二次創作小説(紙ほか)

Re: ポケモン二次創作 裏の陰謀 ( No.104 )
日時: 2022/04/06 13:55
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: Re8SsDCb)

第九章 レイナ 〜過去と仲間と霊 麗菜〜

「ジャローダ!リーフストーム!」

「向かいうて!ロズレイド花びらの舞っ!」

リーフストームと花びらの舞がぶつかり合い、組合い、空に向かって美しく散っていった。

「しつこい。」

「身の程知らず。」

今、私ことレイ レイナは犬猿の仲であるセブンとバトルを行っている。が、見事互角。お互い攻める隙が無く睨み合ってる状況だ。私としてはセブンを叩きのめせるまで強くはなりたいが...最初のジム前に戦った時は完膚なきまでにやられた為進歩はしている。
『私っていつからこんなに弱くなったんだろう』
いつからか、それしか頭に無い。ただ、やはり私はこのバトル形式に数年たっても慣れない。いくら努力しても、前とは明らかに戦力が劣っている。

「相変わらず...毎日バトルやってるねぇ...」

少し遠くでカシワが呆れながらため息をつく声が聞こえる。何度何回幾度でも呆れられても私が強さを追い求めるのは変わらない。どんどん私のジャローダへの指示も激しくなっていき、セブンも同時に激しくなっていく。

「「ジャローダァァァァ!
  ロズレイドォォォォ!」」

バトルフィールドに2人の罵声とも取れる叫び声が響き渡る。

「ストーップ。」

その瞬間。いつの間にかジャローダとロズレイドの間にムスカリーのルカリオが割り込んで、2匹の攻撃を止める。
お互い全力の攻撃だったのに...一撃で止められたことに悔しさが先走る。

「お昼出来たから、一旦バトルはストップ。」

ムスカリーがパンパンと手を叩いて私達の仲裁に入る。私は物凄く不服だったが、食べ終わった後にバトルすれば良いし、仕方なくムスカリーに身を任せることにした。ここにはバトル狂が多いため、懸念だった旅メンバー分けによる特訓不足は呆気なく解消された。むしろ私より強いトレーナーであるムスカリーが居るため特訓の質が上がってきてる。

「...相変わらずカシワの料理は美味しいね。」

ムスカリーはニコッと笑いながらカシワの作ったパエリアを口に運ぶ。第一印象ほ顔とバトル狂だけが取り柄と思われるこのカシワ。実は結構家事もできるため旅途中での家事担当となっている。もちろん、私達も手伝うが主にカシワが家事をやっている。ここでカシワとの関係について深く触れておこうか。私が学校に入学した時のことだ。カシワは私より1つ年上で、入学式で私達の学年をおんぶすることになっていた。そこで私をおんぶしたのがカシワである。そこから学年ぐるみのイベントで顔を合わせることが多くなり、いつの間にか休日に遊びに行く仲になり、バトルし合う仲になった。幼馴染3人を抜けば、唯一の私の友人であった。しかし、カシワが10歳になった頃、私が9歳の頃だ。カシワがマロー地方という所に転校したのだ。1年後すぐ戻ってきたが。その時は自分でも引くほど驚いたものだ。ここまで読んでくださった方ならお察しだろうが、私はあまり感情を出さない...というか、出せない。そのためあそこまで驚いたのは本当に珍しいと共に黒歴史にもなったものだ。まあ、今となれば不思議な縁でこうやって旅メンバーとして一緒に旅をしている。本当に私とカシワは不思議な縁で繋がってるんじゃないかと思う。
人間関係ってこんなものなのだろうか?不思議な縁で繋がれたと思ったら、いつの間にか疎遠になる。
私とカシワも...いや、幼馴染3人共、成長したらどんどん疎遠になっていくのだろうか...そう思うと心にぽっかりと穴が空いたように感じる。ダメだな...私がこんな一般的な幸せな悩みを持つなんて。
『私は...幸せなんてとっちゃダメだから...』
他のことを考えよう。そうだ、嫌なこと。セブンの事を考えよう。セブンと疎遠になる...疎遠になる...?何故だろう、不思議とそうは思わないのだ。なんか、何かで繋がれてたような...繋がれてるような...懐かしい...感じが...

「おい。レイナ...レイナ!」

その声に私はハッとする。声の主は言葉が荒いことからセブンだと容易に想像出来る。私はいつの間にか俯いていたらしくすぐ目の前を向く。
私達は今ポケモンセンターの丸い机に4人で座っている。カシワとムスカリーが私とセブンの犬猿の仲であることを察してか、お互い隣にならないように席がセッティングされている。
それが負を招き、目の前にはセブンの顔面がドアップで私の瞳に写る。
嫌なものを見た...
そう思っても表情に出ないのが私のいい所。何も悟らせずに無表情を貫き通すことが出来た。

「何。」

私は冷たい言葉をセブンに放つ。

「レイナ元気がなかったしな。俺様の飯不味かったか?」

カシワがニカッと笑顔を作るが、その裏には不安さがある事が伝わる。

「いや、そうじゃない。ごめん。」

私は俯いて頭に手を当てる。最近こうやって他のことを考えてぼーっとすることが多い。意識して注意した方が良いな...

「まあ、レイナは思い詰め過ぎてるんだよ。セブンもね。それがポケモンバトルにも出てる。」

「「うっ...」」

ムスカリーさんが冷静に私達を指摘し、私とムスカリーは図星で何も言えなかった。最近...いや、旅に出始めてからだ。感情に身を任せすぎている。注意することが多い。

「バトルは冷静で、余裕を持っていることが大切だ。いつもクールな2人らしくないぞ。」

ムスカリーさんが追撃するように私たちにダメージを与える。...本当に注意する事ばかりで追いつけない...

「あらあら?ムスカリーじゃない!」

すると入口から高く、綺麗に響く声が聞こえる。そこには茶髪で高いところで小さくポニーテールにまとめた、白衣を着た誰かが居た。

「アララギ博士!」

ムスカリーが叫んだ。アララギ博士...イッシュ地方の博士って事しか知らない。一体どんな人なの...?

