二次創作小説(紙ほか)

Re: ろくきせ恋愛手帖 【亀更新です】 ( No.94 )
日時: 2021/01/19 18:08
名前: むう (ID: mkn9uRs/)


 ♪そりゃ色々あっただろう今もあるだろう
  でも笑いながら生きていく
  それが人世だって(くぅぅ~いい曲だ!)

 ********


 〈光side〉

 カオルって奴に宵宮が乗っかかったとき、とっさに仲介しようとしたんだけど。
 いつの間にか二人の間で勝手に話が進んでて、オレの出る幕は(多分)ない。
(そしてそれは炭治郎や仁乃ちゃんたちも一緒なんだけど。)

 できることと言えば、術に乗っ取られたことで弱っている花子をおぶること。
 そして、そんなコイツを襲おうと殺気立ってる勿怪をなだめることだ。


 もっけ「やめろ」「みみをひっぱるな」「このこの」
 光「うるせー! そうでもしねぇと暴れるだろうが!!」
 花子「う……少年~……」

 
 そんなオレにお構いなく、向こうで宵宮とカオルは話を進めている。
 泣いたり叫んだり怒ったり、かと思えばけろりとしたりと、忙しい子だ。
 まぁ人情味がない人間はつまんねえけどな。


 有為「ボクが『記憶操作術』を使い、カオルさんは『洗脳術』を使うことで時間を短縮できます」
 カオル「はぁ。つまり、俺が人の意識を乗っ取ったあとにお前が記憶を奪うと」
 有為「ええ。記憶操作術は広範囲の効果が期待できますので」


 カオル「ってことは俺の記憶も消えるのか?」
 善逸「嘘!? 嫌よ俺、有為ちゃんの過去やっと聞けたのに!!」
 禰豆子「ムー!!」


 記憶を消す……ねぇ。
 善逸が嫌なように、オレも自分の仲間に記憶を消されたくはない。
 みんなで全部共有しようって決めたのに、その約束ごと破られそうで。


 光「おい宵宮!! 消さねえよな!? 嫌だぜオレ、このまま終わるのは!!」
 有為「…………」


 宵宮は黙り込み、そう叫んだオレをまじまじと眺めた。
 何か言いたそうに口を開きかけたが、どう伝えればいいか迷っているようで咄嗟に口を閉じる。
 そうやって、酸欠の金魚みたいにしばらく口をパクパクさせてたが、



 有為「………分かりました」



 とあくまでも渋々と言った様子で、肩をすくめて見せた。
 いつもはズバズバと行くけど、本性は物凄く繊細な彼女のことだ。
 仲間に心配をかけまいと、本当は記憶を消したがってたのかもしれない。



 炭治郎「ありがとう有為ちゃん。大好きだよ!」
 寧々「私も大好き! 有為ちゃんの料理、すっごく美味しいもの。また作ってね!」
 仁乃「……わ、わたし………も好き……(ぜーぜー)」
 睦彦「だから寝とけって……(仁乃おんぶ中)」


 炭治郎のストレートな発言に押されたのか、あとの面々も揃って叫ぶ。
 伊之助も「俺も!」と言おうとしたが、直後恥ずかしくなりそっぽを向いてしまった。


 みんなの「好き」コールに、宵宮は顔を真っ赤にしたあとに俯いて、小さな小さな声で呟く。
 きっと環境が環境だけに、言われ慣れてないんだろうな。
 
 
 有為「!? ………わ、わたしも……大好きです……」
 カオル「おい、いつまでイチャイチャしてんだよ。やるんだろ? 早くしねえと全員乗っ取るぞ」
 一同「それだけはご勘弁をぉ!!(秒殺)」

 
 さっき知ったことだが、コイツの洗脳術を解かないといずれ脳がやられて死に至るらしい。
 仁乃ちゃんがかかった術も同じく、解呪しなければ人間の命を奪うものだ。
 夜月家……恐るべし。


