二次創作小説(紙ほか)

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.1 )
日時: 2020/09/05 21:23
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 【第1話に登場するキャラクター】

()内は当時の年齢



 刻羽睦彦(こくばむつひこ)

 年齢:17歳(13歳) 光の呼吸/雷の呼吸

 高慢で目立ちたがり、自分にとことん正直の仁乃の同期。
 普通仁乃の話を持ち出されると顔が林檎になるほど仁乃の事が好き。
 
 


 胡桃沢仁乃(くるみざわにの)

 年齢:14歳(11歳) 四季の呼吸/血鬼術

 睦彦の同期で彼女。
 誰にでも優しく人当たりのいい性格で、睦彦をからかうことが趣味。
 体内に鬼の血が入っているが鬼化しない特殊体質。


 瀬戸山亜門(せとやまあもん)

 年齢:15歳(12歳) 水の呼吸

 睦彦の同期で、貧民街出身。
 剣術しか取り柄がないため、生まれつき高い能力を持っている睦彦が大嫌い。
 身体が弱く、風邪をこじらせて肺炎にかかり、不幸にも命を落とす。

 

 
 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.2 )
日時: 2020/08/23 09:10
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 本編でちょこっと(過去シーンとコソコソ噂話だけ)しか出てこなかった亜門の話。
 もうちょっと膨らませたいなーと思って、第1話はこの話を書くことにしました。
 睦彦・仁乃・亜門のちょっと悲しいストーリー、どうぞお楽しみくださいませ。


 *******************



 【蝶屋敷】

 〈縁側〉


 夏の下旬。
 無惨戦が終わり、平和な時間もつかのま、いつもの慌ただしい生活が戻ってきていた。

 今日はこの屋敷には、今のところ俺とアオイさん、そして宵宮しかいない。
 炭治郎たちは全員任務があり朝早くから出かけているし、
 夏休みの間を縫ってこっちへ来る花子たちもまだ来ていないからだ。


 よって、俺こと刻羽睦彦は、特にすることのないまま廊下をぶらぶら歩いていた。
 と、縁側で宵宮が抹茶を飲んでいるのを見かけた。


 睦彦「宵宮!」
 有為「あ、睦彦くん。お疲れ様です」

 睦彦「お疲れ様ですって、俺なんもしてないけど」
 有為「じゃあ、お世話様です」
 睦彦「意味分かって言ってる?」
 有為「さあ?」


 敬語や一人称に対するわだかまりが治った彼女は、それでもまだ敬語が抜けないようだ。
 時々敬語になったりため口になったりするのが可愛らしいが、ただし可愛いのはそこだけだ。
 いや…顔もか。まあ、とにかく性格は言わずもがな。


 有為「今日は、静かですね、屋敷」
 睦彦「そうだな。今まで任務がなかった分が、今日に限って回ってきたって感じ」
 有為「睦彦くんは何か用事とかないんですか?」
 睦彦「ないなぁ」

 有為「……あの、どうですか、ボクの口調とか、おかしくないですか?」
 睦彦「なんで?」
 有為「……急に敬語抜けたりして、嫌われてたらどうしようと思って」


 こいつはいつもズバズバ自分の意見を言う癖に、いざとなると人の気持ちに敏感だ。
 まあある意味、極端に気を使いやすいのだろう。
 俺はそういうささやかな気遣いが得意ではないので、少し羨ましく思う。



 睦彦「あのさぁ。お前は嫌われてるかもとか思ってるけど、俺らが嫌っているはずないだろ」
 有為「……そう、なんでしょうか」
 睦彦「仮に、嫌ってたらこうやって話をしたりとかもないぜ」
 有為「……確かに」


 睦彦「だから、そんなに構えなくてもいいって。嫌われてないならいつも通りで」
 有為「なんか、睦彦くんらしいですね」
 睦彦「そうか? 自分じゃよくわかんないけど。嫌われる奴って大体決まってっからなぁ」



 有為「……嫌われたことがあるような口ぶりですね」
 睦彦「……まぁな。そいつのこと、俺も嫌ってたから、仲はめっちゃ悪かったけど」
 有為「……どんな方なんですか? 時々あったりとか、します?」


 
 睦彦「……もう、会えないよ。死んだんだ」




 あんなことになるなら、最初からしっかりと自分の気持ちを伝えとけばよかった。
 あの時の思い出が、今でもなお記憶から消えない。
 忘れるなと、人間の本能が訴えかけるように。




 有為「……すみません」
 睦彦「いいっていいって。じゃ、そうだな。お前も暇なら、話してやるよ」
 有為「上から目線ですね。もう、慣れましたけど」
 睦彦「ごめん。俺の悪癖だ。あいつも、俺のこういうところが嫌いだったんだろうな」


 有為「あなたが嫌じゃなければ、是非聞かせて下さい」
 睦彦「……了解。いいか、これは今から4年ほど前、俺が鬼殺隊に入隊した直後のことだ」



 記憶の片隅に入れていた、あの日の思い出をゆっくりと開いていく。
 今よりももっと初夏の緑が痛かったあの夏、俺はある少年に出会った。



 睦彦「話をしよう。俺がずっと嫌いだった人の話を」




 瀬戸山亜門。俺はコイツが嫌いだった。




 ネクスト→睦彦の過去の話、開幕! 次回もお楽しみに。

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.3 )
日時: 2020/08/23 16:59
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)


〈4年前 藤襲山〉

 四年前、鬼殺隊最終選別の会場、藤襲山にて。
 鬼殺隊に入隊する条件は、鬼の苦手な藤の花が生えていない山で7日生き延びること。
 幸い、師匠からの手厚い訓練のおかげで特にケガもなく、俺は山の鬼を一掃することができた。

 7日後俺は、精根尽き果て、汗をぬぐいながら山の神社へ階段を上った。
 実家が神社だからこんなのよゆーよゆー! …ではなく、やはり疲労のせいでかなり苦しい。
 肩で息をしながら神社に着く。


 黒髪「お帰りなさいませ」
 白髪「皆様は晴れて鬼殺隊に入隊されることになります。お疲れ様でした」


 抑揚のない声で、おかっぱの子供たちがそう告げ頭を下げる。
 選別が始まる前にあんなにいた人の数は、今や自分を含め3人しかいない。
 

 一人は、紫色の羽織を着、髪を二つ結びにした小柄な少女。
 お互い生き残ったら俺を「むっくん」と呼んでいいか、などと突飛な発言をした奴だ。
 確か名前は、胡桃沢仁乃。



 仁乃「お、キミも無事だったんだね。約束通り、これからはむっくんでいいよね」
 睦彦「勝手にしろ」



 もう一人は、俺と同じ位の身長の、肌の白い少年だった。
 俺より若干長い髪はサラサラで、黒の袴を着ている。
 

 睦彦「お前も今日から俺の同期だな。これからよろしくな。俺、刻羽睦彦」
 ??「……」
 睦彦「お前の名前は?」


 そいつはブスッとした表情で、モゴモゴと言った。
 何でそんなに不機嫌なのか、その理由はその時の自分にはわかるすべもなかった。


 亜門「瀬戸山亜門」
 睦彦「亜門か。歳は?」
 亜門「12」
 睦彦「一歳下か。よろしくな、亜門。これから一緒に頑張ろうぜ(手を差し出して)」


 あんなに沢山の人間が選別を受けたのに、俺たちしか生き残れなかった。
 彼らに俺たちが出来ることと言ったら、犠牲になった人の分まで戦うことだと思う。
 だからこの握手は、これから一緒に戦う仲間への信頼を籠めて。


 そう思って手を差し出した。




 バチッッ!



 亜門「………うるさいチビ」
 睦彦「………ッ」
 仁乃「ちょっと! 貴方何してるの!? 人の手を叩くなんて!!」


 睦彦「………おい。どういうことだよ! 俺が何かしたってのか!?」
 亜門「僕はお前とつるむ気はない。あっちへ行け」
 睦彦「なんだそれ!! お前何様だよ!?」


 亜門は何も言わずに、俺と距離を置いてチッと舌打ちをするだけだった。
 そういうわけで、初対面での俺と亜門の関係は、あまりよくなかった。

 いつか、仲良くなれる日が来るのだと思っていた。
 少なくとも今日一日、用事が全部終われば、親しく話しかけてくれると思っていた。


 でも、そんな淡い期待に添えるようなことは、一つとして起こらなかった。
 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.4 )
日時: 2020/08/24 16:34
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 続き行きまーす!
 話の都合上どうしても暗くなるのは許してね。
 

 ***************


 睦彦「(なんだコイツ……。俺の手を叩きやがって)」


 亜門の第一印象は、俺の中で最悪だった。
 空気の読めない自分勝手な奴。たった数分間で、彼の印象はそれで定着してしまっていた。
 

 睦彦「(そもそもお前と身長ほぼ変わんねえだろ。チビはお互い様だろうがクソッ)」


 イライラをこらえながら、俺はその後の隊服の採寸や鋼玉選びをした。
 そしてその間も亜門は、横目で俺をジッと睨んでいた。



 黒髪「それでは最後に、皆様には鎹鴉をつけさせていただきます」
 白髪「鎹鴉を通じて、皆様に任務の指令が届きます」



  カァァァァァァ——————!!


 睦・亜・仁「うわっ!」
 鎹鴉「カァ———!(睦彦の肩にとまって)」


 睦彦「えーーっと、かすがい、がらす?」
 鎹鴉「ケケケ」
 睦彦「けけけって……」


 仁乃「え、鴉? ……雀じゃない?」
 鎹雀「チュンチュン!!」
 仁乃「まぁ、可愛いからいいか。これ、名前はもうついてるの?」


 白髪「ついているものもいますがその鎹雀には名前はありません」
 黒髪「ご自由に付けていただいて結構でございます」

 仁乃「そっかぁ。君オス?」
 鎹雀「チュンチュン!」
 仁乃「じゃあ、豆みたいに小さいから、豆吉ね!」
 豆吉「チュンチュン! 仁乃、ヨロシクネ」


 亜門「チッ。おい鴉。お前の名前は何て言うんだ?」
 鎹鴉「ワシノ名前ハ金剛(こんごう)ジャ」
 亜門「………似合わねぇ、絶対それ強力の男の名前だろ」 
 金剛「ツツキマースゾ」


 そんなこんなで、無事選別後の用事が一通り終わった。
 あとは師匠の家へ帰って、受かったことを報告するだけか。



 睦彦「(先生、喜ぶだろうなぁ。頑張って良かったぁ…!)」


 しみじみと、先生の元で修業した日々のことを思い出していると。
 亜門がまたも俺をジッと見つめているのに気づく。
 何か言いたそうな雰囲気。



 睦彦「何だよ」
 亜門「………ちょっと面貸せ」

 
 仁乃「…………」



 胡桃沢が心配そうな目で一瞬俺を見たが、俺はその視線をサラッと受け流した。
 どうせ、大したことは起こらないと、そう思った。
 そして、その予測は結果的に大きく外れたのだ。



 ・・・・・・・・・・・・・・・


 人目のつかない神社の裏へ連れ出して、亜門は俺を真正面から見つめて言った。


 
 亜門「お前なんか大っ嫌いだ」
 睦彦「………へ?」

 
 何を言われたのか、一瞬理解が追い付かなかった。
 今、何て言った? 嫌い? 俺のことが?

 初対面で何故そのように言われなければいけないのか分からず、目を見開く。
 亜門は鬱陶しそうに俺を斜めから睨んだ。

 亜門「僕には何のとりえもない。剣士になることだけが唯一の夢だ。それなのに」


 彼は顔をしかめて、言いにくそうに無理やり口の奥から言葉を絞り出した。


 亜門「最終選別で、鬼は皆お前が倒しちゃったじゃないか」
 睦彦「…………お前が倒せないのが悪いだろ」


 ……そんな彼に、俺はたいして何も考えずにそう言ってしまった。
 鬼を倒すのが条件で、それが分かっているのに倒せなかったなら、お前の努力が足りてない。
 そう言うことだろ、と念を押すように俺もまた亜門を睨む。


 俺の言葉を受けて、亜門の表情に衝撃が走った。
 彼の手が俺の肩に伸び、あっと思った時には、俺の腹めがけて彼の細い足が伸びていた。

 
 亜門「……世の中には、才能に恵まれてない奴もいるんだよ!! それなのにお前は!!」


  〜ガツッ〜


 対して対策もしなかった俺は、あっけなく自分の腹を思いっきり彼の足で蹴られる。
 焼けるような痛みを感じ、受け身も取れないまま俺は砂利の地面に倒れこんだ。


 睦彦「う゛っ!」
 亜門「この害悪! 害っっ悪!! 害悪!!(ガツッ ガツッ ガツッッ)」



 彼が、なぜそんなに俺を嫌っているのか分からなかった。
 なぜいきなり俺を攻撃するのか分からなかった。
 
 睦彦「う゛っ あ゛っ、ぐっ」
 亜門「お前なんか大っ嫌いだ! お前なんか嫌いだ!!」



 脚を俺めがけて振り下ろす亜門は、泣いているように見えた。
 何かを必死で我慢するように、その口元はきつく結ばれていた。


 睦彦「俺も、お前なんか嫌いだ!! 当たり前だ、いきなり殴ってくる相手を好きになれるか!」
 亜門「黙れッッ(ガツッッッ)」
 睦彦「う゛ッ!!」


 一方的に痛めつけれたこと、それ以上の侮辱はなかった。
 殴られ、痛みに耐えながら、俺は頭の中で必死に考えた。

 何が悪かった? 何が許せなかった? どうしたら好かれる? どうしたら変わる?
 どうしてお前はそんなに泣きそうなんだよ。
 どうしてお前は俺に執着するんだよ。上手い奴ならもっといっぱいいるだろうが。
 お前は俺を殴ってどうしたいんだ?
 この場限りの鬱憤を晴らすために俺を殴るなら、お前も鬼だ。鬼だお前は鬼だ。


 お前なんか嫌い。嫌い嫌い嫌い嫌い、大っ嫌いだ!!



 亜門「じゃあな。ド三流」
 睦彦「お前なんか大っ嫌いだぁぁぁぁぁ!! 何なんだよお前ぇぇぇぇぇぇ゛ぇぇ!!」


 言葉とは裏腹に、両目から熱い水滴がこぼれ落ちた。
 ……最悪だ。生き延びれたのに、勝ったのに、それがこんなことで最悪な日になるなんて。


 痛みに顔をしかめながら起き上がる。
 親父の形見の巫女装束はよれよれになっていて、腕にも顔紙も足にも擦り傷が出来ている。
 ……しごく、ダサい。


 仁乃「むっくん! 姿が見えないから来てみれば、どうしたのその傷!!」
 睦彦「胡桃沢……」
 仁乃「何があったの!? 誰にやられたの!?」
 睦彦「………」


 仁乃「………教えて。何があったの」


 駆けつけてきた胡桃沢の真剣な様子に、俺はしぶしぶ事の顛末を説明した。
 亜門が俺を連れ出すなり、自分のことを嫌いと言った挙句、俺を殴ったと。
 そう伝えた。


 仁乃「………あの人、一体どういうつもりなの。嫌いだからって、そんなこと……」
 睦彦「……気持ちはわかるけど、あまり検索はしないでやってくれ」
 仁乃「でも、むっくんはあの人に」
 睦彦「……俺のせいだから。な、お願い」




 仁乃「………分かった。また何かあったら、ちゃんと言うんだよ」


 全部俺が悪いってんだろ、亜門。
 仕方ないよな。わがままで虚勢張って目立ってる奴なんか、ウザったらしくて当然だ。
 それにお前は俺と比べてしまったんだろ。
 仕方ないよ、俺が自分にうぬぼれてたから、腹が立ったんだろ。



 ………もう、帰ろう。
 本当は分かっていたんだ。
 鬼殺隊はアレでも一部の組織なんだから、人間関係だってちゃんとある。
 自分を好ましく思う人と思わない人がいる。
 そんな常識的なことを、俺が分からなかった。それだけのことだ。



 睦彦「……………大変だな」



 もう帰って寝よう。
 帰って、先生に沢山褒めてもらって、今日の悲しいことは嬉しいことで上書きしよう。
 それがいい。


 何かあったと聞かれても、「何もない」ってそういえばいい。
 だから、今日一日はせめて、楽しいことが悲しいことより多くありますように。



 ネクスト→先生の家に帰った睦彦。次回もお楽しみに。



 



 
 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.5 )
日時: 2020/08/25 15:48
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)


 〈師匠の家〉


 へとへとになりながら先生の家に着いたとき、時刻は既に夜。
 とにかく体中が痛くてたまらない。
 心もとうに疲弊しており、本当のことを言えばだれとも話したくない。


 睦彦「…………ただいま……」
 先生「おや、おかえり睦彦。生きて帰れたようで何よりじゃ」
 睦彦「…………あざっす」


 先生に検索されないように、努めて明るい声を出したつもり。
 それでも、二年も一緒に過ごした弟子の様子がいつもと違うことくらい、先生は分かっていた。


 
 睦彦「あ、ああ、今日は浩平は来てないんですね。良かったですアイツどうにも苦手で」
 先生「睦彦」
 睦彦「ああ、ほら、いっつも俺に引っ付いてきてムカつくって言うか、子供ってどうにも」
 先生「睦彦」
 

 大丈夫だ、俺は普通に選別に行って、普通に帰ってきただけ。
 だから何も思うことなんてない。
 そう、普通に、笑っていればいいんだ。

 泣くことなんて、ない。


 先生「なんかあったのか。元気がないぞ」
 睦彦「そ、そんなこと」
 
 先生「……まあいい。お前、おでんとすき焼きどっちがいい?」
 睦彦「………どっちでもいいです」
 先生「…………疲れているようだから、先に風呂に入っておいで」



 睦彦「分かりました」


 結局、俺は逃げるようにその場を後にしてしまった。
 俺の肩に止まった鎹鴉—封仙(ふうぜん)と名付けた—が不思議そうにこっちを見る。



 睦彦「何見てんだよ、バカガラス」
 封仙「…………」


 ダメだ。ダメだダメだ。ダメだ。
 涙をこらえるのに必死になってしまった。
 先生の優しさに甘えたくなってしまった。


 思わず奥歯をぎゅっと噛む。
 誰にも言えない。先生を困らせたくない。だから相談はしない。



 ……胡桃沢に、心配をかけてしまったことも後悔している。
 本当のことを言えば、今すぐ彼女に会いに行きたい。
 また、「むっくんってどうしようもないなぁ」とか、呆れて笑ってほしい。



 湯船につかりながら、俺の頭の中は亜門のことばっかり浮かんでは消えた。
 あんなに殴られ蹴られたのに、やり返してやろうとか思わないのは、なんでだろう。
 

 睦彦「(なぁ胡桃沢、お前ならどうした?)」


 誰とも仲良く接することができるお前なら、上手くやれるのだろうか。
 今、無性にお前の声が聞きたい。



 『お前なんか大っ嫌いだ!!』
 『世の中には、才能に恵まれない人もいるんだよ! それなのにお前は!!』



 お風呂から上がり、部屋着に着替えて俺は足早に自分の部屋に駆け込んだ。
 選択され、ノリがパリッと利いた布団にもぐりこみ、小さく呟く。
 
 睦彦「………仲良くできると、思ったんだけどな……」


 どうしよう兄ちゃん。
 はじめっから上手くいかなかった。カッコよく目立てなかった。嫌いって言われた。


 どうしよう父ちゃん。
 俺、失敗してしまったみたい。
 死んだ父ちゃんの分まで、しっかりしなきゃって思ってたのに、無能でごめん。


 どうしたらいいんだろう。どうすれば正解なんだろう。どうするのが優しいんだろう。
 何で俺はこんなにあいつのことを考えているんだ?
 嫌いなのに。大嫌いになったのに、俺は何がしたい?


 仲良くなりたい。一緒に仕事をしたり、趣味を共有したり、美味しいものを食べたりしたい。
 たった3人の同期なんだから。


 でも、果たして俺にはそれが出来るだろうか?
 もしかしたら「こんにちは」さえ言えないかもしれない。ずっとこのままかもしれない。
 友達になんて、なれないのかも、しれない。



 睦彦「……………ふっ。うああ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁ……!!」


 なにもなくことなんてないのに、両目から涙がこぼれて来た。
 泣くのは今日で二回目。
 こんなのカッコ悪い。慌てて服の袖で目元を拭おうとして。


 隣に、温かい感触がした。
 恐る恐る横を見ると、封仙が横にもぐりこんでいた。

 
 封仙「泣キ虫ダカラ、一緒ニ寝テヤルヨ」
 睦彦「うっせー。バカガラス!!」


 そう言いながら、俺はまた泣いた。



 ・・・・・・・・・・・・・・・



 有為「……………空気、重っっっっ!!」
 睦彦「言ったろ、楽しくない話だから覚悟しとけって」


 有為「それで、その亜門さんとはその後どうなったんですか?」
 睦彦「待て待て話を急かすな」
 有為「急かしてない!!」


 睦彦「あの後、お互い任務で各地へ散って、二人とは一年ずっと会えなかったんだ」
 有為「そうなんですか」
 睦彦「でも、胡桃沢はその一年の間に亜門に会ったみたいで、ここから先は聞いた話になる」


 睦彦「胡桃沢は、この話を俺にして、こう言ったよ」



 仁乃『………瀬戸山くんと仲良くならなくてもいい。だけど、ちゃんと知ってあげて』
 睦彦『……?』
 仁乃『瀬戸山くんは、むっくんが大好きだよ』


 

 有為「好き? だって、その方は睦彦くんのことを嫌ってたんでしょう?」
 睦彦「俺もおかしいと思ったんだけどな。亜門の本当の気持ちは、よく分からない。だけど」
 有為「だけど?」


 睦彦「秘密」
 有為「なんだそれ」
 睦彦「そう怒るなよ。ここから先話すのは、胡桃沢に聞いたこと。それを聞いて考えればいい」

 有為「仕方ないですね。分かりました」
 睦彦「お前らしいぜ。じゃあ、話そうか。このあと、何が起こったのか」



 ネクスト→次回は、仁乃sideでお送りします。次回もお楽しみに。

 
 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.6 )
日時: 2020/08/25 19:41
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 仁)空気重いねむっくん。第1話でこの話して良かったのかな?
 睦)仕方ないんだよ、言ったろ、楽しくない話なんだって!
 仁)そうだね。でも私たちで、この話を頑張って盛り上げていかないとね。
 睦)さっすが胡桃沢! よし、あとは任せたぞ!

 むう)この話はキャラの心情を書くのがすっごく重要になってくる。頑張ります。


 ***************


 〈仁乃side〉



 あれから一年がたった。
 むっくんとは、あれから顔を合わせてはいない。
 いや、正直に言えば、藤の花の家紋の家でチラッと顔を見かけたことはあった。
 けれども、遠目で見る彼の顔には、いつもの元気がなかったように思う。


 瀬戸山くんがむっくんを嫌っているのは知っている。
 実際、二人の関係は鬼殺隊の中でも有名で、この前も知らない先輩から声をかけられた。



 先輩『キミ、刻羽と瀬戸山の同期?』
 仁乃『は、はい』
 先輩『あの二人、けっこうギスギスしてるから、大丈夫かなぁと思ってよ』
 仁乃『……そうですね……』


 欲を言えば、私は二人に仲良くなってもらいたいよ。
 だってあの二人、色んな所が似てるんだもん。


 相手のことを「お前」って呼ぶところとか。
 普段はズバズバ自分の意見を言う癖に、些細なことで気分が落ち込むこととか。
 考えるより先に体が動いてしまうこととか。
 本当は、すっごく気を遣うタイプだったりするところとか。
 


 仁乃「………会いたいなぁ、むっくん」


 道を歩きながら、誰に言おうともなく呟く。
 今日私は任務での疲れを癒すため、鴉の案内で藤の花の家紋の家に向かっていた。
 

 仁乃「元気にしてるかなあむっくん。私のこと、ちゃんと覚えてるかな…」
 

 彼がどんな気持ちでいるか考えてたら、ちょっと気分が上がった。
 自然と、下を向いていた顔が上がる。


 その時、私は見た。
 目の前を、黒い袴を着た、すこし髪の長い少年がツカツカと歩いていたのだ。


 

 瀬戸山くんだ。




 仁乃「せ、瀬戸山くん!!」
 亜門「(振り返って)……なんだよ」
 仁乃「げ、元気にしてた? わ、私のこと覚えてる? え、えっと、えっと…」



 ダメだ、緊張してしまって言葉が出てこない!
 普段ならこんなことないのに、なんでだろう。
 やっぱりむっくんのことで色々あったからだろうか。


 仁乃「え、えっと、瀬戸山くんは、なんか用事でもあるの?」
 亜門「……ここ、真っ直ぐ行くと、僕んちがあるから帰る」
 仁乃「そうなんだ。良かったらご一緒してM」
 亜門「あっち行け。くんな」


 ………なんで、そんなこと言うの?
 別にいいじゃない、一緒に歩いても。
 そう言い返そうと口を開いたその時、瀬戸山くんが振り返ってこっちを見た。





 彼は、今にも泣きそうな表情で、私を見つめていた。




 亜門「くんな!!」
 仁乃「ご、ごめんなさいっ」


 私は慌ててその場を離れると、路地に回り込んで塀の陰から瀬戸山くんの様子を見張った。
 なぜそんなことをする気になったのか、よく分からないけれど。
 瀬戸山くんは、何かを我慢しているような感じだったのだ。



 彼が私と一緒に歩くのを嫌がった理由は、すぐに分かった。



 少年A「あ、亜門だ」
 少年B「本当だ。おーい亜門!!」
 亜門「…………」


 道を歩いている瀬戸山くんに、家の前で遊んでいた同い年くらいの男の子が、揃って声をかけた。
 瀬戸山くんは何も言わず、顔を俯けて歩いている。
 その拳がぎゅっと握られていた。


 少年C「おーい借金かえせたかー?」
 少年A「無視すんじゃねえよ馬鹿ー!!」
 少年B「何で貧民街育ちのお前が、元柱の先生に拾われるんだよバーカ!! あっち行け!」


 少年が道に落ちていた小石を拾い、彼めがけて投げつける。
 石を投げられても、瀬戸山くんは、何も言わない。


 その様子を見て、心の中にしまっていた嫌な思い出がどっと脳裏に流れ込んできた。
 ………思わず私も、両手の拳をぎゅっと握りしめる。


 『死ね、バケモノ! あっちへ行け!』
 『バケモノが金持ってんじゃねえ、よこせ!』
 『人間は、あんな変な術なんか使わない!』
 

 少年B「大体さぁ、こいつ体弱いから隊士に向いてないだろ」
 少年A「だよなあ。あいつより、俺ら兄弟子の方が絶対強いよなー」
 少年C「ていうかアイツの剣って錆びてんじゃねえの。きっと選別で一体も倒せなかったんだ」



 ああ、待ってあげられなくてごめんなさいなんて、全く私は思わなかった。
 考えるより先に、私の口が体より先に動いていたからだ。


 仁乃「…………なんで、そんなこと言うの」
 少年一同「あ゛? なんだお前」


 少年たちは首をかしげて挑発し、瀬戸山くんは目を見開いて私を振り返った。
 こんなこと、見過ごすわけにはいかない。
 私は少年の鋭い視線にひるむことなく、言葉を続ける。


 仁乃「あなたたちは、そんなことをして楽しいの!? 悪口を言って満足するの!?」
 少年A「なんだよ、お前には関係ねぇじゃねえか」
 仁乃「じゃあ、あなたたちだって、瀬戸山くんとは何の関係もないじゃない!」


 仁乃「あの子があなたたちに何かしたの? あの子はあなたたちを虐めたの?」
 少年B「……いや」
 仁乃「じゃああなたが瀬戸山くんを悪く言う権利なんてないじゃない!!」


 仁乃「生まれた環境だけで悪く言うなんて、ホント最低!!」
 亜門「お、おい…」
 仁乃「人は生まれながら平等、でも神様はいつも不公平」


 仁乃「何の不自由もなく暮らせる人がいれば、お金に困って小さな家で凍えてる人もいる」
 少年C「………も、もう悪かったよ、いいだろ、もう」


 仁乃「瀬戸山くんの人生を、あなたたちの勝手な想像で決めつけないで」
 亜門「お、おい、胡桃沢さん…」
 少年一同「………っ」

 仁乃「むっくんだったらこう言う!!『至極ダサい。目立つ目的を間違えてんじゃねえ』って」
 亜門「!!」
 少年一同「さ、さよならっ(ダッと駆け出して)」



 私だって、特殊体質のせいで石を投げつけられたことがある。
 近所の人にすら、人間と見てもらえなくて、ひとりの夜に押しつぶされそうになったことがある。
 彼らに、そんな私の気持ちが分かってたまるか。



 仁乃「大丈夫? 瀬戸山くん」
 亜門「あ、ありがと。なんか、ごめん……」
 仁乃「あなたなんか嫌い!」
 亜門「……え」


 してやったり。
 私は心の中でニンマリとほほ笑む。
 しかし心の中の気持ちとは裏腹に、目には、涙が溢れていた。
 

 
 仁乃「何か抱えてるなら、相談すればいいじゃない。なんでしないの!?」
 亜門「そ、それは」
 仁乃「むっくんが嫌いなのも、色々大変なのも分かる。だけど」


 仁乃「私のことは、嫌いじゃないでしょ。頼ってよ」
 亜門「………なんで?」
 仁乃「なにが?」

 亜門「なんで、胡桃沢さんは僕に優しくするの? 僕は刻羽を殴ったんだぞ!」
 仁乃「それがどうしたって言うの? 確かにあなたはむっくんを傷つけた。それは許さない」
 亜門「………」
 仁乃「仲良くして、なんて分かったようなこと、私言わないよ。でもその代わり」




 仁乃「私のこと、たくさん頼ってもいいんだから」
 亜門「………考えとく」


 彼はそれだけ言い残して、足早にその場を去ってしまった。


 瀬戸山くんは、「うん」とも「いいえ」とも違う、中間の意見を取った。
 こういうところは、むっくんと違う所。

 きっと色々、瀬戸山くんの中で我慢していることがあるんだろう。
 むっくんはむっくんで、彼との関係に悩んでいる。
 
 なら私が、なんとかしなくちゃダメじゃない!
 むっくんも瀬戸山くんも、絶対いい子だよ。
 誰がどういおうと、私は二人のことを信じているよ。



 だから今はむりでも、きっといつか、二人がお互いを支え合える関係になれること。
 陰からしっかり、見守っておくからね。


 



 
 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.7 )
日時: 2020/08/26 17:13
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 ☆小説の1話ができるまで☆


 小説の内容を決める
 ↓
 イメージ曲を決める
 ↓
 下書きなしで直接書く←今ここ
 ↓
 誤字チェックしてにやける
 ↓
 じっくりとお風呂につかりながら続きを考える

 ****************************


 〈亜門side〉


 僕は、貧民街で育った。
 天井に穴が開いた家で一人取り残されて、誰にも見つけてもらえないことがあった。
 捨て子の僕にとって、家族と呼べる存在はいなかった。

 毎日、乾いた握り飯にかじりついて、人からの暴言に耐えた。
 どんなに飢えても苦しくても、僕を可哀そうだと思ってくれる人はいなかった。
 そもそも可哀そうだなんて思われることが嫌だった。

 そんな自分を拾ってくれたのが、元柱の育手。
 僕は先生の元で暮らす代わりに、鬼殺隊に入るという条件で剣の修行を始めた。


 だから僕には分からないのだ。


 たとえもう今はいないのだとしても、温かいご飯が食べられて、親の愛情で育った人のことが。
 お金のない生活に無縁の人の事が。
 才能や環境に恵まれて、のうのうと暮らしている人の事が、僕には分からない。


 そして同じように、そう言う人には僕の気持ちなんか分からないのかもしれない。
 予想することが出来ても、それは分かるとは違うことだ。
 

 だからだろうか、僕と刻羽の関係が、上手くいかないのは。


 まぁ確かに、急に殴ったのは悪かったよ。
 だから僕が信じられないのも、大嫌いなのも分かる。
 でも僕はお前が嫌いだし、お互い様じゃないか。



 仁乃『もう嫌われてるって、その考えに縛られたままで貴方はいいの?』

 

 前に、胡桃沢さんにそう言われたことがある。
 彼女は僕より年下なのに、ちゃんとしっかりとした意思を持っている。
 何事にも動じない強い自分がある。


 亜門「なんとかしたいって、思うけど、あいつは……」



 今更、何て返せば正解なんだろう。
「殴ってゴメン」? 「仲よくしよう」?
 そんなことを言って、あいつがすぐに許すはずがないだろう。


 だって、僕はあんなにあいつを痛めつけて、苦しめて、傷つけてしまったんだ。
 今更、仲良くなりたいだなんて、伝える権利なんて、ないじゃないか。
 それに加害者がそんなことを思うのは、きっと間違っている。


 仁乃『私の事は、嫌いじゃないでしょ。相談してよ』
 

 何を? 
 借金を返せないこと? 刻羽と上手くいかない事?
 そんなこと、君に話して何が変わる?

 それとも、そんなことを思ってしまう僕が悪いのだろうか。
 

 僕とあいつがギクシャクしてるのを、黙って見て、君はショックだったんだろ?
 君も僕のこと、嫌いなんだろ?
 だったら、なぜ君は相談を受けようと思うんだ?



 亜門「………仲良くなりたくないわけではないけど、この気持ち、何ていえば……」


 僕が刻羽に抱いているのは何の感情だろう。


 あいつの存在が妬ましいと思う嫉妬?
 あいつより、見かけだけでも強くなりたいという虚栄心?
 持ち上げられて、膨れ上がった自尊心? 
 それとも、彼と比べて無性に小さく思える自分への嫌悪感?


 ………僕はお前が嫌いだよ刻羽。
 お前だけ強くて、お前だけ明るくて、お前だけ優しくて、お前だけ勇敢で。
 こっちばかり比べてて、こっちばかり気にしてて、こっちばかりムキになって。


 こんなの、僕が全部わがままみたいじゃないか。
 

 亜門「………『いつか、また』なんて来ないと思う……」



 いつかまた、変われる日が来るのだろうか。
 ……きっと、待っているだけじゃ何も変わらない。
 じゃあ、僕は何をすれば、前へ進めるんだろう。



 亜門「………ゴホッゴホッ」


 もともと体が弱くて、選別前から吐き気がした。
 それでも誰かの期待に答えたくて、誰かの期待に添えるような人間になりたくて。


 亜門「おい鴉。刻羽の場所が分かるか」
 金剛「当タリ前ジャ、カアカア」
 亜門「大嫌いな人からの手紙だって言っとけ。これ、あいつに届けて」
 金剛「素直二ナレナイナ、オタガイ二」


 亜門「ほっとけ」



 僕は鴉の首周りに、手紙をくくりつける。
 変わらなくちゃいけない。でも、相手からの反応が怖い。
 
 アイツは悪くないんだ。一つも悪くないんだ。
 悪いのは、自分を相手と比べてしまう、どうしようもない僕なんだ。


 仲良くしよう、って言ったらあいつはどう答えるだろうか。
 怒るかな、泣くかな、笑うかな。
 

 僕はずっとお前になりたかったんだよ刻羽。
 お前みたいに、強くなりたくて、お前に勝手に憧れちゃったんだよ。
 やっぱり、全部お前のせいだ。お前のせいじゃないけど、お前のせいだ。


 なんだそりゃ、って思うけど多分僕の中で、これが正解だ。
 だから手紙には、たった一行しか書いていない。


 僕は素直じゃない。それはあいつも同じだ。
 たとえ胡桃沢さんが間に入っても入ってくれなくても、僕等の根本的な部分はきっと変わらない。
 
 だけど、目立ちたがりのお前のことだ。
『目立つ目的を間違えてんじゃねえ』って? よく言うよ。
 本当にムカつく同期だよお前は。


 だからたった一行の手紙をお前に送るよ。
 返事なんて送らないでくれよ。
 まあ、どうしても書きたいって言うなら、見てやってもいいけどさ。





 「拝啓 刻羽へ。 お前は、やっぱり凄いな」



 
 


 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.8 )
日時: 2020/08/27 16:50
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)


 よくよく考えてみると、睦彦って語呂合わせメッチャしやすい。
 スマホとかのパスワードこれにしようかな、という下らない思想。

 こくばむつひこ
 ↓
 5986215


 ****************************


 〈睦彦side〉


 睦彦「ん〜? んんん…??」


 おいおいおいおい、こりゃどういうことだ?
 鴉経由で届いた手紙の文字を、俺は何度確認したことだろう。

 任務へ向かう道のり、手紙を読みながら歩いていたものだから、通行人と三回もぶつかった。
 だって。だってだって、送り主の名前は、あの瀬戸山亜門だったのだ。

 手紙を受け取ったのは、三日前。あと3日で正月が来るという、新年間近の日だった。
 いつものように藤の家でお世話になっていた俺の元に、突然一羽の鴉が飛んできた。
 

 金剛。亜門の鴉は、そう言う名前だったはずだ。
 金剛は首に結ばれた手紙をくちばしで器用に外すと、俺の前にポンと投げてよこした。


 封仙『金剛先輩ジャナイスカ。ゴ無沙汰シテヤスー』
 金剛『オ久シブリジャノ、封仙』

 鴉たちのまるで人間かと疑うような会話を盗み聞きしながら、手紙を開いた。
 そこには、たった一行、くねくね曲がってお世辞にも綺麗とは言えない字でこう書かれてあった。

 

 「拝啓 刻羽へ。 お前は、やっぱり凄いな」



 睦彦「訳が分かんねー。どういう風の吹き回しだ?」
 封仙「ナンダヨ。ソンナニ手紙ヲモラッタノガ嫌ナノカ?」
 睦彦「いやだって、おかしいだろ。なんであいつがいきなり、俺にこんなのをよこすんだ?」


 肩に止まったバカガラス—もとい封仙の質問に答えながら、俺はあぜ道を歩く。
 縦からも横からも斜めからも読んでみたが、相変わらず意味が分からない。

 「凄いな」って褒めてもらうようなこと、俺はしたっけ?
 亜門は、俺のことが嫌いなんじゃなかったか?
 それとももう、嫌いなんて思ってないのかな?


 睦彦「あぁぁ〜分からん!! こういうゴチャゴチャ考えるの、得意じゃねえんだよ俺は!!」
 封仙「嘘ツケ」
 睦彦「嘘じゃねえよ」
 封仙「特技ガ暗算ナノ二カ? 10桁ノ暗算ダッタラ余裕デ出来ルンダロ?」


 まあ、昔ヘマやって親父に怒られて、そろばんを投げつけられて。
 そのそろばんを弾きながら暇をつぶすのが楽しかったのは本当。
 10桁の暗算ができるのも嘘じゃないけど。

 睦彦「そんなに凄いことか?」
 封仙「ア、イイワ。オ前トハ多分違ウ次元ダワ俺」
 睦彦「鴉の癖に生意気な」

 
 仕方ねえ。また今度胡桃沢にあったら直行で聞いてみよう。
 ん…でも、あいつのことだからまたなんかからかってきそうだな。
 天然でやってるのだから、悪気はないのだけどな。


 
 睦彦「(亜門は嫌いだけど、胡桃沢のことは別に嫌いじゃないし)」


 一緒にいて、楽しいと思う。
 優しいし、明るいし、こんな俺もちゃんと見てくれるし、何より人がいい。
 俺より二歳も年下なのに、話していると同い年なんじゃないかと思ってしまう。


 まぁ、顔も、………かわいいと、思う。



 睦彦「(それって、『好き』ってことじゃ!!?)」


 ある結論に辿り着き、瞬間頬に熱を感じた。
 違うよな、絶対違うよな。
 俺もともと異性とかに興味ないし、好きとか思わないしっ。

 だから胡桃沢とはただの同期なわけで、好きとかじゃないしっ。
 ぁぁぁぁぁぁもう自分でも何考えてるのか分からなくなってきた—————!!

 

 封仙「ドウシタ睦彦。顔ガ赤イゾ。ヤラシイコト考エテタ?」
 睦彦「ちげーしバッカッ!! 封仙バッカ!! ///」



 案の定、勘の鋭いバカガラスが俺の頭をコツコツコツコツコツコツつついてくる。
 痛いってば馬鹿。俺の頭がへこんだら責任取れよな。


 そうやって、人間VS鴉の格闘(?)が路上で行われた数分後。
 ペタペタと草履の音がすぐ近くで聞こえ、目の前が暗くなった。



 睦彦「———」
 亜門「おい」
 睦彦「———?」
 亜門「おい、聞いてんのか!?」


 目の前に、亜門がいた。
 少し髪が伸びている。ずっと会っていなかったことが分かる。


 俺は亜門の爪先から頭までをそろりそろりと眺める。
 彼は鬱陶しそうに首を回し、一年前と変わらない、棘のある口調で言った。


 亜門「何見てんだよ」
 睦彦「いや、お前に背を抜かれるとか、俺のプライドが許さないなと思って」
 亜門「知らないよ。文句は自分の体に言えよチビ」

 
 目の前に居るのはまさしく亜門だ。
 俺がずっと嫌いな、瀬戸山亜門だった。
 でもなんだろう、角が取れて丸くなったような気がする。



 性格は、変わってないけど。


 睦彦「な、なんでお前がこんなところに!?」
 亜門「ああ、合同任務の知らせが来たからだよ。お前と一緒じゃ気力もわかないな」
 睦彦「わかせよ、死ぬぞ!?」


 あれ、なんだろう。
 俺、ちゃんとこいつと会話できてる。
 友達みたいなやりとりが、ちゃんとできてる!

 ……とは、死んでも言わないけど、俺は微かな喜びを感じた。


 仁乃「久しぶり瀬戸山くん。と、!! むっくん———!!」
 睦彦「うおっ!? いきなり抱き着くな!! ここ、路上!! 人前!!」
 仁乃「お子様」
 睦彦「〜〜〜〜〜〜っ!!」


 胡桃沢め、後で覚えとけよ!?
 でもお前が来てくれて助かったぜ。
 亜門と二人きりの合同任務なんて、どう接したらいいか分かんなくなりそうだったから。
 同期3人の任務なら、なんとか執行できそうだ。


 睦彦「(って、俺は胡桃沢に頼らないと同期と会話もできないのかよ……)」
 仁乃「どうしたの、むっくん。あ、そうそう、瀬戸山くんの手紙どうだった?」
 睦彦「!? なんでそのことっ」


 え、なに、エスパー?
 思わずあたふたしだした俺を見て、胡桃沢はまた笑った。


 亜門「おい胡桃沢さん、秘密だって言っただろ!」
 仁乃「そうだっけ?」
 亜門「もういい! 刻羽、もう何も言うな。絶対に何も言うな。酸素も吸うな」
 睦彦「殺す気か!!?」


 ああ、なんだろう、この平和な感じ。
 俺はこういうのを、ずっと望んでいた気がする。

 亜門がどういう結論を出して、どういう気持ちで手紙を書いたのかは分からない。
 俺のこと、少しは見直してくれたのかな?
 そうだったら嬉しいけど、きっとお前はそのことを俺に言わないよな。

 って、俺ってばあいつのことなんでも知ってる感じになってる。
 やっぱり、お前は嫌いだ。

 
 俺は亜門が嫌い。亜門は俺が嫌い。
 文章にすると救われない感じがするが、そうじゃない。

 多分、お互いの「嫌い」という気持ちの種類が、少しずつ変わり始めた。
 そんなふうに俺は感じたから、二人ににっこりと笑い返した。


 睦彦「よし、いこうぜ亜門、胡桃沢! 俺は強いからな!」
 仁乃「ふふふ、むっくんってばテンション高いね」
 亜門「安上がりでいいな」

 きっと俺たちの友情は、これがあっている。
 だから、いつまでもこのままで。決して壊れないでと、俺は心で願っていた。


 ネクスト→合同任務開始。次回もお楽しみに。
 
 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.9 )
日時: 2020/08/27 19:07
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)


キャラに○○してみたシリーズ、もう一回やりてえ!
 なのでやってみますw

 1、「愛って何だと思う?」って聞いてみた


 炭治郎

 「人を愛し、その人の事を特別な存在だと思い、共に趣味を共有したりすることを……(続く)」


 (説明が長いw)


 禰豆子

 「ムームー!(みんなが大好き!という気持ち)」

 
 (シンプルイズベスト)


 善逸


 「俺と禰豆子ちゃんの関係性ですッッ」


 (おおおおwww)


 有為

 「それは、文章化しなきゃいけないことなんですか?」

 (確かに! 流石有為ちゃん!)


 睦彦


 「ふぁっ!?」


 (乙女か)

 
 仁乃


 「…………むっくんとの日常」


 (おおおおおおおおおおおwwww)



 寧々


 「少女漫画みたいな、キラキラした感情だと思うわ」

 (可愛いです。寧々ちゃんの言い方可愛いです)


 花子

 「ヤシロをからかうこと♪」


 (どS……)


 光

 「ふぇっっ!??」


 (誰かさんと同じ反応。でも可愛いので許す)


 ミツバ

 「僕のことだよね!!」


 (はい、平常運転)


 夏彦


 「試練☆」


 (流石www)


 つかさ

 「普! 桜! 夏彦!! あといろいろ———!」

 (言い方がカワイイ)


 桜


 「…………夏彦をあしらうこと」

 (ん? それビミョーに夏彦先輩の事「違うわよ」違うかなぁ? 絶対「お黙りなさい」)
 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.10 )
日時: 2020/08/28 16:27
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 ☆時系列が分かんないよって言う方の為の時系図☆

 【こんなふうにリンクしてます】


 〈過去の話〉

 ・仁乃が鬼殺隊を目指す(六人の軌跡 第39話)
 ↓
 ・睦彦が鬼殺隊を目指す(六人の軌跡 第40話)
 ↓
 ・睦彦と仁乃が会う(六人の軌跡 第39話 40話)
 ↓
 ・睦彦たち3人が鬼殺隊入隊する(短編集>>02、六人の軌跡第39話、40話)
 ↓
 ・睦彦が亜門に殴られる(短編集>>03・六人の軌跡第45話)
 ↓
 ・二人の関係性が少しずつ進展(短編集>>08
 ↓
 ・合同任務←次ここ(短編集>>11予定)!!!

(ちょっと飛んで)
 ↓
 ・仁乃の鬼血術が睦彦にばれる(六人の軌跡第40話)


 けっこう頑張りましたね!
 それでは次回もお楽しみにーばいちゃ!


 
 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.11 )
日時: 2020/08/29 08:36
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 こんな噂、知ってますか?
 第1話の次の話は、花子くんの話だそうですよ。
 ぜひ、お楽しみに))おーい桜ちゃん早まりすぎだよー!!

 ****************************


 〈睦彦side〉


 鎹鴉「次は、北北西! 北北西!! カァ——————!!」
 

 冬の風に吹かれながら、任務へと進む三人トリオ。
 その中で唯一の女の子はおにぎりをほおばりながら、ケラケラ笑っている。
 女の子を挟んで言い争っているのが誰だかは、もう皆さんご存知の通りで。

 
 睦彦「だーかーら、お前は剣の振りが小さいんだって!」
 亜門「うっせーな、力が出ないんだよ!」
 睦彦「運動しろよ!!」
 亜門「体弱いからほどほどにしとけって医者に言われてんだよ!」
 睦彦「すまん!!」

 漫才かと疑うような、テンポのいい会話を聞き、胡桃沢は終始ごきげんだ。
 しかし会話をしているこっちの気持ちとしては、晴れやかではない。
 

 景色は延々と田んぼが続く田舎の風景。
 時折俺の肩に止まった鴉や、同期の雀や鴉がハーモニを奏でる。
 これが琴や三味線の音色だったらうっとりと聞き入るが、何せ鳥の合唱だ。
 つまり、凄くうるさい。

 豆吉「チュンチュン! ねえ封仙さん、うちの仁乃って可愛いでしょ!?」
 金剛「うちの亜門の方が頭いいね」
 封仙「俺んとこの睦彦も強いぞ」


 だなんていう鳥の会話は人間には分からないのは当たり前だ。
 鳥のコーラスと、俺と亜門の論争と、胡桃沢の笑い声が重奏となり響き渡る。


 亜門「俺もお前に言いたいことがあるんだが」
 睦彦「んだよ」
 亜門「チビ」
 睦彦「うるせえよ!!」

 仁乃「あーもう、お腹痛い。あはははははは!!」
 亜・睦「笑うな(笑わないでよ)!!」
 仁乃「だ、だって二人とも、メチャクチャ仲いいんだもん」
 亜・睦「良くない!!」

 また、声がハモったので、俺はキー——と地団太を踏んだ。
 亜門も、やってられないというふうに首を小さく振る。


 睦彦「真似すんな馬鹿!!」
 亜門「こっちのセリフだチビ!!」
 睦彦「チビとはなんだでかのっぽ!!」
 亜門「そんなにでかくはないだろ!!」

 仁乃「やめッw あははははははww」


 路上に、同期3人の笑い声と怒鳴り声と鳥の鳴き声が、絶えず響き渡っていた。 
 アーメン。

 まあ、戦闘前はこんなふうでもいいかもな。
 あと、俺ってやっぱり身長低いのかな………ハァ………。

 チビという単語に胡桃沢がいちいち反応してたことだけは黙っておく。
 ※身長145㎝。
 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.12 )
日時: 2020/08/30 08:48
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 Q、亜門・仁乃・睦彦のチーム名を家族に考えてもらった

 母「オリキャラ隊」

 (かっこよくなーいw)

 弟「ぽんぽこ隊」

 (母がかまぼこ隊のことをぽんぽこ隊と間違えたことから)

 父「鉄腕アニム」

 (既視感!!)


 A、ということがあり、あにむ隊になりました。


 ****************************

 
 鴉に案内されて向かった北北東の場所は、人通りの少ない路地が多い市場だった。
 いつも、薄暗い山の中や郊外の屋敷などでの任務が多かったので、少し不安だ。
 
 万が一、無関係の人間を怪我させたらと思うと緊張で身がすくむ。
 そんな俺を励ましてくれるのは、いつも胡桃沢だった。


 仁乃「緊張してるの?」
 睦彦「してねえよ!!」

 俺はなぜか、コイツの前だと気を張ってしまう。
 それは恋だろうって? んなわけない。
 ……………一応、俺の実家の氏神は縁結びの神様だったけど、そんなことどうでもいい。
 ごくごく普通の、男のプライドでついそんな態度を取ってしまうだけだ、うん。


 仁乃「じゃあ、確かめよっか」
 睦彦「どうやって」
 仁乃「えい!(脇腹ツン)」
 睦彦「あひゃひゃひゃひゃww やめッww ぐっww」

 まさかの不意打ちのツンが横から飛んできて、俺は身をよじり笑い転げる。
 そんな俺を、亜門がGかKでも見るような目で見ているのに腹が立つ。

 亜門「…………」
 睦彦「その目やめろ!! なに般若みたいな顔してんだよ!! やめwww」
 亜門「一生笑い続けてろ馬鹿」

 辛辣なコメントを吐き、亜門は笑いすぎて腹が痛くなった俺をスルーして歩き出す。
 おい、ちょっとくらい気にかけてくれてもいいだろ。
『大丈夫か? ほんと、どうしようもないなあ』とか言って。
 ……やばい、想像したらなんか気持ち悪くなった。やっぱいいわ。


 仁乃「——それで、肝心の鬼はどこにいるのかな?」
 亜門「日が傾いてる。もうすぐ夜だな」

 胡桃沢がそう言ったときだった。
 不意に、路地裏から泣き声が聞こえた。


 女の子「うわぁぁぁぁぁぁん!」
 一同「!?」

 慌てて声のした路地に入り込むと、5,6歳くらいの女の子がわんわんと泣き喚いていた。
 亜門は彼女の目の高さに背を合わせると、優しく語り掛ける。

 亜門「どうした?」
 女の子「あのね、弟が、飴細工を見に行ったまま帰ってこないの」
 仁乃「飴細工?」
 女の子「うん。飴屋のお姉さんが、弟をお店まで案内してくれたんだけど、も20分くらい……」


 ……飴屋なら、さっき道中で見た。
 ここからだと徒歩5分くらい、流石に20分もかかるのは可笑しい。
 まさか。


 睦彦「……飴屋の姉さんって言ったか。その人が、店に連れて行ったんだな?」
 女の子「うん。美人で、優しいお姉さんだよ」


 ………もし、その人が鬼で、食料を集める為に子供を店におびき寄せているのだったとしたら。
 もう、手遅れかもしれないが、今すぐにでも店に……。


 ??「花ちゃん、お待たせ」
 女の子「お姉さん!!」


 と、後ろから涼やかな声音が聞こえ、俺たちは揃って振り返る。
 いつの間にか、髪をお団子に結いあげて華やかな着物を着た女の人が立っていた。


 仁乃「この人が、さっきのお姉さん?」
 女の子「うん」
 お姉さん「ごめんね花ちゃん。一郎くん、飴細工に夢中でお店から離れられないのよ」
女の子「えぇ……」


 お姉さん「だから、花ちゃんにも一緒についてもらっていいかなあ」
 女の子「うん、分かった!」

 睦彦「……」


 お姉さん「じゃあ、行きましょうか(女の子の手首をつかんで)」
 亜門「待て!」


 このまま、女の子を連れて行こうとしたお姉さんの手を、亜門がとっさに掴んだ。
 お姉さんは驚いて目を丸くし、直後薄っぺらな笑顔を貼りつけたまま口早に叫ぶ。


 お姉さん「何をしているの坊や。とっとと手を放して頂戴」
 亜門「………なぜ貴方の手の爪は赤いんですか?」
 
 お姉さんは一瞬痛いところを突かれた、という顔になり、直後ニヤリと笑った。


 お姉さん「そういうことはね、黙っていたほうがいいときもあるんだよ!」
 睦彦「……ガキ、逃げろ!!」


 お姉さんの笑顔が凶悪に歪み、人ならざる物へと変貌する。
 俺は彼女に視線を止めたまま、女の子に向かって鋭く叫んだ。

 女の子が走り出す。
 そして俺たちは、揃って剣を構えた。


 戦闘が、始まる。
 
 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.13 )
日時: 2020/08/31 17:01
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 ☆むうのおススメ本紹介・妖怪幽霊編!!☆

 むうのおススメ本を紹介するコーナー!
 学校で朝読書の時間あるけど何読めばいいのか分かんない人。
 前読んでた話が終わって、次何を読もうか迷う人へのアドバイス♪

 今回は、鬼滅や花子くんのイメージに沿って、「妖怪幽霊」が出てくる話をご紹介。
 それでは、早速始めますよ〜!



 【五年霊組 こわいもの係】全14巻
 作/床丸迷人 角川つばさ文庫


 こちらは私が小学生の時にハマり、中学生になった今でも大好きな作品。
 あさひ小学校の5年1組女子出席番号4番になった子は、5年1組前の壁を通り抜けれます。
 壁をスイっとすり抜けた先にある「霊組」で座敷童の女の子やガイコツと一緒に、学校起こる霊的な事件を解決します。

 怖いかなぁと思ったら全然怖くないし、しかも個性的なキャラがいてとっても読みやすいです。
 対象年齢は小学校中学年からですが、多分大人でも充分楽しめる作品だと思います。


 【時給六〇〇円の死神】

 作/藤まる 双葉文庫


 高校生の佐倉君はある日、同級生の花村雪希から「死神」に採用されます。
 二人が繰り広げる死神のバイトとは一体?
 5つの事件を通して主人公がどう成長していくのか、そしてラストには号泣の一冊です。


 【ふちなしのかがみ】
 作/辻村深月 

 メフィスト賞受賞の作家さんによる、ちょっと不思議な話の短編集。
 参考にしている第2話の「踊り場の花子」は、この本のタイトルを引用させていただきました。
「階段に現れる花子さん」、「こっくりさんの呪い」、「合わせ鏡の怪」、「見えない友達」。
 沢山の、ちょっと不思議で怖い話が集まっているドキドキの短編集です。
 


 【よるのばけもの】

 作/住野よる 双葉文庫


「君の膵臓を食べたい」による作家さんの青春ストーリー。
 夜にばけものになれる「僕」と、学校で嫌われているが自分に自覚がない「吉野さつき」が
 夜に出会うことから物語が始まります。
 きれいな文章の表現と、神秘的な夜を書いたストーリーが私のお気に入りです。
 


 


 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.14 )
日時: 2020/08/31 17:50
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 それでは、あにむ隊、戦闘開始します!
 健闘を祈る!!

 ****************************


 鬼へと変貌した飴屋のお姉さんは、鋭い二つの瞳で俺たち三人を眺め、形の良い鼻を鳴らす。
 剣を鞘から取り出しながら、俺は警戒を解くことなく彼女を睨みつけた。

 鬼「あら、逃げられてしまったのね。相変わらず勘の鋭い人たちだわ」
 仁乃「往生しろ鬼! 四季の呼吸・弐ノ型 幽艶の風雪!!(ビシャッ)」
 鬼「私の名前は紫苑よ。名前で呼んでくれると嬉しいのだけど」


 胡桃沢が2本の短刀で切りかかる。
 小柄だからと言って彼女を舐めてはいけない。
 数メートル離れていても、胡桃沢の斬撃は敵に余裕で届くのだ。

 瞳を斬られ、紫苑は鬱陶しそうに舌打ちをした。
 そして、手の指をパチンと鳴らす。

 瞬間、彼女の血液が薔薇の形へと変形し、俺らめがけて飛んできた。


 紫苑「血鬼術・血花の舞!!」
 亜門「水の呼吸・参の型 流々舞い!!(ブンッッ)」


 一番前にいた亜門が、とっさに技を繰り出す。
 しかし、彼の剣の振りが小さいからか、はたまた相手の攻撃が早かったからか。
 薔薇の一片が、亜門の右肩に真っ赤な花を咲かせた。

 
 亜門「う゛っ!!」
 睦彦「亜門!!」
 亜門「大丈夫、ただのかすり傷だ。……厄介な術だな」
 紫苑「あら、避けられてしまったのね」


 仁乃「相手の技こそ手強いけど、十二鬼月ほどの実力はない。押し進めて行けば勝てるよ」
 睦彦「よし、俺が鬼を引き付ける。二人は隙をついて攻撃しろ」

 胡桃沢の冷静な判断を聞き、俺は二人に小声で指示する。

 亜門「自分で不意打ちはしないのかよ」
 睦彦「やれることはやれるが成功した確率は皆無だぞ」
 亜門「チッ、仕方ない。分かった、好きにしろ」


 言葉遣いこそ乱暴だが、亜門の口調は優しかった。
 心に温かいものが溜まるのを感じながら、俺は紫苑と向き合う。
 距離を詰めて来た俺を、紫苑は面白い者でもみるかのように無邪気な笑顔で歓迎した。


 紫苑「今度はあなたが相手してくれるのね。よろしく頼むわ」
 睦彦「こちらこそ、よろしくな!」


 右足を前に出し、腰を深く下げて構えを取る。
 一旦タメを作った後、光の速さで斬撃を与える光の呼吸の基本の構えだ。


 心の中で、「せー」「のっ」とカウントダウンを始める。
 そして3拍目の「えい!」という心の中のかけ声に合わせて、俺は駆け出した。



 …………つもりだった。



 女の子「お兄ちゃん!!」


 さっき、逃がしたはずの女の子が、両目に涙をためながら路地の入口に立っていた。
 小さなその両腕は震え、おでこには脂汗がにじんでいる。

 睦彦「……お前、馬鹿、なんで帰ってきた!!」
 女の子「だって…っ。だって、お兄ちゃんたちが、死んじゃうと思って……っ」


 気遣いはありがたいが、今はそれどころじゃないんだよ。
 お前がここにいたら殺される。
 そう、俺は女の子に説明しようとして……。
 

 睦彦「……はぁ…。大丈夫だから、とっと——」
 紫苑「愚かな女の子ね。それでは、遠慮なく」

 紫苑が、鋭利な爪の生えた右手を女の子に振りかざす寸前、横にいた胡桃沢が剣を振るった。
 鬼の手首が根元からざっくりと斬れる。
 白い石づくりの床に、赤いしみがやたらと映えた。

 紫苑「痛い痛い。あなた、何するの?」
 仁乃「……どうするの、むっくん」

 胡桃沢が俺に向ける視線は、真剣そのものの色をしていた。



 睦彦「おい、お前。合図をしたら全速力で逃げろ」
 女の子「……さっき、飴屋にいったの。弟、どこにもいなくて」
 睦彦「………俺の兄ちゃんも、もうどこにもいないよ」


 俺が発した言葉の温度が低かったからだろう。
 女の子は何か言おうと口を開き、俺を見上げ、すぐに口を閉じてしまった。
 そして、俺の言葉の意味を考え、なんども呑み込んで、そして。


 女の子「……わかった」
 睦彦「いい子だ。よし、行くぞ」
 紫苑「何をしようというのかしら?」


 袴のポケットに手を突っ込み、あるものを掴んで俺はニヤリと笑う。
 ポケットから取り出したのは、手榴弾のような丸い、栓のついた入れ物だった。
 俺は、その入れ物の栓についている糸を咥えると、歯で糸を引っ張って栓を抜く。


 睦彦「全員目ぇつぶっとけ—————!!(ブンッッ)」


 
 入れ物を鬼めがけてぶん投げる。
 瞬間、中に入っていた丸い小さな粒が床にあたって割れ、白い煙があたりに充満した。
 何が起こったのか分からない紫苑は、うろたえて棒立ちになってしまう。

 睦彦「今だ、行け!!!」
 女の子「うん!!!」


 掛け声に合わせて女の子の足音が遠ざかっていく。
 紫苑は慌てて女の子に手を伸ばそうとしたが、視界のせいで手が届かない。

 俺が投げたのは、先生から渡されていた、けむり玉入りの手榴弾(仮)。
 栓を抜いて相手に投げれば、けむり玉が割れて煙が発生し、数分間足止めが出来るのだ。


 紫苑「っ。あんたたち、許さないわ!! 血鬼術………」
 亜門「くだばれ! 水の呼吸・拾の型 生生流転!!(グサッッ)」


 行動を制限され、獲物に逃げられて、怒りが収まらない紫苑は術を発動させようとしたが。
 煙をうまく利用して背後に回り込んだ亜門の一撃が、彼女の首を斬っていた。


 紫苑「あぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」


 紫苑の悲鳴と共に、彼女の体がチリへと化した。


 
 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.15 )
日時: 2020/09/01 17:13
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)


 さて、この話から、本当に書きたかった部分を書ける!!
 作者、ファイト。

 ****************************


 俺のけむり玉の攻撃をきっかけに、紫苑戦が終わった。
 飴屋にいなかったという女の子の弟がどうなったのかは、分からない。
 ただ、生きている可能性がとても少ないことだけは言える。

 失っても、失っても、いずれ立ち上がらなきゃいけない。
 どんなに苦しくても、痛くても、時間は何事もなかったかのように通り過ぎていく。
 
 途中で誰かが叫んでても、泣いてても、かまわず世界は廻っていくんだ。
 だからあの女の子が、今は辛くても、いずれ笑って話せるようになることを祈っている。


 睦彦「はぁ。終わった………」
 仁乃「お疲れ様。このあとみんな用事ある? ないなら一緒に夕飯食べに行かない?」
 睦彦「いいな! 亜門は家にでも帰ってろ。俺は胡桃沢と行く」


 ちょっと意地悪だったか?
 でもこいつと同じ場所で、隣り合って同じものを食べると思うと複雑な気分になる。
 ……別に、食べたくない訳じゃないけど。


 睦彦「おい亜門、ごめんってば。俺が悪かったよ、だから黙り込むなってば」
 亜門「(ぐらっ)」
 睦彦「お、おい、大丈夫か!? どうした?」


 さっきからずっとだんまりを決め込んでいる亜門の態度に苛立って、俺は声を荒げる。
 と、亜門の体が横にぐらりと傾いた。
 とっさに両手で彼の体を受け止める。


 亜門は、苦しそうに肩で息をして、ぐったりと俺の腕の中で目を閉じてしまった。
 さっきまでは元気だったのに、どうして突然……。


 睦彦「だ、大丈夫か? 熱っ! 凄い熱だ……どうしよう」
 仁乃「瀬戸山くんの家の場所なら知ってる。ここからそう遠くないよ」
 睦彦「分かった。案内頼む」


 額に当てた手から、彼の熱が伝わってくる。
 俺は亜門をおんぶすると、胡桃沢を先頭に、亜門の家に向かって歩き始めた。


 
 『体が弱いから、医者にほどほどにしとけって言われてんだよ!』


 前に確か、自分でそう言ってた気がする。
 ほどほどにと念を押されるほど、身体が弱いのか。
 任務に行っただけでしんどくなってしまうのか。

 
 『世の中には、才能に恵まれてない奴もいるんだよ!』


 こう言うことか。
 お前がなんであんなことを叫んだのか、ちょっとわかった気がした。
 理解すると同時に、心の中に去来する罪悪感。


 亜門「う……うん……」
 睦彦「寝とけよ、熱高いんだから。言っとくが好きでやってるわけじゃないからな」


 嘘だ。今、俺は心の底から亜門をなんとかしてあげたいと思っている。
 なのに口から出た言葉は正反対で、思えば俺は彼に本音を言ったことがあっただろうか?

 情けない。本当に、カッコ悪い。
 自分が嫌になる。嫌われても仕方ないと、そう思ってしまう。



 亜門「…………刻羽」
 睦彦「なんだ?」
 亜門「どうしたら、お前みたいになれるのか、教えてほしい」


 亜門が俺を大嫌いだといった理由はつまり。
 彼は俺に憧れていたのだ。
 彼にとって、俺の存在は目標でありライバルで、実力のある人に見えたから疎ましく思った。
 
 だから、「お前は凄いな」という手紙をよこした。
 だから、どうやっても俺みたいになれないことを悔やんで俺を殴った。
 生まれつき弱い体でも、俺みたいになれることを願っていた。


 睦彦「俺は、どうやったらお前みたいになれるのか、教えてほしい」


 お前が俺になりたいと思うように、俺もお前になりたい。


 俺がお前にとって大きな存在でごめん。
 でも俺は、亜門みたいに丁寧に剣を振れないし、亜門みたいに体も弱くない。
 お前が何を考えていたのかもっと早く分かれば、無駄な時間を使わなくて済んだのに。
 
 もしお前と俺が同じ立場にあったら、最初から仲良くすることが出来たのかな。
 それとも、人生には谷が必要だよってことで済ませれば、全部よく思えたりするのだろうか。



 亜門「……お前は、僕みたいにならなくていいよ」
 睦彦「じゃあ言わせてもらうけど、お前も俺みたいにならなくていい」
 亜門「……ちょっと走っただけで熱が出る体なんか嫌だ」
 睦彦「俺も、雑で天邪鬼で虚勢張って目立ってる性格が嫌だ」


 睦彦「ああもう、話が平行線で進まねえ」
 仁乃「むっくんはむっくんで、瀬戸山くんは瀬戸山くん。これで完了でしょ」
 亜門「……そんな、あっさり……」


 仁乃「だって、ありのままの自分って、素敵じゃない? 例えば、むっくんの不意打ち苦手なところも、瀬戸山くんの直情径行も、見方を変えれば長所になるんだから」


 胡桃沢は、至極当たり前のような口調でそう言って、「ね?」とニッコリと笑った。
 俺が困った時、お前の言葉にいつも救われている。

 睦彦「いつもありがとな、胡桃沢」
 仁乃「友達だもん。お互い様でしょ。悲しみも嬉しみも分け合わなきゃ損だよ」
 睦彦「……あ、ああ、友達。友達な!」


 亜門「……なんで、そんなに挙動不審なんだよ……。分かりやすい奴だな」
 仁乃「ん? むっくんは友達のままの関係が嫌なの? え、ってことはむっくん、さては……」
 睦彦「ち・が・う!! 揃っておちょくるのはやめろ!!」


 前に、胡桃沢から亜門の話を聞いたとき、彼女はこう言った。
「瀬戸山くんは、むっくんが大好きだよ」と。
 その時は、なんでそんなことを感じたのかよく分からなかったけど、今は理解できる。


 だって、俺もこいつのことが好きだから。
 だから、俺はニッコリ笑って、俺なりの「大好き」を伝える。


 睦彦「………やっぱりお前は、嫌いだよ」





 ****************************


 〈有為side〉

 有為「けっこう、亜門さんと上手く言ってるじゃないですか。でも……ああ、なんですね」
 睦彦「ああ、亜門はもういないよ」


 睦彦くんは、何度、その言葉を飲み込んで理解したんだろう。
 すらすらと言葉を並べた彼をみて、ボクはつい泣きそうになってしまう。


 有為「……亜門さんは、睦彦くんにとってどんな存在だったんですか?」
 睦彦「お前、そりゃあ……大っ嫌いだよ。ずっとずっと、大っ嫌いな人だったよ」

 そう言う彼の表情はイキイキとしていて。
 彼と亜門さんの中では、「嫌い」という言葉こそがお互いを支え合うものだったんだなと思う。
 

 睦彦「もうそろそろ、この話も終わるけど、宵宮は続きが待ちきれないみたいだな」
 有為「茶化さないでください。いいところで話を終わらせるからいけないんだ」
 睦彦「まあまあ。分かった。……でも、いっこだけ俺と約束な」


 有為「なんでしょう?」
 睦彦「俺が話してる途中にもし泣いてしまったら、からかわないでくれよ」


 やっぱり、睦彦くんはずるい。
 そんなに寂しそうな顔で言われたら、断るなんてできるわけないじゃないか。


 有為「把握しました。涙で前が見えなくならないでくださいね」
 睦彦「フラグ立てるのやめろよオイ。よし、それからの話を始めるぞ」



 亜門さんの命日まで、話の中ではあと2日だ。

 
 
 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.16 )
日時: 2020/09/01 17:52
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)


 今日は頑張って第1話完結させよう。
 よし、全集中。

 ****************************


 亜門の熱は、あれからずっと下がらない。
 俺は時間がある限り、胡桃沢と足しげく彼の家にお見舞いに行った。
 そして今日も、俺は彼の家の一室で亜門と向かい合っている。


 亜門「なんだよ、また来たのかよ。風邪うつっても知らないからな」
 睦彦「俺今まで風邪ひいたことないんだ」
 亜門「……なんとかは風邪ひかないってな」
 
 おい、俺のことを今遠回しに馬鹿って言ったよな?
 悪かったな馬鹿で。そーだよ俺は馬鹿だよ!
 
