二次創作小説(紙ほか)

二度の生における旅路(その1) ( No.118 )
日時: 2023/07/19 17:46
名前: 桜 (ID: BmxuFWGD)

今回はガウェインに何があったか垣間見る話です。
本来なら禁忌とされるけど、理由がなんだかなぁ・・・






「小ネタ」どうやって実体化するようになったの?


サンソン「そういえば、この耳飾りがないと人間には見えませんね;当初も召喚者に認識されませんでしたし」
トリスタン「それでエージェント殿らが見えるなんてもう特技としか言いようがありませんね」


すると、そんな二人にモードレッドが声をかけていた。


モードレッド「何話してんだ?」
トリスタン「モードレッド。実はかくがくしかじかでして」
モードレッド「はあ?サンソン、お前、実体化の方法を忘れてたのか!?」
サンソン「え?」


思わず呆気に取られたサンソンにモードレッドが説明する。


モードレッド「サーヴァントでも霊体化や実体化できるんだぜ?オレらが今人に見えるようになっているのは実体化をしてるからなんだぞ!そんなことを思い出さないでそれを頼ってたのか!?」
トリスタン「あ、確かに。それは私も同様でしたね」
サンソン「・・・;アレクにも後で伝えて来ます」


そしてサンソンとアレクはなんとか実体化ができるようになりました(ちゃんちゃん♪)






エージェント「ユーリが・・・ガウェインの元マスター・・・!!?」


赤の吸血鬼から明かされた事実にモニターで聞いていた人達も含む大半の全員は驚愕し、それを聞いたモードレッドは食ってかかろうとする!


モードレッド「てめぇ!!ずっとオレ達を扇動させて踊らせた挙句に騙しやがって!!よくも・・・!!許さねぇぞ・・・!!」
ギロロ「落ち着け!!相手の話もちゃんと聞け!!」
天草「なぜこのようなことを・・・」


ユーリは少しだけ沈黙を貫いたが、すぐに口を開いた。


ユーリ「あいつが望んだ願いだ。私はそれを汲んだだけだ。どうしても「愛する者の生まれ変わりと一緒に死にたい」と言ったからな・・・」
獅子王「ガウェインが、愛する者・・・?」


一方、クロスはクロードから話しかけてきた。


クロード「ツースト殿から逃げていいのか?」
クロス「ああ・・・私の罪悪がある以上向き合いたくない」
クロード「稀だな。あれだけ主人第一主義だったお前が、主人と向き合いたくないとは。よほどガウェインが、あの猫のからくりとどこか似ているからか?」
クロス「・・・」


一方、ヘンダーランドの跡地にある傷だらけの三つ巴悪魔の拠点のキャメロット城ではガウェインが眠ったままのホイップに話しかけていた。


ガウェイン「ホイップ。私も何か知りませんが、あの現代の月の巫女には何か懐かしみが感じますよ。貴女の顔からしても同じですね。大切な思い出だったように・・・」


ガウェインはホイップの手を握りしめながら告げる。


ガウェイン「・・・もうすぐです。貴女はもうすぐ、眠りの呪いが解ける。その要となるクルークを連れて行きます。それまでお待ちを・・・」


誰も知らない。あの流れ星の降る夜に、澄んだ青空が広がる朝に。あの時に誰にも頼らない決意と引き換えに失った、私のどうにもならずとも叫びたい願い事を・・・

二度の生における旅路(その2) ( No.119 )
日時: 2023/07/19 17:49
名前: 桜 (ID: BmxuFWGD)

今から約250年前。まだ先代の月の巫女ルナが生きていた頃のメルヘン王国で起こった最初の聖杯戦争。その名は「第一次幻奏的聖杯戦争」。2回渡って行われたこの最初の聖杯戦争にユーリはヴィルヘルムからの依頼で参加者として関わった。
そして彼はヴィルヘルムに渡された触媒である円卓の破片を見ながら言う。


