二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【鬼滅×花子くん】短編集続編 六人の軌跡 ( No.363 )
- 日時: 2020/08/03 16:52
- 名前: むう (ID: 9Yth0wr6)
更新遅くなってごめんなさい!
これからさらに遅くなるかも……。
待ちすぎて読者さんの首がキリンみたいにならないことを祈る!
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〈炭治郎side〉
睦彦くんはもう三時間も部屋から出てこない。
それに関係して、みんなもどこか心ここにあらずという感じで、口数少ない。
なんか、これまで皆でつくってきたものが、輪郭を失ってぼやけていく感じがする。
早めに何とかしないと、もうそれは元通りにできなさそうで、
だからと言って何かが出来るわけでもなく、俺は廊下の床に座っている。
炭治郎「……………ハァ………」
禰豆子「ムームー……」
炭治郎「ごめんな、禰豆子。兄ちゃんがこんな調子じゃ、困っちゃうよな」
禰豆子「ムームー」
炭治郎「どうすればいいのか、分かんないんだ。どうするのが正解なのかも」
禰豆子「ムームー」
炭治郎「なあ、禰豆子は、どうすればいいと思う?」
禰豆子「ムー………」
〜と、奥からメイが駆けてきて〜
メイ「ど、どうされたんですか? 皆さん元気がなさそうですが…」
炭治郎「四島さん……実は、——ということがあって……」
メイ「あら…。残念です。折角みんなで仲良くできると思ったのに…」
炭治郎「睦彦くんにはきっと、色々思っていることがあるんだと、思います」
メイ「そうですね…これを渡すのは、もうちょっと後にしましょうか」
炭治郎「これ?」
メイ「はい。仁乃さんからの依頼で、絵を」
炭治郎「ごめんな四島さん。……俺たちが、こんなふうで」
禰豆子「ムー」
メイ「そんなの気にしてないですよ。お互い様ですから」
〈ミツバside〉
【廊下】
ミツバ「最初は、何てことない会話だったんだ……」
光「………」
ミツバ「僕の写真をみんなが見たがるから、旅館の一階のコンビニで現像しようと思って」
光「………」
ミツバ「カメラの操作は出来るのに、コピーが出来ないんで睦彦は呆れててさ」
睦彦『教えてほしいなら言えよ! 教えてやるから!』
ミツバ『嫌だよ君に教えてほしいことなんてないし!!』
ミツバ「………僕は、わざと思ってることと反対のことを言っちゃう癖があるから、つい…」
光「それが睦彦には気に食わなかったのか?」
ミツバ「僕も睦彦のああいう性格、慣れてないんだよ…嫌いってわけじゃないんだけど……」
光「それで、感情がヒートアップして、出たのがあの言葉か」
ミツバ「…………ほんと、ダメだなぁ……僕も……」
〜ポンッとミツバの頭に光が手を置いて〜
光「大丈夫。きっと睦彦も、言いたくてああいうこと言ったんじゃないだろうから」
ミツバ「触らないでよ、バカ」
光「元気出せよ! な、ミツバ!(ニカッ)」
〈睦彦side〉
【自室、夢の中で】
光彦「おう睦彦。久しぶりだな、元気にしてたか?」
睦彦「…………」
光彦「どうした、しみったれた顔して。らしくねえじゃねえか」
睦彦「…………兄ちゃん……俺……うまくいかなかった……」
光彦「…取りあえず座れ。話ならいくらでも聞いてやるから」
睦彦「…………うん」
〜睦彦、兄の隣に腰を下ろして〜
睦彦「ケンカ…しちゃったんだ。みんなに酷い事言っちゃったんだ……」
光彦「そっか。……謝ったか?」
睦彦「ううん。……だって、怖いんだ。……皆からどう思われているか」
『何度だって言ってやるよ! みんなお前のことなんか嫌いなんだよ!!』
光彦「そんなの……気にしなくていいじゃんか。お前はお前のままで…」
睦彦「でも!! ………鬼殺隊に入隊した一カ月くらい後にさ、俺、言われたんだ」
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そいつは俺の同期で、亜門って言う変な名前で。
もともと貧民街の最下層の出身で、親に捨てられたところを育手が拾ったとか言ってたっけ。
亜門はもうこの世にはいない。
体が弱かったのが災いして、二年くらい前に肺炎で死んだらしい。