 頭から布団を被った亜門の顔は、昨日よりも火照っていてかなりしんどそうだった。
 時折ゴホゴホとせき込んだりもした。
 食欲がないと言って、食事もとってないらしく、彼はだんだん痩せて来ていた。

 少し触っただけでも崩れそうなほど細い腕を見て、俺は急に怖くなった。
 親戚も母さんも、親父も兄ちゃんも、俺の周りの人はみんな俺を置いていく。
 
 睦彦「………いなくなったりとか、しないよな?」
 亜門「何言ってんだお前。お前に心配されるほどヤワじゃないよ」
 睦彦「………だ、だよな。なんか、ごめんな」

 でも、なんでだろう。さっきからずっと胸が痛いのはなんでだろう。
 早く良くなってほしいと思う。
 また胡桃沢を入れた三人で、一緒に仕事をしたいと思う。
 
 できるかな?
 あれ、なんで疑ってるんだ俺は。治ったらできるじゃんか。あれ、可笑しいな俺。


 亜門「ごめんな、刻羽。心配かけて」
 睦彦「ああいや、俺の方こそ、さっきも……その前も、お前に迷惑かけて、……ごめん」

 本当はずっとずっと謝りたかった。
 今までごめんって、仲良くしようって、たったその一言がどうしても言えなくて。
 
 相手には相手の事情があって、自分がどうこうできるわけじゃないけど。
 俺も自分勝手な理由で相手を傷つけてごめんって、ずっと伝えたかった。


 ああ、やっと……。
 一年もかかってしまうなんて、ほんとうに馬鹿だな、俺って。


 亜門「……僕もごめん。いきなり殴って。痛かっただろ? ……本当に悪かったよ」
 睦彦「ああ、すげー痛かったよ」
 亜門「……やっぱり」
 睦彦「だから、殴ってくれてありがとう」


 俺がお礼を言うとは思ってなかったのだろう。
 亜門がびっくりしたように顔を上げ、俺の顔をまじまじと見つめた。


 睦彦「だって、実際あのことがなければ、俺は一生お前と話さなかったと思うし」
 亜門「……ほんと、お前は嫌いだ」
 睦彦「知ってる」


 目をそらしてそう呟く。
 と、不意に肩に重い感触を感じる。
 慌てて顔を上げると、布団から這い上がった亜門が、俺の背中に腕を回していた。


 睦彦「おい、離れろよ。ちょっと、恥ずかしいんだけど」
 亜門「………っ」
 睦彦「ああもう、ほんとーに仕方ないなぁ!」


 何泣いてんだよ、馬鹿。

 めんどくさそうにそういうと、俺は亜門の長い髪に手を伸ばす。
 癖のないその髪を手で梳き、優しく彼の頭をなでる。


 睦彦「おーきなおやまのこうさぎは〜。なーぜにお目目が赤うござるー♪」
 亜門「音痴」
 睦彦「うるさい。 おやまのー木の実を食べたとてー♪ そーれでお目目が赤うござるー♪」


 小さいころ、この子守唄を歌いながら、母さんは俺をあやしていたらしい。
 俺は男だし、腕の中のこいつは赤ん坊でもなんでもないけど、この歌を歌おう。
 

 睦彦「ごめんな、亜門。そして、ありがとな。好きだよ」
 亜門「馬鹿やろ……僕も、本当は、お前の事、ずっと………っ」
 睦彦「知ってるよ」

 
 大きなお山の子ウサギより、目をはらした亜門が俺の背中に回した腕にさらに力を籠める。
 あったかいなと、ただそれだけを思った。


 俺は彼が泣き終わるまで、ずっと彼の頭をなで続けていた。
 泣き止むと、亜門は少し笑った。


 ****************************



 睦彦「じゃあ、そろそろ帰る。風邪、ちゃんと治せよ」
 亜門「ふん」


 和室のふすまに手をかけて振り返る。
 亜門は布団の中に入ったまま、視線も合わせずに鼻を鳴らした。


 可愛げのない奴だ。
 まあそれが、この瀬戸山亜門という人間なのだけど。
 
 俺たちは、ちゃんと友達になれただろうか。
 少し遠回りをしすぎたけれど、行きつくべき場所に辿り着けただろうか。
 それともまだ、道の途中なのかな。

 それでもいい。また、ゆっくりと進めばいい。
 また、今度会った時に、笑って話しかけよう。


 亜門「刻羽。ありがと」


 部屋から出る寸前、布団の中から聞こえた彼の言葉を反芻する。
 今日に限って「またな」がなかった理由を、俺はここで分かったら良かったのだろうか。
 分かったとして、その理由が正しいのかと、俺はちゃんと彼に聞けただろうか。


 睦彦「じゃあな、亜門。また明日」


 また明日。
 この言葉を聞いたとき、亜門は何を感じたんだろう。


 今日、彼が生きててくれる。
 それだけで、明日もきっと生きててくれると思ってしまうのは悪いことなのだろうか。
 明日、彼が生きている確証は、どこにもないのに。


 
 

 
 
 

 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.17 )
日時: 2020/09/01 18:45
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 亜門が死んだ。
 そう書かれた手紙を鴉から受け取った俺は、手紙をぐちゃぐちゃに破いて捨てた。
 そして、地面を思いっきり右足で踏んづけた。

 そうでもしないと気持ちが整理できそうもなくて、だからと言って何かできるわけでもなく。
 ただ、胸の中に大きな黒い靄が、ずっと巣食って一向に出てこなかった。


 また明日なんて、来なかった。
 彼と一緒に笑って話せる未来は、来なかった。
 望んでいた未来は、もうない。
 
 俺は甘えていた。俺は間違えてしまった。
 昨日生きていた人は、今日も生きているのだと勝手に思い込んでしまっていた。
 また、会えるんだと、そう信じ込んでしまっていた。


 睦彦「ふざけんな、ふざけんな、ふざけんな、ふざけんな、ふざけんな!!」


 何が友達だ、何がありがとうだ。何がヤワじゃないだ。
 結局こうなった。結局お前は俺の前から居なくなった。何が心配するなだ馬鹿。
 お前が死んでしまったら、残された俺はどうしろって言うんだ。


 葬式に行く前に食べた朝食も八割ほど戻してしまった。
 俺が今こうやって苦しんでるのも、泣きたいのも、後悔してるのも全部お前のせい。
 全部全部お前のせい。お前のせい。


 お前なんか、大っ嫌いだ。


 ****************************


 葬式会場の亜門の家で、お坊さんと一緒にお経を読み上げる。
 俺の隣に座る胡桃沢は終始泣いていて、俺は余計に自分が泣けないことが悪いと思った。

 納骨する時に、棺に入れられた亜門を見た。
 沢山の花に囲まれて、胸の前で手を組んだ彼はとてもきれいで。
 墓の中に入れられる場面でも、涙は一滴も流れなかった。


 仁乃「我慢してるの?」
 睦彦「別に」


 震える声で胡桃沢が問いかけて来たが、俺はなんてこともないような調子で言った。
 本当は、辛いし苦しいという言葉では到底表せないような複雑な気持ちだった。
 今すぐに心の中身を全部吐き出したかった。


 でも、出来なかった。
 代わりに、線香をあげるときに感極まって手が止まってしまう胡桃沢の右手を、そっと握った。
 

 亜門は今、空で俺のことを憶病だと思っているのだろうか。
 そう思われても別にしょうがない。
 泣けることなら全てを洗いざらいに流したいのに、なぜ。


 こんなことになるなら、お前になんか合わなければよかった。
 こんなことになるなら、永遠に嫌われたままで良かった。
 

 でも、あの時お前に抱き着かれて嬉しかった。
 お前と一緒に任務に行けてよかった。お前に殴られてよかった。
 お前の同期が俺で良かった。お前にとって大きな存在になれてよかった。

 
 ——お前の友達になれて、よかった。



 ……そう思うのに、なんで。
 いつもそうだ。俺は肝心な時に、本音を言えない。


 ただ、汗ばかりが体中から流れるばかりで。
 それでも葬式に参列した人たちは、そんな俺を見て何も言わなかった。
 

 
 ****************************


 全てのスケジュールが終わって、放心しながら瀬戸山家を胡桃沢と一緒に出る。
 正門の前で、人々を見送っている男の人と目が合う。
 確か彼は、亜門の育手だったはずだ。


 先生「君が、刻羽睦彦くんだね。ご参列頂きありがとう」
 睦彦「………どうも」


 一番苦しいだろうに、先生が俺に向けた笑顔はとっても優しかった。
 そんな彼にどんな態度を取ればいいのか分からず、俺はゆるゆると下を向く。

 彼女なりの励ましだろう。
 胡桃沢が、さっき俺がしたように、そっと俺の右手を握った。


 先生「あの子はもともと体が弱くてね。鬼殺隊に入隊するのは諦めなさいと言ったんだけどね」
 仁乃「……なんで、入隊を?」
 先生「頑張り屋さんだったし、負けん気も強かったからね」

 確かにと俺は思った。


 先生「選別の後、家に帰ってくるなり神妙な顔をするもんだから、どうしたのか聞いてみたら」
 睦彦「……すみません」
 先生「いいや、君は何も悪くない。ただ、亜門も悪いことをしたと思ったんだろう」

 先生「『どうしたら仲良くなれると思う?』って、私に何回も聞いて来たんだよ」
 睦彦「そんな、バカな」

 先生「本当だ。答えを教えなかったから、自分で模索して。そしたらある日、『やった!』って」
 睦彦「……喜んでました?」
 先生「うん。『友達になれた』って」


 ………友達になれた。
 やばい、ダメだ。抑えて来たものが零れそうになる。


 先生「あれからずっと、夕食のたんびに『刻羽が』『刻羽が』ってうるさくてね」
 仁乃「良かった……」
 先生「だから、刻羽くん。亜門と仲良くしてくれて、本当にありがとう」


 ………もう、ダメだった。抑えきれなかった。
 握られていない左手が震える。両目から熱い水滴が零れだす。


 亜門と、友達になることができたのに。
 友達だって、そんなに喜んでくれたというのに。
 昨日、やっと本音を言えたというのに。



 彼には、もう会えない。




 睦彦「…………うあ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
 仁乃「………ふっ。ふ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」


 
 涙が溢れて溢れて、一向に止まらない。視界がぼやけて、目の奥がちらつく。
 でも、心の中にいた黒い靄は、もういなかった。

 俺は亜門が好きだ。ずっとずっと、ずっと好きだ。大好きだ。
 また一緒に会いたかった。また一緒に笑いたかった。 
 また一緒に仕事して、また一緒に馬鹿話をして、また「刻羽」って呼んでほしかった。

 

 でも、もう「また」はない。



 だから、しっかりと、自分の記憶に焼き付けて置こう。
 そして彼の話を語るときのために、また彼のことを思い出そう。
 
 瀬戸山亜門って言う、バカで不愛想で自分勝手で直情径行な奴がいたって。
 そいつは、俺のことをずっと嫌いだったって。
 そう、笑って彼の話をしよう。


 だから今は、思いっきり泣かせてくれ。
 瀬戸山亜門、お前は俺にとって、大切な同期で、ライバルで、友達で、大っ嫌いな人間だよ。
 

 ☆第1話 END☆

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.18 )
日時: 2020/09/02 16:32
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 こんな噂、知ってますか?
 かもめ学園に伝わる【8番目】の怪異の話。

 美術室前のB階段、その反対側にある理科室前のA階段。
 そこに現れる花子さんの命令には、絶対に逆らってはいけません。

 もしも、逆らってしまったら………。
 階段の中に閉じ込められて、永遠に出られなくなるでしょう。
 そして、誰にも見つけられず、階段の中で一生を終えることになってしまうのです。

 

 ——こんな噂、知ってますか? 七不思議が8番目、「無限階段」。


 隠された七不思議8番目を知ると、不幸が訪れる。
 
 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.19 )
日時: 2020/10/25 09:04
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 第2話突入でーす!
 花子くんファンの皆さん、大変お待たせしました!!

 ****************************

 〈寧々side〉


 今日は、夏休みだけど登校日で、私は朝から学園の教室に居る。
 授業と言っても、課題を出したり、夏休みの過ごし方を習ったりするだけのもの。
 だから午前中で授業は終わる。

 今日は有為ちゃんに大正時代へ転移させてもらえるすっごく嬉しい日。
 授業が終わったら超特急で女子トイレへ行って、花子くんや光くんたちと一緒に出発。
 ああ、考えただけでもワクワクする!!


 葵「寧々ちゃん! ニコニコしてるけど、どうしたの?」
 寧々「葵〜。今日、大正時代に行くの。葵も一緒に行かない?」
 葵「ほんと? 良かったら私も一緒に行きたいな」

 茜「アオちゃんが行くなら僕も行くよ!」
 寧々「え、でも1番のお仕事とかは……」
 茜「ミライとカコに任せておけば大丈夫!」


 そうそう、茜くんは七不思議1番なのよね。
 この前の無惨戦では、時間を止めたり大活躍で、葵もちょっとは見直したんじゃないかしら。
 だって、60点って言ってたし。

 
 
 キーンコーンカーンコーン


 寧々「あ、もうHRの時間! じゃあ二人とも先行ってて!」
 茜「八尋さんどこに行くの?」
 寧々「光くんと先輩たち誘ってくる」
 葵「行ってらっしゃーい〜」


 私は慌てて教室を出る。
 葵がのんびり笑って見送ってくれた。流石親友、頼りになる。


 そして頼りになる人はもう一人。
 渡り廊下を渡って、中等部の校舎に足を踏み入れる。
 昇降口横の階段を3階までのぼって、突き当りにある教室の扉をガラッと開けた。


 
 土籠先生「はいじゃあ、あとはHRして終わりだから、早めに準備してくださいねー」
 寧々「(ひょこっ)」
 光「(あ、先輩!)」


 扉から顔をのぞかせると、教室の後ろの方で友達と喋っていた光くんが即座に気づく。
 ちょっとはにかんで、嬉しそうに駆け寄ってくれる彼に、私もにっこりとほほ笑んだ。


 光「お久しぶりっす先輩。先輩から用事なんて、珍しいっすね!」
 寧々「えっと、今日大正時代に行くの。源センパイと一緒にどう?」
 光「そりゃあ行きますよ。楽しみですね!」

 光くん、待ちきれないと言うようにそわそわしてる。
 その様子が餌をまつ子犬みたいで、とってもかわいい。

 
 光「じゃあ放課後、トイレで待ち合わせしましょう」
 寧々「うん、分かったわ。花子くんにも伝えておくわね」


 廊下でひそひそと秘密の会話をする。
 話し終わると、私はまた中等部の校舎を出て、今度は高等部の生徒会室へダッシュ!


 先生「八尋さん、廊下は走らなーい!!」
 寧々「すみませええええええええんん!!」


 廊下を走って走って、ミサキ階段がある2階の美術室前のB階段の4段目を踏……まずに。
 私は突き当りの生徒会室まで一目散にかけた。
 よかった、何も起きなくて。また人形みたいにされたらと思うと怖い。


(ガラッ)


 メイ「じゃああとは、私資料まとめておきますねー」
 輝「よろしく。じゃあまた放課後。(ガラッ)。あ、八尋さん」


 キャッ、源センパイ今日もカッコイイっ!
 生徒会室でシジマさんと打ち合わせしていた先輩は、生徒会室を出ると私にイケメンスマイル。
 はぁ〜〜やっぱりイケメンね……。


 輝「どうしたの? 何か用? また7番にイジワルされたのかな」
 寧々「た、確かに毎回思わせぶりなことをされたり、からかわれてはいますけど…じゃなくて!」
 輝「おや、違うのか。いつでも成敗はできるからね(ニコッ)」


 寧々「えっと、大正時代に行くんです。一緒にどうですか?」
 輝「うん、今日は早めに仕事も終わったし、光と一緒に行けると思うよ」
 寧々「ホ、本当ですか? ありがとうございますっ」

 夢みたい、源センパイとまた一緒に大正時代に行けるなんて。
 みんな誤解してるかもしれないけれど、私の本命は花子くんじゃなくて先輩なんだから!


 (花子「大声で言われるとショックなんだケド……」)


 花子くんのこと、別に嫌いってわけじゃないわ。
 だけど、会うたびに「大根」って言ったり、からかったり、思わせぶりなことするし。
 身長は私よりちょっと低いし、あまりタイプじゃないし。


 (花子「タイプじゃないって、そんなきっぱり言わなくてもいいジャン……」)


 あくまで花子くんとの関係は助手! 光くんに関してもただの後輩。
 私が花子くんと縁を結んだのは、恋愛とはまったく違うことなんだから!
 ……あっちは、色々言ってるけど、私は花子くんのことなんとも……。




 花子『俺からのおまじない♪』




 寧々「あああああああああああああああああああああああっ!!! ///」



 いらないこと考えちゃった! だめ、あれはダメよ。
 あれはもうごみ箱に捨てる! あとあの告白の木も一緒に捨てる!!


 だって花子くんってばドSでスケベでエロでエッチで、まあちょっとカッコイイけど……。
 絶っっっっっっっっっ対にタイプじゃないんだからぁ!!
 私ったら何一人で赤くなってるのよ馬鹿……。

 もう、この話終わり!!
 もう時間もないし、とっとと七峰先輩の所に行って今日行けるか聞いてくるんだからね!!



 ネクスト→次は花子くんsideでーす。お楽しみに♪

 


 

 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.20 )
日時: 2020/09/03 17:24
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)


LINEでshimejiを使ってるときに考え付いたネタ

 Q1.□に当てはまる言葉を自由に答えなさい。


 A「□□□□だよ」
 B「うん!」


 A、花子くんキャラに答えてもらった

 花子「【ヤシロは大根足】」
 寧々「【源センパイイケメン】」
 葵「【うーん10点♪】
 輝「【7番は悪霊】」

 茜「【アオちゃん大好き】」
 光「【今からお前を祓う】」
 
 ミツバ「【僕はかわいい】」
 桜「【夏彦はチャラ男】」
 夏彦「【愛の試練】」
 つかさ「【あまねはオモチャ】」

 ****************************


 〈花子side〉


 花子「ほら、どうしたの? それとももう負けを認めちゃう?」
 もっけ「負けたくはない」「負けるの嫌い」「やむなしやむなし」
 花子「じゃあ早くしてよ」


 俺は、事件がなにもなくて仕事がオフのときはよく、もっけと花札をしている。
 今日も旧校舎三階の女子トイレで、もっけと一緒に遊んでいるんだケド。
 もっけってば、さっきからなかなか手番を行わないんだよね。

 いい加減、さっさとしてほしいな。
 だってもうすぐヤシロと少年が来る時間だし、二人を思いっきりからかってみたいし。

 それに今日の午後は、確か宵宮に召喚してもらえる日だって聞いた。
 それなら、早めにヤシロにトイレを押し付けて…ああいや、手伝ってもらえばいっか。
 

 花子「ねえ、ちょっと聞いてる?」
 もっけ「ちょっと待て」「もうちょっと待って」「うむうむ」
 花子「早くしてって言ったよねぇ?」


 もっけ「……降参だ」「我々やっぱ負けた」「もう帰る」
 花子「やっぱり俺が勝ったじゃん」


 しおしおともっけがトイレから出て行くのを見送って、大きなため息をつく。
 まだ時間が残ってるな。これからどうしよっか?
 

 そう言えば竈門たちどうしてるかな?
 また我妻がギャーギャー言ってるのかな。
 刻羽は胡桃沢と上手く行ってそうでなによりだ。
 まあほぼ、俺がくっつけたものだケド。

 
 

 〜タタタタタッ〜


 軽快な足音が聞こえて、ふとトイレの入り口に視線を移す。
 ヤシロが慌ただしそうに向こうから駆けてくるのが見えた。


 花子「あ、ヤシロ! そんなに慌ててどーしたの? そんなに俺に会いかったの?」
 寧々「あ、花子くんっ、午後は大正時代!」
 花子「えっ、ちょ、ちょっとヤシロ!?」


 俺のからかいをさらっとスルーし、ヤシロは凄い早口でそう言うと、廊下の奥に消えた。
 説明になっていない答えに、苦笑いが漏れる。
 

 大正時代へ行くのは、俺とヤシロと少年だけでよかったっけ?
 彼女のことだから、きっと少年のお兄ちゃんまで呼んじゃったりとか、ないよね?
 あの人俺を倒す気満々だし、笑顔がすごい怖いから嫌なんだよね……。

 放送室メンバーも来るカモ。
 七峰は一応悪役だけど頼りになる(敵だけど)し、日向もまぁチャラいけど害はないし……。
 でも、つかさももしかしたら一緒に行く?


 花子「(『来ないで』なんて言えないし……)」


 つかさとは色々あって、俺はちょっとあの子と話すのは気まずい。
 でも、大正時代では一緒に戦ったし、実際強かったし、うーん。
 

 ま、いいや。難しい問題はまた後で解けばいい。
 だから、今はゆっくり、二人を待つことに専念しないとね。



 ーーーーーーーーーーーーーーー




 …………おかしい。
 あれから15分が経った。流石にHRはもう終わってると思うし、今日は午前中授業。
 来ないってわけ、ないよね?

 もう少し、待ってみようか。





 −−−−−−−−−−−−−−−−




 時間が、ゆっくり過ぎて行った。
 30分経っても、1時間経っても、ヤシロたちは来ない。
 何かあったんだろうか?


 七不思議がいて、彼らを凶暴化させるメンバーもいること学園のことだ。
 霊的な事件に巻き込まれることも少なくない。

 
 花子「…………世話が焼ける助手だなぁ」


 仕方ない、ちょっと調べてこよう。
 だって俺は学年七不思議のリーダー・トイレの花子さんだからね。
 それに、俺の大事な助手が困ってたら、助けるのが当たり前。

 そう改めて決意を固めると、俺は女子トイレを駆けだした。
 待ってて、すぐに助けに行くから。だから泣いちゃダメだよ?

 宛てはある。最近、学園である噂が流れているのを耳にした。
 理科室前のA階段。
 そこに行けば多分、探している答えが、きっと見つかるはずだ。


 ネクスト→次回、放送室メンバーside。彼らの仕業なのか果たして? お楽しみに。
 
 


 
   

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.21 )
日時: 2020/09/04 17:55
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 〈つかさside〉


 【放送室】


 つかさ「ねー。ねえねえ桜—。ねえー」
 桜「重い。うるさい。離れなさい」
 つかさ「ねえー。ねえー。暇だよぉー。遊んでよぉー」
 桜「無理」


 桜ったら全然つるんでくれない。
 ずっと七不思議についてびっしり書かれた本片手に、上の空。
 背中に乗ってる俺に構わず、桜は読書に夢中。

 ちぇ、つまんないの。
 横ではミツバが椅子に腰かけて寝てる。
 寝てるとこ、カワイイ。ホッペ、ツンしてみよーかな。


 つかさ「(ツン!)」
 ミツバ「どすぺすぽすっ!!?」


 あは、ホッペめっちゃぷにぷにしてるー!
 凄い凄い、弾力? すっごーい。
 ヤバいこれ止まんない。どうしよ。

 ちゅうどくせい、だっけ? すごい。
 ハマっちゃう。ツンツン。
 あは、面白い。ツンツンツン。


 ツンツンしまくっていると、ミツバが肩を震わせてうつむく。
 あれ、泣いちゃった? 俺、なんか悪いことしたっけ?
 んー、頭悪いからよくわかんないや。桜だったら一発でわかるのかもしれないけどね。


 つかさ「(ツンツンツンツンツン)面白—い」
 ミツバ「黙れクソダササイコパスっ!!!」

 とうとう、我慢の限界に達したのか、ミツバが椅子から立ち上がって人差し指で俺を指す。
 両目に涙をためながら、ミツバはキーキー喚く。


 つかさ「? なに泣いてるの?」
 ミツバ「しつこいってば!! ずぅぅーっとホッペをツンツンツンツンしやがって!」



 つかさ「…………食べたい」
 ミツバ「何をっ!!?」
 つかさ「ミツバのホッペ、ぷにぷにのおまんじゅうみたい」
 ミツバ「お饅頭みたいで悪かったね! フンッッ」


 ただ思ったことを言っただけなのに、余計に彼を怒らせちゃったみたい。
 助けを求めようと桜を見ると、相変わらず読書に没頭していて気付いてくれない。
 
 
 俺は桜のコト、すっごくスキなのに。
 あーつまんない。早く夏彦来てくれないかな。


 つかさ「そういえばさー、最近また違う噂はやってるらしーよ」
 ミツバ「無限階段ってヤツ? まぁ僕はそんなの興味ないけど?」
 つかさ「そうそう。ねー桜、どうする? やっちゃう?」


 っていうか、無限階段ってミサキ階段とかぶってるし、普とも被ってるよね。
 ネタ、思いつかなかったのかな?
 こーゆー七不思議って、ありなのかな?


 桜「その話は夏彦が帰ってからしたらいいわ(本をパタンと閉じて)」
 ミツバ「………」
 つかさ「夏彦遅いねー。なんかあったのかな?」


 桜「どうせ、クラスの女子生徒の連絡先聞いて回ってるんでしょう」
 ミツバ「!? 犯罪ッッ」
 つかさ「そんなにいっぱい。女のコいたら時間かかっちゃうね」
 桜「そこに意味があるのよ」
 つかさ「わっかんない」

 とまあ、こーゆー感じで放送室は平和な時間を過ごしていた。
 この場にいないからといって、夏彦のことを言いたい放題いっちゃった俺たち。
 きっとあとで、夏彦の怒号が飛んでくんだろうな。



 ネクスト→次回は寧々side。一体何が起こったのでしょうか?



 −−−−−−−


 つかさ書くの楽しかった。満足。
 
 

 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.22 )
日時: 2020/09/04 17:58
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 わーいわーい、運動会練習だやったー。…とはしゃげないタイプの作者です。
 いいのよ、足が遅くても。人間だもの。

 **************


 〈寧々side〉


 寧々「………………ど、どうしよう……!?」
 光「…………せ、先輩……どうしましょう……」

 私たちが今いるのは闇だけが支配する、広い階段の踊り場。
 目の前にまっすぐ、段の幅が狭い階段がずっと上まで続いている。
 
 普通、階段で下の階へ行くには、階段をただ降りればいい話なんだけど。
 私は一時間もこの踊り場から動けない。

 これにはちゃんと、理由があって、その理由のせいで右往左往しているのよね。


 寧々「よし、もう一回……!」


 私は気合を入れなおすと、階段の一段目に足を踏み出した。
 そのまま、目をつぶっていっきに二段目、三段目と上へあがっていく。
 さぁ、今度はちゃんと上へ…………。



 行けなかった。



 どういうわけか、上へ上へ登っていたのに、私の足は再び踊り場をしっかり踏みしめていた。
 これが「無限階段」。
 階段の中のに閉じ込められて、永遠に階段を登ることが出来ない怪異現象。


 なぜ、こんなことになってしまったのか、時間を巻き戻してもう一回考えてみよう。
 私は記憶をさかのぼらせて、回想を始めた。


 −−−−−−−−−−−−−−−−


 花子くんに「午後は大正時代!」と叫んで、私は七峰先輩のいる放送室へ向かおうとした。
 放送室へ行くには、一階の階段を駆け上がって、理科室前のA階段を登らなければいけない。
 
 西側にあるA階段の反対側にあるのが、かもめ学園七不思議2番で有名のB階段。
 あのときは、巨大なハサミに追いかけられたり、光くんが人形になったり。
 そのあとに………は、恥ずかしいので話はまた今度…。


 えーっとそれで、私は鼻歌まじりにA階段を登ってたのよね。


 寧々「♪しっあわっせはー! あるいてこーない だーからあっるいっていっくんだねー!」


 ※参照「365日のマーチ」


 最後の1段を登ろうとしたとき、不意に上の方からカンカンと靴音が聞こえて来たの。
 先生……ではない。
 だって先生は、いつもスリッパや上履きを履いているもの。

 生徒にしても、学校指定の上履きを履くし。
 靴ってことは土足? 先生たちに見つかるのも構わない人がいるのね、なんて思って。




 —ー私は「そのヒト」と、ばったり視線を合わせてしまった。



 そのコは、私と同じかちょっと下。中学3年生くらいの身長の子だった。
 一言で言い表すなら、古風。
 今時どこを見ても、こんな格好をした人はきっといないだろう。

 白いシャツに、真っ赤な肩ひも付きのスカート。
 髪型はおかっぱで、手も足も異様に白い。


 そう、典型的な「トイレの花子さん」そっくりの外見を、その女の子はしていたのだ。
 私は思わず一歩後ずさりをする。

 
 寧々「(え、っと……これってどういう……)」
 女の子「ねぇ」

 女の子は、私と反対にサラッと距離を詰めてきて、話しかけて来た。
 くりくりした瞳が特徴の、可愛い女の子だった。
 でも、彼女と対面した私は、ゾッと背中に悪寒が走った。

 寧々「え、えっと、何か、用、ですか?」
 女の子「ねえ、私のお願いを、聞いて欲しいの。いい?」
 寧々「お、お願い……って」


 私の返事を肯定だと思ったのか、女の子が満足そうに喉を鳴らす。
 女の子は右手の人差し指を口元に当てて、にやりと—そう、にやりと笑った。


 女の子「あなたに、今から死んでもらいたいの」


 ————え?
 
 
 何を言われたのか、分からなかった。
 この子は何を言っているのだろうか。
 私が目を見開くと、その態度が気に入らなかったのか、女の子の双眸が猫のように細くなる。


 女の子「私の頼みごとを聞けないの?」
 寧々「…………きっ、聞けるわけないじゃないッ」

 やっとのことで、私はそう言った。
 恐怖で目じりに涙がたまり、足がすくむ。
 

(お願い、誰か助けに来て。お願いっ!)



 女の子「お話を聞く気がない人には、刑を受けてもらわなきゃいけないね」
 寧々「…………え!?」



 女の子は、またにやりと笑った。



 瞬間、両足の下の地面がくずれた。悲鳴も何も出ない。
 助けて!と、誰かがその手を掴んでくれることを期待して右手を宙へ浮かせたけれど。
 私の体は、深淵の闇にのまれて消えて行った。




 −−−−−−−−−−−−−−−−



 寧々「…………ん? な、なんで光くんまでここにいるのっ?」
 光「え、今ですか!?」


 今更の質問に、光くんが鋭く突っ込む。
 なにはともあれ、一人きりじゃなくてよかった。
 何も見えない暗闇で、知っている人と一緒にいられることが何よりも嬉しかった。


 光「俺は、先輩が誘って下さった後、いつも通りトイレに行こうとして、それで—」
 寧々「まさか、A階段を登ったの?」
 光「はい、先輩も? んで、赤いスカートの女の子が、『あなたに死んでほしい』って言って」


 なんなんだろう、あの女の子。
 対面しただけであの威圧感、きっとただの、学園に迷い込んできた幽霊とかではないわよね。

 そう言えば前に葵がこんなことを言ってた。


 葵『そうそう、こんな噂知ってる? 最近流行ってる噂でね』


 理科室前のA怪談に現れる花子さんの命令には、絶対に逆らったらいけません。
 もし、逆らってしまえば、階段の中に永遠に閉じ込められてしまう。
 そう言う噂だった気がする。


 じゃあ、あの女の子の正体は………。

 寧々「あれ、でも『階段』に現れる『花子さん』って話なら、色々と被りすぎじゃないかしら」
 光「先輩も、そう思いました? 実は俺も、ちょっと気になってたんすよね」


 私も詳しくは知らないけれど、確か何年か前、青森県の恐山で会議が開かれたんだっけ。
 そこで、「学校の怪談9つの決まり」なるものが作られて。
 確かその中で、「学校に同じ系統の怪談があってはならない」って決められたんじゃ……。


 そ、そんなことより、とにかく今はここから脱出する方法を考えなきゃ!
 約束の時間も迫ってるし、こんなところで足止めされるわけにはいかないわ。


 でも、階段を登ったら踊り場に戻されちゃうし、光くんの錫杖は攻撃力がないし……。
 これ、私たち、脱出できないんじゃ!?


 寧々「助けて、花子くん!!」
 光「花子ぉ——————!! ここから出してくれ—————!!」


 花子くんは、困った時、いつも私を助けに来てくれる。
 だから今日も、きっと、来てくれると信じてる。
 

 だって花子くんは、私の友達なんだから。

 
 



 
 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.23 )
日時: 2020/09/05 21:25
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 〈再び、寧々side〉

 
 寧々「…………花子くん、来てくれるかしら……」
 光「きっと、来てくれると思いますよ!」
 寧々「そうよね。早く、助けに来てくれるといいな(無意識に右手を床に)」


 

  ぎゅっ




  ふと、床に降ろした右手に柔らかい感触を感じる。




 寧々「…………ん?」
 夏彦「やあ、寧々ちゃん☆」
 寧々「な、なななな、な、夏彦先輩ッ!? ど、どうしてここにッ!?」


 夏彦「うーん。……愛の試練?」
 寧々「いいや、全然違うと思います……」


 私の横には、チャラ男こと日向夏彦先輩が、座っていた。
 どこにでもいるな、この人。

 どういう理由で彼がここにいるのか分からないけど、多分私たちとおんなじ理由よね。
 も、もしかして先輩、ずっと横にいたのかしら!?
 暗闇に溶け込んで見えなかったけど!!


 ただ、先輩に大変失礼だけど、あえて言わせてもらうならば……。
 夏彦先輩がいたところで、この状況に変わりはないってこと。


 寧々「えーっと、七峰先輩とか、心配してませんか? 一時間は経ってると思いますけど」
 夏彦「うーん、お嬢は俺のこと空気だと思ってるから、多分ダイジョブ」
 光「そんな理由で済ませていいんですか?」


 夏彦先輩が来て、何が変わったかと言えば、雰囲気かしら。
 永遠と続く闇にとらわれて、不安だった心がすっと軽くなる。


 夏彦「うーん、取りあえず助けが来るまで、じゃんけんでもする?」
 光「なんて能天気な……」


 そう、光くんが呆れて呟いたときだった。



 〜ひゅんひゅんひゅんひゅんひゅんひゅんひゅんひゅんひゅんひゅん〜


 あれ、この効果音、どっかで聞いたような。
 そう、私が首を傾げた直後、後ろで「ドサッッッ」という大きな音が響く。


 寧・光・夏「!?(振り向いて)」
 有為「いたたたたたたた………あ、寧々さん、お久しぶりです」
 寧々「有為ちゃん!?」


 炭治郎「いたッ。禰豆子、怪我はないか?」
 禰豆子「ムームー!!」
 伊之助「おいどこだここはァ! 勝負ゥ! 勝負ゥ!!」


 睦彦「…えらく広い所に出たが、真っ暗で何にも見えないな」
 仁乃「そうだね。ここはどこなんだろう」


 なんと、どこからともなく、かまぼこ隊が無限階段のこの場所に落ちてきちゃった!
 嬉しいのやら、悲しいのやら、どっちともつかない複雑な心境。


 炭治郎「えーっと、寧々ちゃん。ここはどこなんだ? 何でこんなところに?」
 寧々「えっと……(ピーチクパーチクチュンチュンチュン)」


 説明をすると、みんなの表情が次第に険しくなった。
 そう、夏彦先輩と同様、みんなが来てくれて凄く安心したのだけど、状況が状況だけに。
 人が増えても、何もできない。つまり、数は力なりというより、烏合の衆なのよね……。


 有為「なるほど……」
 睦彦「っていうか、宵宮おまえな、もうちょっと転移の場所コントロールできないのかよ!」
 善逸「それね!! 有為ちゃんのドジは可愛いけどちょっと迷惑なの分かる!?」

 有為「………すみません……(しゅん)」
 善・睦「あぁあぁ、可愛いなぁ馬鹿!!」


 あ、そうだ! 
 有為ちゃんは陰陽師だから、この手の話に詳しそう。
 何か分かることも、あるんじゃ………。


 有為「期待されているところ悪いけど、ボクは何も分からないよ」



 なかったぁぁぁぁぁぁ!!


 流石に現代の怪異とかは知らないわよね、だって大正時代生まれだもの、そりゃそうよ。
 ありがとう有為ちゃんゴメンね、ドン( ゜д゜)マイ!


 
 有為「でも、この場所からはとても大きい怨念が感じられます」
 伊之助「怨念? なんじゃそりゃ」
 有為「人の、負の恨みですね。これが増えると、良くないことを引き起こします」


 炭治郎「なるほど……その、トイレの花子さんの仕業、なんだよな」
 夏彦「まあ、そうなるかな。あれは怨霊と見て間違いないかもね」

 
 寧々「ん? あの、今回の件は放送室メンバーの仕業じゃないんですか?」
 光「そ、そうそう、俺もそれが気になってたんすよ」
 夏彦「悪いけど、俺らは何の関与もしてないよ」


 え!? 私はてっきり、つかさくんの仕業かと睨んでたのに、違った?
 ってことは、あの女の子は自ら好んで、私たちに危害を与えようとしているってこと!?


 寧々「そ、そんな相手に、花子くんが勝てるのかしら……」
 善逸「気が滅入ること言わないでよ、ねぇ!」


 睦彦「まあ取りあえず、今はアイツに頼るしかなさそうだ。信じて待とうぜ」
 仁乃「そうだね。最期にハッピーエンドで終われることを願おう」


 さすが、こんな状況でも睦彦くん、頼りになるなぁ。
 やっぱり、いつも鬼と戦っているかまぼこ隊は覚悟が違うわね!
 

 (夏彦「寧々ちゃん今俺見た?」)



 寧々「よし、みんな待ちましょう。花子くんが助けに来てくれることを願って!」
 一同「うん!!」



 夏彦「じゃあ、七番が来るまでじゃんけんでもしとこっか」


 至極当たり前とでもいうような様子で、夏彦先輩がのんびりと言った。
 そして、何もない空間でひたすら、私たちは永遠とじゃんけんをし続ける羽目になったのでした。
 

 
 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.24 )
日時: 2020/09/07 19:09
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

〜赤根葵によるこれまでのお話〜

 陰陽師・宵宮有為ちゃんとの約束で大正時代に行く予定だった花子隊。
 しかし、寧々ちゃんと光くん(と夏彦先輩)が噂の無限階段につかまってしまう!?
 花子くんは慌てて、二人を探しに行ったけれど、果たしてどうなるのか。


 ****************************


 〈花子side〉


 俺は、高等部2階、理科室前のA階段の前へやってきた。
 あの噂が本当なら、少年とヤシロはきっと今頃、無限階段にとらわれている。
 早く助けないと!


 よし、と決意を固めて、俺は階段に一歩足を踏みだした。
 そのとたん。



 バチィィィィィィィィィィィィィ!!!



 花子「!?」


 俺の体は階段からはじき出され、数メートル先の廊下に吹っ飛ばされた。
 目には見えない壁みたいなものがあって、階段へ行くことが出来ないのだ。
 結界、ってやつだろうか。


 花子「まじか……。これじゃあどうすれば………」
 ??「あら、来たのね」


 不意に、涼やかな声音が聞こえ、顔を上げる。
 A階段の踊り場に、一人の少女が立っていた。

 おかっぱ髪に赤いスカート。
 ………やっと、おでましか。俺は彼女を睨み返す。


 花子「俺の助手たちを返してほしいんだ。勝手なことをされては困るんだけどね」
 女の子「あら、同じ七不思議同士なのに、私と敵対したいの?」


 ………は?
 七不思議同士だって? 俺と君が? なんで?
 だって、お前はこの学園に迷い込んできた霊じゃないのか?


 女の子「学園に隠された七不思議8番目を知ると、不幸が訪れる。そんなことも知らないの?」
 花子「じゃあ、まさか君は」
 女の子「ええ」


 女の子は薄く微笑むと、胸の前に手を当てて堂々と言い張った。
 ただ、その口調からは感情が感じられない。


 女の子「七不思議が8番目、『無限階段』の八雲よ。よろしくね、七番」
 花子「? 花子ではないのか」
 女の子「あら、あなただって本名は花子ではないでしょう? まあそれはいいとして」


 女の子—もとい八雲は、おかっぱ髪を揺らすとその場で一回転した。
 無邪気な相貌が、猫のように細くなる。


 八雲「なぜ、七不思議8番が公に知られてないのか、貴方は知ってる?」
 花子「いや、全く」
 八雲「あら、リーダーなのに」


 ちょくちょく、八雲の悪意のないひとことがグサッと刺さる。



 八雲「学校の怪談9つの決まり、第四条。『学校に同じ系統の怪異があってはならない』」
 花子「つまり、ミサキ階段や俺がいるせいで、姿を現せなかったってこと?」
 八雲「ご名答」


 八雲は嬉しそうに手を叩いた。
 会話でのやりとりでは、特に危険な感じはしない。
 でも彼女は確かにヤシロたちを階段に閉じ込めた。

 やっぱり、放送室メンバーが関与しているのだろうか。


 花子「ん? じゃあなんでキミは、今ここにいるんだ」
 八雲「愚問ね。そのまんまの意味で、私を縛る対象がいなくなったからよ」
 花子「———まさか」


 俺がゴクリと息を飲むのと同時に、八雲はニヤリと笑って、背中に隠していたものを見せる。
 その掌の中には、擦傷をいくつも負い、ぐったり倒れている狐がいた。


 花子「2番!!」
 ヤコ「う゛………ッ」
 花子「お前、なんてことを!!」


 いや、この場合、事態を引き起こした放送室メンバーが悪いのか?
 でも今はそんなことどうでもいい。
 俺は白状代を八雲めがけて投げつけようとし………。



 八雲は、ふらっと姿を消した。
 その反動で、掌の2番が投げ出されて俺の横にボンッと落ちてくる。


 花子「2番!! 大丈夫!? ど、どうしよう誰か人ッ」
 ヤコ「う…ん」

 今は2番をどこか安全な所へ!
 誰か頼れる人……。
 

 1番は……だめだ、あの赤髪の少年はもう帰宅しているだろうし、
 3番は、うーん……。
 4番はあからさまに俺を嫌っているし。

 そうだ、土籠!
 あ、今は職員会議中だっけ……。


 どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう!?
 誰か、誰かいないの?



 ……………いる。
 でも、彼らが協力してくれるだろうか。
 いや、今は迷っていられない!



 花子「2番! もうちょっと辛抱して!」


 俺は2番を腕に抱えて、廊下をまっすぐに走る。
 ヤシロ、少年、もうちょっと待ってて!



 向かうは、高等部2階の放送室。
 放送室メンバーの元へ、俺は向かった。
  

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.25 )
日時: 2020/09/08 17:54
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)


 私の通っていた小学校にも七不思議がありまして。
 私実際、トイレで花子さんならぬ幽霊を見たことがあるんです。
 人が怖がるところを見るのが大好きなSの作者、今日も執筆頑張ります!

 ちなみに今回は【つか花=つかさ×花子】なので、好きな人是非楽しんでね!

 ****************************


 〈花子side〉


 放送室の扉には、立ち入り禁止と書かれた紙が貼られてある。
 ドアノブを回したが、鍵がかかっているようだ。
 仕方なく、焦る気持ちを必死に整えながら、扉を拳で叩く。



 ドンドン!!


 その大きな音に気づいたのか、中でガサゴソと言う音が聞こえる。
 よかった、人がいなかったらどうしようかと思った。
 そう、俺がほっと肩の力を抜いたの直後、扉が外れた。


 大事なことなのでもう一度言おう。
 扉が、外れた。



 バンッッ!!! という音と同時に扉が吹っ飛び、俺とほぼ同じ…ちょっと甲高い声音が響く。



 つかさ「あ、ま、ね、だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜!!!」
 花子「つかさうるさッぐえッ……」
 つかさ「あーまーねー! 久しぶりぃ〜〜ッ! うわぁぁぁぁ〜い!」


 キラキラと、そう、アイドルでも見つめるように、つかさの表情にパァッと花が咲く。
 つかさはそのまま、扉を吹っ飛ばした勢いのままに、俺の体に飛びついた。
 がしっと背中に腕を回され、ぐいぐいと力を籠められて、俺の体は前後に揺れる。


 花子「つかさ、うるS……グフッ」
 つかさ「普は俺のオモチャなんだよねー!」
 

 注意したのに全く聞かないつかさ。
 前後左右に俺の体をブンブンブンブン振り回した後に、「もーいっか」とやっと手を離した。
 歓迎してくれるのはとても嬉しいことなのだけど、性格が性格だけに疲れる……。

 え、さっきオモチャって言った?
 

 つかさ「うん♪」
 花子「一応聞くけど、好きな遊びは?」
 つかさ「うーん、普『で』遊ぶコトー」

 ………アマネデアソブコトデスッテ!?
 普『と』じゃなくて、普『で』って言ったよね?
 ぞわっと背中に良くないものが流れて、俺は一歩彼から距離を取った。

 
 花子「あ、いけない! ここに来た目的を忘れゴフッッ」
 桜「さっさと要件を言いなさい」

 ここに来た目的を忘れていた。そういおうとしたが、七峰が投げた分厚い図鑑が俺の頭上にドン!
 ちかちかと、頭上に星が瞬き、視界がぐらっと揺れた。

 桜「さっさと要件を言いなさいって言ったのだけれど」
 花子「今のはそっちが悪いよ! しかも投げたのって……」
 桜「広辞苑だけど」
 花子「サラッと言わないでサラッと!!」


 信じられないかもだけど、この七峰桜とか言う高校生。
 数百ページの広辞苑をたやすく片手で持ってぶん投げるほどの怪力。
 しかもそれが見事クリーンヒットするんだから、恐ろしい……。


 花子「じ、実は8番が暴れてて、2番が8番にやられて、それで」
 桜「ちょっと待って。もうちょっと具体的に説明して」
 花子「無限階段の怪異が七不思議8番なんだ。それで、学校の怪談の決まりに基づいて(続く)」


 これまでの経緯をかいつまんで伝えると、つかさは「ふぅん」と喉を鳴らし、七峰は首を傾げた。
 俺は腕に抱いていた2番を七峰に預けると、手当をするように頼んでみる。


 桜「分かったわ。確か放送室に救急箱があったと思うから、やってみるわね」
 花子「なんで放送室に救急箱が?」
 桜「誰かさんが本を投げられるせいで、いっつも頭から血を出してるのよ」

 いや、それ犯人君ジャン。
 あなたが日向が部屋から帰るたんびに、広辞苑だの七不思議の図鑑だのを投げてるからだよ。
 

 そーいや、今日は日向は休みなのかな?
 いつも「愛の試練」だとか、謎のエコーの言葉を吐く日向が今日に限って休み?
 

 つかさ「そーなんだよね。今日は一度もあってないかな」
 花子「……何かあったのかな」
 桜「まさか。夏彦が勝手に敵につかまることなんて…………・……………………あるわね」


 あるんだ!!?
 日向、しっかり!! これじゃあ七峰にダメ男と思われるだけだよ!


 つかさ「それで、普はなんで俺のところに来たの? 俺と遊びたいから…じゃないよね」
 花子「実は、…………ヤシロたちを救う、協力をしてほしいんだ」


 しっかりと、二人の目を見て俺は話しかける。
 おかしな話だ。敵同士なのに、協力をお願いするだなんて。

 でも今は、彼らにしか頼めないんだ。
 俺だって、彼らと協力するのはすっごく不安だけど、二人しかいないんだ。
 だから、お願い。


 つかさ「いーよ?」


 スコーンと抜けるように、つかさが言った。
 緊張感ゼロ、不安もなし。当たり前だよとでもいうような調子で。

 俺は拍子抜けして、自分とそっくりの彼を爪先から頭まで眺める。


 花子「ホ、本当に、いいの?」
 つかさ「いーよ。だって俺、普と一緒にいられるだけでラッキーだもん!」
 花子「…………確かに、いつも満面の笑顔で駆け寄ってくるよね」
 つかさ「普も、満面の笑顔で来てもいーんだケド」

 …できれば俺も満面の笑顔を作りたいんだけど、多分できるようになるのはもうちょっと先かな。
 でも、こんなにあっさりOKするなんて……。

 あ、そうだ、肝心なことを聞いてない。


 花子「今回の件は、放送室メンバーの仕業ってみていいよね」
 桜・つ「は?(ん?)」
 花子「え?」

 間抜けな返答に、思わずこっちも間抜けな返答を返してしまう。
 あれ、違うの?
 いつものように、ラジオ使って凶暴化させたりとか、してないの?


 桜「しようと思ったんだけど、生憎夏彦がいないものだから、来るまで待ってるのよ」
 つかさ「夏彦、クラス全員の女のコに連絡先交換してるんだってー」
 花子「そ、そなんだ。日向、かなりチャラいね」
 桜「あら、今頃分かったの?」


 違うみたいだ。彼らの仕業じゃないってことは、8番は元からあんな感じだってこと。
 つまりは、自ら好んで、人に危害を与えてるってことだ。
 やっぱり、そのままにしちゃダメだよね。


 俺は大きく二度頷く。やっぱり、8番は姿を現してはならない。
 依り代を壊して、大人しくさせなくちゃ。
 でも、そのためにはどうしたら………。


 その時だった。


 ??「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」



 ネクスト→悲鳴の正体は一体? 次回もお楽しみに!
 



 
 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.26 )
日時: 2020/09/08 18:31
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)


 私が花子くんで好きなカップリング↓
 花寧々・光ミツ・なつさく、つかさく、つか寧々、つかさく、つかあまetc.
 いっぱいありすぎて書けないよぉ(泣)

 ****************************


 ??「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」


 突然、部屋から聞こえてきた悲鳴にキーンと耳が鳴る。
 悲鳴の主は、かなり速いスピードで後ずさりして部屋から出ると、俺とつかさの背後に隠れる。

 ガタガタと歯を鳴らし、顔も少し青白かった。
 その人物は、桃色の髪で、同じく桃色のセーターに黄色のマフラー姿の男の子だった。


 つかさ「あ、ミツバ—。どーしたの?」
 ミツバ「どうしたのじゃないよ! 出たんだよ! 奴が!! もう嫌ッ」
 花子「出たって……なにが?」
 

 そんな説明だとよくわかんないから、もうちょっと詳しく。
 尋ねると、3番の瞳からは涙があふれ、彼はキーキー言いながら話を続ける。


 ミツバ「そ、そんなこともわかんないのッ!? この世の悪魔だよ!」
 桜「だから何なのよ」
 ミツバ「Gだよ!」

 G!?
 え、Gって言った今!?
 ほら、みんなてんでにお菓子とかを持ち寄って掃除してないからだ。


 俺でもちゃんと、トイレは掃除してるのに。
 ヤシロにやらせてるだろ! というツッコミする子は後でお仕置きね☆


 ごめん少年たち、早く行きたいんだけど今はそれどころじゃないんだ。
 多分もう飽きて、一人ジャンケンとかしてるんだろうけど、もうちょっと待って。
 奴が出たから。倒してから3人と一緒に行くから!!


 桜「じゃあ、あとはよろしく頼んだわよ」
 

 そう告げると、七峰はスタスタと廊下を歩きだす。
 俺と3番とつかさは慌てて彼女の制服の裾を引っ張って、放送室前に連れて行く。


 つかさ「待って桜!」
 ミツバ「逃げるなぁ!」
 花子「卑怯者ッ」


 桜「ちょっと、服が伸びる」
 花子「一人だけ逃げるのはやめてよ。俺だって嫌なんだから」
 ミツバ「そ、そうだ。キミは大丈夫でしょ。キミが退治してよ!」


 ミツバがそう言って指さしたのは、つかさ。
 確かにつかさなら、ウキウキと退治することが出来るだろう。
 うん、それがいい。そうしよう、もうそうしよう、決定。


 つかさ「えー俺?」
 桜「お願い。後でドーナツの詰め合わせあげるから。ね?」
 つかさ「やる!!」
 花子「はいはい俺も欲しいです! お願いします!」
 桜「あなたには、あげない」


 あぁあ……ドーナツゥ……しばしのお別れ……。
 そうだ、今度ヤシロに頼んでドーナツ差し入れしてもらお。


 とにかく、準備は整った。
 ミツバが「あ、あそこ!」と震えながら指さした場所—放送室の椅子の陰には、例のG様。
 つかさは音を立てないように、そうっと部屋を進んでいく。

 右手に、紙でつくったハリセンを構えたつかさVS、Gの戦いのゴングが鳴る。
 

 ミツバ「あ、そこそこ! お願いッ」
 つかさ「おっけー。えいや!」


 パシンッと一振り、つかさがGに向かってハリセンを振り下ろす。
 Gはすぐに動かなくなった。
 つかさはそれをティッシュにつまむとゴミ箱へin。

 ……この瞬間、この一瞬だけだけど、彼がスーパーヒーローに見えて仕方ない。

 
 つかさ「ただいまー!」
 ミツバ「あ、ありがと! ほ、ほんと怖かった……」


 ほっと一息つく3番。
 まあ、Gが得意な人なんていないだろう。

 つかさ「あのねー。虫さんね、内臓が出ててね、グチャってやったら更に潰れT」
 桜「や・め・て」
 つかさ「はーい」


 よし、Gも倒せたことだし、問題の場所へ向かうとしよう。
 遅くなってごめんねヤシロ、少年、いまから皆で行くからね。


 つかさ「じゃあさ、条件つけていい?」
 花子「え? 条件って……」
 つかさ「今回、俺は普のお願いを聞くけど、タダじゃダメってコト」


 ………まあ、仕方ないか。
 あっちにだって事情があるのに、無理やりお願いしたから。
 いいよ、条件はのむよ。でも、痛いのはなしね。


 つかさ「分かった。じゃあねえ」
 花子「うん」
 



 
 つかさ「これが終わったら、普の助手、もらってもいい?」





 ……………え?
 何と言われたのか、一瞬理解が追い付かなかった。
 もらう? ヤシロを? つかさが?


 恐る恐るつかさを見上げると、つかさはニヤリと無邪気に笑う。


 ダメだ、ダメだそんなの。
 彼のことだから、何をするか分からない。
 でも、条件を飲むと言ったのはこっちだし……。
 それでも、ヤシロをつかさにあげるなんてそんなことは出来ないし、ああでも………。







 つかさ「ま、冗談なんだけどね」







 は? 冗談!!??
 さっきのは、全部嘘ってこと? 


 つかさ「ちょっと遊んでみただけ。そんな怖い顔しないでよぉー」
 花子「え、っと……」
 つかさ「さ、いこうミツバ、桜! 普も早く早くー!」


 俺は確信した。
 やっぱりつかさは、俺のライバルであり大敵なんだと言うことを。
 そして今、その大敵と一緒に悪を滅しに行くと言うことを。


 陳腐な言葉で申し訳ないんだけど、すごいワクワクする!!
 待ってて! 俺たちがきっと助けに行くからさ。




 あと、日向は一体どこにいるんだ……(※無限階段です)。

 


 

 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.27 )
日時: 2020/09/09 18:49
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 明日が体育祭で忙しいので、今日はちょっとお話をしたいと思います。
 それでは、中3で習った英語表現法を使って、ちょっと鬼滅と花子くんやってみます。

[花子くん]

〜英語〜

 Hanako:Yashiro is daikon regs!
 Nene:No! Im not daikon regs! Im very angry!
 Kou:I think that her is not daikon regs. Nene, don’t warry.


 〜日本語〜

 花子:「ヤシロは大根足!」
 寧々:「違う! 私は大根足じゃない! もう怒った!」
 光:「俺は先輩は大根足じゃないと思いますよ。先輩、心配しなくていいっす」
 





[鬼滅]


 〜英語〜


 Tanjiro:Nezuko,how are you?
 Nezuko:mu-mu-!
 Zenitsu:Nezuko,I love you! you’re very qute!


〜日本語〜


 炭治郎:「禰豆子、大丈夫か?」
 禰豆子:「ムームー!」
 善逸:「禰豆子ちゃん大好きだよぉ! 禰豆子ちゃんはとっても可愛いね!」


 〜英語(続き)〜
 

 Mutsuhiko:Ha-ha-ha. you don’t have to tolk over it.
 Inosuke:Wat’t are you saing? I don’t knowed.
 Nino:You must here ather talks.


 〜日本語〜


 睦彦:「あはは、善逸、お前はオーバーに話さなくてもいいぜ」
 伊之助:「何言ってんだ? 俺はよく分からねえ」
 仁乃:「伊之助さんは他の話をよく聞かなきゃね」



 

 間違ってるところあったらごめんなさい。
 英語もうちょっと練習しなきゃな。


Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.28 )
日時: 2020/09/09 20:43
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 習い事終わったので書きます。
 ちょっといつもより短いかもしれないけど許してね。

 ****************************


 〈寧々side〉


 花子くん、遅いなぁ……。
 私たちはというと、すっかりもう飽きてしまって今はダラダラと過ごしている。
 時々皆でしりとりをしたり、現代ではやっている「セッサン」や「ゆびすま」を教えてあげたり。

 それでも、時間は刻々と過ぎていく。
 葵や茜くん、待たせちゃって悪いな。
 それとももう家に帰っちゃったかしら。

 
 有為「う、臼」
 炭治郎「す……す………炭焼き小屋」
 睦彦「や、や、や…? あ、やばい男」

 善逸「えーそれありなのかよ?」
 睦彦「じゃあ……やばい女」
 伊之助「男が女になっただけじゃねーか!!」


 かまぼこ隊はさっきからずっとしりとり対戦の真っ最中。
 その横では、夏彦先輩が睦彦くんに10桁の計算を出題している。

 夏彦「えーっと、589145232たす35789135は?」
 睦彦「94703658」
 夏彦「スゴッ!?」

 仁乃「おー、むっくんカッコいいー!!」
 睦彦「そ、そうか?」
 仁乃「うん! 大好き!」
 睦彦「(カァ——————ッ)」

 もう、こんなところでイチャイチャしないでよー。
 リア充いいなぁ、憧れるなぁ…。
 でもただ羨ましがるだけだと理想は現実になれないわよね。
 睦彦くんだって勇気を出して告白したんだもの、私も頑張らないと!


 秒殺でスラスラと答えを言ってのける睦彦くん。神かもしれない。
 彼は、小さいころにお父さんに叱られたときにそろばんを投げつけられたらしい(それも凄い)。
 そのそろばんを弾いて遊んでたらしく、暗算が得意なんだとか。


 いいなぁ、きっとテストでもスラスラ答えられるんだろうなぁ。
 


 仁乃「ねえ、有為ちゃん。念話とかってまたつなげたりしないの?」
 有為「念話、ですか?」
 仁乃「うん。そしたら、花子くんと念話とれないかな」


 さっきからずっとケラケラ笑って皆を眺めていた仁乃ちゃんが、ハッとして有為ちゃんに尋ねる。
 それは盲点だった、と有為ちゃんは一瞬顔を曇らせたが、直後真面目な顔で頷いた。


 有為「分かった。やってみる」
 夏彦「頑張れ有為ちゃん☆」


 有為ちゃんはすくっと立ち上がると、何やらブツブツと詠唱を始める。
 と、彼女の体からポウっと淡い光が発生し、それは輝きを強めた。


 寧々「わ、きれい」
 伊之助「俺もやりてぇ!(←出来ません)」


 一同が、見慣れてない光景に興奮する。
 そんな私たちを見て、有為ちゃんは僅かに肩をすくめる。
 

 有為「念話発動!!」



 〜ひゅんひゅんひゅんひゅんひゅんひゅんひゅんひゅん〜


 ………前から思ってたけど、効果音ってこれしかないのかしら。
 もっとこう、バーンとかビューンとか、ズバババババァァンとか、種類があってもいいのに。
 まあ、こういうゲーム音楽のような効果音も、刺激的で悪くもないけど。

 どうせなら、少女漫画とかでよくある、キラキラトーンみたいな感じの音楽とか。
 キラキラキラーッという効果音が流れると同時に、かっこいい男の人が……。
 わ、私ったら何をしてるのかしら。人の技で勝手な妄想しちゃいけないわよね。


 花子(つかさ重ッ……げふッ)
 つかさ(かたぐるま—! 高ーい!)


 有為「よかった、つながりましたね」
 夏彦「つかさ、七番と行動してるんだ? お嬢—!」


 桜(夏彦!? あなた今までどこに行ってたの?)


 ずっと姿を見せなかった夏彦先輩。
 気にしてないだろうと先輩は言ったけれど、やっぱり七峰先輩も心配してたのね。

 
 夏彦「えーっと、無限階段の中に」
 桜(は??)
 夏彦「お嬢が、そんなに俺のこと心配してくれてたなんて……これは、愛だね」
 桜(んなわけないでしょう)


 秒殺で、夏彦先輩のエコーボイスをサラッと切り捨てる七峰先輩。
 がっくりと肩を落とした夏彦先輩を、炭治郎くんが必死で慰めている。

 炭治郎「人間生きていればそう言うこともあります。元気出してください」
 夏彦「は、はい」


 それにしても、花子くんがよりによってつかさくんと行動をとるだなんて。
 一体どうして、そんな選択をしたのかしら?


 寧々「花子くん!」
 花子(ヤシロ、ゴメン遅くなって。待ってて、すぐに行くからね)
 寧々「ええ。なんで、つかさくんと一緒に?)
 花子(んーと、Gを倒した戦果で)


 ………意味が、よく分からないけれど、二人の中で少しずつ仲が深まったのかしら。
 実際大正時代では、ほんわかと暖かいオーラがあったものね。
 私と七峰先輩たちは敵だけど、一緒に話していて楽しいし。

 こういう関係も、いいのかもしれない。


 睦彦「花子! さっさと来ないと殴るぞ!」
 花子(えぇ!?)
 仁乃「むっくんの言うことは気にしないで。待ってるから!」
 睦彦「ちょっ、胡桃沢!!」


 睦彦くんは、いつも花子くんにからかわれているから、どうしてもやり返したいらしい。
 そして善逸くんは、彼女がいる睦彦くんが羨ましい。


 善逸「睦彦…どうやったら好きな子と仲良くなれる?」
 睦彦「は?」
 伊之助「あー腹減ったぁ!」


 そして、そんな中ただ一人、伊之助くんが終始お腹を空かせていたのだった。
 やっぱり、かまぼこ隊と一緒にいると楽しいな。
 事件が片付いたら、大正時代でみんなと美味しいものでも食べに行こう。約束よ。

 



 

 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.29 )
日時: 2020/09/10 18:42
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)


 運動会、終わったぁぁぁぁ!
 でも、明日授業とか最悪やぁぁぁ!
 授業なしにしてくれって先生に頼んだらクビになるらしいからごめんなさい!
 勉強も執筆もいつも通り頑張っていきます。

 ****************************

 〈花子side〉

 まさか、かまぼこ隊が来てるとは思わなかったな。
 多分、なかなか俺たちが女子トイレへ来ないんで、痺れを切らした宵宮がドジったんだろう。
 あの子、冷静なようで結構抜けてるとこあるからなー。そこが可愛いんだけど。

 なにはともあれ、俺たち(花子、つかさ、桜)は只今、8番と決闘(?)するべく階段へ移動中。
 俺の頭の上ではつかさが、ふんふんと鼻歌を歌いながら体を揺らしている。
 
 いつも抱き着かれているという七峰の苦労が、よく分かる。
 それに、つかさが歌っている歌も……。


 つかさ「ぼーくらはみんなーいきているー♪ いきーているから、いずれ死ぬー♪」
 花子「……」
 つかさ「ぼーくらはみんなーいーきているー♪ いきーているからグッチャグチャ—♪」
 花子「つかさ、怖いんだけど」


 ※参照「手のひらを太陽に」

 
 流石と言うべきなのか分からないけれど、ニコニコ笑顔でかなり不謹慎な替え歌をする彼。
 俺たちの後ろを歩いている七峰のため息が、はっきりと耳に届いた。

 
 テクテクと、廊下を歩き続け、ようやくA階段の前へ辿り着く。
 やはり、見えない壁が階段の前にあり、中へ踏み入れることは出来なかった。

 あ、ちなみに2番は、職員会議を終えた土籠に預けているからダイジョウブ。
「……まあ、お前も無理すんなよ」と、さっき忠告されたところだ。


 桜「ここが、噂のA階段ね。どうするの?」
 花子「8番も七不思議なら、依り代を壊せばいいと思うんだ。でも、先に結界を壊さないと」
 つかさ「んー。ちょっと、思いっきりパンチしてみてもいい?」


 つかさが階段の前へ行く。
 そして、見えない壁に向かって、グーに丸めた拳骨を振り下ろした。


 ボスボギャブシャッ

 
 凄い音が響いて、何もなかった空間に白い壁が現れる。
 その壁は、つかさのパンチによって亀裂ができ、破片がパラパラと落ちていた。

 花子「さ、さすが」
 つかさ「えへへー。普、なでてー!」
 花子「よしよしヾ(・ω・`)」
 つかさ「(ニコニコ)」

 つかさの頭をわしゃわしゃなで、俺たちはやっと登れるようになった階段に足を踏み入れる。
 一歩一歩と階段を登っていくと、上からペタペタという足音が聞こえて来た。


 八雲「あら、全員で来たんだ」
 花子「……8番。キミはなんのために人を危険な目にあわせるんだ?」


 八雲がヤシロたちを無限階段に閉じ込める理由は、なんなのだろうか。
 それさえ分かれば、この少女の悩みを解消できるかもしれない。


 八雲「そんなの、貴方には分からない」
 花子「言わなきゃ何も伝わらない」
 八雲「話したくない」
 花子「じゃあ、このままでいいの?」


 八雲の言葉に被せて、俺はすぐさま言葉を挟む。
 彼女は一瞬曇り顔になり、直後、なんの感情も感じさせない無表情を俺たちに向けた。


 八雲「———あなたには、これから死んでほしいの」


 ……………来た。
 無限階段へ連れて行くときに、彼女が必ず言う決まり文句だ。


 花子「嫌だ」
 八雲「———さよなら」


 瞬間、足元の地面が崩れる。
 固い床は一瞬にして深淵の穴に消え失せ、俺たちは音もなく穴の中へ落っこちた。
 暗い暗い穴の奥底に、小さな四角い紙切れが一瞬、見えたような気がした。

 それを取ろうとして手を伸ばしたのもつかの間、視界を闇が遮り、中途意識は途絶えた。


 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.30 )
日時: 2020/09/10 18:52
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

うひょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!
よーんーひゃーくーとっぱーーーー!!!!(うるさい)
500目指して次も頑張るぞぉぉおおおお!

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.31 )
日時: 2020/09/10 21:22
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 寝る前に、第1話で活躍してくれた亜門(ご冥福をお祈りいたします)の設定紹介ジャジャン!
 あと、ろくきせの「オリキャラ設定集」に誕生花と花言葉を追加したので良かったら見てね。


 瀬戸山亜門

 読み:せとやまあもん
 性別:男
 階級:壬(みずのえ)[享年12歳のため初期階級]
 身長:152㎝

 誕生日:9月27日
 誕生花:コスモス
 花言葉:調和

 血液型:A
 年齢:享年12歳(生きてれば15歳。今月で16歳)
 出身地:東京府早稲田
 座右の銘:信念岩をも通ず(何事も信じればいずれ叶うということ)
 趣味:特になし
 特技:努力すること
 好きな物:努力、仲間、睦彦、人の役に立つこと
 嫌いな物:自分の体質、睦彦、野菜、無力なこと


 呼吸:水の呼吸



 睦彦の同期。
 貧民街育ちで捨てられっ子だったところを育手に拾われ、鬼殺隊を目指す。

 自分よりも能力値が上である睦彦をねたむ。
 どうしても彼のようになれないことから、睦彦に暴言を吐いたりと距離を置いてしまう。
 本当は彼と仲良くしたいのに、つい偉そうな態度をとってしまう、素直になれないタイプ。


 秀でた才能がないため、特にこれと言った趣味や特技はない。
 しかし、努力に関しては人一倍で、負けん気が強く頑張り屋である。


 また、生まれつき体が弱く、少し運動しただけでも熱が出てしまう。
 睦彦と和解に成功した次の日、風邪をこじらせて肺炎になり、この世を去ってしまった。
 



 〈水の呼吸〉

 1水面斬り
 2水車
 3打ち潮
 4流々舞い
 5干天の慈雨
 6ねじれ渦
 7雫波紋突き
 8滝壺
 9水流飛沫・乱
 10生生流転

 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.32 )
日時: 2020/09/12 17:16
名前: 繧amp; ◆miwaoqDlgA (ID: 9Yth0wr6)

 〈花子side〉


 ———くん!

 あれ。今誰か、俺の名前を呼んだ?
 視界は暗く、その子の顔を見ることは出来なかった。
 分かったことと言えば、自分が仰向けに寝転がっているということ。
 えっと、ここはどこで、俺は何をしていたんだっけ?

 ———こくん!