ユーリ「全くヴィルは自分が急用ができたと私に押しつけて・・・まあいい、呼び出すか」


ユーリはそれを触媒にある円卓騎士を召喚する。クラスはセイバー。その風貌は自分達妖怪には眩しく見えた光の王子そのものだった。その真名は・・・


ガウェイン「ーーーーー円卓の騎士、ガウェイン。これにより召喚に応じました。此度貴方の力になりましょう」


ユーリはガウェインの一切の曇りもない瞳に思わず圧倒されかけるが、すぐに立ち戻り彼に告げる。


ユーリ「聖杯はいらぬ。人に頼まれたのでな。私は自らの見聞を広めるために参加している。私は赤の吸血鬼。だが、勝ち進める。ーーーーー気は緩むなよ」
ガウェイン「はい。ユーリ」


ガウェインと契約したユーリは幻奏的聖杯戦争に足を踏み入れ、そこで順調に勝ち進めていった。


ガウェイン「この太陽の剣に、勝利を!」


ガウェイン「良き営みを守り給え!」


ガウェイン「ぬぬぬ!成敗!」


ランサー、ライダー、バーサーカーの順に次々と勝ち進めていく中、ユーリはある日の夜に本を読んでいたところをガウェインが来た。


ガウェイン「マスター。もう眠る時間ですが」
ユーリ「生憎私は忙しい。後にしてくれ」
ガウェイン「わかりました」


ガウェインは歩こうとするが、ドアを開けながら歩を止めたのをユーリが気付いた。


ユーリ「・・・セイバー、何をしている?」
ガウェイン「貴方に仕えるセイバーの私は今出て行きました。ここにいる私は吸血鬼でも人の心を持つ貴方を気にかけるガウェインの私です」


ユーリはガウェインの言葉にふっと微笑った。


ユーリ「・・・情に流される癖はどうにかならんか?ガウェイン」


ユーリは本を閉じた後、ガウェインに付き添ってもらい眠りにつこうとする。


ガウェイン「ユーリは最強と言われる吸血鬼始祖でも無理していることも知っています。残りはアーチャーとキャスター、アサシンだけですし」
ユーリ「・・・お前に気遣われたくはないな」
ガウェイン「私は此度の生で貴方に忠義を誓う騎士ですので」


聖杯戦争ではお互いに「セイバー」「マスター」と呼び合っているが、休息の地では名前で呼び合う仲にはなっていた。その翌日にガウェインがアサシンを倒し、残りはキャスターとアーチャーの2名。とある日にキャスター対策のためにその拠点としている街を訪れていた。そこでは旅の途中であったルナと会った。


ルナ「で、キャスターへの対抗策はその呪いに耐え切るかよね?セイバーのスキル上弱体解除はできないだろうけど」
ガウェイン「私にはガッツスキルがありますので。短い間ですが」
ルナ「まあ弱体解除の魔術道具は用意しておくわ」
ユーリ「ああ。ありがとう、ルナ」


ガウェインはユーリの今の表情からしてルナに好意を抱いていることに気付いていた。それは人の心を持つならば当たり前の感情。英霊である自分とて例外ではなかった。


ガウェイン(私は忠義の騎士。生前のランスロットへの激情で最期まで我が王に寄り添えなかったことを悔いて、それで英霊になってからはより完成された騎士と化したのだ。その自分には誰かに恋情を抱く自覚はない)


すると、一人歩いていたガウェインは気付けばある教会にいた。彼は恐る恐るそこに立ち入った時、気付けばそこでお祈りしているある少女を見かけた。その少女が持つ天使が持つような美しさに心を奪われていた。


ガウェイン「・・・」
少女「!?あなた、追手の一人かしら!?」
ガウェイン「いえ、違います!私は一人ここに来ただけです」
少女「そうなの?そういえば、追手の中にこんな騎士様はいなかったわね」


少女の言動に意味深なものを含まれているのをガウェインが疑問に持つが、少女は自分の名を名乗る。


少女「私はアメリア。本名じゃないけど、それを呼んでくれたら」
ガウェイン「あ・・・ならば、私はセイバーと呼んでくれたら。ちょうど自分のマスターと行動を共にしているので」


