二次創作小説(紙ほか)
- Re: ろくきせ恋愛手帖【短編集】 ( No.32 )
- 日時: 2020/09/12 17:16
- 名前: 繧amp; ◆miwaoqDlgA (ID: 9Yth0wr6)
〈花子side〉
———くん!
あれ。今誰か、俺の名前を呼んだ?
視界は暗く、その子の顔を見ることは出来なかった。
分かったことと言えば、自分が仰向けに寝転がっているということ。
えっと、ここはどこで、俺は何をしていたんだっけ?
———こくん!
まただ。また、誰かが何か言っている。
俺はゆっくりと瞼を開けた。視界はまだ暗かったが、目はしっかりと冴えていた。
寧々「花子くん!」
花子「ヤシロ!」
俺が、なかなか起きなかったからだろう。ヤシロが今にも泣きそうな表情で、俺を見た。
隣にはつかさと七峰がいて、俺たちの周りをかまぼこ隊が囲んでいた。
花子「えっと、ここはどこだっけ」
桜「8番の領域の無限階段よ。頭でも打った?」
そうか。ここは、無限階段だ。8番の指示に逆らったから。
しかし、何とも殺風景な場所だ。
石造りの階段以外、何もない。なんだか、少し寂しい気分になる。そんな場所だった。
炭治郎「とにかく、ここから出なきゃいけない。どうすれば出られるんだろう」
夏彦「うーん。階段は昇り降りできないからね。そこのあたりは、七不思議様が詳しいと思うよ」
花子「うん。依り代を壊せばいいと思うんだ」
ここで花子くんの七不思議講座ー!
七不思議には力のよりどころとなる「依り代」がある。
おもちゃとかによく使われている電池と同じような感じなんだ。
だからそれを壊してしまえば、七不思議は弱体化できるというわけ。
え、俺の依り代は何かって? うーん秘密☆
善逸「なるほど。でもさ、でもさ? こんな暗い場所で、探せるのかなあ」
伊之助「あるってんならあるだろ。本当に紋逸は弱っちいな!」
善逸「ごめんなさいね!!」
よし、依り代を探しに行こう。
そう決心して、俺は立ち上がったのだけど。
??「ここから先へは行かせないわよ」
花子「来たね、8番」
案の定、七不思議8番・八雲が音もなく後ろに立っていて、俺の腕を掴んでニッコリ笑う。
その笑顔の裏には、どす黒い何かが貼りついていた。
俺は学ランの懐から、包丁を取り出し、身を低くする。
ヤシロたちを庇うように手を広げ、キッと八雲を睨みつけた。
つかさ「普ー! 俺も一緒に戦いたいんだけど、いい?」
花子「じゃあ、お願い」
つかさ「やったああああああああ! 普ダイスキ——————!」
つかさは俺と一緒に行動することが嬉しいらしく、ぴょんぴょんと飛び上がった。
その拍子に腕が日向の脳天に当たり、日向が「グェッ」とうめく。
花子「ここは俺たちが何とかする。ヤシロたちは、依り代を探して!」
光「で、でも場所が分かんねえし………」
睦彦「ばか。分かんねえから探すんだろうが。よし、行くぞ」
さっき周りを見回した時に気づいた。
この踊り場に面している、下の階に行く階段がある。
ずっと上の階段にばかり気を取られていたけれど、下に降りて行ったら何があるのだろうか。
俺の声に、刻羽たちが一斉に駆けだし下の階へ急ぐ。
八雲が慌てて手を伸ばしたが、その隙をついて俺は白状代を彼女めがけて投げつけた。
花子「蹴散らせ白状代!!」
八雲「キャッ」
白状代から放たれた閃光に、八雲がとっさに目をつぶる。
そしてゆっくりと顔を上げ、彼女は斜めから俺とつかさを睨みつけた。
八雲「…………邪魔ものが」
そう吐き捨てるた直後、八雲の体から黒い靄が噴き出た。
その靄は彼女の頭へ、足へ、腕へ、次々と巻き付き、シューシューと不気味な音を立てる。
八雲「……………封呪・解放」
そう彼女が呟くと同時に、黒い靄が一斉にこっちへ向かってくる。
じりじりと、顔やら足やらにまとわりつく感触に不快感を得る。
手で靄を追い払いたいが、靄の巻き付く力の方が強い。
花子「うわっ!!」
つかさ「っっっ!!」
瞬く間に靄に手足の自由を奪われ、俺とつかさは揃って地面に倒れこんだ。
頭上から、八雲の冷たい視線を浴びる。
それは、怒り以外の全ての感情を失った、憎悪に満ちた表情だった。
八雲の手が俺の顔へと伸びる。
俺は、床に落ちた包丁の柄を歯でつかむと、身体をひねって八雲の足元へと包丁を投げつけた。
そこで、俺の体力は限界になり、放った攻撃が命中したのかどうかも分からないまま、俺の意識はまた闇の中へと消えて行った。
『………………私に近づかないで』
どこか遠くで、必死に泣くのをこらえたような声が、聞こえた気がした。