 
 まただ。また、誰かが何か言っている。
 俺はゆっくりと瞼を開けた。視界はまだ暗かったが、目はしっかりと冴えていた。
 

 寧々「花子くん!」
 花子「ヤシロ!」

 俺が、なかなか起きなかったからだろう。ヤシロが今にも泣きそうな表情で、俺を見た。
 隣にはつかさと七峰がいて、俺たちの周りをかまぼこ隊が囲んでいた。


 花子「えっと、ここはどこだっけ」
 桜「8番の領域の無限階段よ。頭でも打った?」


 そうか。ここは、無限階段だ。8番の指示に逆らったから。
 しかし、何とも殺風景な場所だ。
 石造りの階段以外、何もない。なんだか、少し寂しい気分になる。そんな場所だった。

 
 炭治郎「とにかく、ここから出なきゃいけない。どうすれば出られるんだろう」
 夏彦「うーん。階段は昇り降りできないからね。そこのあたりは、七不思議様が詳しいと思うよ」
 花子「うん。依り代を壊せばいいと思うんだ」


 ここで花子くんの七不思議講座ー!
 七不思議には力のよりどころとなる「依り代」がある。
 おもちゃとかによく使われている電池と同じような感じなんだ。
 だからそれを壊してしまえば、七不思議は弱体化できるというわけ。

 え、俺の依り代は何かって? うーん秘密☆



 善逸「なるほど。でもさ、でもさ? こんな暗い場所で、探せるのかなあ」
 伊之助「あるってんならあるだろ。本当に紋逸は弱っちいな!」
 善逸「ごめんなさいね!!」



 よし、依り代を探しに行こう。
 そう決心して、俺は立ち上がったのだけど。


 ??「ここから先へは行かせないわよ」
 花子「来たね、8番」


 案の定、七不思議8番・八雲が音もなく後ろに立っていて、俺の腕を掴んでニッコリ笑う。
 その笑顔の裏には、どす黒い何かが貼りついていた。


 俺は学ランの懐から、包丁を取り出し、身を低くする。
 ヤシロたちを庇うように手を広げ、キッと八雲を睨みつけた。


 つかさ「普ー! 俺も一緒に戦いたいんだけど、いい?」
 花子「じゃあ、お願い」
 つかさ「やったああああああああ! 普ダイスキ——————!」


 つかさは俺と一緒に行動することが嬉しいらしく、ぴょんぴょんと飛び上がった。
 その拍子に腕が日向の脳天に当たり、日向が「グェッ」とうめく。


 花子「ここは俺たちが何とかする。ヤシロたちは、依り代を探して!」
 光「で、でも場所が分かんねえし………」
 睦彦「ばか。分かんねえから探すんだろうが。よし、行くぞ」


 さっき周りを見回した時に気づいた。
 この踊り場に面している、下の階に行く階段がある。
 ずっと上の階段にばかり気を取られていたけれど、下に降りて行ったら何があるのだろうか。


 俺の声に、刻羽たちが一斉に駆けだし下の階へ急ぐ。
 八雲が慌てて手を伸ばしたが、その隙をついて俺は白状代を彼女めがけて投げつけた。


 花子「蹴散らせ白状代!!」
 八雲「キャッ」

 白状代から放たれた閃光に、八雲がとっさに目をつぶる。
 そしてゆっくりと顔を上げ、彼女は斜めから俺とつかさを睨みつけた。


 八雲「…………邪魔ものが」


 そう吐き捨てるた直後、八雲の体から黒い靄が噴き出た。
 その靄は彼女の頭へ、足へ、腕へ、次々と巻き付き、シューシューと不気味な音を立てる。
 


 八雲「……………封呪・解放」


 そう彼女が呟くと同時に、黒い靄が一斉にこっちへ向かってくる。
 じりじりと、顔やら足やらにまとわりつく感触に不快感を得る。
 手で靄を追い払いたいが、靄の巻き付く力の方が強い。


 花子「うわっ!!」
 つかさ「っっっ!!」


 瞬く間に靄に手足の自由を奪われ、俺とつかさは揃って地面に倒れこんだ。
 頭上から、八雲の冷たい視線を浴びる。
 それは、怒り以外の全ての感情を失った、憎悪に満ちた表情だった。


 八雲の手が俺の顔へと伸びる。
 俺は、床に落ちた包丁の柄を歯でつかむと、身体をひねって八雲の足元へと包丁を投げつけた。
 


 そこで、俺の体力は限界になり、放った攻撃が命中したのかどうかも分からないまま、俺の意識はまた闇の中へと消えて行った。


 
 


 『………………私に近づかないで』




 どこか遠くで、必死に泣くのをこらえたような声が、聞こえた気がした。

 


 


 
 
 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.33 )
日時: 2020/09/12 17:15
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)


 あ、前の文字化けみたいな名前、私です…。
 ごめんなさい。

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.34 )
日時: 2020/09/13 21:05
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)


 ろくきせ前日譚・会話文短編集! 祝・管理人賞受賞!!
 応援してくださったみなさん、ホント—にありがとうございました!
 嬉しいです。もう終始顔がニコニコです。
 これからも頑張りますので、また「会話文短編集・ろくきせ見てないよ」って言う方はこの機会に。
 あと、この恋愛手帖も受験勉強の合間に頑張りますので、よろしくお願いします。

 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.35 )
日時: 2020/09/14 17:11
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 習熟テスト、返されたけど思ったよりひどかった。
 志望校受かるにはあと100点だってさ。ワオ。
 よし、勉強しよう! あ、無理やった私今熱あるわ。ラッキーv(‾Д‾)v イエイ

 ****************************


 〈炭治郎side〉


 花子くん達が8番(?)の七不思議(?)を相手してくれる間、俺たちは依り代(?)を探す。
 ?ばっかりで本当にごめんな皆。俺もかもめ学園のこと、よく知らないんだ。
 えーっと、というわけで俺たちは、無限階段の下の階へ下りる階段を下って行っている。


 階段を降りると、そこは学校のリノリウムの廊下だった。
 やけに年期が入っており、ところどころ埃が積もっている。
 廊下に面して、昔の教室がずらりと並んでいた。


 炭治郎「えっと、依り代はどこだろう」
 善逸「さぁ……取りあえず、教室の中入ってみようよぉ」
 光「そうっすね。じゃ、開けますよ」


 みんなで話し合って、一番手前の教室から順番に探ってみることにする。
 扉の曇りガラスから揃って顔をのぞかせて、中を確認する。
 小さな声だけど、中から話声がする。誰かいるようだ。


 仁乃「………人、いるね」
 寧々「そうね…どうする?」
 伊之助「なにぐずぐずしてんだ! 俺は開けるぜ! せーのッ」
 一同「あ、ちょ、ちょっと伊之助!」


 ガララララッッ!


 止める暇もなく、伊之助が一気に木の扉を開け放つ。
 その音に驚き、教室の席で本を読んでいた女の子と、その隣に立っていた男の子がこっちを見た。


 一同「え!!??」
 

 一同は、彼らの顔を見て、揃って口をあんぐりと開けてしまう。
 だって。だってだってだって。
 


 寧々「は、花子くん…………?」
 桜「は、8番………ッ!?」


 男の子は、花子くんにそっくりの顔をしていた。
 白いカッターシャツに、黒いズボン。学校指定のネクタイを締めている。
 

 もう一人の女の子は、七不思議8番の八雲にそっくりだった。
 服装こそ昔の学校のものだが、おかっぱ髪の髪型も声音も今と変わらない。

 これは、一体どういうことだろう……。
 花子くんと八雲は、生前同じ学校のクラスメートだったの、だろうか……?
 で、でも、そんな話、聞いたことがない。

 寧々ちゃんと視線がぶつかる。彼女も、「知らない」というふうに、かるく首を振った。
 


 ??「………だ、だれ……」


 花子くん(?)が、おどおどと口を開く。その瞳には涙がたまっていた。
 いつもの飄々としたオーラはない。
 生前と今では、かなり性格も違うようだ。
 ああ、いや、まだこの子が生前の花子くんと決まったわけでは、ないのだけど。


 ??「柚木くん、知り合い?」
 ??「……ううん。知らない……。弟の、クラスメートかな…?」


 彼が言う所の弟って、多分つかさくんのことだ。
 そして今の話で分かったけど、多分この子、やっぱり生前の花子くんなんだ。
 

 炭治郎「えっと、俺、竈門炭治郎です」
 善逸「え、えっと、あ、我妻善逸……だよ」
 伊之助「嘴平伊之助だァ!」
 睦彦「刻羽睦彦。で、そっち胡桃沢仁乃。それに、八尋寧々と源光と、桜さんと夏彦」

 
 ざっと説明を済ませたが、彼らはまだ警戒を解かない。
 そりゃそうだろう。彼らからしたら、いきなり学校にやってきた不法侵入者だと思うから。

 ここは、昔の学校……?
 ここに、八雲の依り代があるのだろうか…。
 昔の八雲に、聞いてみたらいいのか?


 夏彦「えーっと、君たちは?」
 普「…………ゆぎ、あまね。柚に木で『ゆぎ』、あまねは普通の普……」
 八雲「月原八雲よ。えっと、あなたたち、中等部の子?」


 中等部? たしか、この学校には中等部と高等部があって、寧々ちゃんたちは高等部なんだっけ。
 ここは口裏を合わせるためにも、肯定した方がいいのだろうか。
 

 善逸「えーっと、そうだよ。ああ、お、俺たち掃除頼まれてさ、さっきゴミ捨てに行ったとこ!」
 普「………そう、なんだ…」

 
 と彼が言ったところで、廊下の向こうからパタパタ!!と元気のいい足音が聞こえて来た。
 伊之助の時よりも騒がしく扉を開け放ち、教室にやってきたのは。
 花子くん—いや普くんとそっくりの、男の子だった。



 司「あまねーーーーーー! 帰ろうよ————! ……って、あれ、キミたちだれ?」
 普「つ、つかさもう補習終わったの…?」
 司「うん! ほんとさー数学とか全然分かんなくってさー。あ、ツキハラ久しぶりー!!」

 普くんの弟、司くんは、今と変わらず明るい。ツキハラと呼ばれているのは八雲だ。
 どうやら司くんも普くんも、八雲と面識があるようだ。
 あれ? でも花子くんは、八雲とは初対面だって言ってたけど……。

 忘れちゃったってことなのだろうか?


 司「ふうん。ま、いっか! ねーねー、キミたちも一緒に帰ろうよ!」
 八雲「え、…ま、まあいいけど……」
 司「決まり—!」


 え、帰るったって…俺たち、どこに連れて行かれるんだろう?
 この無限階段の中には、住宅街のような小さな町があるのか?

 俺たちは首を傾げつつ、彼らについていくことが依り代探しの第一歩だと信じることした。
 そして、3人と一緒に揃って教室を出て、下校(?)を始めたのだった。


 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.36 )
日時: 2020/09/16 17:19
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

【大正コソコソ執筆裏話】

 むう「睦彦お……」
 睦彦「お、むう。…どした? 元気ねえな」
 むう「…………………………」
 睦彦「なんかあった?」

 むう「ふ、ふら、れた」
 睦彦「……誰に?」
 むう「この前、告って……今日、振られた……」
 睦彦「…………………………頑張ったじゃん」

 むう「頑張って……ないよお……」
 睦彦「俺が頑張ったって言うんだから、むうは頑張ったんだよ。偉い」
 むう「無理だったんだよ……? 睦彦みたいに、うまくいかなかったよ……」

 むう「みんな応援してくれたのに……無理だったんだよ……」
 睦彦「むうは今でもその子が好き?」
 むう「……うん」
 睦彦「むうの気持ち、ちゃんと届いてよかったな」

 むう「辛い…」
 睦彦「うん」
 むう「泣きたい……うまく行くって思った私は馬鹿だよ……」
 睦彦「馬鹿じゃない。馬鹿な奴はこんなに一生懸命になったりしないから」

 むう
「…………………………これからも、執筆頑張るから、こんな作者でも、応援してくれて、ありがとう。
色々辛かったり……悲しくなったりあると思うけど、一緒に、がんばりまじょうっ!」

 睦彦「はい合格 ニコッ」
むう「えへへ………ありがとうむっくん」


むうの初恋……終わっちゃった……。
さみしい時は笑え! \( 'ω')/エンダァァァァァァァァァァァァァ

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.37 )
日時: 2020/11/04 07:26
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 遅くなりました! 続き行きます!
 え、あの件は大丈夫ですかって? んーまぁ何とかなります! 行きます!

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 〈つか花side〉



 
 ———やばい、息が出来ない。


 七不思議8番・八雲の体から発生した謎の黒い靄は、足元からじりじりと這い上がって来ていた。
 そしてついに靄が顔を侵食しはじめ、口を塞がれて俺こと花子は慌てて両足をばたつかせる。


 花子「ん゛ッ! ん゛ん゛ん゛ッ!!」
 つかさ「普っ! 捕まって!!」

 まだかろうじて、靄が胸のあたりまでしか来ていないつかさが必死で俺に手を伸ばす。
 その腕を掴もうとしたが、靄が手にまとわりついて掴むのを拒んだ。


 花子「ん゛……!! (やばい、息が持たない……!)」
 つかさ「普!!」

 八雲「…………さよなら」
 

 さっきからずっと階段の壁にもたれかかっていた八雲が、短く呟き振り返る。
 その顔は、なぜか泣いているように見えた。


 花子「待って8番! なんで、キミはこんな……っ!」
 八雲「————8番じゃない」


 花・つ「?」
 八雲「———私は『8番』なんて言う名前じゃない」


 ゆっくりと、噛んで含めるように彼女が呟き、俺たちをじっと見つめ返す。
 何かを、伝えたがっているようだが、それが何なのか分からず俺は首をかしげる。


 花子「それは、俺も知ってるよ。俺だって、花子って名前じゃないし——」
 八雲「———月原八雲よ、柚木くん」


 ………………一瞬、視界が真っ暗に染まって、自分だけ違う場所にいるかのような錯覚に陥った。
 柚木くんって、確かに彼女はそう言った。
 なぜ? なんでその苗字を、キミが知ってる?

 花子「———どこかで、会った?」
 つかさ「…………月原………」

 八雲「そう。忘れちゃったんだ。———そっちが先に一人にしたのが悪いんだ」
 花子「え?」


 どういう意味?
 そしてなんで、そんなにキミは泣きそうな顔をしているの?
 


 八雲「あなたたちが、私を置いてったんじゃないの」
 つかさ「いつ?」
 八雲「60年前! あなたたちが、私の前からいなくなった!!」


 急に声を荒げた八雲の言葉に、俺たちは揃って目を丸くした。
 出会った時からずっと、冷静な態度をとっていた彼女の、初めての感情的な行動だった。


 八雲「全部全部、あんたのせいよ柚木くん! 何で死んだのよ!?」
 花子「え、えっ、と」
 八雲「あなたが私のたった一人の友達で! 理解者で! それなのに!」


 俺はこの子の友達だったことが、ある———。
 俺の死を、この子は知っている———。
 

 八雲「突然!! 弟と一緒にこの世界からいなくなって! 私は一人取り残されて!!」
 花子「——月原さん………」
 八雲「私は! この階段から落ちて死んだのよ!!」


 思い出した。
 月原八雲は、昔、俺の元クラスメートで、俺の前の席だった。
 
 いつもおかっぱ髪を揺らして明るく笑う子で、友達も少なからずいるような子だった。
 しかしいつからか、彼女の周りからは友達が一人もいなくなった。
 理由は分からない。あぶれた、って言うのだろうか。
 グループのリーダ格の子が、彼女の悪口を言うそぶりもなかったのに、八雲は一人になった。



 『………いじめられたの?』
 『違うの。あの子達と私の価値観が違いすぎて、話がかみ合わないの』

 『価値観?』
 『ええ』


 八雲は少し不思議なところがあった。急に、何もない所を見てニコっと笑うことがあった。
 なぜ、そんなことをするのかと聞いたら、八雲は至極当然のような口調で言うのだった。


 『——何もない空間に、一から物体を作り上げるのが、妄想のだいご味でしょ?』と。


 
 お互い一人ぼっちの俺と八雲は、少しずつ仲良くなった。しかしそれは秘密裏のことだった。
 どういうことかというと、彼女は俺と仲良しなことを周りに隠していたのだ。
 俺は別にそんなことどうでもよかった。何故そんなことをするのかと聞くつもりもなかった。
 答えは、とっくに分かりきっていたから。


 
 八雲「あなたのせいよ7番!! 全部あなたが悪いんだわ!!」
 花子「………そ、それは、その、……ごめん」
 八雲「謝ってほしいとか、そう言うことじゃないのよ。………何でなの」

 
 それは、本当に答えが知りたい「なんで」だった。
 この質問に答えるには、相当長い時間が必要になる。
 正直言うと、答えたくなかった。


 つかさ「………なんでキミは死んだの?」
 八雲「全てに、疲れ切ったからよ。学校も、人間関係も、この世の不条理も、全部嫌だった」


 だから、階段で私は死んだの、と告げる彼女の声の温度は冷たい。
 でも、と彼女は言葉を続ける。


 八雲「———どうせなら、柚木くんと同じ時間に、同じ場所で、………死にたかったな…」

 
 寂しそうに目を伏せる八雲——いや月原さんに、何という言葉をかけていいのか、俺は迷う。
 本当に、彼女の依り代を壊せば、この事件は解決するのだろうか。
 だって、この少女が死んだ理由は、少なくとも俺のせいで、だから……。


 八雲「———だから、あなたたちには、ここで死んでね」



 …………彼女の心の穴は、深く深く、それを塞ぐだけのものが、まだ……ない。
 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.38 )
日時: 2020/09/17 18:14
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)


 【大正コソコソ噂話】


 お知らせです。
 只今コメライ版で執筆中の「カオスヘッドな僕ら」
 こっちで執筆中の「ろくきせ恋愛手帖」などのろくきせシリーズですが……。

 めっっっっっっちゃ更新が遅くなります。


 理由!▼

 ・高校受験!!
 ・2学期の成績で志望校が決まる!(実際かなりヤバス)
 ・勉強やばい!!


 なので皆様、長い間会えないかもしれませんが、忘れないで下さいね(´;ω;`)
 カオ僕みたいに「帰ってきた」みたいになると思いますのでお楽しみにね。
 

 それではぁぁぁぁぁァァァァァァァァァァ!!
 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.39 )
日時: 2020/09/18 19:03
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)


 うおっ500っ!? 
 ありがとうございます。休憩時間30分間使って続きかきます。
 なお、この続きは多分一週間ほど遅れると思います。
 申し訳ありませんが、ご理解をお願いします。

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 〈仁乃side〉


 無限階段の怪異の八雲の領域である【無限階段】の中で、私たちは昔の花子くんと八雲に会った。
 そして、昔の司くんが言うがままに、下校を始めたのだけど……。

 無限階段の中に昔の学園があるだけでもオドロキなのに、学園を出たら、あたりは住宅街。
 これ、どうなってるの?
 現代って、改めてすごいと思う。


 司「それでねー。√とかぁ、ニジホーテー式とかぁー」
 普「二次方程式?」
 司「そうそれ! 全然分かんなくてさぁ。ね、キミは分かる?」


 大正時代の私たちかまぼこ隊としては、数学っていう勉強も全然わかんない。
 そして現代人の司くんも、頭を使うのはどうやら得意ではないらしい。


 桜「え、私?」
 司「うん! キミの名前はなに? 俺はつかさ!」
 桜「……七峰桜よ」

 一瞬チラッと、桜ちゃんのとまどった表情が見えた。
 その理由を、あえて誰も聞かない。

 でも、桜ちゃんは流石高校3年生ってことで物凄く落ち着いているし、雰囲気も大人っぽい。
 頭だって、絶対いいはずだよね。

 桜「数学は、積み重ねの教科だから、練習すればいいと思うわよ」
 夏・寧・光「そうなんですかっ?」
 桜「……八尋さんやお祓い屋の子はいいとして、夏彦あなた勉強できないの?」


 ストレートな桜ちゃんの表現に、夏彦くんは「う゛っ」と言葉に詰まる。
 その横で有為ちゃんが「ハァ」と大きなため息を一つ。


 有為「………皆さん、お話をするのもいいですが、依り代の件忘れないで下さいね」
 一同「完っっっっっっっ全に忘れてたァァァ!!」


 皆の声がキレイにハモる。
 善逸くんの悲鳴(失敬)や、司くんの明るい声や、昔の花子くんと八雲の会話が楽しくて。
 そうだった、肝心な目標を忘れるわけにはいかないよね。


 ここは八雲に、一つ探りを入れてみた方がいいのかも。
 私がチラッと普くんたちを除くメンバーに目配せをすると、みんなは揃って頷いた。

 
 仁乃「あ、あのっ!」
 普「………えっと、確かキミは……胡桃沢、さん、だっけ」


 いつもは元気いっぱいに「胡桃沢———!」って駆け寄ってくる花子くん。
 昔の花子くんもとい普くんの返事に、違和感を感じなかったかと問われれば、感じた。


 仁乃「あの、八雲ちゃんと、普くんって、仲いいの?」
 八雲「ええ、クラスメートなの。話すようになったのは、つい最近」


 へぇ。まぁそれもそうか。
 私だって、かまぼこ隊とつるむようになったのは、任務で彼らと会ってからだもの。
 むっくんと知り合ったのだって、最終選別にお互いが行ってなければできなかったわけだし。


 善逸「へぇ。じゃあさじゃあさ? 話すようになったきっかけって、あったりする?」
 司「さーねー。俺と普は違うクラスだから知らないけど、どうなの普?」

 
 八雲「……私が仲良くしてた子たちが、急に私と距離を置くようになったのよ」
 普「……俺は、もともと、友達とか……いなくて、それで」


 ああ、そういうのあるね。友達関係って、糸のように複雑に絡まってるから疲れちゃうよね。
 むっくんも、瀬戸山くんと実際、色々あったもん。

 
 八雲「……一人ぼっち同士、気が合ったのよ。柚木くん、話す前はすっごい暗い子かと思った」
 普「………実際そうだけど」
 八雲「でも、こんなに頭がいいなんて思わなかったわ。理科、凄くよくできるじゃない」


 「いいなぁ」と、光くん・寧々ちゃん・夏彦くんの声が重なった。
 理科って確か、生き物を観察したりするんだよね。
 一回大正時代に寧々ちゃんが来た時、教科書を見せてもらったことがある。
 グラフがいっぱいで、私にはサッパリ理解できなかったっけ。


 普「………月原さんも、凄いと思うよ。誰にだって優しいじゃん」
 伊之助「俺だって優しいぜ!」
 炭治郎「女の子の体を踏んだのにか、伊之助」
 伊之助「ゲッ。そ、それとこれとでは違うんだよォ!」


 誰にでも優しい?
 

 普「全然話さなかった俺に、気さくに話しかけてくれて、嬉しかったよ」
 八雲「…………そんなことないわ」


 学校だけなの、と八雲は蚊の鳴くような小さい声で、そっと呟いた。
 ………それは一体、どういうこと?
 そう聞こうと思ったけれど、交差点の分かれ道で、私たちは八雲と別れる感じになってしまった。


 八雲「じゃあね、また明日。柚木くん、弟くんもまた明日ね」
 かまぼこ花子隊「ばいばい、八雲」
 普「あ、うん……またね、月原さん」
 司「ツキハラまたねぇぇぇ!」


 私たちに向かって手を小さく振った八雲の表情は逆行で見えなかった。
 もしかしたら、少し、泣きそうな顔だったのかもしれない。

 背を向けて走り出した彼女の制服のポケットから、小さい桃色の手帳がバサッと落ちた。
 炭治郎さんが拾い、慌てて彼女に渡そうとしたけれど、角を曲がった時には八雲の姿はなかった。
 どうやら、ものすっごく足が速い子みたいだ。


 炭治郎「ど、どうしよう…………ん?」
 善逸「どうした炭治郎。女の子の持ちもん拾えるなんて羨ましいわ」
 炭治郎「いや、ここ……もしかして……」

 善逸さんの嫌味をサラッとスルーし、炭治郎さんが手帳の表紙を指さす。
 さされた場所には、依り代の証——「黒い正方形の札」が、ど真ん中に貼られてあった。




 ————————これが、八雲の、依り代………………?


 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.40 )
日時: 2020/09/21 15:36
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)


 【大正コソコソ噂話】


 むう「皆さんお久しぶりでっす!」
 しのぶ「お久しぶりですね〜むうさん」
 義勇「………元気だったか」

 むう「はい。柱の皆さんとは、ろくきせ最終章からご無沙汰でした!」
 無一郎「むうも最近は毎日投稿とかは出来ない状況なんだね」
 むう「はい……この後すぐ、カオ僕更新したあとはall勉強でございます」
 

 宇髄「地味に忙しいじゃねえか。大丈夫か?」
 悲鳴嶼「ああ、なんと頑張りやな子供だ…南無阿弥陀仏」
 むう「ありがとうございます悲鳴嶼さん」

 蜜璃「ちょっと———! か、かんりにんしょうだって———! 皆知ってた?」
 伊黒「逆に今になって言うのは珍しいぞ甘露寺」
 実弥「甘露寺、ボーっと生きてんじゃねえよ」
 むう「さねみんに叱られる、ですね」
 実弥「ああん?」

 しのぶ「管理人賞受賞できて、私たちも嬉しいですね♪」
 むう「はい! 更新が亀並みに遅くなりますが、皆さんお楽しみにしててくださいね」
 無一郎「あ、第2話はあと3話くらいで完結らしいよ……」

 悲鳴嶼「その後は皆でキメツ学園運動会だ………南無阿弥陀仏」
 煉獄「楽しみだな! わっしょいわっしょい!」

 むう「それでは、引き続きろくきせと……」
 ??「ちょっと待たんかぁ!」


 ビュー—————ンッ
 ズドドドドドドドドド


 むう「ギャウっ(数メートル先にぶっ飛ばされる。デジャブかもしれない)」
 クコ「こんにちはっと! どうも、うちの名前はクコや!」
 周「・・・・・・・・なんか、本当にすみません。ほんと、すみません」


 蜜璃「えーっと、あなたは?」
 八雲「はい、こんにちは、栗坂八雲です」
 八雲「………えっと、こっちが、『月原』八雲よ。まさかの同じ名前……困惑するわね」


 むう「ちょっとヘマして名前が一緒になっちゃいました!」
 クコ「ほらほら百木くん! 宣伝やで宣伝! ほら、紗明も弟くんもロリとあと、」

 朔「チカッ!?」
 周「朔ッ!?」

 シア「はい、コメライ版にて『カオスヘッドな僕ら』連載中ですぅ。見ないと黒札貼ります♪」
 ユルミス「…………シア、今なんて言ったぁ?」
 シア「ッ!! なんでここにッ。ごめんなさい私サヨナラしますぅ!」

 朔「いだだだああだ!! シアちゃん俺のパーカーのフード引っ張らないでッ」
 紗明「とにかく、アルジ様の活躍に乞うご期待! ゴキブリ(周)の活躍はないからな!」
 周「あるよ!! 主人公だよ!!」
 クコ「それでは、ろくきせ短編集とカオ僕もよろしゅう! 以上、カオ僕メンバーでした!」
 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.41 )
日時: 2020/09/22 16:14
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 こんにちは!
 スマホの充電が残り1%のむうです!
 今日は頑張って勉強終わらせました! 頑張った、えらいぞ。
 続き行きまぁぁぁぁぁぁぁぁぁす(喉枯れそう)

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 〈炭治郎side〉


 ————————これが、八雲の、依り代………………?


 八雲の制服のポケットから落ちた桃色の手帳。
 その表紙のど真ん中に貼られた正方形の札を見て、俺たちは思わず顔を見合わせる。
 

 炭治郎「どうする? 中、見てみるか?」
 寧々「花子くんは壊せばいいって言ってたわ。依り代を壊すには、その札を取ればいいの」

 伊之助「じゃあ取ろうぜ早く! 俺がやる!」
 普「だ、ダメだよっ!」


 伊之助が、俺の手から手帳を取ろうと身を乗り出す。
 と、その横にいた普くんが、声高に叫んで伊之助の腕を掴んだ。


 伊之助「テメッ、離せ!」
 普「よ、よくわかんないけど……月原さんの日記に貼られてるのを、取るのはダメだと思う」

 
 となると、この日記の中身を見て、八雲が何を感じていたか調べる他にはないのか。
 でも、日記というのは人のプライベートのものだ。
 こんな簡単に、人の持ち物を見てもいいのだろうか。


 司「ねえ、開こうよ」
 普「つかさ……」
 光「なんで、開くんすか? これは、その、八雲の持ちもんだろ?」


 話に割って入った司くんに、光くんが鋭く突っ込む。
 八雲と当時仲が良かった二人なら、真っ先に反対するはずだと思ったのだろう。
 その言葉を受けて、司くんは何ともないような感じで、ポツリと呟いた。


 司「ツキハラって、嘘つくのがうまいんだ」
 睦彦「………嘘?」
 司「うん。いっつも俺と普にはニコニコ笑ってるけどさ。裏で多分、泣いてるハズ」


 確かに、無限階段で会った八雲も、昔の八雲も、心からの笑顔は見せなかった。
 にっこりと笑ってるようで、裏で怒っているような、そんな複雑な表情を見せて来たのだ。
 

 司「だから、俺は開いていいと思う。ツキハラに元気になってほしいもん」
 夏彦「なるほどね。じゃあ、どうする、開けちゃう?」
 禰豆子「ムームー!(開けよう!)」


 炭治郎「よし、じゃあ、開けるってことでいいな。行くぞ」


 この中に、八雲の嘘も、日常で感じたことも、戸惑いも嬉しみも全部、詰まっているんだ。
 ページをめくる指先に力がこもる。胸を圧迫されたように、息が苦しくなる。



 ゆっくりと開いたノートの一ページ目。
 そこには、罫線に沿って、丁寧なシャーペンの文字が綴られていた。



 -----------------------------------------------------------------
  1978年 4月12日 月曜日
 -----------------------------------------------------------------
 今日は中等部の入学式! 初めての中学校生活、精一杯頑張りたい!
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 新しいエミちゃんやユキちゃんっていう友達が出来た。やった!
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------------------------------------------------------------------
 1978年 10月30日 水曜日
------------------------------------------------------------------
今日は家族でピクニックに行った。山の紅葉がとても綺麗だった。
------------------------------------------------------------------
 楽しかったから、また行きたい。次は友達も誘って。
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ぱらぱらと、ページをめくっていく。


-------------------------------------------------------------------
1979年 8月16日
 ------------------------------------------------------------------
 幸って字の線を一本取ると辛さになるのはわざとなのかな。
------------------------------------------------------------------
 お父さんが家を出て行った。
 -----------------------------------------------------------------




 寧々「………八雲、お父さんが離婚したのね……」
 善逸「次、めくろうか」
 睦彦「おう。行くぞ」



 1979年 12月24日
 -------------------------------------------------------------------
 クリスマスは、一人で過ごす。
------------------------------------------------------------------
 友達も私の周りからドンドンいなくなってしまった。友達って難しい。
--------------------------------------------------------------------
 窓の外から綺麗な月が見えた。
----------------------------------------------------------------------
 前に人類が初めて月に行った日、お父さんと一緒にあそこに行くって決めてたのに。
----------------------------------------------------------------------------



その後から、八雲のノートには悲しい思い出の記述が多く見られるようになった。
 友達が一人もいなくなった、とか。
 席替えや進級が、学校の中で一番嫌いだ、とか。
 家に帰りたくない、とか。HRの時間が苦痛だ、とか。夜はいつも泣いてる、とか。
 
 
 そう言う記述の後に「大丈夫、明日は必ずいい日になる」と、決まって付けたされていた。
 その一文が、彼女にとってどんなものだったのか、俺たちには分からない。


 そして、ノートの中間部分に差し掛かった時、俺たちは揃って息をのんだ。
 ノートの見開きいっぱいに、さっきまでとは打って変わった殴り書きの文字。
 怒りに任せて、高い筆圧で書かれた大きな文字の羅列が、6ページに渡って、書かれてあった。


 そこに書いてあったのは。




 ----------------------------------------------------------------
世界が嫌い人生が嫌い学校が嫌い生きるのが嫌い走るのが嫌い勉強が嫌い
 先生が嫌いお母さんが嫌いお父さんが嫌いクラスメートが嫌い景色が嫌い
 明日が嫌い今日が嫌い未来が嫌い過去が嫌い
 午前も午後もチャイムもラブソングもテレビもゲームも何もかも嫌い
 普くんが大嫌い 弟くんも大嫌い 皆嫌い 自分が一番嫌い
 助けて殺して泣かせて笑わせて抱きしめて愛して欲して叫ばせて愛させて愛されたい
 ----------------------------------------------------------------------



 
 そんな、ストーリー性の欠片もない、胸からこみあげる感情をそのまま綴ったような文章。
 八雲をこのままにしていてはダメだ。
 こんな、目に映る全てのものを嫌いになっちゃダメだ。何とかしなくちゃ。


 でも、昔の八雲がとった方法は、恐らく自分を一番苦しめている。
 そして彼女はどこにも行かずに、七不思議8番としてこの世に存在し続けている。
 彼女を、救わなきゃ。この世界から連れ出して、温かい光の元へ。


 仁乃「八雲、あなたがどんなに世界が嫌いだったとしても、」


 仁乃ちゃんが八雲の手帳をそっと胸に抱きよせる。
 そして、その古ぼけた手帳の表紙に貼られてある、正方形の札に手を伸ばす。



 ———あなたが、どんなに世界が嫌いだったとしても。
 

 きっとどこかで、明るい青空が広がっている。きっとどこかで、バラードが流れているはず。
 素敵な映画や、可愛い花や、誰かの笑い声が、どんなに不条理な世界でもきっと、存在するはず。
 きっとどこかで、誰かが貴方を呼んでいる。
 貴方という存在がいなくなって、悲しんでいる人が、きっといる。



 だから、そんなこと、言わないで。



 仁乃「八雲、またあとで、私と一緒に大正時代に行こう。約束だよ」


 


     ベリッ  ピキッッッ



 この世界に亀裂が生じる。その亀裂の隙間から、温かい光が漏れていた。
 きっと俺たちは、向こうでまた、出会うだろう。

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.42 )
日時: 2020/11/04 07:27
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 
 〈花子side〉


 八雲の体から発生した黒い靄に、もう頭まで呑まれてしまった。
 息が出来なくて、助けを求めようと必死に手を伸ばすけれど、掴んでくれる人はいない。
 次第に視界が狭くなってきて、自分の悲鳴が誰の声なのかもわからなくなってくる。

 そんな中、不意に、無限階段の領域に無数の亀裂が走った。
 それと同時に、俺とつかさに絡まっていた黒い靄が、シュウッと消滅する。


 花子「…………ゲホゲホッ ゲホッッ」
 つかさ「普! 大丈夫?」
 花子「………う、うん」


 つかさの手を借りて起き上がる。


 周囲を見渡すと、領域のヒビの隙間から、夕焼けの暖かい光が差し込むのが見えた。
 その光の眩しさに思わず目を細める。


 花子「………ヤシロたち、依り代を壊したんだ」
 八雲「っ!?」
 花子「8番、だからキミはもう七不思議じゃなくなった」


 噛んで含めるように静かに俺は言う。
 そして、今にも崩れそうな階段の壁に寄りかかっている八雲の腕を掴んで引き寄せた。

 びっくりした表情で固まる彼女の瞳を、俺はまっすぐに見つめる。
 自分の気持ちを相手に伝えるには、相手の目をしっかり見なくちゃいけない。
 

 花子「八雲、ごめん!!」
 八雲「………………え?」
 花子「八雲—いや、月原さんが、どれだけ悲しんで、どんな思いでこの世を去って……」


 花子「それが早く分かれば、悲しませずに済んだのに……っ。本当に、ごめん」
 つかさ「普………」


 八雲は何も言わなかった。
 もっと、悲しんだり怒ったりするのもだと覚悟していたけれど、そんなことは起こらなかった。
 ただ、俺が彼女にしたように、彼女もまた俺の目をしっかりと見つめた。


 八雲「60年、ずっと待ってた」
 花子「うん」
 八雲「——柚木くんは、私がいなくても、楽しくやっていけてたね」


 八雲「…………私の事も忘れて……、今の今まで楽しそうに、暮らしてたじゃない……」
 花子「…………うん。でも、さっき、思い出したんだよ」
 八雲「遅いのよ!! …………遅いよ………」


 八雲の声は、崩れ落ちそうなくらいに儚く、震えていた。
 この時、俺は彼女が、七不思議ではなく一人の少女として視界に映った。
 ずっと一人で、思い出してほしい人にも忘れられて、どこにも行かないままこの階段で。

 ———そんな少女に、俺はなにができるだろうか。


 つかさ「ツキハラ、………俺のこと、覚えてる?」
 八雲「もちろん」
 つかさ「……ツキハラは、嘘をつくのがうまいね」


 いつも明るいつかさの声は、今はひどく沈んでいた。
 それは俺に久しぶりに会ったときのような、裏になにか含んでいるような感じではなく。
 ただ、心の底からの寂しさが漂っていた。


 つかさ「…なんで、俺たちに言わなかったの? 辛いコトも苦しいコトも全部隠してさ」
 八雲「あなたには分からないじゃないっ!!」
 つかさ「分かるよ!! 何か隠してるのはずっと分かってた!! でも何かが分かんなかった!」


 誰だって、自分のことを打ち明けるのには勇気がいる。
 嫌われてしまうんじゃないかとか、迷惑じゃないかとか。
 そう言う考えにとらわれて、結局言い出せずに、一人で苦しんで。


 花子「ねえ八雲! 一緒に行こう!! このあと一緒に大正時代へ行こう!!」
 八雲「………なんで」
 花子「友達っぽいこと、一緒にやりたい!!」

 
 気づけば俺は叫びだしていた。


 ヤシロは前に、もっけの事件の後ベランダで、俺に向かって微笑みながら、こう言ってくれた。
『花子くんって呼ぶね。そのほうが友達っぽいでしょ?』って。

 八雲とまた、一緒に笑いたい。一緒に泣いて、一緒に馬鹿話をして、楽しいことをしたい。
 もうお互い死んでしまったけれど、またあの時のように、またあの時間を一から作りたい。
 どんなにキミが苦しんで、陰で泣いていたとしても、光の元へ連れ出したい。


 花子「だから、一緒に行こう!!」
 つかさ「竈門も我妻も、禰豆子も嘴平も刻羽も胡桃沢も、やさしーから大丈夫!!」
 花子「ほら!!」

 
 できるだけニッコリ笑って、手のひらを八雲にそっと差し出す。
 泣いちゃダメだ。目の前の少女がこんなに悲しそうな顔なのに、俺が泣いたら更に泣き出す。
 だから、口角を上げて、こっちはニッコリ笑ってないとダメなんだ。


 おっかなびっくり俺の手のひらに自分の指を絡ませた八雲は、そのまま俺の腕を掴んで。
 さっき俺がやった時のように、俺をぐいっと手元に引き寄せた。

 力に押されて、彼女の胸に飛び込んだ感じになってしまう。
 慌てて距離を取ろうとした俺を逃がすまいと、8番の怪異は駆け寄ってギュッと抱き着いた。


 花子「………え? あ、あの、8番さん?」
 つかさ「ほぉぉぉぉぉぉぉ〜〜〜! 普にモテ期がぁぁぁぁぁ!」
 花子「ちょ、つかさ!」


 ヤシロにこんなところ見られたらなんて言われるか。


 八雲「ごめん……柚木くん、許して゛………っ」
 花子「なんで謝るの?」
 八雲「……………それは………っ」
 花子「ハァ——————ッッ」


 俺は八雲の両肩を掴んで自分から引きはがす。
 そして、泣きっ面の彼女のおでこに自分の人差し指を突きつける。


 花子「だから言ったよねぇ? 俺の助手に何かしたら許さないって。この、おばーかさん」
 八雲「………ぷっ。あははははははははw」
 

 何が面白かったのか分からないけど、うつむき加減だった八雲の表情にパッと花が咲いた。
 そんな彼女の細い腕を、俺は掴んで階段を駆け下りる。
 その後ろをつかさが慌ててついてきた。

 下の階では竈門たちの、にぎやかな声が迎えてくれる。


 睦彦「おせーぞ花子! さっさとこっちへ来い!」
 伊之助「なにボーッとしてんだ!」
 善逸「あがッッ、可愛い女の子の手首なんか掴んで何する気!? 許さん!!」

 炭治郎「どう、有為ちゃん。少し遅くなったけど、大正時代へ転移できるかな」
 仁乃「今日は賑やかになるね。あ、茜くんと葵ちゃん、どうしよう……!?」
 有為「大丈夫ですよ。もう先に、向こうに送り届けてありますから」

 一同「さっすが有為ちゃん! よし、みんな行こう!!」



 ——こんな噂、知ってますか?
 美術室前のA階段、その向かい側にある理科室前のB階段。
 そこに現れる花子さんは、七不思議7番「トイレの花子さん」の昔のクラスメートで。
 少し秘密主義で、不思議なところがある、寂しがりやな女の子です。

 彼女の呼び出し方は簡単。
 B階段を通るとき、おかっぱ髪の女の子に会ったらこう言いましょう。
「一緒に遊ぼう」と。
 そうすれば花子さんはきっと答えてくれますよ。


 【第2話「踊り場の花子」END】

 ****************************


 これにて第2話無事完結!
 不思議で悲しい、花子くんの世界観にあってたら嬉しいです!
 また、普くんと昔の司くんも登場できてよかったです。
 次は東方キャラも登場のキメツ学園になります。お楽しみに♪

 
 

 
 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.43 )
日時: 2020/10/20 21:37
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 七不思議8番の設定紹介じゃじゃん!


  無限階段の花子さん{本名:月原八雲}

 読み:つきはらやくも
 性別:女
 身長:155㎝

 誕生日:8月30日
 誕生花:月見草
 花言葉:「無限の愛情」「移り気」

 血液型:B
 年齢:享年15歳(生きてれば50なんぼ……うは、おばさん『お黙りなさい』)
 出身地:不明。かもめ学園の近くに住んでいたらしい
 座右の銘:楽あれば苦あり
 趣味:あやとり
 特技:一度会った人の顔は一生忘れない自信がある
 好きな教科:国語、英語、体育
 嫌いな教科:理科
 
 


 怪異の名前:無限階段(人を階段の中に引きずり込む)
 七不思議の番号:8番



 
 美術室前のB階段の向かいにある、理科室前のA階段に現れる怪異。
 七不思議の隠された【8番目】。
 彼女の命令に逆らった人を階段の中に閉じ込め、無限階段へ連れて行く。
 その階段は昇り降りすることができない。

 本名は月原八雲。花子くんの昔のクラスメートで友達。
 彼とその弟が死んだショックと、生きることの辛さを理由にA階段から飛び降りて自殺した。

 性格は冷静沈着で妄想癖があり、感受性が強く、素直な性格。
 依り代を壊されたことで七不思議ではなくなったが、彼女はまだこの学園で暮らしている。

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.44 )
日時: 2020/09/26 13:26
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

次の鬼滅学園で運動会をします!

やる競技

玉入れ
借り物競争
障害物競走
色対抗リレー

【紅組】

カナヲ 炭治郎 アオイ 葵
亜門 蜜璃 寧々 しのぶ 輝
花子 有為 ルーミア茜 ミツバ
善逸 魔理沙 妖夢 実弥 レミリア

【白組】
仁乃 睦彦 霊夢 伊黒 フラン
つかさ 伊之助 無一郎 宇髄
光 華扇 美鈴 義勇 悲鳴嶼
桜 メイ 紫 夏彦 八雲

なお競技の放送は放送室メンバー。
司会は生徒会のアオイ、メイ、輝、土籠先生でお送りします!

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.45 )
日時: 2020/09/26 12:33
名前: 優羽 (ID: f7aWX8AY)

おぉ意外…

霊夢が白とは!

白組最強じゃん
つかさとフランとか
炭カナ頑張ってぇ!
にのむつ共同作戦でクリアして仲良くなってね!

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.46 )
日時: 2020/09/26 15:17
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)


 【大正コソコソ噂話】

 ここでは、第2話の裏話と!
 個人的に「地縛少年花子くん」の気になる点を書きます!
 あ、私漫画は後輩に借りてエソラゴトらへんしか見てないんですよね。
 なので、もう解明されてたりするかもしれませんがそこのあたりよろしくです。


 □気になる点その1 みんな苗字に数字入ってるよね?

 ↑気づいた人いますかー?

 茜くんは出席番号1番で、土籠先生はつち『ご』もりで、ミツバくんは『三』葉だし。
 シジマメイは、『四島』だし。

 あと、寧々ちゃんにも桜ちゃんにも、なぜか『八尋』『七峰』って数字がついてます。
 じゃあなんで花子くんには入ってないんだろう……?

 花子くんの昔の名字を色々いじってみたけどまだ分からない…。
 これ、意図的かなぁ? とワクワクしました。

 ちなみに月原八雲にも『八』入ってますよね!
 これは、むうが意図的に入れました!


 
 □気になる点その2 源センパイの好きな人誰だろう?

 気になりませんか? めっちゃ私誰だろーってなりました。
 もしかして寧々ちゃんだったりして・・・・。
 

 □気になる点その3 花子くんがつかさくんを○○した理由

 ………いっちばん気になるのがコレ!!
 まだ多分分かってないよね?
 どういう関係でどういった経歴であーなったのか、すっごい気になります!


 □気になる点その4 あれ、噂って逆らったらいけなくない?

 ↑七不思議にはこういうルールがあったような気がして。
 だから放送室メンバーがいじると怪異が暴走するんだよね?
 あれ?? 花子くん………噂に逆らってない?
「トイレの花子『さん』」だよね……え、え、どゆこと??
 花子くん、謎すぎる。なんか話数が進めるたびに謎が多くてちょっと怖い……。


 □気になる点その5 桜ちゃんの正体


 はい! これもめっちゃ気になります。
 夏彦先輩は多分人間だと思うんだよね……だってクラスメートにも見えてたし。
 うーんきになる…。実際死んでたりとか…するかなぁ?
 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.47 )
日時: 2020/10/18 18:33
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 お久しぶりです。
 受験勉強&不正なアクセスうんぬんで更新がめっちゃ遅れました!
 いよいよ、キメツ学園運動会スタート!
 みんな大好き東方キャラや新キャラ亜門や八雲も参戦します!

 ****************************

 ★中高一貫・キメツ学園運動会★

 ここはキメツ学園。
 問題児ばかり集まる学校である。

 
 〈炭治郎side〉

 炭治郎「おはよう、みんな。遅くなった……」
 禰豆子「ムームー!」
 善逸「おはよう炭治郎。偉く遅かったな」

 花子「おはよう竈門。偉く遅かったけど、どうしたの?」
 炭治郎「実は、家の目覚ましが故障して……」
 善逸「お前そう言うこと多いよな。気を付けろよ」
 炭治郎「ありがとう善逸。ところで伊之助はどこに行ったんだ?」

 善逸「ああ、アイツなら前ボタン留めてなかったとかで冨岡先生に説教され中」
 クラスメート一同「お気の毒に………」

 〈寧々side〉

 寧々「おはよう葵。茜くんも」
 茜「おはよう八尋さん、アオちゃん」
 葵「おはよう~。そう言えばもうすぐ運動会だね。憂鬱だけど、一緒に頑張ろうね~」

 茜「やっぱりアオちゃん好きです! 僕と付き合ってください!」
 葵「うーん、マイナス100点♪」
 茜「え゛ッ……。正の数ですらないけど、どこが悪かった?」
 葵「うーん、寝癖♪」

 ※手厳しい葵様。


 〈放送室メンバーside〉

 つかさ「えーっと、『た…たいま……』」
 桜「只今」
 つかさ「えーっと、『只今から、おに……き……』」
 桜「鬼滅」
 つかさ「『キメツ学園運動会を……ひら……』」
 桜「開催」
 つかさ「『開催します!』はぁ……やっと全部読めた」

 夏彦「俺たちが放送係だから、本番では噛まないようにね、つかさ」
 つかさ「はーい。ねぇねぇミツバは読めた?」
 ミツバ「あ、うん、まぁ……一応は」

 桜「よし、この調子で本番も悪役一同頑張りましょう」
 ミツバ「僕悪役じゃないけど、まあ頑張るよ」
 桜「えいえい、」
 放送室メンバー一同「オー――――!」


 〈睦彦side〉

 睦彦「はぁ……ねむっ(席に腰かけて)」
 亜門「お前の隣の席とか、地獄の極みだな。おはよう刻羽」
 睦彦「うるせえよ。朝から俺を萎えさせるな」

 睦彦「それよか、もうすぐ運動会だがお前のことだから熱出すんじゃねぇぞ」
 亜門「その言葉、そっくりそのまま返してやる。お前こそ楽しみ過ぎて熱出すなよ」
 睦彦「はぁ!? おいそれはいくらなんでも子供過ぎるだろ!!」
 亜門「子供だけど?」

 仁乃「朝からケンカとは仲がよろしいようで」
 睦彦「胡桃沢!」
 亜門「胡桃沢さん!」

 仁乃「集合場所に遅れるなんて酷いよむっくん」
 睦彦「わりぃ……。でも遅刻しなかったんだからいいだろ」
 仁乃「そういう問題じゃないでしょ!」

 ~と、クラスメート一同の視線が彼らに集中して~

 クラスメートA「ねぇねぇ、あの子達でしょう? 学校で有名なラブラブカップルって」
 クラスメートB「家でやれよ。こんなところでイチャイチャされてもなぁ……」
 睦彦「…………(拳を震わせて)」

 クラスメートC「はっきり言って、メーワクなんだよな……」
 睦彦「見てんじゃねえよバーカ!!」
 クラスメートⅭ「うわ、怖い怖い。退散!」


 〈東方キャラside〉

 霊夢「今日も仁乃睦をめぐって激しい論争が繰り広げられているようね、魔理沙」
 魔理沙「うーん、霊夢のはちょっとオーバーだぜ? ただの子供のケンカだろ?」
 霊夢「私たちも子供よ」

 フラン「はぁ……姉様と違う色だった……」
 ルーミア「そーなのかー。でもルーミアと同じ色で良かったのだー。わはー!」
 フラン「一緒に頑張ろうね!」

 パチェ「運動会なんて何であるのかしら。速読大会をやってほしい」
 小悪魔「それはパチュリーさんしか優勝しないんじゃないですか?」
 
 妖夢「あれ、咲夜はどの色にも入ってないけど、まさか逃げる気かみょん?」
 レミリア「………咲夜、あなた」
 咲夜「酷い言われようですねお嬢様。私はただ、珠世さんと保健係をやるので参加しないんです」

 美鈴「えー。咲夜さんやらないんですか? 先生に言ってあげますよ。流石に係だけだと」
 咲夜「言うんだったら自分で言うわ!!」

 華扇「はぁ………疲れました」
 霊夢「華扇、どうしたの?」
 華扇「はい、それが……この右腕の包帯を中二病だと思われて、取られかけまして……」

 東方キャラ一同「とられなくてよかった!!」
 華扇「はい、本当に良かったです……」


 土籠先生「はーい、HR始めますよー。各色に分かれて種目決めを行いますので席について―」
 花子「あっれ土籠センセ、今日は偉く大人しいね」
 土籠先生「あァん? お前あとで廊下にバケツ持って立っとけ」

 しのぶ「そんなんだから、皆に嫌われるんですよー」
 花子「うッ(グサ)」
 八雲「柚木くん、気をしっかり」

 有為「やれやれです」
 もっけ「アメやる」

 光「花子! 元気出せよ! なっ! 先輩と同じ色になっただけでもラッキーじゃねーか!」
 メイ「意地悪い7番様と違う色で良かったです~」
 花子「うおっ(グサ)」

 土籠先生「おら始めんぞ。柚木! とっとと座れ」
 つかさ「はーい!」
 クラスメートD「きりーつ。礼、お願いしまーす」

 一同「お願いしま――す!!」

 ネクスト→種目決め開始。次回もお楽しみに♪

 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.48 )
日時: 2020/09/30 17:44
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)


 会話文短編集が! 閲覧数2000越えてた!
 ろくきせも閲覧6600越えっ?!
 うひょーありがとうございますっ!
 これからも応援よろしくお願いします。

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.49 )
日時: 2020/10/01 17:39
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 
 あ、そう言えば紙他版でもルビが打てるようになったらしいですね。
 やり方は読み方を半角カッコで打つだけです!
 やったことない人いたらやってみてください!

 ****************************

 土籠先生「じゃあ各色に分かれて種目決め開始―」
 クラスメート一同「はーい!」


 やる競技

 玉入れ
 借り物競争
 障害物競走
 色対抗リレー
 

 【紅組】(19人)

 カナヲ 炭治郎 アオイ 葵
 亜門 蜜璃 寧々 しのぶ 輝
 花子 有為 ルーミア茜 ミツバ
 善逸 魔理沙 妖夢 実弥 レミリア



【白組】(19人)
 仁乃 睦彦 霊夢 伊黒 フラン
 つかさ 伊之助 無一郎 宇髄
 光 華扇 美鈴 義勇 悲鳴嶼
 桜 メイ 紫 夏彦 八雲


〈紅組side〉

 輝「じゃあこれから種目決めをやっていこうか。あ、紅組リーダーの源輝みなもとてるです」
 炭治郎「いつもありがとうございます」
 花子「ゲッ……」
 茜・葵・寧々「先輩よろしくお願いしますっ」

 善逸「白に比べるとこっちは戦力があまりないけど大丈夫なの?」
 魔理沙「大丈夫だって。いざとなれば私とルーミアとレミリアでスペカ打ってやるから!」
 善逸「死ぬよ!??」

 輝「じゃあまずは玉入れ。定員は8人だけど、やりたいひとー?」
 亜門「あ、僕やる。……多分リレーできるだけの体力がないんで……」
 寧々「わ、私も走るのはあまり……」
 

 【ということで玉入れに出る人は】
 寧々 亜門 魔理沙 ミツバ 茜 カナヲ 有為 蜜璃(合計8名)


 
 輝「次は借り物競争と障害物競争が各5人。あ、ちなみに一人二種目以上出ないと足りないよ」
 花子「えっと、リレーは全員出るんですよね……?」
 実弥「なんで敬語なんだお前。そうだが」
 カナヲ「向こうは……つかさくんとか……フランがいるからね」

 善逸「あ、じゃあ俺借り物出るよ。なんか、楽しそうだし」
 葵「私はネットくぐるの得意だから、障害物出ようかな~」
 茜「アオちゃんが出るなら僕も出るよっ」

 ルーミア「レミリアと一緒に出るのだー! わはー!」
 レミリア「ちょっと勝手に決めつけないでよっ」
 輝「おーいケンカしないでー」
 アオイ「皆さんお静かにしてください!(キリキリ)」

 ミツバ「………僕、出てもいいよ」

 炭治郎「あ、俺も禰豆子箱に入れて参加するので、禰豆子どっちに出ようか?」
 禰豆子「ムームー!(借り物!)」



 【ということで借り物に出る人は】
 炭治郎(禰豆子) 輝 善逸 ミツバ しのぶ(計5{6}名)


 【障害物に出る人は】
 茜 葵 ルーミア レミリア 妖夢 (計5名)


 有為「では最後はリレーの順番ですね。最初はスターターとアンカー決めましょうか」
 寧々「は、はいっ! アンカーは源センパイがいいと思いますっ!」
 妖夢「この中で誰が一番足速いみょん?」

 花子「胡蝶さん結構足速いよね? 俺間に入るからさ、スタート切ってくれない?」
 しのぶ「それなら不死川さんがいいと思いますよ。じゃあ前半は鬼滅組でリードしましょうか」
 実弥「おいおい胡蝶! 勝手に話を進めるのはよせ」
 蜜璃「頑張りましょうね~」
 実弥「おい甘露寺ッ」

 魔理沙「こう、速い人とちょっと苦手な人を交互に入れて行くといいぜ」
 ミツバ「ぼ、僕も同じこと思った!」
 輝「よし、じゃあ……ここをこうして、こうやって……あーすれば……」



 【リレーの走順】
 ☆特別に白組のも見せまーす
(左赤組 右白組)

 1実弥VS義勇  
   
 2しのぶVS美鈴  
   
 3亜門VS睦彦 
   
 4カナヲVS紫  

 5炭治郎VS悲鳴嶼 
  
 6アオイVS伊之助   

 7蜜璃VS伊黒   
 
 8ルーミアVS仁乃 
 
 9葵VS無一郎  
  
 10善逸VS華扇  

 11魔理沙VS霊夢 
  
 12寧々VS光

 13ミツバVS桜

 14茜VS八雲

 15レミリアVSメイ

 16有為VS夏彦

 17妖夢VSフラン

 18花子VSつかさ

 19輝VS宇髄   


 ☆むうがメンバー表を見に来ました☆


 うっほ激アツっ!
 寧々ちゃんと光くんのペアとか、お、魔理沙VS霊夢だっ!すげえ!
 花子VSつかさも見てみたいっ。っていうか3走目に睦彦VS亜門って…ケンカするなよ~?


 ネクスト→白組目線でーす。お楽しみにー
 
 
 
 

 
 

 

 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.50 )
日時: 2020/10/03 21:00
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 こんばんは! 
 花子くんアニメもう一回見てカガミジゴクで泣いた作者・むうです!←寧々ちゃん風
 こんな可愛い私の小説を読んでくださってありがとう!←ミツバ風
 まだ読んでない人、即読まないとダメだよ?←花子くん風
 これから中間試験勉強で忙しくなりますけど、お互い頑張りましょうね!←光くん風

 ※チャーシューあり煮卵あり麺硬めのラーメンかよ

 ****************************


 〈白組side〉


 
 【白組】(19人)
 仁乃 睦彦 霊夢 伊黒 フラン
 つかさ 伊之助 無一郎 宇髄
 光 華扇 美鈴 義勇 悲鳴嶼
 桜 メイ 紫 夏彦 八雲


 夏彦「はいよっと。ハーイ皆さん。白組リーダーの日向夏彦ひゅうがなつひこです☆」
 仁・睦・伊・光「……………………なんであなたがリーダーなんでしょうか」
 夏彦「みんなの………あiゴフッッッ(本を投げつけられて)」

 桜「(←犯人)つくづく貴方と同じ色になったのは不遇だと思うわ、夏彦」
 夏彦「お、お嬢……いい加減七不思議の図鑑投げるのやめてくんないかな……」
 つかさ「死んじゃった-」
 夏彦「いや死んではないから」

 華扇「えーっと、もう一度言いますが、あなた本当にリーダーとして適任なんでしょうか」
 宇髄「地味にグサッと刺さる言葉を吐くなぁお前」
 義勇「早く議論を進めてくれ……」

 夏彦「あ、はい。じゃあリレーは決まったからあとは障害物と借り物、出る人決めるよ」
 メイ「借り物なんて小学校ぶりで懐かしいですね~」
 フラン「グッとしてドカーン!」

 悲鳴嶼「やりたい人は挙手願う……南無阿弥陀仏……」
 睦彦「(チラッと仁乃を見て)……花子と同じ色にならなくてつくづく良かったと思うぜ」
 光「同意見っす。でもアイツが先輩と同じ色だと言うことだけは許さねえ!」

 八雲「柚木くんにかまってないで、あなたは早く自分の意見を伝えたら? 刻羽くん」
 睦彦「う゛っ。流石は元七不思議。痛いところをグイグイついてくるな……」
 無一郎「早くしてくれる?」

 睦彦「あ、あのさ胡桃沢……。あの……………俺、その………///」
 仁乃「ん?」
 睦彦「い……一緒になれて………すっぎょく!!!」


 つかさ「(噛んだ……)」
 紫「(噛んだわ……)」
 伊之助「(すっぎょく……)」


 睦彦「(カァ―――――――――――ッ)す、すごく嬉しいです………(めっちゃ小声)」
 仁乃「プッ。あははははは、むっくんってば緊張しすぎなんだから!」
 伊之助「だよなこコイツ弱っちいぜ! 俺の方が何倍も強ぇんだかんなァ!」
 睦彦「ハァ!?」


 【ということで玉入れに出る人は】
  悲鳴嶼 伊黒 光 伊之助 桜 華扇 紫 義勇(計8名)
 


 【ということで借り物に出る人は】
  睦彦 つかさ 霊夢 フラン 美鈴(計5名)


 【障害物に出る人は】
  仁乃 メイ 夏彦 無一郎 八雲(計5名)



 夏彦「よーっし最後にみんなで円陣組むぞ―――! お嬢は俺の隣でいいですよ?」
 桜「…………………………………………遠慮するわ」
 夏彦「なにその間っ!?」

 義勇「お前は嫌われている」
 夏彦「オーマイガー! アイムベリーサッド!!」
 メイ「先輩ー早くしてください。もうみんな円になってますよ~しまらないリーダーですねぇ」
 霊夢「言えてるわね」
 夏彦「うおっ言葉のナイフが(グサッッ)」


 ~一同、丸くなり円陣を組む~

 
 夏彦「よし、行くぞ『夏彦親衛隊』!!」
 伊黒「誰がいつお前を親衛するといった」
 夏彦「冗談に決まってるでしょ、空気読んでくださいよ!!」

 睦彦「いやお前こそ空気読めよ!? お前リーダーだろ??」
 夏彦「睦彦。キミとは同い年同士、心友と思ってたんだけどね……ッ」
 睦彦「実際にはお前の誕生日来たら一歳差になるけどなっ。ほら、白組ィィィ!」


 一同「ファイト――――――――――――――!!!」
 つかさ「やっほぉおおおおおお! 普のチームに勝つぞぉぉおお!」
 伊之助「勝負ゥ! 勝負ゥ!!」

 夏彦「……………あの………俺、リーダーなんですけど………」
 桜「あなたにはやれやれだわ。生徒会長と比べると雲泥の差ね」
 夏彦「まっ☆ それも俺のいいところだ☆(誰もフォローしてくれないので自分で言う)」


 (葵「うーん、マイナス100点♪」)


 ネクスト→運動会開始☆ 次回もお楽しみに♪


Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.51 )
日時: 2020/10/04 09:17
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 花子くんのマンガを、ついに購入しましたー!
 今までLINEマンガで読んでたので、やったー!
 全巻揃えるぞー! いえーい!(ちなみに4巻まで買いました。お金がなかったのです)

 ****************************


 桜『いよいよ始まりました、キメツ学園運動会。今日やる競技は、玉入れ、借り物競争、障害物競走、色対抗リレーです。皆さま、応援をよろしくお願いいたします……』


 〈寧々side〉

 寧々「葵っ。いよいよ今日が体育祭よ! 調子はど………あれ?」
 葵「どうしたの? 寧々ちゃん」
 寧々「は、ハチマキがない!? あれ、腰に巻いてた体操服の上着も……」
 葵「それって、『ようせいさん』が出たんじゃない?」

 寧々「…………(くるっ)」
 もっけ「……ゴメンナサイ」「暇ダッタ」「アメやる」
 寧々「もう、もっけちゃん! 今日は体育祭なのよ、私今が花の盛りなの!」

 花子「花の盛り?」
 寧々「せっかくチャンスがやってきたのっ!」
 葵「チャンス?」
 寧々「そう! ようやくチャンスが回ってきたの!!」

 花子「どっかで聞いたようセリフ………それで? そのチャンスって、もしかして俺と……」
 寧々「もーやだなー花子くんったら―」

 寧々「シジマさんから、生徒会の選手宣誓の使命をされたの…自分ではやらないって照れ屋よね」
 花子「あー。あーあー……カンッペキにデジャヴだよコレ」
 葵「良かったね寧々ちゃん!」
 寧々「良くないよぉぉぉぉ~」

 有為「どうしたんですか? もうすぐ入場行進ですけど」
 光「ハッ。花子お前また先輩を泣かしてっ」
 善逸「なんて奴だ!! 寧々ちゃん、そんな変態幽霊にかかわってないでこっちに行こう!!」
 禰豆子「ムームー!」

 花子「変態幽霊………またねサヨナラ」
 光・善・寧「うそうそ!! 男の子の幽霊カッコいい!!(デジャヴかも)」

 蜜璃「はぁ……どうしま(グーっ)……朝ごはん食べ忘れてお腹が(グーっ)」
 伊黒「どうした、甘露寺。顔色が悪いぞ」
 蜜璃「いいいいいいいいい、伊黒シャンっっ」
 伊黒「伊黒シャン………」

 無一郎「甘露寺さん、楽しみ過ぎてきのう夜更かししちゃったらしいんですよ」
 蜜璃「ちょっと無一郎くん!?」
 亜門「甘露寺さんもですか? コイツもなんですよね(チラッ)」
 睦彦「ふわぁぁぁぁ………兄ちゃんの………カツラが……」

 炭治郎「カナヲ。睦彦くんのことは何も触れないでおこう、いいな」
 カナヲ「あ、……う、うん……」
 伊之助「何言ってんだ陸太郎ォ。寝ぼけてんじゃねえぞ」
 睦彦「ふわぁぁぁぁあ~伊之助の頭に蝶がヒラヒラ……」

 しのぶ「何を言ってもダメですよ。彼に聞くのは、恋の注射しかないのです」
 一同「恋の注射?」

 仁乃「むっくんおはよう!」
 睦彦「(ぴくん)あ、お、おおおお、おはおは、おはようっ!」
 亜門「………バカ」

 
 輝「いいかい、光。この体育祭はいわばチャンスだ。これを逃したら次はないよ」
 光「え、ええっと、俺は……花子は、別に悪い霊じゃないかなって……」
 輝「何日待たせる気だい、言ったよね? いい幽霊なんて存在しないんだよ」

 光「で、ででで、でも、こ、コイツはいい幽霊だぞ!」
 ミツバ「え、え、何? 僕!?」
 光「ミツバ!! お、お前はいい奴だ!」
 ミツバ「い、いきなり何なの? ま、まあ僕はいい奴だけど?」

 煉獄「いよいよ体育祭だ! わっしょいわっしょい!」
 実弥「ついにこの時が来たかァ。負けねえぞ煉獄!」


 つかさ『それでは……えぇーっと、にゅうじょーこーしんを行いますので……えっと、せんしゅの方はテント前に集合してください』


 宇髄「だってよ。行くぜ皆。派手にな!」
 霊夢「こういうのは初めてだわ。楽しみね、魔理沙」
 魔理沙「おう! ぜってー負けねえからな! 咲夜、どうだった? 参加許可もらえたか?」

 咲夜「はい、玉入れは一緒に参加しますよ」
 フラン「やったーーーーー!」

 夏彦『それでは、楽しい運動会目指して、お互い頑張りましょう!』
 一同「ラジャ――――――――!」


 ネクスト→種目競技開始☆ 次回もお楽しみに♪


 閲覧数700突破! ありがとうございます☆
 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.52 )
日時: 2020/10/04 16:25
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 さっきまでLINEのなかよしオプチャメンバーで花子くんのなりきりしてた!
 花子くん(私)が茜・寧々(なぜか源センパイ側)・輝にやられかけてました。
 桜ちゃんや夏彦先輩やミツバくんとかいっぱいいて、ろくきせみたいだなって。
 よし、がんばってこー!

 ****************************

 【入場行進を終えた一同】


 輝「これから第X回、キメツ学園運動会を始めます」
 メイ「始めに、校長先生のお話です」
 無惨「(壇上に立って)」

 伊之助「………話長い奴か。嫌だぜ俺は。こんな長話に付き合ってられっかよ」
 炭治郎「気持ちはわかるが我慢だ、伊之助」
 悲鳴嶼「静かに聞いてろ……南無阿弥陀仏」

 無惨「頑張れ! 以上だ」


 花子「…………は?」
 光「ん?」
 寧々「え?」
 
 花子隊&かまぼこ隊&柱&東方キャラ一同「んんんんんん?」


 輝「え、えっと……もう、終わりですか? 話」
 無惨「聞こえなかったか? 以上だ」
 アオイ「は、は、はい。す、すいません。それでは続いて選手宣誓です。代表の方は前へ」

 無一郎「(なんだったんださっきのは)」
 ルーミア「(わはー。短すぎるのだー)」
 葵「(先行きが不安になってくるわ~……)」


 寧々「うっ……。ハァァァァ………(壇の前へ)」
 炭治郎「大丈夫だ寧々ちゃん。俺も一緒にいくし、時透くんと美鈴ちゃんもいるんだし」
 無一郎「腹くくりなよ。どうせすぐに終わるんだから」
 美鈴「さあ、行きましょう~」


 ~三人、輝に向かい合って右手を上げる~


 寧々「(ハァ~源センパイかっこいいわ~。ま、これはこれでいいわよねっ)」
 つかさ「おーい。おーい前へ進んで―」


 炭治郎「宣誓―! 僕たちは、この体育会で己の全力を発揮し!」
 寧々「勝負にかかわらず、みんなが笑える体育会を作り上げることを誓います!」

 無一郎「令和X年 10月4日 白組代表 時透無一郎ときとうむいちろう
 美鈴「紅美鈴ほんめいりん
 寧々「紅組代表 八尋寧々やしろねね
 炭治郎「竈門炭治郎かまどたんじろう


 アオイ「代表の選手は、自分の列に戻ってください」
 炭・無・寧・美「ホッ」
 仁乃「おつかれ寧々ちゃん、炭治郎さん」
 炭治郎「ありがとう」

 しのぶ「生徒会も大変ですね。たった三人で今まで準備してこられましたし」
 華扇「そうですね……。お疲れ様です」
 睦彦「終わったらみんなで打ち上げだな」
 パチュリー「そうね」

 輝「それでは、このあと軽く準備運動を行った後、玉入れから行います。っと、その前に……」
 メイ「本日の係員をお知らせします。まず、生徒会です」
 アオイ「生徒会長・源輝。そして生徒会員、神崎アオイと四島メイでお送り致します」

 ~パチパチパチパチ~


 桜「本日の、競技の司会進行・放送を担当します。七峰桜ななみねさくらです」
 夏彦「日向夏彦ひゅうがなつひこです☆」
 つかさ「やっほー! 柚木ゆぎつかさだよ―――!」
 ミツバ「え、っと、三葉惣助みつばそうすけです……よろしくお願いしますっ」

 善逸「頑張れ――――――!」
 蜜璃「よろしくね―――――――!」
 亜門「フンッ。ファイト」

 
 ~放送室メンバー一同、テーブルに座って~


 桜「(ラジオカチッ)それでは、玉入れに出場する人は選手集合場所に移動してください」
 夏彦「本日の放送係は放送室メンバーで、お送りします」
 ミツバ「さあってことで始まりましたねー! 調子はどうですかー!」
 

 花子「(無理……してるなァ)」
 光「ミツバ――――! 応援してんぞ―――!」
 もっけ「アメやる」「クウカ?」


 つかさ「調子は俺はバッチリだよ! ミツバはどう?」
 ミツバ「ま、まあ? クレイジーゴーストくんに比べれば大丈夫だよ」
 つかさ「……くれいじーごーすと」

 輝「よーし、白組行くぞぉおお! ファイト―――――!」
 白組一同「オー―――――――!」

 夏彦「んじゃ、紅組も全力で行くよ☆」
 紅組一同「オー―――――――――!」

 ネクスト→玉入れ開始☆次回もお楽しみに♪

 
 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.53 )
日時: 2020/10/05 20:45
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 {花子くん風にオリキャラのプロフィール}


 むう

 好きなおやつ:抹茶アイス
 最近の悩み:受験勉強のストレスがすごい


 刻羽睦彦こくばむつひこ

 好きなおやつ:栗きんとん
 最近の悩み:花子にからかわれる日々から逃れられない

 
 胡桃沢仁乃くるみざわにの
 
 好きなおやつ:わらび餅
 最近の悩み:髪をくくるときに左右対称にならない


 瀬戸山亜門せとやまあもん

 好きなおやつ:いちじくのシロップ漬け
 最近の悩み:運動したら死にかける


 宵宮有為よいみやうい

 好きなおやつ:キャラメル
 最近の悩み:地味に人気がない

 
 月原八雲つきはらやくも

 好きなおやつ:苺のショートケーキ
 最近の悩み:カオ僕の八雲と勘違いされる

 
 燐月りんげつ

 好きなおやつ:炙り昆布
 最近の悩み:来世、骸と付き合えるのか不安


 銘祈めいき

 好きなおやつ:水まんじゅう
 最近の悩み:実は主役狙ってたりする

 
 求手名ぐてな

 好きなおやつ:おまんじゅう(こし餡)
 最近の悩み:いい奴すぎて人間と間違われる

 
 新羅しんら

 好きなおやつ:人間の血
 最近の悩み:つかさとタッグ組みたい(ヤバス)

 
 むくろ

 好きなおやつ:金平糖
 最近の悩み:燐月がうるさい


 彼岸ひがん
 
 好きなおやつ:べっこう飴
 最近の悩み:妹の姉離れが寂しい

 
 {花子くんキャラに今んとこのろくきせでのプロフィール}

 花子くん

 好きなおやつ:ドーナツ
 最近の悩み:源先輩からいつ祓われるかヒヤヒヤしてる

 八尋寧々やしろねね

 好きなおやつ:苺大福
 最近の悩み:いつむうからお魚にされるかヒヤヒヤしてる


 源光みなもとこう
 
 好きなおやつ:芋ようかん
 最近の悩み:『ひかり』じゃなくて、『こう』!!