すると、ユーリが自分を探す声が聞こえた。


ユーリ「セイバー、どこに行ったー!?」
ガウェイン「あっ、マスターが呼んでいるので、では」


すると、アメリアはガウェインに対して言う。


アメリア「18時半。そこで毎日教会に来てるから、ここに駐在する間はおいでよ」
ガウェイン「!(明日も会っていいってことですね」


それからガウェインは18時半に教会を訪れてアメリアに会っていた。アメリアは純真無垢な心を持ち聡明で打たれ強い人物だった。彼はアメリアからいろんな話をしてくれた。


ガウェイン「すみませんが、この本の写真の花は?」
アメリア「カルミアの花」
ガウェイン「カルミア?アメリアはいいですね、いろんな字が読めて。私ももう少し字を読めるようにしたいですね。アメリア、私には忠義とは別に願いがあります。マスターと共に聖杯戦争が終わった後も各地を旅して、世界中の国々を見て周るのです」


ガウェインの願いにアメリアは言った。


アメリア「じゃあ、その花はセイバーにピッタリね」
ガウェイン「えっ?」
アメリア「その花の花言葉は、〝大きな希望〟・・・」


次第にガウェインは彼女と教会で会うことも楽しみの一つに含まれていた。またとある日にガウェインはアメリアが「あなたに見せたいものがある」と言われて連れに行ってくれた。


ガウェイン(私に見せたいものとはなんでしょう?)
アメリア「あっ、ほら!着いたわ」


すると、その風景にガウェインは心を奪われた。それは数ある雪だるまの下にろうそくを置き、幻想的な雰囲気となっていた。


ガウェイン「おお・・・」
アメリア「雪だるま祭りよ。この下にろうそくを置いて祈りを捧げているの。この街の風物詩。まあ、父親は下らないとか言うだろうけどね・・・」


アメリアは時折悲しそうな表情をしながら言う。


アメリア「実は私はこの国の王族の一人なの。でも、王宮内で退屈な暮らしは嫌だから、この街にお忍びで行って教会に祈りを捧げてる。王である父親はそれを快く思わないけど」
ガウェイン「随分と子供に対する愛情が薄い父親ですね。出会った際の貴女の顔からしてそう感じ取れる」
アメリア「あっ、やっぱり?・・・でも、バレた際はいいわよ。リミットが来たってことだもの」


そう割り切れてしまっているアメリアの悲しみを帯びた表情を見たガウェインは彼女にある提案を持ちかける!


ガウェイン「では私は貴女も連れて行きます。ユーリは許可を取れるかわかりませんが」
アメリア「!・・・気持ちは嬉しいわ。ありがとう」


なぜガウェインがアメリアにあんな提案を持ちかけたのかわからない。しかし、彼はアメリアに会う度に切なくて、狂おしいほど嬉しかった。ガウェインはいつしかアメリアを好きになってしまったのだろう。これがユーリのルナに対して抱く好意の正体だろうか。
そしてその後に帰って来た後にユーリにその話を持ちかけた。


