二次創作小説(紙ほか)

第39話「刻羽睦彦」(5) ( No.192 )
日時: 2020/05/28 18:24
名前: 夢兎 (ID: 9Yth0wr6)


  二年間の修行は、想像した以上につらかった。
  まず最初にやったのは、山の中での走り込み(一カ月間)。



  炭治郎もそうだったらしいが、山には沢山の罠が仕掛けられている。
  なんでも、知り合いの猟師さんに罠を仕掛けてもらっているとか。
  その数、100。

 


   例えばどこからか弓矢が飛んできたり。




 睦彦「(タッタっタッタ)よし、良いペースでいけて…」


     ビュンビュンビュン


 睦彦「うおわっ(慌てて身を引く)」




 例えば落とし穴があったり。




 睦彦「は、危なかったっって、え、え、う、どわぁぁぁ(穴にすっぽりハマる)」



 
  他にも丸太がブラブラ揺れるような罠とか、糸に足が引っ掛かると斧が飛んできたりとか。
  ……地獄の山登りだった。

  それもそうだ。
  俺は炭治郎のように鼻が良かったり、善逸のように耳が良かったり、
  胡桃沢のように目が良かったりとかそんなことはない。
  強いていうなら、バランス神経がちょっといいだけだ。




 最初は地獄だ、このまま死んだ方がましだと思っていたが、一カ月もすると慣れてきて、


 

    ビュンビュンビュン(弓矢)



 睦彦「おっと(体をひねって避ける)。(タッタっタッタ)」


 

    ドスッッ(丸太)


 睦彦「よいっしょ(丸太の上に乗っかって)。えいっ」


 
    ぴょんっ
    スタッ


 睦彦「(木に着地)よし、さっさと終わらそ」






  山登りが終わったら、やっと呼吸の練習に入る。
  俺の育手は雷の呼吸だった。光の呼吸はそれのアレンジだ。



  ある日は全集中の呼吸の練習。



 睦彦「(スゥゥゥー)こうですか!」
 先生「違う! もっと肺に空気をため込め!」
 睦彦「(スゥゥゥゥー)こうですか!」
 先生「違う!!」



  ある日は受け身の練習。



 先生「壱ノ型 霹靂一閃!」
 睦彦「うお、ちょ、ヤバ、ギャアっ(尻餅をついて)」
 先生「受け身は全ての基本! やれるようになるまで今日は終わらせんぞ」
 睦彦「も、もう一回お願いします」




 ある日は型と剣の振り方を教わった。




 睦彦「(ヒュゥゥゥー)雷の呼吸……壱ノ型…」
 先生「もっと足に空気をため込め!」
 睦彦「(ヒュゥゥゥうー)雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃!(ブンッッ)」



  〜台の上に置いた薪が割れ〜


 先生「十本中五本か。もっと剣の軌道を考えて振れ。もう一回!」
 睦彦「はい!」






  基本をすべて教わったら、あとはひたすら自己鍛錬。
  朝早く起きて山で走り込みをし、呼吸の練習をし、太刀筋矯正の練習をし。
  ひたすら練習した。




 睦彦「うーん。雷の呼吸って強力だけど俺ならまずこうして…」


  その過程で光の呼吸へとアレンジもして。
  俺の最終選別行きが決定したとき、先生の家へ来て二年がたっていた。



 【居間】



 先生「睦彦。お前いくつになった?」
 睦彦「13です」
 先生「ほう。……お前を、最終選別へ行かせようと思う」
 睦彦「やったぁ!」

 先生「生きるも死ぬも選別で決まる。気をしっかり持て!」
 睦彦「はい!」
 先生「よし睦彦。選別行き祝いとして、町で好きなものでも買って来い」

 睦彦「え、いいんですか?」
 先生「特別だ」




 【町】



 睦彦「……何買おう…」



  わらび餅に、ハッカ飴に、まんじゅうに、色んなものが売っている。
  金平糖でも買っていくか。



 睦彦「金足りるかな…」



  菓子屋のノレンから店の中に入ろうとしたときだった。
  店の中から一人の女の子が風を切るように外へ飛び出していった。
  紫色の羽織を着た女の子の手には、わらび餅の箱があった。



 睦彦「うわ、あぶねえな」
 店員「コラァ! 金払えそこのガキ!!」



  そうやらその女の子は万引きをしたようだった。
  店員は女の子のすぐそばまで駆け寄って、仁王立ちをして右手を突き出した。



 店員「ほら、金!」
 女の子「死ね!!!」


  女の子は凄い捨て台詞を吐いて、そのまま逃げて行った。
  足が速かった。
  店員さんが走っても走っても、彼女には追い付かなかった。



 睦彦「あ、アイツ…! 刀持ってる…」


  一瞬だが、女の子の腰には二本の短刀が刺してあったのを見た。
  彼女も、もしかすると。



 店員「クッソォ! 逃げられたっ」
 睦彦「おじさん、俺が払うよ。いくら?」
 店員「え?」
 睦彦「あ、六銭、了解。はいこれ」

 店員「何で君が」
 睦彦「金払えない事情があるのかもしれないし、俺金あるから大丈夫」




  そう言って店を離れ、俺は周囲を見渡した。
  そして、意外にもそいつは店の裏にいたのだ。




 睦彦「こら。こらお前。俺の財産払わせる気か」
 女の子「………なんでアンタがそんなことするの。関係ないじゃん」
 睦彦「そんなこと言うなら払わないほうが良かったか」
 女の子「………」



 睦彦「ホラ!(札束を渡して)もってけ。金ないんだろ」
 女の子「あったけど盗まれた。『バケモノは金なんか使えない』って」
 睦彦「……ひでぇことしやがる」



 女の子「別に気にしてないし、仁乃がバケモノなのも本当だし」
 睦彦「そんなことない!」


 女の子「え?」
 睦彦「お前、そんなに自己肯定低かったら生きていけないぞ! た、例えば、」
 女の子「何さ」
 睦彦「自分は強いって言え! 鬼殺隊に入るならそれくらいやれ」


 女の子「何で、知って…」
 睦彦「じゃあな! 最終選別で会おうぜ」



  これでいいんだろ兄ちゃん。いい意味で目立つことは悪くない、だったっけ。
  ちゃんと覚えてるよ。
  




 女の子「まって!」
 睦彦「なんだ、まだ何か?(振り返って)」
 女の子「わ、私、胡桃沢仁乃! また、いつか会おう!」
 睦彦「おう。約束だ(ニコッ)」




  その女の子の名前を、俺はすぐに忘れてしまった。
  けれど、俺はその子と偶然出会うことになる。


  最終選別で。






 先生「それで、好きなものは買えたのか?」
 睦彦「あ、何も買えてないっ」




 ネクスト→最終選別開始☆ 仁乃、登場!
      次回もお楽しみに!