Re: ポケモン二次創作 裏の陰謀 ( No.105 )
日時: 2022/04/08 22:25
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: rKVc2nvw)

「ア、アララギ博士...?!」

カシワは驚いている。アララギ博士は学校で名前が出るほど有名なイッシュ地方の博士のため、会えるのは本当に珍しい。

「あら、私の事知ってるの?嬉しいわ。ありがとう!」

「それにしても、ムスカリー。久々ね。」

「お久しぶりです。」

ムスカリーとアララギ博士は知り合いだったらしい。流石カゲロウさんとも仲がいい程ある。強者なため、そこら辺の顔も広いのだろう。

「4人共...それはモンスターボール。もしかして皆で旅をしているのかしら?」

「はい。お会いできて光栄です。俺はカシワと言います。」

いつもは上から目線のカシワだが、こう言う目上の人がいる際はちゃんと接する。先生からも好評だった訳だ。私とセブンは何も言わずに黙っている。まず私はなにも言うことはないし、セブンも興味が無いのだろう。

「あら!素晴らしいわね!そうだ、皆ポケモン図鑑はどれほど埋まったかしら?是非見せて欲しいのだけれど...」

ポケモン図鑑...確か学校で貰ったな。カバンの奥の奥の方にある。なんせあまり使わない物だから。でも、見せた方がいいか。
そう思い私はポケモン図鑑をアララギ博士に見せる。他3人もポケモン図鑑を持っていたらしく、アララギ博士に見せた。

「あらあら。結構埋まってるわね。貴方は...あまり埋まってないのかしら...?」

貴方。つまり私のことだ。ポケモン図鑑はほとんど埋まってない。ポケモンも最低限しか捕まえてないからだ。むしろ...私は...ポケモンをこr...

「でも、ポケモン図鑑が全てじゃないものね!そうだ。皆がポケモン図鑑を埋めてくれてるお礼にこれをあげるわ。」

するとアララギ博士が紫色のモンスターボールを1つ。差し出してくる。これは...これって...?!

「「マスターボール?!」」

カシワとムスカリーの声が重なった。マスターボールは有名な希少モンスターボールで、財閥の息子、娘であるマオとトモバですら、入手困難な代物だ。

「このボールは珍しいボールでね。ポケモンを必ず捕まえられるボールなの。1つしか無いから、皆で使ってね。」

アララギ博士がニッコリと笑う。そんな大層な物貰っていいのだろうか... それにしても皆で...?ってことは、代表して誰かが持つべきだろう。誰が...

「カシワが持てばいいだろう。」

セブンが珍しいことを言う。確かに、ムスカリーも責任感があって、強いから持つべきだとは思うが、カシワは性格と容姿が完璧な上に、相手に惑わされず自分の意見を良くも悪くも貫き通すものだ。カシワが信用出来る。けど、セブンがそれを言うのは珍しい事だった。

「あ、あぁ!俺様に任せろ!」

カシワはそう言ってアララギ博士からマスターボールを貰って、カバンの中にしまった。

「アララギ博士ッ!」

すると、ジムの方向から声が聞こえた。この声は聞き覚えがある。赤毛に露出度の高い水色をベースとした服を着ている人。フキヨセジムのジムリーダー。フウロさんだ。昨日、私達4人はフウロさんのジムを突破してきた所であった。

「あら!フウロじゃない。」

「『あら!』じゃないですよ...アララギ博士...!」

フウロさんは呆れたような、疲れたような顔を見せる。

「今徒歩でネジ山を超えてソリュウシティに行けないから飛行機に載せてね!って頼んできたのはアララギ博士ですよ!」

そして、このフウロさんはジムリーダー兼、パイロットをしており飛行場に勤めているのだ。というか、今から私達が行こうとしていたネジ山に行けない...?!私達もソリュウシティに行く途中だったため、飛行機に乗らないと行けないのか。

「あははは!そうだったわね。そうだ、4人とも。皆は次の目的地はどこなのかしら?」

アララギ博士が私達に聞く。どうせセブン以外の誰かが返事をしてくれるだろうからと、私は口を閉じた。

「ソリュウシティです。アララギ博士と同じですよ。」

ムスカリーが話す。

「OK。なら私の飛行機に乗ってきなよ!4人とも強いトレーナーだったからね!大歓迎!」

フウロさんが微笑む。沢山チャレンジャーがいる中、私達のことを覚えてくれていたのか。記憶力が良い。

「そういうことなら...是非!」

カシワが言うと同時に私達に同意を求めてくる。私は肯定の意として目をつぶった。ムスカリーとセブンも肯定の仕草をした。

「フフフじゃあヤマジシティまで飛ばしますよっ!」

フウロが拳を空高く突き上げた。ヤマジシティ。名前は記憶にあるけどどんな所か分からない。事前調査しとけば良かったな...
そうして私達はフウロさんの飛行機に乗ることになった。

Re: ポケモン二次創作 裏の陰謀 ( No.106 )
日時: 2022/04/09 17:12
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: rKVc2nvw)

小説MV化予告PVをYouTubeに投稿致しました!是非確認よろしくお願いします!
URLは雑談掲示板にて!

Re: ポケモン二次創作 裏の陰謀 ( No.107 )
日時: 2022/04/09 23:26
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: rKVc2nvw)

ヤマジタウンに着いた。そこはお世辞にも綺麗とは言い難い街で、基本赤土で作られた家、赤い土、赤い砂嵐。とにかく真っ赤な町であった。そこで私は直感的に地面タイプのポケモンが出やすいと思った。

「さて、私があなた達をここに連れてきた理由を話さないとね。」

アララギ博士が改まって私達の方を向く。勝手に着いてきたのは私達の方だが...アララギ博士も何か思惑があって私たちを連れてきたようだ。

「チェレンから聞きました。プラズマ団と名乗る連中が今一度伝説のポケモンでイッシュ支配を目論んでいると。」

アララギ博士は先程とは打って代わり神妙な顔で私達に話す。それより、チェレンさん達とプラズマ団と対峙したのはついこの前だ。随分情報が早いようで...それか、チェレンさんとアララギ博士は知り合いとか...?

「そう。このイッシュ地方にはレシラムとゼクロム……伝説のドラゴンポケモンが2匹います。」

「あぁ。俺様も知ってるぜ。確か真実を司るポケモンと理想を司るポケモン...」

カシワはやはり学校の授業内容を覚えていたようで、アララギ博士と同じく真面目な面で同調し始める。

「その通りです。ただ、2年前。レシラムとゼクロムの2匹はそれぞれ英雄と認めるトレーナーに付き従いました。だから、プラズマ団が伝説のドラゴンポケモンを利用するなんて、出来るはずがないはず...」

伝説のポケモンが...居ない?どういうことだろう?2年前...確か英雄と呼ばれたトレーナーがプラズマ団を倒したとニュースや新聞で載ってた気がする...

「え...もう伝説のポケモンは...誰かのポケモンになってるのか?!」

カシワは驚く。そりゃ、伝説のポケモン...いるかどうかも分からないポケモンが捕まっているとなれば誰でも驚くだろう。そして、もうイッシュ地方に居ないとなると。ならばプラズマ団は何が目的だ?ピラミッドを使ってまで...

「ええ。そうよ。 」

アララギ博士が目をつぶり頷く。

「...プラズマ団は何をするつもりなのでしょう」

私は口を抑える。分からない。何も分からない。情報が不足している。私がやろうと思えば情報は手に入ると思う。けれど、今、やるとなるとデメリットが多い。時期を見て調査するか...

