二次創作小説(紙ほか)
- Re: ろくきせ恋愛手帖 【亀更新です】 ( No.85 )
- 日時: 2021/01/09 07:44
- 名前: むう (ID: mkn9uRs/)
このお話は、ろくきせの『最悪の出会い』と被っています。
有為目線じゃなくてかまぼこ隊目線がいいなぁと思った方は
あっちもまた見て見て下さいね。
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それから三日後。
なんと、呼び出してしまったおかしな三人衆は、更に人を呼んで戻ってきた。
家の前にある畑で夕飯に使う野菜を収穫していたら、足音が近づいてきた。
お客だろうかと振り返りげんなりする。
ついこの間追い出したはずの人間が、なんと他の厄介そうな客を連れて戻ってきた。
??「フヒィー。聞いてないよ、この山に鬼が出るってこと!」
??「私もう死にますおやすみ…」
??「まだ逝くな胡桃沢!! 起きろ!!」
ギャースカギャースカ。
寧々「あの子! 大根足って言ってきた犯人!」
光「この前は謎の術でぶっ飛ばされたけど、今度はそうはいくか!」
花子「よし、ここは強行突破ってことで。蹴散らせ白杖代!(ビュンッ)」
学ランの男の子が、横に浮いていた人魂を投げつける。
ボフンと煙があがり、ボクはゴホゴホとせき込んだ。
有為「(何て威力…しょうがない、こちらから少し牽制でもしようか…)」
それに、彼らが連れて来た人たち。
あの制服、見たことがある。
確か鬼殺隊が揃ってきている隊服じゃないっけ?
鬼殺隊の皆さんがどういう理由で宵宮家を訪ねに来たのか分からない。
だったら、こっちから聞くまで。
有為「(スタスタスタスタ)」
善逸「あ、女の子がこっちに歩いてくる。結構かわいい……アレ?」
睦彦「おいおいおいおい。なんか丸い球がついた杖もって猛進してくるんだけど!」
有為「一遍死んでください」
花子「ぁぁ俺、一遍死んでるから、もう一回死んだりできないので、うん」
有為「……祓魔術・水の神 水龍刃風!!」
お約束で、水を含んだ突風が吹き荒れる。
学ランの男の子が操っていたハクジョーダイ?という人魂がクタクタになって戻ってくる。
花子「おい宵宮! 俺の白杖代をいじめないでくれる」
炭治郎「噂に聞いてた通りの毒舌だな」
仁乃「そうだね大丈夫かしら……」
有為「なんですか便所虫くん。折角追い出したのにまた来たんですか、懲りないですね。
貴方はうちの子じゃありませので、これに懲りたらとっととお帰り下さい」
ボクだって忙しいんだから、勝手に来られても困る。
まあ自分の失敗のせいだってことは認めるけど、帰る家があるなら帰ればいい。
炭治郎「君が宵宮有為ちゃん?」
有為「ええそうです。貴方達は鬼狩り様ですか? 取りあえず中へどうぞ」
睦彦「…アイツらは」
有為「ああ、気にしないでもらって結構です」
花子くんキャラ一同「おーい!(# ゚Д゚)」
本当のことを言えば、心のどこかでは彼らを家に上がらせてあげたいと思っている。
でも、今までそんなことしたことがないから、どうふるまえばいいのか分からなかった。
嫌われないようにと決めた敬語と一人称だけ、ちゃんと徹底した。
善逸「有為ちゃん? いくらなんでもそれは酷いと思うよ。うん」
睦彦「…アイツらは案内人?で色々頼りになったんだよ。
泊まる家もないみたいだし止めてやればいいじゃねえか。デカい家なんだし」
仁乃「そうだよ、いくらなんでもそれは無慈悲……」
鬼狩り様が必死でお願いするものだから、少しだけ気持ちが揺れた。
まあちょっとだけ、ちょっとだけならいいかな。
と思ってボクなりに優しく声をかけたつもりだったけど、
有為「鬼狩り様がそこまで言うなら考えてみましょう」
花子くんキャラ一同「ほんとっ?」
有為「そこの大根足、交通ピアス、便所虫? ボクの家に入って結構ですよ」
また軋轢が生まれた。
寧々「だから私は! 大根足じゃない!」
光「オレの名前は源光! 名前があるんだからそれで呼べ!」
有為「分かりました。『げんこう』くんですね」
光「音読みやめろ―――! 『みなもと・こう』!」
どうやったら皆みたいに人と無理なく会話ができるのか分からなくて。
自分なりに色々やってみたけれど、便所虫くんはショートするし大根足は泣くし。
名前をしっかり呼ぼうにも、呼んでいいのかすら分からなくて。
有為「………(また、失敗した…)」
仁乃「……(ぽん、と有為の肩に手を当てて)」
有為「っ? えっと、貴方は…」
仁乃「私、胡桃沢仁乃! 仁乃って呼んで。よろしくねっ」
有為「………胡桃沢さん」
仁乃「名前でもいいよー。同年齢なんだし、ね」
仁乃さんのことを名前で呼べるようになったのは、それから一週間後。
ボクが彼らに心を開けるようになったのは、彼女が話してくれたある昔話がきっかけだ。
みんな、色々なことを思って、苦しみと葛藤しながらも笑って生きている。
自分だけが苦しんでいるという考えは違う。
そんな当たり前のことを、ボクはなかなか気づけなかった。
生まれてから今まで14年間、一日として暴言を言われなかったことはなかったから。
我慢できないくらい苦しい事が会った時、自分にとって防衛手段は我慢しかなかったから。
体で覚えた固定概念が壊れることなどないと思った。
しかし、固定観念を創り上げるのが人なら。
それを崩してくれるのもまた人だった。
世の中にはどうしようもないほど馬鹿な人間がいて、いい人は一握りしかいないけど。
その一握りの人に出会えた奇跡を、とあるある日ボクはやっと知ることができた。