ユーリ「構わんよ」
ガウェイン「えっ、良いのですか?」
ユーリ「ああ。忠義を貫く姿勢のお前がそんな提案をするとは思わなかったからな。意外に思っていたかもしれん」


しかし、ユーリはどこか渋ってもいた。


ユーリ「だが、このままではお互いとて面白くない。ならば・・・キャスターを倒した時に褒美とするのはどうだ?」
ガウェイン「!はい!頑張ります!」


その翌日、キャスターとそのマスターの居場所を割り出した二人は対峙するべく事前に指定された待ち合わせの場所にいた。


ユーリ「確かここだな・・・」


すると、ある足音が聞こえた。その姿にようやく来たと確信する。キャスターだ。


キャスター「ンンン!これはこれは。まさか本当にくるなんて思わなかったですねえ」
ユーリ「!貴様、自分のマスターはどうした?」


マスターが来ていないことに気付いたユーリの問いにキャスターは自分のマスターのことを話す。


キャスター「ああ、あれは感性が善良な方でして。だから、業を煮やしたので呪符で生きられないようにしました!」
ガウェイン「!!なんと酷い・・・!!」


キャスターの行動に二人は唖然とするが、キャスターは呪符を持ちながら言う。


キャスター「お話はそこまでですぞ。ここからは戦いの時間ですよ〜!」


キャスターの強さに二人は思わず苦戦するが、それでも負けじと粘り続け、ユーリはついに令呪を浮かばせた!


ユーリ「セイバー、令呪を以て命じる。〝宝具を放て〟」
キャスター(令呪・・・!ということはセイバーが狙うのは上から・・・!)
ガウェイン「そんなわけあるか」
キャスター「なにぃーーーーー!!?」


すると、ユーリの令呪を受けたガウェインは宝具を放つ準備が整った!


ガウェイン「予想通りの動きをしてくれて助かったな」






ガウェイン「転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)!!」






ガウェインがキャスターを倒し、これで残るはアーチャーのみになったが、キャスターは消滅間際にこう言い放つ。


キャスター「あなた方は彼女は放っておいて大丈夫ですかな?」
ユーリ「何が言いたいのだ?」
キャスター「いや、それだけではないですぞ。拙僧が言いたいのはあなた方はこの聖杯戦争が終わった後も、もがくほどの苦しみを味わうことになりますぞ」


キャスターがそう言い残して消滅した後、ガウェインはその言葉から何かを察した。


ガウェイン「アメリア・・・!?」
ユーリ「セイバー!!?」


ガウェインはアメリアがいる教会に走り込んでドアをバンと開けた!彼はアメリアの名を呼びかける。


ガウェイン「アメリア!私です!セイバーです!いるなら返事して下さい!返事を・・・」


すると、ガウェインは血に塗れたある亡骸を発見する。唖然とする彼はその亡骸の名を呼ぶ。


ガウェイン「アメ・・・リ・・・ア・・・」


後から来たユーリはそれを見て驚きつつもガウェインに伝えようとする。


ユーリ「セイバー・・・彼女はもう・・・」


すると、ガウェインはルナに渡されたある魔術道具を使おうとする!それは繋げれば生きる人形と化す曰く付きの糸だった。


ユーリ「何をしている!?」
ガウェイン「生きる人形として繋げるのです!それで蘇生さえすれば、彼女は生き返ります!」
ユーリ「莫迦者!!死者の蘇生は禁忌だと貴様も聞いているだろう!たとえ成功したとしても生前の記憶は消失する!たとえ大切な思い出だとしても!ルナはそれを覚悟を持って使えと渡したのだ!」


ユーリの言葉は正しい。突き刺さるほど冷酷であるが、ちゃんと理に適っていた言動だった。それでも現実を受け入れられないガウェインに対し、ユーリは何かを持ちかける。


ユーリ「ガウェイン。我らが勝利したら聖杯はお前に捧げる」
ガウェイン「・・・!」
ユーリ「それでアメリアのことも忘れぬようにこの聖杯戦争に関連する記憶をを保持すると願え。お前はその時に・・・アメリアが生まれ変わった者とまた恋をするのだ」


ユーリの提案にガウェインは失いかけた言葉を使って自分の想いを打ち明けた。


ガウェイン「・・・ユーリ。死にたいですね。また、死にたいですね。今度は、私が愛したアメリアが生まれ変わった者と」


涙を流すガウェインをユーリは子供をあやすかのように優しく抱きしめた。その後にガウェインは彼女の亡骸にカルミアの花を添えた。


ユーリ「行くぞ。もう人が来る」
ガウェイン「はい・・・さようなら、アメリア」


その後に発見されたアメリアの死は猛毒によるものだったが、それは兄弟間で起こった次なる王位継承をめぐる派閥争いによるものか、それとも国王であった父親の差し金かはわからない。だが、それはどちらともあるように思えた。真相こそ今も明かしてはくれなかったが。
そしてその1週間後に二人はようやく最後に立ちはだかる英霊であるアーチャーと対峙する!真名は英雄王であるギルガメッシュ・・・!