「そうね...ただ、レシラム達についてまだ分からないことばかり...そこで、ソリユウシティのジムリーダーシャガさんに詳しい話を聞きたいのよね。あの人はドラゴンタイプジムリーダーだから...で、ようやく本題!あなた達を連れてきた理由だけど、ソリュウシティに向かいシャガさんの話を聞いて欲しいの。そして、何かあったときに力になって欲しいの!」

アララギ博士は両手を大きく振るい説明する。プラズマ団に直接相対している私とムスカリー、セブンなら分かるが、カシワには今一現実味が無い話ではないだろうか...?というか、まず、『伝説のポケモン』という単語が出ている時点で信じ難い話である。

「嫌だね。」

まあ、そうだろう。カシワにとっては信じ難い話だろう...ん?今の声は...セブンの声ではないか?!え、何故セブンが?!

「確かに俺はイッシュ地方に来てからプラズマ団に色々と巻き込まれている。けど、イッシュを支配だなんて俺には関係ない事だ。何故俺が協力しなければならない。」

セブンは乗り気では無いようだ。あぁ、セブンという人間はこういうやつだったな。最近丸かったから忘れていた。イッシュ支配は関係ない...か。イッシュ...イッシュは私にとって...

『俺ヒュウ!よろしくなッ!』

『私トモバ!好きだよ!レイナっ!』

『...まぁ、少しぐらいなら付き会ってやらなくもない...俺は...マオだ。』

『新入生だよな!俺様はカシワ様だ!バトルしようぜ!』

昔。昔のことだ。みんなと出会った時の事を思い出していた。イッシュは...私にとってやり直す場所。償える場所。イッシュから私は始まった。イッシュが無ければ...私は居なかった。

『...俺ジ#ジ-は、#="だ。』

あれ、なんか...記憶が...?いや、今は関係ない気がする。それより、イッシュは私にとっては大切な地方である。支配される訳にはいかない。

「私は協力します。何としてでも守りたいんです。」

私はアララギ博士に向きって言った。綺麗事だとは思う。けど、守りたいのは事実である。思い入れというか、やり直すチャンスをくれたイッシュへの、イッシュの人々への恩返しをしたい。

「俺も、協力します。」

カシワも私の後に続く。カシワはプラズマ団の事をあまり知らない上に信じ難い事を素直に受け止めて協力してくれた。これがどれだけ有難く、賢いことか。

「もちろん。俺もだよ。」

ムスカリーも頷く。ここで賛成しないのはセブンだけとなる。

「そうね...けど、3人も手伝ってくれるなんて、これ以上のことはないわ!もっとも、プラズマ団と関わらないのが1番なんだけど... どちらにせよ、シャガさんからドラゴンポケモンの話を聞くのは面白いし!まあ、バトルに勝たないと教えてくれなさそうだけど...」

アララギ博士はシャガさんのことについても教えてくれた。これから丁度ソリュウシティに行く所だし、話を聞くのが1番だ。

「分かりました。ありがとうございます。」

「ええ。助かるわ。さすがムスカリーね。では、私はもう行くわ。皆!ベストウィッシュ!」

そう言ってアララギ博士は去っていった。プラズマ団がイッシュ支配...させたくない...守りたい...守...れるの?

「さてと...とんだ大事に巻き込まれたね。」

ムスカリーはハハハと笑うが、その顔は少し汗をかいている。私は構わないが、カシワとセブン、ムスカリーはとんだ災難である。

「あぁ。本当にその通りだ。これ以上巻き込まれるなら、俺は旅から抜ける。」

セブンは心無しか何時もより冷たく私達に接する。旅から抜けるなんて...まだ、少ししか経ってないじゃない。でも、セブンが抜けたら清々する。私は何も言わなかった。

「ちょ、なんでだよセブン!」

カシワが声を荒らげる。別に態度の悪い奴なんて放っておけば良いものの。私は何も言わなかった。ムスカリーは難しい顔でセブンを見ている。

「お前はいつもそうだ。放っておけば言いものの。マロー地方の時から...」

セブンは本当に嫌そうな顔で悪態を着く。カシワはさっきからずっと真顔だ。

「カゲロウさんが言ってたじゃねぇか!プラズマ団が居るから危険だって!そのための旅分けだって!馬鹿じゃねぇのか!」

カシワは叫ぶが、セブンは聞く耳を持たない。そのまま、セブンは去っていってしまった。

「...ッ!追いかけよう。!」

ムスカリーさんが言う。それにカシワも頷いて走り出そうとする...所、私が2人の手を捕まえ、止めされる。ムスカリーはその手を必死で離そうとするが、まあまあの付き合いのカシワは無駄だと分かったのか直ぐに止まる。

「やめてくれ、レイナ」

ムスカリーも聡い。すぐ私の力に敵わないと知ると私に直接言ってきた。

「放って置けばいい。セブンはそういう奴。」

私が言うとカシワもムスカリーも納得いかないといった顔をした。

「そんなのできるわけ...」

「アイツはそういう奴。」

カシワの声を遮る。私は何も言わず、2人を見つめる。

「レイナはセブンが嫌いなんだな。」

カシワが嫌味を込めて言う。カシワらしくない...し、こんな険悪な空気になるのは初めてだ。それでも私は動じない。

「えぇ。大嫌い。」

そう。大嫌いなんだ。だからセブンの事なんてどうでもいい。放っておけばいい。

「そういうカシワは案外セブンのことが好きなのね」

「はぁ?!俺様がアイツを?!」

「だって、止めようとしてるじゃない。」

カシワはハッとしたように口を抑える。確かにセブンは嫌味で何にもオブラートに包まずにビシバシ言う。だから皆セブンが嫌い。けど、セブンに死んで欲しい訳では無い。そういう関係の人が多い。私は別だけどね。

「...どうなっても知らないよ」

ムスカリーは両手を上げて降参の意を表す。カシワは不服そうだが私に従った。ポケモンバトルの実力はどっこいどっこいだ。しかし、力勝負となると私の圧勝である。そのため、従うしか無かった。

「レイナは。それでいいのかい?」

ムスカリーはさっきから意味深なことを言ってくる。正直鬱陶しい。何を思ってそんなことを言ってくるのだろう。

「セブンの好きにさせればいい。」

私達...いや、私にとってはセブンなんてそこら辺の石ころレベルの人だ。セブンがそこら辺で野垂れ死にしても私が知るよしがない上に関係ない。
私達はソリュウシティへと向かった。

Re: ポケモン二次創作 裏の陰謀 ( No.108 )
日時: 2022/04/10 16:08
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: FBVqmVan)

セブンが私達の所を出ていってから、丸一日が経った。ムスカリーとカシワはまだ不服そうだが、私は難なく旅をしている。今はリバースマウンテンの草原にて、ソリュウシティを目指して旅をしている。

「...」

その場は沈黙で満ちていた。私とセブンはいつも睨み合っていたため、空気はピリピリしていた。いつもと比べると数倍マシだろう。ムスカリーとカシワはそんなことは思っていないようで、カシワに関しては私に対してドライになっていた。それは別に構わない。特にこれといって思うことがないからだ。

