二次創作小説(紙ほか)
- Re: ポケモン二次創作 裏の陰謀 ( No.74 )
- 日時: 2021/08/04 22:51
- 名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: lMEh9zaw)
第6.6章 ヒュウ 〜俺のち俺〜
「はぁっ…」
どんどん寒くなるこの季節。肌寒い空気を吸い、思いっきり吐く。冷たい空気に鼻がツンとするのを味わいながら俺ことヒユウはホドモエシティのポケモンセンターを目指して跳ね橋前の公園から歩いていた。
ついさっきまで椿と話していたため、あまり良い気分ではない。
「おやおやおや、これはこれは」
すれ違いかけた男が立ち止まり俺を見る。
何がおやおやで、何がこれはこれはなんだか分からず俺はその男を見つめた。
黄色で頭の周りに輪を描いている髪型の白い白衣に身を包んだ男で、どこかミステリアスな雰囲気を纏っている。
「もし良ければ、私と勝負しませんか?」
唐突にそう言われた。勝負は大歓迎だが、この男のミステリアスな雰囲気も相まって凄く怪しく見える。俺は何も返答が出来ずに怪訝そうな顔で男を見つめる。
「おっと、自己紹介がまだでしたね。私はアクロマというものです。実はポケモンの能力を最大限引き出す方法を研究しておりまして。先程のバトル見ておりました。貴方の強さに興味を持ちまして、ぜひ良ければバトルをやりたいのです。」
ぐいぐいくるな…
でもそれだけ研究熱心ということだろう。
怪しさは満点だがバトルしても減るものじゃないしここは受けてもいいか。
「あぁ。受けて立つ。」
まぁ、勝負は見えてるんだけどな。
_______________
予想通り。俺はこのアクロマという男に勝った。相手は鋼ポケモンを主に出してきたため、エンブオーとの相性が良かったことも重なり結構あっさり終わってしまった。
「ふむ…あの少女とはまた違う強さ…」
アクロマが何かをほボソッと言う。かなり小さかったため俺には聞こえなかった。
「君…そうだ。名前を聞いていませんでしたね」
「ヒユウだ」
「ヒユウ…分かりました。覚えておきます。
ところでヒユウ。あなたのエンブオーはかなり強いですね。四天王程ですよ。」
急にエンブオーを褒められる。
そりゃ血のにじむ様な努力をしたのだからと心の中では威張っておく。
「ありがとうございます。でも…まだまだですよ。もっと強くならないと」
心の中で威張ったが、やはりまだまだ力不足なのも事実である。この力量じゃ守れない…
「これ以上の強さを欲するのですか?一体なぜ…」
「守るためです」
「何を?」
「俺の大切な人達を」
「何から?」
「大切な人を傷つける奴らから」
アクロマの神速のように早い質問を俺は難なく即答して見せる。
「守るため…それはとても素晴らしい。しかし…本当にそれだけですか?」
アクロマは元々細い目をナイフのように鋭くして俺を射抜く。
他に理由なんてない。当たり前だ。当たり前の…筈なのに。何故か言葉が出ない。喉の部分につっかえて吐きたい言葉が吐き出せない。
「無自覚ですか。まぁ、それでも良いでしょう。今回は御協力感謝致します。“また、お願いしますね”」
アクロマは俺に賞金としては少し高い額のお金を俺に渡し去っていった。バイト代のつもりだろうか。
そして俺はそのお金を握りしめながらアクロマを見つめていた。
守る以外の理由?
そんなものは断じてあるわけが無い。俺はこの3年間…いや、それ以上の月日を守るために費やしてきた。
レイナを… 母さんを… メイを… マオを… トモバを… 皆を手のひらから零さないように。
もう、心に穴をぶち抜かれないように…
その瞬間“また”あの光景が脳内に流れてくる。
怖いほど美しい真っ赤な液体。そばに居る母さんの体温と煩い心臓音。俺の胸の中に居ながら息をしてない兄ちゃんり倒れかけた本棚の隙間から見える…男と幼女。
その幼女は…いや、化け物は、男を…お父さんを…方に担いで…
「はぁはぁはぁ…」
気づくと俺の心臓がフライゴンの爆音波の音量ぐらいまでうるさくなっていた。そして息もどんどん荒くなって、いつの間にか目の前に霧がかかって…
俺はそこで意識を失った。
6.6章 〜完〜