取り柄も何にもなくて、ただ生きるためだけに鬼殺隊を目指してる奴だった。
そいつが最終選別のあと、俺を人目に付かない場所に連れ出して、俺にこういったんだ。
亜門「お前なんか大っ嫌いだ」
睦彦「………へ?」
亜門「僕には何のとりえもない。剣士になることだけが唯一の夢だ。それなのに」
亜門「最終選別で、鬼は皆お前が倒しちゃったじゃないか」
睦彦「…………お前が倒せないのが悪いだろ」
亜門「……世の中には、才能に恵まれてない奴もいるんだよ!! それなのにお前は!!」
〜ガツッ〜
睦彦「う゛っ!」
亜門「この害悪! 害っっ悪!! 害悪!!(ガツッ ガツッ ガツッッ)」
睦彦「う゛っ あ゛っ、ぐっ」
亜門「お前なんか大っ嫌いだ! お前なんか嫌いだ!!」
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睦彦「亜門は俺に会うたび、そう言って俺を殴った……」
光彦「………」
睦彦「俺はアイツが嫌いだったからお互い様だと思ってたけど、今となって思うんだ……」
睦彦「………怖いんだ兄ちゃん。右足を失って、今度は何を失うんだろうって…怖いんだ…」
光彦「………」
睦彦「もちろんみんなは優しいよ。そんなみんなを俺は傷つけたんだ……最悪な人間だ」
光彦「それは違う」
睦彦「違わねえ。俺は自分の弱さが嫌いでわざと虚勢張るような人間だ、嫌われて当然なんだ」
光彦「………睦彦」
睦彦「なんだよ……うわっ」
振り返った直後、俺の肩に兄ちゃんが手を回してきた。
夢の中なのに、抱き着いた兄ちゃんの体温がしっかりと伝わってきて。
それだけで泣けてきそうで、でも必死に涙をこらえた。
カッコ悪いと思ったからだ。
泣くなんて男のすることじゃないと思ったからだ。
つらいことなら、もうとっくに経験してるし、その時に涙も出し切った。
光彦「………睦彦、兄ちゃんはずっとお前が好きだ。いつもお前を見てる」
睦彦「………嘘だよ。いねえじゃん……化けてでも出て来たり……しねえじゃん…」
光彦「睦彦、頑張ったな」
睦彦「……が、頑張ったよ、俺、めっちゃ頑張ったんだよ。足失って痛かったし辛かったけど」
光彦「うん」
睦彦「いい仲間にも恵まれてんのに怖くて怖くてたまらないんだよ……っ」
光彦「うん、分かってる」
光彦「睦彦。兄ちゃんはずっとここにいたいけど、それはむりだ。目を覚ませば俺はいない」
睦彦「………いやだ」
光彦「そういう決まりだ」
睦彦「………いやだ……ずっとここにいたい……生きててほしい…見守っててほしい……」
光彦「大丈夫。ちゃんと見てるから」
兄ちゃんは、生前と変わらない笑顔で俺を見た。
その笑顔に振れた瞬間、心の中で眠っていた黒い感情が、じゅうっと解けていった。
そしてその黒い感情が消えるのと同時に、両目から涙がこぼれ落ち、それはやむことはなく。
睦彦「………うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
光彦「よしよし。お前は自慢の弟だ」
兄ちゃんはそっと俺の背中を叩いてくれた。
俺はずっと泣き続けた。もういない兄のぬくもりに触れながら。
兄の体の輪郭がぼやけ、見えなくなるまでずっと、俺は泣き続けていた。
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〈仁乃side〉
【外】
どうしようもなく寂しくなったとき、私は外を散歩することがよくある。
今日も、そういう気分だった。
人と接している限り、仲たがいは仕方のないことなのかもしれない。
このまま元通りに戻らなかったらどうしよう…。
そもそも、元通りになるという根拠も何もない。
仁乃「………はぁ………帰るか………」
??「おや、もう帰るのか?」
仁乃「……誰っ!!?」
??「初めましてではないだろうから『おやすみ』とでも言っておこうか」
ぞわっと身の毛がよだつ感覚に、私は警戒心を強め振り返る。
直後、後ろか前か、はたまた斜めからか、音もなく自身へと伸びて来た鋭い刃。
仁乃「……カハッッッ」
その刃はのど元を突き、鮮血を飛び散らせる。
赤い、真っ赤な血がドクドクと流れ、命の終わりを告げていた。
—−−−−痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い死にたい死にたくない死ぬ。
ドサッ