「マオ!待ってったら!」

「待ってよぉ...マオ...」

すると、聞き覚えのある声が聞こえてくる。草むらをかき分けて私達の所に来る。

「あ、久しぶりだねぇ~」

緑髪を首あたりで結んでいるあどけなさがある顔で、確か...リンドウ。それと、女に見える男。シイナ。と、後ろから苦笑いしながらミツキさんが走ってくる。その最後尾を走るのは...マオだ。いつもの通り運動音痴である。

「あ、久しぶりじゃねぇか!シイナ!」

「久しぶりだね皆」

カシワはさっきの態度とは打って代わりいつもの通り接する。ムスカリーさんも爽やかな笑顔で接する。

「あぁ!久しぶりだね!カシワ!って...あれ?セブンは?」

「あぁ、色々あって...」

シイナの質問にカシワは目を泳がせる。ちょっと説明すると話が長くなるからな。

「それより...大変なんだよ!」

リンドウが私に向かって焦って叫んでくる。リンドウとはあまり関わりは無いが、一体私になんの用事があるのだろうか?

「マオ。落ち着い...」

「うるせぇ!!」

ミツキさんが宥めようとするが、マオは鋭い声でそれを制する。どうやらマオがこの自体の元凶のようだ。が、マオはもやし男のため、私から遠く離れた場所でミツキさんの足止めを食らっている。

「なぁシイナ。何があったんだ?」

「あぁ。さっきマオがレイナを見かけたらさ、一目散に走っていくから止めてたんだよ。だから、僕たちにもさっぱりで...」

カシワとシイナが状況整理をする中、私はただ黙っていた。マオが私に何か用事があるのだろうか?それにしても必死すぎではないか?

「あっ、マオ!」

すると、マオはミツキさんを振り払ってわたしの所へ一目散に飛びついてきた。

「どうした...ぐっ...」

私はいつものようにマオに問いかけた筈だったのだが、なにか気に触ったことがあったのか、マオは私の首を掴む。

「お前が...!お前のせいでっ!」

マオはいつも以上の不良顔で私達に圧をかける。私よりマオの方が背が高い。そのため、何時もより圧が凄い。

「落ち着いて。マオ。何が...かっ...!」

急にマオが私の首を閉めてきた。しかし、力が弱いから死にはしない...が苦しいのは変わらない。

「な...にがっ...」

「口を開くな!殺人鬼!」

マオの剣幕が更に酷くなって行く。殺人鬼...最悪の事態が私の脳裏をよぎる。いや、まさか?まさか...

「お前なんて死んでしまえばいいのにっ!俺たちを...ずっとずっと騙してた!皆思ってる。お前のことが嫌いと。死ねばいいと思ってる!」

マオが感情むき出しで私の首を締め続けてくる。何が...え、皆が私のことを...嫌い?別にそんなことには動じないわ。そして『あれ』がバレたとは確定していない。だから大丈夫。話し合えば...

「何を言って...」

「口を開くな殺人鬼。」

そのマオの顔は見たことがなかった。心の底から私を嫌っている。...今更誰に嫌われようが何も思わない。慣れてる。そして、然るべき罰を受けているだけなんだ。動じない...動じない...筈なのに。

「お、おい。レイナ。息が荒いよ...」

シイナが心配してくれている。え、息が...荒い?動揺してるってこと?この...私が?そんな訳...無いじゃない。こんなちっぽけな事で動揺するなんて...

「殺人鬼!殺人鬼!化け物!化け物ぉ!」

ずっとさっきからマオは私の首を締めながら叫んでいる。マオの力ごときじゃ私は殺せない。けど、この力は確実に私を殺そうと思ってる。
...嫌われた?マオに?
いえ、そんなことで私は何も...思わな...

『くるなっ!化け物!』

『やめてください...お慈悲を...お慈悲...』

『お前なんて...人間じゃねぇ!』

今まで言われてきた言葉の数々が頭の中を通り過ぎていく。何故覚えていた?何故今更こんな言葉が頭に出てくる?

「マオ!とりあえず落ち着こう!」

ミツキさんがマオを放し、私の首から手を離す。しかし、マオはずっと暴れていた。必死で...私を殺そうと...

皆に嫌われた...か。別に動じないよ。然るべき...罰...なんだから...
そんな理性とは裏腹に呼吸は荒くなり、心臓は早鐘を鳴らす。
あれ?私...動揺してる?何故?何故?

何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故

壊れそうだった。私の何かが壊れそうだった。たった1人に嫌われた程度で。理由も分からず理不尽に嫌われた程度で...
苦しい。辛い。気持ち悪い。
私は然るべき罰を受けている。だから、こんな苦痛受けて...当たり...前...なんだ...

《かわってやろうか》

脳内に誰かが話しかけてくる。
変わる?それより、誰?いや、なんでもいい。今の状況を変えてくれるなら...苦痛から逃れられるなら...

《代わっ...て》

私は胸の奥で小さく叫ぶと、誰かがうなづいたような気がして...そこで意識が

と ぎ れ た

Re: ポケモン二次創作 裏の陰謀 ( No.109 )
日時: 2022/04/12 21:09
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: ACwaVmRz)

《カシワ》

俺の名前は黒薙クロナギ カシワ今はイッシュリーグを目指してセブン、レイナ、ムスカリーと旅をしている。セブンはついこの間揉め事があり、抜けてしまったのだが...
それより、大変なのは今の状況だ。急にマオがやってきて、レイナに暴言を吐き、首を絞めた。何か理由があるのかもしれないけど、心の底からマオを殴ろうかと思った。セブンの騒ぎで俺はレイナのことをあまり良く思ってなかったが、やはり心の底では大切に思っていたようだ。
そしてレイナは、急に顔をがくんと...糸が切れた人形のように力を抜くと、そのまま草原の奥へと走っていってしまった。追いかけなけねぇと!

「俺とカシワはレイナを追いかける!マオは頼んだ!」

ムスカリーほ俺の手を取り、レイナを追いかけた。ミツキは頷くと力ずくでマオはを拘束し、尋問を始めた。
大丈夫なのか?マオ。いや、今はレイナが最優先事項だ。

ーーーーーーーーーーー
《レイナ?》

ここはどこだろう。意識がぼんやりしていて周りが霞んで見える。そこには大きなボロボロの屋敷があり俺は自然と中へ踏み込んだ。
中はゴーストポケモンで溢れかえっている。しかし、ちょっかいはかけられることなく、どんどん奥へと進んで行った。何階建てなのだろう?私は上へ上へと上がっていく。
そう。これは罰だ。『マオに嫌われた』別に動じるほどのものねは無いはずなのに、焦ってる自分が大半を閉めていようで。あぁ。悲しいんだな。辛いんだな。人に...マオに...大切な人に嫌われて...