 有為「(杖を構えて)では、行きますよ。ミスる覚悟はありますか?」
 カオル「ミスる前提なのお前!?? フラグ立てんなよ!!」
 有為「だって……『初心者でもわかる』転移術も失敗でしたし……」


 あれ、初心者でもわかる超初歩的の術だったんだ……。
 でも今となると、失敗したことでオレたちは大正時代に来れたんだから、怪我の功名だけどな。


 睦彦「おぉいやめろ!! 卵焼きを作れなかった俺が居たたまれないだろうが!!」
 光「教えるって言ったのに聞かねえから……(ボソッ)」


 睦彦、お前はそもそもレシピを完全無視してんだよ。
 レシピなしに作って成功するのは、料理研究家とかそういうプロだけの話で。
 初心者がレシピなしでぶっつけ本番ってのは、それはオレもフォローできねえよ……。


 カオル「ああもう黙れお前ら!!」
 一同「はいッ。すみません!!」


 あんだけ痛めつけられたせいか、カオルの発言には逆らえない流れが出来てる。


 カオル「ってことでやるぞ宵宮!! 『術式発動:極・輪界心異りんかいしんい』!」
 有為「祓魔術・終ノ目 『記憶操作』!!」



 グラグラッッ


 二人がそう唱えた瞬間、一瞬だけ地面が揺れたような気がした。
 術の反動だろうか。
 オレには何も見えないが、きっと今宵宮とカオルの術が広がっているんだろう。


 これでもう、宵宮を―そしてそのほかの忌子を苦しめて来た概念はなくなる。
 彼らに、新しい世界が広がるのか。
 
 小さい頃から体で感じて来た概念だ。
 急になくなったことで、直ぐに全部が良くなったりはしないだろうけど。
 この出来事が、多分陰陽師という世界に生きている人の心の救いになったら。



 それに越したことはないよな、宵宮。



 オレはお前を凄いと思うよ。
 たかが一歳年が違うだけ、生まれた時代や環境が違うだけなのにさ。

 精神年齢もお前の方がずっと高くて。
 色々な辛い事を経験したからだと思うけど、ゼンッゼンお前が笑わないから。
 だから今日からは、お前の笑顔が見れるのかなって思うと、良かったなって。


 

 ****




 有為「お、わ…………った…………(ドサッッ)」
 伊之助「おい、しっかりしろォ! 立て!」
 有為「術の……反動……で数日は……起き上がれないから………」
 伊之助「チッ。しょうがねえ、オラ、負ぶってやるから!」


 宵宮は、術の反動で動けなくなってしまった。
 それほどまでに『記憶操作』と言う術は、扱いが難しかったんだろう。
 お疲れ様、有為ちゃん。



 カオル「っ、ってことで俺はここで! もう一生この家には来ねえから!(ダダダダ)」
 炭治郎「あ、あの、初対面なのに剣振ってしまい申し訳なかったです!!」
 善逸「ほんとそれね!! 仁乃ちゃんも怒るとやべぇけどお前も同じだと思うよ、俺」
 炭治郎「ほんっと、申しわけなかったです!!」


 
 カオル「……あの、その、……なんだ。俺も四人もケガさせたし、まぁ別に、いいけどよ」
 炭治郎「本当ですか!! じゃあさようなら! とっととお帰り下さい!!」
 善逸「だからホントそういうとこだよ炭治郎!!!」


 こうして、長い長い忌子の苦悩は終わり。
 この日をきっかけに、彼らの新しい世界が広がる(のかもしれない)。


 とりあえずは、仁乃ちゃんや宵宮を介抱しないとな。
 先輩、裏に井戸ありましたよね。水汲んできて湿布作りましょう。

 オラみんな、急げ急げ! 宵宮家の管理する奴が倒れたんだぞ!
 なら仲間のオレらが、しっかりやんねえとな!!