二次創作小説(紙ほか)

こっちを向いて、愛してると言って!(その1) ( No.162 )
日時: 2023/10/14 12:08
名前: 桜 (ID: kfsDt.o/)

今回はモーさんのリオルであるシルクの過去話も織り交ぜたちょいとシリアス話。


シルクがモードレッドの言動に次第に不安になってしまい、気づいたら家出してしまったお話。ちゃんと愛情はあるのですが、それ故にすれ違ってしまうのはあるから複雑・・・






あれだけ喧嘩した日がこれが初めてだったと思う。と言っても自分が一方的にまくし立ててしまっただけだけど。


今思えばあんなこと言わなければよかったと思う。他の相手なら殺しにかかるほど怒られるというよりも叱られた子供のような悲しい顔をされたのがショックだったから。


でも、自分が罰が悪かったのか思わずアタランテ達の制止にも関わらず家を飛び出してしまった。


今頃怒ってるだろうね。悲しみから一転して暴れまくりながら。






こっちを向いて、愛してると言って!






モードレッド「・・・・・・・・・」


叛逆の円卓騎士モードレッドはキャメロット城にいるその日は機嫌が悪かった。ただ殺そうとしているとかムカつくとかではなく、なんとなくモヤモヤする雰囲気が近くにいる人達にも伝わったようだ。


トリスタン「モードレッド、リップを見かけ・・・なんか怒っていますね」
モードレッド「シルクと喧嘩したんだよ」
トリスタン「シルクと?そういえば今日は一緒にいませんね」
モードレッド「んで、昨日の夜から帰って来てない」
トリスタン「えっ!?」


モードレッドだってわかっていた。シルクのためだと思ったことが結果的に裏目が出て今喧嘩してしまった状態だということを。もちろん当のシルクから一方的に言われただけだが、それも含めて全体的にモヤモヤしていた。






シルク「むー・・・」


一方の当のシルクはモードレッドと喧嘩して家を飛び出した後に行くあてもなく街で一人ふらふらと彷徨っていた。元から人見知りのシルクは波動を感じる性質がゆえに人の感情までも波動で見てしまうことからさらに臆病になってしまっていた。


シルク(やっぱり勢い余って家を飛び出すんじゃなかった・・・あんなこと言った手前に謝れないし帰れない)


シルクは時に嗚咽を上げながら泣き出してしまった。しかし、それを見ていた人物がいた。乱麻直属のメイド品野冴絵華ことサエカだ。


サエカ「ん?あなた、確か・・・」
シルク「!!?」


シルクが思わず怯えてしまい、サエカはいきなり声をかけたことで怖がらせてしまったことを察して謝る。


サエカ「そんな向こうまで逃げなくても・・・いきなり声をかけてごめんね」
シルク「・・・」
サエカ「いつもの主人がいないのはちょっと気になるけど・・・お腹が空いていたのでしょう。こっちに来なさい」
シルク「?」


シルクはサエカに連れられ、主人の乱麻達の住む寮に着いた。そこに以蔵が出迎える!


以蔵「おん、サエカおかえり・・・って、シルク!?どしたき!?」
サエカ「それが言わないのですが、モードレッドはどうしたのかと聞いたら言わなくて・・・多分喧嘩でしょう」
シルク「・・・」


サエカから聞いた以蔵はシルクの泣きそうな顔を見てなんかすれ違いで喧嘩したかと薄々察して声をかけた。


以蔵「(モー公だけが悪いわけなさそうじゃな・・・)シルク、腹減ったじゃろ?今わしが昼食作っちょるから食べどうせ」
シルク「!」


以蔵が自分に対してなんとなく気遣いながら接されていることを見抜いているシルクは頭を縦に振る。以蔵はシルクの頭をポンポンと撫でる。


以蔵「やっぱりお腹空いてたんじゃな。そんなおまんに何かあったらモー公が泣くぜよー」
シルク「!別に、関係ないでしょ」
以蔵「ははは、冗談やき。ほら、入りとうせ」


その10分後に今日の昼食として差し出された美味しそうなカレービーフンを見る!そのカレービーフンはめちゃくちゃ美味しそうな匂いを醸し出し、味も抜群だった。


以蔵「うちの奴らがいつもいっぱい食べちょるから、おかわりは早めにな。ツナサラダもあるき。ライスが欲しいならかまわんし」
サエカ「本当にいつも飲兵衛のくせに凝るんですから」
以蔵「誰が飲兵衛じゃ!!(怒」


シルクはカレービーフンをお箸を使って食べる。その味の美味さに次第に食べすすんできた!