今。終わらせてやるからな。

俺は部屋にあったロープに手をかけたー

ーーーーーーーーーーー
《カシワ》

一生懸命走っているつもりなのだが、ムスカリーが早い。それ以上にレイナが早い。追いつけない上に見失ってしまった。それでも必死に走っていく。

「騒がしいな。」

すると、そこにはこの前別れた筈のセブンが大岩の上に立っていた。

「セブン...なんでここに...」

ムスカリーは驚きながらセブンに聞く。

「俺の目的地はソリュウシティ。お前らと同じだ。道中が同じでもおかしくないだろう。」

セブンが大岩から降りてくる。そうだな、同じ道中であることが頭から離れていた。正直今セブンとは顔を合わせたくないが、思っていたより、俺は必死だった。

「なぁセブン!レイナを見かけなかったか!」

俺は今の感情をぶつけるかのようにセブンに聞く。しかし、セブンはいつものようにそれを冷たく受け取る。

「なんであんな奴のことを聞くんだ。」

「レイナが...レイナがどこかへ行ってしまったんだ。」

ムスカリーは俺の背中を擦りながら優しく説明する。セブンは何も動じることなくその話を聞いていた。

「まぁ、知ってるけどな。」

「はぁ?!ふざけるなっ!」

俺はその場でセブンの襟を掴んでしまった。それをムスカリーが止める。俺は必死にセブンに突っかかろうとするが、ムスカリーは力が強く、思うように体を動かせない。

「落ち着け。カシワ。マオと似たようなことになってるぞ。」

ムスカリーにそう言われようやく気づいた。俺は焦りすぎていた。よく考えたらあのレイナが危険なことにさらされるなんてあるわけが無い。そうだ。大丈夫だ。

「...こっちだ。」

するとセブンが歩いていく。

「...え?」

「レイナを探してるんだろ。こっちだ。」

...昔からそうだ。こいつは何を考えてるのか全く分からない。俺達は素直にセブンについていった。

ーーーーーーーーーーー

セブンに着いて行った先は草原の奥の奥。ボロボロの大きな屋敷でいかにも幽霊が出そうな建物であった。

「ストレンジャーハウスか。」

ムスカリーさんが口に手を当てる。ストレンジャーハウスなんて聞いたことが無い場所だ。ただ、明らさまに危険という香りがする。

「ストレンジャーハウス...悲しい事件があったとされ、誰も近づかないっと、言われてるが...」

「心霊スポットじゃんか!」

ムスカリーの冷静な説明に俺は叫ぶ。いや、幽霊とか心霊とかそういうのは別に苦手ではないが、好きでもない。ここに入るのは躊躇いたい...が、行くしかない...か。

「行こうか」

俺達はムスカリーの一声を機に、ストレンジャーハウスに入っていった。

ーーーーーーーーーーー
《レイナ?》

ぶらーんぶらーん。左右前後に揺れていく。
ぶらーんぶらーん。どんどん苦しみが無くなっていく。
ぶらーんぶらーん。どんどん意識が無くなってゆく。
ぶらーんぶらーん...ぶらーんぶらーん...

「本当に...バカだよな。」

そう呟いたのを最期に、目の前が真っ暗になって行った。

ーーーーーーーーーーー

「ヒトー!ヒモヒモッ!」

「うぉっ、なんだヒトモシかよ...」

俺達は今、ストレンジャーハウスにて、レイナを探している。ここは本当にゴーストポケモンが多く、俺達を驚かそうとしてくる。

「何を驚いてるんだ。ビビりか?」

「うるせぇセブン!」

セブンにいつもの皮肉を返す余裕など無く、レイナをひたすらに探していく。

「なんでセブンはレイナの居場所が分かったんだい?」

ムスカリーが1階を探し終えて、2階へ行こうとするとセブンに声をかけた。確かに、セブンもレイナの事が嫌いだった筈なのに、なぜ知っているのだろうか。

「あぁ、それが...」

ーーーーーーーーーーー
《セブン》

無駄に固まって移動していた奴らからようやく離れられて俺は清々していた。そして数日間。自由気ままに過ごし、ソリュウシティへとゆったりと向かっていった。と言っても、誰よりも早く着くつもりだが。

そろそろ日が暮れてきた。ここらで野宿するか。

そう思っていた所、茂みがガサゴソと動き始めた。ポケモンか?俺はボールを構えた。するとそこには…

「…あ、あぁ。驚かせてしまったな。はぁはぁ…」

そこには薄黄色のシャツ、半袖半ズボンという、今の冬には見ないような服装をしていた人物がいた。背はカシワ、セキシロよりも高く、俺達より年上だということが分かる。珍しい白髪に紫紺の目体格はがっちりとしている。相当な実力者であることは見て取れた。走っていたようで息が荒い。

「…俺は今気分が悪い。今すぐ俺の視界から消えてくれ。」

俺はいつものようにそいつを拒ばみ、そこを立ち去ろうとした。…すると。

「ま、待ってくれ。話を聞いてくれ!」

俺の目の前にソイツがいた。一体何が起こった?さっきまでコイツとは数メートル程距離が離れていたはずだ。なのに一瞬で俺の目の前に現れた。只者じゃない上に、今戦ったら俺が負ける。俺は大人しくすることにした。

「…用があるなら早く言え。」

「あぁ。ありがとう。今赤黒いタオルでポニーテールにした7歳程度の女を見かけなかったか。」

明らかにレイナだな。しかし、面倒くさそうだ。それに、最近あいつらとは喧嘩したばかりだ。あまり関わりたくない。

「…知らない。」

「背が小さくて目にハイライトが無く濁っている!モンスターボールが印刷されたシャツを来ている美少女だ!」

美少女は除くとして、ここまで特徴を言われたら知らないを通す訳には行かなくなる。俺は仕方く言った。

「知り合いではあるが、行方は知らないぞ。 」

「やっぱり。女の知り合いだよなお前」

こいつは最初から俺とレイナが知り合いであることを知っていたようだ。ならば回りくどい事などして欲しくないものだ。面倒臭い。

「あぁ。だからなんだ。」

「今、女がストレンジャーハウスに向かった。追いかけてくれ。」

俺は心の底から嫌な顔をした。何故俺が追いかけなければならないのだろうか。というか、何故追いかけるのだ。追いかけるつもりは無いが、何があったかは聞いておこうか。

「何があったんだ。」

「…それが…」

そこでついさっきトウチ マオとレイナが喧嘩し、レイナがストレンジャーハウスに走って言ってしまったことを説明された。どちらにしろ、俺が追いかける必要は無さそうだ。

「そうか。俺には関係ないな。他を当たれ。」

そう言って俺は去ろうとした。

「…レイ レイナは、ストレンジャーハウスで死ぬつもりだ。」

その瞬間。いつの間にか俺の足は走っていた。ただ、レイナと俺は今喧嘩中だ。カシワとムスカリーとも喧嘩中だが、レイナと比べたら幾分マシだ。俺は無意識に、カシワとムスカリーが通るであろう道まで走っていったのだった。