 もっけ


 好きなおやつ:飴
 最近の悩み:ななばんに、はなふだでかてぬ(前まではずっと勝利)

 
 ヤコ

 好きなおやつ:シベリア
 最近の悩み:いつ、ろくきせに登場するのかしら……


 ミツバ

 好きなおやつ:プリン
 最近の悩み:じ、じみに登場回数多いんだけどっ!?


 源輝みなもとてる

 好きなおやつ:スイートポテト
 最近の悩み:生徒会3人しかいない………



 土籠つちごもり

 好きなおやつ:べっこう飴
 最近の悩み:お前ら大正時代に行くのはいいが宿題しないと許さないぞ

 
 つかさ

 好きなおやつ:サクラのつくったもの全部
 最近の悩み:あまね


 七峰桜ななみねさくら

 好きなおやつ:落雁らくがん
 最近の悩み:夏彦をあしらうのが特技になりつつある


 日向夏彦ひゅうがなつひこ

 好きなおやつ:黒豆せんべい
 最近の悩み:お嬢から図鑑投げつけられてばっかり。。

 
 
 
 
 


 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.54 )
日時: 2020/10/06 15:49
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 玉入れ開始でーす☆

 ****************************

 【白組出場メンバー】
  悲鳴嶼 伊黒 光 伊之助 桜 華扇 紫 義勇(計8名)


 【紅組出場メンバー】

 寧々 亜門 魔理沙 ミツバ 茜 カナヲ 有為 蜜璃(合計8名)


 桜『最初の競技は玉入れです。各組8名で行います』
 夏彦『黄色の1点ボール、青色の2点ボール、直径10㎝の緑ボールは10点です』
 ミツバ『それでは、ゲーム開始です』


 〈白組side〉

 悲鳴嶼「みんな………自分のペースでやればいい。あとは私がなんとかする」
 光「了解っす!」
 伊之助「10点ボールは俺が入れる! いやっふうううう!」

 桜「貴方たち(華扇、紫)。バレない程度にスペカ打って頂戴ね」
 光「ダメっすよ七峰先輩」


 〈紅組side〉

 亜門「なるほど。点数が変わっているんだな」
 寧々「入るかしら……。この前のハンドボール投げ、上手くいかなかったし……」
 カナヲ「大丈夫。一緒に、頑張ろう」
 寧々「うん!」


 炭治郎「紅組ファイト―――――――!」
 輝「負けろー光ー!」
 花子「負けろ少年―――――!」

 光「輝兄と花子、意外と仲良し!!」


 つかさ『普ってそのヒトと仲いいの?』
 花子「そ、そんなワケ…………」
 輝「あるわけないじゃないか(イケメンスマイル)♪」
 花子「で、ですよね…………」
 
 葵「寧々ちゃん頑張って~」
 ルーミア「白組応援してるのだー! 沢山いれるのだー!」
 夏彦『お嬢応援してますよ!』


 もっけ「がんばれ」「我々もアメ投げる」「やむなしやむなし」
 善逸「それではー。いちについてー。よぅい、(パン!!)」


 
 〈紅組side〉

 寧々「えいっ(ポイっ)。うーん………もう一回! えいっ(ポーン)」
 亜門「八尋さん、僕に任せて」
 寧々「瀬戸山くん! (か、カッコいい~!)」
 亜門「(刻羽だけにカッコいいとこ見せてつけられてたまるかっ)えい!(ブンッッッッ)」


 ~ひゅるるるるるるるるるるるるるる~


 ~ズボッッ~


 魔理沙「いたッ。なんか頭に当たったぞ……って、え、狐?」
 ヤコ「ちょっとあんた! なに投げてんのよっ」
 蜜璃「あなたももしかして妖怪なんですか? あ、10点ボール入ったわ!!」

 ミツバ「すごっ!?」
 寧々「あ、あなたは、ミサキ階段の……狐ちゃん!」

 ヤコ「あたしの名前はヤコ! お狐さんなんて言ったら、噛みち……」
 花子「きつねうどーん!!(テントから)」
 ヤコ「なんであんたがここにいるのよ7番ッ」

 土籠「お前こそ、何でここにいるんだ野良狐」
 ヤコ「うっさいわね根暗蜘蛛!!」

 

 〈白組side〉

 
 伊之助「おりゃぁぁぁぁぁ(ブンッッッ ボスッッ)」
 義勇「凄いなお前。今10点入ったぞ」
 伊之助「ふふん見たか半々羽織! 伊之助様にかかればこんなもんよ!」

 紫「よーし私たちもやりましょうか!」
 華扇「え、え、やるんですか? わ、分かりました。行きますよ!」
 二人「スペルカード………」

 輝『おーい誰かないらないことを吹き込んだのは。ということで白組10点減点ね』
 桜「ちっ」
 
 伊黒「なにしてるんだお前は」
 悲鳴嶼「悪い霊がついているようだ……すぐにでも祓わなければ………南無阿弥陀仏……」
 つかさ『え、俺打ち払われるじゃん』
 光「だから言ったのに………」


 ----------------------


 第一回玉入れ 得点結果

 【白組】

 1点ボール:24個
 2点ボール:5個
 10点ボール:2個
 ヤコ:一匹

 計54点


 【白組】

 1点ボール:20個
 2点ボール:10個
 10点ボール:1個
 +10点減点


 計60点


 
 ミツバ『只今の結果をお知らせします。1位、白組で60点。2位、紅組で54点でした』
 桜『続きまして次の競技は借り物競争です。出場する生徒はテント前に集合してください』


 ネクスト→借り物競争開始。お楽しみに♪



 ----------------------


 おまけ

 【花睦で10回チャレンジ】

 花子「刻羽、好きって10回言って」
 睦彦「好き、好き、好き、好き好き好き好き好き好き好き」

 花子「胡桃沢のことは?」
 睦彦「好き」



 10秒お待ちください


 睦彦「(カァ―――――――――――ッ)」
 花子「ジョーネツ的ィ♪」
 睦彦「(ポカッッッ☆)」


 【つかさくで10回チャレンジ】

 桜「あまねって10回言ってみてくれる?」
 つかさ「あまね、あまね、あまね、あまね、あまね、あまねあまねあまねあまねあまね」
 桜「アレは?(ラムネを指さして)」
 つかさ「あむね!!」

 
 【レイマリで10回チャレンジ】

 霊夢「魔理沙。東方って10回言って」
 魔理沙「東方東方、東方東方東方東方東方東方東方東方」
 霊夢「東方の原作者は?」
 魔理沙「とーほうありすげんらくだん」


 ※正:東海とうかいアリス幻樂団げんらくだん
 


 
 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.55 )
日時: 2020/10/06 16:01
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)


 キャラに○○してみる

 {仁乃睦でミルクボーイ風漫才をやってみる}

 仁乃「どうもー胡桃沢仁乃でーす!」
 睦彦「刻羽睦彦っす!」
 二人「よろしくお願いしまーすっ!」

 仁乃「えー私、実はね、ちょっと分かんないことがあって」
 睦彦「なんだ?」
 仁乃「むうちゃんが忘れちゃったろくきせのオリキャラを、ずっと考えてるんだ」
 睦彦「よし、じゃあ俺が一緒に考えてやるから、特徴を教えてくれ」

 仁乃「むうちゃんが言うには、『毒舌』だって」
 睦彦「宵宮じゃねえか。それはどう考えても宵宮じゃねえか。
    宵宮は出会い頭に花子を便所虫っつって、アイツがトラウマになりかけたくらいなんだぞ」

 仁乃「私もそう思ったんだけど、どうやら有為ちゃんじゃないらしいの」
 睦彦「なんでだよ!」
 仁乃「その子は、『開始三秒でやられる』って言うの」
 睦彦「ジャア宵宮じゃねえな。陰陽師があっさりやられたら、ろくきせ完結してねえからな」

 睦彦「他に、なんか言ってなかったか?」
 仁乃「むうちゃんが言うには、『敬語で僕っ子が特徴』だって」

 睦彦「宵宮じゃねえか。敬語で僕っ子ってアイツの他に誰がいるんだよ! 
    僕っ子で目立たせようとしたのに、俺たちのキャラが濃すぎて埋もれちゃうって嘆いてた
    宵宮じゃねえか!」


 仁乃「私もそう思ったんだけど、その子は『18歳』らしいの」
 睦彦「違うなそりゃ。宵宮はお前と同じ14歳で、そりゃ確かに年上すぎるよな。他には?」

 仁乃「むうちゃんが言うには、『花子くんと絡ませると険悪になる』って言うの」
 睦彦「宵宮じゃねえか! いっつも便所虫って言うから花子が話しにくそうにしてるもん!
    でも最近は仲良しになってホッとしたんだ! 良かった! じゃあ人気ももっと出てくれ」

 仁乃「それが、むうちゃんが言うには、『七峰桜ちゃん』だっていうの」
 睦彦「じゃあぜってーに宵宮じゃねえな! ってかその特徴でなんで七峰なんだよっ!」
 二人「以上。ありがとうございました――――ッ」
 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.56 )
日時: 2020/10/27 11:09
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 こんばんにちは、むうです。
 続いては借り物競争!
 みんなは一体何を借りるのでしょうか?
 
 **************

【赤組メンバー】
 炭治郎(禰豆子) 輝 善逸 ミツバ しのぶ(計5{6}名)


 走順:しのぶ→ミツバ→炭治郎&禰豆子→善逸→輝

【白組メンバー】
  睦彦 つかさ 霊夢 フラン 美鈴(計5名)


 走順:霊夢→睦彦→美鈴→つかさ→フラン



 夏彦『続いては借り物競争です。各色5人ずつがコートを半周しバトンを繋ぎます』
 桜『その途中にある箱からお題の紙を取り、指定された物を借りに行ってください』
 二人『それでは、皆様の応援をよろしくお願いいたします』


 義勇「借り物競争は人物名も入っているからな。呼び出しがないことを祈る」
 仁乃「いつでも行けるように準備しておかないと……」
 ルーミア「どんなものがお題になってるのだ?」
 ヤコ「あたしに聞かれても分かんないわよ!」

 実弥「そこの狐の言うとおりだァ。ヘタに喋っちまうとつまんねえだろ?」
 伊黒「同意する」
 有為「なるほど。最初こそ白組が劣勢ですが、メンバー表を見ると勝ちそうな予感がしますね」

 紅組メンバー一同「・・・・・・・・・・・」

 花子「負けろぉ白組――――――!!」
 亜門「転べぇ刻羽――――――――!!」
 葵・寧々・「源先輩ファイトです――――――!」
 宇髄「派手に行けぇ!」

 ~どうしても勝ちたい紅組一同~


 仁乃「むっくん頑張って――――!」
 桜「頼むから誰も殺さないでちょうだい。いいわね」
 つかさ「はーい!」
 伊之助「負けんじゃねぇぞお前ら!」
 メイ「頑張ってくださいね~」


 ~どうしても挽回したい白組一同~


 パチュリー「(←ピストル係)それでは、第1走の二人、準備はいい?」
 し・霊「OKです(いいわよ)」
 パチュリー「それでは、いちについてぇ! 用意、(パン)!!」


 桜『さぁスタートしました借り物競争。第1走者は、赤組の胡蝶さん対、白組の博麗霊夢さん』
 夏彦『おーっと、どっちも速いな。でもしのぶさんが若干速い! 霊夢も必死で追い上げてる!』
 

 しのぶ「さすが博麗の巫女さん。速いですね!(ダダダダダダ)」
 霊夢「負けてられないわ!」


 桜『と、ここで両者お題を引きます。二人とも客席に向かって走ってるわね』
 夏彦『お題は一体なんだったのでしょうか。しばらく様子を見てみましょう』

 しのぶ「(ぺらっ)え、えっと……『柱のメンバー』!? と、冨岡さぁぁぁん!!」
 義勇「げ」
 もっけ「みごとにブーメラン」「我らもよびだされたい」「うむうむ」

 夏彦『おっとしのぶさん、義勇さんと一緒に走っていきます。お題を確認、クリアです』
 赤組メンバー「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 桜『一方霊夢さんは、倉庫に向かって走っていきます。野球ボールを手にしてるわね』
 夏彦『どうやら丸いもの、だったらしいね。おっと追い上げてく! 速い!』

 つかさ「れーむ行けぇぇぇぇ!!」
 フラン「霊夢ぅぅぅ!! 行ける行ける!!」
 光「霊夢ファイトだ!!」


 桜『白組、第2走者に回りました。紅組も交替! 続いては白組の睦彦くんVS紅組のミツバ」
 夏彦『(←白組リーダー)ミツバちゃん!頑張れぇぇぇぇぇぇ!!』
 桜『夏彦、中継を忘れないで。あと応援してるのは敵の色よ』


 睦彦「ハァ、ハァ。う゛っ、義足で走りにくい!! でも、負けたくねぇ!!(ダダダダ))」
 ミツバ「は、速いよ僕あんまり運動得意じゃないのにっ。……仕方ない(ダダダダ)」
 
 夏彦『流石睦彦。持ち前の運動神経を活かして、どんどん差を広げていく!』
 桜『と、ここでミツバがなにか秘策を思いついたようです』

 ミツバ「やーい! この、3T~」
 睦彦「………(カッチーン)はァ!?」
 ミツバ「プッ。そもそもなに? 君より僕の方が顔面偏差値高いんだけど?」
 睦彦「…………おー――――ま―――――え――――な―――――!!」



 珠世「ミツバくんらしいやり方ですね。あ、咲夜さんそっちのタオル水に濡らしといてください」
 咲夜「分かりました」


 桜『お得意の他人の神経を逆なでする方法を使い、ミツバが睦彦の隙をついて加速してます』
 夏彦『………あっちゃー。睦彦は素直だけどちょっと直情径行だからなァ」 
 桜『さて、二人ともお題を引きます』


 睦彦「(カサッ)え、っと………す……、『好きな人』ぉ!??///」
 ミツバ「えと、…………ハァァァァ!!??『かわいい人』なんて僕以外いないんだけどッ」


 ネクスト→二人は一体誰を選ぶのか。次回もお楽しみに♪

 
 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.57 )
日時: 2020/10/11 16:58
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

おはよう!
病欠で休んでいるむうです。
中間の勉強のため・しばらく更新停止します
ちゃんと待っててくれると、嬉しいです。
そして土日に花子くん全巻買ってくるんで一緒に語れたらいいなって思ってます!それじゃあまた、バイバーイ!

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.58 )
日時: 2020/10/10 15:13
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)


 【大正コソコソ噂話】

 ↑誰でしょうかね、バイバイと言ったくせに今ここに来ているバカは。
 あのね、皆さんにどーしても、どーしても謝りたいことがあってきたのっ。
 だから悪くないんですっ。許してください。あ、また謝っちゃった。

 こんなにぺこぺこ謝る作家も珍しいと思います。
 が、ろくきせの時に皆さんに伝え忘れたことがあり。
 その件に関して個人的に申し訳ないなって思ってたので、伝えますね。


 1.誤字脱字がとにかく多い件について

 すみません。何だこれってなったと思います。 
 ここ抜けてる、とかここwとか鼻で笑いましたよね。
 持病のうえ、何かと見にくかったと思います。只今修正中です。
 また、難しい漢字にはルビを振ろうと思ってます。
 また何か、「ここ間違ってる、この漢字何?」とか気づいたことがあればコメント頂けると幸い!


 2.表記がところどころ違う点について


 ろくきせ初期で、花子くんが寧々ちゃんを「八尋やしろ」、のちに「ヤシロ」と表記が違う点。
 あの、言い訳っぽくてすみませんが、私アニメしか見てなかったんですその時。
 だから「あー花子くんって寧々ちゃんの事『やしろ』って言うんだぁ」くらいしか分からなくて。

 で、あとで色々調べると、「え、カタカナだったんだ!?」
 「夏彦、つかさのこと『チビ』って言ってるんだ」
 とか矛盾点がバァ―――ってなって、こりゃダメだと思って修正した結果がアレです。
「にわかで乙」はい、にわか者の作品を読んでくださってありがとうございます。


 3.あと言いたいこと

 ネタバレ注意って書いてあるから読むのやめたっていう方へ。
 マンガの「エソラゴト編」から先のネタバレは一切ないです、安心してください。
 あと、キャラ崩壊や性転換も入れないようにしてます。
 なので、安心して読んでくださると嬉しいです。

 

 4.まとめ

 謝罪に始まり謝罪に終わる、むうの謝罪フェスティバル、いかがだったでしょうか。
 モヤモヤしてた部分が明かされてくれれば幸いです。
 このあと本編の続きも投稿予定ですので、お楽しみに。

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.59 )
日時: 2020/10/11 17:53
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 {本編前のこぼればなし:オリキャラの秘密}

 土籠「さァて、借り物競争前にお前らの本でも読んでおこうかねェ」
 一同「!!?」

 16時の書庫の管理人・土籠つちごもり先生の書庫にはその人について書かれた本がある。
 過去や未来についてもすべて書かれてあるよ!


 花子「イジメちゃだめ……と言いたいところだけど、俺も気になってたんだよねー」
 土籠「いいですか七番サマ?」
 花子「俺にも見せてくれるならいいよォ」
 一同「!!!???」

 寧々「わわわ、私の本は前に見たからいいですよね! ね!?」
 光「おおお、オレも秘密教えたんで勘弁してくださいっす」
 土籠「そうだなァ……。そこのカンナギと祓い屋だけは勘弁してやろうかねェ」

 寧・光「ホッ」
 残りのメンバー「!!!!????」
 土籠「まァ、俺も悪者わるもんじゃねえ。代わりに―――」

 土籠「お前らの個人的な秘密を教えろ」
 花・光・寧「出たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」


 ~こうしていつかのコングがまた、幕を開けたのです~


 亜門「じゃあ、行きます!」
 炭治郎「亜門くん頑張れ!」
 霊夢「活躍を期待してるわ」

 西 睦彦とは犬猿のトモダチ瀬戸山亜門せとやまあもん
     VS

 東 16時の書庫管理人・土籠


 亜門「僕の秘密はっ……! い、家の猫を刻羽だと思って、は、話す練習をしてたことですっ」
 睦彦「マジで!!」
 仁乃「素直になればいいのに………()」

 土籠「3点」
 亜門「あがッ、なんでだよ!」
 土籠「そんなに仲良くしてェなら、そんな下らないことはやめてとっとと話せばいいだろうに」
 亜門「う゛っ」


 無一郎「亜門は立派に戦ったよ………」
 義勇「そうだ、お前は嫌われていないのだから安心しろ」
 

 仁乃「つ、次、私行きますっ」
 善逸「仁乃ちゃん頑張って!」
 葵「仁乃ちゃん応援してるよー」


 西 ヒロイン&モテ女№2・胡桃沢仁乃くるみざわにの
     VS
 東 16時の書庫管理人・土籠


 仁乃「私の秘密は、む、むっくんの寝顔をこっそりミツバくんに撮ってもらってることですっ!」
 一同「!!?」
 睦彦「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 蜜璃「いやーんこれが青春ってやつなのね~。私も経験してみたいわ~」
 茜「流石、モテ男№3(睦彦のこと。ちなみに1位は輝)………」


 睦彦「お、お、おいミツバ!! テメッ、マジかよ!?///」
 ミツバ「うわっ、し、仕方なかったんだよっ、く、胡桃沢さん怒ると怖いんだよ!!」
 睦彦「知ってるわそれくらい!! 撮ったんだな!?」
 ミツバ「はい、ごめんなさい………」


 土籠「1点」
 仁乃「へっ? ど、どこが悪かったんですか!?」 
 土籠「どこと言われても、真っ昼間からのろけ話は、どうにも性に合わなくてね」

 睦彦「じゃあ、次は俺がいく!」
 仁乃「お願いむっくん!」

 
 西 カッコつけ成り上がり・刻羽睦彦こくばむつひこ
    VS
 東 16時の書庫管理人・土籠


 睦彦「俺の秘密は、ずっと、サンタさんはいるって思ってたことですっ」
 一同「……………え?」
 有為「というか実家が神社の人が、クリスマス信じていいんですか?」

 光「………え、いないんすかサンタクロース!?」
 寧々「え!?」
 輝「え、いないの?」
 葵「ええええ!??」


 寧々「ね、ねえ葵。もう何も言わないでおきましょう」
 葵「そ、そ、そうだね寧々ちゃん。せ、先輩たちもよろしくお願いします」
 夏彦「あーうん、分かったよ」
 桜「まさかの源家が…………」


 ☆END☆
 

 おまけ


 むう「私の秘密は、いっつも風邪のときに親に隠れてマンガ読んでることですっ」
 土籠「健全すぎるだろうが」




 
 
 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.60 )
日時: 2020/10/17 21:15
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 お久しぶりで―――す!
 この度、やっと! テストが終わりましたぁぁぁぁ!
 明日は家族で鬼滅の無限列車! そして花子くん全巻購入! うひょー楽しみ!
 皆さんにもどうかどうか、楽しい出来事が訪れますように。
 それでは4日ぶりの、ようやくの続き、どうぞ!

 ****************************

 〈睦彦side〉


 俺は困っていた。
 引いたくじに書かれた借りる物の条件は、好きな人。

 これが片思いとかなら、即好きな人がバレてしまい根掘り葉掘り聞かれたりするのだろうけど。
 運のいいことに(?)俺に関しては片思いではなく、胡桃沢と付き合っていることも公認だ。

 でも、公認されてるからと言って……。
 とんでもなく恥ずかしいことに、変わりはない。
 
 チラッと横を見ると、紅組のミツバが、あたふたとせわしなく目の前で手を振ってる。
 どうやら向こうも、何か恥ずかしいお題を引いたようだ。
 向こうは何を借りればいいのかもまだ分からない様子だから、多少こっちが有利なはずだった。

 でも、俺はその場から一歩も動けなかった。
 胡桃沢がいるテントはちょうど、今経っているコーナーから真正面の位置にある。
 急がずとも一分もあれば辿り着ける距離。そして彼女と一緒にコーナーを回るだけの話。

 睦彦「(なのに何だこの感情はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!)」

 しかたない。ここで永遠に動かなかったら、組長の夏彦を始め色のメンバーに迷惑がかかる。
 俺は軽く首を振ると、大きく深呼吸しながらテントへと駆けていく。
 俺がテントに向かってきたことに気づいた胡桃沢は、少しだけ目を丸くしたようだった。


 メイ「あれ、睦彦くんがこっちに来ましたけど、ひょっとして仁乃さん目当てなんじゃ……」
 仁乃「え、ええ!? そ、そんなはず、ないと思うけど………」
 葵「準備しておいた方がいいよ。相手がその気になれば、いつでも連れてかれちゃうんだから!」
 仁乃「え、ええ~!?」

 ………おい声が大きいぞ、シジマさんと赤根あかね
 しかも……赤根は紅組なのに、なんでうちの組のアドバイスなんかしてんだ?
 あ、そうか。胡桃沢と仲がいいんだっけ。流石、モテ女№1と№2。

 睦彦「く、く、くるみざわ―――――――――!!」

 焦りすぎたのか、両足がもつれそうになる。
 慌ててテントに滑り込んだ俺に、白組一同が揃って驚き、二、三歩後ずさった。

 仁乃「ど、どうしたの? むっくん」
 睦彦「き、来て!」
 仁乃「あ、ちょ、ちょっと!」

 説明なんか、出来るはずがない。察してくれ頼む! 
 こんな公の場で、『好きな人と一緒って書いてあったから!』とか言うのはマジで無理なんだ。
 俺は胡桃沢の細い手首をつかんで、半ば強引に一緒にコーナーを走る。


 桜『睦彦くんは仁乃さんと一緒に走りました。この点を見て何か思うことは? 先生』
 土籠『何で俺が………』
 夏彦『ま、ま』

 土籠『そうだな……。俺ァあの2人の過去も未来も知ってるからねェ。やっぱり恋人同士……』

 睦彦「(余計なこと言わないでください、土籠先生!!)」
 仁乃「そうなの、むっくん?」
 睦彦「そ、そ、……………はい………///」

 花子『あはっ、だよねー』
 土籠『ッ!? お前何でここにいるんだ。テントに戻れ』
 花子『土籠ィ――。いいジャン、一緒に王様ゲームした仲でしょー? ね?』
 土籠『…………そんなことも、あったなァ………あんときは源(兄)が………』

 ※詳しくは、「放課後少年花子くん」を見てね

 もっけ『りあじゅう、ゆるさぬ』
 もっけ『我ら、むつひこよりカワイイ』
 もっけ『ころす ほかほかにしてころす』
 もっけ『ほかほかにしてころす! ななふしぎになる!』

 ☆教えてもっけちゃん ほかほかにしてころすって、なーに?☆

 ほかほかにしてころすは、ねっさつほうきゅう(熱殺蜂球)という。
 ハチとかが、しゅうだんで敵をあたためてころす、せんとうぼうぎょほう。
 我ら、ななふしぎにころして、ななふしぎになって、アメばたけつくる(^▽^)/

 もっけ一同「わ――――――――!(睦彦と仁乃に向かって高速突進)」
 仁乃「へ!? うわぁぁぁぁぁぁ、もっけちゃんァァァァァァァァァァァァァ!!」
 睦彦「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
 もっけ「ななふしぎになる―――――――――――――!」


 土・花・桜・夏『仁乃睦コンビ、安らかに……………(合掌)』


 ※アーメン

 ネクスト→ミツバside。次回もお楽しみに♪
 
 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.61 )
日時: 2020/11/14 19:02
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 〈ミツバside〉


 僕は困っていた。
 ただでさえ運動は得意じゃないのに、それもよりによって借り物競争。
 しかもそのお題は、「可愛い人」。
 
 ………これってさぁ……。


 ミツバ「僕以外に可愛い人なんているわけないでしょぉ!! この、変態ッ!!」


 押し殺していた感情が爆発して、つい口が滑る。
 大声に反応して、テントで競技を観戦していた生徒や先生たちが、一斉にこっちを見た。
 しまった、ちょっと声がおっきかったかな。

 まあ、こんなに大勢の人を振り向かせられるのも、僕が可愛いからだよね!
 なにせ僕は七不思議三番!
 可愛くて七不思議の力も使えるなんて、すっごいでしょ!
 褒めてくれてもいいんだからね?

 って言ってるバアイじゃないよ。
 どうしよう、可愛い人って条件なら、このままコーナーを曲がって係員に「僕が一番可愛いんで!」と言えばいいだけなんだろうけど……。
 
 チラッと、コーナーの外側で借り物があってるかチェックをしている、ある人物を視界に留める。
 借り物競技の係員は、四人。
 生徒会の神崎アオイ先輩と、蒼井茜先輩、レミリアさん、それに源くんだ。

 レミリアさんや源くんはともかく。
 いつだってカリカリタイプの神崎先輩と、「7番様許さない」オーラプンプンの蒼井先輩……。
 多分絶対OKもらえそうにない。


 ~予想 アオイver.~

 『僕って絶対可愛いんでぇ』
 『……………(ドン引きの顔)』

 ~予想 茜ver,~

 『僕って絶対可愛いんでぇ』
 『だから何? 言っとくけどね、君なんてまだ中の下だから。
  アオちゃんに比べれば君なんて僕にとっては空気と同じ。
  わかった? そんなくだらないこと言うあたり、やっぱり怪異って嫌いなんだよね』
 

 それに……。


 もっけ「にのむつ、ころすぅぅぅぅぅぅ――――――!!(ズドドドドドドドド)」
 仁乃「うぎゃあああああああああああ!! 助けて誰かぁぁぁぁぁぁ!!」
 睦彦「胡桃沢、大丈bァァァァァ――――――!!」

 寧々「えーっと、…………は、花子くん、これって一体……」
 善逸「どういうこと!? ねえこれどういうこと!?」
 
 さっきから、ずっともっけって言う怪異が胡桃沢さんと刻羽くんを襲おうとしてるし……。
 こ、この運動会本当に大丈夫なのかなあ……。
 それに、つかさくんも一緒にいるんだし……。


 『一度作ってみたかったんだよねー。人造人間』
 『はーい、どうどう。これはミツバを守るためなんだよ? ちゃんと制御して』
 『俺言ったんだよねー。ミツバは此岸にとどまれないくらいに弱っちいから、強い怪異を倒して、食べなきゃダメだよって』


 ………いやいや、それはそれ、これはこれ!!
 今は借り物を探すことに集中しないとッ。この、可愛い僕がちゃんとやるんだっ!
 まぁ、一番近くにいる女の子でも捕まえて、一緒に走ってもらえばいいかな。

 


 ****************************



 ミツバ「あ、あの、ちょっといい?」
 有為「…………は、はい?」


 僕が声をかけた相手は、この子。
 宵宮さん。ストレートの白髪が特徴の、一コ下の女の子。
 陰陽師の子孫って聞いてるから、多分源くんとだいたい同じような立ち位置なんだろう。


 竈門くんたちとよくつるんでるけど、陰から見守ってるって感じで積極的に話には乗ってない。
 なんか、ちょっとだけ自分と似てるかも。
 ああ、あくまでも可愛いのは、『この』僕なんだからね!
 ただ、キミは2番目ってこと!

 ミツバ「え、っと……。初めまして、僕はミツバ。同じ色だよね。よろしく」
 有為「あ、え、えっと。よ、宵宮有為よいみやういです、どうも。何の用で?」
 ミツバ「ああ、借り物競争。ちょっと、助けがかりたくて。か、可愛い人ってお題で」

 その言葉に、宵宮さんは大きく目を見開いた。
 透き通った二つの瞳で、僕をまっすぐに見つめる。
 

 霊夢「あら、珍しい組み合わせね。そう思わない? 魔理沙」
 魔理沙「確かになー。でも根本的な意味だと、似てるもんだと思うぜ」

 メイ「あのお二人はけっこう、めんどくさいですからねぇ。まあ睦彦くんや七番様もそうですが……。ひねくれ者、ツンデレ、カッコつけ、秘密主義」
 炭治郎「秘密主義? 花子くんが?」
 無一郎「確かに何考えてるか分からないし、はっきり言ってめんどくさいよね」
 
 花子「う゛っ」
 茜「7番様はスケベで下劣なガキって噂ですよね」
 花子「また……また言われたよ……初対面でも言ったよね、そのセリフ……」
 茜「え? 何言ったか聞こえませんでした。もう一回どうぞ。スケベで下劣な七番様」
 花子「………き、聞こえてるじゃん………」

 ああ、やっぱり七番様って、好き嫌い分かれてんなぁ……。
 僕? 僕はまあ、普通だよ。好きでも嫌いでもないし。
 まあ、ちょっと下品なのは認めるけど、なんだかんだ言っていい人だから。

 《好き派》寧々 光 ヤコ 土籠
 《嫌い派》茜 輝 メイ

 茜「あー、3番? 僕のアオちゃんになんか手出したらマジで許さないから」
 ミツバ「ギャ―――! やめて、金属バットはやめてぇぇ!!」

 葵先輩が好きすぎて、彼女のことになると止まらなくなるのが先輩の悪癖だ。
 苗字がアオイアオイになるって言われたとかで、只今0勝2451敗だとか。
 
 有為「………あの、ミツバくん」
 ミツバ「は、は、はいッ」
 有為「………さっきの言葉、本当ですか?」

 え、さっきの言葉って、なに?
 意味が分からず首を傾げた僕に、宵宮さんは俯きながら小さな声で答える。

 有為「………可愛い人って」
 ミツバ「あ、あーあ、え、っとさ、もう時間ないし。そ、それにっ」


 ミツバ「……ぼ、僕が1番でっていう前提としてだけど、キミもけっこう、可愛いから」
 有為「~~~~〇×△◆!!!???」

 宵宮さんの顔が次第にリンゴのように熟れて、彼女は言葉にならない悲鳴をあげた。
 そして僕も、自分で言った言葉に我に返り、同じく耳まで赤くなる。


 ミツバ「と、と、とにかく行こっ! は、速くいかないと刻羽くんたち行っちゃうから!」
 有為「あ、う、うんっ」

 と、足を踏み出したとき、足元に硬い感触を覚える。
 小さい何かが、靴先に当たったようだ。
 もーなんだよ、こっちは急いでんのに………。


 そう思い、その感触が何なのか確かめようと、かがんでみた。
 パチリ、と目が合う。
 そしてそいつは、手にしたアメをバリバリボリボリと音を立てながら飲み込む。
 コーナーをピョンピョン跳ねていたもっけを強引に捕まえると、自分の腕の中に引き寄せ。



 「ばーか!」


 ニコッと、あどけない表情で少女―七不思議が1番ミライは笑った。

 
 

 
 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.62 )
日時: 2020/10/17 21:38
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)


 〈茜side〉

 みんな、こんにちは。
 ごく普通の学生兼、七不思議が1番『三人の時計守』末席の蒼井茜だよ。
 僕はいつものように時計をポッケに入れつつ、アオちゃんと二人で運動会を楽しむつもりだった。


 なのに………。
 なんで『あんたら』がここにいるんだ!
 
 まず、これだけは言いたい。
 七不思議が七番。七不思議が首魁しゅかい・僕らのリーダー、トイレの花子さん。

 なんで七番様がここにっ!? 
 ………まさかまたアオちゃんを……。
 今度は何考えてるんだ。許さない。今すぐ世界の端まで追いつめて死なせてやるっ!!
 
 ※いい子はマネしないようにしましょう

 そして、七不思議が二番。ミサキ階段のヤコ。
 なんで二番もここにいるんだ!?
 依り代は壊されたのではなかったのか!?

 そうだ、お前もアオちゃんに何かするつもりなんだな。
 許さない、その狂った頭、今すぐに叩きのめしてやるっ!!

 ※いい子はマネしないようにしましょう

 そして、七不思議が四番。美術室のシジマさん。
 七番様が嫌いなはずなのに、なんでアイツと一緒に運動会に参加してるんだ?

 さ、さてはまたアオちゃんを巻き込むつもりだな?
 だから言っただろ、怪異は嫌いなんだって!
 七不思議1番の名において、今すぐ地獄を見せてあげようか……。

 ※いい子はマネしないようにしましょう

 七不思議五番、16時の書庫の土籠。
 七番様と仲がいいので、ここにいる理由も分からなくはない。

 でも男女先生生徒問わず人気が高いって噂だ。
 アオちゃんがもし、『私、先生が好きだなー』とか言ったら!!
 種に火がつくまえに、処分しておいた方が良さそうだ…………。

 ※いい子はマネしないようにしましょう

 
 茜「そして七不思議が八番・無限階段の八雲。………さてはアオちゃんを……っじゃない!!」
 輝「良かった、やっと正気に戻ったか」
 
 蜜璃「あ、あの子は一体?」
 ルーミア「小っちゃい奴がいるぞー。わはー! 食べてやるのだー」
 仁乃「食べちゃダメ……ってあばばばばばばばばば」
 もっけ「(ズドドドドドドドド)」


 ミライ「くすすっ。ばーか!」
 伊之助「オイこらお前! 俺様相手にいい度胸じゃないかコラ!!」

 七不思議が1番、三人の時計守の一人。未来を司る力を持つ。
 彼女がモノに触ると、そのモノの時間を進める。
 だからいつもは手袋をして、クソじーさん(カコ。過去を司る時計守)が縄につないでる。

 その彼女が今こうしてここにいるってことは………。
 どっかで見たことあるぞこの光景。これがデジャヴ!!
 あれはかれこれ二カ月ほど前。学園で生徒全員が老化する現象で………。

 茜「あンのクソジジいいいいいいいいいいいいい!!!」
 葵「あ、あ、茜くん?」
 茜「だいたいな! 僕が今こうしてここにいるのも、全てアイツらのせいなんだ!」
 葵「茜くん………」
 茜「自作自演だったんだ! ぁぁぁぁ許さんあの二人いいいいい」

 炭治郎「えっと、よくわかんないけど、ドンマイだ茜くん」
 花子「これは………再び出るしかなさそうだねぇ」
 一同「?」

 花子「我ら七不思議!」
 ヤコ「人間と怪異の関係を正しく保ち!」
 ミツバ「平和な学園生活を保つ!」
 茜「はぁぁぁぁ………またか………」
 土籠「ご苦労お察しする」

 ミライはとにかく頭が悪い。
 くすくす笑いながら、せわしなく動き回り、あらゆるものの時間を進めていたずらをする。
 放っておいたらグランドはめちゃくちゃになってしまうだろう。

 花子「しょうがない。っていうわけでェ、やっていこっか」
 
 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.63 )
日時: 2020/10/19 18:09
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 むうが鬼滅で一番好きな話は無惨戦!
 花子くんで好きな話はエソラゴトです!
 無惨戦はとにかく熱いし泣けるし、エソラゴトはあまねくんが可愛いし泣けるし……。
 そしてこの話にも、読者があっと驚く何かが……あるの…かな?(やや自信なし)

 ****************************

 〈寧々side〉

 こんにちは! 大正時代はお手のもの、八尋寧々です!
 キメツ学園グラウンドに現れたのは、七不思議1番のミライ。
 有為ちゃんに聞くところによると、ここは霊的磁場が強く、ミライもその霊力に惹かれてかもめ学園からやってきたのではないかとのこと。
 
 というわけで私たちは……。

 輝「さて、汚物はきれいにしとかなくちゃ(剣スチャ)」
 茜「いつもいつも……そろそろこの僕も限界だぞ、ミライ!(時計スチャ)」
 睦彦「せっかくの競技を台無しにするとは許さねえ!」
 かまぼこ花子隊&柱&東方陣「捕まえてやる!」
 もっけ「1番ころす」「ころす」「ほかほかにしてころす」

 ミライ捕獲大作戦を始めることになりました。
 
 具体的には、ミライの相手は頼れる助っ人・七不思議と、私と光くん。
 そして残りは被害を最小限にとどめることに。
 私は前に、一回花子くんたちと一緒にミライを捕まえたことがある。
 今回も、負けないんだからね!

 霊夢「この人たち(七不思議)が来ると、いつもカオスね」
 しのぶ「賑やかなのは嫌いじゃないですよ~。とっとと片を付けましょう(ニッコリ)」
 炭治郎「よし皆、準備はいいか?」

 炭治郎くんがそう言うと同時に、少し離れた位置に立っていた花子くんが、ゆっくりと睦彦くんに近づいた。
 驚いた彼の耳元で、少し苦しそうな顔をした花子くんが呟く。

 花子「刻羽。瀬戸山があの子(ミライ)に触られないようにして。絶対」
 睦彦「んな、改めて言われなくても……。なんかあんのかよ」
 
 その言葉に、花子くんは虚を突かれたように一瞬固まった。
 それもつかの間、いつものようにニヤリと目を細めて、

 花子「……別に? ってことで、頼んだよ」
 睦彦「まあ、別にいいけどよ」

 その様子を、横で意味ありげにつかさくんが見つめていた。


 ・・・・・・・・・・・・


 ミライ「(カチコチカチコチカチコチ)くすすっ。やっぱりじかんをすすめるのは、たのしいな」
 光「やい、また出やがったな! 往生しやがれ!(雷霆状らいていじょうを振り下ろして)」
 ミライ「………(光に手を伸ばし)」

 危ない光くん!
 この子に触られたら、光くんがおじいちゃんになっちゃう!
 思わず目をつぶったのと同時に、ガシャッと硬い何かが地面に触れる音がした。
 

 ミライ「? だあれ?」
 ミツバ「こ、こらー悪霊! この僕が倒してあげるよっ!」
 光・寧「ミツバ!(ミツバくん!)」

 さっきの音は、ミツバくんが首に巻いているマフラーについている骨?のようなものの音。
 七不思議三番の彼は、その骨を自由自在に操ることが出来るらしい。

 ………って、私ったらなんてもったいないことを……。
 光くんは祓い屋なのもあり、他の人に比べるとミライが時間を進めにくい。
 それでこの前、なにがどうなったのか分からないけど、すっごくイケメンになったの!

 寧々「(時間、進めてもらえばよかった………じゃない!!)」
 光「助かったぜミツバ! おいチビ! オレたちが相手だ! かかってこい!」
 ミライ「くすすっ」

 ミライはくすくす笑いながら、光の速さで移動し、あっという間に視界から消える。
 そしてパッと姿を現したかと思えばまた消え、また現れてはまた消える。
 とってもすばしっこいの。


 ミライ「(カチコチカチコチ)」


 グラグラッッッ ガッシャンッッッ

 あ、倉庫にミライが触っちゃった!
 運動会で使う備品がしまってある倉庫が、一気に風化して、扉が真っ二つに折れる。
 その衝撃で中に入っていたボールを入れる籠やらコーンやらが、中から飛び出した。

 睦彦「うおッ!? 光の呼吸・壱ノ型 爆光一閃ばっこういっせん!!(ブンッ)」
 カナヲ「花の呼吸・弐ノ型 御影梅みかげうめ!!(ブンッ)」

 ガラガラッッ

 睦彦「ふぅ………」
 義勇「いや、まだだ!」

 ミライ「(カチコチカチコチ)」
 善逸「な、うわ、また来たっ」
 つかさ「…………しょうがないなぁ」


 呆れたようにつかさくんが肩をすくめ、頭上から降ってくる備品を視界に留める。
 倉庫の割れた切っ先の鋭い窓ガラスの破片が、彼めがけてパラパラと振ってくる。

 ミツバ「つかさくん危ない!!」
 つかさ「あまね、サクラ!!」

 桜「黒杖代、お願い(ブンッ)」
 花子「蹴散らせ白杖代!!」

 つかさくんが鋭く叫ぶのと同時に、七峰先輩が黒杖代を、花子くんが白杖代を投げる。
 人魂は風を巻き起こしながらつかさくんの周りを旋回し、ピカッッと眩い閃光を発した。
 

 夏彦「おお、さすがお嬢。ナイスタイミングぅ」
 花子「………ミライがいないっ!?」

 一同がバッと振り返り、グランドを見回す。
 ミライが時間を進めたことにより、コーナーにはガラスの破片や破損した部品の一部などが転がっている。
 いない、ミライがどこにも……。

 まさか、逃げた!?
 そう思ったときだった。


 ミライ「あれ、あなたのじかん、すすめずらぁい」
 一同「!!?」

 聞き覚えのある声が聞こえ、声のした方を振り返る。
 グラウンドの前方、壇上の上。
 自分に降りかかるガラスの破片を避けようと剣を構えた瀬戸山くんに、ミライがぴったりと貼りついていた。

 
 魔理沙「亜門!!」
 花子「瀬戸山!!」


 カチコチカチコチと時計の秒針が回る音と共に、瀬戸山くんの体が後ろに傾いた。
「亜門!!」と慌てて睦彦くんは彼の元へ駆け寄り、その身体を抱きとめる。

 ミライ「なんでこのこ、じかんすすまないの?」
 花子「……………」
 ミライ「ねぇ、ななばん様、もしかしてこのこ」





 ミライ「―――――――寿命がもうないの?」




 しいんと、みんなの間に冷たい風が吹いていった。
 一同はそろって歯を食いしばり、睦彦くんの腕の中の瀬戸山くんに視線を留める。
 ただ一人、睦彦くんは不安と絶望で何もわからない様子で、花子くんに向かって声を荒げた。


 睦彦「どういうことだ花子!! お前、何を知って―――」
 つかさ「あーあ。………ここで時間切れか」

 シリアスな展開のさなか、この場にふさわしくない、のんびりとした口調でつかさくんが呟く。
 つかさくんは花子くんとそっくりの表情で怪し気に微笑んだ。


 睦彦「お前、………………亜門に何をしやがった」


 ネクスト→つかさの目的とは? 次回もお楽しみに♪
 
 

 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.64 )
日時: 2020/10/20 19:26
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 〈仁乃side〉

 つかさ「あーあ。……ここで時間切れか」

 シリアスな展開のさなか、この場にふさわしくない、のんびりとした口調でつかさくんが呟く。
 つかさくんは花子くんとそっくりの表情で怪し気に微笑んだ。

 思わず私は俯いて唇を噛む。
 幸い私の姿は、焦燥感を抱いているむっくんには視界に入らなかったようだ。
 

 睦彦「お前、………………亜門に何をしやがった!!」

 むっくんが今までに見せたことのない、激しい怒りを含ませた表情でつかさくんを睨んだ。
 その勢いに押されることなく、あくまでものんびりとつかさくんは首をかしげる。
 その様子を、残りの面々は一言も発さず、まるで置物のように茫然と眺めていた。

 亜門「…………刻羽、離して」

 むっくんの腕の中で気を失っていた瀬戸山くんが、苦しげにもがいた。
 両手両足をじたばたさせる彼に、放心状態だったむっくんが我に返り、慌てて彼を自由にさせる。
 服に着いた埃を払って、瀬戸山くんは苦笑いを浮かべながら立ち上がった。

 つかさ「俺は怪異さ。何か一つを代償に、呼び出したモノの願いを叶える」
 睦彦「………願い」
 つかさ「あまねが叶えるのは、生きている此岸しがんの願い事」
 花子「………」

 つかさ「俺が叶えるのは、死んだ彼岸ひがんの願い事。あもんは願って、俺は応えた」
 睦彦「死んだ……」
 花子「………分かるでしょ刻羽。もう、その子は死んでるんだ」


 低い低い温度で花子くんがそう言い、わずかに笑って見せる。
 私は両手の握りしめたこぶしにぎゅっと力を入れ、また唇を噛む。


 睦彦「………え、な、なんで、……」
 つかさ「あもんはもう死んじゃったんだよねー。だから俺に願った。あもんの願いはこうだ」




 つかさ「――――『もう一度刻羽に会いたい』『一緒に運動会を楽しみたい』」




 つかさ「『きっとこれが最後だから』」





 
 つかさくんの口ぶりからは、死という恐怖が感じられない。
 ひたすら純粋に、楽しそうに、無邪気に言葉をつむいでいく。
 その様子はこの状況に似つかわしくなくて、返ってそれが逆に、彼の存在を浮き上がらせていた。


 睦彦「な、なあ亜門、嘘だよな? お、お前がもう死んでるとか、だって、なぁ!?」
 亜門「嘘だと思う?」

 にっこりと、そう、瀬戸山くんはにっこりと笑った。
 その純の笑顔の裏には、憎しみとか、怒りとか、そういうものは一切なくて。
 瀬戸山くんが、むっくんにそっと手を伸ばす。

 その手をむっくんは掴もうとして、彼の指に自分の手を絡めた………だけど。
 スイッとむっくんの手は宙を切り、何も掴まなかった。



 睦彦「…………え」
 亜門「……………分かった?」


 瀬戸山くんはまたにっこりと笑った。
 透けたその身体の奥には、秋の晴れやかな空が映り込んでいた。
 


 つかさ「あもんの願いの代償は、『刻羽の、亜門の死に関する記憶』」
 睦彦「………は?」
 つかさ「俺はその記憶を、グシャ―ッってつぶした! だから刻羽は知らなくて済んだでしょ?」


 簡単なことだ。
 この世に未練を残し、幽霊となりさまよっていた瀬戸山くん。
 行く場所がない、このまま消えてしまう運命だった。
 そんなとき、キメツ学園で運動会があること、そしてそこにむっくんがいることを知った。

 会いたいと、強く願った。
 むっくんや私たちに、花子くんや七不思議が見えているのは、光くんや有為ちゃんと言った霊力がある人がすぐそばにいるからだ。
 じゃあ、むっくん一人だったら?


『刻羽! ……ごめん、色々と迷惑かけて! 僕は――』


 霊感のないむっくんに、瀬戸山くんの声は届かなかった。
 目の前を駆けていく、楽しそうなむっくんの笑い声を聞いたとき、瀬戸山くんは強く願った。
 

 刻羽に会いたい。
 現世から消えてしまうその前に、しっかりとお別れを言いたい。
 せめて、一緒に最後に運動会を楽しめることが出来れば……。


 ―――君の願いを叶えてあげるね!



 つかさ『じゃあ、叶えよっか』
 亜門『だ、だれだ!?』
 つかさ『俺はつかさ! 君が心から望むなら、俺は願いを叶える。刻羽に合わせてあげるよ!』
 亜門『………ほ、ほんと? できるの?』
 つかさ『うん、できるよ』



 その結果が……まさか、こんな残酷な代償の上で、成り立っているだなんて……。
 瀬戸山くんの死に関する記憶を失ったむっくんは、隣の席へ座る瀬戸山くんを疑うことなく、今までずっと、生きているってそう思い込んで……。


 睦彦「………て、テメエ何をっ! そ、そんなことっ……」
 つかさ「じゃあ、こんなことしないほうが良かった?」


 その質問は、あまりにも残酷で、怒鳴ろうと口を開きかけた私は結局、何も言い出せなかった。
 むっくんもまた、開きかけた口をとっさにつぐみ、ただ両手の拳を震わせる。


 つかさ「ねえ刻羽。俺だけじゃないんだよ、あもんに協力したの」
 睦彦「………は?」
 つかさ「ここにいる全員、俺とあもんの協力者! すっごいでしょ!」

 むっくんは思わず目を見開いた。
 何か言いかけたけど、それは言葉にならず、胸の中に蓄積されて行く。
 ギリッと歯ぎしりをする音が響き、険しい顔をしたむっくんが、チラリと私を見た。

 そこからは、一瞬のことだった。
 むっくんの姿が消えたと思ったら、彼は私の目と鼻の先に現れて、私の手首を力任せに掴む。
 痛いくらいにしめつけられ、私は声にならない悲鳴を上げた。


 仁乃「む、むっくん………!?」
 睦彦「……なんでなんだ、胡桃沢!! なんで、お前がこんな………っ」
 仁乃「………っ。じゃあ、どうすれば良かったの!?」

 思わず声を荒げた私を見て、むっくんが驚いて手を放す。
 あのとき、私はむっくんと瀬戸山くんを陰から見守ってた。
 二人ならきっとうまくやっていけるって、そう信じていた。だけど。


 仁乃「むっくんは瀬戸山くんともう一生会えないかもしれない!! このままお別れするの!?」
 亜門「………」
 仁乃「花子くんだって、私も、みんなも、むっくんのためを思って、必死に……!!」


 仁乃「確かに、つかさくんが奪った代償はおっきいけど、でも……瀬戸山くんの気持ちも……」
 亜門「やめてよ!!」


 突如、話に割って入った瀬戸山くんの叫び声。
 苦し気に上下する彼の背中。今にも泣き出しそうに、歪んだ表情で瀬戸山くんは叫んだ。


 伊之助「お前……どうし」
 亜門「無理に同情しないでよ!! 僕の気持ちなんか、分からないくせに!!」

 その言葉に、一同の心の導火線に、火がついた。
 一同は揃って怒りを押し殺した表情で、瀬戸山くんを睨んだ。

 実弥「おいテメエ、何を言いやがる!」
 亜門「もうすぐ死にますって、余命宣告されたこと、お前らはあんのかよっ」

 一瞬だけ、寧々ちゃんの瞳がふっと曇った。
 そんな寧々ちゃんの手を、光くんと花子くんがそっと握る。

 亜門「いつ死ぬかって指折り数えたことは? それでも精一杯作り笑いしたことは?」
 寧々「…………」
 亜門「いいじゃんか、少しくらい夢を見たって!」

 感情があふれ出す。


 亜門「もうすぐ死ぬかもしれない奴の運命はもしかしたら変えられるかもしれない。だけど」
 花子「……………」
 亜門「―――もう死んだ人間が、運命なんて変えられるわけないだろ」

 いつだったか、有為ちゃんが言ってた。
『一度死んだ人間は、生き帰らない。それが自然の摂理せつり。破ってはいけない決まりです』

 
 亜門「―――ーだから、少しくらい、夢を見せてくれてもいいじゃんか………」


 心の底から絞り出した、瀬戸山くんの本音。
 昔の同期の少年の、心の痛み。
 失ったものは戻らない。分かっているはずなのに、なぜか人間は、それでも希望を追い求める。

 そんな彼に、私はまた、何も言えなかった。
 
 


 


 

 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.65 )
日時: 2020/11/15 09:45
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 閲覧数1000だぁぁぁぁ!
 ミリオンズOFだぁぁぁぁぁ(←ちがう)

 ****************************

 〈光side〉

 ずっと前に花子が言ったように、死んでしまった奴の運命を変えることはできない。
 でも、霊が見えたり、それに干渉する力が与えられたのは。
 そのどうにもならない部分をどうにかするためだって、オレは今でも思っている。

 でも……。
 今回の事件でオレを悩ませるのは、誰を責めたらいいか分からないことだ。
 三葉みつばの時は、明らかにアイツ(つかさ)が悪い。
 それは事実で、オレはアイツを一生許さねえ。

 でも今回の件は?
 亜門は刻羽に会いたいという純粋な思いのままに、アイツを呼び出し。
 アイツは「あもんの願いを叶えたい」という思いのままに睦彦の記憶を消し。
 そしてオレを含め、後の面々も、二人に協力したいという思いで作戦を呑んでいる。

 確かに、睦彦の『亜門の死に関する記憶』を奪ったって聞いたとき、本当なら今すぐにアイツに怒鳴り返したいところだった。
 何しやがったんだって、雷霆状を突きつけて、このまま消滅させてやっても良かったんだ。


 でも……。
 
 つかさ『ってわけでェ、みんなにキョーリョクしてほしいんだよねー!』
 一同『………は?』
 
 つかさ『サクラと夏彦とあまねと胡桃沢にはOKもらってるから、あとの人OKか教えて』
 光『……は、花子!? お、お前なんで……。いつもなら絶対こんなことしねーくせに……』


 花子は言った。
 刻羽と会うことで、瀬戸山が未練を晴らし成仏できるならいいんじゃないかって。
 刻羽の記憶が無くなっても、あとからまたつぎ足せばいいって。
 そんな願いすら叶えられないなら、あの子は永遠に天国へは行けやしないって。
 

 筋は通ってるし、花子が間違ったことを言っているわけじゃない。
 でもなんだろう、さっきから胸にしがみついているこの感情は。
 そしてそれはきっと、オレなんかより睦彦のほうが大きいはずだ。


 睦彦「………………」
 魔理沙「ごめんな睦彦。私も、霊夢たちも、皆協力した。でも、これでいいだろ?」
 無一郎「………そう、これが最善の方法」
 善逸「失望させたなら謝るよ。俺の頭ならいくらでも下げる!! でも分かってくれるだろ!?」

 
 睦彦は何も言わない。亜門も。
 ただ、俯いて肩を震わせるだけだった。
 睦彦だって、亜門に会えて嬉しくないわけではないだろう。

 でも、亜門が死んでいること、そして自分の記憶が操作されていたことのショックが大きくて。
 仁乃ちゃんやオレたちが協力したことも、喜んでないわけではない。
 オレたちの気持ちも、多分痛いほど分かっているんだろう。
 でも、それでも。


 
 「―――――――っざけんな!!」



 突如、このしいんとした空気を揺るがすような怒号が響き渡る。
 一同は驚いて、声を上げた者へと視線を移した。
 叫んだのは、睦彦ではない。亜門でもない。

 拳を震わせて、涙をこぼしながらつかさを睨んでいるのは、なんと宵宮だった。
 宵宮はつかつかと歩き出すと、つかさの胸倉をグッと掴んだ。

 つかさ「っ!? 宵宮……」
 有為「ふざけんな、お前は、なんてことを………っ!」

 有為「睦彦くんが、どういう気持ちで過去の話をボクにしたのか、貴方は想像できる!?」
 つかさ「よ、よいみや、苦し……」
 有為「人が死ぬってどういうことか、ちゃんと分かってるの!? 理解してるの??」


 その言葉を機に、つかさの態度が激変した。
 彼の周りを黒杖代が旋回し、風は渦を巻く。
 低い低い声で、つかさはポツリと呟く。


 つかさ「知ってるよ、………死ぬってどういうことか」
 有為「―――――-っ」
 つかさ「………分からないのは宵宮のほう。あもんは俺に願ったんだ。それでいいじゃん」
 

 良くねえよ。なにも良くねえよ!!
 誰が望んで、こんな結末を喜べるんだよ。
 そう怒鳴りたいのに、さっきの亜門の悲痛な叫びが、口に出しかけた言葉をまたしまい込ませた。


『もう死んだ奴が、運命なんて変えられるわけないだろ』

 そう言った亜門の表情は、何もかも諦めたように暗くて。
 それでも必死に笑おうとする様子がとっても痛々しくて。
 

 そんな顔しないでほしい。笑ってほしい。生きててほしい。
 そう誰よりも強く願ってるのは、その願いが一番強いのはオレじゃない。


 睦彦「………ホント、好き勝手してくれるよなぁ」
 カナヲ「睦彦?」

 呆れたように睦彦が言い、肩をすくめた。
 今の今まであんなにショックを受けていたはずなのに、どうして急に態度が変わったんだろう?
 もしかして睦彦は、もう全部、諦めてしまったってのか?

 花子「………刻羽。……ごめん。こんなことするつもりじゃ、……なかったんだ」
 睦彦「……そっか」
 花子「よ、4番に頼んで、絵空事の世界に連れ込んだりとか、か、考えたんだけど、ヤシロが反対したから……」
 睦彦「そっか」


 絵空事。七不思議が4番のシジマメイが作る、虚構の絵の世界。
 オレは前に柱やかまぼこ隊、東方陣たちと一緒に、2回目のエソラゴトの世界に行った。
 仁乃ちゃんが、鬼化したときだ。(詳しくはろくきせ最終章をcheck!)

 花子がエソラゴトの世界に睦彦を連れ込まなかったのは、きっと……。
 ちらりと、横に立っている先輩の表情を伺う。
 ま、そういうわけだよな。

 
 睦彦「……しっかし、そっちが俺抜きでコソコソやってたんなら話がはえぇな」
 亜門「刻羽、何を――」


 亜門が戸惑いの表情を見せる。
 そんな彼に、睦彦は安心しろとニカッと愛嬌のある笑顔を見せた。
 そして袴の隠しから、『あるもの』を取り出し、またニカッとほほ笑む。

 
 睦彦「じゃ~~ん!」


 睦彦がオレたちに掲げて見せたもの、それは。
 一冊の本だった。
 黒い装丁の表紙。背表紙に『瀬戸山亜門』と書かれた、分厚い一冊の本だった。

 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.66 )
日時: 2020/10/24 20:33
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 今日は、クラス各チームに分かれて創作ダンスを披露する、リズムダンス大会がありました!
 疲れたぁぁ……。今日は休んで明日勉強しよ。
 みなさん、一週間お疲れ様でした―。
 癒しのご提供でーす(癒し?)
 ****************************

 〈亜門side〉

 刻羽が掲げて見せたもの、それは一冊の本だった。
 背表紙にはなぜか、僕の名前が書かれたり、それを除けば真っ黒な表紙。
 その本は、確か……。

 寧々「16時の書庫の本!? ど、どうして睦彦くんが持ってるのっ?」
 蜜璃「16時の書庫……って、なんだったかしら?」
 桜「あら、知らないんですか。では、ここらへんで行くわよ。せーのっ」


 ☆教えて 土籠 16時の書庫とは?☆

 16時の書庫っつーのは、かもめ学園が五番目、俺が管理する書庫のことだ。
 その名の通り、16時になると現れるその書庫には、学園にいる人物の記録が書かれた本がある。
 白い本は生きてる奴。黒い本が死んでる奴。
 過去も現在も未来も、学園でそいつが何をしたか、これからなにをするか。
 まァその本には全部乗ってるっつーわけだな。


 そうだ、これはあの、口が耳まで裂けてて、やたらとドSな蜘蛛野郎の本だ。
(『土籠先生だ』)
 それをなぜ刻羽が持ってんだ? しかもなんで僕の本を……。
 さてはあの野郎、刻羽にいらないことを吹き込みやがったな。この蜘蛛野郎め!
(『土籠先生だ』)


 ルーミア「なんだその本? 土籠の本だよなー?」
 パチュリー「ええ、そうね。彼の本をなぜ貴方が持っているの?」


 それは僕も聞きたい。
 どうやってその本を手に入れたのか、教えてほしいし、それに……。
 もしその本に、僕の恥ずかしい思い出とか乗ってたらっ!!

 その暁には今すぐ刻羽の手から本を奪い取り、可燃ごみに入れて捨ててやるっ!
(土籠『やめろ!!』)


 亜門「刻羽、なななな、なんでそれをッ」
 睦彦「つかさたちが裏で協力してたように、俺もある人と協力してたっつーこと」

 刻羽は実にあっけからんといい、ある人物を指で指し示す。
 向けた人差し指の先にいたのは、先ほどから眼鏡の奥の瞳を細めている、土籠。
 そして、腕を組みながら話し合いを見守っていた、七不思議が8番。


 つかさ「………ふーん。イガイだね。5番はあまねの言うコトなんでも聞きそうだけどな」
 土籠「………は?」
 輝「まあ、先生は七番のことが大好きですからね。僕も意外でしたけど(ニコッ)」

 つかさと源(兄)の言葉を聞き、蜘蛛野郎は一瞬凍った。
 ギョッとした顔つきで二人の顔を順番に眺め、

 土籠「だれが七番サマを好きだって?」
 花子「エッ違うの!?」
 土籠「お前はちょっと黙ってろ!」

 ふぅーっと蜘蛛野郎はキセルを吹き、チラッと横目で花子を見ると、もう一度溜め息をついた。
 

 土籠「確かに俺はコイツ(つかさ)に協力してるが、全てを許しちゃいない。そこの8番もだ」
 八雲「ええ。死を乗り越えていかなければ、何も変わらない」

 土籠「死に関する記憶を消す、ねェ……。コイツに協力している限り、反することはできない。そもそも俺は、瀬戸山の未来も刻羽の未来も知っている。口出しするだけ無駄だ。……だからあるヒントを与えるだけにした」

 ヒント?
 一同が首を傾げるのと同時に、刻羽が16時の書庫の本をペラペラとめくりながら言葉を紡ぐ。
 誰かに聞かせるためでもなく、自分のために言っているようだった。
 独り言、それと同じ感じだったけど、独り言とは違う言葉の一つ一つの重みがあった。


 睦彦「なんでこの本が黒いのか、なんで未来に関する記述がないのか、早く分かればよかった…」
 亜門「………そういうことか」


 僕はもう死んでいる。
 人が一度死んだら未来はもうない。
 どんなに足掻こうが、世界の仕組みにあらがろうが、結局灰になってハイサヨナラだ。
 過去に叶えられなかったことはもう叶えられない。
 それが死者に与えられた決まり。

 睦彦「記憶に干渉されてるせいかな。何度読んでも、内容が全く頭に入ってこなかった。さっき読んで理解したはずの内容も、全部忘れてしまう。おかげで俺は亜門に何があったのか、結局知ることは出来なかった。………知ってるハズなのに」


 でもさ。
 

 睦彦「でもさ。俺と亜門を会わせてくれたこと、すっげー嬉しかった!」



 そう言って刻羽は笑った。
 すげー明るい、おひさまみたいな笑顔だった。
 真夏のひまわりのような、そんな笑顔が彼にはよく似合う。


 なんでそんなに喜べるんだよ。
 だって、僕は、僕たちは、お前の記憶を奪ったあげく、お前の気持ちも聞かずに話を進めて。
 本当は、怒ってるんじゃないのかよ。
 なんでそんなに、なんでいつもお前は―――。


 亜門「な、なんで」
 睦彦「確かに、ちょっとショックもあるけど。それでも………」


 もったいつけるようにそこで一旦言葉を切り、刻羽はニヤニヤとこっちを見た。
 なんだよ、とこっちも口をとがらしてやると、そのニヤニヤはニタニタに変わって。


 睦彦「お前がそんなに俺のことが好きだったなんてな!」
 亜門「……………ち、違っ」
 睦彦「初対面で俺のこと殴ったくせに、結局そーいうことだろ。このツンデレ馬鹿が」

 誰だ、コイツに要らない知恵を入れやがったのは。
 思わず周囲を見渡し、僕はある人物を視界にとどめる。
 そいつは刻羽と同じくニタニタしながら、僕たち二人のやりとりを見物していた。

 やっぱりてめーか、花子!!
 刻羽をからかうだけでは飽き足らず、果ては僕や胡桃沢さんまでする気だな。
 

 亜門「う、う、うっせーな!! チビに言われたくねえよこの、チビチビチビチビ!!」
 睦彦「チッ……チビじゃねーよ、だいたい158のやつが157㎝をチビっていうのは違う!!」
 亜門「と、と、とにかくお前のことはっ!!」


『お前がそんなに俺のことが好きだったなんてな!』


 悪いかよ。文句でもあんのかよ。
 いいだろ、好きになったって。
 僕はお前に出会い頭に暴力を振るったし、本音は言わないし、感じ悪かった。
 でも、何でそんなことをしちゃったのかって考えたら、全ては一つの感情からだった。


 嫉妬。
 刻羽みたいになりたい。刻羽みたいに強くなりたい。
 なんで僕だけ、なんでお前だけ。
 そう言う感情に、自分が勝手に支配されてただけだ。

 
 睦彦「俺のことは?」
 亜門「お、……お前のことはっ………嫌いじゃない!!」
 睦彦「俺も、お前のことが好きだ」


 本当にずるいよな、お前って言う人間は。
 照れることなく素直に好きって言えるんだから。
 そっちだってあんなに僕のことを嫌ってたくせに。


 
 睦彦「運命なんて変えられるわけない、だっけ? じゃあ大丈夫だ!」
 亜門「何がだよ」
 睦彦「なにせ、俺らは【奇跡起こしの達人】だからな!」


 まず、胡桃沢やお前と出会ったのがはじまり。
 そのあとにかまぼこ隊に会って、花子達に会って、宵宮の家に行ったこと。
 一緒に鬼を倒して、東方キャラに会ったこと。
 一緒に笑い、恋し、泣き、ケンカし、また笑ったこと。


 睦彦「だから、大丈夫だ!」
 亜門「……………ありがと」


 なにが大丈夫だ。
 何を根拠に、そんなことが言えるんだ。
 でも、根拠のない言葉こそ、一番勇気を貰えるって分かっているから。
 
 四年前、最後に交わした『また明日』という言葉。
 刻羽がお見舞いに来る前に、ちょうど余命宣告をされた。
 そんな僕にかけてくれた、『また明日』という言葉がどれだけ嬉しかったか。

 だから僕は、にっこりと笑い返した。
 

 亜門「ぜってーに負けないからな! 色対抗リレー!」
 

 


 

 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.67 )
日時: 2020/10/25 16:56
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 ということで借り物競争に戻りたいと思います。
 ちなみに走順はコチラ。
 只今は、睦彦VSミツバのとこです。

【紅組メンバー】


 炭治郎(禰豆子) 輝 善逸 ミツバ しのぶ(計5{6}名)


 走順:しのぶ→ミツバ→炭治郎&禰豆子→善逸→輝

【白組メンバー】
  睦彦 つかさ 霊夢 フラン 美鈴(計5名)


 走順:霊夢→睦彦→美鈴→つかさ→フラン


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 〈花子side〉

 ミライ騒動が一段落して、俺たちは再び競技を進めることになった。
 もちろん、この運動会が終われば瀬戸山はこの世を去る。
 運動会の間だけという、制限時間付きの楽しみ。


 桜『それでは、気を取り直して借り物競争リスタートです』
 夏彦『紅組のミツバVS白組の睦彦。どうぞお楽しみにー!』

 睦彦「行くぞ胡桃沢! 転ぶなよ」
 仁乃「う、うん。任せて!」

 ミツバ「よ、よし行くよ、宵宮さん!」
 有為「はいっ」

 本当にこんなことで良かったんだろうか。
 刻羽は嬉しかったって言ったけど、それは本当の気持ちなのかな。
 もしかして、俺たちを安心させるために、そういう嘘をついたなら……。

 
 寧々「花子くん、……どうしたの?」
 花子「あ、ああいや、なんでもない」
 寧々「睦彦くんのことなら、大丈夫よ。それに、私たちが暗い顔してちゃ、ダメじゃない」
 
 なんでヤシロは俺の気持ちが分かるんだろう。
 不思議だな……。
 でも、そうだよね。一番悲しいのに、精一杯笑っているのは俺じゃなくて刻羽たちだもん。
 俺がこんな顔しちゃ、いけない。

 
 花子「うん、ありがとうヤシロ(思わず寧々の手を掴んで)」
 寧々「……は、花子くん?」
 茜「…………………なんで七番様がアオちゃんの手なんか掴んでいるんですか」


 ………ん?
 恐る恐る視線を下に向けると、ヤシロの手を掴んだはずの指は、アオイちゃんの手の中にあった。
 あからさまに嫌そうな顔で、Gでも見るみたいに俺を睨む1番。

 葵「え、えっと……」
 花子「アオイちゃん………俺、本当は君のことが……」
 茜「フーッ フーッ アアァァァァァァァァァァ!!(花子に金属バットを向けて)」
 花子「え゛」

 何もってんのこの人。
 そ、そ、それ……金属バッド、何で持ってんのさッ!!

