二次創作小説(紙ほか)

第40話「胡桃沢仁乃」(2) ( No.195 )
日時: 2020/11/30 20:39
名前: 夢兎 (ID: mkn9uRs/)

 あれから私がどうなったのか、簡単に説明しようと思う。


 目が覚めたのは翌日の昼頃。
 ずっと眠っていたからだろうか、やけに目覚めが良かった。

 今日はいい天気だ。みんなで一緒に街に出てみようか。
 そう思い、家族の名前を呼ぼうとしたところで、もう家族はいないことを実感した。


 家族の埋葬をしながら、どこに行っても見つからなかった姉に想いをはせた。
 嫌な言葉が頭の中に浮かんだけれど、「大丈夫だ」と何回もつぶやいた。


 仁乃「きっと、どこかで生きているはず。いつかきっと会える」



 そう、その言葉通り、私は後に姉と再会することになる。
 ただその時の姉が鬼になっているということは、まだこの時は分からない。
(※詳しくは短編集の「伊黒×蜜璃のデート観察と護衛の一日」を見てね)



 仁乃「……あれ、腕の傷が治ってる…。元からケガなんてしてないってくらいに」



 正確に言えば鬼の血が入っているのでケガ自体が回復したのだけど、
 まだその時は分からなかった。

 自分がどうなったか分かったのは、それから四日後。
 鬼の存在を知った私は、山ほどの刃物で武装して、家の前に落ちてた短刀を構えて鬼を狩る日々
 だった。



 鬼「ウがぁぁぁぁぁ!」
 仁乃「えええええい!」





   ブンッッ


 ありったけの力で刀を振り下ろすのと同時に、自分の体から黒い腕が発生した。
 その腕は空気を切り裂いて伸び縮みし、鬼の頸をガシッとつかんだ。


 鬼「うっ! んんんん!!」
 仁乃「ハァ……これで、終わりだ!」




  ビシャッッ





 鬼の体が崩れる。
 この日私は、鬼に襲われている小さな子供たちを守るために戦っていた。
 自分の背後で震えながら戦闘を眺めていた子供たちは、よろよろと起き上がった。



 仁乃「大丈夫? どこか痛むところは」


 ない? そう言いかけたとき。
 硬い何かが、ゴンッと頭に当たった。
 地面に落ちたそれは、角ばった小さな石だった。



 仁乃「へ?」
 子供A「ば、バケモノ! あっち行け!」



   ゴツッ


 仁乃「…………なんで、そんなこと言うの?」
 子供B「体から変な腕が出てた! 人間じゃない!」
 子供C「あっち行け! 人間のふりしたカイブツめ!」



 思い当たることがいくつかある。
 掌から黒い炎が発生した。
 さっきのように体から腕が発生した。

 これらの術は、鬼が使う異能・「血鬼術」というらしい。
 実際、そのあとも鬼狩りを続けるうちに、異能の鬼と沢山遭遇した。
 彼らは私に向かって、親しみを込めた視線を向けてくるのだ。



 —その視線がたまらなく怖かった。




 鬼殺隊という組織があることを知った私は、そこに入りたいと思った。
 育手? そんな人はいなかった。
 自分を信じてくれる、家族という大事な存在を失った私に優しくしてくれる人はいなかった。
 一人も。