ーーーーーーーーーーー
《カシワ》

「…お前何だかんだ言ってレイナ好きじゃねぇか」

俺は思ったままをセブンに言った。セブンは目付きを鋭くし、明らかに苛立った様子で俺様を睨みつける。

「俺がアイツを?冗談じゃない。」

セブンが鼻で笑う。そんなにレイナと仲良く見られるのが嫌なのか?レイナは確かに愛想は良くないが、悪い奴ではないんだよな。

「それより、大事な部分あっただろう!」

ムスカリーが声を荒らげる。…あぁ。聞き間違いじゃなかったんだな。一瞬幻であってあれと思っていた自分がいたが…現実を受け止めようを

「レイナ…死ぬ気…なのか?」

ムスカリーが血の気が引いたような顔で言った。俺たちの足はさっきよりも早くなった。いや、元々早かったのだ。俺達の足は。何故なら、セブンが早すぎたから。

ーーーーーーーーーーー
《レイナ》

気がつくと私の首には縄があった。足元は浮いている。紐が括り付けられた天井の柱はギシギシと言っている。意識はまだぼんやりしている。さっきから左右に揺れており酔いそうになる。私は何故ここにいるのだろうか?というか、ここは何処なのだろうか?
マオに首を締められてから記憶が無い。ただ、首に縄をかけてる辺り、誰かが私を殺そうとしたのだろう。残念ながら私はこんなことでは死ねない。ならどうするか?殺そうとした犯人を探して潰すか?いや、いっそここで終わった方が良いのかもしれない。その方が楽である。私が死ぬ方法。数十mの高さから頭から飛び降りる。打ち所が悪いと後遺症を負うことになるが、そこは抜かりない。私なら頭から飛び降りれる筈だ。

「…崖を探すか」

私は軽々縄から抜け出し、崖を探し始めた。

Re: ポケモン二次創作 裏の陰謀 ( No.110 )
日時: 2022/04/16 14:17
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: DYDcOtQz)

こんにちはベリーです。
この度裏の陰謀のMVが完成致しました。
是非見ていただければ光栄です。
※最新話のネタバレを含む上に、流血表現があります。

詳しくは雑談掲示板「雑談致しましょう。」にてお願いします。

Re: ポケモン二次創作 裏の陰謀 ( No.111 )
日時: 2022/05/10 15:48
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: ET0e/DSO)

《セブン》

いつだっただろうか。幼い頃でよく覚えていない。いや、あれだけはハッキリと覚えている。

「ごめんね。セブン。エイト。」

その言葉だけがいつも俺の中で木霊している。母のいつもの温もりのある声出なく、冷たく、何もかもに絶望した声。

「義姉さん!待って!まっ……」

叔父の声が響いた瞬間。母は崖から落ちていた。見なければ言いものの、俺は母を追いかけるかのように崖に吸い込まれた。

「母さん!待って…母さ…ん……」

飛び降りようとした時、叔父が俺の手を掴んで止めた。その時、俺は見てしまったのだ。崖の下で頭が潰れ、上半身が肉片になって逆さまに立っている母の姿が。
見なければ良かった。その光景がいつまでも残っていて仕方がない。そして、母の自殺を止めなかった叔父を憎むと共に、何も出来なかった自分を恨んだ。そこからだった。強くなるためにポケモンバトルに打ち込んだのは。3値を調べ、ドーピングを覚え、相棒のシェルダーに無理をさせた。
そして、強くなるため各地方を転々とする今に至る。

俺が思い出しているのは、バトルに打ち込んでいた最中。小学二年生、8歳の頃である。
俺はカントー地方出身でいつもの森の奥の草原にバトルの練習をしに行った。人なんて滅多に来ない場所のはずだったのだが、その日だけは誰かがいた。
俺より3歳ほど年下で、幼女らしいあどけなさがある顔立ち。黒髪をポニーテールにし、赤いリボンで結んでいた。そしてその目は黒く、どこまでも濁っていてハイライトも何も無い。
俺はこの目を見たことがあった。母の、何もかもに絶望し、どうにでも良くなった。あの瞳である。
顔立ちも身長も雰囲気も母さんと似ていない。しかし、俺は話しかけたくなった。あの時の、絶望した母と同じ目をした幼い子のことを知りたくなった。そして救いたかった。これはただの自己満足だとは分かっていた。でも、どうしても聞きたかった。

「なんで、死んじゃったの…?」

その時、俺はらしくもなくエイトと似たような幼稚な言葉でその少女に話しかけていた。

「は?」

その少女は母さんのように華奢で華麗な声だったが、言葉はどす黒く汚かった。その瞬間。俺は現実に引き戻された。こいつは母じゃない。身寄りのないガキだ。
しかし、これといった言い訳が浮かぶわけでもなく、そのガキを見つめてしまった。それが、睨みつけてしまう形になった。

「……用が無いなら話しかけないで。」

「イブイッ」

ガキは冷たい言葉を放つとイーブイと共に森の奥へと消えていった。なんだ、あいつは。感じが悪いヤツ。普通の俺ならそれで終わっていただろう。しかし、その少女の目が、黒く淀んだその目が忘れられなかった。

「……なんでついてくんの。」

少女は静かにそう言った。が、しかし、その言葉には棘があり、不快感を全面に押し出したような言葉であった。俺自身。こんな少女について行くなんて不本意だ。しかし、母さんと同じ目をしてるこの少女を、放っておけなかった。

「……何でもいいだろ。」

「鬱陶しい。」

少女はそう吐き捨てた。目は母と同じだが、性格は真反対のようだ。母のように優しくもなければ丸くもない。生意気だ。心配と同時に、苛立ちを覚えた。

「…お前。俺とポケモン勝負しろ。」

その頃の俺は若かった。若すぎた。一時の感情に任せそう吐き捨てた。こんな言い方で乗る奴はしっぽ巻いて逃げるか、無視するだけだ。しかし、少女は違った。

「へぇ。」

そう言い、少女は黙ってイーブイを前へ出した。受けて立つということだろう。俺もモンスターボールからシェルダーを繰り出した。俺のシェルダーは進化はしていないが進化の奇跡持ちのASぶっぱである。イーブイは種族値が低い。そのため楽に勝てるであろう。

「イーブイ。」

少女が一言。さっきよりも澄んだ声で言った。イーブイはタンッと前に出るといつの間にかシェルダーの後ろに居た。そして、アイアンテールでシェルダーをぶっとばした。

「はっ…?!」

シェルダーは木にぶつかりそのまま瀕死になっていた。シェルダーは防御が高いポケモンだぞ?!なぜ、一撃で…瀕死に?