 そして、背中からも冷たい視線を感じる。
 ゆっくりと振り向くと、俺の視線と彼の視線がパチッとぶつかる。
 そいつは腰に下げた剣の鞘から、退魔用の剣を取り出すと、刃先を俺の喉元に当てた。

 輝「はい動かない」
 光「輝兄! ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれよ!」
 輝「僕の言ったことは正しかっただろ」


 花子「お、俺はただ、ちょっとからかっただけで……わうッ」
 茜「七番様ァァァァァァァァァァァァ!!(# ゚Д゚)」
 花子「…………しょ、少年……(両手を上げて)」

 茜「あああ、あんなに可愛いアオちゃんの手を掴んで、その挙句………許さないッッ」
 花子「お、落ち着いて話し合おう……ヒェッ」

 1番が俺に向かって金属バッドを振りかざす。
 それと、少年のお兄ちゃんが霊刀を抜くのがほぼ同時だった。
 冷や汗がダラダラと流れ、視線だけ横にずらすと、少年が俺を庇うように手を広げている。

 花子「しょ、しょうねん………!」
 光「だだだ、大丈夫だ花子! オレがなんとかするからな……ッ」
 輝・茜「光(後輩)、どきなさい(どいてくれるかな?)ニコッ」

 花子「ギャ―――――――――――――――――――ッッッ!!!」
 炭治郎「お、お、落ち着いて話し合いましょう!」
 しのぶ「仲良くしましょう。ね、冨岡さん」
 義勇「コクコクコク」


 もっけ「くっくっく」
 もっけ「ななふしぎ、よわってる」
 もっけ「我ら、このときをまっていた」

 もっけ「ななふしぎ、ころすぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!(ズドドドドドドドド)」
 花子「わぅわぅあぅあぅ―――――――――ッッ!」

 八雲「柚木くん来世で会いましょ!」
 花子「8番!!? つ、つかさ助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 必死の叫びも、遠くのテントで放送に集中しているつかさには全く届いていない。
 じりじりと、1番と源会長の悪の手が伸びる。
 ヤシロと少年が必死に庇ってくれるけど、ヤバい死にそう………。


 遠くで、ピストルの発砲音が聞こえ、黄色い歓声が聞こえた気がするけど、余裕がない俺には聞こえていないのと同じ。
 あ、刻羽も3番も、今は走らなくていいからこっちを見てよ………。


 1番の金属バッドと源会長の霊刀が眼前に迫る。
 やばいやばいやばいやばいっ。


 花子「白杖だ―――」
 輝「杖代は呼ばせないよ」

 ど、どうしようどうしようどうしようっ。
 一回、この人の攻撃食らったことあるけど、マジで痛いんだよっ。
 それに、ヤシロや少年を守りながら包丁で戦うのはかなりキツイ。

 茜「覚悟!!」
 

 1番のバッドが俺の脳天に当た……………らなかった。
 え? と、思わず、固くぶっていた目を開いた。
 1番の金属バッドを両手でつかみ、鈍器が俺の脳天を打ち砕くのを防いでくれたのは。


 中学校指定の長袖体操服に、同じく体操服の短パン。
 やたらと背が引くく、黒い眼鏡を付けている女の子。
 

 花子「お、遅いよ…………むう」
 むう「みんなお待たせっ! ろくきせ作者のむう、ただいま参上!」


 むうってば、いつもいつも俺らを虐める癖に、物語の進行がおかしくなる時に限って現れる。
 ……自分で書いたくせに……。
 おっと、これを言っちゃうのはどうやらダメみたいだ。
 ということでここからは、むうに代わって話を語ってもらおう。

 
 

 

 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.68 )
日時: 2020/10/26 18:07
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)


 〈ろくきせシリーズ初の! むうside☆〉

 みなさんこんばんにちは!
 ろくきせ物語の立役者にして、物語のスムーズな進行を監督する美少jy)殴
 紅羽くれはむうです☆ 
 あ、ちなみに紅羽っていうのは、ろくきせの皆が考えてくれた苗字なんだ。
 元ネタは仁乃の……アレね。アレアレ!(どれだよ)

 こっそりキメツ学園に忍び込んだ私は、キャラたちが変なことをしないか監視していました♪
 ちなみに私は、七不思議が4番シジマメイちゃんと能力が似てる。
 紙とペンさえあれば、キャラたちを自由自在に動かせられるんです。
 ってことで、今回はメイちゃんと協力して、みんなの行動を監視してたんだけど……。


 ・・・・・・・・・・・


 茜「覚悟おおおおおおおお!」
 むう「ちょ、ちょっと待った――――――――――っ!!」

 みんなと久しぶりに顔を合わせようと、応援席のテントからコーナーへ足を踏み入れた私。
 そこで見たのは、花子くんが茜くんと源会長にガチで殺されそうになっているという修羅場。
 

『よーぃ、どん!』
『よっし行くぜ胡桃沢、ぶっ飛ばすぞぉぉ! って、わっ、ちょ、お前速っ、うおっ』
『いけいけミツバ―ーーー!』
『睦彦いっけえええええええ!!』
『ミツバ―! グシャ―――ッっと頼むねー!』
『バカ言わないで! 僕可愛いんだから!』

 向こうで聞こえる歓声と、ピストルの発砲音。
 会場全体が熱気に包まれて、ワーッという叫び声が次々に上がっている。
 
 そんなときにこのお二人は一体何をしているんだろうか。
 ねえ、茜くん! 源先輩!

 輝「むうさん。久しぶりだね。ちょっとどいてもらえる? ………虫が湧いちゃってるから」

 ひいッ。
 いつもはニコニコと穏やかな源先輩が、今は笑顔っちゃ笑顔なんだけど、裏にどす黒い何かが。
 
 源会長に霊刀を突きつけられた花子くん。
 庇ってくれる寧々ちゃんや光くんを避けて戦いたいけど、相手が相手だけに何もできないようだ。
 その横では三人の様子に気づいた炭治郎やカナヲ、柱のみんなや紅魔館メンバーたちがオロオロ。

 
 花子「たたたた助けてむうっ! つ、つかさったら全ッ然気づいてくんなくてさぁ!!」
 茜「チッ。下劣なエロガキが。こっち見ないでくれます?」
 花子「じゃあ、どこ見ればいいのさッ」
 茜「ハァ――――ッ。床と壁でも見とけ」

 むう「落ち着こう茜くん! ちょっと落ち着こう!! ほら、ほらぁアオちゃんが引いてるよぉ」
 葵「茜くん……? な、なにして……」
 茜「あああ、アオちゃんッ!? 大丈夫! ただの野球だから!」


 桜『おっと、仁乃睦コンビ速いです。有為ミツコンビも段々追い上げて行っています』


 流石にそれは……無理がありすぎるんじゃない?
 葵ちゃんは、有為ちゃんの能力で霊力を分けてもらってるから、怪異の姿が見えてる。


 ミツバ『宵宮さんもうちょっとスピードあげるけどいい!?』
 有為『はい。あのカッコつけ野郎をフルボッコにすればいい話ですね?』
 ミツバ『そう、あのクソダサツンデレヘボ太郎を、この可愛い僕が倒す話!』

 むう「エロビデオみたいに?」
 ミツバ『そう、エロビデオみたいに! って、わ、近眼先輩っ、急に話に入ってこないでよっ』
 むう「近眼先輩ってなに!?」

 ま、まあいいや。コホンコホン。
 近眼なのはしょうがないし、マジカルアイの本でも見て視力付けよっと。

 葵ちゃんの目に映っている光景は。
 金属バッド片手に、鬼の形相で花子くんを見下ろしている茜くん。
 野球だうわ―いではない。絶対。


 むう「言っとくけどね、ここは私のノートの上! 私を怒らせたら、ただじゃ済まないから!」
 睦彦「おおお、むう邪魔ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 と、どんどん加速する仁乃ちゃんに引っ張られながらコースを走っていた睦彦が、向こうから駆けて来た。


 ……ちょうど私が立っている位置は、コーナーのど真ん中だった。
 つまり、必死に走っている走者にとっては物凄いメーワクなところにいたのだ。
 そして、そんなところにいたものだから、私たちは派手にぶつかる。


 むう「ぎゃああああああああああああああっ」
 睦彦「て、テメーがそんな位置に立ってるからだろーが! じゃあなこのヘボ眼鏡っ」

 大丈夫?の三文字さえ交わしてくれない睦彦は、気の毒そうにこっちを見つめる仁乃ちゃんの手首をつかんで、走って行ってしまった。
 コーナーに仰向けに倒れる私の上を、もっけちゃんがドスドス踏みまくる。

 そして。

 もっけ「ぶざまー」「ぶざまー」「へぼめがねー」
 むう「へ、ヘボ眼鏡………」
 ミツバ「やーいヘボ眼鏡ー」
 有為「そんなところで転ぶとフレーム曲がりますよ? 近眼先輩」
 むう「う゛っ」

 もっけちゃんもミツバくんも有為ちゃんも酷い!
 有為ミツコンビめぇぇえ、毒舌×毒舌=毒舌の二乗。
 悪意のない『眼鏡』いじりがグサグサとか弱いハートに突き刺さった。

 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.69 )
日時: 2020/10/27 20:25
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)


 〈桜side〉

 本部のテントで放送をしていた私は、思わずホッとため息をついた。
 只今、仁乃睦コンビと有為ミツコンビの接戦。仁乃睦コンビが若干速いかしら。
 持参した水筒の水で喉を潤し、私は再びマイクに口を近づけた。


 桜『只今、白組が仁乃睦コンビから炭治郎くんに代わりました。紅組も美鈴さんに交代です』
 夏彦『両者、お題ボックス目掛けて走っていきます』


 睦・仁「頼んだぞ美鈴!!」
 美鈴「はい、お任せください~」

 ミツバ「頼んだ竈門くん!」
 炭治郎「了解!!」

 遠くからワーッと歓声が上がる中で、さっき睦彦くんと派手にぶつかったむうの悲鳴が混じる。
「へ、ヘボ眼鏡じゃないもん……」としくしくと泣いている。

 ああ、あのもっけと有為ミツコンビにやられたのね。
 乱暴しないように言っておいたんだけど、あの二人話を聞かないから。

 夏彦「おい、チビ。さっき七不思議様が呼んでた気がしたんだけど」
 つかさ「んー?」
 夏彦「お前あんまり兄ちゃんを困らせるんじゃねぇぞ~」
 つかさ「しないよ。だって俺、あまねスキだもん」

 あっけからんとこの子が言い、机に置いていた白のハチマキをしめて椅子から立ち上がる。
 体操服が若干大きくて、まるでハロウィンのお化けのようだ。

 つかさ「ジャー俺、そろそろ出番だから行くね!」
 夏彦「おう。行ってらっしゃい。頼むから殺しだけはしないようにな」
 つかさ「はーい。ネーネーサクラ、応援してくれるよね?」
 桜「……期待してるわ」

 私はそう答えると、再びコーナーに視線を移した。
 炭治郎くんと美鈴さんが、設置されたお題ボックスから引いたくじを眺め、各自「うおっ」とか、「ええええ?」とか言っている。


 夏彦『おっと、お題はなんだったのでしょうか。お嬢は何だと思います?』
 桜『そうね……。炭治郎くんはどうやらこっちに向かってるけど……』


 炭治郎くんの姿が次第に近づいてきて、その足は私たちがいるテント前で止まった。
 はァはァと息を切らしながら炭治郎くんは、横で競技の様子を眺めている夏彦をチラリ。

 炭治郎「すみません桜さん。一旦、夏彦さんもらってもいいですか?」
 桜「ええ、あれは空気みたいなものだから。いてもいなくても異常はないわ」
 夏彦「え?」

 どうやらお題は夏彦に関係があるものだったようね。
 何が書いてあったのかしら。
 
 桜「それで、お題は何だったの?」
 炭治郎「はい、こちらです」


 私は彼から渡された紙を開き、そして。
 盛大に吹いた。




 『お題。連絡先を交換してくれる人』

 

 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.70 )
日時: 2020/10/28 18:12
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)

 閲覧数1000突破、本当にありがとうございます!
 記念で久しぶりに、イラスト掲示板にてイラストを上げようと思ってるのでお楽しみに。
 ただ来週は習熟テスト、そしてその後には期末、それが終われば受験勉強一筋……。
 ギャ―――――――スッッ(ろくきせキャラ一同「むう、どした?(困惑)」)

 ****************************

 〈美鈴めいりんside ※初〉

 みなさん、こんばんにちはです♪
 紅魔館にて門番を担っております、紅美鈴ほんめいりんと申します。
 さて、私は只今、かまぼこ花子隊や柱の皆さんと一緒にウンドウカイをやっているわけですが。
 少々、困ったことになっていまして……。


 美鈴「……おかしいですよ、咲夜さん。そんなに拒むなんて……」
 咲夜「ダメよ美鈴……私、私っ」


 咲夜「美鈴と一緒に走るなんていやぁぁぁぁぁぁ!!」
 美鈴「言っときますけど、しっかり傷つきましたからね咲夜さん!!」

 私は、嫌がる咲夜さんの両手首をつかんでコーナーに連れて行こうとするんですが……。
 咲夜さんもまた、私に連れて行かれるまいと腕に力を籠めています。
 
 私が引いたお題は、『フルネームが七文字の、女の人』。
 それで、パッとひらめいたんですよね。

『いざよいさくや。あ、咲夜さんでいいじゃないですかぁ! ちょうどご一緒したかったし!』


 なのにどうしてでしょうか、そんなに嫌がられるなんて…。
 ずっと膠着こうちゃく状態の私たちを、先ほどから幻想郷メンバーがじろじろと見学している。

 霊夢「……咲夜、いい加減美鈴のお願いを聞いてあげたら?」
 咲夜「嫌です(ツン)」
 華扇「なにもそんなに嫌がらなくてもいいじゃないですか。ねぇ」
 レミリア「そんなこと言ったら、いずれ美鈴が泣くわよ。ねえフラン」
 フラン「え、美鈴泣くの?」

 美鈴「泣きません゛っ!」
 ルーミア「涙目だけど大丈夫か―?」
 美鈴「余計なお世話ですっ」

 ちらりと向こう側を見ると、炭治郎くんが夏彦さんを捕まえています。
 どうやら一緒に走ってくれるようにあちらも説得しているようですね。


 あああ、誰か助けてください……!
 このままじゃ有為さんやミツバさんの努力が無駄になってしまう……!

 美鈴「何で咲夜さんはそんなに走りたくないんですかぁ!」
 咲夜「そんなの決まってるじゃない! 運動会なのよ。走るのよ! 服に汚れがつくじゃないっ」

 魔理沙「洗えばいいだろ」
 パチュリー「私たちがこっちの世界に来て早二カ月。それまでずっと帰還方法が見つからずね…」
 小悪魔「つまり、洗濯できる場所がないって、いうことでしょうか?」


 うーん、紅魔館にあるような洗濯器具は、この時代にあるのでしょうか。
 有為さんは転移術が使えると聞きましたので、彼女の力で何とかできないでしょうかねぇ。
 っていうか……運動会なんだから服が多少汚れることは当たり前ですよ咲夜さん!!

 美鈴「いーきーまーすーよ――――!!」
 咲夜「いーかーなーい――――!!!」

 ああ、話が全く進まない。
 ハァ――――ッと私が大きく息を吐いたとき、視界が急に暗くなる。
 誰かが目の前に立ったようだ。

 ゆっくりを顔を上げると、彼らとの視線がパチッとぶつかった。
 その中の一人、眼鏡が似合うおさげの女の子はおっとりと口を開く。

 メイ「どうかしたんですかぁ?」
 咲夜「め、メイさん!」
 メイ「はい、シジマメイですよぉ。困ってるようでしたので来ちゃいましたぁ。白組ですけど」


 おさげを揺らしてニッコリとほほ笑むメイさんの隣で、黄色の髪の少年はキョトンとしている。
 そしてその彼の横では、白色の狐と小さい女の子が毛づくろいをしている。

 善逸「どうした? 同じ色だし、なんかあったら力になるよ」
 ミライ「ミライは、時間すすめられなくてつまんないの。つかまっちゃうなんて……」
 ヤコ「フン、自業自得よ。大人しくしてなさい」

 美鈴「ぜ、善逸さぁぁぁん、聞いてくださいよぉ! 咲夜さんが、酷いんですぅぅ!」
 善逸「お、お、落ち着いて。お、俺もさぁ、皆酷いんだよ!」
 美鈴「何がですか?」

 尋ねると、善逸さんは肩を震わせて、苦虫を嚙み潰したような表情で私の肩を掴んだ。
 え?と困惑して彼の表情を伺うと、とたんに善逸さんは泣きだしそうな顔で、

 善逸「この甘い空気感、いたたまれなくてさぁ!!」
 東方キャラ一同「は、はぁ……」
 善逸「睦彦や、伊黒さんや、茜やしのぶさんや光や花子や……とにかく、カップルが多いのよっ」
 美鈴「は、はぁ……。ご、ご苦労お察しします……」

 ご苦労お察しするといってるけど、私もなにがなんだかさっぱりわからない。
 つまり、この運動会特有の甘々な雰囲気に嫌気がさしたってことなのでしょうか……。
 確かに、目を引くカップリングは多いですが、あなたには禰豆子さんがいるでしょう?


 メイ「つまりあなたは、禰豆子さんと一刻も早く付き合いたいと言うことですかぁ?」
 善逸「そ、そそそ、そうなのよっ。さすがシジマさん話が早いわっ」
 メイ「エソラゴトの世界の主人公になれば、禰豆子さんと付き合えますけどぉ」
 善逸「ほほほほ、本当っ? 俺エソラゴト2回目だけど、またやってくれんの?」

 メイ「はい。今は大嫌いな七番様もいませんの…………」
 寧々「シ~~~ジ~~~マ~~さ―――――ん………?(シュッシュッシュ)」
 メイ「や、八尋さんっ、なんですか? パレットナイフを振り回さないでください危ないです!」
 

 霊夢「どうしたの、寧々」
 寧々「エソラゴトの世界に閉じ込めるなんて絶対ダメ! っていうか…私、そこで色々と……あったのよ! それで凄く怒ったし、まぁ楽しかったけど、もう二度と虚構の世界にはいかないって決めたの!」


 色々とあった。
 その色々というものがなんなのか、聞いてみたい気持ちもしましたが、それは心の中に。

 寧々「そそそ、それに! そんなことしなくても、花子くんにお願いしたんでしょ?」
 メイ「お願い?」
 寧々「ええ。花子くんと出会ってまだ日が浅かった頃に、サービスで……」
 
 ※詳しくはろくきせ番外編1話「お願い叶えて下さい」参照。


 善逸「そうそう、俺叶えてほしいっつったのに、未だに全然進展しないの! どういうこと!?」
 咲夜「どういうことって言われても………」
 美鈴「そうですね……って、話がずれちゃった。行きますよ咲夜さんっっ!(グイッ)」


 咲夜「だからいかないって言ってるのにぃいいいいいい」
 メイ「……ハァ。世話が焼ける人たちですねぇ」

 呆れたようにメイさんが呟き、いつも手にしているスケッチブックを開く。
 空白のページに鉛筆でさらさらと書いているのは、咲夜さんの絵。
 そしてそのページを下にして振って見せると。


  ポンッッ


 咲夜(分身)「い、たたたたた………」
 魔理沙「うおっ。咲夜が二人!?」
 メイ「本人が嫌がっているようでしたのでぇ、分身を出現させました。そちらと話をどうぞ」


 さ、さすが七不思議さんですね!
 一枚の絵から分身を作り出すなんて、本当に尊敬します!
 よし、そうと決まれば!


 美鈴「行きますよ咲夜さん! スペカぶっ飛ばしましょう! ほら、連続殺人ドールって!」
 咲夜(分身)「ちょ、ちょっと私だって嫌なのにぃぃぃぃぃっ」


 私は分身の咲夜さんの手を掴んで、ようやく、ようやくコーナーへと足を踏み入れたのでした。
 なお、コーナーの真ん中でむうさんがダイニングメッセージのように「ヘボ眼鏡……」と言っていたことは見なかったことにしておきますね。


 

 
 

Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.71 )
日時: 2020/10/29 19:59
名前: むう (ID: 9Yth0wr6)


 〈日向先輩[夏彦先輩、って呼んで♪]side〉


 チッス☆ 久しぶり~☆ 
 みんなのアイドルの日向夏彦でーす。
 炭治郎に指名された俺は、只今……。只今……。


 夏彦「待って待って速い! 速いからぁ!!」
 炭治郎「すみません聞こえませんのでこのまま行きますっ!!」
 夏彦「ちょ、話聞いてたっ!? 速いんだって舌噛むんだってぇ!!」


 ミツバ『あー、頑張って下さい、空気先輩……』
 夏彦「ミツバちゃん何その棒読み……」

 ごく普通にコーナーを走りたいのに、炭治郎の走るスピードに追い付けず翻弄する俺。
 まぁ、人食い鬼を滅殺して収入を稼いでいるんだから、多少普通の人間とは異なるんだけどさぁ?
 
 どんな速さで走ったら、合計120回も舌噛むわけ?
 ねぇ、炭治郎。俺もうほぼ死にそうだよ?
 このあとのお昼ご飯の時、地獄見るの俺だよ? 

 助けを求めようにも、柱やかまぼこ隊ときたら、これが普通だって。
 どういうことだよ!!

 咲夜「もうしょうがないわね、行くわよ、連続殺人ドぉぉぉぉ――――ルッ」
 美鈴「咲夜さん素敵です♪」

 後ろからズダァァァァァンという大爆音が響く。
 あっという間に美鈴ちゃんと咲夜ちゃんが俺たちの隣に並んだ。

 共に戦っている相手として、「ハァィお嬢さん」くらいは言いたいけど、今無理っっ。
 って言っている間にまた舌噛んだしっ。

 夏彦「ねぇ聞いてる!? もうちょっとゆっくり!!」
 炭治郎「すみません聞こえません!!」
 夏彦「お爺さんかぁぁぁぁ!! 俺すぐ横にいるよね!?」

 炭治郎はいつも真面目なんだけど、たまに天然が出る。
 そして今も、隣にいるのに俺の言葉は全く彼に届いていない。
 
 でも、あと50メートルの辛抱だ。
 炭治郎が持っているバトンを、善逸に渡せばいいだけの話。
 
 
 善逸「炭治郎~まだか? 緊張と不安で俺ヤバいんだけど……」
 つかさ「めいりん、こっちこっち~!」


 そこからは同じ組のチビ(つかさ)が何とかしてくれるだろうから。
 だから俺はこの苦行を耐え、あとでお嬢に手当てしてもらうためにも今頑張らなくちゃっ!


 炭治郎「ごめんなさい夏彦さん俺速いですよねすみませんっ! あと10メートルなんで!」
 夏彦「聞こえてるんかぁぁぁぁぁい!!」

 はあ、なんか……まだたった2種目しかしてないのに疲れてんのはなんでだろうね。
 炭治郎が善逸に向かってバドンを伸ばす。
 めーさくコンビも、追いついてきて、走者はチビに代わる。


 炭治郎「善逸、頼む!」
 善逸「ハイハイハイハイ! でもこいつ(つかさ)と一緒なの地獄じゃない!?」
 美鈴「頼みましたつかさくん!」
 つかさ「おっけぇぇぇぇぇ!」

 ミツバ『続いては、紅組の善逸VS白組のつかさくんです。各々まぁ頑張ってください』
 花子「つかさと我妻か……つかさが何かしなければいいけど……」

 亜門ちゃんの件でアイツいろいろと問題起こしてるからなぁ……。
 頼むから血を見る事態にならないことを祈っとくよ~。
 あと……口内炎痛っ!Σ( ̄□ ̄|||)
 
 

Re: ろくきせ恋愛手帖 【更新停止。3月まで】 ( No.78 )
日時: 2020/12/23 17:31
名前: むう (ID: mkn9uRs/)


 取りあえずあげ。
 全国模試終わったぁぁぁ

【キャラにしてみた、されてみた】

{最近人気の『呪術廻戦』のキャラと初めて会ったとき}


 かまぼこ隊version

 
 ◆炭治郎(伏黒恵ふしぐろめぐみ

 伏黒「伏黒だ。よろしくお願いする(キリッ)
 炭治郎「竈門炭治郎です! こちらこそ始めまして!」


(真面目!)


 ◆善逸(禅院真希ぜんいんまき

 善逸「ふわぁ女の子! めっちゃ美人!」
 禅院「あ? なんだテメェ。気持ちわり―奴だな」
 善逸「………Σ(゚д゚lll)ガーン」

(禅院先輩って男っぽくてカッコいいよね!)


 
 ◆禰豆子(パンダ)


 パンダ「ふぁっ、何キミ。竹咥えてんの? それ、美味しい?」
 禰豆子「ムッ!?(パンダが喋ってるぅぅぅぅ!)」


(wwwwカオス)


 
 ◆伊之助(虎杖悠仁いたどりゆうじ


 伊之助「誰だお前! 勝負! 勝負しろォ!」
 悠仁「ちょ、五条先生! どこここ!? こいつ知らんし!!」

(意外と似たものコンビ!?)


 ◆胡桃沢仁乃(狗巻棘いぬまきとげ


 仁乃「? 始めまして、胡桃沢仁乃です! 貴方の名前は?」
 棘「…しゃけ」
 仁乃「…??? えーっと、貴方の名前は?」
 棘「おかか」
 仁乃「????」


(おかか!! しゃけ!! 明太子!)


 ◆刻羽睦彦(釘崎野薔薇くぎさきのばら


 野薔薇「? 何アンタ。始めて見る顔ね? 小学生?」
 睦彦「ハア!? 俺は17だ! ガキじゃねぇ!」
 野薔薇「じゅ、じゅうななッ!? プッ。チビ(ボソッ)」
 睦彦「……あんだとォ!?」


(ヤバイ。こいつら相性が良すぎた)



 ◆宵宮有為(吉野順平よしのじゅんぺい


 有為「えっと、初めまして。あの、もしかして迷子でしょうか?」
 順平「えっ、い、いや、まぁ…」
 有為「案内しましょうか? あの、ボク一応陰陽師をやっていまして…」
 順平「(陰陽師? 呪術師の間違いか?)」

(何やら危ない予感がしないこともない…)



 以上です!
 最近ちょっと本編のネタが思い浮かばないので、
 他のアニメとこういうされてみたをメインにやるかもしれません。
 他にもこのアニメとやって!などあったら
 コメントの方でお願いします!


 



 

Re: ろくきせ恋愛手帖 【亀更新です】 ( No.79 )
日時: 2020/12/30 08:22
名前: むう (ID: mkn9uRs/)

お知らせですごめんなさい!
作者の都合で鬼滅学園を書けなくなったので、代わりに有為の過去エピソードを書こうかなあとか思ってます。多分書きます。なので鬼滅学園の記事は大体削除したけどまだ残ってるのもあるのでよかったら見てください。占いツクールでも書いているのでそっちもよろしくお願いします。では!

Re: ろくきせ恋愛手帖 【亀更新です】 ( No.80 )
日時: 2021/04/20 20:03
名前: むう (ID: mkn9uRs/)

 【第3話 キャラクター紹介】

 有為過去編での登場人物を紹介します!

 ()内は当時の年齢


 宵宮有為よいみやうい/14歳(10歳)

 陰陽師の家系である宵宮家の娘。
 毒舌と僕っ子が特徴の生真面目な性格だが、
 根は素直ないい子。


 宵宮茂吉よいみやもきち(16歳)

 有為の兄。
 明るく優しい性格で、幼少期の有為を親に代わって世話をしていた。
 六新鬼月戦で、十郎を追って参戦し、鬼の身体に取り込まれて死亡。故人。


 宵宮十郎よいみやじゅうろう(20歳)
 
 有為と茂吉の兄で、宵宮家の第77代目当主だった。
 六新鬼月を再び封印すべく参戦し、弟と一緒に鬼に食われ死亡する。

Re: ろくきせ恋愛手帖 【亀更新です】 ( No.81 )
日時: 2020/12/30 17:08
名前: むう (ID: mkn9uRs/)


 
 ボクは自分が嫌いだった。
 今もどこかで人と自分を比べ、自分の無力さに打ちひしがれている。
 でも、あのときの自分は今以上に惨めな気持ちで。


 ―ボクは陰陽師の家系だ。

 陰陽師というのは、鬼殺隊と同じく政府非公認の職業で、地方で鬼殺隊に代わり鬼を狩る仕事。
 ボクの家である宵宮家は、陰陽師の御三家と呼ばれ、数ある陰陽師の家系の筆頭に立っていた。

 そんな陰陽師には何かと決まりが多い。
 その中でも特に重視されたのが、『忌子』というものだった。

 普通陰陽師になれるのは男だけであり、陰陽師という職業では男が絶対優位。
 よって、女が一人でも生まれれば忌むべき子供として、すぐに処分されることになっていた。


 しかしボクは生かされた。
 早くに病死してしまった両親の代わりに世話をしてくれた茂吉お兄ちゃん。

『家の決まりより妹が何倍も大事だ』

 と、何十年も守られてきたルールを破り、ボクを活かしておいてくれたのだ。


 でも。
そんなお兄ちゃんたちに、同じ陰陽師の人々はいい印象を抱かなかった。


『なんてことを。あの少女は忌子だというのに』
『これだから宵宮家は』


 と口々に暴言を吐き、石を投げつけ、非難を浴びかけた。
 小さい時のボクも、親戚一同から罵声を投げかけられた。


 ずっと我慢していたけれどとうとう耐えられなくなり、ある日お兄ちゃんにすがりつき言った。


 有為「なんでお兄ちゃんは、ういをころさなかったの?」
 茂吉「……」
 有為「かおもあわせてもらえない。おはようさえ言ってもらえない」
 十郎「有為、人の事を気にしなくてもいいんだよ。俺は有為が生きていることが嬉しいんだ」


 有為「なんで、おんみょうじは女の人を殺すの? 鬼も人間も殺すの?」
 茂吉「なんでだろうね」


 茂吉お兄ちゃんは困ったように笑って、そっとボクの頭をなでてくれた。
 十郎お兄ちゃんはいつも、ボクの両手をそっと握ってくれた。


 十郎「大丈夫、これから何があっても、お兄ちゃんだけは有為の味方だ」
 有為「みんながわたしを嫌いなのに?」
 茂吉「お兄ちゃんは、絶対有為を嫌ったりしないよ」


 その言葉だけが、子供の頃唯一信じられる言葉であり救いだった。

 ボクは忌子だ。
 生きていてはいけない人間だ。

 なんで自分が生かされたんだろう。
 なんでお兄ちゃんたちは、こんな自分を嫌ったりしないんだろう。


 陰陽師というのは、鬼も人間も殺してしまうのか。
 なんで、家のルールが絶対で、人の命なんて、何とも思ってないのか。

 お母さんも、おばあちゃんも、なぜ子供を産んだらすぐに死んでしまうのか。
 忌子ってなに?
 女に生まれたから、陰陽師の家系に嫁いできたからってだけで、死ななきゃいけないの?


 そんなの…どうすればいいの?
 

 有為「わたしはいみご…みんなからきらわれてる……いっそ、死ねたらよかったのに……」


 家族の愛情で生かされたって、自分の立ち位置は変わらなくて。
 声もかけてもらえない、目も合わせてもらえない。
 同い年くらいの陰陽師つながりの子供たちは、揃って自分から逃げていく。



 陰陽師は人を助ける立派なお仕事って聞いたけど。
 そんなの、真っ赤な嘘だったってことなの?


 ―それはきっと間違っている。


 陰陽師だからって、女だからって、そんな理由で人を殺すなら。
 ボクのお兄ちゃんもいつかは、自分を捨ててしまうのだろうか。


 有為「お兄ちゃんたちは、わたしが好き?」
 茂・十「大好きだよ」


 ……本当かなと疑ってしまう毎日だった。
 本当の幸せとか、本当の愛情というものがなんなのか分からなくて。

 ただ、自分がここに生きていられる。
 そのことだけが信じられることだった。

 

Re: ろくきせ恋愛手帖 【亀更新です】 ( No.82 )
日時: 2021/01/02 12:28
名前: むう (ID: mkn9uRs/)


 そんな夏のある日のこと。
 十郎お兄ちゃんは急に遠い場所へ任務に赴くことになった。
 
 なんでも、ご先祖さまが封じたとされる六新鬼月ろくしんきづきという鬼。
 そのの封印が解け始めているらしい。
 茂吉お兄ちゃんはボクの世話のため、家に残ることになった。

 十郎「じゃあ、行ってくるけど戸締りよろしくね」
 茂吉「OK。十兄もケガしないようにね」
 十郎「大丈夫だって。怪我したところにヨモギを添えるくらい早く終わらせてくるから」

 有為「じゅうろうお兄ちゃん…どっか行くの?」
 十郎「うん、ちょっと厄介な任務に行くことになったから。有為は茂吉と待っててな」
 有為「わたしも一緒に行く!」

 十郎「ダメだよ、有為は女の子なんだから。それに、一緒に行ったらまた何か言われちゃうよ」
 有為「でも、でも……」
 茂吉「お兄ちゃんなら大丈夫だ。絶対戻ってくる」

 十郎「んじゃ、二週間くらい戻れないから、後頼むよ」
 有・茂「行ってらっしゃーい!」

 いつかは戻ってくると思っていた。
 本人が絶対戻ってくるって言ったんだから。


 でも、二週間経っても、
 五週間経っても、
 一カ月経っても、


 十郎お兄ちゃんは戻って来なかった。

 


 ***


 有為「……じゅうろうお兄ちゃん、もうずっと戻って来ないね」
 茂吉「……そうだね(米を研ぎながら)」
 有為「いつか、かえってくるよね?」
 茂吉「……うん」


 お兄ちゃんがもう戻って来ないことは、うすうす感づいていた。
 いつも明るい茂吉お兄ちゃんが、ずっと暗い表情をしていたから。

 それでもボクに心配かけまいと笑ってくれる。
 ボクはそんなお兄ちゃんに、何も言えなかった。
 
 生まれた時から、死んだお父さんやお母さんの代わりに世話をしてくれたお兄ちゃん。
 自分の妹を、忌子だとののしられても絶対見捨てたりしなかった。
 
 十郎お兄ちゃんも、茂吉お兄ちゃんもずっと優しかった。
 だからボクも、お兄ちゃんに何かしてあげたいと思った。


 有為「……もきちお兄ちゃん、ういと将棋しよ?」
 茂吉「ルール分かる?」
 有為「うん。わたしね、じゅうろうお兄ちゃんに三回も勝ったの」
 茂吉「そっか。有為は頭いいもんな。やるか」


 本当は茂吉お兄ちゃんは、今すぐにでも十郎お兄ちゃんを助けに行きたかったんだと思う。
 でも小さいボクを置いては行けないから、ずっと家で家事をしてるしかなかった。

 有為「(行きたいなら行けばいいのに)」


 ボクは別に一人でも構わない。
 お兄ちゃんたちがいても、心の中ではずっと独りだったし。
 でもそんな失礼なことを言う勇気は、その時の自分にはなかった。


 有為「……三六銀(パチッ)」
 茂吉「へえ、動かし方もちゃんとできてるな。じゃあ…ほれ、飛車王手」
 有為「いいの? と金で…(飛車ゲット)」
 茂吉「あ」
 有為「ふふふ」


 大丈夫だよ。
 じゅうろうお兄ちゃんは絶対、鬼なんかに負けないから。
 だからこんな遊びも、きっとすぐに終わる。



 そう願ってたけど。


 ****



 ある日、家に鬼殺隊のかくしの人がやってきて、お兄ちゃんとこそこそ玄関で話をした。
 ボクは運悪く、玄関に比較的近い部屋にいたので、バッチリ二人の話を聞いてしまった。


 隠「東京都浅草で…」
 茂吉「……そうですか……」
 隠「……当主様は、立派な最期を遂げられました…」
 茂吉「…………そう、ですか……」


 瞬間、目の前が真っ黒になって、くらりとめまいがした。
 うんと小さい時、十郎お兄ちゃんからもらったお守りの鈴がついた紐を、じっと見つめる。

 その紐が視界の中で揺れて、次第にぼやけた。
 顎を伝う涙を何度も何度も拭って。


 でも。
 これで終わりではなかった。


 当主である十郎お兄ちゃんが例の六新鬼月に取り込まれた。
 それを聞いて、敵討ちのために茂吉お兄ちゃんは家宝の錫杖を掲げて出陣することになった。

 他の御三家の陰陽師たちを従えて、ボクの制止も振り切って、お兄ちゃんは行ってしまった。

 本当に、何度も泣き叫びながら止めたんだ。
 でも、忌子の言葉なんて、誰も聞いてはくれなかった。


 有為『行かないで! このままじゃお兄ちゃんまで死んじゃう!』
 他の陰陽師『このっ、黙れ!(ガツッ)』
 有為『ギャッ』

 茂吉『有為――ッ』

 他の陰陽師『さあ行きましょう茂吉様。こんな忌子の戯言など必要ありません』
 茂吉『でも、』
 有為『お兄ちゃん――!』
 他の陰陽師『この忌々しい忌子め! お前がいるから鬼が寄ってくるのだ! はよ去らんか!』


 分かってたつもりだった。
 なんで…なんでみんな、間違ってるって思わないんだろう。
 
 同情なんてしてくれなくていい。
「分かるよ」「辛かったね」なんて死んでも言われたくない。
 でも、少しはボクのことを、普通の人間だと見てほしかった。


 ただ、それだけなのに。



 ****


 茂吉お兄ちゃんも、十郎お兄ちゃんと同じく、鬼に取り込まれたと知った。
 ボクは心底腹の底が煮えくり返るくらいに怒り、そして悔しさに潰されそうな日々だった。

 鬼殺隊の隠の人が、十郎お兄ちゃんの時のように家を訪ねて来た。
 

 隠「…すみません。茂吉様は、立派な最期を遂げられました」
 有為「………」
 隠「有為様、気持ちを強く持っていてくださいね。色々苦労されてるみたいですが」
 有為「………帰ってください」

 隠「う、有為様―」
 有為「もう帰ってください! 同情するくらいなら、―――ください」
 隠「…?」
 有為「同情なんてするくらいなら、忌子のせいだって責めろよ!」

 有為「全部わたしが悪いんでしょ!? わたしがいるから、茂吉様は死んだって皆言う!」
 隠「落ち着いてくださいませ有為様。わたくしはそのようなことなど……」
 有為「忌子は陰陽師になれないって、女のくせにって、そう言えよ!!」


 陰陽師なんて大嫌いだ。
 その下らない制度で、その下らない階級で、なんの罪のない人を殺し責め、糾弾する。

 自分なんか、結局何の価値もなくて。
 あるのは、「忌子」というレッテルだけで。


 有為「もう、帰ってください!!」
 隠「……」

 怒り任せに引き戸をしめる直前、隠の人の、寂しそうな笑顔を見た。
 同情なんてしてほしくない。
 でもその笑顔は、なぜだか怒る気になれなくて。


 隠の人は扉をしめようとするボクに、着物の懐から一枚の封筒を取り出した。
 当主様からの言伝ですとボクに渡し、それ以上の説明はせずに帰っていった。


 有為「……『遺書』? 裏に差出人の名前が――」


 封筒をひっくり返し、僕は目を見開いた。
 そこに書かれてあったのは。




 有為「『宵宮十郎・茂吉』……」



 


 


 

Re: ろくきせ恋愛手帖 【亀更新です】 ( No.83 )
日時: 2021/01/07 17:58
名前: むう (ID: mkn9uRs/)

 あ、言い忘れていました!
 明けましておめでとうございます!
 ろくきせシリーズは来月で1周年を迎えます。
 これからも作品をどうぞよろしくお願いいたします♪

 ****


 有為「『宵宮有為様へ―』」



 宵宮有為様へ。

 これを読んでいると言うことは、私たちはこの世にいないのでしょうね。

 有為には本当に辛い思いをさせたと思う。

 俺たちは、下手したら有為が自分のことを嫌うのではないかと思っていた。

 あるいは、家を出たり、孤独に押しつぶされて壊れたりしないかと思っていた。

 それほどまでに陰陽師というのはお前にとっては罪でしかなく、

 その家系に生まれたがため、
 
 女という性別に生まれたがために

 この職業は様々なものをお前から奪い取った。

 母親も。

 父親も。

 祖母も、地位も、人権も、笑顔も、何もかもを否定した。

 自分が間違ってるだなんて一つとして考えずに、

 自分の地位を保っていられることに優劣を感じ、

 自分が他より劣っていることが気に食わない連中が、お前から何もかも奪った。




 でも有為は強かった。

 赤ん坊の時はあんなに泣き虫だったのに、もうこんなに大きくなってしまった。

 お前が生まれた時、十郎兄ちゃんはまだ十歳だった。

 ある任務で知り合った炭売りの少年の妹と会って、自分も妹がほしいと思った。

 だからお前が生まれたと知り、

 産後すぐにお前の命を泣きながら奪おうとする母さんが可哀そうでならなかった。

 だから俺と茂吉はお前を生かした。
 
 俺たちのしたことは絶対に間違ってないと、胸を張って言おうと誓った。



 でも、その結果お前を苦しませてしまった。
 
 お前は勘が鋭いから、多分俺たちが陰で暴言を言われていることも分かってたんだろうな。

 俺たちの着物に縋りついて泣き喚いたあの日を、俺は一生忘れない。

 一瞬でも、あのときの選択は間違っていたのかと疑った自分を一生忘れない。

 自分のせいで石を投げられる妹に、忌子だという重りを背負っているお前に

 少しでも笑ってほしかった。



 有為、お前の名前の由来はな。

 生きる理由、つまり『為』、それが『有』るという意味だ。

 たとえ他の陰陽師が俺たちを罵ったとしても、生きているそのことに誇りを感じろ。

 掟なんて知ったことか。

 有為、お前に願うことはただ一つ。




 お前には幸せになってほしい。

 泣かないでほしい。

 生きててほしい。

 笑っててほしい。

 普通の人のように、普通の生活は陰陽師に生まれた時点でできないが、

 それでも好きな服を着て、

 好きな物を食べて、

 好きな人と好きな場所で好きな話をしてほしい。

 



 だから。

 だからどうか、自分には何もないなんて言わないでほしい。

 お前がいるだけで。

 ただ横で笑ってくれるだけで。

 俺たちはとっても、とっても嬉しかったんだから。




 負けないでください。

 諦めないでください。

 俺の妹は強い子です。

 とってもとっても優しい人です。



 忌子なんて関係ないです。

 有為は、俺たちの大切な妹です。

 生きててやれなくて、ごめんな。



 好きです。

 有為が好きです。

 有為の笑った顔が好きです。



 母さん、父さん見てるか。

 有為が言葉を話したよ。

 やっとおしゃべりができるようになった。

 すくすく大きくなる。

 やがて俺たちを追い越すかな。
 
 楽しみだ。




 有為へ。

 俺たちは、いつでもお前の味方だ。

 どこへ行っても、どんな時でも。

 俺たちはお前の兄ちゃんだからな。





 ―――宵宮十郎・茂吉






 ****



 有為「…………っ ひっく ……う゛~~~~~~ッ」



 幻なんかじゃなかった。
 ちゃんと見てくれてた。
 生きてていいんだって、ちゃんと見ててくれてたんだ。


 わたしはわたしでいいんだ。
 ちゃんと、人間やってていいんだ……っ。


 お兄ちゃん。
 お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん。


 わたしも好き。大好き。ずっと好き。世界一好き。
 好きって言ってくれた兄弟が大好きだった。
 ちゃんとわたしの目を見て話をしてくれるその姿勢が好きだった。
 どんな時も明るいその性格が好きだった。

 わたしだって、お兄ちゃんたちに生きててほしかった。
 死なないでほしかった。
 あの温かい手のぬくもりにまた触れたかった。
 

 いつも隣で笑って、楽しい話をしてくれるお兄ちゃんが大好きだった。
 昔も、今も。そして、何十年後もずっと。



 だから、大事なことを分からせてくれてありがとう。
 わたし、本当に生きてていいんだね。
 しっかり前を向いて歩いていいんだね。


 
 有為「わたし、頑張るよ。絶対にお兄ちゃんたちの仇を討つから。絶対、ここで折れたりなんてしないから」

 
 宵宮家の先祖が代々受け継いできた祓魔術。
 女だからとかそんなくだらない虚言は聞き飽きた。
 
 わたしは絶対、諦めたりしない。
 もう絶対に泣かない。

 わたしだって、好きな人と好きな場所で好きな話をするんだ。
 わたしだって、好きな人と好きな場所で好きな話をしたいんだ。
 みんなと笑って暮らせる未来が欲しいんだ。

 それを今から自分の手で、実現させて見せる。
 そうだ、わたしは人に守ってもらうだけの弱い女じゃない。
 自分でもやれるんだって、そう見せつけなくちゃ。

 忌子だと言い続けて来た陰陽師たちを、見返してやるんだ。
 だから見ててよ、お兄ちゃん。
 自分の妹が地をしっかり踏みしめて歩くところを。

 
 でもやっぱり人は弱いからさ。
 一人で歩けないこともあるからさ。わたしも弱虫だから。
 折れちゃいそうなときは、夢にでも出てきて励ましてよ。



 やってやる。
 絶対に成功させて見せる。
 もう泣かない。諦めない。
 未来を信じて、突き進んでみせる。



 
 だからそれまでは、またね、お兄ちゃん。
 
 




 




 

Re: ろくきせ恋愛手帖 【亀更新です】 ( No.84 )
日時: 2021/01/07 21:15
名前: むう (ID: mkn9uRs/)

 こんばんは、むうです。
 むうは今、病院のベッドでこれを書いてます。
 メンタル疾患が再発しましてね。入院することになりました。
 結構色々辛いんですけど、雑談掲示板で色んな人が声をかけてくださり。
 色んな人が励まして下さり、本当に救われてます。
 むうも昔の有為みたいに生きる意味が分かんなくなったりするんですが、
 皆さんの優しさでその意味が少しだけ見つかったような。
 そんな気がしてます。

 ****


 それからの生活は、思っていた以上に大変だった。
 あの頃のボクはとにかく余裕がなかった。

 一人称を「ボク」に変え、敬語を用いることで強さを見せつけれると勝手に思っていた。
 そんなこと、やる必要なんてないと知ったのはつい最近のこと。

 嫌われたくなくて、少しでも人間と見てほしくて。
 体当たりで性格も変え、口調も変えて、必死に自分を防御していた。
 
 やることはいっぱいある。
 陰陽師の武術である祓魔術を、家の書庫にあった沢山の書記から学んだり。
 十郎お兄ちゃんが一人で切り盛りしていた屋敷を、自分が管理したり。
 もちろん米を研ぐのも、裏の畑の世話も、月一回陰陽師の打ち合わせ会に出かけるのも自分。

 一つやっただけでもふらふらになるのに、お兄ちゃんはそれを毎日一人でやってたのか。
 お兄ちゃんに比べてボクは…。

 出来ないことにコンプレックスを抱くのは毎日だ。
 でもこんなことで悩むのは、良くないと分かっている。

 何をやるにも必死だった。
 何もかもが足りてなかった。

 もちろん世話をしてくれる人なんていないから、全部一人でするしかなかった。
 自分には、もう家族はいないんだから。
 だから自分が何でもできるようにならなくちゃと、そう思っていた。

 宵宮家の当主がいなくなっただけで、周りの連中は忌子の存在をいきなり消したりはしない。
 暴言や石を投げられるのは減った。
 だけど。


『あそこの家はもう使えない』
『忌子しか残っていないような家が我らの頂点? 反吐が出るな』
『宵宮家はもうだめだ』


 宵宮家は御三家としての機能を失った。
 宵宮家が従えてた陰陽師たちは、夜月やつき家という御三家についた。

 つまり、ボクは全てにおいて独りだった。
 

 町へ買い物に行って、路地を走っている子供たちを見た時、友達と言う存在を改めて感じた。
 欲しいと思ったことはなかった。
 自分には関係ない言葉だと思っていた。


 でも。


 結果的に、その言葉はボクの人生を大きく変えた。



 ****


 兄が死去して3年以上の月日が経ち、14歳になったある日のこと。
 祓魔術の一つである転移術を練習するため、ボクは庭で詠唱をしていた。

 一町(約109メートル)先の鳥を手元に呼び寄せる。
 それが基本だと本に書かれてあった。


 有為「これが出来れば戦闘において役に立つはず!」


 詠唱を始めたところまでは難なく事が進んだのだけど、突如異変は起きた。
 急に天気が悪くなり、空が曇り始め、雷が鳴り響いたのだ。


 有為「……え?」



   ゴロゴロゴロ  ドッカァァァァァァァン!


 凄い音がして、思わずボクは両耳をふさぎ目をつぶった。
 何が起こった?
 術はちゃんとうまく言ってたはずなのに……。


 再び目を開けた時、目の前には『珍妙な三人衆』が揃って倒れていた。


 一人は、同い年くらいの女の子。
 腰までの長くうねった髪と、やたらと足が太いのが特徴。

 二人目は金髪碧眼の男の子で、女の子を庇うように上に覆いかぶさっている。
 
 三人目は人というよりは妖怪? 怪異?
 身体の側に人魂を浮かせ、黒い革製の服を着てふわふわ浮いている。

 あと追加で桃色のウサギのような生き物が、三匹。



 ??「ヤシロ!! ヤシロ起きて――――ッ」
 ??「先輩、起きて下さぁぁぁぁい!」
 ??「ねねしんだ」「しんだ?」「しんだのか?」



 ??「おい花子! 起きねえぞ先輩! 先輩大丈夫っすかぁぁ!!」
 ??「ヤシロおおおおおおおお!!」


 有為「…………は?」


 ??「(パチッ)」
 ??「あ、起きた! 良かったぁぁぁぁ……」
 ??「先輩大丈夫っすか!? 痛いところないですか?」


 ??「花子くん光くん。えっと…ここはどこなのかな…」
 ??「うーん、それが俺も分かんなくてさァ。取りあえず通行人に話を聞いた方がいいと思うよ」


 人魂を浮かせた奴がこっちに視線を向けたので、ボクは肩を震わせた。
 え、え、まさか…。
 鳥の代わりにこんなわけわからん輩を召喚しちゃった!?


 寧々「こんにちはっ。私、八尋寧々! 初めまして!」
 有為「あ、え、えっと」
 寧々「貴方のお名前は?」
 有為「え、よ、宵宮…有為です…」
 寧々「そっか。よろしくね、有為ちゃん!」


 急に大根足娘が馴れ馴れしく喋りかけて来たので、ボクは口ごもる。
 人にこんなふうに話しかけられたことって、なくて。
 だからかな。


 有為「……ひっく う゛~~~っ」
 花・光「な、泣いた!?」
 寧々「!? ちょ、大丈夫?? お、落ち着いて……どうどう……」


 なぜか両目から涙がこぼれて、地面を濡らした。
 手で拭ってもとめどなく流れて、嗚咽と一緒に外へ漏れてく。

 
 花子「女の子泣かせるなんてダメだよーヤシロ」
 寧々「わ、私!? ご、ごめんね。怖がらせたいわけじゃないのよ。……ごめんね」
 有為「……ごめんなさい……いきなり、こんな所見せてしまって」

 光「大丈夫っス! あ、オレ源光っす! 『こう』って呼んでください!」
 花子「俺花子ー。よろしくね宵宮―」
 有為「……お守りピアスくん、大根足さんありがとうございます」

 いいわけではないけれど、人の名前とか呼んだこともなくて。
 だからそういう呼び方しかできなかったんだけど。
 結果的に、

 寧々「(ガビーン!)」
 光「あ、あれデジャヴっすかね? なんかアイツの顔が脳裏に」
 花子「少年落ち着いて! どうどう!!」


 軋轢を生んだ。


 有為「改めまして、屋敷の管理をしてます宵宮有為です。
    うちへお越しくださった所まことに申し訳ないのですが……」


 不法侵入者は誰であろうと排除するように、お兄ちゃんに言いつけられていたから。
 ボクは錫杖を掲げ、いつもよりも低い声で言い放つ。


 有為「貴方達には、家の敷居は跨がせないので。水の神・水龍刃風すいりゅうじんぷう!」


 突如、水を含んだ突風が吹き荒れ、三人を空へ吹き飛ばした。
 彼らの悲鳴を聞きながら、ボクはふうとため息をつく。


 初めてだった。
 忌子、とではなく名前で呼ばれたこと。
 でもまだ、人と接するのが怖かったから、追い返したらもう自分に近づかなくなるのではないか。


 そう思ってしまうあたり、ボクはやっぱり弱い。
 彼らがそんなことできる人間じゃないってことに気づかないあたりも。

 
 
 

Re: ろくきせ恋愛手帖 【亀更新です】 ( No.85 )
日時: 2021/01/09 07:44
名前: むう (ID: mkn9uRs/)

 このお話は、ろくきせの『最悪の出会い』と被っています。
 有為目線じゃなくてかまぼこ隊目線がいいなぁと思った方は
 あっちもまた見て見て下さいね。

 ****


 それから三日後。
 なんと、呼び出してしまったおかしな三人衆は、更に人を呼んで戻ってきた。


 家の前にある畑で夕飯に使う野菜を収穫していたら、足音が近づいてきた。
 お客だろうかと振り返りげんなりする。
 ついこの間追い出したはずの人間が、なんと他の厄介そうな客を連れて戻ってきた。

 ??「フヒィー。聞いてないよ、この山に鬼が出るってこと!」
 ??「私もう死にますおやすみ…」
 ??「まだ逝くな胡桃沢!! 起きろ!!」


 ギャースカギャースカ。

 寧々「あの子! 大根足って言ってきた犯人!」
 光「この前は謎の術でぶっ飛ばされたけど、今度はそうはいくか!」
 花子「よし、ここは強行突破ってことで。蹴散らせ白杖代!(ビュンッ)」

 学ランの男の子が、横に浮いていた人魂を投げつける。
 ボフンと煙があがり、ボクはゴホゴホとせき込んだ。


 有為「(何て威力…しょうがない、こちらから少し牽制でもしようか…)」


 それに、彼らが連れて来た人たち。
 あの制服、見たことがある。
 確か鬼殺隊が揃ってきている隊服じゃないっけ?

 鬼殺隊の皆さんがどういう理由で宵宮家を訪ねに来たのか分からない。
 だったら、こっちから聞くまで。


 有為「(スタスタスタスタ)」
 善逸「あ、女の子がこっちに歩いてくる。結構かわいい……アレ?」
 睦彦「おいおいおいおい。なんか丸い球がついた杖もって猛進してくるんだけど!」


 有為「一遍死んでください」
 花子「ぁぁ俺、一遍死んでるから、もう一回死んだりできないので、うん」
 有為「……祓魔術・水の神 水龍刃風!!」


 お約束で、水を含んだ突風が吹き荒れる。
 学ランの男の子が操っていたハクジョーダイ?という人魂がクタクタになって戻ってくる。


 花子「おい宵宮! 俺の白杖代をいじめないでくれる」
 炭治郎「噂に聞いてた通りの毒舌だな」
 仁乃「そうだね大丈夫かしら……」


 有為「なんですか便所虫くん。折角追い出したのにまた来たんですか、懲りないですね。
    貴方はうちの子じゃありませので、これに懲りたらとっととお帰り下さい」


 ボクだって忙しいんだから、勝手に来られても困る。
 まあ自分の失敗のせいだってことは認めるけど、帰る家があるなら帰ればいい。


 炭治郎「君が宵宮有為ちゃん?」
 有為「ええそうです。貴方達は鬼狩り様ですか? 取りあえず中へどうぞ」
 睦彦「…アイツらは」
 有為「ああ、気にしないでもらって結構です」

 
 花子くんキャラ一同「おーい!(# ゚Д゚)」


 本当のことを言えば、心のどこかでは彼らを家に上がらせてあげたいと思っている。
 でも、今までそんなことしたことがないから、どうふるまえばいいのか分からなかった。
 嫌われないようにと決めた敬語と一人称だけ、ちゃんと徹底した。


 善逸「有為ちゃん? いくらなんでもそれは酷いと思うよ。うん」
 睦彦「…アイツらは案内人?で色々頼りになったんだよ。
    泊まる家もないみたいだし止めてやればいいじゃねえか。デカい家なんだし」

 仁乃「そうだよ、いくらなんでもそれは無慈悲……」


 鬼狩り様が必死でお願いするものだから、少しだけ気持ちが揺れた。
 まあちょっとだけ、ちょっとだけならいいかな。


 と思ってボクなりに優しく声をかけたつもりだったけど、


 有為「鬼狩り様がそこまで言うなら考えてみましょう」
 花子くんキャラ一同「ほんとっ?」
 有為「そこの大根足、交通ピアス、便所虫? ボクの家に入って結構ですよ」



 また軋轢が生まれた。


 寧々「だから私は! 大根足じゃない!」
 光「オレの名前は源光! 名前があるんだからそれで呼べ!」
 有為「分かりました。『げんこう』くんですね」
 光「音読みやめろ―――! 『みなもと・こう』!」


 どうやったら皆みたいに人と無理なく会話ができるのか分からなくて。
 自分なりに色々やってみたけれど、便所虫くんはショートするし大根足は泣くし。
 名前をしっかり呼ぼうにも、呼んでいいのかすら分からなくて。



 有為「………(また、失敗した…)」
 仁乃「……(ぽん、と有為の肩に手を当てて)」
 有為「っ? えっと、貴方は…」

 仁乃「私、胡桃沢仁乃! 仁乃って呼んで。よろしくねっ」
 有為「………胡桃沢さん」
 仁乃「名前でもいいよー。同年齢なんだし、ね」

 仁乃さんのことを名前で呼べるようになったのは、それから一週間後。
 ボクが彼らに心を開けるようになったのは、彼女が話してくれたある昔話がきっかけだ。

 みんな、色々なことを思って、苦しみと葛藤しながらも笑って生きている。
 自分だけが苦しんでいるという考えは違う。
 そんな当たり前のことを、ボクはなかなか気づけなかった。

 生まれてから今まで14年間、一日として暴言を言われなかったことはなかったから。
 我慢できないくらい苦しい事が会った時、自分にとって防衛手段は我慢しかなかったから。
 体で覚えた固定概念が壊れることなどないと思った。


 しかし、固定観念を創り上げるのが人なら。
 それを崩してくれるのもまた人だった。


 世の中にはどうしようもないほど馬鹿な人間がいて、いい人は一握りしかいないけど。
 その一握りの人に出会えた奇跡を、とあるある日ボクはやっと知ることができた。


 

Re: ろくきせ恋愛手帖 【亀更新です】 ( No.86 )
日時: 2021/01/09 09:11
名前: むう (ID: mkn9uRs/)


 おはようございます。
 病院って起床時間早いんですね…眠いよ。
 むうは花子くんのシジマさんが好きなので今凄いシンクロしてます。

 ****

 花子隊とかまぼこ隊が家に来て数日たったある日の夜のこと。
 ボクは奥の部屋から緑茶の茶葉を取ってこようと、縁側を歩いていた。

 夕ご飯の支度は、料理が得意だという交通ピアスくんに頼んでいる。
 自分でやると言ったのだけど、彼は「任せて下さい!」と笑った。


 有為「……今日は、月が満月だ。すごい綺麗」

 
 夜空で煌々と輝いている丸い月の輝きに心を奪われる。
 今もお兄ちゃんたちは、あの夜の暗がりにいるのかな。
 なんて考えて、不意に寂しくなり、泣くまいと必死に涙をこらえた。


 仁乃「うーいちゃん! やっと見つけたっ」
 有為「く、胡桃沢さんっ!?」
 仁乃「あ、驚かせちゃった? ごめんね。横、いいかな」


 と、向こうから胡桃沢さんが駆けてきてた。
 「いいよ」とも言ってないのにボクの横の縁側に腰を下ろす。
 そして空を見上げ、一分前の自分と同じ感想を述べ、ニッコリ笑った。


 有為「……(チラっと仁乃を見て)何の用ですか?」
 仁乃「ああ、えっとね。なんか、話したくなって」

 有為「他の皆さんとは?」
 仁乃「炭治郎さんたちは火を起こしてるし、寧々ちゃんは料理中だし。だから私は有為ちゃんと」
 有為「……そう、ですか」

 仁乃「ごめんね、いきなりで困るよね」
 有為「いえそんな。……話しかけてくれて、嬉しかったです」
 仁乃「そう? 良かったぁ」

 胡桃沢さんはいつでも明るい。
 おひさまみたいな笑顔は、周りの人を巻き込む力を持っている。

 でもボクは知っている。
 陰陽師の人間は、生まれながらに霊力を持っている。
 その力が、彼女はただの人間ではないと知らせていることを。


 有為「胡桃沢さんって、本当に……人間なんですか」
 仁乃「――なんで?」
 有為「いえ、職業柄、そういうことにはけっこう敏感なんで」
 仁乃「ふぅん」

 と胡桃沢さんは呟き、直後ボクを上から見下ろす形で首の角度を変えた。
 ふてぶてしい態度で彼女は言う。


 仁乃「……残念。バレないようにしてたんだけどな」
 有為「あなたは一体……」
 仁乃「私は人間だよ。中途半端だけどね」


 そう悲しそうな顔で言った直後、彼女の身体から黒い複製腕が発生する。
 その腕はボクが持っていたお盆を奪う。


 有為「!?(思わず錫杖を構えて)」
 仁乃「大丈夫。こっちからは何もしないから」
 有為「貴方は妖怪? 鬼? 皆は知ってて何も言わないんですか? なんで……」

 仁乃「私は鬼化しない特殊体質でね。鬼殺隊の中ではけっこう重宝されてるんだ」
 有為「鬼化しない……」
 仁乃「術が使える以外は普通の人間と変わらないよ」


 仁乃「なんで皆が何も言わないか? ……さあ、それは知らないけど」
 有為「胡桃沢さん、怖くないの? だって―何か言われたらどうしようって……」


 バケモノとか、ならずものとか。
 そんなこと、言われなかったと言うことはないだろう。


 仁乃「怖いよ。今でも。昔は石を投げられることもあったし、近くに住む人皆に怖がられて」
 有為「……今は?」
 仁乃「今は、皆がいるから、安心してる」


 仁乃「(チラッと有為を見て)有為ちゃん。私ね、二年くらい前までずっとグレてたの」
 有為「……え?」
 仁乃「私は、どうしようもないくらい辛い時が会った時、反抗するタイプでさ。
    『うるせー』とか、『見てんじゃねーよ』とか、平気で言ってたなぁ…」


 意外だった。
 とても横にいるこの少女がそんなことをする人間には思えなくて、ボクは目を見開いた。


 有為「他にどんなタイプがあるんでしょうか」
 仁乃「むっくん―ああ睦彦くんのこと―や炭治郎さんは『自分を鼓舞する』かな」
 有為「自分を鼓舞する?」
 仁乃「うん。むっくんは辛い事があった時はずっと、『俺は強い』って言うんだって」


 皆、それぞれ対処法を持っているんだ。
 慣れてるのかな。
 ボクも皆のように対処法があれば、悩まずに済んだのかな。


 仁乃「……辛いのは有為ちゃんだけじゃないよ。寧々ちゃんたちを除いて、この家にいるひと皆、人生の中で多くのモノを失っているから」


 有為「胡桃沢さんも?」
 仁乃「炭治郎さんたちは家族を。むっくんと私は家族と仲間を」
 有為「仲間?」


 ボクが尋ねると、胡桃沢さんは困ったように笑って。
 

 仁乃「本当はね、私の代の同期は三人だった」
 有為「でも、会った時同期は睦彦くんだけだって」
 仁乃「今はね」



 仁乃「一人、男の子がいたの。病気で死んじゃったけど」






 有為「…………」
 仁乃「確か写真が……(羽織の中から写真を取り出して)はい、これ」


 渡された写真は少し汚れていて。
 浅草かどこかの都会、橋の上で、二人の男の子と一人の女の子が立っている写真だった。
 男の子二人は言い争いでもしてるのだろうか。
 お互い対面して指を指し示している。


 仁乃「これが私。ケンカしているこっちがむっくん」
 有為「……こちらの男の子は?」
 仁乃「瀬戸山亜門くん。ふふ、懐かしいな。任務に行く途中、写真屋さんに頼んで撮ったやつだ」


 
 その悲しそうな笑顔の裏で、彼女は一体何を考えているのだろう。
 聞いていいのか分からなくて、ボクは彼女の話に耳を傾けた。



 仁乃「……この日の翌々日、瀬戸山くんが死んだの」
 有為「………」
 仁乃「お葬式の前日ね、私、彼に告白されたの」






 有為「………は?」






 仁乃「あははははは、ほんと私もその時はびっくりしちゃって」
 有為「………返事は」
 仁乃「うん、ゴメンねってそう伝えた。好きな人がいるからって」





 その好きな人が誰なのか。
 ボクはすぐに分かった。


 分かると同時に、明日死ぬという日に胡桃沢さんに想いを伝えた亜門さんのことを考える。
 無性にやるせなさと悲しさが胸の中からこみあげてきて、ボクは思わず拳を強く握りしめた。




 仁乃「……あの時、もし『私も好き』って言ったら、何かが変わったかな」
 有為「……ボクには、分からないです」
 仁乃「そう、だよね」



 仁乃「本当にあの日の事はよく覚えてる。……あの後、何が起こったのかも」

 

Re: ろくきせ恋愛手帖 【亀更新です】 ( No.87 )
日時: 2021/01/11 16:11
名前: むう (ID: mkn9uRs/)

 おはようございます。
 今から朝の診断に出かけてきます。
 雑談掲示板での温かい言葉、本当にありがとうございます。
 わたしもキャラも凄く良くしてくれてるんだなあと思って気持ちが楽になりました^^


 ****


 ろくきせ本編や、こっちで伝えてなかった裏話を紹介します。


 【大正コソコソ噂話①:仁乃の告白回数】

 ろくきせの方では仁乃は告白された数は1回と書いていましたが、
 これは亜門のことをかまぼこ隊に話したら…という懸念と、
 またその告白が亜門の「友達として」なのか迷ったためです。

 

 【大正コソコソ噂話②:陰陽師御三家】

 陰陽師の階級はこんなふうになっています。
 有為のように忌子が生かされるケースはないこともなかったのですが、
 そのような子供は周りからの重圧に耐えられず自死を選ぶことが多かったようです。


 〈御三家の立ち位置〉

 ※十郎が生きてた頃

 1宵宮よいみや
 2夜月やつき
 3如月きさらぎ

 十郎の死後、宵宮家は衰退したとされ、夜月家がトップになりました。
 お館様がろくきせ本編で夜月家ではなく有為に協力を頼んだのは、
 ただ単に祖先が六新鬼月を封じたからというだけではなく
 有為の身体能力や術式などから彼女の活躍を期待したから、という意図もあります。


 【大正コソコソ噂話③:有為の呼び名・武器】


 有為は、キャラクターによって呼び名が変わる…めんどくさいキャラです。


 炭治郎・禰豆子・善逸・仁乃・寧々・葵・蜜璃・夏彦→有為ちゃん
 伊之助→由為(名前間違う)
 輝・ミツバ・桜・無一郎→宵宮さん
 花子・光・つかさ・柱(しのぶ・蜜璃・無一郎を除く)→宵宮
 しのぶ→有為さん



 有為の武器の、先端にまが玉のような球体がついている杖は、十郎が使っていたやつです。
 十郎の死後、隠から預かったものをそのまま使っています。
 また、有為がつけているヘアピンは、仁乃からのプレゼントです。


 【大正コソコソ噂話④:アオイと葵、そして茜】

 名前がおんなじの、蝶屋敷のアオイさんと葵ちゃん、苗字が「あおい」の茜くんですが、
 アオイちゃんは葵ちゃんを「赤根さん」茜くんを「茜くん」
 葵ちゃんはアオイを「神崎ちゃん」
 茜くんに至っては、「アオちゃん」「アオイさん」と呼び方を考えているようです。


 【大正コソコソ噂話⑤:シジマメイ】

 ろくきせでは、メイちゃんは生徒会って書いてるんですが、原作ではこんなことないです。
 これはむうの、鬼滅学園物語的な要素で、メイちゃんを生徒会に入れてみたいなぁという
 個人的な解釈です。
 なので「あれ?」と思われた方、こういうことですのでよろしくです。

 



 
 

Re: ろくきせ恋愛手帖 【※亀更新です】 ( No.88 )
日時: 2021/01/10 16:39
名前: むう (ID: mkn9uRs/)



 〈仁乃side〉


 二年くらい前のことなんだけどね。
 この写真を撮ったのは三人での合同任務で。
 飴屋の人間に扮装していた鬼を倒す任務だったんだけど、
 任務の後瀬戸山くんの調子がおかしくなって。

 もともと瀬戸山くんは体が弱くて、運動もほどほどにって止められてたみたい。
 それでも人の役に立ちたいからって、無理やり入隊したって聞いた。

 瀬戸山くんはむっくんとあんまりうまく言ってなかった。
 会うたびにケンカをしだして、お互いそっぽ向いて。
 でも本当は、むっくんも彼も、素直になれないだけだった。


 私は傍から見ているだけだった。
 ケンカと言っても口喧嘩なんだけどね、ケンカしている時の二人、不思議と楽しそうで。
 ここで自分が輪に入ったら、二人が話すきっかけが無くなっちゃうなって思って。


 だからかな。
 彼から言われた言葉が、今でも胸に残ってるの。


 亜門『胡桃沢さんが好きだ』


 ってね、お見舞いに言ったらいきなり告白されたの。
 私はすっかり驚いて、何回もホッペをつねって、そしてどうすればいいか分かんなくて。
 ちょっと泣いたりもしたっけ。



 仁乃『……なんで私なの?』
 亜門『……さあ、気づいたら好きになってた』


 そんなこと聞いてないよって、私はまた泣いた。
 もっともっともっと、話さなきゃいけないことがあるはずなのに。
 身体のこととか、むっくんとのこととか。

 
 なんでそんな話、いきなり。
 気づいたらって…そんなこと、いきなり言われてもわかんないよってその時は思った。


 仁乃『……ごめん。好きな人がいるから』
 亜門『……ずっと前から知ってた』


 なにそれ。
 私が誰を好きなのかも知ってるのに、叶わないと分かってるのに、なんでそんなこと言うの。
 瀬戸山くんにとってのメリットがないじゃん。

 そんなの……ごめんって言った私の方がいたたまれないよ。


 亜門『……胡桃沢さんは、いつ死ぬかって考えたことある?』
 仁乃『え?』


 僕はあるよと、そう言って笑う瀬戸山くん。
 その姿が、なんだかとっても眩しかった。

 亜門『……今日医者に言われたんだけどさ。僕の人生って、あと13時間なんだって』
 仁乃『―――え?』
 亜門『だから、早めに伝えようと思って』


 ……なんなの。
 なんですぐに言ってくれないの。
 頼ってって、前にそう言ったのに、どうして今まで黙ってたの。


 

 
 仁乃『………本当なの?』
 亜門『……うん』
 仁乃『……そっか』


 嫌だよ、そんなの、あんまりだよ。
 何でなの、どうにかして延命とかできないの?
 私、彼に何かしてあげれないの?