 あの一件から、近所の人は私の顔を見るたびに石を投げつけて来た。
 バケモノだ、ならず者だとののしった。



 「死ね、バケモノ!」
 「バケモノが金持ってんじゃねえ、よこせ!」



 ……私の心はすっかり荒んでしまった。
 何か言われるたび、私は乱暴な言葉を使って反論した。


 「死ねゴミカス!」
 「見てんじゃねーよ!」


 とかそういう。




 悪口を言われ続けて来た私にとって、自分の存在意義何て一つもなかった。
 最終選別を前にしたとき、こう思ってしまった。
「ここで死ねばもう辛くない」と。


 最終選別が始まる一週間前。
 お金がない。けれど食べ物が欲しい。
 そんな私は町に出て、万引きをしてしまった。



 好物のわらび餅の箱を小脇に抱えて、店の裏にしゃがんでずっと泣いていた。
 もう誰も信じられなくなってしまっていることが嫌だった。



 そんな私に。


「ホラ!(札束を渡して)もってけ。金ないんだろ」


 袴を着た、二歳、三歳年上の男の子がお金を渡してくれるなんて、思いもしなかった。
 私は少し顔を上げて、お金を確認するとすぐに顔をうずめた。


「金ないんだろ」
「あったけど盗まれた」


 そう言うと男の子は眉間にしわを寄せて、今まで誰も返さなかった言葉を言った。
 ひでぇことしやがる、と。
 私をかばってくれたのだ。


「別に気にしてないし、仁乃がバケモノなのも本当だし」


 そうだ、自分は他の人間とは違うのだ。
 気にしてない。いや、もう気にしないと決めたのだ。
 これ以上傷つくのはこりごりだ。


 「そんなことない!」
 「え?」


 バケモノなんかじゃない、一人の人間だと言ってくれたのも、彼が初めてだった。

 そりゃあ君は私の術を見たことがないからでしょ、見たら君だっていうはず。
 そう思ったけど、言わなかった。
 家族がいなくなって
 初めて、優しい言葉をかけられたから。



 
 「じゃあな! 最終選別で会おうぜ」
 「まって! 私、胡桃沢仁乃」




 名前、覚えてくれると思ったのに、むっくんは最終選別がある当日まで忘れていたそうだ。
 失礼しちゃう。

 最終選別の日、むっくんと人が来るまで話しているとき、私は不意に泣きそうになった。
 彼が私の術を見たら、何て言うだろう。
 やっぱり、バケモノって言われるだろうか。


 そんなことを気にしてるうちは、まだ私は彼のことを信じてなかったんだと思う。
 彼と私の絆がしっかり結ばれたのは、最終選別から一年ほどたった日。
 むっくんとの合同任務で起きた事件がきっかけだった。



 【大正コソコソ噂話】
 今日の大正コソコソ噂話:ゲストとのお話タイム



 むう「はーなこさーん」
 花子「はーあーいー」
 むう「ってことで今回のゲストは、花子くんでーす」

 花子「ねえねえ、俺さ、ちょっと気になってることがあるんだけど」
 むう「何でしょう?」
 花子「この作品の主人公って誰?」


 むう「(…炭治郎だけどもうみんなが主人公ってことにしちゃおう)」
 花子「あ、悪い顔してる」
 むう「みんなが主人公ーって感じでどうすか」
 花子「……誰が主人公か考えるのがめんどかったんじゃん」
 

 花子「じゃあさー。俺が、主人公の座を奪い取るってことも…できるよね」
 むう「なんてことを企んでるんですか貴方はぁ!」

 花子「いやだってさ、正直言うとぉ、俺ケッコー出番多い…」
 むう「扱いやすいキャラですから」
 花子「扱いやすいって、猫みたいに言わないでよ」


 むう「私も花子くんに聞きたいことあるんだよね」
 花子「俺の事そんなに知りたいのー?(ニヤニヤ)」
 むう「実はね、この前夢に花子くんが出てね? 私の隣の席だったわけ」
 花子「ほー」

 むう「んで、なんか妙にこっちをジーッと見つめてくるんだよね」
 花子「…………そ、それで?」
 むう「もうこっちが恥ずかしいからあえて気づかないふりしてましたって言う夢」
 花子「……あ、そ、そうなんだ。ふーん。よ、よかったじゃん///」
 

 むう「何か顔赤いよ」
 花子「……赤くないよ」
 むう「んじゃ、私も花子くんに聞きたいことありまして。何で女子トイレなの?」
 花子「性癖に負けちゃっ」



 むう「あーーーーーーーー!(大声で叫ぶ)はい、何も聞こえませんでしたよ」
 花子「………」
 むう「健全なんですよ私はね。こんなところで『せい〇き』とか言わんでくれ」
 花子「………あ、ごめんなさい」


 二人「今回はここまで。次回のゲストは【八尋寧々】です。お楽しみに!」




 ネクスト→仁乃睦の合同任務で起こった事件とは?
      次回もお楽しみに!