「つまんない。イーブイ。」

そう言うと少女はイーブイを肩に戻して森の奥へと歩いていった。その先は…母さんが死んだ崖だ。そして、母のような淀んだ、くすんだ目をしていた。
俺は嫌な予感がした。必死で追いかけた。パルシェンをボールに戻して。1つ足を前に出すと枝が足に刺さる。それでも、母の事がフラッシュバックして、ひたすらに前へ走った。

「ワタシは…?………ごメンなサイ…もう、ツカれた…ユルシテ……」

そうブツブツと廃人のように少女は呟いた。俺はその時。その少女が大きく感じた。少女…いや、彼女は俺よりも幼い上に弱そうである。しかし、彼女は母のように大きい人物に感じた。俺は、助けたい。母のような人をもう二度と見たくない。そんな俺らしくもない綺麗事だけで、俺は彼女の手を取った。崖の1歩手前だった。手を取った瞬間、俺は投げ出された。何が起こったのか分からない。彼女はちょっとした事で折れそうな華奢で細い腕でだったのに。そこからは測りしてないほどの力があった。
俺は1mほどぶっ飛ばされ、弧を描き、木にぶつかる。木は思ったよりも固く、「かはっ」と声を上げてしまった。
それでも諦めない。でないと、母が死んだ後に恨んだ自分。あれはなんだったんだと疑問に思ってしまう。だから、1人でも多く救うために、俺は、崖から身を乗り出すように……






手を伸ばした。










ーーーーーーーーーー

「……アンタ。何やってるの?」

その声は数年ぶりに聞いた、どす黒く不快感が全面に出ている声だった。いつからだろう。人の声をまともに聞いていないのは。いつからだろう。ぶっきらぼうで、人の意見なんて聞かなくて、誰も近づかせない性格になったのは。

「俺は。何してるんだろうな。」

俺はらしくもなくカラカラと笑った。ストレンジャーハウスにこんな大きい崖があるなんて聞いていない。そんなアホらしいことを考えながら右手はレイナの手を掴み、もう片方は崖を掴んでいた。俺がこの手を話したら、俺とレイナの命は無い。

「離して。」

レイナはそう言った。無理な話だ。母と同じ目をした人物を。母のように自殺しようとする人物を死なせたくなんてない。生きて欲しい。世の中にはもっと輝くものがあるということを。生きて欲しい。この世に救いというものがあるということを。

「昔にも、こんなことあったよな。」

「意味がわからない。」

俺がそう言うと、レイナは冷たく発した。どうやら、俺がカントーにいた時、レイナと会ったのは覚えていないようだ。それほどレイナには興味無い事だったのだろうか。

「だから旅に出るなと言ったんだ。」

「……」

レイナは黙った。俺が偶然厳選をしていた時にであったレイナ。彼女は昔と変わりなく瞳が濁っており、世の中の全てに絶望したような目をしており、あの時より変わっていなかった。いや、少しは改善されてたかもしれない。そうでなければ旅に出ようなんて思わない。けれど、旅は危険だ。絶望することが多くある。ポケモンハンターのようにクズが沢山いる。これ以上世の中に絶望して欲しくない。
だから強引ながらもポケモンバトルを仕掛けた。レイナは、弱くなっていた。俺も強くなっていたが、強くなったからこそ、こいつは弱くなっていることが分かった。それは何故?それは人を傷つけることを極端に嫌っていたからだ。だからこそ、余計に旅に出したくなかった。なのに、ムスカリーが邪魔をした。
それでも死なせたくなくて、レイナを旅しながら必死に探した。すると運良く旅メンバーに加わることが出来たのだ。しかし、アララギとか言うやつが、俺達にイッシュの命運がかかったことを投げかけてくるではないか。レイナにそれは荷が重い。だから、旅を抜けて、その後レイナも抜けさせるつもりであった。レイナの事だろう。俺が抜けたらバカバカしくなって抜けるだろうと思っていた。なのに、あいつは目を輝かせた。
意味がわからなかった。そう思い、悩んでいたら、謎の青年に声をかけられ、「レイナが死ぬ」と伝えられ、必死で探したんだ。

「旅に出て余計絶望しただろう。人は俺らが思ってるより綺麗じゃない。失望しただろ?」

俺はもうダイレクトに言うことにした。これで、大人しくなったら良いんだが……

「人がクズ?綺麗じゃない?」

レイナは俺を嘲笑うかのように俺に言った。なんだ。何が文句なんてあるのか。

「そんなの、とうの昔から……諦めてるよ。」

そう言うとレイナは強引に俺から手を離した。そして、頭から落ちていった。
あ…あぁ……救えなかった。救えな……かっ…た?
2人も救えなかった。あの濁った瞳を救えなかった。大切な人を救えなかった。大切な…人?レイナは大切な人か?

ーーーーーーーーーー

「…なんで助けるような真似をしたの。」

彼女を崖から救った後、反吐を吐き出すようにそう言われた。しかし、その声は少し希望を抱いたように見える。

「…お前みたいな目のやつを救いたいから」

「さっきまで冷酷だったのに、綺麗事を吐くなんてね。」

その時。俺は本気で頭に来た。救ってやったというのになんて態度だこの生意気な小娘。

「まあ、世の中にはそう言う綺麗事も必要なのかもね。」

彼女が呟く。俺はこの難儀な性格のせいで周りに嫌われまくっていた。綺麗事をはなから潰していくような性格だ。そんな俺が綺麗事を吐くなんて笑えるだろ。哀れだろ。笑うなら笑え。そんなことを思っていたのに…






「…ありがとうね。」







その時だけ彼女が救われたような顔をした。その顔は恐ろしいほど綺麗で、可憐で美しかった。長いまつ毛をたなびかせながら綺麗に並べられたパーツを少しづつ動かし、それが余計に可憐に感じた。そして、俺自身も少しだが救われた気がした。母を助けられなかった事実は拭えない。しかし、この時だけ、救われた気がして、この少女だけは何としてでも救いたいと思ってしまった。

ーーーーーーーーーー

レイナは、大切な人だ。本当に言葉にすると胸糞悪いが、俺を少しでも救ってくれた人が、死ぬなんて耐えられなかった。もう、なんで俺は生きてるんだろう。

「おい!セブン!セブン!」

すると、崖の上から何かに掴まれた。聞きなれた声。カシワだ。こいつは気に入らない。性格も顔も能力もオールカンストしており、何もしなくても皆の人気者だ。

「何やってるんだセブン!レイナ…は?!」

ムスカリーが途中から察したように声を小さくする。カシワは俺を引き上げた後、顔を青くして脱力した。

「レ、レイナ…?レイナ……レイナ!」

カシワが崖の下に向かって叫んだ。叫び声は綺麗な声ではなく、声が掠れ、割れていてとても「人気者」が発する言葉ではなかった。
ムスカリーは後ろを見る。なんでここで後ろを向いた?レイナが死んだ事実から目を背けたくなったのか?いや、違う。
ムスカリーの目線の先には…俺に助言をしたあの白髪の青年がいた。その脇にはレイナを抱えて。

「レイ…ナ?」

カシワはかすれた声を必死に吐き出した。俺も、ただ、呆然としていた。確かにレイナは落ちたはずだ。なのに、なぜここに居るのだ?

