。

「……なんだ？」

地の底から響くような低い声。
俺は、逃げ出したくなる気持ちを抑えつつ、夢魔の目を見据えた。
そして、気がついたら、心の声が口に出ていた。

「てめぇ、梨緒に何しやがる！！」

その剣幕に圧されたのか、夢魔はこちらを睨みつけてくる。
思わず怯（ひる）みそうになるが、怯んだら負けだと思い直し、体勢を整えて声を張り上げる。

「梨緒を離せ！でなけりゃ、このねずみ男様が相手だ！！」

自分でも何を言っているんだ、という気分だった。こんな巨体な妖怪とまともに戦っても、最後はズタボロにされて終わりに決まっているのに。