ギルガメッシュ「ほう。意外だな。妖の類がマスターである雑種どもが生き残るとは」
ユーリ「そうだな。こちらにも願いはある。それで聖杯を使うのだ」
ギルガメッシュ「その雑種に次なる召喚でこの聖杯戦争の記憶を保持する内容か?馬鹿馬鹿しい。それは英霊に対する侮辱であろう。貴様が救済を信条とするならば、我はその裁定を見極める者。よって今我は貴様らを殺しにかかるのを決めている!」


対するギルガメッシュの実力はキャスターとは比べ物にならないぐらい強大なものだった。ガウェインも時折息が上がるが、なんとか持ち堪えていた。ギルガメッシュは異空間からバビロンの鎖を放つ!


ギルガメッシュ「我のもてなしだ。受け取れ」


その鎖で貫かせた・・・ユーリの身体を。


ザシュッ


ユーリ「ぁ」
ガウェイン「マスター!!」


すると、ギルガメッシュは勝利を確信した直後に自分の身体から放出した棘に串刺しにされていた!


ギルガメッシュ「なっ!?」
ユーリ「私の身体を貫いた時、貴様も同じように貫くように私の身体に仕掛けておいた。失敗のリスクを伴う刺し違いの魔法だが・・・まさかそれがこんなところで成功するとはな」
ギルガメッシュ「おのれ・・・おのれおのれッ!!!」


そしてギルガメッシュを倒し、ユーリとガウェインが第一次幻奏的聖杯戦争に勝利する!ガウェインは血に塗れながら倒れ込んだユーリに駆け寄った。


ガウェイン「ユーリ!!」
ユーリ「心配するな。私は不死身の吸血鬼だ。故にこの程度の怪我はなんともない。それより、聖杯だ」
ガウェイン「!」


すると、ガウェインは勝者の証として上から降りて来た聖杯を見る。


ユーリ「約束通り、それは貴様にやろう。泣くほどアメリアを好いただろう?アメリアが生まれ変わった者に会いたいだろう!?ならば、願え!私が赦している!私の騎士である貴様は、それを持っていいのだ!」


ガウェインはこの聖杯戦争の中で少しも明かさなかったユーリの本心を知って思わず涙を流すが、ガウェインはそれを持ちながら自分の願いを伝えた。


ガウェイン「お願いです・・・次なる召喚ではこの聖杯戦争に関する記憶を・・・アメリアとの思い出を・・・忘れることなく・・・」


そして聖杯がその願いに応じた後、ガウェインはその消滅間際にユーリに聞こえるぬよう自分の今ある思いを伝える。


ガウェイン「ありがとう。私を突き放しても無下に扱わないでくれて。私という英霊を・・・尊重してくれて。私のマスターである小さな吸血鬼・・・さようなら、ユーリ・・・」


その後にユーリは一筋の涙を流しながら今はもういない騎士に伝える。


ユーリ「・・・さらば、ガウェイン・・・」

二度の生における旅路(その3) ( No.120 )
日時: 2023/07/19 17:51
名前: 桜 (ID: BmxuFWGD)

そして約250年後。それまでは慌ただしく吹き荒れていたチェリーワールドが平和な現代となり、そのある草原。そこにある英霊が召喚された。平和なチェリーワールドの現代において最初にマスターなしで召喚された成功第一号である英霊。ユーリを始めとした第一次幻奏的聖杯戦争に関連する記憶を保持した彼のサーヴァントだったガウェインだ。


ガウェイン「私が召喚されたということは・・・アメリアは生まれ変わっている。今どこにいるかわからぬ彼女を探さなければ。そのために今度こそ彼女を守る術を身につけなければ」