 だって任務に言ったの、つい一昨日なんだよ。
 初めての三人の合同任務で、初めてむっくんと瀬戸山くんが楽しそうにしてたんだよ。
 一緒に写真も撮ったし、一緒に道中で揚げ餅も食べたのに。

 あの写真、遺影写真になってしまうの?

 なんで?
 なんで瀬戸山くんは、笑っていられるのか分からない。
 辛くないのかな。悲しくないのかな。
 それとも、辛くても、必死に笑ってるのかな。



 仁乃『うっ ひっく …………っ』
 亜門『………泣くなよ』
 仁乃『無理言わないで! だって、だって………っ』


 自分の体質に気づいてから、ずっと暴言を言われ続けていた。
 助けた人たちからも、人間と見てもらえずに石を投げられた。
 鬼殺隊は、そんな私のたった一つの居場所だったのに。


 その仲間がいなくなるなんて、嫌だよ。


 仁乃『無理言うなよ! そんな、いきなり言われて、どうしろってんだよ!』
 亜門『……』
 仁乃『なんでなんだよ、なんで……私ができること、もっとあったはずなのに……っ』


 感情の制御ができなくなると、私は口調が乱暴になる癖があった。
 あの時も同じ。
 瀬戸山くんが羽織っていた布団を力任せに叩き、泣き喚き、叫んだ。喉がかれるまで。


 亜門『もう沢山もらったよ』
 仁乃『……私、瀬戸山くんに何もしてあげられない……』
 亜門『ううん。僕はいっぱいもらったよ』


 胡桃沢さんと刻羽が横にいたこと、それだけで僕は充分だった。
 そんな当たり前のことに、ずっとぐちぐち言って来たけどさ。
 本当にうれしかった。


 瀬戸山くんは、涙を流す私の頭をなでて、ポツリと呟く。


 亜門『だからさ……刻羽のこと、よろしくね』
 仁乃『………っ』

 亜門『幸せになって、のろけ話とか、天国にいる僕に嫌というほど聞かせて。
    子供が出来て、仲間も増えて、楽しい話をして、時に泣いたり……』


 きっと、瀬戸山くんもずっと、寂しかったんだと思う。
 つらつらと言葉を並べながら、次第に彼の目の端に涙が溜まっていった。
 
 

 
 亜門『…………僕も、……………何十年後まで生きたい…………』
 仁乃『………っ』


 仁乃『……むっくんが、きっと叶えてくれるよ』
 亜門『……アイツが?』
 仁乃『むっくんは、凄いから。きっと驚くよ。………きっと、何とかしてくれるよ』


 それを聞いた瀬戸山くんは、「そっか」って満面の笑みを向けて。
「なら心配いらないね」って、安心したように言った。

 その言葉に私はまた泣いた。


 仁乃『むっくんと生きていけたら、私の人生、きっと楽しくなるよ』
 亜門『まあな』
 仁乃『……でもそこに、君がいたら、もっと幸せ』


 死なないでほしい。
 生きててほしい。
 そんな願いすら、叶えられないような世界だけど。

 この心からの想いは本物で。
 いつかは叶ったらいいなって、無理だといいながらずっと願ってた。
 

 瀬戸山くんは、また「そっか」って笑った。




 ****


 その翌日、あの言葉通り瀬戸山くんは空へ行った。
 むっくんは真っ先になくと思ったんだけどね。素直だから。
 なんだかなかなか泣けないみたいで、でも口元はずっと震えていて。

 瀬戸山くんの育手との話が終わって、よくやく泣いてた。
 それで、涙をいっぱいにためた目で、私を見て、はっきりと叫んだんだ。


 睦彦『お前の人生、めんどくさくなるぞ!』


 ってね。
 めんどくさい人が、めんどくさい言葉を、めんどくさい表情で言い放ったんだよ。
 でも私はそんなむっくんの気持ちがほんの少しわかったんだ。


 睦彦『亜門がいなくなってしみったれたまま過ごそうと思うなよ胡桃沢! 
    あんな奴より、俺の方が何倍も強いんだからな! 
    だから絶対に死ぬんじゃねぇぞ! 命令だかんな!!』

 仁乃『……バカ。私、五人姉妹だったんだよ。これくらいで泣くわけないじゃん』
 睦彦『嘘つくな! 葬儀中ずっと泣いてたくせに! 自分の気持ちに逃げんなアホ!』


 彼のまっすぐな言葉が、、私の心の中の黒い靄がすうっと溶かしていく。
 むっくんは思わず目を見開いた私の手首を、半ば強引に掴んで私を手元に引き寄せる。


 睦彦『これからは二人で生きてくんだぞ! 俺から逃げられると思うなよ!!』
 仁乃『……………』


 その言葉に私の頬は初めて紅潮し、火照り始めた。
 いや、そういう意味で言ったんじゃないんだろうけど。
 でも私はすっごく嬉しかったんだ。


 仁乃『愛の告白?』
 睦彦『………………バッ、ちげーし! 俺はそ、そんなこと……思って……ないし……(小声)』
 仁乃『…………なんだ(ボソッ)』



 だから焦らなくていいんだよ、有為ちゃん。
 有為ちゃんにどんな過去があって、どんな思いをしてきたのか私は知らないけど。
 でも、その過去があるからこそ、『現在いま』が楽しく思えるなら、万々歳でしょ。


 だからさ、そんなに固い表情をしないで、笑ってよ。
 有為ちゃん、笑ったらきっとどんな男の子もイチコロだから。
 悩み事があれば私たちに聞けばいいし、どんなに辛い日でも空は晴れるんだよ。


 私の話なんて面白くもなんともなかったと思うけど。
 少しでも有為ちゃんにヒントを上げることが出来たなら、私は嬉しいよ。


 失くしたものは大きいけど、しっかり生きて行かなきゃ瀬戸山くんが怒っちゃうからね。
 だから一緒に頑張ろう。
 大丈夫、有為ちゃんは出来る子だから。
 ちゃんと、力持ってるから。


 私が保証する。
 ほら、いい匂いがしてきた。
 もうすぐ夕ご飯かな。
 

 
 



 

Re: ろくきせ恋愛手帖 【亀更新です】 ( No.89 )
日時: 2021/01/11 16:05
名前: むう (ID: mkn9uRs/)

 どんどん増えていく裏話
 どんどん長くなる入院期間
 どんどん貰っていくいろんな方からの愛情
 何だなんだこの小説は……((殴ッ☆


 ****


 〈有為side〉

 面白くない、なんてことはなかった。
 何のヒントにもならないなんて、大間違いだ。

 彼女の話を聞いて、ボクはなぜか、胸の中が温かくなるのを感じた。
 それはきっと、自分の他にも『大切なもの』を失った人がいるという安心感。
 そんなものに安心してはいけないと思いつつ、改めて独りではなかったことを思い知らされる。



 仁乃「ごめんね。ヘンな話ししちゃって」
 有為「いいえ、……ありがとうございます。大切な話をしてくれて」



 だからボクも、自分の過去をはっきりと打ち明ける覚悟が出来た。


 もしかしたら自分の話なんて、面白くも何ともないかもしれない。
 いきなり辛い話をして、困らせたらどうしよう。
 でも、この苦しみを誰かと共有したかった。


 有為「仁乃さん。ボク……実は陰陽師の世界で、生きてはいけない人間だったんです」
 仁乃「………」


 全部打ち明けた。自分がずっと感じていた不安も、絶望も、葛藤も何もかも。
 どんなに辛かったのか、どんなに苦しかったのか、たとえ彼女に分からないとしても。
 
 ボクは嬉しかったんだ。
 初めて「有為ちゃん」と名前で呼ばれたこと。
 初めて自分の目をしっかり見てくれたこと。
 大丈夫だよって、生きてていいよって、家族以外の人から言われたことが。


 全ての話を伝え終わり、横を見ると、仁乃さんはどこか遠い眼をしていた。
 ああやっぱり……こんな話、面白くなかったのかな……。

 仁乃「……最低な話だね。人の命の価値を何とも思っていない」
 有為「……やっぱり、困らせてしまいましたか?」
 仁乃「ううん。辛いことを話してくれてありがとう」


 有為「……不安なんです。兄がいなくなって、護ってくれる人を失って、自分を見失いそうで」
 仁乃「……」
 有為「お兄ちゃんに守られてばっかだったあの頃の自分よりは、少しは強くなったと思ったのに」


 ボクは結局、あの頃のままで。
 優しくしてくれた人でさえ名前で呼べなくて。



 善逸「ふぅん。何の話してるかと思ってたら、こういうことか」
 仁・有「善逸さん!??」
 睦彦「コラお前、空気読め空気を! わりい。隣の部屋でずっと聞いてた」
 光「ごめんな。ご飯できたから、呼びに行こうとしてたんだが……」


 睦彦くんと善逸くんの着物の裾を掴んで手元に引き寄せ、光くんは二人に鉄拳を振るう。
「グェッ」と呻いた二人の口に、手にしたお盆に盛られていたおにぎりを強引に突っ込んだ。

 全くこの人たちは油断も隙もないんだから……。
 ボクが呆れて肩をすくめるのを、仁乃さんはクスクス笑って眺めていた。
 

 善逸「ほんほうにごめん。いやなはなひをきいちゃって(もぐもぐ)」
 有為「いいえ、ボクの方こそ、昼間は酷いこと言ってしまいすみませんでした」
 睦彦「しっかし、俺は宵宮の兄ちゃんのことは尊敬してるぜ」
 有為「え?」


 睦彦「俺にも3つ上の兄ちゃんがいたんだけど、うるせぇしチクるし頭いいしで最悪だったから」
 善逸「おみゃえ、じぶんの兄ちゃんに向かってそりぇはないあろ(もぐもぐ)」
 光「善逸。まだまだあるからゆっくり食べろよ……」


 仁乃「へぇ。むっくん、お兄さんがいたんだね。知らなかった」
 睦彦「ん(もぐもぐ)くるみはらは?(もぐもぐ)」
 仁乃「お姉ちゃんが一人と、妹が三人。妹は鬼に食われた」

 光「……お姉さんは?」
 仁乃「……鬼にされて自分で倒した」


 善逸「バッ……お前!!」
 光「……ゴメン仁乃ちゃん。オレ、嫌なこと聞いちゃったな」
 仁乃「ううん気にしないで。もう大丈夫だから。そういう光くんは兄妹いるの?」
 
 光「うん、兄ちゃんと妹がいる。兄ちゃん生活力がなくて、オレがずっと飯作ってんだ」
 有為「どうりで手際がいいと思った」
 光「有為ちゃんもおにぎり食うか? 炭治郎たちが具を入れるの手伝ってくれたんだぜ!」


 なんだかボクの過去の話から、いつの間にか「鬼滅トーク~兄弟編~」になっちゃった。
 こんなのでいいのだろうか。
 

 でも、みんなはとてもやさしかった。
 人の過去話を、何も言わず黙って聞いてくれた。
 

 有為「じゃあ……(おにぎりを一つ手に取って)」
 仁乃「大きい方取っていいよ。私はさっきつまみ食いしたからさ」
 睦彦「!?」

 有為「いただきます(ぱくッ)」
 光「どうすか? どうすか??(そわそわ)」
 有為「(ごくん)………おいしい。こんなおいしいおにぎり、初めてです」


 それはお世辞でも何でもなくて、生まれてから食べたどんな料理よりずっと美味しかった。
 みんなで縁側で食べたからかな。
 
 お兄ちゃん、見てる?
 わたしは今、とっても幸せだよ。
 ほら、こんなに素敵な人たちと巡り会えたんだ。
 みんなとても優しくしてくれるの。忌子じゃなくて、人間と見てくれるんだよ。


 有為「ありがとう、光くんっ。また作ってくださいね!(ニコッ)」
 光「……………………………(ズッキューン!)」


 生まれて初めてできた友達に笑いかけたら、光くんは突如体を硬直させ黙り込んだ。
 心配になって彼の顔を覗き込むと、とたんに光くんは顔を赤らめて慌てた。

 
 仁乃「光くん、有為ちゃんの笑顔にやられたね」
 光「いいや違っ」
 善逸「こんなんでいいのかー光ー。こんな調子で寧々ちゃんと上手くやれんのか?」
 光「!???? うあああああああああああああああ~~~!!」

 仁乃さんと善逸さんの絶妙な連携によって、光くんの何かが爆発した。
 そのまま、顔を覆って、「あうーあうー」と呻きだした。やれやれ。



 炭治郎「おーい皆、ご飯できたよー」
 寧々「今日のご飯はふろふき大根よ! 私と光くんで頑張ったんだから早く来てっ」
 伊之助「おい早くしろ! 腹が減ったんだよチクショウ!」

 花子「……ふろふき大根……(チラッと寧々を見て)」
 寧々「フーッ フーッ(怒)」
 花子「何も言ってないのになんでぇ!??」


 有為「あはははははははっ」



 このときのボクはまだ何も知らなかった。
 友達が出来たことに興奮するばかりで、輪の外の連中が自分を狙っていることなど考えず。
 この時間が、もっと続けばいいのにと思っていた。




 





 
 
 
 
 

Re: ろくきせ恋愛手帖 【亀更新です】 ( No.90 )
日時: 2021/01/12 18:08
名前: むう (ID: mkn9uRs/)


 鎹烏の言付け! アア―――――ッ
 この第4話と第5話は、ろくきせの第5章と第6章の間に起こってます!
 そして、ろくきせ閲覧数8300突破!
 ( ゚Д゚)え…(゜-゜)え……(゜_゜>)嘘……だろ

 ****
 
 【それからさらに一週間後】

 〈炭治郎side〉

 有為ちゃんの過去にどういうことがあったのか、善逸と睦彦くんが話してくれた。
 忌子だなんて罵られてもなお、自分の目標のために努力を続ける彼女を素直に尊敬する。
 
 有為ちゃんは初めて会った時より、表情が明るくなった。
 いきなり同年代の人と会って、多分動揺してたんだろうな。
 それでもまだ、すぐには喋り方や性格は変われないみたいで。


 有為「もう今度という今度は許しません! これ作るの大変なんですからね!」
 伊之助「…………はい……すみません……」
 有為「謝ってもどうせあなたはまた割るんですから! ボクもう信用できませんよ!」


 花子「……早朝早々どうしたの? 何か知ってるヤシロ?」
 寧々「有為ちゃんの杖の先っぽの水晶玉みたいなやつを、伊之助くんがまた割っちゃったみたい」
 花子「ああ、それで宵宮の雷が落ちてるわけね」


 炭治郎「伊之助はアオイさんだけでも充分懲りてるのに、その上口調がキツい有為ちゃんだと…」
 かまぼこ隊一同「ああ……(同情の眼差し)」


 と、奥の部屋で説教されてた伊之助が、ガックリ肩を落として部屋に戻ってきた。
 数分前のテンションと今とで、差がありすぎる。


 伊之助「トコトコトコ(ガックリ)」

 善逸「悪いのはお前だからな。これで割るの十回目だろ。ちょっとは反省しようよ嫌われるよ」
 禰豆子「フンフン」
 善逸「ほらね、禰豆子ちゃんもそう言ってるじゃんか」

 伊之助「……ダマレ……(ズ――――ン)」
 炭治郎「伊之助、ちょっと落ち着け! 気を確かにしろ! たかが怒られたくらいで!」
 花子「竈門もちょっと落ち着こうネ」


 伊之助「うるせーよ、弱い奴に言われると心折れるんだよ!」
 善逸「あっらかわいそう! 伊之助女の子と話したことないんだろ! 遅れてるはずだわ!」
 伊之助「ハァァァ―ン? 俺は人間の雌踏んだこともあるもんね!」
 善逸「それは最低だよ!」


 確かにそれは最低だな。
 あと人間の女の子を「人間の雌」と言っちゃダメだ。


 睦彦「お前らも一回落ち着けよ……。声がうるせえんだよ頭がキンキンする…(耳をふさいで)」
 光「大丈夫か? 以外と繊細なんだな睦彦(ボソッ)」
 睦彦「なんだと? 言っとくけどお前より俺が年上だからな! チビじゃねぇから!!」


 炭治郎「身長のことは誰も言ってないぞ?」
 睦彦「あーあー、……いいよどうせ俺はチビだよ」
 一同「拗ねた……」


 ※ちなみに睦彦の身長は158㎝



 仁乃「そうだ、皆一回庭へ出ない? リフレッシュしようよ。任務もないしさ」
 花子「まぁ、身体を動かすってんなら同意するよ。最近白杖代使ってないから訛っちゃってさァ」
 禰豆子「ムー?」

 寧々「私はオッケーよ! 有為ちゃんちのお庭って、綺麗な花もいっぱいあるし」
 光「先輩が行くならオレもいくっス!」
 もっけ「われらもいく」「われら、あめばたけつくる」「やむなしやむなし」

 炭治郎「よし、それじゃあ伊之助と睦彦くんを元気づけよう!」
 一同「オー―――――ッ!」


 そんなこんなで俺たちは、ストレス解消のため、伊之助たちと一緒に庭に出ることになった。
 しかしそこでは、意外な人物が待ち構えていたのだ。



 ・・・・・・・・・・・・・


 みんなと一緒に庭を出てすぐ、俺たちの目の前に知らない人物が立ちはだかった。

 空色の着物に黒色の袴を着ていて、長い髪は後ろで一つにまとめてある。
 歳は俺と同じ位か、あっちが少し上っぽい。
 有為ちゃんの知り合いだろうか?

 
 ??「よう。この家に用があってきた。馬鹿な忌子はいるか?」
 炭治郎「有為ちゃんのことですか? 貴方は?」


 最初の挨拶で、一同の表情が一気に警戒色に染まった。
 有為ちゃんを忌子と呼ぶと言うことは、コイツは他の陰陽師の人だろうか?


 ??「俺? 俺は夜月やつきカオル。陰陽師の御三家のトップの家の次男だ」
 一同「夜月家……!」


 確か御三家は、宵宮家・夜月家・如月家の三つ。
 有為ちゃんのお兄さんの死後、宵宮家の代わりに夜月家が陰陽師のトップになったって話だ。

 
 寧々「そ、そのあなたが、有為ちゃんに何の用なんですか……?」
 カオル「そんなの決まってるだろ。忌子をこっちで引き取って処分するんだよ」


 つまりコイツは、有為ちゃんを殺そうとしてるのか!?
 その行動が間違っていると、なぜ思わない!??


 カオル「それよか、お前たちはなんだ? あの忌子とどういう関係だ?」


 カオルさんは首を回すと、上から俺たちを順番に睨んだ。
 ぞんざいな態度で権力を示す様子が、癪に障る。


 炭治郎「いちいち有為ちゃんを忌子と言うのはやめろ! 俺たちは彼女の友達だ!」
 一同「(コクリ)」
 カオル「へぇ、友達? アイツの? こりゃ驚いた」


 けたけたと腹を抱えて笑い出す彼は、明らかに宵宮家を、そして忌子をバカにしている。
 俺は心の底から怒りに燃え、考える前に身体が動いていた。



 ダダダダダッ
 ブンッッ


 善逸「炭治郎!?」
 伊之助「何やってんだお前!?」


 カオル「……何のつもりだお前(炭治郎が振るった刀を避けて)」
 炭治郎「お前が何をしに来たかは知らないが、ここから先は行かせない!!」
 カオル「……勘違いしているようだから言っておくがな」


 カオル「陰陽師には、女は生まれたら即処分する掟があるんだよ。
     それを宵宮家はあっさりと破りやがったんだ!
     陰陽師において掟がどのようなものか、お前には分かってんのか!?」


 炭治郎「分からない! 俺は陰陽師ではない、普通の家系だからだ!
     でも、掟が一番大事で人の命はいくらでも踏みにじっていいって、それは違うだろう!」

 

 この人の元に有為ちゃんを預けてはいけない。
 俺は彼女の言っていた「忌子」がどういうものかは知らないが、予想することは出来る。
 一人称や口調まで変えなければ自分を護れなかった仲間を、夜月家に預けてなるものか!



 炭治郎「俺は、自分の行動を間違ってるとは思わない!! 間違ってるのは、お前だ!!」





 ネクスト→かまぼこ花子隊VS夜月家次男・カオル。次回もお楽しみに。




 


 

 


 
 

 

Re: ろくきせ恋愛手帖 【亀更新です】 ( No.91 )
日時: 2021/01/13 20:46
名前: むう (ID: mkn9uRs/)


 自分の感受性くらい自分で守れ
 ばかものよって言う詩があるけどさ(茨木のり子さんのやつ)
 自分の感受性さえ守れなくなった時は
 取りあえず美味しいものでも食べよう。怪我した後のルパン三世並みに。

 ****


 【カオルVSかまぼこ花子隊】


 〈善逸side〉


 おいおいおいおい、ちょっと待てよ炭治郎!
 そりゃ怒る気持ちもあるけどさ、お前が今振ったの何か教えてあげようか?
 真剣だよ真剣! 木刀じゃなくて真剣!!


 善逸「おいぃぃぃぃ……捕まるってぇ……やばいってぇ……」


 当たったら死ぬよマジで!
 ホント嘘でも何でもなく死ぬからさ、ねぇ他の皆も殺気出してんじゃねえ!
 みんなもう、花子とか白杖代セットしてるけど一回落ち着こ!?


 カオル「夜月家次男の俺にいい度胸じゃねえか! このっ」
 善逸「ぁぁぁぁぁぁめっちゃ怒ってんじゃん、言っただろうがこの馬鹿ぁぁぁぁ」


 寧々「もーあったまきた! 炭治郎くん、早くこの人をぎゃふんと言わせて!」
 善逸「ちょ、寧々ちゃん!?」
 寧々「私、自分の友達の悪口いうやつは許せないの!」
 光「分かりました先輩! このオレに任せて下さい!」


 あー俺の居場所ないわ!
 そりゃ俺もさ、言いたいことは山ほどあるのよ。
 でもこんな家の真ん前で戦う方がおかしくない!? 話し合おうよ!!
 
 善逸「ああ、あの、コホンコホン。仲良くお話でもしたいんですけど…(揉み手)」
 カオル「は? プッ なに、お前も戦う気かよ。そんなひょろっひょろのもやしなのに!」
 善逸「……………コイツ、一遍死なせてやる……」


 前言撤回。
 だーれがもやしっこだ、一遍言ってみろコラァァァァ!(←善逸の心の声)


 善逸「雷の呼吸・壱ノ型 霹靂一閃!(ブンッッ)」
 カオル「おっと。(避ける)俺に勝負を挑もうなんて、百万年早いんだよ! オラ!(ガツッ)」
 善逸「う゛っ(数メートル先まで蹴飛ばされる)」


 伊之助「紋逸―――――――!」
 善逸「ゴホッ ゲホゲホッ」


 なんだ、さっきの攻撃。
 普通のキックなのに、蹴られたところから血が噴き出して止まらない。
 何をしたコイツ……っ。

 カオル「痛い目逢いたくねえなら忌子を渡しな。そうすれば命だけは助けてやる」
 光「うーわ、悪役が言うセリフBEST5っすよそれ……」
 カオル「さて、もやしの次はどいつだ?」


 花子「………よくも我妻を……。蹴散らせ白杖代っ(ブンッッ)」
 カオル「『術式発動:輪界心異りんかいしんい』!!」


 白杖代を投げつけた直後、カオルはそう呟きパチンと指を鳴らす。
 するとなぜか、不意に花子の体制がぐらりとふらつき、受け身も取れないまま地面に転がった。


 ドサッッッ


 仁乃「は、花子くん!」
 炭治郎「大丈夫か!? 立てるか?」
 伊之助「おい、しっかりしろ!」


 花子「(ふらりと立ち上がって)」
 寧々「良かった、怪我はないみた……」
 花子「コ……コロス……!(寧々に襲い掛かる)」


 睦彦「っ!! 光の呼吸・陸ノ型 闇黒狂乱あんこくきょうらん!(花子の攻撃をなぎ払う)」
 花子「……コロ……コロス……」
 睦彦「おい花子! しっかりしろ! 目の前に居るのは八尋だぞ!」
 花子「………邪魔ヲ……スルナ!(ブンッッ)」



 ~睦彦、善逸と同じく数メートル先にぶっ飛ばされ~


 仁乃「むっくん!!」
 睦彦「う゛っ」


 なぜだ?
 なんで急に、花子がこんなことになったのか俺は分からず口をあんぐりと開ける。
 
 そう言えば、花子がおかしくなったのはカオルが呪文のような言葉を呟いてからだよな。
 何か関係があるのか……?

 
 カオル「ふふふ、やっぱりこの力は利くね」
 花子「カオル様。ツギハ如何シマショウ」
 カオル「うーんそうだな。じゃ、この感じで残りもやっといて~俺は屋敷見てみるから」
 花子「了解シマシタ」


 カオルがくるりと踵を返して、宵宮家の屋敷に入ろうとする。
 そんな彼の腕を、仁乃ちゃんが咄嗟に掴み、手元へ引き寄せた。


 仁乃「逃げんなバカ垂れ。うちの連れをどうしてくれた。言えよコラ」
 カオル「………」



 炭治郎「? 今の、仁乃ちゃん……か? 何か口調が……」
 伊之助「やべぇアイツ、やべぇぜ……空気がビリビリする」
 睦彦「(フラッと起き上がって)久々に来たか」

 光「き、来たって何が?」
 睦彦「胡桃沢は怒ると口調が乱暴になる。今は、『素の状態』。そうなると手が付けられない」



 カオル「女の子とは仲良くしたいんだけど。キミけっこう可愛いし。手、放してくれる?」
 仁乃「ふざけんなバカ。うちの連れをどうしたって聞いてんだよ」 
 カオル「ああ、あの妖怪? 俺の術で洗脳したよ。しばらくは俺の監視……うおッ」


 
 仁乃「(手首をつかむ力を強める)………ふざけんなよ、なんでそんなヘラヘラして言える」
 カオル「ちょ、ちょっと君さ、……程度分かってる? 嫌なんだよね底辺の人間ってのは」
 仁乃「………底辺は、お前だ!! 血鬼術・爆黒炎!!」




 ****
 


 〈一方その頃 家の中〉


 有為「そろそろおやつの時間だ。……皆さんどこへ行ったんでしょうか……」
 もっけ「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁ(慌てて中へ)」


 有為「確か貴方達は……。もっけ?」
 もっけ「われら、いまやばい」「われらをたすけろ」「きんきゅうじたい」


 有為「緊急事態って?」
 もっけ「いえのまえに、やつきけきた」
 もっけ「ななばんたちとたたかって ななばん せんのうされた」
 もっけ「ういをころそうとしてる」


 有為「夜月家がボクを殺そうと家に来てるんですか!?」
 もっけ「われら、みんなにしんでほしくない」
 もっけ「でも やつきけ つよい」
 もっけ「みんなやられるかもしれない」「なんとかしろ」「うい たすけろ」


 有為「ヤバい、夜月家の術を食らったら皆さんが……ッすぐに行きます!」
 もっけ「でも そといくと ういやられる」「ころされるかもしれない」「どうする」
 有為「そんなの、自分で何とかするしかないです。大丈夫です、自分の問題ですから」


 そう言い切った有為ちゃんの両手足は、震えていた。
 それでも、部屋に置かれてあった錫杖を掴み、足袋を履いて靴を履き、外へ慌てて出る。
 その姿が、もっけたちにとって、とても勇敢に思えた。


 もっけ「われらも ういをたすける」「がったいしてつよくなる」「もんすたーもっけ」
 もっけ「くろもっけも がったいする」「わるいにんげんころす」「ねっさつほうきゅう」


 かくして、有為&もっけからなる「かまぼこ花子隊・救出部」が結成されたのだった。


 


 


 

Re: ろくきせ恋愛手帖 【亀更新です】 ( No.92 )
日時: 2021/01/14 19:01
名前: むう (ID: mkn9uRs/)

 【執筆コソコソ噂話】
 最近は仁乃睦色を控えめにしてぎぬしの(後に出そうかと思っている)や花寧々を強める。
 ついでに有為の存在感も強める。ぜんねずもやりたい。
 有為ちゃん誰かとくっつけてみるかって考えてたり(一応候補は無一郎とミツバ?)
 しっかしこれがまた難しいんだぁ……


 ****

 
 〈花子side〉

 さっきからずっと頭がガンガンいっている。
 遠くでヤシロやみんなの声が聞こえたと思ったら、今度はすぐ近くで響く、
 平衡感覚がおかしくなる。かといって口を開こうと思えば、セリフも操作される。

 どうしよう……このままじゃダメなのに体が動かない。
 早く宵宮を助けなきゃと思ってるのに、さっきから体が言うコトを聞かない。



 花子「コロ……コロス!(ブンッッ)」
 伊之助「獣の呼吸・弐ノ牙 切り裂き(なぎ払う)!! ウォィしっかりしろ!!」


 炭治郎「ダメだ伊之助! 花子くんは夜月家の術で洗脳されてるんだ」
 伊之助「チックショウ…アイツ絶対許さねえ!」
 炭治郎「善逸、立てるか! 寧々ちゃんの護衛を頼む!」

 善逸「ぇぇぇぇぇぇ!? んもぉ分かったよぉ……」
 光「大丈夫だ炭治郎! 先輩はオレが見てる! 炭治郎たちは構わず攻撃しろ」
 炭治郎「……できればそうしたいんだけど、光くんの武器、封印されてるだろ?(憐みの視線)」


 ※光くんの錫杖は花子くんが「封」という札を貼ったので攻撃力がない。


 光「花子ぉおおおおおおおおおお!!」
 寧々「こ、光くん、私は大丈夫だから仁乃ちゃんを助けてあげて!」
 光「え、でも、」
 寧々「あの人に洗脳されたらおしまいよ。かといって有為ちゃんに助けも呼べないし……」



 ヤシロごめん!
 本当なら俺が守ってあげれるのに。
 どうやったらこの状態から抜け出せる?

 あ、もう、そんなこと考えてるうちに竈門ひっかいちゃった……。
 止まって、俺の体、止まって!!


〈仁乃side〉

 カオル「『術式発動:封呪縛放ふうじゅばくほう』(パチンと指を鳴らして)」
 仁乃「……ッ(やばい、なんか胸の中がモヤモヤして)……」
 
 カオル「術の強さだと、どんな状況にも対応できるほど術が豊富な宵宮家が優勢だ。けど、」
 仁乃「う゛……(やばい吐きそう……)」
 カオル「夜月家は使う術が少ない分、一つ一つの術の効力がでかいんだよね。どう?」
 仁乃「……ゴチャゴチャ言ってないで、早く洗脳を解呪しやがれ、この………ッ」


 猛烈に煮えくり返る腹の奥の本音。
 それを思いっきりこいつにぶつけたいのに、重い倦怠感のせいで体がふらつく。
 喉の奥がゴロゴロして、視界が狭くなる。


 それにコイツには、爆黒炎がきかない。
 さっきも炎を投げたら、また新たな術で炎の軌道を変えられた。
 自分に向かって迫ってくる炎を前に、さっきからずっと私は手ぶら。

 

 カオル「君は厄介だね。洗脳しようにも君だけは出来なかったし、この術の効き目も薄い」
 仁乃「こんなときだけは、こんな体で良かったって……思うよ」
 カオル「ふうん。でももう限界みたいだね。『濃霧』が心を蝕んでる。じきに死ぬよ、君」


 濃霧って何か、そう尋ねる元気は既になかった。
 分かったよ、私の知ってる世界はとっても狭いってこと。
 有為ちゃんがいい人なんてほんの一握りだって言ってたけど、全くその通りだ。


 世界中どこにいようがいまいが、どうしようもない人は沢山いる。
 そんな人に文句を言うよりかは、自分を信じてくれる人と楽しい話をした方が何倍もマシだ。


 世界って言うのはこんなもんだよ。
 私が運が良かった。それだけのことなんだ。
 違う世界があって、もしかしたらそこでは皆悪い人なのかもしれない。
 自分がその世界に入り込む可能性もあったんだよ。

 でも私は違った。
 優しい人を探すことが出来た。信用してくれる人を最後まで信じることが出来た。
 一緒にいたい人と一緒にいる生活を送れた。
 それだけのことなんだ。

 仁乃「(………ヤバいもう力が出ない……)ドサッッ」
 光「仁乃ちゃん!! おい先輩を頼むっ(ダッと駆けだして)」
 カオル「ほら、言った通り」


 光「おいテメエ、いい加減にしろよ!! 人を簡単に傷つけて!!」
 カオル「俺だってしたかねえよこんなこと!!」


 急にカオルが声を荒げ、光くんの胸倉をつかんだ。
 さっきまでの雰囲気とは打って変わり、彼は泣きたいような怒りたいような複雑な表情で。
 服を掴まれた光くんはびっくりして、目をしばたかせた。


 カオル「したかねえよ、俺だって人殺しは嫌だ! かといって逆らったら俺の首が飛ぶ!」
 伊之助「……逆らうって誰にだよ」
 カオル「上にだよ! 昔からそうだ、掟は間違ってるって、忌子を解放しようって言ったら……」


 カオル「そう言った人みんな、自分の親父の手にかけられて、それで」
 炭治郎「………そ、それでお前は、自分の命を守るために有為ちゃんを……ッ」
 カオル「じゃあどうしろってんだよ! お前は仲間のためにも俺は死ねって、そういうのか!?」


 違うよ。そんなこと炭治郎さんは言ったんじゃないよ。
 でも、カオルさんの気持ちも、分からない訳じゃない。

 誰だって死ぬのは怖い。当たり前のことだ。
 死にたくないから、命令には逆らえない。
 炭治郎さんはそんなしきたりを作った人が、とっても嫌いなんだよ。








 有為「――もういいです」




 その声は、絶望に負けそうになっていた私たちの頭に、凛と響いた。
 




 寧々「有為ちゃん!?」
 善逸「馬鹿、有為ちゃん一回家に入ろう! 入っ……って力強いな!!」
 

 炭治郎「有為ちゃん、気持ちはわかるけどここにいたら、どちらにしよ君は……」
 有為「大丈夫です。……何とかしますから」


 何とかするって、どうやって?
 花子くんも光くんも私も、もう戦えない。
 それにカオルさんに従っても従わなくても、あなたは死んじゃうんだよ。


 有為ちゃん、やめてよ。
 私、もう誰も失いたくないよ。
 


 有為「大丈夫です。今から、全部終わらせますから」
 カオル「終わらせる? 何を終わらせるって言うんだよ。お前に何ができるって言うんだ?」



 できますよ、と有為ちゃんは言った。
 そのために準備してきたんですから、と。


    
 有為「…………消すんですよ、『忌子の存在』を」
 カオル「……は?」
 有為「『記憶操作術』で、陰陽師のみんなの根っこにある、忌々しい忌子の概念を抹消する」


 ……できるの? そんなこと。
 でも私は、有為ちゃんが夜遅くまで祓魔術の練習をしてたことを知っている。
 いつも、私たちだけでは手の回らない雑事に追われて、どんなに辛い時でも決して諦めなかった。


 有為「だから、協力してください! 夜月家!!」







 ネクスト→第4話クライマックス。次回もお楽しみに!

 


 

Re: ろくきせ恋愛手帖 【亀更新です】 ( No.93 )
日時: 2021/01/17 18:14
名前: むう (ID: mkn9uRs/)

 こんばんは、むうです。
 あと残すところ受験まで一週間とちょっとになりました。
 気分はDown気味なんですが、頑張ってHighにしようと思います。
 皆さんも勉強や部活頑張ってください。応援しています。

 ****


 〈有為side〉


 なるほど、夜月家はただ単に自分を排除しに来たわけではないのか。
 それも、上からの重圧、逆らえば自らの死を選ばなければならないということだ。
 全く持って、ばかばかしい。よくもそんなことをいけしゃあしゃあと。


 少し前の自分なら、夜月家の手によって自分が殺されてもいいとそう思っていた。
 自分の存在意義なんてなくて、自分が生かされている理由も知らずに。

 でも今ならわかる。
 自分が生かされたのは、みんなが優しいから。
 自分が認められたのは、みんなの心がキレイだから。


 その優しさをただ貰っているだけじゃ、ボクは何も変わらない。
 自分を忌子たらしめていたその概念ごと、破壊してやる。

 できるのかって? そんなことは分からない。
 だがお兄ちゃんやご先祖さまは、宵宮家の伝統を作るためにわざわざ術の記述まで残してくれた。
 ボクがその文書を読んでいなければ、きっとこんなことを考えようともしなかった。



『失くしたものは大きいけど、しっかり生きて行かなきゃ瀬戸山くんが怒っちゃうからね。
 だから一緒に頑張ろう。
 大丈夫、有為ちゃんは出来る子だから。
 ちゃんと、力持ってるから』


 そう言ってくれた仁乃さん―炭治郎くんたちや花子くんたちの期待にこたえたい。
 鬼に食べられてしまったお兄ちゃんのためにも、今ここで『わたし』がしっかりやらなきゃ。
 きっと、ボクは一生、前へ進めない。


 だから。
 


 有為「協力してください! 夜月家!!」
 カオル「……………断る」



 炭治郎「なっ!!」
 伊之助「なんでだよ、さっさと何とかしやがれ!!」

 花子「ウ゛……ウ゛ウ゛………(寧々に捕まえられて暴れる)」
 寧々「花子くん、しっかり!! もうちょっとの辛抱だから!!」


 仁乃「う………ごめん体が動かない……。だれか肩貸して……」
 睦彦「ほら、手出せ。全くお前は、こういうところは変わんないなぁ」
 仁乃「(起き上がって)ん……ありがとうむっくん」



 有為「なんでですか? 貴方も陰陽師のしきたりには反対なのでしょう?」
 カオル「………忌子と協力なんて、出来るわけねえだろ!!」



 その言葉を聞いた途端、自分の中で押さえ込んでいた感情が一気に爆発し、加速した。
 人生14年間で生まれて初めて、ボクの身体は感情に任せて動き出した。

 何が起こったのかわからなかった。
 気が付けば自分は、カオルさんを押し倒して、彼の羽織の胸倉をつかんでいた。


 苦しそうに息をする彼に、やっと自分が何をしたのか分かり慌てて手を放す。
 感情に左右されるなんて、馬鹿がすることだ。冷静にならなきゃ。
 でもなかなか頭は冷えなくて、肩で息をするのがやっとで。



 カオル「………う………」
 有為「ふぅ……ふぅ………ふぅ…………」


 花子「……ヨ……イミヤ……」
 寧々「! 花子くん!」
 花子「(ドサッッ)はっ。何が起こった!? あれ、俺今まで何して……」
 寧々「花子くぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!!(ギュ――――――ッ)」
 花子「え、ちょ、ヤシロ!? 苦しい、苦しい!!」


 カオルさんの動揺で、花子くんにかかってた洗脳術が解けたのだろう。
 それと同時に仁乃さんにかかっていたものも効果を失ったようだ。
 だが、数分間術に身体を乗っ取られていた二人の顔色は悪い。


 有為「…………わたしが……忌子だからって、そういう言葉はもう聞き飽きた……!」
 カオル「……は、離せコラっ」
 有為「もういい。もういい……っ。もう辛いのも苦しいのもしんどいのも嫌だ!!」


 どうせ分かんない。
 どうせ同情なんてしてもらえないんだ。
 少しは話し合えるかと思ったけど、やっぱり難しいよね。


 何十年も続いてきたきまりが間違ってるだなんて、普通誰も思わないから。
 やっぱり、しょうがないよね。


 前向きになっていた心が一気に暗く閉ざされ、やっつけ仕事で全てを終わらせようと考える。
 ああ、わたしは馬鹿だ。
 少し嫌なことがあったくらいで考えるのをやめてしまう。
 このうえなくネガティブで、やっぱり弱い。



 有為「…………やっぱり、わたしを連れて行……」
 炭治郎「諦めるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」




 不意に耳に飛び込んできた、炭治郎くんの怒鳴り声にはっとして振り向く。
 いつも穏やかな笑顔を崩すことなく接してくれた炭治郎くんは、表情をこわばらせて叫んでいた。



 炭治郎「あとちょっとだ! もう少しだ!! 絶対に、諦めちゃダメだ!!」


 その声に押されて、他のみんなも立ち上がり、声を張り上げる。
 大丈夫だと、絶対にやれると、こんなわたしを持ち上げてくれる。
 


 善逸「そ、そうだよ、頑張れ有為ちゃん! 早くこんなの終わらせておやつ食べよう!!」
 伊之助「腹が減ったんだよ、早くしやがれ!!」
 仁乃「大丈夫……頑張って……」
 睦彦「寝とけ胡桃沢…って、どうせ聴かねえしなぁ……つうことで頼むわ宵宮!!」


 花子「宵宮ごめん、俺やられてたみたいで!! 今度はサポート頑張るから!!」
 寧々「行くわよ光くん! 有為ちゃーんファイトぉぉおおおおおお!!」
 光「オ―――――――――――!!」


 もっけ「ういふぁいと」「おまえはできるこ」「かわいい」「アメやる」



 皆が背中を押してくれるなら、こんなところで後ろめたい気持ちになってちゃダメだ。
 ボクは起き上がると、カオルさんの手首をつかんで起き上がらせる。
 いきなり上へ乗っかってきたボクの行動に、まだあんぐりと口を開けている彼に、言う。


 有為「貴方にしか頼めないんです! 頼みます、協力してください!!」
 カオル「なんで……なんで怒らねぇんだお前。俺は夜月家の人間だぞ。……なんで……」
 有為「あいにく、階級とか位とかに、重きを置いていないんで!! どうでもいいです!」


 ボクの言葉に、なぜかカオルさんは肩を震わせて俯く。
 なぜかは分からない。
 みなさんなら考えることもできるのかもしれないが、ボクは人の気持ちに鈍感だ。



 カオル「……分かったよ。…………あの、さっきのことは」
 有為「『忘れて下さい』とでも言うつもりですか? 断固却下しますよ。一生忘れません」

 
 故意であっても、ボクの仲間を傷つけたこと。
 これは絶対に許される事ではないはずだ。



 カオル「……お前みたいなやつ、俺いっちばん好きかも(ボソッ)」
 有為「それはどうも」


 ボクはそれを皮肉と受け取ったが、本当にそれは皮肉だったのか。
 もしかしたら、彼が自分を初めて一人の人間だと見てくれた上での言葉だったかもしれない。
 

 だがしかし、それがどんな意図だったとしても、あとでボクは彼を数発殴ってたけど。




 ※あ。構成ミスったぁぁぁぁ。次回に続きます、お楽しみに―!

 



 
 


 

 

Re: ろくきせ恋愛手帖 【亀更新です】 ( No.94 )
日時: 2021/01/19 18:08
名前: むう (ID: mkn9uRs/)


 ♪そりゃ色々あっただろう今もあるだろう
  でも笑いながら生きていく
  それが人世だって(くぅぅ~いい曲だ!)

 ********


 〈光side〉

 カオルって奴に宵宮が乗っかかったとき、とっさに仲介しようとしたんだけど。
 いつの間にか二人の間で勝手に話が進んでて、オレの出る幕は(多分)ない。
(そしてそれは炭治郎や仁乃ちゃんたちも一緒なんだけど。)

 できることと言えば、術に乗っ取られたことで弱っている花子をおぶること。
 そして、そんなコイツを襲おうと殺気立ってる勿怪をなだめることだ。


 もっけ「やめろ」「みみをひっぱるな」「このこの」
 光「うるせー! そうでもしねぇと暴れるだろうが!!」
 花子「う……少年~……」

 
 そんなオレにお構いなく、向こうで宵宮とカオルは話を進めている。
 泣いたり叫んだり怒ったり、かと思えばけろりとしたりと、忙しい子だ。
 まぁ人情味がない人間はつまんねえけどな。


 有為「ボクが『記憶操作術』を使い、カオルさんは『洗脳術』を使うことで時間を短縮できます」
 カオル「はぁ。つまり、俺が人の意識を乗っ取ったあとにお前が記憶を奪うと」
 有為「ええ。記憶操作術は広範囲の効果が期待できますので」


 カオル「ってことは俺の記憶も消えるのか?」
 善逸「嘘!? 嫌よ俺、有為ちゃんの過去やっと聞けたのに!!」
 禰豆子「ムー!!」


 記憶を消す……ねぇ。
 善逸が嫌なように、オレも自分の仲間に記憶を消されたくはない。
 みんなで全部共有しようって決めたのに、その約束ごと破られそうで。


 光「おい宵宮!! 消さねえよな!? 嫌だぜオレ、このまま終わるのは!!」
 有為「…………」


 宵宮は黙り込み、そう叫んだオレをまじまじと眺めた。
 何か言いたそうに口を開きかけたが、どう伝えればいいか迷っているようで咄嗟に口を閉じる。
 そうやって、酸欠の金魚みたいにしばらく口をパクパクさせてたが、



 有為「………分かりました」



 とあくまでも渋々と言った様子で、肩をすくめて見せた。
 いつもはズバズバと行くけど、本性は物凄く繊細な彼女のことだ。
 仲間に心配をかけまいと、本当は記憶を消したがってたのかもしれない。



 炭治郎「ありがとう有為ちゃん。大好きだよ!」
 寧々「私も大好き! 有為ちゃんの料理、すっごく美味しいもの。また作ってね!」
 仁乃「……わ、わたし………も好き……(ぜーぜー)」
 睦彦「だから寝とけって……(仁乃おんぶ中)」


 炭治郎のストレートな発言に押されたのか、あとの面々も揃って叫ぶ。
 伊之助も「俺も!」と言おうとしたが、直後恥ずかしくなりそっぽを向いてしまった。


 みんなの「好き」コールに、宵宮は顔を真っ赤にしたあとに俯いて、小さな小さな声で呟く。
 きっと環境が環境だけに、言われ慣れてないんだろうな。
 
 
 有為「!? ………わ、わたしも……大好きです……」
 カオル「おい、いつまでイチャイチャしてんだよ。やるんだろ? 早くしねえと全員乗っ取るぞ」
 一同「それだけはご勘弁をぉ!!(秒殺)」

 
 さっき知ったことだが、コイツの洗脳術を解かないといずれ脳がやられて死に至るらしい。
 仁乃ちゃんがかかった術も同じく、解呪しなければ人間の命を奪うものだ。
 夜月家……恐るべし。


 有為「(杖を構えて)では、行きますよ。ミスる覚悟はありますか?」
 カオル「ミスる前提なのお前!?? フラグ立てんなよ!!」
 有為「だって……『初心者でもわかる』転移術も失敗でしたし……」


 あれ、初心者でもわかる超初歩的の術だったんだ……。
 でも今となると、失敗したことでオレたちは大正時代に来れたんだから、怪我の功名だけどな。


 睦彦「おぉいやめろ!! 卵焼きを作れなかった俺が居たたまれないだろうが!!」
 光「教えるって言ったのに聞かねえから……(ボソッ)」


 睦彦、お前はそもそもレシピを完全無視してんだよ。
 レシピなしに作って成功するのは、料理研究家とかそういうプロだけの話で。
 初心者がレシピなしでぶっつけ本番ってのは、それはオレもフォローできねえよ……。


 カオル「ああもう黙れお前ら!!」
 一同「はいッ。すみません!!」


 あんだけ痛めつけられたせいか、カオルの発言には逆らえない流れが出来てる。


 カオル「ってことでやるぞ宵宮!! 『術式発動:極・輪界心異りんかいしんい』!」
 有為「祓魔術・終ノ目 『記憶操作』!!」



 グラグラッッ


 二人がそう唱えた瞬間、一瞬だけ地面が揺れたような気がした。
 術の反動だろうか。
 オレには何も見えないが、きっと今宵宮とカオルの術が広がっているんだろう。


 これでもう、宵宮を―そしてそのほかの忌子を苦しめて来た概念はなくなる。
 彼らに、新しい世界が広がるのか。
 
 小さい頃から体で感じて来た概念だ。
 急になくなったことで、直ぐに全部が良くなったりはしないだろうけど。
 この出来事が、多分陰陽師という世界に生きている人の心の救いになったら。



 それに越したことはないよな、宵宮。



 オレはお前を凄いと思うよ。
 たかが一歳年が違うだけ、生まれた時代や環境が違うだけなのにさ。

 精神年齢もお前の方がずっと高くて。
 色々な辛い事を経験したからだと思うけど、ゼンッゼンお前が笑わないから。
 だから今日からは、お前の笑顔が見れるのかなって思うと、良かったなって。


 

 ****




 有為「お、わ…………った…………(ドサッッ)」
 伊之助「おい、しっかりしろォ! 立て!」
 有為「術の……反動……で数日は……起き上がれないから………」
 伊之助「チッ。しょうがねえ、オラ、負ぶってやるから!」


 宵宮は、術の反動で動けなくなってしまった。
 それほどまでに『記憶操作』と言う術は、扱いが難しかったんだろう。
 お疲れ様、有為ちゃん。



 カオル「っ、ってことで俺はここで! もう一生この家には来ねえから!(ダダダダ)」
 炭治郎「あ、あの、初対面なのに剣振ってしまい申し訳なかったです!!」
 善逸「ほんとそれね!! 仁乃ちゃんも怒るとやべぇけどお前も同じだと思うよ、俺」
 炭治郎「ほんっと、申しわけなかったです!!」


 
 カオル「……あの、その、……なんだ。俺も四人もケガさせたし、まぁ別に、いいけどよ」
 炭治郎「本当ですか!! じゃあさようなら! とっととお帰り下さい!!」
 善逸「だからホントそういうとこだよ炭治郎!!!」


 こうして、長い長い忌子の苦悩は終わり。
 この日をきっかけに、彼らの新しい世界が広がる(のかもしれない)。


 とりあえずは、仁乃ちゃんや宵宮を介抱しないとな。
 先輩、裏に井戸ありましたよね。水汲んできて湿布作りましょう。

 オラみんな、急げ急げ! 宵宮家の管理する奴が倒れたんだぞ!
 なら仲間のオレらが、しっかりやんねえとな!!
 
 


 


 
 

 


 

Re: ろくきせ恋愛手帖 【亀更新です】 ( No.95 )
日時: 2021/01/23 18:04
名前: むう (ID: mkn9uRs/)

 〈執筆コソコソ噂話〉


 みなさんみなさん……ここで超! 重要なお知らせです!
 まずは、六人の軌跡が閲覧数8000、この恋愛手帖が1800閲覧数突破したこと。
 ありがとうございます(´;ω;`)
 それで! むうは只今、とある企画を考えております! それは!



 【ろくきせ公式LINEスタンプ作ろっかなぁ!】


 ↑↑↑ということで受験の面接終わったら製作してみたくっ!!!


 承認された暁には、ぜひとも使ってほしいなあと考えておりますっ。
(あ、もちろん炭治郎とかじゃなくてオリキャラのねっ)


 だからだからっ。お楽しみにしておいてほしいなあ……。
 ぜひとも、購入可能になったら使ってほしいなあ……お願いだよ~。

 

Re: ろくきせ恋愛手帖 【亀更新です】 ( No.96 )
日時: 2021/04/27 20:41
名前: むう (ID: mkn9uRs/)

 【企画コーナー ろくきせを知ったら知って欲しいもの】



 その1 ☆キャライメージ曲☆



 色んな所でよく質問もらったりするんですけど(ネッ友とか某掲示板とかリアルで)

 オリキャラってどうやって考えてるのー?
 技名とかストーリーってどうやってるのー?
 どうしたらこんなに面白くできるのー?


 っていう質問が多くて、むうとしては「面白いって言ってくれる……(泣)」
 と歓喜に溢れてます。
 んで、「構成から思いつくの?」「プロットとか作ってるの?」って言う質問に答えます。




 キャラの作り方としては。

 「設定を細かく決める(誕生日とか血液型とかも決めると愛着がわいてくる)」
 ↓
 「イメージ曲を決める」
 ↓
 「ストーリーを決めて曲を当てて、いい感じだったら(`・ω・´)b」



 って感じです。私は曲を聴くと自然と乗るタイプなので、曲決め大事なんです。
 オリキャラのイメージ曲は大体こんな感じです。
 最近ボカロにハマってるのもあり、曲は全てボカロです…(⌒∇⌒)
 色んな曲を知っていく中で「こっちの方がいいな」と思うこともあるので、
 曲はコロコロ変わりますスミマセン。



 【睦彦:決戦スピリット/Honeyworks】


 睦彦はとにかくイケイケドンドンキャラなので、思わずノっちゃう曲をイメージしてます。
 決戦スピリット、これハニワには珍しいスポ根系…なんでこれかなぁ…と思った次第です。
 それ以外だと「ロキ」、あとはワンオクロックの「キミシダイ列車」とかね。


 【仁乃:ヒロイン育成計画/Honeyworks】

 
 仁乃はとにかく可愛い、なんか凄いキュンキュンする曲をイメージしてます。
 なにしろ仁乃のファンが多いので…(どのキャラもすいてもらって嬉しい限りなんですけど)
 この「可愛い、明るい」曲はやっぱりハニワかなぁって感じですね。


 【有為:失敗作少女/かいりきベア】

 有為ちゃんは過去編も踏まえて、かいりきベアさんの「失敗作少女」あたりが凄いマッチング。
 睦彦の過去も仁乃の過去も書きましたが、個人的に一番重い過去は有為だなあと思ってます
 皆色々抱えて生きてんだ。


 【亜門:あの夏が飽和する/カンザキイオリ】

 やばい、神曲に出会った。。。
 亜門は、鬼滅の二次創作を書く上で必ず一人は死んじゃう子を作りたいなぁって思いできた子
 ↑いい意味です。あくまでも。誤解なさらぬよう。
 また亜門くんはむっくんとの絡みを頑張ったのでそこらへんも見ていただければ幸い。



 【恋愛がテーマの話とかで参考にしてる曲】


 基本的には仁乃睦なんですけど…時に炭カナだったり花寧々だったり、そんなときは
 とにかくHoneyworksさん頼ってます。
「スキキライ」とか「恋色に咲け」とか「世界は恋に落ちている」とかおススメです♪


 
 その2 ☆むうの(へったくそな)イラスト☆


 小説イラスト掲示板に、半年前くらいまでイラストアップしてたので見ていただけるといいな。
 また受験終わったらイラストあげようと思うんでそっちもよろしくです。



 その3 ☆キャラの技名。(ろくきせのオリキャラ設定集に乗ってるよ)☆

 技名考えるのに一カ月かかったって話。これマジです。
 頑張ったのでカッコいいと思ったそこのあなた、是非とも観てってくれると嬉しいなあ。


 
 ********


 などなど書きましたが、オリジナルも色々書いてるけどやっぱりむうはこのろくきせが好きだな。
 見てくれてない人は見てくれると嬉しいな。
 前までは「面白ければそれでいい」って思ってたけどそれだけじゃダメだよね。
 作品を通して伝えたいこと、全面あぴっていきたいなぁ。


 ということでこれからも

 ろくきせも恋愛手帖も(あとコメライのカオ僕とファジーの死に花も)よろしくです!




Re: ろくきせ恋愛手帖 【亀更新です】 ( No.97 )
日時: 2021/01/25 17:26
名前: むう (ID: mkn9uRs/)


 有為過去編これにて完結ーどんどんパフパフ~。
 よって次は何をしようかなぁ……。
 柱たちが全然登場してないので次は柱のお話をやりたいなぁ。
 あ、あと退院しました。五日後の受験頑張ってきます……

 と言おうとして気づいたむう。
 この小説管理人賞だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! ぇぇぇぇぇ二連続でぇぇぇ!?
 ありがとうございマウスぅぅぅぅ(あらぶっております)

 ********


 〈有為side〉


 チ……チチチ……。


 窓の外で雀のさえずりが聞こえ、夢から覚めた時には自分の体は布団の中。
 ゆっくりと起き上がると同時に、視界に飛び込んできたのは布団に置かれている様々なもの。


 おまんじゅうに、お菓子に、綺麗な色のちり紙や、生け花、可愛い髪飾りにどんぐり。
 なんでこんなものが…と、ボクはどんぐりを一つつまんで眺めてみる。
 と、横の方で「すぅ……すう…」という寝息が聞こえて来た。



 有為「……? !? (横に視線を移して)」


 自分の布団に、炭治郎さんたちがもたれかかって微かな寝息を立てていたのにびっくりする。
 まさか、ボクが倒れたから、みんな夜遅くまで看病してたとか……。


 寧々「……むにゃ やめて、ブラックキャニオンちゃん……足を噛まないで足を……(寝言)」
 睦彦「………兄ちゃん………兄ちゃんはニンジンが嫌いです……うぅん(寝言)」
 炭治郎「………すみません鱗滝さん……ほんっとうにすみません……(寝言)」
 善逸「………ねぇぇぇずこちゃぁぁぁぁぁん(寝言)」
 光「………オレは勿怪じゃねぇぇぇ(寝言)」

 みんな、自分の為に……。
 心の中が温かくなるのを感じ、思わず涙が出そうになる。
 必死に涙をこらえていると、入り口のふすまが静かに開いた。


 花子「やあ宵宮。おはよう(ガラッ)」
 有為「あ、おは、おはようございます……」
 花子「どう、身体の調子は」
 有為「おかげで随分よくなりました。あの、みなさんはなんでここで寝ておられるんですか?」


 花子「ああ、看病疲れ。みんな宵宮が心配だからって言って」
 有為「そうなんですか。なんか、……ごめんなさい」
 花子「何で謝んのさ。何か調子狂うんだケド。いつも通りでいいよ」


 有為「あの、ここにあるドングリやちり紙とかは」
 花子「お見舞いの品だよ。みんなが元気になるようにって置いてった」
 有為「……そっか」


 仁乃「二人で何のお話してるの?」
 有為「仁乃さん」

 
 と、ふすまから仁乃さんが中へ入ってきて、早速話に食いついてくる。
 夜月家の術式にかかり、苦しそうにしてたけれどもう大丈夫なのかな。
 顔色は良くなってるし、問題なさそうだ。良かった。


 仁乃さんは「ん」?と首を傾げ、直後ニヤニヤしながら声を潜めて言った。

 
 仁乃「まさかとは思うけど、花子くん有為ちゃんのことが……」
 花子「ブ――――――ッッ」
 有為「それは絶対にない」


 仁乃「ええーもう……」
 花子「ハイハイ、その話は終わらせてみんな起こそうよ。恋バナはヤシロや刻羽とすればいいさ」
 有為「ああ、睦彦くんを誘うのにはボクも同意します」
 仁乃「!?? むっくんはダメ! むっくんだけはダメぇぇぇぇ!!」



 睦彦「…………なにが、ダメだって?(仁乃の大声で目を覚ました)」
 仁乃「はうっ。む、むっくん……」
 花子「それがねー。胡桃沢って刻羽のことが好…ウ゛ッ」


 ドベシッッッ


 
 仁乃「(パンチクリーンヒット)」
 有為「・・・・・・・・・・・・」
 睦彦「おいおいおい!? なんで急に殴んだよ胡桃沢??」


 
 置いてけぼりにされて目を白黒させている睦彦くんが気の毒に思えてくる。
 そして便所虫も、もう少しデリカシーというものを理解した方がいいですよ。
 

 光「んー。良く寝た。お、仁乃ちゃん睦彦、宵宮もおはよう!」
 有為「おはようございます」
 睦彦「ん」
 仁乃「おはよー光くん!(花子を羽交い絞めにする)」



 光「………何してんだ?」
 仁・有「ちょっとフィットネスを」
 光「………フィットネス?」



 寧々「お、おはよぉ………キャー、めっちゃ寝癖ついてるぅ! どうしよう……」
 伊之助「おい飯はどこだ! (グぅぅぅぅぅー)」
 炭治郎「…ふわぁ。おはようみんな。ってあれ? どうしたんだ?(花子くんをチラリ)」


 花子「…………うぅ……」
 仁乃「(今度同じこと言ったら許さないよとでもいうような鋭い視線)」
 禰豆子「ムー?」

 もっけ「ななばんしんだ」「しんだ」「しんだのかー」
 仁乃「うん、死んだよ♪」
 寧々「勝手に殺さないであげて(憐みの視線)」


 伊之助「おいメシはどこだって聞いてんだよオラ!!」
 炭治郎「伊之助! まずはおはようだろ! あと善逸いつまで寝てるんだ! 起きろ!」
 善逸「……炭治郎。俺が起きてないとでも思ったか? そりゃあ起きてるようるさいんだもん!」
 炭治郎「だったらおはようくらい言わないとダメだろう!!」



 伊之助「おいメシは!!」
 有為「……今から作りますよ。耳元で大きな声出さないでください。鼓膜が破れますから」
 光「お、オレも手伝うぜ!」


 寧々「私も私も! ほら花子くんも行くわよ!」
 花子「ヤシロぉ……胡桃沢が怖いよぉぉ………」
 寧々「何言ってるの! もう、ちょっと睦彦くん片方の足持って! 動かすわよ!」
 睦彦「え、あ、おう……」



 がやがやと朝からやかましいけど、幸せだな。
 こんな混沌とした世界で、優しい仲間に会えたこと。それが自分にとって一番の功績だ。

 窓を開ける。
 青い絵具をぶちまけたかのような青色の空。天気はもちろん、快晴。


 
 
 ☆第3話「快晴」END☆
 


 

 


 

Re: ろくきせ恋愛手帖 【亀更新です】 ( No.98 )
日時: 2021/01/28 19:10
名前: むう (ID: mkn9uRs/)


 受験終わったぁぁぁぁぁぁぁ!
 受かってるといいなぁぁぁぁぁぁ!

Re: ろくきせ恋愛手帖 【亀更新です】 ( No.99 )
日時: 2021/01/30 08:55
名前: むう (ID: mkn9uRs/)


小説イラスト掲示板に久しぶりにイラストあげてきました!
良かったら見てください!
本編の投稿は夕方くらいになりそうです!
LINEスタンプはあとちょっとなんで楽しみにしてて下さい!

Re: ろくきせ恋愛手帖 【亀更新です】 ( No.100 )
日時: 2021/01/30 18:34
名前: むう (ID: mkn9uRs/)


 【第4話:休日の過ごし方】


 〈しのぶside:蝶屋敷〉

 私は思わずはあっと息を吐いた。
 今日は、警備地域の見回りなどの仕事は非番。
 他の柱の皆さんも、任務がないと言うことだったので、なにか皆でできないものかと思う。


 しのぶ「何をしましょうかねぇ……」
 アオイ「どうされましたかっ!」
 しのぶ「今日は柱の皆さんがおやすみですので、皆で何かしようと思いまして」
 アオイ「そうですか。確か今日は神社のお宮でお祭りがあると聞きました。
     一緒に行かれてはどうですか?」

 しのぶ「なるほど……この冬の時期にお祭りですか。いいかもしれませんね!」
 アオイ「私も仕事終わりに、カナヲたちと行こうと思っていますので」
 しのぶ「了解です~。それでは私、皆さんに声をかけに行ってきますね~」
 アオイ「はい、お気をつけて」


 お祭りですか。前行ったのは、伊黒さんと甘露寺さんのデートの日以来ですね。
(詳しくは短編集をcheck)
 炭治郎くんたちも誘って、みんなで楽しめるといいですね。


 ********


 〈一方無一郎side:宵宮家〉


 無一郎「………本当に、ごめん、泊めてもらって……」
 炭治郎「大丈夫だ時透くん。何しろこんな雪だろ? 無事で良かったよ」
 有為「ええ。服にも雪がついていましたし、ボクもあんな状態では見過ごせませんでしたから」

 寧々「えっと、あの子は……」
 光「ああ、確か〈霞柱〉の時透無一郎さんですよね」
 花子「会うのは六新鬼月戦以来ダネー」

 
 無一郎「……ありがとう宵宮さん」
 有為「いいえ、お安い御用です。服が濡れてたので洗っておきますね」
 無一郎「自分でやるよ。君は座ってなよ」
 有為「いえ、大丈夫です! 今日は桜さん達も来られていますし、思う存分パシれるんで!」


 ~有為、働かせる気満々~


 桜「私たち、雑用係なのね」
 夏彦「まあオレたちは別にいいんだけど、キッパリ『パシリ』って言うあたり有為ちゃんだね」
 つかさ「わ、雪降ってきた! あまねー雪だるま作ろうよー!」

 花子「ヤダよ外寒いもん」
 善逸「お前元気だな………ふぇ、ふぇっくしょん!」

 寧々「花子くんって、意外と寒がりなのね」
 禰豆子「ムー?」

 仁乃「まあ寒いもんはしょうがないよ。私重湯作ってくるね!」
 睦彦「おおお、俺も行く!」
 有為「台所は廊下進んで突き当りにありますから」
 二人「はーい(奥に消えていく)」


 夏彦「ところでさ……こっちのお二人さんは何してんのかなあ」
 メイ「……ふわぁ……3番、ここはワタシが入ってるんですよぉ(コタツ沼にハマる)」
 ミツバ「4番どいてよっ、寒いんだから!!(同じくコタツ沼にハマる)」


 伊之助「何か変な奴がいるぜェ! 勝負しろォ!!」
 ミツバ「今コタツでぬくぬくしてるから無理―」

 花子「なんか他の七不思議も誘ったんだけどさぁ、結局3番と4番だけ応じてくれたんだ」
 メイ「言っときますけどぉ、七番様のことは相変わらず大嫌いですからねぇ」
 つかさ「どんまい、あまね」



 花子『1番ー。宵宮んとこいこー』
 茜『クリスマスはアオちゃんとクリスマスデートするんで無理です(キッパリ)』


 花子『2番ー。宵宮んとこ行くよね?』
 ヤコ『やあよ。子供と行ってきなさい』

 花子『土籠は宵宮んとこ行けるよね?』
 土籠『あいにく冬休みには年賀状とテストの採点溜まってるんで………』



 花子「全員にドタキャンされてさぁ……」
 禰豆子「ムームー」
 光「輝兄を誘わなかったオレの功績も褒めてくれよ……」
 

 炭治郎「でも良かったじゃないか。こんなに賑やかな年越しは初めてだよ(ニコ)」
 無一郎「僕は、毎年柱の皆と集まってやってる」
 善逸「マジで! いいなぁ、高いもん食べれるんでしょ??」

 睦彦「ただいまー。作ってきたから足湯したい奴はやっていいぞー」
 仁乃「何の話してたの?」
 もっけ「かすみばしらの としこし」「ごうかだった」「アメやる」

 

 無一郎「昨日は………みんなで胡蝶さんの家で『イントロドン』やったよ」
 寧々「い、イントロドン??? 大正時代で!??」
 無一郎「誰かさんが……教えてくれて」


 一同「誰かさん??」
 有為「誰に教えてもらったんですか?(緑茶を入れながら)」
 無一郎「えっと……確か……」


 無一郎「『じゅじゅつ』で『じゅれい』を倒してる人たちで」
 炭治郎「呪術で呪霊を倒してる人たち……」

 無一郎「『じゅじゅつこうとうせんもんがっこう』の一年ズって言ってて」
 善逸「呪術高等専門学校の一年ズ……」

 無一郎「担任の先生が鬼つよなんだって」
 睦彦「担任の先生が鬼つよ………」


 かまぼこ隊一同「どっかで聞いたような………」
 寧々「それってもしかして、葵が最近ハマってる……」



 葵『寧々ちゃん聞いて! 最近とっても人気なアニメがあってね』
 寧々『どんなアニメ?』
 葵『んふふー。呪術廻戦っていうの! おすすめだから見てみてね♪』



 一同「マジでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?? 呪術廻戦の人たち来たの???」
 無一郎「………じゅじゅつかいせん、だったっけ……忘れちゃった」


 寧々「え、え、え、有為ちゃんまたミスって召喚したの??」
 有為「知りません知りません! 最近は術も使ってないです!」
 光「あのあの、五条先生来たんすかっ!?」
 無一郎「そのひとは来てないけど、『イタドリ』と『クギサキ』と『フシグロ』はいたよ」


 一同「嘘ぉおおおおおおおおおおおおおおおお???」
 無一郎「……今も多分いるはずだよ」
 一郎「マジいいいいいいいいいいいい??」


 ~興奮でテンションがおかしい一同たち~


 と。
 ピンポーン


 炭治郎「誰か来たみたいだな。出てくる」
 有為「ありがとうございます」





 炭治郎「(ガララッ)はーい………あれ?」
 ??「えっと、ここであってるのよね? しのぶさんが言ってた家って。ぼろっちいわね」
 ??「うっほお! 大正時代ってすげえよな! なあ伏黒?」
 ??「まあな」



 炭治郎「(えええええええええええええええええええええええΣ( ̄□ ̄|||))」



 Next→まさかのまさかのコラボ! 次回もお楽しみに!