「なんで…レイナが?」

俺はらしくもないひょろひょろとした声を出してしまった。

「コイツが崖から落ちてたから俺が空中でキャッチして、戻ってきた。」

青年はそう言った。人がなせる技じゃない…ポケモンを使ったか?いや、さっき「俺が」と言っていた。この、見るからに人間が空中でレイナをキャッチしたというのか?

「それよりさ、君。」

ムスカリーが何か深刻な顔をして青年に向き合う。なぜそんな顔をしてるのだろう。俺とカシワは疑問に思った。

「…どうやらバレちまった見たいだな。」

青年は苦笑いをする。その様子は絵に書いたような顔で夜中なのに美しく見えた。紫がかった白髪が綺麗にたなびく。

「俺はお前らの言うトゥエルブスだ。まあ、今は非番だからお前らに攻撃も何もしない。」

トゥエルブス…?!そうは全く見えない。あの禍々しい雰囲気は何も無く、ただの美少年に見えた。

「…あ…れ、」

すると気を失っていたらしいレイナが目を覚ました。

「ド…ク…?!」

レイナはそう驚いたように呟いた。トゥエルブスは苦笑して、レイナを立たせる。

「こうなるからお前を気絶させてたのに」

トゥエルブスはそう言ってレイナの頭を撫でる。ムスカリーは危険と感じたのかレイナを俺らの元に移動させる。トゥエルブスは苦笑しながら俺らから離れた。

「トゥエルブス…レイナをどうするつもりだ…!」

カシワがそう叫んだ。しかし、トゥエルブスは何かしらの圧を俺らにかけていた。「こいつは人間じゃない」いや、見た目は人間なんだ。なのに本能がそう囁いた。そのため、俺らは震えていた。それしか出来なかった。

「トゥエ…ルブス…?!」

レイナが驚いたようにそういう。さっきからトゥエルブスは肩を竦めた。トゥエルブスは強い。そのためあまりにも余裕がある。しかし、俺らの後ろは崖だ。トゥエルブスのポリゴンZに破壊光線をぶっぱなされたら俺らは崖から真っ逆さまだ。

「あぁ。久しぶりだな。レイ……レイナ?」

トゥエルブスとレイナは知り合いのようだ。しかし、今まで何故気づなかったレイナは唖然としていた。

「あれから10年だよな。あの時、俺らの半分は死んだ。けどな…」

するとトゥエルブスが近づいた。なのに、俺らはなんの警戒も出来なかった。いや、しなかった。その行動はあまりにも自然だった。そして、しゃがみ、レイナと同じ目線になる。

「生き残った俺らは…2人だけだけどな。裏の世界で元気にしてる。楽しくしてる。俺…ピラミッドになったんだぜ、あそこのリーダーになったんだぜ。」

トゥエルブスは今まで無機質で俺らなんて何時でも殺せるような、命令しかこなさない野郎だと思ってたのに。恐怖の対象である。なのに、こいつ泣いてるんだ。半泣きしてるんだ。

「そう…」

レイナは興味なんて示さずただ無機質な瞳でトゥエルブスを見つめた。トゥエルブスは悲しそうな顔をする。

「……レイナだっけ、お前のお陰なんだよ。俺らは生きてるんだよ。だから…だから……生きて…くれよ……」

トゥエルブスは1粒涙を流す。今初めてトゥエルブスの人間味がある様子を見た。それに、その言葉はレイナだけに言ってるように思えなかった。こと言って俺らに言ってるようでもなかった。








「なんで…皆狂っちまうんだよ……」






その瞬間。俺は分かった。分かってしまった。レイナは世の中に絶望してる、呆れていると思っていた。だって、そんな瞳をしていたんだ。母のように。事実多分母は世の中に絶望したんだと思う。それで、死んだ。しかし、レイナの無機質なビー玉のような目は。全てを諦めていた。全てを悟っていた。全て…全て。
もう、狂ってたんだな。

「……すまない。取り乱した。」

そう言うとトゥエルブスは立って俺らから距離をはなす。そして、どこからともなく取り出したいつもの薄黄色のフードコードを着る。

「次会った時は残念ながら敵っす。容赦はしないっすから。」

そう言って、特大ジャンプをして、崖奥の木々を伝って去っていった。それは人間のなせる技出なかった。〜っすはキャラ付けのようだった。

「レイナ。無事か?!」

カシワがレイナの両肩を揺さぶる。レイナはハッとするとちゃんと焦点合わして俺らを見つめる。レイナは口を一の字に結ぶと…

「少し…無様に足掻いて生きてみるのも…良いのかもね。」

その言葉は「大丈夫」「心配しないで」でなく、胸の中で溢れた気持ちを吐き出した。トゥエルブスとレイナの関係は分からない。

「…レイナ。もう死ぬなよ。」

俺は無理なことを言った。レイナは俺の事を見上げてバカにしたような顔で

「あんた本当にセブン?」

と言った。本当にカチンときたが、その怒りは直ぐに鎮まった。あんなことがあった後だ。怒りがオーバーヒートするわけが無い。それにいつものようにレイナは俺の事をバカにしてきた。いつものように。

「……お前こそ、自殺だなんて本当にレイナかよ」

俺はそう小馬鹿にしてやったレイナは瞳を閉じて俺らの1歩手前に立った。

「迷惑かけたわ。もうしない」

そう、ぶっきらぼうに言う。俺らは嬉しさと恥ずかしさからお互い目を合わせてしまった。

「次の町はソリュウシティだな!」

そうカシワは明るく言う。

「その前にサザナミタウンだけどね」

レイナはいつもの調子を取り戻す。

「海があるよな。」

俺はそう呟いた。サザナミタウンはその名の通り海がある。海の中に遺跡もあるし、観光地でもある。楽しそうじゃないか。

「お前…抜けるんじゃ無かったのかよ。」

カシワは苦い顔をすると俺は涼しい顔をした。

「いいじゃないか。皆また揃ったんだし!」

ムスカリーがそう言った。確かに皆揃った。いや、今初めて4人揃ったのかもしれない。初めて4人心が揃ったように感じた。

「次の町いくか。サザナミタウン。」

俺はそう呟いた。空を見ると星が7色に綺麗に輝いて、俺の心は洗われた。
これから、こいつらと馬鹿みたいな話して、馬鹿みたいにポケモン勝負して、レイナとお互い子犬のように噛みつき合って。

そんな旅も悪くない。
そして、プラズマ団の企みも暴いてぶっ潰すんだろうな。俺は自然と微笑みが浮かんだ。


過去と仲間と霊 麗菜 ~完~