ガウェインはその時になぜか一緒に持っていたあるメモ用紙を見る。彼は指定された場所に向かった。その場所にたどり着いた時、チェリーワールドにおける学術の師となる伯爵の男と出会う。


???「ようこそ。家のお告げに従い、本日よりキミの学術を任されたイージス侯爵だ。私のことはイージスでも好きなように呼べ」
ガウェイン「・・・前々から感じていたのですか?」
イージス「何か問題あるか?」
ガウェイン「いいえ」
イージス「キミは生徒だから、ガウェインと呼ぶ。息子がいるのだが、人見知り故出てこないのでな。剣術の師を紹介しよう」


ガウェインはイージスによりその剣術の師がいる場所に連れて行った。そこはその街内にある小さな闘技場。しかし、この日はたくさんの客で盛り上がっていた。


イージス「あれがキミの剣の師匠だ。見よ」


その人物は剣術を発揮し、相手に強大な強さを見せつけーーーーーそして完封勝利を果たした。ガウェインは少し驚くが、イージスは説明する。


イージス「あの男はキミと同じ人間ではなく、お互いが弱点とする式神だ。特にあの男は元はサーヴァント狩りを生業にしていた「死神」と呼ばれて疎まれた者。だが・・・それは罪ある者が罰を値するという時だけ。奴の力は、罪なき人も英霊も傷つけることはない。慈悲深いと言えないか?あの男がお前の剣術の師である式神、クロスだ」


すると、ガウェインの剣術の師として指名されるクロスはイージスを見て声をかける。


クロス「イージス!見に来ていたのだな、どうした?」
イージス「お前に依頼しよう。この男の剣の師となれ」
クロス「は!?その英霊が!!?」
ガウェイン「よろしくお願いします。剣の師匠クロス」
クロス「よろしくの前に話を聞けーーーーー!!!」


その数分後に闘技場から出たクロスはイージスに怪我の手当てを受けていた。


イージス「小さな怪我はいずれ大きな傷となるからな」
クロス「・・・式神は英霊同様に不死身だぞ?」
イージス「お前でも心臓部を貫かれたら死ぬぞ?」


すると、待っていたガウェインと合流したクロスはイージスに話を断ろうとする。


クロス「イージス、さっきの話のことだが、はっきり言って無理だ!」
イージス「なぜだ。剣術の師には最も最適だろう」
クロス「なぜって・・・」


すると、クロスを見て小さな子供達が指差して言った!


子供A「あっ、式神だ!死神のクロスだ!」
母親「見ちゃだめ!!死の穢れが感染から!」
子供B「えー!?」


周囲の心無い発言を聞いたクロスは再度断ろうとする。


クロス「・・・わかっただろう?その騎士・・・ガウェインも私と一緒にいたら変な目で見られよう」
ガウェイン「・・・構いません。私は貴方に教えてほしい。お願いします」


ガウェインの迷いのない瞳を見たクロスは一つだけ質問する。


クロス「そなたは何を教えてほしいのだ?」
ガウェイン「大切な人の、守り方を」


ガウェインの答えを聞いたクロスは背中を見せながら言う。


クロス「よし。明日からビシバシとゆく。覚悟はしておけ!」


それからガウェインはクロスにさらなる剣術を、イージスにこの世界で生きていくための学術などの知識を教わった。


クロス「そこだ!左だ!」
ガウェイン「・・・!」


イージス「ではガウェイン、今の問題をフランス語で答えなさい。そしてその内容をドイツ語で書き出しなさい」
ガウェイン「はい!」


ガウェインは来る日も来る日も勉学や修練に明け暮れた。そんな根性のあるガウェインの頑張りを次第に二人も認めるようになっていった。頑張りすぎて眠っているガウェインをイージスが毛布をかける中、ちまちまと歩く音が聞こえた。


イージス「クローディア。お前も毛布を持って来たのか?」
クローディア「うん。勉強や修練の合間に僕の遊び相手になってくれてるから」
イージス「そうか。すっかり懐かれたな。息子はかなりの人見知りだったのに」