 
 



 

 
 


 


 


 

Re: ろくきせ恋愛手帖 【更新停止解除!】 ( No.101 )
日時: 2021/02/05 21:32
名前: むう (ID: mkn9uRs/)

 こんにちは。最近呪術廻戦にハマりまして、こういう感じで書かせていただきました。
 漢字など難しいものはルビを貼っていますので気軽に読んでくれると嬉しいです。
 ちなみにむうの推しは野薔薇ちゃんです(^▽^)/

 ********


 〈呪術高専ズ、来る〉


 炭治郎「(・・・・・Ω\ζ°)チーン)」
 有為「どうしたんですか炭治郎くん、………って、え?(Ω\ζ°)チーン)」
 仁乃「どうしたん………え、え、え??」

 ??「なによ、人の顔見て固まるなんて失礼ね」
 ??「ていうか釘崎くぎさき。なんでお前もついてきてんだよ」
 ??「は? 私が来ちゃいけなかったの?」
 ??「いやだって、しのぶさんは俺ら二人で行けって……」

 ??「あーやだやだ。誰のおかげでココの場所が分かったのよ、この方向オンチ!!」
 ??「は?? お前もめっちゃ迷ってたじゃん! なあ伏黒ふしぐろ!」
 ??「お前もな」


 有為「え、えーーっと、貴方達は………」
 光「嘘マジで? 世界線どうなってんすか??」

 寧々「!?? ほ、ほんとにほんとのほんとに?? さ、サインください!(サッ)」
 ??「まっ、当然ね!(書きかき)」
 寧々「あ、ありがとうございますっ」

 
 悠仁「オレ虎杖悠仁いたどりゆうじ! ごめん押しかけちゃって……」
 有為「いえいえ、ボクは別に構いませんが……」
 善逸「っていうかこれどういう状況よ?? 『妖怪幽霊漫画大集合』じゃん!!」


 ※鬼滅×花子くん×呪術廻戦=豪華キャスト陣


 悠仁「それはよく分かんねえけど、なんか変なボタン見つけて押したらここに来たんだよな」
 ??「任務帰りで変なところに飛ばされたと思ったら大正時代って……」

 ??「ああ、ド〇えもんみたいな道具があるなら、
    ザギンでシースーとかギロッポンでステーキとかが良かったぁぁ!!!」


 悠仁「釘崎お前まだそれ言ってんの?? 持ち直そうよ!」
 ??「だいたい私の故郷より田舎ってどういうことよ!! 文明開化どこ行ったのよ!!」
 ??「仕方ねえだろ。大正時代なんだから」


 炭治郎「と、取りあえず自己紹介してもらってもいいですか?」
 花子「ふわぁ~なんかすっごい豪華でキンチョーしちゃうねぇ」
 睦彦「………おいおい、俺より全員背が高いってどういうことだよ……」


 野薔薇「釘崎野薔薇くぎさきのばら。喜べ男子。紅一点よ」
 男子一同「(今までにないパターンの女子来たあ…)」
 寧々「足が細い……」

 伏黒「伏黒恵ふしぐろめぐみ。よろしくお願いする」
 仁乃「三人はどうしてここに? あ、しのぶさんに頼まれた―とか言ってたよね」
 伏黒「迷い込んだ先が蝶屋敷だったからな。しばらくお世話になってた」

 野薔薇「しのぶさんが他の柱?を祭りに誘ってる間、私たちは残りの声かけを頼まれたのよ」
 かまぼこ隊一同「はぁ……なるほど……」


 野薔薇「ぁぁぁぁ、こんなとこ来るならザギンでシースーが良かったぁ! 回らないとこ!」
 ミツバ「お腹すいてんの?」
 善逸「そんなに寿司が食べたいなら、少し行った先にあるよ? えーーっと、野薔薇ちゃん」


 野薔薇「は? 気安く呼んでんじゃないわよ。アンタ何歳?」
 善逸「(話しかけにくい子だな)じゅ、16だけど……」
 野薔薇「うそ、タメ? 信じられない! ムリムリムリムリ!」
 善逸「そっこー拒否られたんだけどぉぉ??」


 睦彦「………失礼な女だな」
 恵「こういうやつなんだよ」
 メイ「なんかぁ、凄くまっすぐな人ですねぇ。そういう人ワタシ好きですぅ」
 無一郎「……釘崎さんは………いい人だから。多分」


 寧々「あのう、お祭りに行くのよね? 外は寒いから中に入らない? コタツもあるし」
 悠仁「マジで!? ありがとう! えっと……」
 寧々「あ、八尋寧々です!」
 悠仁「サンキュー八尋! オラお前らも中入ろうよ。めっちゃ寒いしさ」


 野薔薇「だいたい虎杖が地図を読み間違えなければ早く着いたのよ!!」
 伏黒「それを言うならお前がボタンを押さなければ俺たちは今頃高専だったんだぞ」
 野薔薇「ああもう、細かいとこぐちぐちいうのやめてくれない?」
 伏黒「事実だろうが」


 有為「そのような不毛な会話は中でお願いします。雪がどんどん積もってくるので」
 悠仁「ほらぁ! 年下に気を遣わしてんじゃねえよ!」
 野・伏「お前だよ!!」


 ネクスト→いっぽうしのぶsideでは? 次回もお楽しみに。



 ********


 【呪術廻戦1年ズ 紹介】


 ・虎杖悠仁

 100メートルを3秒で走るスーパー一般人。
 特急呪物の両面宿儺りょうめんすくなの指を食べてしまい呪いを宿す。


 ・伏黒恵

 式神を使って戦う同級生。
 御三家の禅院家の血を引く。


 ・釘崎野薔薇

 盛岡を出るまで4時間かかる田舎から上京してきた。
 釘とかなづちをつかって戦う。


 

 

Re: ろくきせ恋愛手帖 【更新停止解除!】 ( No.102 )
日時: 2021/02/03 17:54
名前: むう (ID: mkn9uRs/)

 【大正こそこそ噂話】

 Q好きな異性のタイプは?

 炭治郎「………まだ分かんないです((*ノωノ))」
 伊之助「いねぇ!!」
 善逸「禰豆子ちゃん!」
 睦彦「………え、笑顔が可愛い………」
 仁乃「めんどくさい人『おいなんだよめんどくさいって!by睦彦』」
 カナヲ「(真っ赤に照れて黙り込む)」
 有為「…………優しい人(同じく照れてそのうち黙り込む)」

 悠仁「身長タッパけつがでかい女の子……かなぁ」
 恵「ついこの前ヤバイ人に同じことを聞かれた気がするんだが(怒)」
 野薔薇「この私と吊り合うんだから、相応の価値を見出しなさいよ!」

 ********


 〈しのぶside:街道〉

 取りあえず、半分は伏黒くんたちに頼みましたし、私は残りの皆さんの邸宅へ行くとしましょう。
 それにしても、ボタン一つでこの時代に来たと言っていましたが……。
 それってどういうことでしょうか。
 有為さんみたいな転移術? ループってやつかしら。
 
 まあ私にわかることなど、あまりないのかもしれませんが。
 世界のどこかで、別の時代では七不思議なんてものがありますしね。


 しのぶ「さあ、考えるのは後にして……。取りあえず最初は冨岡さんのところへ行くとS」
 義勇「………聞き捨てならないな。今何と言ったんだ胡蝶」


 しのぶ「………と、冨岡さん!??」
 義勇「そうだが」


 会うタイミングが神がかっているじゃあないですか。
 何なんでしょう。嫌がらせでしょうか?

 しのぶ「偶然と言いますか……今ちょうど冨岡さんのことを考えていましたよ(ニッコリ)」
 義勇「そうか。それでさっきお前は何と言った」
 しのぶ「何のことでしょう?」
 義勇「とぼけるな。俺の家に行くとか言っていなかったか」

 しのぶ「ご自分で分かっていらっしゃるのに、なぜ私に聞こうとするんですか?」
 義勇「……………」
 しのぶ「何とか仰ってはどうでしょう?(ニッコリ)」


 義勇「………(なんで休みの日に限って最初に会うのがコイツなんだ)」
 しのぶ「冨岡さん。近くのお宮でお祭りがあるらしいですよ。一緒に行きませんか?」
 義勇「………エ゛?」

 しのぶ「何でしょうかその反応は。まさか冨岡さん、その歳で一人で行かれるおつもりですか?」
 義勇「そんなわけないだろうが」
 しのぶ「はあ、そうなんですか。じゃあ誰と行かれるのですか?」
 義勇「……………………」



 ※ピューッと北風が通り過ぎていった


 
 蜜璃「あれ、しのぶちゃん? 何してるのこんなところで~」
 義勇「……………(また人、増えたし……)」
 伊黒「胡蝶に冨岡も。橋の真ん中で何をしている。通行人の邪魔だろうが」

 しのぶ「甘露寺さん。奇遇ですね。ちょうど邸宅に行かせて頂こうと思ってたんですよ」
 蜜璃「あらそう? なら会えてよかったわね!」
 伊黒「チッ」

 しのぶ「実は今日は冬まつりが開催されるようですよ。柱皆でどうかと思いまして」
 蜜璃「それはいい考えだわ。この前会った虎杖くんたちも誘えればいいわね」
 伊黒「信用しない信用しない。祭りがあることなど信用しない(甘露寺とだけ一緒がいい)」
 しのぶ「チラシがありますが見ます?」


 伊黒「(渡されたチラシを見て)チッ」
 義勇「……舌打ちが最近の日課なのか伊黒」
 伊黒「何か言ったか冨岡」
 義勇「……………別に」

 しのぶ「皆さんこの後用事がなければ、残りのメンバーの声かけ一緒にしませんか?」
 蜜璃「賛成するわ~。皆と会ったのって、この前の柱合会議以来だし。楽しみね!」
 しのぶ「無一郎くんと煉獄さんには、一年ズが聞いてくれるようですよ」
 
 義勇「あの個性強めな三人トリオか……」
 伊黒「大変騒がしかったが『イントロドン』は面白かったから皮肉だな」

 蜜璃「なら私たちは、不死川さん、宇髄さん、悲鳴嶼さんに聞けばいいのね」
 伊黒「………甘露寺が行くなら俺も付いていく」
 しのぶ「それでは行きましょうか。冨岡さーん行きますよー。ついて来てくださーい」

 義勇「…………(テクテクテク)」
 伊黒「何だその速度は。行きたくないなら来なければいいんだ」
 義勇「別に行かないとは言ってない」
 伊黒「なら早く歩け、馬鹿者」



 義勇「(ストレスが半端ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!)」


 ********


 〈一方:煉獄side〉


 ??「あのぉー。そこのなんか髪がキャンプファイヤーの人?」
 煉獄「? 何か用か!」
 ??「うんうん。こっちこっち。ちょっと来て」
 煉獄「うむ! 困っている人を放ってはおけまい!(テクテク)」

 ??「実はね、僕教師をやってんだけど。教え子とはぐれちゃってさぁ」
 煉獄「それは誠か! 俺も同僚(宇髄)と市場を回っていたがはぐれてしまってな! はは!」
 ??「それでさ、ちょっと探すの協力してくれないかな。お礼に高いものおごるしさ」
 煉獄「お礼などいらない! 喜んで手を貸そう!!」

 ??「ほんと? 実はね、虎杖悠仁・釘崎野薔薇・伏黒恵っつー名前なんだけどねぇ」
 煉獄「? その名前ならついこの前会った子達と同じ名前だが……」
 ??「うっそマジで!? 多分その子だと思うんだけど」

 煉獄「うーん、俺も彼らと過ごしたのは一日だけだから詳しいことは分からないが、
    一緒に探すことはできる! 煉獄杏寿郎だ。よろしく頼む!!」
 ??「いいねいいねぇ。そう言う熱いタイプ僕大好き」

 五条「僕五条悟ごじょうさとる。多分……というかかなり喧嘩は強い方って言う自信がある☆」
 煉獄「そ、そうか……!!(答えに迷う煉獄さん)」
 五条「じゃあこれからよろしくね煉獄くん♪」


 ※五条先生追加しました。キャラあってなかったら言ってください。

 

Re: ろくきせ恋愛手帖 【更新停止解除!】 ( No.103 )
日時: 2021/02/05 18:12
名前: むう (ID: mkn9uRs/)

 【大正コソコソ噂話】

 Q正直に言ってこのコラボどう思ってる?


 五条「あーいいじゃない? ホラ、色々、なんつーの? なんかキラキラーッてして」
 悠仁「あ、オレはすっげぇ楽しいから感謝してる! thank you!」
 野薔薇「……………私のシース―返せよこん野郎……」
 恵「虎杖と釘崎のお守りが個人的に疲れる(『俺らは赤ん坊かよ!!』)」

 ********


 〈かまぼこ花子高専隊side〉

 ~煉獄さんをお祭りに誘うべく外出中~


 炭治郎「それで、俺たちは煉獄さんに聞けばいいんだよな」
 伊之助「ハッハァァ! 見ろ権八郎!! この白い奴食べられるぜェ!!」
 炭治郎「雪を食べるな! お腹を壊すだろう!!」

 夏彦「小っちゃいころはよくやったけどねぇ。雪食べるの」
 つかさ「俺も雪たくさん集めてかき氷つくる!」
 桜「やめなさい。道路に積もった雪だから汚れてるわよ」


 寧々「ジ――――ッ」
 無一郎「八尋さん、さっきからどうしたの?」
 
 睦彦「知らん!! っていうか! さっきから宵宮がずっと俺の足踏んでるんだけど!」
 有為「………あーごめんなさい。先ほどから嫉妬心丸出しなのが癪に障りました(棒)」
 睦彦「は? 俺が誰に嫉妬してるって言うんだよ!」

 有為「仁乃さんが虎杖くんと喋ってるからこれぞとばかりにガン飛ばしてるじゃないですか」
 睦彦「そっ……んなこと…………」
 ミツバ「図星だったみたいだね」
 
 花子「ヤシロ、さっきからずっとクギサキ睨んでるんだけどどう思う少年」
 光「えっと……せ、先輩は今のままで充分かわいいと思うんだけどよ………」

 寧々「ジー―――――ッッ あの子……私と同い年なのに……」
 野薔薇「ねえここGIFとか使えないわけ!? あーもうめんどくさいわね!!」
 伏黒「だから大正時代だっつってんだろ!!」

 寧々「なんで野薔薇ちゃんの方が足が細いのかしら!? 遺伝子の違い!? うわぁぁぁぁん!」
 悠仁「え、なに?? どうしたん!?」
 花子「落ち着いてヤシロ!! ほら、通行人皆こっち見てるから!」


 野薔薇「どうしたのよ勝手に喚いて。ホームシック?」
 寧々「ううん何でもないのよ。どうしたらそんなに可愛くなれるかなってそれだけだから」
 野薔薇「そりゃそうよ! こんな私をスカウトしないなんて事務所は見る目ないわね!」


 善逸「うわーぉ。フォローするどころか更に自慢しだしたぞこの娘。まあ可愛いのは認めるけど」
 有為「睦彦くんが女だったらこんな感じなんでしょうか」
 一同「さぁ」
 睦彦「『さぁ』じゃねーんだよ!!!」


 仁乃「へぇ。虎杖くんって体の中に違う魂が入ってるんだー」
 悠仁「うん。なんか宿儺すくなの指って奴をパクっと食べちゃってさぁ!(ニコニコ)」
 伏黒「笑い事じゃねえんだよ……」

 野薔薇「てか虎杖と仁乃って似てるわよね。呪い宿してる同士?」
 仁乃「ぁぁん、この身体がどういう感じか分からねえやつが偉そうに……」
 野薔薇「ヒッ!? 何急に人格チェンジ!? ジキル博士とハイド氏!?」
 睦彦「落ち着け胡桃沢!! 怖ぇんだよお前のその状態!!」


 炭治郎「仁乃ちゃんは怒ると人格の変化が凄いからな。だから言葉には気を付けよう!」
 善逸「いや炭治郎。そう言う問題じゃないんだよこれは。女の子の扱い方の問題よ」
 メイ「簡単に言うとぉ、めんどくさい性格の集まりですねぇ」


 花子「ちょっと4番今明らかに俺見て言ったよね!! 傷つく!!」
 ミツバ「僕見て言ってんじゃねーよこの眼鏡オタク!! 大体アンタもめんどくさいんだから!」
 睦彦「お前らいっつも俺のことをめんどくさいって連呼してるけど、人間はそんなもんだよ!!」
 

 野薔薇「…まぁ悪かったわよ。あとでわらび餅おごるからそれでいいでしょ?」
 仁乃「!? わ、ら、び、も、ち~~!?? ありがとう野薔薇ちゃん大好き!」
 野薔薇「なによその変わり身の早さは! 私の純情返せ!!」


 ~と、後ろから足音が聞こえてくる~


 ??「おー。いたいた。ホントマジ助かった。お礼に八ッ橋あげるネ♪」
 ??「ありがとう!! 美味しそうな見た目だ!!」


 かまぼこ花子隊一同「そ・の・こ・え・はぁぁぁぁぁ」
 悠・伏・野「そ・の・こ・え・はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 五条「や、みんな♪」
 煉獄「久しぶりだな少年たち! 会えて嬉しい!!」
 
 悠仁「五条先生ぇぇぇぇぇぇぇ!??」
 かまぼこ花子隊一同「煉獄さぁぁぁぁぁん!!!」

 五条「もー。任務帰りは六本木でステーキって言ったよね。なんでこんなとこいんの皆」
 伏黒「こっちのセリフですよ。何で先生までこっちにいるんですか」
 野薔薇「っていうかどこがステーキよ! 多数決でザギンのシース―だよこの反面教師!!」

 五条「悠仁たちがいた場所にボタンが落ちてたからさぁ」
 伏黒「……まさかそれを押したんですか」
 五条「なーんか面白ソーだなーと思ってぽちっと」

 一年ズ一同「(この教師、生徒の安全より好奇心が勝ってる………)」
 煉獄「まあ、とにかくこれで合流だ! ここからは一緒に他のメンバーを探そうではないか!」
 五条「ま、そーゆーことでこれからよろしく♪」


 寧々「イッイケメン(五条先生を見て)………!」
 ミツバ「ねー。大根先輩が壊れた………」
 

Re: ろくきせ恋愛手帖 【第4話EP2更新】 ( No.104 )
日時: 2021/02/07 14:02
名前: 蝶霞 ◆YmDcjbI8V. (ID: SK5u95ln)

おっひさぁぁぁ!覚えてる?わぁぁい呪術廻戦だぁぁぁぁ

Re: ろくきせ恋愛手帖 【第4話EP2更新】 ( No.105 )
日時: 2021/02/08 15:23
名前: むう (ID: mkn9uRs/)


 コメント返信

 >>104 蝶霞ちゃん

 お久ぁぁぁぁ! 覚えてるよおお。
 戻って来てくれてありがとう(^▽^)/



 >>読者さんへ


 高校合格しましたぁぁぁぁぁぁぁ!
 いぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!!
 

Re: ろくきせ恋愛手帖 【第4話EP2更新】 ( No.106 )
日時: 2021/02/13 16:18
名前: むう (ID: mkn9uRs/)

 さあさあこれで肩の荷も下りたし。
 続き!!

 〈宇髄side〉


 宇髄「っていうか煉獄はどこ行った?? 地味にいなくなりやがって!!」
 悲鳴嶼「………おお宇髄………久しぶりだな………(スタスタ)」
 宇髄「悲鳴嶼さん! 実は煉獄とはぐれちまってよ。さっきまで横にいたんだが」
 悲鳴嶼「そうか………そういえば今日は祭りがあるらしい……一緒にどうだ」

 宇髄「祭りか! なんでも花火が上がるらしい! この俺様にピッタリじゃねえか!」
 悲鳴嶼「………なるほど。宇髄は……花火が好きなのか」
 宇髄「祭りも花火も好きだ! 響き派手で!」

 実弥「オイオイオイオイ。こんなところで何してるお二人さんよォ」
 宇髄「どぅわっ。いきなり横から出てくんな。地味に驚いただろうが」
 実弥「アアン? 勝手に驚いたのはテメェだろォ? それよりさっき胡蝶とすれ違ったぞ」

 悲鳴嶼「………そうか……。非番で皆この市場に来ているんだな」
 宇髄「産屋敷から近いからなァ。胡蝶とも会えればいいがね。ついでに煉獄とも」
 しのぶ「あらぁ。三人固まっておられたんですか。探す手間が省けましたね」


 ~後ろからしのぶ一行が駆け寄ってきて~

 しのぶ「何なんでしょうか。冨岡さんといい宇髄さんといい、出会い方が神がかってますね」
 義勇「俺は何もしてない」
 蜜璃「と、とにかく、見つかって良かったわ。あとは煉獄さんと無一郎くんだけだし」
 伊黒「聞けば時透は竈門炭治郎たちと一緒にいるらしいな。あとは煉獄だがどこに行ったんだ」

 宇髄「そりゃ分からん。あいつと一緒に回ってたが……気づけば地味ィに消えてやがる」
 実弥「フン。それは妙だな。あいつほど声が大きけりゃ、数分足らずとも見つかるだろ」
 宇髄「いや俺も、そん時は揚げ餅屋の旦那ともめてたからよォ」

 蜜璃「もめたって……なんでもめたんですか?」
 宇髄「値切ろうとしたらあの野郎、うまい具合に交わしやがった。商売上手だわ」
 蜜璃「たった十銭の揚げ餅をよく値切ろうと思ったんですね……素敵だわ」
 しのぶ「甘露寺さんのストライクゾーンは無限城より広そうですね(ニッコリ)」




 無一郎「行くよ。せーのっ、炙りカルビ」
 有為「えーっと、炙りカルビ、炙りカルビ(ふぅー)」
 つかさ「炙りカルビ、あRりかぐり?」
 無一郎「はい、ということで君の負けだね。約束通りあとで何かおごって」

 つかさ「えぇー。『炙りカルビゲーム』やろうっていったのは俺なのにケチ……」
 ミツバ「あーあ、だからやめろって言ったのに」
 仁乃「それにつっかかったのはむいくんだよね。初めてなのに勝っちゃうなんて手強いなぁ」

 無一郎「じゃああそこの店の金平糖とおまんじゅう一個ずつね」
 伏黒「平然と人をこき使ってるな。たかが14のガキなのに」
 無一郎「………何か言った?」
 伏黒「何でも」


 しのぶ「会うタイミングが、神がかって……嫌この場合鬼がかると言えばいいのでしょうか?」
 伊黒「それは某テレビアニメの主人公のセリフだから使うな胡蝶」
 

 煉獄「悪かったな宇髄! はぐれてしまって不甲斐なし!!」
 宇髄「いや、逃がした魚は大きい……みたいなことになってて怒る気も失せるわ」
 実弥「全くだな。この前のガキも連れてきやがって」

 野薔薇「ハァァァァァ………。なんで任務帰りでこうなるわけぇぇぇ?」
 悠仁「お前の情緒が分かんないのオレだけ!? 引きずりすぎだろ!」
 五条「落ち着きなよ野薔薇。こっちにも寿司はあるんだしさぁ」

 花子「聞く限り、回らないとこだって。あとめっちゃおいしいらしい」
 桜「その代わり値段は張るけど、柱がお金は出してくれるらしいから気にしなくていいわよ」
 寧々「そうよ! うどんもお蕎麦もとっても美味しいのよ。花火見ながら食べれるんだって!」

 つかさ「ねー時透もういっかいやろーよお」
 無一郎「………嫌だよ。違う人とやりなよ」
 つかさ「むぅー。じゃああまねと4番。『キャラ縛りしりとり』やろー」


 ※キャラ縛りしりとりとは
 呪術廻戦、花子くん、鬼滅の用語だけでしりとりをすること。


 メイ「分かりました。相手してあげますぅ。アナタが負けたら絵の中に閉じ込めますねぇ」
 花子「それはやめて。マジでやめて」

 メイ「じゃあ行きますよぉ。『エソラゴト』」
 つかさ「えーっと、『とみおかぎゆう』」
 花子「う、う……?『噂』」
 メイ「『サイコロステーキ先輩』」
 つかさ「『伊地知』」」
 花子「ち、ち………?」


 睦彦「行くぞ伊之助! 胡桃沢! 負けたら黒歴史暴露ゲーム! せーのっ、炙りカルビ!」
 仁乃「炙りカルビ。炙りカルビ」
 伊之助「え、っと……あ、あぶりかるび、あぶりかるび」
 

 睦彦「なっんだとお前……。ふぅー。行くぞ! あぶりかぐり!」
 炭治郎「…………………どんまいだ睦彦くん」
 睦彦「もう一回! もう一回!!」


 炭治郎「ダメだぞ睦彦くん。自分で決めたんだろ?」
 煉獄「睦彦少年の黒歴史か! 家が神社だからサンタクロースがいると思ってたことしか知らん」
 睦彦「嘘それ言ったっけぇ!?」

 
 蜜璃「同期だった男の子と仲良くなりたくて、お師匠さんの子供と練習してたのよねえ」
 睦彦「それ誰にも言ってないのに何で知ってんの甘露寺さん??」
 蜜璃「仁乃ちゃんが教えてくれたの♪」
 睦彦「くるみざわぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 五条「よし、お祭りまでの道中こっちもなんかやろうか」
 悠仁「なんかってなんだよ。カラオケとか?」
 野薔薇「いいわねカラオケ! 私の美声を響かせてやるわ!」

 伏黒「カラオケならカラオケ店でやればいいだろ」
 野薔薇「ケッ。あのねぇ伏黒。歌っていうのはどこで歌ってもいいんだよ!!」
 夏彦「同意ー。歌は世界を救う☆」
 野薔薇「それはよくわかんないけど、とにかくカラオケはカラ館っていう考えは古いのよ!」


 五条「いいねぇ皆。楽しんでるじゃない。僕人酔いしそうだよ」
 伏黒「それは意味分かりませんけど薬でも飲みます?」


 ネクスト→お祭り開始。次回もお楽しみに!
 
 


 
 

Re: ろくきせ恋愛手帖 【第4話EP2更新】 ( No.107 )
日時: 2021/02/10 21:13
名前: むう (ID: mkn9uRs/)

 〈執筆コソコソ噂話〉

 唐突に好きなアーティストと楽曲発表じゃじゃん!

 炭治郎「急だな」
 善逸「ぼかろ? ってやつ?」
 仁乃「楽しみ^^」

 YОASОBI→「夜に駆ける」
 ヨルシカ→「言って」「ヒッチコック」
 ずっと真夜中でいいのに。→「秒針を噛む」「Ham」
 Honeyworks→「スキキライ」「ヒロイン育成計画」
 米津玄師→「ゴーゴー幽霊船」「マトリョシカ」
 ナユタン星人→「惑星ループ」「ロケットサイダー」

 以上!!
 ろくきせやカオ僕など、色んな所でイメージ曲にしてるので気になったらまた調べて見て下さい!


 ********


 【お祭り開始】


 野薔薇「来たわね冬まつり! 見晴らしが良くて空が高いわ! 絶好の会場ね!」
 悠仁「向こうに寿司屋もあるってよ! 後で行こうぜ釘崎!」

 五条「良かった、野薔薇のテンションが戻って」
 伏黒「そうですか。良かったですね(棒)」
 五条「どしたの恵。ホームシック?」
 伏黒「いえ。なんでもないです」


 しのぶ「ハイハイ。それではみなさん、都合もあるようですしここで一旦解散にしましょうか」
 義勇「ホッ」
 光「っていうことはっこから自由行動ってことですか?」
 しのぶ「はい。みなさんお好きな方と、お好きな場所へ行ってください(ニコッ)」

 蜜璃「わぁ、楽しみ! えっと、誰と回ろうかしら……」
 伊黒「何をしている甘露寺。さっさと行くぞ」
 蜜璃「え? あ、ちょ、ちょっと待ってくださーい!」


 ☆おばみつチーム成立


 煉獄「甘露寺と伊黒が行ってしまったな! 宇髄、先ほどの件は悪かった!」
 宇髄「いいっていいって。んーそうだな。なら一緒に回るか煉獄?」
 煉獄「おう! 喜んで同行しよう!!」


 ☆煉獄&宇髄チーム成立


 しのぶ「さて冨岡さん。一緒に回る人がいないようでしたら私と如何ですか?」
 義勇「っ………あ、ま、まぁ…………」


 ☆ぎゆしのチーム成立


 実弥「さて俺は……一人で回るとすっかァ」
 悲鳴嶼「………ああなんと哀れな不死川……私も同行しよう……南無南無」
 実弥「!? い、いや俺は一人で……」
 悲鳴嶼「………一人で回る祭りほどむなしいものはないぞ………(ずいずい)」
 実弥「……仕方ねえ。暫く頼むぜェ悲鳴嶼さんよォ」


 ☆実弥&悲鳴嶼チーム成立




 炭治郎「それじゃあ俺たちも分かれようか」
 善逸「おい炭治郎! 禰豆子ちゃんは置いてけよ夜だし! 俺は禰豆子ちゃん一択だからな!?」
 炭治郎「分かったからどいてくれ善逸。今箱を降ろすから(よいっしょ)」

 善逸「やっと! やっと俺がイチャイチャできる時間来たぁぁ! うふふっ楽しみ♪」
 禰豆子「(箱から出て)ムームー!」
 善逸「うわぁぁい幸せ! さぁ行きましょうか禰豆子ちゃん!!」


 ☆ぜんねずチーム成立



 カナヲ「あ、炭治郎………」
 炭治郎「! カナヲ! アオイさんも! 来てたのか!」
 アオイ「どうも。(小声)ほらほら、今がチャンスだから頑張ってカナヲ!」


 炭治郎「? どうしたんだ?」
 カナヲ「あ、あのさ………お祭り、い、一緒に、回らない……?///」
 炭治郎「わぁ、嬉しいよ。ありがとう!」
 カナヲ「え、う、うんっ」


 ☆炭カナチーム成立


 花子「ようし、俺たちは花子隊で回るぞー! おー!」
 寧・光「オー!」
 もっけ「あめをかう」「あめかうぞ」「おとながいする」

 夏彦「ってことは俺たちはいつもどうりですかねぇ」
 桜「ええ。放送室メンバー+四番で回ることになりそうね」
 メイ「よろしくお願いしますぅ」
 ミツバ「……フン」

 
 ☆花子チーム成立
 ☆放送室チーム成立


 アオイ「では私は不足していた調理道具を……」
 伊之助「ジー――――――」
 アオイ「なんですか伊之助さん」
 伊之助「な、なんでもねぇっ(そわそわそわそわ)」

 アオイ「だからなんですかっ!」
 伊之助「い、やぁ、そ、その……(きょろきょろきょろ)」
 アオイ「(ハァ――――)お腹がすいたんですね。食べたいものを教えて下さい。私が出します」
 伊之助「は?? なんでお前が……」
 アオイ「行きますよ!!」


 ☆アオ伊チーム成立


 五条「ようしじゃあ僕たちも行こうか! あ、でもお金は自分で払ってネ」
 悠仁「バッチコーイ!! さあ行くぜぇお祭り!!」
 野薔薇「ようし、可愛いもの買いまくるわよぉ!!」
 伏黒「……………はぁ……」


 ☆一年ズチーム成立


 仁乃「それで、さっきからずっと赤い顔しているむっくんは誰と行くの?(ニヤニヤ)」
 睦彦「っ!? え、えっと………」
 仁乃「ほらほらー」
 睦彦「…………い、一緒に祭りまわりませんかっ!!?」
 仁乃「いいよっ」


 ☆にのむつチーム成立


 仁乃「毎回それ聞くけど、それって私が無理って言うと思ってるの?」
 睦彦「え、いや、そんなことは……」
 仁乃「それとも、私が誰かと一緒に行くのを避けたいのかな?」
 睦彦「え、……そ、それは」
 仁乃「むっくんは一途だねー(ニコニコ)」


 有為「(どうしよう……睦彦くんは仁乃さんと行くし……ボクは誰と回れば……)」
 無一郎「………(どうしよう……柱の中で僕だけ余ってる……)」
 二人「そう言えば………(チラリとお互いを見て)」


 有為「あ、あの………時透くん……」
 無一郎「………なに?」
 有為「あの、いやでなければボクと一緒に回りませんか?」
 無一郎「………」

 有為「いややっぱりだめですよねボクなんか……すみませんちょっと樹海行ってきますっ」
 無一郎「まあ、いいんじゃない」
 有為「………はい?」
 無一郎「お互い誘える相手もいないし、君と一緒に行っても影響はないよ。同年齢だし」


 有為「…………OKならちゃんとOKって言ってくださいよ」
 無一郎「君がそれ言える? 前までずっとトゲトゲしてたじゃん」
 有為「あ、あれは、」
 無一郎「それにさ。『自分なんか』って言うの、やめたほうがいいよ」
 有為「わ、分かりました。ごめんなさい」

 無一郎「後謝るの禁止ね」
 有為「注文多くないですか?」
 無一郎「それよりさっさと歩いたらどう? 一緒に回るんでしょ」
 有為「そうですね。行きましょうか」


 ☆ういむいチーム成立




























 


 ??『――ということで君がこっちに入れる時間は満月の間。分かったかな?』
 ??『分かるよそれくらい』









 ??『くれぐれも、後悔のないようにね』
 ??『それも分かってるよ。だって』
































 ??『感動の再会、だろ?』


 
 
 

 
 
 
 

Re: ろくきせ恋愛手帖 【第4話EP3更新】 ( No.108 )
日時: 2021/02/13 16:17
名前: むう (ID: mkn9uRs/)


 お知らせです!
 今日、2月13日でろくきせシリーズ一周年!
 ということでイラスト掲示板にイラストをUPしました!
 良かったら見て見て下さいね(^▽^)/
 と言うことで続きです。

 ********


 〈炭カナチーム カナヲside〉


 やばい、どうしよう。
 今、私こと栗花落カナヲは、ドクドクと暴れまわる心臓を必死に抑えている。
 顔がほてって、呼吸が苦しい。脳がくらくらする。

 あ、アオイのせいだ。
 アオイが、「炭治郎さんが来るから誘ってみたら?」何て言わなければ良かったんだ。
 そしたら、こんな気持ちに振り回されることもなかったのに。
 

 炭治郎「カナヲ、どこに行きたい? 色んな屋台があるけど」
 カナヲ「えっ、えっと………ど、どこでもいいよ」
 炭治郎「そっか。いっぱいあると迷っちゃうからな。ゆっくり回ろうか」
 カナヲ「う、うん」


 炭治郎の笑顔を見るたび、胸が苦しくなる。
 けれど、久しぶりに会えただけで宙に浮く気持ちになったり、彼の声や仕草、一つ一つに視線を
 移してしまったり。


 この感情を何て言うか、私はやっと知ることが出来た。
 世間一般が「恋愛」と呼んでいるもの………だろう。


 でも私は、それこそ仁乃ちゃんのようにグイグイいけないし。
 仲良くなりたいけれど、炭治郎と会うのは彼が蝶屋敷に来た時だけで、あまり会えないし。
 だから久しぶりに会えた今、どんな風に接せばいいんだろう。


 炭治郎「カナヲ! こっちのべっこう飴、色んな形があるぞ。色もカラフルだ(飴屋発見)」
 カナヲ「そ、そうだね。炭治郎どれ食べる?」
 炭治郎「うーん、俺はこの、鳥型の奴を頼むよ。カナヲは?」
 カナヲ「この、ピンクの、桜型のやつ……かな」


 今頃みんな、上手くやってるのかな。

 師範も水柱さんと相変わらず話しているのかな。
 蛇柱さんと恋柱さんはもともとお似合いだし、睦彦と仁乃ちゃんは心配いらない。
 

 ああ、こんなときどうするのか聞けばよかったな……。
 

 店主「ご注文はお決まりですか?」
 炭治郎「あ、えっと、そこの鳥と桜を一つずつお願いします!」
 店主「はーい。ちょっと待ってね~」


 炭治郎「久しぶりだなカナヲ。元気にしてたか? 今日は誘ってくれてありがとな」
 カナヲ「っ………う、うん……///」


 ずるいなあ。そんな顔するの、本当にずるいなあ。
 炭治郎は出会った時から、とってもとってもずるいことを無意識にやっちゃうからなぁ。
 そういうところが、かっこいいなって、私は思ってるけどね……。


 店主「はーい。どうぞー」
 カナヲ「あ、ありがとうございます……(飴を受け取って)」
 炭治郎「そう言えば、このお祭りって『お宮祭り』って言うのに、なんで神社でしないんだろう」
 カナヲ「……(ぺろぺろ)確かに、ただの商店街のお祭りだもんね」

 店主「ああ、この近くに神社があるってことだけで、そう呼ばれてるの」
 炭治郎「そうなんですか。なるほどぉ」
 店主「ご利用ありがとうございました。また来てくださいね(ニッコリ)」


 買ったべっこう飴を二人で舐めながら、私たちはゆっくりと屋台を眺め歩いた。
 揚げ餅に、髪飾り、仕立て屋に、和菓子。
 色々なお店が軒を並べていて、沢山のお客さんが道を歩いている。

 
 炭治郎「人、増えて来たな」
 カナヲ「そ、そうだね………」
 炭治郎「迷子にならないように、手を繋がないといけないな。はい、カナヲ(手を差し出して)」


 えっ………///
 目の前に差し出された手を、まじまじと見つめると、炭治郎はキョトンと首を傾げた。



 炭治郎「どうしたんだ? 迷子になるぞ?」
 カナヲ「あ、ご、ごめん (ぎゅっ)」


 炭治郎からすれば、ごく当たり前のことかもしれない。
 でも私は違った。こんなふうに手を差し伸べられたのは、もうずいぶん昔のことだ。
 しのぶ姉さんとカナエ姉さんに出会った時以来で、なんだかとても懐かしい。

 炭治郎の手のぬくもりを改めて感じる。
 私より若干大きい、鍛え抜かれた分厚い手の温かさ。


 カナヲ「…………………・…………///」
 炭治郎「カナヲ?」
 カナヲ「だ、だって………初めて……男の子と手つなぐから……」


 そ、それに男の子と女の子でお店を回ったりするのを。
 未来ではその、「でえと」って言うんだよね? 寧々ちゃんが言ってた。
 でえと。これはでえとなのかな?


 と、おそるおそる炭治郎の顔色をうかがった私は、彼の顔が赤いことに気づいた。
 いや、顔だけじゃなくて耳まで赤かった。

 とたんに私は恥ずかしくなり、そっぽを向く。
 炭治郎も反対方向に視線をそらした。


 二人「……………・…………」



 そのまま静かな時間が流れる。ああ、こういう時はどうすればいいんだろう。
 違うお店回らない?って話題を変えればいいのかな。
 それとも、最近どうしてた?って聞いてみればいいのかな。



 炭治郎「……………緊張、するな。こういう感じ……」
 カナヲ「………うん。でも、楽しいよ」
 炭治郎「それは俺も同じだよ。良かった、カナヲと会えて」



 炭治郎が私の目を見てにっこりと笑う。
 その笑顔がとても眩しくて、私は大好きだった。
 そしてこの気持ちが嘘ではないことを改めて感じる。



 私はやっぱり、炭治郎が好きなんだ、って。
 私と出会ってくれて、ありがとうって。


 人間どうしようもなく辛い事があって、自分じゃどうにもできなくなったときでも。
 横に胡桃沢がいれば、それだけで幸せなんだ。


 前に睦彦がそう言ってたことを思い出す。


 あぁ、全くその通りだ。
 横にいる大切な人と見たこの景色に、なんという名前を付けようかと。
 私はずっと、頭の中で考えていた。
 満たされたこの気持ちを、胸から落とさないように注意しながら。
 

Re: ろくきせ恋愛手帖 【第4話EP3更新】 ( No.109 )
日時: 2021/02/15 20:15
名前: むう (ID: mkn9uRs/)


 【執筆コソコソ噂話】

 そう言えば昨日はバレンタインデーでしたね。
 皆さん如何お過ごしになられたでしょうか。
 全国恋している皆さん、むうは応援してます。

 ******


 〈ういむいチーム 無一郎side〉


 宵宮さんのことを知ったのは、半年前の臨時柱合会議にて。
 六新鬼月を封じた陰陽師の子孫だと、お館様から説明があった。
 なのでどんな子だろうと内心ドキドキしていた。
 
 でも、僕の前に現れた少女は、ごくごく普通の同い年の女の子だった。
 サラサラの白髪はくはつに、伏し目がちの瞳。
 顔も手足も小っちゃくて、お人形さんみたいだなぁと出会った時思った。

 その小さな口かな放たれる言葉には若干の毒があったけれど、不思議と悪意は感じられない。
 真っ直ぐなその言葉や姿勢に、どこか引かれるものがあった。

 いつも虚勢を張っているという感じで、炭治郎たちと一緒にいるときもあんまりわらわない君。
 それが今では言葉も柔らかくなって、はっきりこっちの目を見てくれる。

 本当はずっと前から話してみたいと思っていた。
 だなんて言ったら驚くだろうか。


 無一郎「………おいしい? さっき買った揚げ餅」
 有為「(もっち もっち )ふぁ?」


 無一郎「確か人気商品って書かれてあったから、どうなのかなって思って」
 有為「(もっち もっち)時透くんは買わなかったんですか?」
 無一郎「………うん」

 お餅ならこの前、柱全員の年越し会で嫌というほど頂いたし。
 でも、横を歩く宵宮さんの、幸せそうな笑顔に食欲がそそられる。

 あぁ、そんな顔もできるんだなあ……と僕は心の中で呟いた。
 まあ、自分が言えることではないのだろうけれど。


 有為「もしかして、食べたいとか思ったりしてます?」
 無一郎「……………いや」
 有為「時透くんが食べたいかなと思って、もう一つ買っておいたんですけど」


 宵宮有為という陰陽師の少女は、年齢の割には結構頭の切れる子供だった。
 この前炭治郎から聞いたが、なんでも彼女の過去がかなり残酷なものだったらしい。
 その時の経験から、妙に卓越した自我を持っているのに驚かされる。


 無一郎「………食べるなんて言ってない」
 有為「そうですか。ならボクが食べます」
 無一郎「………あ、」


 二つ目の揚げ餅の箱の中から、カリカリに揚げたお餅がチラリと除く。
 その一つをつまようじでとった宵宮さんは、お餅を口に運ぼうとして……。

 さっきからお餅に目が留まっている僕に視線を移し、大きく息をついた。
 呆れたように肩をすくめて、彼女は言う。

 有為「なんですか? いるんですか、いらないんですか」
 無一郎「…………………ありがとう」
 有為「どうも」



 話がなかなか続かないことに僕は焦りを感じる。
 もともと忘れっぽい性質たちなので、人との会話が得意ではない。
 柱の中にも同い年の子供はいないし、炭治郎たちはいつもかまぼこ隊で話しているから、いきなり自分が間に割り込むのも気が引ける。

 
 宵宮さんは、かまぼこ隊と一緒に行動してはいるけれど……。
 メンバーと一対一で話しているのはあまり見たことがない。
 何だか自分と同じものを感じた。だから仲良くなりたい。
 しかしどうすればいいか分からない。


 無一郎「……(そうだ。さっきやったゲームとか、そういう遊びをやったりとかはどうだろう)」
 有為「わぁ、綺麗な星空! 確かオリオン座ですよね。こう、砂時計みたいな形の」

 月明かりに照らされた、彼女の横顔につい見とれてしまう自分がいる。
 精神年齢は高いものの、そこを取ればただの年相応の女の子だった。


 無一郎「……ねえ、ゲームをしない?」
 有為「? はい、いいですよ。どんなゲームですか?」
 無一郎「…………炙りカルビゲーム」


 最初の人が『炙りカルビ』、次の人が『炙りカルビ+1』と交互に言っていく早口ゲームだ。
 もちろん、噛んだら負け。


 無一郎「……これに、負けた人が罰ゲームをつけて……」
 有為「……なるほど。罰ゲームとはどのようなものでしょうか」
 無一郎「…………た、例えば、宵宮さんが負けたら………」


 さっき一瞬、胸の中に浮かんでは消えたセリフ。
 これを今、口にしていいのだろうか。
 横目でチラリと宵宮さんを見つめる。彼女は怪訝な顔つきのまま僕を見つめた。



 無一郎「…………宵宮さんが負けたら、僕のことを『むいくん』……って言うのはどう?」
 有為「……………ふぁっ??///」


 瞬間、これまでずっと平静だった宵宮さんの肩が跳ね、顔にサッと朱が刺した。
 僕も自分で言ってて恥ずかしくなり、慌てて下を向く。


 無一郎「く、胡桃沢さんでさえそう呼んでるのに、君が呼べないってことはないよ……ね?」
 有為「か、か、か、簡単に、い、言わないでください!!」


 人が相手を呼び捨てで言うのにどれほど苦労してると思いますか!?と続ける宵宮さん。
 興奮しているのか、早口でまくしたてる。


 有為「そ、それに、そっちだけ罰ゲームを決めるのは不公平ですよっ」
 無一郎「…………なら君も決めれば? 罰ゲーム」
 有為「いいでしょう!! じゃあ時透くんが負ければ、………その……」



 有為「ボクのことを『有為ちゃん』と呼んでください…………!!」
 無一郎「…………うっ!?? ///」


 
 人が相手を呼び捨てするのにどれほど苦労してるかだって?
 こっちのセリフだよ。たかが一歳二歳年下の女の子も名前で呼べないし。
 でも、だからって、そんな、人格ごと支配されるようなのは………。



 有為「これが成立しなければそっちだけ有利です。さあ、呑みますか!?」
 無一郎「…………う゛……………。わ、分かったよ……」


 さすが……。



 有為「じゃあ先行はゆずります。どうぞ」
 無一郎「…………せーのっ、炙りカルビ」
 有為「炙りカルビ、炙りカルビ(ふぅ)」
 無一郎「…………あぶりかるび、あぶ…りかるび、あぶりかるびっ(危なっ)」
 有為「ふぅ――。炙りカルビ炙りカルビ炙りカルビ炙りカルビっ」


 無一郎「……(強っ!?)あぶりかるび、あぶりかぶりっ」
 有為「……おや?」
 無一郎「……………な、」

 有為「噛んだのは時透くんですよね? 明らかに」
 無一郎「……………さ、さあ………」
 有為「じゃあ、罰ゲーム、行ってもらえますか」


 な、なんで宵宮さんそんなに滑舌いいの……?
 陰陽師の呪文を毎日唱えてるから??
 さらさらと言ってのける彼女の態度に、僕の背中から冷たい汗が流れ落ちた。



 無一郎「……………罰ゲームって、なんだったっけ……」
 有為「とぼけないでください。ボクのことをチャン付で呼ぶことです」
 無一郎「……………え―――っと」
 有為「もしかして恥ずかしいんですか? 自分で乗ったのに怖気づくなんて……」


 無一郎「う、うるさぁい!! い、言うもん!!」
 有為「どうぞ?」
 無一郎「…………………う………」
 有為「う?」


 無一郎「う、有為ちゃん…………」
 有為「はいっ」


 僕が照れながらも必死に言葉を絞り出す一方で、名前を呼ばれた宵宮さ……いや有為ちゃんはニッコリと満面の笑みを向けた。
 その笑顔がとても眩しくて、明るくて、可愛いなと僕は思った。
 そして、自分の本音をここまで引きずり出せる宵……有為ちゃんの存在に内心ビックリもした。



 有為「誘ってくれてありがとう……むいくん」
 無一郎「………え?」


 今、聞き間違いでなければ、はっきりと『むいくん』と……。
 思わずバッと振り向くと、有為ちゃんは恥ずかしそうにはにかんだ。
 星空をバックに、小さな少女は力なく笑った。



 有為「わたし……今とても楽しいです」




『ボク』ではなく『わたし』と自分を呼んだ彼女の真っ直ぐな言葉が、僕の胸にしみこんでいった。
 思わず泣きそうになって下を向いた僕の前を、彼女は背中を伸ばして歩き始める。
 宵宮有為という人間の記憶の片隅に、僕と言う存在を映し出せたこと、それがとても嬉しかった。




 ******


(え、めっちゃいい感じやんういむい……試しに書いてみたけど想像以上!! v( ̄Д ̄)v イエイ)

 





 


 
 

Re: ろくきせ恋愛手帖 【第4話EP3更新】 ( No.110 )
日時: 2021/03/20 09:12
名前: むう (ID: mkn9uRs/)

 いや別に恋愛ジャンルが得意とかそういうわけではないですよ。
 まぁその、日常がテーマなので時々こういう甘酸っぱいのもいれたいなぁってことで。
 あとタイトルに恋愛って書いてるのにずっと重い話が続いてたじゃないですか。
 だからまぁいいかなってことなんですよ。(謎の弁解)

 苦手な人はブラウザバック推奨。
 

 さあ、このシーンは!! むうが顔が爆発するのを覚悟で書いたのだ!!
 準備OKですか?? さあ、どうぞ!
 ******


 〈仁乃睦チーム 睦彦side〉


 時々見る夢がある。
 その夢にはいつも、あの時のアイツが出てきて、何度も何度も俺を蹴る。
 なんでお前だけ幸せになって、なんで自分だけ不幸になって。
 夢が覚めるまで、ずっと、ずっと、もう死んだアイツが自分を叩く夢を。


 その夢には胡桃沢はいつも出てこない。
 あくまでその夢の登場人物は、俺とアイツの二人だけで。
 俺が望んでいるのは別れのシーンなんかじゃなくて、続くはずだった未来なのに。


 なんでだろう。もう諦めも覚悟も決まったのに、あの時の記憶が胸の中から溢れ出す。
 それも決まって、アイツと出会った頃の話。
 アイツと別れる直前の、まだ未来が続くと思っていたころの出来事。
 それがなんどもフラッシュバックして、頭の中から逃げ去ってくれない。

 提灯のほのかな灯りが闇を照らす中、右手は横の少女の手を掴んでいるのに。
 今この場において、俺と一緒に過ごしているのは胡桃沢だけなのに。
 俺の左手は、なぜかもういない誰かを探していた。



 仁乃「むっくん? ……どうしたの?」
 睦彦「え? ……あぁ。………ごめん。ちょっと、疲れちゃって」
 仁乃「無理もないよ。こんなに人が多いんだもん。休む?」
 睦彦「………いや。大丈夫」


 好物のわらび餅が入った木箱を小脇にかかえる胡桃沢が、心配そうな表情で黙りこむ。
 自分の中の黒い靄が、増えていく感じがして、俺は彼女の左手を強く握りしめた。


 仁乃「痛っ」
 睦彦「………あ、ごめん……」
 仁乃「どうしたの? なんでそんな、苦しそうなの? なにかあったの?」


 満たされているほど、将来が不安になるのはなんでだろうか。
 欲しいものもちゃんとあって、自分の存在や才能を認めてくれる人もいるのに。
 心の中に、急に冷たい風が吹くことがあるのは、なんでだろう。


 睦彦「………あの時も、今日みたいな雪が降ってたなぁって」
 仁乃「あの時?」
 睦彦「……………あの時はまだ三人だったよな」


 俺が何を伝えようとしているのかようやくわかり、胡桃沢は下唇を軽くかんだ。
 上を向く。分厚い雲から白い粉雪が、ひらひらと落ちていった。


 睦彦「……夢を見るんだよ。アイツがいなくなる夢」
 仁乃「…………」
 睦彦「……なぁ……。いいのかな、こんな………俺だけ、こんな………幸せになって……」


 アイツだって死にたくて死んだわけじゃねぇんだよ。
 殴りたくてオレを殴ったわけじゃねぇんだ。
 あの時は分かったつもりになってたけど、今は違うんだ。


 仁乃「………違うよ。むっくんだけが幸せで、他の皆が不幸せになってるなんて間違いだよ」
 睦彦「……で、でも俺は………だって……っ」
 仁乃「大丈夫だよ。嬉しかったって言ってたもん。私たちと一緒に居られて、良かったって」


 鬼殺隊に入隊するうえで、人の死に際に応対することは避けて通れないと思っていた。
 まだ当時13だった俺でも、それくらいの覚悟はしてきたつもりだった。

 でも。でもさ。
 鬼に食われて死んだんじゃない。
 病気になって死んだんだんなら、それはもう、どうしようもないじゃねぇか。


 睦彦「……アイツ、言ったんだろ!? 
   お前に好きだって、言ったんだろ!? 俺が横取りしたってことだろ!? 
   アイツの気持ちも知らずに! 勝手に自分の都合だけ……っ」


 つい三日前、宵宮の家で年越しをしていた時、「話がある」と胡桃沢に連れ出された。
 そこで打ち明けられたのは、彼女が俺に隠していた、あの日のアイツとの会話。
 なんで隠していたのか、何で打ち明けなかったのか、今ならわかる。けど、けど……!


 睦彦「……何で俺だけ……っ。
    色んな人がいるんだよ。皆が大切な人を失って、前向きになってるのに俺はまだ……」



 馬鹿だ俺は。あれだけ偉そうにタンカを切っておいて、あれだけ偉そうな態度を取っておいて。
 本当は、あれもこれも全部、自分の弱さを守るためで。
 そのくせ大事なことは後になって気づくし、無意識に他人に気を使わせて。


 

 睦彦「……あの日さ。胡桃沢は俺に言ったよな。『君の事が好き』って」
 仁乃「…………うん」
 睦彦「…………失礼だと思うけどさ。俺本当は今も疑ってるんだよ」


 
 胡桃沢の表情に迷いが生じる。泣きだしそうな瞳。きつく結ばれた口。震えている手。
 そんな顔をさせてしまったことに後悔しつつも、俺は早口でまくしたてる。


 睦彦「……胡桃沢は、本当に俺が好きなのか!? ほ、本当に俺でいいのか?」
 仁乃「むっくんがいいの!!」
 睦彦「…………なんで!?? 俺なんかのどこが――」
 仁乃「なんでも!! 私は、むっくんのことが好きなのっ!!」

 涙をいっぱいにためた目で、目の前の少女は怒鳴る。
 小さな体全身で怒りを表現して。

 睦彦「…………だって、俺はアイツを……それに、臆病だし、全然……」
 仁乃「むっくんは強いしっ、優しいしっ!! 私が、そう思いたいのっ!!」


 人の好意を、今俺は充分すぎるくらいに踏みにじっている。
 最低なことをしたと、痛いほどわかっている。
 なのに、その言葉だけではどうしても納得できない自分がいた。



 睦彦「そんなの、まやかしだ!!」
 仁乃「違う!! 私はっ、むっくんに嘘を言ったことは一度もないっ」
 睦彦「俺なんか! どこも!! お前と吊り合えない!!」
 仁乃「そんなことない! ………そんなことない……………っ」


 両目からとめどなく流れる涙を乱暴に腕で拭って、胡桃沢は真っ直ぐにこっちを見つめる。
 その透き通った瞳に、俺まで泣きそうになってしまい、慌てて涙をこらえた。



 仁乃「なんで、はこっちが聞きたいよ。なんで疑うの? 何で信じてくれないの?」
 睦彦「……………信じたいけど、信じるのが、………怖い」
 仁乃「じゃあ私が好きって言うのも嘘なの? あの時の言葉は冗談なの??」
 睦彦「………違う!! 俺は、……ずっと、お前のことが好きだ!!」


 好きなのに、好きでたまらないのに、お前を信じるのをあの日の記憶が許してくれないんだ。
 そりゃあ俺だってお前を信じたい。
 だけど、そうしてしまえば、アイツの気持ちを踏みにじりそうで……。


 仁乃「なら……信じてくれても、いいじゃん……。
    辛い事、今までいろいろあったけど、
    むっくんが頑張っているのを見て、私も頑張れたんだから。
    ずっと一緒にいたもん。今更、むっくんの弱いとこを悪く言ったりしない」


 睦彦「………アイツは俺を許さない」
 仁乃「そんなことない。……そんなことないよ。だって、むっくんのこと、大好きだったよ」
 睦彦「………怖い。ずっと怖い。家族を失った。アイツを失った。お前まで鬼化した……」
 仁乃「………あれは、………あれは……」


 どうすればいいのか分からない。何を信じていいかも、何が目標だったのかも分からない。
 これでいいのか? こんな俺をアイツは認めてくれるのか? 
 こんなにも過去にこだわっている俺を、本当にアイツは許してくれたのか?



 睦彦「………なぁ…………俺、誰を信じればいい……?」



 胡桃沢は何も言わない。ただじっと、黙って話を聞いていた。
 そして何かを呟き、そっと距離を詰めてくる。
 びっくりして一歩後ろに下がろうとする俺の手首をつかんで手元に引き寄せた胡桃沢は、強引に顔を近づけてきた。




 睦彦「………え」
 仁乃「……………女の子に二度もこんなことやらせるなんて、ビンタ百回じゃ足りないからね」



 呆れたように彼女が笑い、直後。
 唇に、甘いものが触れた。


 


  ちゅっ




 睦彦「…………………!???」
 仁乃「……………………………ん」



 至近距離でかかる彼女の髪・息を感じ、俺の中の何かが爆発した。
 数秒後、ゆっくりと離れていく彼女の身体。
 思わず自分の頬に触れると、平温をとっくに超えているのが分かる。

 そして、どんなに恥ずかしいシーンでも平静としていた胡桃沢の頬も、ほんのりと赤かった。
 

 睦彦「……………(え?? こ、これって………………うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!??)」
 仁乃「…………むっくんの、ドアホっ(ボソッ)」

 仁乃「ブンッッ(渾身のキック)」
 睦彦「いっだだだだだだだ! そこ義足んとこ!! いだだだ!!」

 
 仁乃「このあんぽんたん!! バーカバーカッッ ざまあみろバーカッッ」
 睦彦「おまっ」
 仁乃「意識させてやったぞバーカッッ もともと『信じれない』とか言う権利ないんだよ!!」
 睦彦「やめッ、殴んな! やめろ!!」


 何度も何度も細い右足を突き出してくる彼女の攻撃を避けていた俺は、彼女の髪がしっとりと濡れていることに気づいた。
 泣きすぎて目のまわりが赤くはれていることも。


 仁乃「むっくんのバカッ 馬鹿ッ むっくんのバカチン!」
 睦彦「……………ごめん」
 仁乃「何かあったら頼れって言ってるのに! 男の子っていつもこうなんだから!!」
 睦彦「……………ごめんってば」


 睦彦「……………ありがと。胡桃沢」
 仁乃「今度同じこと言ったら許さな―――」





 『ばかやろー』








 二人「(バッと振り向いて)」
 仁乃「……………今、誰かが横通らなかった?」
 睦彦「……………さあな。寂しくなってこっちに降りて来たんじゃねえのか」
 仁乃「あはははははは、あははははははっ」
 睦彦「……………ふふっ あはははははは」



 
 俺は弱いです。憶病で、泣き虫で、どうしようもない人間です。
 人に誇れることなどあまりないのかもしれないけれど、そんな俺を好きだと思ってくれる人がちゃんといます。
 
 
 だから、きっと大丈夫です。
 今は闇から出られないかも知れないけど、幸せの芽を摘んでいけば、きっと出口に辿り着ける。
 だから、負けないでください。自分の力を信じて下さい。横にいる人の力を信じて下さい。
 

 そうすればきっと、何かが変わるはずだから。
 


 

 

 


Re: ろくきせ恋愛手帖 【第4話EP3更新】 ( No.111 )
日時: 2021/02/23 10:31
名前: むう (ID: mkn9uRs/)

 〈一年ズチーム 野薔薇side〉


 さあお祭りよお祭り!
 最初はこんなクソ田舎に飛ばされて、正直辟易へきえきしてたけど。
 こんなに美味しい屋台に辿り着けるなら捨てたもんじゃないわ! 大正万歳!
 なのに……なのに………っ。

 野薔薇「どーして寿司屋スルーすんのよっ!」
 悠仁「どうしてって、釘崎お前みんなと食べたいとか思わねえの?」
 野薔薇「はぁ? あとの面子は自由行動でしょ? なら私たちが先食べたっていいじゃない」

 五条「分かってないねぇ。花火を見ながら大勢で食べるお寿司はいいものだよ? ね恵」
 伏黒「まぁ、皆で食べるのには同意します。金とか分割払いすればいいし」

 野薔薇「あー……あー、もうわかったわよ! なら、違うとこ行きましょ! 装飾店とか!」
 悠仁「さっき行ったよ!?」
 野薔薇「この屋台にはあと四店舗あんだよ」
 悠仁「お前の買い物に付き合わされるオレらの気持ち分かる!?」

 心底嫌そうな顔で虎杖が言うので、私はギロリと彼を睨み返す。

 女の子にとってオシャレっていうのは大事なもんなのよ!
 ただでさえ普段は任務がいっぱいで滅多に買い物に行けないし、今は絶好のチャンスなのよ!
 大正時代の、和風な感じのアクセサリーを買いたいんだよ私は!!


 しのぶ「あら、野薔薇さん」
 五条「お、胡蝶さんと冨岡くん。奇遇だね」

 と、後ろからしのぶさんと義勇さんが駆け寄ってくる。
 しのぶさんの手には、沢山の紙袋があった。
 柱は給料が無限にあるらしいから、買いたい放題食べたい放題。いいなぁ。


 伏黒「二人もこの辺を回られているんですか」
 しのぶ「はい。一通り目を通して、屋敷で切れていた調味料を買ったりしていました」
 義勇「お前たちは何をしていたんだ」

 悠仁「フツーにぶらぶらと散歩。途中で買い食いしたりしながら楽しんでた!」
 しのぶ「そうですか。それは良かったです(ニッコリ)」


 しのぶさんの笑顔には、周りの人を和ませる何かがある。
 さっきまで子供みたいに反抗的だった虎杖のテンションが一気にあがった。

 そのことに納得いかないものを感じつつ、私は男子二人に「行くわよ」と声をかけようとして。
 突如、この商店街に立ち込めている《得体のしれない空気》に、足を止めた。


 伏黒「どうした、釘崎」
 五条「? お腹でも痛い? まぁずっと歩き詰めだったしちょっと休――」
 野薔薇「……………………(くるりと辺りを見回し)」


 なに、この変なカンジ。
 辺りを見回すも、何も変わったところはない。
 さっきと変わらず、多数の客が石造りの歩道をせわしなく歩き回っているだけだ。
 なのになんだろう、このザワザワした感じは。なにか、良くない事が起きそうな予感は。


 しのぶ「どうかしましたか?」
 野薔薇「………………………何か…………いる」
 義勇「? 何もいないが」


 野薔薇「違うの、こう、何て言うのかな、任務で特級呪霊に会った時みたいな……」
 義勇「鬼の気配かっ!?(きょろきょろ)」


 鬼なのか分からない。この時代に呪いが存在しなかった、という確信もない。
 一同は警戒を強め、全神経を集中させる。
 
 この時の為に武器を持っていてよかった。
 ………鬼って呪いで払えるのか?
 

 五条「鬼!? つまり鬼がこんなかにいるってこと?」
 悠仁「ならかなり危ないんじゃね!? 全員鬼の餌食ってことだよね?」




 ??「その通り」
 一同「!???(バッと振り向いて)」



 突然話に割り込んできた知らない人間に、私たちは揃って振り向いた。
 ほどんど音もなく背後に迫ってきたのは、十二・十三歳くらいの背丈の人間だった。
 紫色の着物を着て、長い髪は頭のてっぺんで結んでいる。
 幼い顔立ちをしていて、男なのか女なのかは分からない。



 ただ、その口元には鋭利な牙が覗いていた。



 義勇「警戒を怠るな。子供の姿をしていようがいまいが、人を食らうバケモノだ」
 ??「まあ待ちなよ。まず名乗るくらいはしてもいいだろう?」


 鬼はくつくつと喉を鳴らして笑う。牙さえなければ、若干おませな子供のようだった。
 しかし義勇さんの言葉を受け、私は右手に釘を構えたまま腰を深く落とす。


 春俚「ぼくは春俚しゅんり。元十二鬼月の下弦の壱として戦った経験のある鬼だ」
 一同「十二鬼月っ!??」


 確か十二鬼月っていうのは、この世界のラスボスである鬼舞辻無惨が作った鬼のグループで、
 上弦が壱から陸、同じく下弦も壱から陸の十二体の鬼で構成されてるって話よね。
 元下弦の壱ってことは、なかなかの強者!?

 野薔薇「ふーん。そんでそんなアンタが私らに何の用? ていうかアンタ戦えんの?」
 五条「はは、上手いこというネ」

 春俚「口の悪い人だね。まあ聞きなよ。
    ぼくは数百年前は下弦の壱として戦ってたけど、上司に見放されて数字を剥奪された。
    ぼくみたいな奴らは他にもいて、どうにかして数字を奪還したいと思ってたんだ」


 
 春俚「そこで、そのような鬼を六人集めて『睦月ノ会』なるモノを作った。リーダーはぼく」
 しのぶ「むつきのかい?」
 春俚「そう。ぼくは今日その会員と一緒に来たんだよ。今、君らの仲間とやってるだろうね」


 悠仁「!! マジかよ!」
 春俚「どうする? ぼくは優しいから数分間待ってあげてもいいんだけ――」





 ??「蹴散らせ黒杖代!!」







  ビュっっっ
  ビカッッッッッ




 
 春俚「っ!?」
 つかさ「チッ。よけられちった」
 

 野薔薇「特級呪霊チーム!!」
 ミツバ「放送室チーム!!  良かったよ間に合って」



 しのぶ「………どうしてここが分かったんですか?」
 つかさ「んぁ? なんか、君らと鬼が話してるの見て、それで誰か戦闘に出るか決めてたよ」
 メイ「この人と3番と私は戦えるので、あとはあのコンビに情報共有を頼みました」


 悠仁「さすがシジマさん仕事が早ぇ!」
 メイ「ありがとうございますぅ(ニッコリ)」



 つまり、あの夏彦っていう人と桜さんが残りのチームに状況を伝えに行っている。
 他のチームでも、この春俚っていう鬼の仲間と戦いになる可能性があるって事よね。
 睦月ノ会という集団の指示権を得ているのは春俚だから……。


 野薔薇「……つまりこっちはコイツを倒せばいいわけね」
 五条「ま、この僕とやり合おうなんて無謀すぎる話だけど」
 しのぶ「………このお祭りが何の問題もなく遂行されることが目標です。行きますよ皆さん!」



 一同「オー――!」



 ネクスト→戦闘開始☆次回もお楽しみに!