クローディア=イージス。イージス伯爵の息子で、成長した後に伯爵位を受けた男。後のクロであり、怪盗団の長のクロードであった。
そして三年の時が過ぎ、クロスはガウェインと話す。


クロス「三年か。お前が来た時にクローディアはまだ6歳だな」
ガウェイン「聡明な顔立ちになっているようで。イージス伯爵家で仕えるようになった小さな執事と小さな科学者とも友人になったおかげでもありますが」
クロス「いや、お前の献身的な態度が成長を促したのだろう。ほら、お前を見て黄色い声を上げる女性達もいる。どの子が良いのだ?」
ガウェイン「・・・汗をかいたので着替えて来ます!」
クロス「好みの女性ではないからと無視するな!」
ガウェイン「クロス、ウザイです!」
クロス(生意気言うようになっておって・・・)


この頃からクロスはガウェインの霊基から前の召喚時に何らかの記憶を保持している事実を薄々と気付くようになった。
その夜、クロスはイージスとクローディア達の元を訪ねた。


クロス「イージス。土産だ。ほら、クローディアにもケーキ。ロゼやヒショウと食べてこい」
クローディア「!ありがとう!」


クローディアがケーキの入った箱を持ってロゼ達のところに駆け出して行った後、イージスはクロスが土産として用意してくれた赤ワインと生ハムを堪能する。


クロス「ガウェインは今も勉強中か?」
イージス「まあな。来いとは言ったが」
クロス「なんていうか・・・疲れないか?勉強や剣の修練ばかりで一人で遊びにも身向きもしない。此度の生はそれでもいいのではないか?」
イージス「・・・あの男が・・・ガウェインが望んだことだ」
クロス「ガウェインが英霊以外に何者か、聞いてはいけなかったか?」
イージス「そうだ」
クロス「ガウェインの大切な者って誰のことだ?騎士王か?」
イージス「忠節と恋愛は違うがな」
クロス「まあまあ」


すると、一人で勉強していたガウェインは遥か遠くから何らかの歌声が聞こえて屋根の上に登る。ガウェインはそれに合わせるような形で歌った。


クロス「これは・・・」
イージス「ああ。たまにこうやって歌うのだ」
クロス「最高に酒が美味くなるな」
イージス「ふふ」


間違いなく、前のマスターの歌声だ。彼はもう目を覚ましている。生きている。歌が生きているという、報せになっている。歌が、今でも我らを繋げる。ーーーーーアメリアの生まれ変わりに会った後、彼に会いたい。私のために聖杯を託してくれた、小さな吸血鬼の彼を。
その数日後、イージスはガウェインの大切な人の生まれ変わりの居場所をついに割り出した。彼女はドイツのケルンにいるという。


イージス「・・・そろそろ、頃合いか・・・」


それを陰ながら聞いたクローディアはガウェインのところに駆け出す!彼がいる部屋のドアをバンと開けた。


クローディア「ガウェイン!」
ガウェイン「クローディア。どうしました?」
クローディア「あの・・・ここにいたいなら、そうしていいよ。ずっとそばにおいていいし、望むなら留学の後押しもする。目的から離れて、自由に生きる道だってガウェイン、お前にはあるんだよ」
ガウェイン「・・・自由に・・・」
クローディア「この屋敷を出たら、そこが地獄になるかわからない。もしかしたら悲しいことも起きるかもしれない。僕だって寂しくて嫌だ。それがいい道だと思えない!だから・・・」


すると、クローディアの堪えた涙をガウェインが手で拭いながら言う。


ガウェイン「ありがとう、クローディア。私は行きます。彼女の元に。彼女のそばにいたいのです」


ガウェインが三年前と何も変わらない迷いのない瞳を見たクローディアはそれが揺らぐことはないと悟った後、一人部屋を出て行ってしまった。


ガウェイン「クローディア?」


その夜、クロスが疲れて眠ってるクローディアを運び出してガウェインに会いに来てくれた。


クロス「クローディア、遠いところまで散策に行っていたのでな。だから迎えに行っていたのだ。見つけた時は泣き疲れて眠っていたのでな」
ガウェイン「よほど足が痛かったのですね」
クロス「そうだな。あの距離は子供にとってはキツすぎる「戻らないで」


すると、二人は寝ぼけているクローディアの声を聞く。


クローディア「ドイツは差別をする奴らばかりで・・・大嫌い。・・・ガウェイン、ここにいてよ・・・」


クローディアの泣きながら寝ぼけて言った声に二人はようやく事実に気付いた。


クロス「ベッドに連れて行くから、手伝ってくれないか?」
ガウェイン「はい」


そしてクローディアをベッドの上に連れて行った後、クロスはケタケタと笑いながらガウェインに聞く。


クロス「ファンの女性達、見たら泣くな。子供泣かせって」
ガウェイン「クロス・・・」
クロス「まあ、だがな・・・クローディアやイージスだけではないよ。だが、お前が決めたことだからな・・・」


ガウェインはこれまでの出来事を振り返る。三人はいつも自分に対して気遣って、彼らなりに自分を思いやってもいた。


ガウェイン『すみません。今日の授業は!?』
クロス『ガウェイン、今日はピクニックだ。おいで』
イージス『休むことも勉強のうちだぞ』
クローディア『サンドイッチ食べよー!』


四人で行った海辺でのピクニック。ガウェインはポテト命の偏食家だが、その時のサンドイッチは美味しかった。一緒に笑い合うことが楽しかった。それを思い出したガウェインは少し悪いことをしたと反省し、その翌日のガウェインを送り出す日にクローディアは声をかけられていた。


ガウェイン「クローディア」
クローディア「・・・何?」
ガウェイン「少しこちらに」


すると、ガウェインはクローディアを優しく抱きしめながら頭をポンポンと撫でてくれた。クローディアは少しびっくりしたが、嬉しい気持ちはあった。


クロス「ガウェイン、頑張って来い」
イージス「良い旅路を」
ガウェイン「はい・・・!」


ガウェインのファンの女性達も涙ながらに彼を見送る中、クロスはクローディアの背中をポンポンと叩く。


クロス「泣くな。男だろう」
クローディア「うん・・・!」
イージス「・・・」


ガウェインはドイツのケルンまでの旅路の途中、クローディアの言葉を思い出していた。


クローディア『目的から離れて、自由に』
ガウェイン(いらない。そんなもの。ただ貴女に会いたい。他には何もいらない)


そしてドイツのケルンにたどり着いた後、ガウェインはアメリアの生まれ変わりを探していた。


ガウェイン「確か、気配はこちらですね。もうすぐだ・・・」


すると、道端で転んだある幼い少女を発見する!ガウェインは足早に駆け出した!


ガウェイン「(見つけた。アメリアが、生まれ変わった・・・)大丈夫ですか?お怪我はーーー」


すると、ガウェインはその少女を見て少し呆気に取られた。確かに魂はアメリアと同じだが、アメリアとは違うような可愛らしい雰囲気の羊の角が生えた少女だった。


???「?」
ガウェイン(確かにこれはアメリアと同じ魂の者。だが、なぜか・・・)


すると、とある男がガウェインに声をかけていた。


???2「俺のホイップに何か用かい?」
ガウェイン「!すみません、そんなつもりは・・・」
???2「いや、冗談だよ。姪を助けようとしたし、俺の楽器工房が近くにあるから、話は聞いてくぜ?管楽器のリペア職人である俺、クルーク=プラネティトが営む工房へ」






ユーリ「ホイップの叔父のクルークは人柄は良かったのだが・・・ガウェインとホイップはそれでも幸せになることはなかった・・・」
ベディ「どうして・・・」


ユーリは重い口を開いた。


ユーリ「叔父亡き後に壊してしまったからだ」






ユーリ「ケルンの街を滅ぼしたんだ」






続く・・・!






二人に何があった・・・?感想OK