  

Re: ろくきせ恋愛手帖 【第4話EP3更新】 ( No.112 )
日時: 2021/02/23 10:36
名前: むう (ID: mkn9uRs/)

 〈桜&夏彦チーム 桜side〉

 七不思議四番・シジマメイの助言を受け、私こと七峰桜と日向夏彦は、他のチームのメンバーを探すべく舗装されていない歩道を必死で走っている。
 ほんとうは、あの危なっかしい主人(つかさ)を見てあげたいのだけど、今はそれどころじゃない。


 桜「夏彦、まずは宵宮さんと合流しましょう。あの子の念話術に頼れば手間が省けるわ」
 夏彦「(だだだ)そっか、さすがお嬢! 有為ちゃんどっち行ったっけ?」
 桜「確か向こうの揚げ餅屋に時透君と行ってたわ。そっちお願い!(だだだ)」
 夏彦「OK☆お嬢はどうするんですか? オレと一緒に来ます?」


 横を走る夏彦の気楽そうな返事に、私は肩眉を下げた。
 この男、緊張感というものをちゃんと理解しているのかしら。
 こうものんびりとされると、こっちがかなり心配なのだけど。

 桜「聞けば仁乃さんは視力がいいらしいわ。私は彼女を探す」
 夏彦「分かりました。ということで行ってまいります~(だだだだだだだだだだ)」
 桜「気を付けて夏彦。じゃああとで会いましょう(だだだだ)」
 夏彦「ラジャー!」




〈ぜんねずチーム&宇髄×煉獄チームwithもっけ 善逸side〉


 善逸「何でこうなった!?? 俺と! 禰豆子ちゃんの! 絶好のチャンスを!! 許せん!!」
 禰豆子「ムームー!!」
 ??「怒る相手は、深柚しゆちゃんではないのDETH(です)……シクシクですねぇ」

 宇髄「これまた地味に変な鬼が出たな。なあ煉獄さんよォ」
 煉獄「うむ! 今までに出会ったことのない鬼だが、今まで通りやりたいと思う!」
 宇髄「なんでもあと五人いるらしいじゃねぇか。そっちはアイツらが上手くやってんだろ」

 禰豆子「ムー!」
 もっけ「おにはそとー」「ふくはうちー」「もっけもうちー」

 善逸「ででででででも? 炭治郎や柱ならまだしも、お、俺が戦えるわけないしぁぁ死ぬ!!」
 ??「あらあら、そちらの兄さんは困ったちゃんなんですかぁ。こりゃオツキアイ無理かなぁ」
 善逸「それでさっきからずっと変な口調のアンタは誰なのよ!?? 自己紹介大切よ!?」


 深柚「深柚ちゃんですかぁ? しゆといいます。弱いので痛いのやめてね? 
    シュン兄に頼まれて出ただけですのでぇ」

 煉獄「シュン兄?」
 深柚「あぁ、リーダーの春俚っつー、口うるさい生意気な野郎DETH♪」
 もっけ「じんかくかわったぞ」「こいつ ちゅうにびょう」「いたい」
 深柚「お黙りくださいねぇ」


 宇髄「コイツと喋る時間がもったいねぇな。さっさと派手にやっちまおうぜ」
 禰豆子「ムー!」
 善逸「俺の禰豆子ちゃんがやる気だから俺も頑張るぅぅぅ!!」


 深柚「…………人間風情が。ちゃぁんと受け止めて下さいねぇ。血鬼術・花蛇雷かじゃくらい



 
 深柚がそう唱えたとたん、彼女の手のひらから、五つの頭を持った大型のヘビが現れた。
 どうやら、彼女の血を媒介に作られてあるようだ。
 鋭利な牙がびっしり生えた口の奥から、毒が入った器官が覗いた。


 蛇「シャ―――――ッッ」
 善逸「ギャぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ蛇いいいいいいいい!!!!」
 深柚「あらいい反応♪ ということでアイツらをパックンしちゃいましょう!」
 蛇「シャァァァァァァァァァァァァ(牙をむき出して四人の方へ)」



 宇髄「音の呼吸・壱ノ型 轟!!(ゴォンッ)」
 蛇「(シュッ)」
 宇髄「さすがハ虫類……避けるのが早ぇな。伊黒がいたら良かったがしょうがねぇ。もう一回!」


 煉獄「炎の呼吸・弐ノ型 昇り炎天!!(ブンッッ)」
 蛇「シャァァァァァァァァァァァァッッ(煉獄の喉元へ)」


 善逸「雷の呼吸・壱ノ型 霹靂一閃!!(ビュンッッ)」
 蛇「(ビシャッッ)」
 善逸「大丈夫ですが煉獄さん! この蛇中々斬れなくて怖いですねぇぇ!!」

 煉獄「眠ることなく一撃を出せているな! いい成長だ我妻少年!」
 善逸「うふふ、そんなこと……」
 蛇「シャァァァァァァァァァァァァ」
 善逸「ないけどぉってうわっ!(全力回避)」

 禰豆子「ムッ! 血鬼術・爆血!!」
 蛇「ギャァァァァァァァァァァァァッッ」


 宇髄「おしッ。派手に燃えたな! けっこう弱っちいじゃねえか。安心したぜ」
 煉獄「いやまだだ……!」
 善逸「嘘!?」


 炎の中から何かがこちらへと迫ってくる。
 それは、さっき禰豆子ちゃんが唐揚げにしたはずの、花蛇雷と呼ばれていた五頭蛇だった。
 生きてるんですけどぉぉおおおお!?


 深柚「お兄さんたちは、フェニックスっていう不死鳥はアイ・ノウですか?」
 禰豆子「フンフン(知らないよ)」
 宇髄「なんだ? 不死鳥? 派手な感じはするが聞いたことはねえ」

 深柚「西洋の伝説の鳥でして……一回死ぬとゴォって燃えて、また生き返るんですぅ」
 善逸「うっそ不死身じゃんッ」
 もっけ「からあげができぬ」「なべにもできぬ」「やむなしやむなし」


 深柚「深柚ちゃん、すごぉく興味持って、うちの子にも採用してみたのよねー」
 煉獄「採用!? まさかこの蛇は、竈門禰豆子の血鬼術との相性は……」
 深柚「ハイ。燃えてもまた復活するので、ほとんどその鬼のお姉ちゃんはヒツヨウないのヨ」

 禰豆子「ムー………」
 善逸「禰豆子ちゃんが落ち込んでるぅぅぅ! 大丈夫! こんな蛇俺が倒してあげるから!」
 禰豆子「ム?」
 善逸「本当です!! 多分本当……5割……いや3割は……いや2割は自分でできるよ!!」


 煉獄「志は高く持て少年! 私たちも全力で協力しよう!」
 禰豆子「ムームー!」
 深柚「……はァ。人間って変なもんですねー。とっとと終わらせてしまおー」


 ネクスト→にのむつ&いぐみつコンビ目線。次回もお楽しみに!
 
 

Re: ろくきせ恋愛手帖 【第4話EP3更新】 ( No.113 )
日時: 2021/02/27 18:01
名前: むう (ID: mkn9uRs/)

 【大正コソコソ噂話】

 Q,オリキャラたちがもし現代で授業を受けたら

 睦彦→理系より。数学の第一問題の正答率が高い。国語と英語が壊滅的
 仁乃→国語が得意。英語や社会などの暗記に強い。数学と理科が苦手
 有為→全体的に得意。古典と科学に強い。数学の立体図形によくとまどうタイプ
 亜門→全体的に得意。数学が得意だが一問ごとに時間をかける。社会が一番好き。


 ****


 〈蜜璃side〉


 これってどういうことなのかしら。
 私はきょろきょろと辺りを見回し、一回大きく深呼吸をして心を落ち着かせる。


 辺りは一面、闇に包まれていて、前も後ろも、自分が今どこにいるのかも分からない。
 さっきまでは伊黒さんとお祭りを回ってたのに、気が付けばこんな変な場所へ閉じ込められた。

 これは敵からの奇襲なのかしら? 伊黒さんもこの場所のどこかにいるの??
 それで敵はどこ?? まさか私を閉じ込めて終わりじゃないでしょうね?


 蜜璃「も~~、出るなら出てきてよぉ!」


 と怒鳴って見るが返事はない。
 深淵の中に、私の言葉がこだまして帰ってくるだけだ。
 いよいよ心細くなってきて、背中の冷たい温度をじかに感じるようになってきた。


 もうどれくらいここにいるのだろう。そもそもこれは鬼の血鬼術なの?
 どうやったら出られるのかしら。取りあえず技でも出してみる??

 ああ、ここに冨岡さんやしのぶちゃんがいればよかったのに。
 二人はいつも冷静だから、きっといいアイディアを考えてくれる……って駄目よダメ!
 恋柱たるもの、すぐに他人に助けを求めちゃダメよ。考えなきゃ!



 蜜璃「………よしっ。取りあえず空間を把握することよね! 技を出してみるわ!」


 私は手探りでベルトに挟んでいる刀の鞘に手を伸ばし、刀身を抜いて息を吐く。
 大丈夫、大丈夫よ。今まで何とかなってきたんだから大丈夫!
 実行あるのみ、当たって砕けろよ!



 蜜璃「恋の呼吸・壱ノ型 初恋のわななき!(ブンッッ)」



 右腕を大きく振りかぶって技を繰り出す。
 剣は大きく軌道を描き、固い陶器のような何かに当たった。
 恐らく壺かなにかが置いてあったのかしら。ガチャンッという快音が響き渡った。



 おそるおそる一歩前に出てみると、靴裏に破片のようなものの感触。
 こんな闇の中、壺があるのもおかしな話ね。
 収集でもしているのかしら?



 蜜璃「はぁ……伊黒さん大丈夫かしら……。あと敵どこよぉ!」
 ??「うわっっっっ!??」


 すぐ耳元で悲鳴が聞こえ、私は「ぎゃああああ!?」と悲鳴を上げて飛び上がる。
 なになになになになに!??

 バクバクと高鳴る心臓を必死に落ち着かせつつ、目を凝らして横を見やると……。
 ほんのチラッと、青緑色の袴が視界に見えた。
 確かあの服は………。


 蜜璃「む、睦彦くん、よね? そ、そこにいるのっ??」
 睦彦「ひゃいっ?? ……ハァーハァー……お、俺っス、睦彦です」


 私の悲鳴に、睦彦くんが声を裏返らせる。
 どうやらすぐ横に彼がいるようだ。
 しいんと静寂に包まれた闇の世界で、私と彼の息遣いだけが絶えず聞こえている。



 蜜璃「に、仁乃ちゃんと一緒にいなかったかしら」
 睦彦「あ、っと、なんか気が付いたらここにいて、胡桃沢とはぐれちゃって……甘露寺さんは?」
 蜜璃「わ、私も……伊黒さんとはぐれちゃった……」


 伊黒さんも私がいなくなってきっと心配しているわよね。
 彼の心情を想像して、私は肩を落とす。
 睦彦くんは一瞬押し黙り、直後さっきまでとは打って変わった明るい調子で言った。


 睦彦「でも、甘露寺さんがいてくれてすっげぇ安心したっつーか……気が楽になりました」
 蜜璃「う、うん、私も!」
 睦彦「……でもすみません、俺がいたところで結局なんもできねぇっすよね……」


 今度は睦彦くんが肩を落とす(落としたと思わせるほど静かになっちゃった)。
 確かにこんなにも視界が黒に閉ざされてたら、どうすればいいか分かんないものね……。
 明かりとか、何も持ってないし。


 睦彦「炭治郎とか善逸だったら、嗅覚や聴覚でなんとかできるかもしれねえけど、生憎俺五感が特別優れてるっていうわけじゃないから……」
 蜜璃「大丈夫よ、それは私も一緒なんだしっ。ね!」


 剣を振った感じ、奥行きはかなり広い様子。
 床には壺らしきものが置かれている。地面は木の板で、体感温度が低いからきっと建物の中?
 うーん………。



 睦彦「せめて宵宮や花子たちが来てくれれば、何か変わるかもしれないけど……」
 有為「呼びましたか?」
 睦彦「っぎゃああああああああああ!??」


 二回目の絶叫。いい加減彼が可哀そうに思えてくる。
 不意打ちとか苦手って言ってたわね。意外と繊細なところもあるし、大丈夫かしら……。



 蜜璃「有為ちゃん? いたの??」
 有為「桜さんが先ほど情報を教えて下さって、転移術で加勢に来ました」
 睦彦「っ。お、お前ぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!! いるならさっさと言えよ!!」


 心強い助っ人の登場に、睦彦くんの中の気持ちの糸が一気に緩んだ。
 涙混じりの声で睦彦くんが歓声を上げる。
 有為ちゃんが来てくれればもう大丈夫だとでも言うように。


 有為「ここは確かに鬼の血鬼術で作られた空間のようですね。聞くところによると、元下弦の鬼たちがこの一連の事件を率いているそうです」
 蜜璃「やっぱり鬼の仕業だったのね。許さないわ! で、でもここからどう脱出する?」


 有為「それはですねぇ………」



 有為ちゃんが自信気にニヤリと笑い、錫杖を掲げて私たちを振り返った。



 



 



 

Re: ろくきせ恋愛手帖 【第4話EP3更新】 ( No.114 )
日時: 2021/03/18 17:13
名前: むう (ID: mkn9uRs/)

 更新遅くなってごめんなさい。
 最近スランプに入っちゃって……。課題はバッチリ終わったんですが。申し訳ありません。
 不定期更新ですが頑張りますのでよろしくです。

 ****

 〈花寧々 寧々side〉


 ………ん?
 不意に視界が狭まり、私は無意識的に目をこする。
 ちょうど、向かい風が強くなってきたところだし、砂でも入ったのかしら。

 そしてもう一度目を開けて………絶句する。
 辺り一面、墨汁をこぼしたかのように闇闇闇。自分の顔すらまともにみえない暗がりの中に、一瞬のうちに迷い込んでしまっていることに困惑する。


 寧々「え………? な、なんで急に……。さっきまでお祭りだったのに……」
 花子「どうやら何者かの奇襲のようだね。ヤシロ、怪我はない?」

 すぐ横から響く花子くんの切迫した声。
 良かった、閉じ込められたのは一人じゃないみたい。

 寧々「うん、私は大丈夫だけど……。ど、どうする?」
 花子「うーん……あ、そうだ少年は?!」

 光くん! お祓い屋の家系の彼なら、きっとこの状況を打破できる策を持っているはずよね!
 沈んでいた気持ちが一気に明るくなり、その勢いのまま私は声を張り上げた。


 寧々「こうく―――――――ん!! いたら返事して――――――!」
 花子「しょー――ねー――――ん!!」


 二人でやまびこのように叫んでみたけれど。
「こうくーん こうくーん こうくーん……」と自分の声がこだまするだけで、返事はなかった。
 
 もしかしたら、光くんは違う敵の奇襲で、どこかに飛ばされて行ったのかもしれない。
 そしてその説を採用するならば、敵は一人ではないってことで……。
 この大正時代、こんなことができる人物は鬼ってことでいいのかしら? ああそうよね……六新鬼月がいなくなっただけでまだ鬼はいるもの……。


 あぁ、どうしよう!?
 助けを求めようと花子くんの方を振り返るも、彼は白杖代を宙に浮かせながら首を振るだけだった。


 と。
 タタタタタタっっと後ろの方から軽快な足音が聞こえて来た。
 運動靴でもない、スリッパでもない……スッスッという薄っぺらい何かが地面をこすれる音は、どんどんこちらに近づいてくる。

 敵!? 
 私は思わず肩に力を入れ。


 仁乃「はぁぁぁぁぁぁ良かったよおおぉぉぉ」
 寧々「………仁乃ちゃん!?」


 聞きなれた、澄んだ高い声に声を裏返らせた。
 いつも明るく、不安なんて吹き飛ばしてしまうかのように笑顔を絶やさない少女が、今では左右を往復して歩いている。オロオロと落ち着きがない。


 花子「胡桃沢!! あぁ良かった、知ってる人がいた……」
 仁乃「もう……もうね、何が何だか分かんなくて……取りあえずずっと暗闇を歩いてたの。むっくんもいないし誰とも会わないしで、ほんっと怖くて……」

 と言葉を続ける仁乃ちゃんの潤んだ瞳。私は彼女の背中をそっとさする。
 

 仁乃「ん、でも、みんなに会えたならもう大丈夫。みんなに会えたなら柱にも会えるよね」
 寧々「……え、えーっと、それはどう言う理屈で?」


 私や花子くんに会えたからといって、柱に会えるとは限らないんじゃ……。
 怪訝な顔つきをした私を見て、仁乃ちゃんは「ぷふっ」と小さく笑った。


 仁乃「おかしいでしょ。これ実は私の意見じゃなくて、この人の意見なの」
 花子「この人………?」


 実弥「よう、こんなところで地味ィに閉じ込められるなんてついてねえぜ」
 寧々「不死川さん!?」


 え、ということは、不死川さんはずっと仁乃ちゃんと一緒にいたってこと?
 誰とも会ってないってさっき言ったけど、それは仁乃ちゃんのブラフってことかしら?
 …………流石、恋人をいつでもからかってだけあるわね。


 不死川「しかし敵が俺らに姿を見せねぇってことは、よほど実力に自信があるみたいだな」
 仁乃「それか、単に殺されるのに臆している、とか」
 花子「……そいつ、ホントに強いの? もしかして俺らを閉じ込めてそれで満足したのかな?」


 三人「けっこう、おバカの鬼なのかも………」
 ??「黙ってれば言いたい放題言ってくれるわ。あんたら人の気持ちってもんも知らんの?」
 ??「布留ふる、落ち着きィや。わっちらはただ春俚しゅんりの言う通りにすればええ」


 パッと突如明かりがつき、視線は自動的に明かりの方へと注がれる。
 右手に和紙でできた提灯を構えて、不遜な顔つきをしている二人の女の鬼がいた。どちらも服装は黒髪のボブカットで、一人は青色、もう一人は赤色の着物を着ている。顔つきは驚くほどよく似ているから、おそらく双子……かしら。


 花子「一人称わっち!?? わっち!!??」
 布留「……なんなん? 俺の妹を悪う言ってなにか得するん?」
 花子「わっちに俺!! 今までにないパターン……」

 布留と呼ばれた青色の着物の女の子(の鬼)が肩眉をひそめる。どうやらかなりの個性派双子コンビらしい。
 彼女たちと戦いをしている未来がいまいち想像つかない。


 ??「まぁとにかくええやん布留。わっちらの術にとらわれて、こいつらは身動きも取れへんようやし」
 布留「まあ久留くるがそう言うなら別にええけど……どする? 戦いに持ち込む?」


 あ、あなたたちやっぱり戦いは苦手の裏方さんなのね……。
 春俚っていうのが誰だか分からないけど、多分この子達のボス的な存在かしら。
 といことはかなり敵の数は多いようね。ふふん、私もけっこう使えるじゃない!

 久留「そうやねぇ……あんまし戦いはしたくないけど、何もしないわけにもいかん……」
 布留「そこの幽霊の兄ちゃんあたり弱いんちゃう? あとその隣の足の太い女の子もあんま戦えへんはずや。残るはそっちの小っちゃな隊士と屈強な男やけど、こっちはもうすぐ来る面子に任せとこ」

 
 バリバリ大声で計画を練るあたり、この二人やっぱりおバカなのかもしれない。
 私たちに聞かれても大丈夫なのかしら。

 そして、足の太い女の子って誰……?
 そ、そんな人、ここにはいないですよね。ねえ!

 とりあえず彼女たちが狙うのは私と花子くんのようだから、仁乃ちゃんの後ろに隠れておく。


 仁乃「わかった。頑張って倒してあげるからね」
 不死川「つーことで行くぜェ」


 不死川さんの号令を合図に、花子くんは白杖代を振りかざし、仁乃ちゃんは刀身を鞘から抜きかけ………。



 ひゅんひゅんひゅんひゅんんひゅんひゅんひゅんひゅんひゅん


 お約束で、もう何回目かのゲーム音じみた転移術の効果音が、空間に響き渡った。
 

Re: ろくきせ恋愛手帖 ( No.115 )
日時: 2021/03/19 15:23
名前: むう ◆W6/7X9lLow (ID: mkn9uRs/)

【お知らせ】

 現在投稿中の全ての小説に書き込む予定です。
 今回新しくトリップをつけてみました。把握お願いします。
 あと、私が無断使っているIDが違う場合は、スマホやiPad用ですのでそちらもご了承ください。


 メイン PCのID⇒ID: mkn9uRs/
 サブ  スマホID⇒ID: bQoLP122


 これからも引き続きこの小説をよろしくお願いいたします。
 また何か質問などありましたら気軽に連絡してくださいね。

Re: ろくきせ恋愛手帖 ( No.116 )
日時: 2021/03/25 19:02
名前: むう ◆W6/7X9lLow (ID: mkn9uRs/)

 久しぶりの戦闘です! 
 キャラが多いため必然的にグループになるので、なかなか一度に戦闘はできないんですよね。
 でも頑張ります。むうも有為ちゃんみたいな転移術、使ってみたいです。

 -------------------

 〈炭治郎side〉

 ??「血鬼術、血針来来ちしんらいらい……ッ(血で作られた無数の針が頭上から)」
 炭治郎「うおっっっ!?」

 俺こと竈門炭治郎は、カナヲと商店街を練り歩いていた。
 しかしその後急に視界が暗くなり、気づけば繁華街のような、提灯の灯で照らされた優艶な部屋でカナヲたち仲間と一緒に迷い込んだ。


 そして只今。絶賛戦闘中だ。
 敵は二体。さっきから俺たちを血の針で攻撃している、袴を着た長身の男の鬼。
 そして、遠くからジッと戦いの様子を見物している小さなツインテールの少女の姿の鬼。


 カナヲ「花の呼吸・弐の型 御影梅!!(ビシャッ)」
 悲鳴嶼「大丈夫か………お互いこんな場所に飛ばされてしまったが……南無阿弥陀仏」
 伊之助「ヒャッホゥ! なんだこれ! 真っ暗だぜェ!」


 炭治郎「そうですね。でも、場所が変わってもやることは変わらないです!」
 無一郎「………同意。僕たちの役割は鬼を斬ることだからね」


 俺の身を案じてくれているのだろう。悲鳴嶼さんの言葉はいつもよりも優しく響いた。
 そして横で、いつもと変わらない態度で時透くんが頷く。流石柱、どんな状況においても冷静さを欠いていない。

 
 光「防御は任せろ! これでもオレは祓い屋だ。バシッと祓ってやるぜ!」
 伊黒「ふん。……貴様の程度がどれほどか分からんが、使い物になるというならやってみろ」
 光「うす!」

 
 光くんはどんな時でも前向きな姿勢を見せてくれる。
 彼の明るさが、今は何よりもみんなに元気を与えてくれる。

 
 カナヲ「……優先すべきは、女の鬼。そっちは私がやるから……炭治郎はもう一方を」
 炭治郎「えっ?」
 カナヲ「おそらく…今まで攻撃しない分能力は針の鬼よりも絶対高い。あんな余裕をかましていられるのも自分の力を過信しているから」


 確かにカナヲの言うことも一理あるな。
 鋭い観察力は、やはり継子として鍛えられているからだろうか?
 ならこちらも彼女の意見を信じ、自分の力を精一杯出すしかないな。

 カナヲ「だから私はそこを叩く。……協力してくれる? 蛇柱さんたち」
 伊黒「……チッ。食われるなよ」
 悲鳴嶼「承知した……全力で護衛に回ろう」
 カナヲ「ありがとう(ニッコリ)」


 無一郎「……じゃあ僕らは今まで通りこの針を何とかすればいいわけだね」
 伊之助「要するに倒せばいいんだなァ!」
 光「そうっすね! とっとと花火開始時間までに終わらせてしまいましょう!」

 炭治郎「鬼がチームを組むと言うことは必ず上がいると言うことだ。おそらく禰豆子たちも今の俺たちと同じような環境にいるだろう。絶対に勝ってみせるぞ、三人とも」


 禰豆子たちや他のみんなのためにも、今俺たちにできることはただ一つ。
 敵を倒し、ここから脱出して皆と合流することだ。
 

 無一郎「……柱がこの程度で勝てないなら僕は降板だ」
 光「今頃花子たちも頑張ってんだよな。なら負けていられねぇ!」
 

 ??「……与呼よっこ様。彼奴きゃつ等、かなり頭が回るらしいな」
 与呼「そうだねたまき。でもキミなら問題ないだろ?」

 与呼といわれた少女の鬼が、ツインテールを揺らしながらぞんざいな口調で言い切る。
 彼女に肯定してもらえたことが嬉しいのか、環の表情に赤みが差した。


 与呼「さあ人間ども。お前たちはこの僕を倒すと言っていたね? 倒せるなら倒してみるがいいさ。最も人間の体力の限界なんて、とうの昔に解明されているんだけれどね」


 何だこの鬼。花子くんたちの時代でいうところの「よくわからん知識をひけらかす系クソリプ」がべらべらと口から放たれたぞ。


 伊黒「よほど実力に自信があるみたいだな」
 与呼「当り前さ。なにせ僕は睦月の会の、【葬送担当】だからね」

 葬送担当……。なんておどろおどろしいあだ名なんだ。
 そんな単語を給食当番の「汁食缶担当」みたいに言わないでくれ。

 環「……それでは与呼様、くれぐれも怪我だけはご注意くださいませ」
 与呼「ぬかせ。僕は生まれてからこの方血を流したことはないよ」

 誰かと同じことを言うな。確か睦彦くんも生まれてからこの方風邪を引いたことはないと言っていたし……あ、有為ちゃんからも聞いたな。
 怪我をしていないことは健康の証だ。だがしかし相手が鬼となると意味合いも変わってくる。

 ……戦闘で怪我をしたことがないということは、この鬼は今までずっと無敗だったということだ。
 気を引き締めていかなければ、俺たちもきっと彼女に殺されてしまうだろう。

 睦月の会は元十二鬼月の集団だ。年が経っていてもその能力の力はまだ完全に衰えてはない。

 それにしても与呼は自分のことを僕と言う。感情をみせないところも有為ちゃんとそっくりだが、俺の知る有為ちゃんは決して自分の強さを公に見せつけない。


 炭治郎「俺は鬼殺隊の竈門炭治郎だ! 今からお前の頸を斬る!」
 環「……睦月の会【首切りの環】だ。……お手並み拝見させてもらうよ」



 無一郎「……(なにその『切り裂きジャック』みたいな名前!!!)」


 NEXT→それぞれの戦いはいかに。次回もお楽しみに!

 

Re: ろくきせ恋愛手帖 ( No.117 )
日時: 2021/03/25 20:20
名前: むう ◆W6/7X9lLow (ID: mkn9uRs/)

 一応現時点での戦闘状況を書いてみました。
 分かんなくなったらこのページへGО!
 前書き好きな作者のむう、今日も勉強に運動に小説に頑張ります!

 春俚チーム→伏黒、野薔薇、虎杖、五条、義勇、しのぶ、ミツバ、メイ、つかさ
 深柚チーム→善逸、禰豆子、煉獄、宇髄、もっけ
 布留&久留チーム→仁乃、睦彦、有為、花子、寧々、蜜璃、実弥
 環チーム→炭治郎、無一郎、光、伊之助
 与呼チーム→カナヲ、伊黒、悲鳴嶼

 連絡班→桜、夏彦

 ****

 〈春俚VS野薔薇side〉


 春俚「君たちにそこまで期待はしてないよ。所詮人間だ。ぼくに勝てると思っているようならそれは高望みって奴だね」
 悠仁「訳分かんねえことをべらべらと。先生、もうやっちゃっていい?」

 五条「うん、いいんじゃない?」
 悠仁「軽っ!! 目の前に鬼いんのに何その軽さ!!」
 伏黒「五条先生はこういう人間なんだよ。今までの流れで分かんだろ」
 悠仁「いや今までは呪いを相手にしてたけど、先生のその性格って鬼相手でも変わんねえんだ」

 しのぶ「ヘンなとこに感心してないで攻撃しましょうか(ニッコリ)」
 義勇「同意する」
 野薔薇「了解! アンタたち、せいぜい食われないように注意する事ね!(釘を取り出して)」

 メイ「……ご心配頂かなくてもけっこうですよぉ。ワタシは防御専門なので、攻撃は3番が」
 ミツバ「絶対僕を盾にする気で言ってたよね。まあやるけどさ。つかさくんがいるなら平気だと思うし」
 つかさ「そーかなぁ?」


 春俚「……君たちのその虚勢ごと破壊してやるよ。血鬼術・多重血根たじゅうこん

 春俚が技名を唱えると、彼が立っている地面から植物の根のような管が出現した。
 管は次々と根の本数を増やし地面を侵食していく。

 そして何よりも厄介なのは、根が寄生した地面が徐々にひび割れていっていることだ。
 何て強度してるんだよ。このままでは私たち全員地面の下に沈んじゃう!!


 メイ「みなさん早く攻撃を! こっちでフォローしますから!」
 伏黒「任せた! ……玉犬ぎょくけん!!」

 伏黒が顔をの前で手を合わせると、彼の影を媒体に白毛と黒毛の犬(式神)が出現する。
 二匹ともブンブンと尾を振り、敵を真正面に見据えている。


 伏黒「行け!!」
 玉犬「ワオォオォオォオォオォオン!!」


 地面を蹴って飛び上がる二体の犬に、春俚は一瞬面くらったようだ。自然と身体が硬直する。
 しかしそれもつかの間。


 春俚「………殺れ」


 春俚が人差し指を曲げると、地面を網目状に蔦っていた管が一気に式神の方へと向かう。
 集束した管は徐々に太く長くなり、犬の体に巻きついて横からぎゅうぎゅうに締め出した。
「クゥッ……」と苦し気にあえぐ犬たち。


 伏黒「釘崎!!」
 野薔薇「分かってる!! 芻霊呪法………かんざし!!」


 釘を放り投げ、呪力をこめた金槌を振りかぶる。
 弾き飛ばされた釘は鋭利な先端を向け、敵の身体めがけて空を切る。
 腰をひねり攻撃をかわそうとした春俚だったが、斜め後ろの方向から飛んできた一本の釘が彼の頭部を貫通していた。


 春俚「ッ………! んぐぐ……!」
 野薔薇「抜けないわよ。せいぜいのたうち回れ! シジマさん!」


 メイ「お任せくださぁい」


 丸メガネを光らせながらのんびりと告げるシジマさん。
 脇に挟んでいたスケッチブックの新しいページを開き、成功に釘の入った箱の絵を描いていく。
 そしてスケッチブックを振るような動作をすると、ポンと音を立てて実物になった絵が落ちて来た。


 メイ「野薔薇さん!!(ブンッッ)」
 野薔薇「(パシッッ)虎杖! 特級呪霊! 追い打ちをかけるわよ!」
 

 つかさ「俺はつかさだってばぁ……」
 悠仁「ままま、そこは一旦置いておこうぜ」


 不服そうな顔で頬を膨らます特級呪霊に、虎杖が同意の眼差しを向ける。
 そしてその様子を先ほどからガリガ〇君片手にニコニコ眺めている馬鹿教師。
 戦闘中にアイス食べる馬鹿がとこにいんだよ(って目の前に居るか)。

 つかさ「分かった。蹴散らせ黒杖代!!(ブンッッ)」
 野薔薇「もういっちょ!!(カキンッッ)みんな!」


 私の釘とつかさの人魂がシュッと閃光を放つ。
 その眩さに虚を突かれたのか、春俚の動きが僅かに鈍った。

 それにつられて、玉犬に巻き付いていた管が精気を失う。
 攻撃に歯を食いしばっていた式神は、絶好のチャンスを逃がすまいと春俚に食いついた。


 春俚「………このっ」


 今だ!!


 ミツバ「…………飛べぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!(マフラーの骨を悠仁の体に巻き付け)」
 悠仁「うおッッうわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 ミツバ「あとは任せ………たっっっ!!(ブンッッ)」


 マフラーの先についた骨(?)を虎杖の体に巻き付け、ミツバが体を思いっきりひねる。
 その反動で虎杖の体が宙に投げ出され、あまりに不安定な恰好に思わず悲鳴をもらす彼だったが、持ち前の運動神経であっという間に敵の頭上へ。

 あいつ……絶対前世スパイダーマンね。
 

 悠仁「…………必殺!!」



 右手の指を丸め、握りこぶしを作る虎杖は体中の呪力を指先に集中させる。
 あいつの呪法は、呪力を籠めた拳で敵を殴り、ダメージを食らわせた後に呪力で相手の体力を削る。
 でも今彼がやろうとしている攻撃は、それよりずっと強力かつ威力の大きいもの。




 悠仁「黒・閃………!!!」


 束の間、最大の呪力をこめた彼の右手が、春俚の頭部にのめりこむ。
 横からの衝撃に耐えきれず、咄嗟に管を自身の前方に展開させたことも意味なく、彼は派手に数メートル先の地面に頭から突っ込んだ。



 五条「どう? 結構強いでしょ、僕の教え子」


 どこに居ても余裕をぶっこいてる馬鹿教師が、アイス棒を振り回してのんびりと言う。
 この人の場合、イッコの攻撃で何十本の木々が焼かれるから、何もしないでいてくれた方が逆に良いのかもしれない。


 春俚「ああそうだね。お前の言う通りぼくは君たちを少し見下していたかもしれないよ。まあそれはいいよ、ぼくが悪かったってことでね。でも納得いかないよ。今ぼくが立ち上がっているからまだ負けじゃないよね。ああそうさ、能ある鷹は爪を隠すって言うし、もしかして君たちはこの程度がぼくの限界だと思ったのかな」


 よくそんな長い台詞をペラペラと話せるな。絶対アナウンサーの試験に採用するぞ。
 と私は軽口の一つ二つ、彼に言ってあげたかったのだけど、尋常じゃない春俚の負のオーラに出かけていた言葉が喉の奥にひっこんだ。


 頭から地面に着地した衝撃で割れた額を抑えながら、凶悪に表情を歪める鬼。
 見る見るうちに傷が塞がるのを見て、ああやっぱりこいつは鬼なんだ、と私の中で腑に落ちるものがあった。


 春俚「………いいかい人間。鬼って言うのは弱肉強食でね。弱いものほどすぐに死ぬし諦めも早い。そんな彼らが報われるとしたら」



 春俚が右手を高く上げる。瞬間、手の先から青白い光が発する。
 なにあれ。明らかにヤバそう。
 そう目で私がみんなに合図したのと、春俚が右手をこちらに振り下ろすのがほぼ同時だった。


 春俚「血鬼術、精神吸収」





 NEXT→一方禰豆子sideでは? 春俚の言葉のヒントは「六人の軌跡」を読めば分かるかも。次回もお楽しみに! 
 

Re: ろくきせ恋愛手帖 ( No.118 )
日時: 2021/06/15 10:22
名前: むう ◆W6/7X9lLow (ID: Wb6EMeB7)

 〈ろくきせ閲覧数10000突破記念〉

 【むうとキャラのトークショー:スランプ中でも文書きたい!!(←記念要素ゼロ)】

 今日のゲスト:仁乃、鈴幻りんげん麻百あさも


 むう「こんばんにちは! 好きなお菓子はチーズケーキ! むうですー」
 仁乃「こんにちは。わらび餅しか勝たん! お餅大好き、胡桃沢仁乃ですっ」
 
 むう「さてさて仁乃ちゃん!」
 仁乃「はい?」
 むう「日々閲覧数とかどうでもええわっ。と思っていたむうなんですが……」
 仁乃「毎回ろくきせ本編で突破記念してた人の言うセリフじゃない気がするんだけどなぁ」

 むう「今回、六人の軌跡が10000突破しましたー。いえーい」
 仁乃「前作の短編集の2倍以上ってすごいよね」
 むう「そだね。まさかここまで行くか、何をどうしたらここまでバズったのか……」
 仁乃「本当に感謝! キャラ一同に代わりお礼申し上げまーす」

 むう「さてさて、早速ですがろくきせシリーズではオリキャラがめっさ多いのですよね」
 仁乃「主要メンバーだけでも、むっくん、有為ちゃん、瀬戸山くん……といっぱいいるもんね」
 むう「敵キャラもいっぱい出て来たよね」
 仁乃「いちいち設定とか血鬼術とか考えるのホント凄いと思う」

 むう「まあ敵はね、六新鬼月はなんたって有名じゃないですか」
 仁乃「有名……だといいなぁ。一番出番も多いしね」
 むう「でも初期の当たりは皆さん記憶にないでしょ? 仁乃ちゃん覚えてる?」
 仁乃「うーん……。私が初登場したときに戦った敵も覚えてないかも」

 むう「と言うことで今回は! 仁乃ちゃんと関係のある敵さんをお呼びしました!」
 鈴幻「……急に呼ばれたと思ったら何よコレ。トークショー?」
 むう「鈴幻りんげん、短編集で登場。仁乃ちゃん初登場のシーン、彼女によって殺される」
 仁乃「てへ」

 鈴幻「ぬぁぁぁにが『てへっ』よ! アンタさえいなければ今頃私は上弦に返り咲いて……っ」
 むう「落ち着いておばあちゃん」
 鈴幻「誰がおばあちゃんよ!!」
 むう「だって数百年も生きててギネス更新してるじゃないですか」
 鈴幻「お姉さんと呼べぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


 むう「そしてそしてっ。この方もご登場でーす! ぱぱんっ」
 麻百「ぱぱんって何よ……久しぶりね、仁乃」
 仁乃「…………お、お姉ちゃん!??」
 むう「麻百。本名は麗乃れいの。鬼化した仁乃の姉。妹の仁乃によって殺される」
 鈴幻「毎回アナウンスみたいな口調に代わるの、こっちかなりきついんだけど」

 仁乃「お、おね゛え゛ちゃ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁん!!(ギュ―――ッッッ)」
 麻百「仁乃……! 会いたかった………!」
 仁乃「………お姉ちゃんっ、あのね私ねっ、実はっ」
 麻百「分かってるわよ。愛しのボーイフレンドが出来たことでしょう? あなたと彼のラブラブっぷりが強すぎて、むうさん毎回『ぁぁぁぁ』ってなるのが落ちなのよ」

 むう「仁乃姉ちゃん仁乃姉ちゃん、正論だけど今はそのことは……」
 仁乃「あの……それもだけど……実はねっ」
 鈴幻「さっさと言いなさいよ」


 仁乃「私っ、ついに身長が150に行ったんだよ!」
 麻百「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
 仁乃「いつも145だったけど……六新鬼月戦とか、鬼化とかの影響で、けっこうすくすく育って……それでもまだかまぼこ隊の中では一番低いんだけど……」


 むう「そう言えばかまぼこ隊の中のオリキャラちゃんはみんな背低いぞ?」
 鈴幻「……自分が次高1なのに151㎝なことに我慢できず、キャラ全員低身長にしたというね」
 むう「……それは違う!! 睦彦は『目立ちたがり屋は背が低い』って言う情報をもとにしてるし、有為ちゃん仁乃ちゃんは私とためだし、亜門は早くに死んじゃう設定だから……」

 仁乃「設定では145だけどこれでも伸びてるんだからねっ」
 むう「そうそう。ちゃんと誕生日が来るごとに、設定のとこの年齢も書き替えてるし」
 仁乃「まだ14歳のままなんだけど」
 むう「ごめんごめんッッ 後で直しておくから!」

 鈴幻「……誕生日と言えば、4月4日は宵宮有為の誕生日らしいわね」
 むう「うんうん。その次の日、私は高校で春期講習があります」
 麻百「突然話にリアル持ってくるのやめましょう?」


 仁乃「まあまあ、作者さんも頑張ってるってことを伝えようとね」
 鈴幻「……確かむうって、鬱になったり入院したり元不登校だったり……大変ね」
 むう「まあぼちぼちですよ。不登校でもちゃんと高校合格できたし、やればできる子なんですよ」
 麻百「しれっと自画自賛したわね」


 むう「ということでね、ろくきせでは隠れテーマとして『死、生、出会い』も扱っておりますが」
 仁乃「そんな壮大なテーマだったんだ……」
 むう「生きてりゃ色んなことがあってね。仲間が死んだりね、仲間が恋したりね、仲間が他の仲間を召喚したりね、仲間が鬼化したりね」

 麻百「……いや、最後だけはないと思うけれども」
 むう「そんなこんなで忙しいわけですが、休みの日、ろくきせはいつでもあなたを待ってます」
 仁乃「はい。好きなお話を繰り返し読んだりとか、テーマ曲を聴いてみたりとか、自分のお好きなようにろくきせを楽しんでいただければ幸いです!」


 むう「次回のゲストは、オリキャラの睦彦、そしてスペシャルゲストさんです。誰かな?」
 麻百「それでは次回もお楽しみに。短編集や恋愛手帖もよろしくね」
 鈴幻「……それじゃ、また」
 一同「ばいば―ーーーーーい!」
 

 

Re: ろくきせ恋愛手帖 ( No.119 )
日時: 2021/04/04 17:34
名前: むう ◆W6/7X9lLow (ID: mkn9uRs/)

 今日4月4日で有為ちゃんHappyBirthday!
 おめでと―――――!
 呪術廻戦とのコラボでは有為ちゃんの活躍がでかいからこれからも頑張ってね!
 近いうちにイラストアップする予定です!

Re: ろくきせ恋愛手帖 ( No.120 )
日時: 2021/04/09 21:11
名前: むう ◆W6/7X9lLow (ID: mkn9uRs/)

 〈ろくきせ閲覧数10000突破記念〉

 【むうとキャラのトークショー:スランプ中でも文書きたい!!】

 今日のゲスト:睦彦、光彦みつひこ新羅しんら


 むう「……皆さん最近どんな調子ですか? むうはあることがきっかけで今凄い怒りたい気持ち」
 睦彦「まあな。まあ怒りたい気持ちも分かるけど」
 睦彦「でもそんなことにはろくきせは負けない。て言うことでやってくぞ!」
 むう「スランプ中でも文書きたい! 二回目、始めまーす!」

 
 むう「と言うことで今日は、睦彦と関係のあるこの方をお呼びしましたー」
 光彦「チッス☆ 刻羽光彦です♪」
 むう「はい、睦彦のお兄ちゃん! 出番は少なかったけど活躍はデカいよ!」
 光彦「夢で出て来たり、過去編では弟とのやりとりもあったし、けっこう貢献してるぜ!」
 むう「そしてナニコレ、むっくんが二人いるみたい()」
 睦彦「兄ちゃんと俺を一緒にするなよ」

 光彦「おい……もう兄離れかよ。まぁ俺はお前に何もしてやれなかったししょうがねえかぁ」
 睦彦「急にしんみりするのやめろ! 泣けてくる!」
 光彦「おっ、可愛いとこあんじゃん」
 睦彦「それを言わなければ泣いてた。言われたからもう一滴も流さない」
 

 むう「むっくんあんたさぁ、本編では『最悪』とか言ってたけど兄ちゃんとめっちゃ仲いいな」
 睦彦「どこが! こんな頭良くて運動神経も良くて優しい兄貴のどこがいいんだよ!」
 むう「つまり睦彦はそんな兄ちゃんと比べられるのが嫌だから、そう言ってるってわけね」
 睦彦「………………」
 むう「沈黙は肯定とみなす。ということで、出てきていいよ――――(遠くの方へ)」

 睦彦「? ……誰…………げ」
 新羅「何その顔? ボクからすると君と関係のある人で真っ先に呼ばれないのが不思議だね」
 睦彦「もう顔も見たくないと思ってたのに」
 新羅「せっかく天国から来てあげたのに冷たいね。まぁいいさ。始めようか」

 むう「新羅。ろくきせのラスボスの一人、睦彦の足を失わせた張本人」
 新羅「言っとくけどさぁ、誠実に言うと失わせたのは作S……」
 むう「ハイ黙ろっか?(⌒∇⌒)」
 
 光彦「俺の弟を怪我させたのはお前と聞いているが」
 新羅「まあそうさ。そうでもしなきゃ睦彦の活Y」
 むう「黙ろっかぁぁ??(⌒∇⌒)」

 新羅「……分かった黙るよ。はあ、嫌だねこれだから底辺の人間は」
 むう「新羅あんた人間の底辺ってむうだと思ってるの?」
 新羅「ああ、まだ下がいたね。まあそんな奴らに比べれば君は良い人間だよ。格付けするわけじゃないけどね」

 光彦「『まだ下がいたね』って言ってる時点で確定だと思うけどな」
 睦彦「兄ちゃんの意見に一票」
 むう「新羅から始まる『敵キャラのセリフトップ5』をご存知かな?」

 睦彦「某アニメのタイトルもじって何がしたいんだお前は」
 むう「今日カウンセリングで先生に『ろくきせセリフ集』の画像を見せたんだけど」
 新羅「ああ、二日ぐらい勉強する暇も惜しんで作ってたね」
 むう「一番先生が好きなセリフ、新羅の『思い上がるなんて余裕だね』らしいよ」

 新羅「ふゥん。あの膨大なセリフからそれを拾ってくれたその先生、そしてそれをセリフ集に書いてくれた君には感謝の意を表そうか」
 光彦「面白いね。他にどんなのがあるんだ? 俺のもあるのか?」

 むう「光彦は、『カッコよく目立てよ』のセリフ使わせてもらってるよ」
 睦彦「うわ懐かしい!!」
 光彦「くぅぅぅ~! やっぱ俺いいね!」
 睦彦「そこさえなければ褒めてた……。で、俺は? 主要キャラだしけっこうセリフあるよな」
 

 〈睦彦で入れたセリフ〉

 ●この顔が大丈夫に見えるか
 ●………玉子焼き、だけど
 ●俺は強いからな


 睦彦「ちょっと待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
 光彦「ㇷ゚っ、いいねむうちゃん。分かってるねぇ」
 むう「でしょ? 私ら心通じ合ってるね(^▽^)/」
 睦彦「俺とは全然通じてねぇよ!! なんだよこのチョイス! 三分の二ボケだろうが!」

 新羅「分かってないね君。君はツッコミよりボケの割合が多いんだよ」
 睦彦「…………確かに!! なんかすっげえ料理失敗させられた!!」
 光彦「ところでさ。睦彦の友達の子のセリフもあるんだね」


 〈仁乃で入れたセリフ〉

 ●わらび餅しか勝たん
 ●バケモノなのも本当だし
 ●血鬼術・爆黒炎!!
 ●うわぁぁぁんやけ牛乳してやるぅぅぅぅぅ!!


 
 〈有為で入れたセリフ〉

 ●一遍死んでください
 ●絶対にあきらめない

 
 〈亜門で入れたセリフ〉

 ●なら心配いらないね
 ●大嫌いだ


 睦彦「………最後でアイツのセリフ持ってくんのやめろぉ…………」
 むう「ほらティッシュあるよ」
 睦彦「いらねえよ!!」
 光彦「あーでもむうちゃんのお母さん、恋愛手帖の一話でボロ泣きしたんだっけ」
 むう「ああはい、まあ、最後のところらへんで……」

 新羅「死を感動系として扱うのは悪趣味だと思うけどね」
 むう「……否定できない。まあ……うん、まぁ……亜門とね、睦彦、仲直りしたってことで……」
 睦彦「ペース崩すなよ……」


 むう「はい! ということで色々大変だけど、ろくきせはいつも通りやっていきたいね!」
 睦彦「また本編も折々更新するから、またチェックしてくれよな!」
 光彦「弟をこれからもよろしく! 六新鬼月の活躍は期待してないからね☆」
 新羅「それってフラグ立ててるってことかな? まあもし出るなら本気で行くけどね」

 むう「それでは次回もお楽しみに! ばいば―――い!」

Re: ろくきせ恋愛手帖 ( No.121 )
日時: 2021/04/19 18:20
名前: むう ◆W6/7X9lLow (ID: mkn9uRs/)


 〈ろくきせ閲覧数10000突破記念〉

 【むうとキャラのトークショー:スランプ中でも文書きたい!!】

 今日のゲスト:有為うい亜門あもん

 むう「皆さん、また一週間が始りましたね! 新生活には慣れましたか? むうは高校生活エンジョイしてます! ちなみに部活には入らず、勉強と趣味をひたすら消化する毎日です! 忙しくなってきて更新が難しくはなっていますが、出来るときはこうやってあげるのでまたよろしくです!」

 むう「ってことで、本当はもうちょい話したいけど、トークショーいよいよ最後になります」
 有為「……と言うことはつまり、それが終わったら本編を書くんですよね。当然」
 むう「……それは……どうでしょうか……」
 有為「駄作者と言うレッテルは当分外れそうにないですね」


 むう「ウ゛っ……ってことで今日のゲストはこちら!」
 有為「改めまして、宵宮有為です。よろしくお願いいたします」
 亜門「………瀬戸山亜門。どうも(ボソ)」
 むう「はい、『ツン組』担当のお二人さんに来ていただきました~」

 ※ツン組→ツンデレとツンツンの性格のお二人のこと。ツンが共通してるのでツン組



 有為「ツン組……」
 むう「君ら、全体的に厳しすぎ! ということでツン組!!」
 亜門「一遍裏出て話すか。そもそも僕らの性格決めたのお前だろうが」

 むう「という感じでジワジワと傷をえぐるお二人なんですが、仲良くしてやってくださいね」
 二人「別に仲良くなる気はない(です)」
 
 むう「ほい、ではさっそく話していきましょうか。初めに有為ちゃん誕生日おめでとう」


 ※4月4日は有為ちゃんの誕生日。

 ちなみに睦彦→6月12日 仁乃→12月26日 亜門→9月27日(祝ってあげてください!)


 有為「……年は取りたくないですね」
 むう「君まだ若いんだからおばあちゃんみたいなこと言わないの!(むうとタメです)」

 亜門「いつかは歳取るんだから別に気にしなくていいだろ」
 有為「ボクだって一応女ですから初育上の悩みくらいありますっ(むす——っ)」
 亜門「例えば?」
 むう「女の子の発育の話で『例えば』と話を振れるお前もある意味凄いよ亜門」

 亜門「………………………………これ、マジ???」
 むう「反応、遅っっっっっっっっそ!!! マジじゃないよ、マジじゃないよ」
 亜門「………良かったぁぁぁぁぁぁぁ」

 有為「大人になったら、自毛と白髪しらがの違いが分からなくなったりしないかと思いまして」
 む・亜「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は???」
 むう「あの、有為ちゃん? 真面目な顔で何言ってるの??」


 有為「ボク、生まれつき白髪なんですけど……」
 亜門「白髪しらがだろ」
 有為「白髪はくはつです。殴りますよ。祓魔術でぶっ飛ばしましょうか?」

 むう「やめろやめろ、喧嘩するでない!」
 亜門「つまりお前は髪色が白だから、将来生えてくるであろう白髪との区別がつかなくなると」
 有為「はい」
 むう「………………ブフォオォッッ(←吹いた)」


 むう「あはははははは! ヒーお腹痛い、なにその悩み! ハー……お腹ぁぁww」
 有為「(-"-)」
 亜門「もともと白なんだから隠れて終わりだろ。そんな下らないことでイジイジ悩むのかよ」
 有為「( 一一)………もういいです……」

 むう「泣くな有為ちゃん! 女だろ!!」
 有為「陰陽師ですぅぅぅぅ!!(ズバァァァァァァァァァァァァァァン!!!!)」



 ※むうは1000ポイントのダメージをくらった



 むう「_(:3」∠)_…………何でぇ??」
 亜門「自業自得だ。なんでか分からないなら自分で調べろ、戯けもの」
 むう「亜門、お前もだろぉおおおおおおおおぉおお!!! ゴフッッ」

 有為「……………大丈夫ですか?」
 むう「叫びすぎてこ゛え゛がガラガラで゛す゛………」
 有為「………………払魔術のなかには治癒術もありますがかけましょうか?」
 むう「いや、いいです。当分祓魔術はいいです。もういいです」


 亜門「ところで、僕たちにばかり話を振っているけれど、お前の話はしないのか」
 有為「確かにそうですね。ボクもむうさんのこと知りたいです」
 むう「おっ。なになに、むう株上がってる感じ?」

 有為「いえ、なにかいかがわしいことが発覚すれば、物理的に抹消しようかなと」
 むう「なんで有為ちゃん今日そんなに実力行使なの?」
 亜門「あれだ、『ちびまる子ちゃん症候群』」
 むう「なにが『あれだ』ですか!? 全然『あれだ』じゃないよ??」


 ※ちびまる子ちゃん症候群とは

 日曜日の6時ごろにちびまる子ちゃんがやることから、「明日学校……」となること



 亜門「取りあえず質問するから言え。最近ハマっていることは?」

 むう「はい、最近はYOASOBIにハマってます。群青とか、アンコールが好きです! 一度聞いてみると分かるんですけど、アンコールは明け方5時くらいに聞くと最高にエモい!!」
 
 有為「最近はなんですっけ? 『うたいて』にハマってるんですよね。好きな方とかは?」
 むう「はい、After the Rain と浦島坂田船推しです! 今日もラジオがありますけど、配信が楽しみです!」

 むう「あとは耳コピにハマってます! 好きな曲を耳コピしてピアノで弾いてます。つい先ほど、Honeyworksのロメオを弾いてきました! Honeyworksも大好きです! 推しは美桜ちゃんと聖奈ちゃんです! 可愛い」

 有為「最近は絵も描いてるらしいですね」
 むう「うん、コピック集めにハマってます。1年前くらいにここのイラスト掲示板で投稿した画像、持ってるんですけど、大分うまくなりました。興味ある人はまた見て見て下さい! 差がえぐいですw」

 亜門「好きな食べ物は?」
 むう「質問多いなw」
 有為「というか、むうさんあなためっちゃ喋りますね。しかも勢い凄いですね」
 むう「スピーチ好きだからね。じゃあそれ話して解散にしましょうか。行きますよ」


 むう「好きな食べ物は、スイーツだとチーズケーキ好きです! あの、甘すぎない甘さ最高。それ以外だと、麺もの大好きです。ラーメン、パスタ、蕎麦、焼きそば、どれも美味しい。あと私料理したりするんですけど、得意料理はオムライスと言うことでそれも好きです(^▽^)/」


 むう「はい、と言うことで以上3回にわたったトークショー、いよいよ終わりのお時間です」
 亜門「スランプでも文を書きたいという貪欲な姿勢がコイツの良い所だな」
 むう「亜門さん亜門さん、それ悪口ですよね」

 有為「また浮上できそうなときは出没するので、会えた時にはボールにでも入れて持ち帰ってあげてくださいね」
 むう「ポ●モンか??」

 むう「と言うことで、また次回! 閲覧ありがとうございましたっ。またね――――!」
 

Re: ろくきせ恋愛手帖 ( No.122 )
日時: 2021/05/17 21:45
名前: むう ◆W6/7X9lLow (ID: mkn9uRs/)

 〈深柚チームVS善逸、禰豆子、煉獄、宇髄、もっけ>

 【もっけside】

 われら、もっけというかいい。
 われらはフツーにたのしく、まつりをまわるよていだった。
 もちろんわれらはニンゲンではないし、たべものを食すことはしない。

 ただ、まつりにはアメがたくさんでるらしい。
 アメはわれらのだいこうぶつ。よって、われら、アメをおとながいしたい。
 われらはなかまをひきつれて、こっそりニンゲンのみせからアメをぬすんだ。(ゑ)

 アメ、いろんなあじある。しかしレモンあじはまずい。どくがある。
 よって、レモンはたべぬ。われら、いいかいいだけど、レモンはよくない。
 ボリボリボリボリアメくったあと、ぜんいつたちとあった。

 そしたらめのまえに、おにがでた。


 『おにだ』
 『なんだ』
 『おにか』
 『おにか………』


 われら、ひとごろしはしない。いやしけい・かいいたんとう。
 でも、めのまえにいるおには例外。
 われら、ほかほかにして殺す。
 われらはさっきだった。


 そしてわれらは、いま…………。


 ****


 宇髄「おー――――き————————ろっつ—————―――のっ!!!(ぺシぺシぺシぺシぺシぺシ)」
 善逸「う~ん。むにゃむにゃ………」
 宇髄「この状況分かってんのかテメェ! テメエが寝るから鬼の蛇に捕まっちまったじゃねえか!
こんなことになるなら庇わなきゃよかったぜ!」


 つばをペッペッとはいて、おとばしらは眉間にしわをよせてどなった。
 どなられているのは、まぬけづらのきいろいかみのニンゲン・ぜんいつ。

 こいつ、てきの蛇を相手しているうちに、きょうふがげんかいをこえた。
 いつものようにきぜつしたのを、えんばしらとおとばしら、そしてわれらはむごんで見つめる。

 深柚「あれれぇ? 疲れちゃいましたかねぇ? まあこちらとしてもあんまり痛めつけるのはカワイソウだし、シュン兄でも呼んでサクッと殺してあげたいって思ってたんですよね」

 おにの『しゆ』は、けっこうサイコパスのう。
 まんえんのえみで、むしもころさぬようなかおで、こんなことを言うのだから、やっぱりかのじょはわれらいじょうにかいいである。

 もっけ『われら、おこそうとした』
 もっけ『ほんとうのこと』
 もっけ『みみひっぱっても おきぬ』
 もっけ『どうする?』
 もっけ『かくなるうえは………』



 と策をたててみるも、たてているじかんがもったいないので、とりあえずぜんいつは、今回おしくも活躍の場をもうけられなかったねずこにわたすことにした。


 煉獄「すまないな! なにしろ我妻少年がこんな有様だから、少し手を貸してほしい!」
 禰豆子「ムームー!(コクコク)」

 ねずこはおにだけどやさしいから、すなおにうなずいた。
 そのようすにえんばしらは満足そうにのどをならして、

 煉獄「あと、柱の口からこれを言うのも大分恥ずかしくはあるが、救援を呼んでくれないか! なにしろ俺たちは蛇の舌に巻き取られている状態なのでな! うむ、舌から染み出る粘液のせいで動けない!」

 えんばしらははずかしいといったけど、じしんまんまんに言えてるならたぶんだいじょうぶかもしれぬ。

 われらのやりとりに、しゆは「ふぅん」といみありげにあいずちをうち、牙をのぞかせて妖艶に笑った。そして、蛇—花寂雷かじゃくらいの舌にとらわれて、絶賛ピンチ中のさんにん(ぜんいつはまだねている)をチラリ。

 深柚「アナタたちとは対等な関係は無理なようですね。アナタたちは仲間と連絡を取るようです。なら深柚しゆちゃんも仲間を呼ぶことにしましょう」


 もっけ「なかま!」
 もっけ「さらにふえるのか」
 もっけ「このじょうきょうでは、まさに劣勢」
 もっけ「このままではまける」


 どうする。われら、一カ月いじょうこいつらといっしょにたのしくやってきた。
 このあとのはなび、みんなといっしょにみたい。
 そんな、質素なねがいでも、われらにとってはとくべつなねがい。

 もっけ「ならばわれら、やるしかない」
 もっけ「あれをやるのか?」
 もっけ「もっけ魂をみせつける」

 われらのモットー、かずはちからなり。
 われらはがったいして形をかえ、あいてをおどかすことができる。

 すべてはうわさどおりに!!
 すべてはみんなのために!!
 すべてはアメのために、われら、ここでもんすたーもっけになる!!


 もっけ一同「がったい!!!」


 しゅんかん、われらの身体からまばゆい光線がはなたれ、くろもっけも桃色もっけもみんな、光にのまれた。
 そのまぶしさに、えんばしらもおとばしらも、しゆも、ぜんいつ(は寝ている)も目を咄嗟につぶる。
 

 ハッとかれらがふたたび目を開けたとき、その視界にはももいろのうさぎはいなかった。いるのは、うみぼうずのように巨大な一つ目のばけもの。これがもんすたーもっけ、われらのひっさつわざ。


 煉獄「噂には聞いていたが、なるほど! こういうもっけもまた一味違っていいものだ!」
 
 あいかわらず、からだに蛇の舌がまきついたままのえんばしらは、それでも明るく言った。
 そのよこでおとばしらも、ふだんとかわらず平常運転。

 宇髄「うおっ。かっこいいな! 大きさからして派手だし、目ん玉一つなのも目立ってるぜ!」

 ほめられて、わるきはしない。
 われらはちょっとほっぺたを染め、その後しゆにジリジリとつめよった。


 ジリ ジリ ジリ ジリ 


 端へ端へとおいつめられて、しゆはうめきごえともつかない「ヒュッ」というちいさな声をもらした。それから、たぶんかのじょなりの虚勢なのだとおもうが、

 深柚「わー……。す、すっごいですね! あのウサギさん、こんなふうに、でっかく、な、なるんですかぁぁ………。こ、これは恐れ入りましたぁ……」

 ことばとしては感心しているのだけど、あきらかにかんじょうがこもっておらぬ。
 さっきまであんなに威張っていたしゆは、一気に精気を失って、がんめんそうはくで一歩ずつうしろへさがっていく。


 深柚「で、でも……あ、アナタたちは所詮、合体しただけですよね? 深柚ちゃんの花寂雷に捕まって、身動きも取れないアナタ達は、まさに袋のネズミ、逃げ場がないんですよぉ……」


 しゆのことばが、じょじょに涙声になっていく。
 あんなにわれらたちをいためつけておいて、自分があぶないときは命乞いをする。われら、そういうのはあまりすきじゃない。

 深柚「ねえ、そうですよねぇ? 深柚ちゃんが負けるはずないですよねぇ……? ねえシュン兄、シュン兄なら分かってくれるよね? あの時仲間にしてくれたもんね? 強いって言ってくれたもんね? だから絶対、絶対深柚ちゃんは負けないよねぇ……??」


 なんでこのおんなが泣いているのかわからぬ。
 なにをそんなにうったえているのか、われらはわからず、ただ一つだけしかない目でじっとしゆの目を見つめた。

 しゆは綺麗な目をしている。
 にんげんだったころはきっと、びじんだったのだろう。
 びじんだからって、おにとなったことにかわりはないのだけど。


 深柚「………今はピンチの時ですよね? 認めたくないけど、今完全に深柚ちゃんは追い込まれてる。なら、このシュン兄からもらったこれは、今が使い時じゃないのかな?」



 しゆはそうつぶやくと、自分のしんぞうのいちに手をおく。すると、そこからくろい光が放たれ、われらのときのように、しゆの身体をつつんだ。くろい光をまとったしゆは、安心したような、ほっとしたような調子でポツリと言う。



 深柚「…………過去に生きた全ての同胞の力を結合する。これこそがシュン兄に与えられた、特別な力。六新鬼月なんてものがいたらしいけど、この力は彼らの非じゃない……」



 しゆはキッとこっちをにらむ。その双眸は朱色に変化しており、たてにながかった。すさまじい負のオーラにわれらのせなかからつめたいあせがながれおちた。

 これは、とんでもなくやばいことがおきるよかん。




 深柚「……………………血鬼術…………………………」




 かのじょがわざめいをとなえようと、ためをつくったそのとき。






















 ??「…………ボクらはそんなこと、されたいだなんて思ったことは一度もないんだけどなあ」












Re: ろくきせ恋愛手帖 ( No.123 )
日時: 2021/05/15 21:39
名前: むう ◆W6/7X9lLow (ID: mkn9uRs/)


 おっひさしぶりでええええす!
 今日の午前中で、四日間&九教科のテストが終わりました!
 &友達が拾った子猫の里親探しお手伝い中))
 頑張った、えらいぞむう!
 ということで今日も執筆頑張ってこ!

 ********

 〈仁乃side〉


 私はむっくんたちに合図をし、二手に分かれて元下弦の集団である『睦月むつきの会』所属の双子の鬼、布留ふる久留くるを倒そうとしていた。

 腰をかがめ、ベルトに装着した二本の短剣の柄に手を添える。
 鼻から大きく息を吸い、攻撃を繰り出す前に気持ちを落ち着かせる。

 私は何年、この動作を続けて来ただろうか。最終選別に行ったのは十一のときだ。
 そこから計算して、もう五年もたったんだ。


 有為「フォローは任せて下さい。危なくなったら援護します」


 陰陽師の少女・宵宮有為ちゃんが、陰陽模様の球体が先端についた錫杖を掲げる。
 その球の先からは、青白い光が微かに放たれている。


 仁乃「分かった。ありがとう有為ちゃん! よろしくね!」
 睦彦「足引っ張んなよ宵宮!」

 もう、むっくんったら素直に「ありがとう」って言えばいいのに。
 心の中で憤慨してると、私の背中の後ろの寧々ちゃんが一歩後ろに下がって呟く。


 寧々「私は何もできないのが痛い所よね……」
 光「大丈夫っス! なにかあったらオレに任せて下さい!」


 光くんが二ッと笑う。その笑みには周りの人の不安を和らげる効果がある。
 自然と寧々ちゃんの表情も明るくなった。


 久留「……なァ布留。もういい加減やってしもうてもええやろか」
 布留「ええんちゃう? まぁわっちらもあんま痛いのは嫌やしな。ちょっくらやろうさ」

 双子の鬼が、不敵な笑みを浮かべで腕を組む。
 フタゴなだけあって、その凶悪な顔つきも驚くほどよく似ていた。

 久留「せやな。そんで、終わったら深柚しゆあたりの護衛でもすればいいわな。与呼よっこのことは気にせんでええ。ああ見えて頼りになるさかい」
 布留「こっちはただただ、春俚と言うとおりにすればええんや」


 と、ようやく意見が一致したようで、二人が私たちに向かって人差し指を突き出す。
 その指の先からは黒い靄が発生し、あたりを漆黒に染めていく。
 

 花子「……みんな。慌てないで、冷静に行こう」
 睦彦「言われなくとも。六新鬼月に比べたらこんなもん、どうってことない」

 
 黒い靄は徐々に濃くなり、ただでさえ暗闇の中にいるのに更に視界が閉ざされる。
 しかもどうやらこの黒い靄は、人間には有毒なもので生成されているようで、時折私の体はぐらっとふらついた。


 仁乃「…………っっ」
 光「仁乃ちゃん、大丈夫っす……う゛ッッッ ゴホッ ゴホゴホッッ」


 私が、突然やってきたこらえがたい吐き気に苦悶の表情を浮かべていると、光くんが慌てて駆け寄ってきて背中をさすってくれた。
 でもそんな彼も、次第に靄の副作用でガクッと肩から崩れ落ちる。


 久留「ああこれはええ。なにもせんでも、勝手にあちら様がやられてくわぁ」
 布留「ほんまや。楽でいいわぁ」


 
 睦彦「………どこがッッ………楽だよ………ふざッッ………けんなテメエッ……」


 必死に声を絞り出すむっくんの額は、冷や汗でしっとりと濡れている。
 剣を握っている手も、小刻みに震えていた。

 やばい……。このままじゃ、敵を攻撃するどころか手も足も出ないまま終わってしまう。
 技を出さなきゃ……!


 仁乃「血鬼じゅ……ッ う゛!! ゴホッゴホゴホッッッ」


 不意に口の中が鉄の味に染まり、ハッと思った時には床に赤い液体を吐き出していた。
 なんだこれ。何だこれ何だこれ。え?? なにこれ。


 吐血。やばいどうしよう。これってかなりヤバいんじゃないだろうか。
 この血鬼術……この靄は多分、確実に人間を弱らせていくのだ。
 人間を確実に殺そうとしている。それも、間接的に。


 有為「仁乃さん、大丈夫です……か……!」


 陰陽師の血筋がゆえに、普段そこまで血鬼術の影響を受けない有為ちゃんも、今回ばかりは平気でもいられない。
 右に左にふらふらと揺れる、華奢な体。


 花子「みんな!! ヤシロは……! ヤシロ、大丈夫……」
 寧々「…………………は……なこく……ん」


 寧々ちゃんもぐったりと目を閉じてしまう。
 その様子を見て、布留と久留は怪しげに笑った。











 と。





 ??「そんなことで喚くなよ見苦しい」



 突然飄々とした声が、黒い空間内に響き渡った。
 低音と高音の間くらいの、男の声にしては僅かに高い声。
 その謎の人物は、下駄の音を響かせながらこちらへ歩いてくる。ただ黒い靄のせいで、彼の姿をはっきりと見ることは出来ない。


 ??「まぁまぁ。仕方ないよね生身の人間なんだからさ。その点、俺らが来たことはある意味彼らにとってはまさにラッキーOFラッキーってわけよ」


 ??「君も口ではそう言ってるけど、結局お友達に会えて嬉しいだけでしょ?」
 

 違う声質の男がからからと笑って言う。
 その言葉にもう一人の男は大きなため息をついて。



 ??「ほっとけよ。僕はまだ、なんでこんなことになってるのかすら分からないよ」
 ??「それは俺も同じさ。でもこういう機会を与えたからには、ちゃぁんとしなきゃね」
 ??「………まあな」





 布留「? どうやら誰か来たようやな。どないしよか」
 久留「とりあえず名乗ったらどうや? それが相手に対する礼儀やろ」




 二人の言葉に、謎の助っ人は同時にニヤリと笑って。
 そっと、それでいて力強く、この隔離された空間内に己の存在を言葉に表す。



























 


 「(元)上弦の零 六新鬼月が陸番目、燐月りんげつ
 「………元第224期鬼殺隊が一員、瀬戸山亜門せとやまあもん


















「「さて、アンコールの時間だ」」



 




 

Re: ろくきせ恋愛手帖 ( No.124 )
日時: 2021/05/29 20:29
名前: むう ◆W6/7X9lLow (ID: mkn9uRs/)


 【お知らせ】

 最近色々忙しくあまり更新が出来ないうえスランプになり
 前かいていた呪術廻戦とのコラボの話が書けなくなっちゃいました……。
 それで、削除はしてませんが目次からは失くして、
 違うアニメキャラとかとの反応集みたいな短編をちょっとずつのっけていこうかなと思っています。
 いつも見てた方には本当に申し訳ありませんが、グダグダなまま終わるのが嫌だったので。

 ということでこれからは反応集とか(「○○してみた」的な)ものになります
 前のお話が見たい人は一気読みをお勧めします。

 

Re: ろくきせ恋愛手帖 ( No.125 )
日時: 2021/09/04 17:59
名前: むう ◆W6/7X9lLow (ID: Iawl57mY)


 みなさんこんばんにちは、約三カ月ぶりの再会でしょうか?
 この度むうさん、更新停止の件で一つお話をさせていただきます。
 コラボ短編をやっていましたが、現状忙しくあまり執筆時間がないため、
 オリキャラの過去話が完結しているのもありここらで完結としようと思います。

 いやぁ……確か、ろくきせシリーズ第1段の「会話文短編集」を書いたのが中2の冬あたり?
「六人の軌跡」書いたのが中3の4月から8月!? 四カ月も書いてんの、ヤバくない?
 すごいなそんときの書く速さ……。

 そのころは私不登校で、毎晩泣きつつこのお話を書いていたなぁ……。
 今も不登校なんですけど。今度通信制に代わるんですけどね。

 あのころはよく鬼滅見てましたけど、今はあんまり見てないなあ。
 ようつべばっか見てるなあ。今流行りのアニメとかわかんない……。
 人は色々変わっていくんですね。

 あと、むうさん結構お絵かきするので、初期に比べてだいぶ絵上手くなりましたよ!
 今度またろくきせのオリキャラ書こうかなあ……。何年ぶりだ? 書くの……。

 前よりはコピックの数も増え、塗り方もうまくなったしデジタルもできるようになった!
 そして今私には夢がある。歌い手になる夢!
 と言っても親は当分認めてくれないし、活動は大人になってからだと思うけど……。
 年下の子でめっちゃうまい子がもうYoutubeやってて、焦る日々であります。。。


 とね、長く語ってきましたが、こんな前置きながい作者の小説を読んでくださって感謝です。
 いや長いですよね、私の前置き……。それもいっつもなんか書いてましたからね。
 とはいえ、これが最後になるのはちょっと寂しいです。
 また、気が向いたら読み返してほしいなと思います。


 この……2年間かな? 本当にありがとうございました!
 完結処理をしておくので、夏休みとか、そういう時に短編集や六人の軌跡と合わせてじっくり読んでくださいね!


 なお、私は時々コメライ版のカオ僕を(気が向いたら)更新しに行くので会えるかも?
 それではまたどこかで。ばいばい!