以蔵「おお、美味いか!」
シルク「うん!」


以蔵も薄々と察している上でシルクは過去にこれ以上の美味しいものを食べていたことがあった・・・それはモードレッドと出会うまで味わったことがなかったからだった・・・

こっちを向いて、愛してると言って!(その2) ( No.163 )
日時: 2023/10/14 12:10
名前: 桜 (ID: kfsDt.o/)

とある時、ホウエン地方のトウカの森に珍しくあるポケモンが逃げてきていた。そのポケモンは珍しさゆえおこぼれ目当てに捕獲を目論んだポケモンハンターから逃げて来た一匹のリオルだった。


リオル(早く・・・!早くあいつから逃げないと・・・!)


そのリオルは進化前では珍しくはどうだんが使えたことから生まれた育て屋では丁重に大事に育てられていた。そろそろとある国の王族のポケモンとして渡すか悩んでいた矢先にポケモンハンターに襲われ、その育て屋は自分の手持ちポケモン達を使ってリオルを助けようとして逆に返り討ちに遭い命を落としたのだ。リオルは一時捕獲されたが、ポケモンハンターが眠っている隙を突いて運良く逃げ出した。


リオル(今もポケモンハンターがこっちに来てる・・・!もう逃げたこと気付いてる・・・!!)


リオルは走っていくうちに足が次第に疲れて木の隅に隠れていた。しかし、見つかるのはもう時間の問題だと悟った。


リオル(もうダメだ・・・帰ったところであの育て屋さんもいない・・・帰る場所が、ない・・・!こんな自分なんて・・・この先生きていけるのかな・・・)


リオルが気絶してしまった直後にガサっと茂みの音がした。しかし、それはポケモンハンターではなかった。白い鎧をまとい兜を着けた騎士は優しくリオルを抱き抱え歩き出した・・・






リオル(えっ!?ここどこ!?)


気付いたらリオルはある場所で目を覚ましていた。トウカの森近くにあるトウカシティのポケモンセンターだ。リオルはそのガラス越しにジョーイとその白い兜の騎士が会話しているのを見た。


リオル(あれ・・・?)
ジョーイ「あなたが助け出したあのリオルは確かに傷や痣が複数あったわ。見た感じ、さっき捕まったポケモンハンターによって・・・」
白い兜の騎士「そうか。身体中に痛めつけられた傷を見つけたからな。すぐにあのポケモンハンター捕まえてよかったよ」


どうやら自分は白い兜の騎士によって助けられたらしい。ついでにあのポケモンハンターは話を聞いて動いたポケモン警察によってさっき捕まったことも知った。


白い兜の騎士「んで、あの育て屋はもう死んでるんだよな?」
ジョーイ「ええ。このポケモンセンターで保護するという選択肢も考えてるけど・・・」


すると、その騎士はリオルをじっと見る。なぜか他人事ではないと思わせるその瞳を見てどうにも放っておけない気持ちが芽生え始めて来た。白い兜の騎士は聞く。


白い兜の騎士「人が引き取っても問題ないだろ?」
ジョーイ「ええ、それはないわ」
白い兜の騎士「じゃあ、オレにポケモンの知識を教えてくれていいから、このリオルはオレがもらうよ」
シルク(!?)
ジョーイ「えっ!?いいの!?」
白い兜の騎士「ああ、いいさ。これも何かの縁だと思えばいいだろ?」


ジョーイはこの騎士のことだから諭そうとしても聞かなそうだと思い、それを承諾する。


ジョーイ「わかったわ。私の方からもムロタウンにいるかくとうタイプ使いのジムリーダーに指南して欲しいと紹介状を出しておくわ」
白い兜の騎士「!助かるぜ!」


白い兜の騎士はまだおどおどしているリオルに跪いて話しかける。


白い兜の騎士「いいか?お前は今日からオレらの仲間だよ。確かにオレは粗暴だがあんなポケモンハンターみたいな乱暴な真似はしないから安心しろ。そういえば、ニックネーム付ける場合あるのか?」
ジョーイ「ええ、あるわよ。あなたが真名モードレッドみたいにね」
モードレッド「その言い方はやめろ;」
リオル(この人は、モードレッド・・・)


すると、自分をじっと見るリオルに対してモードレッドがニカっと笑い、思わず照れてしまった!


モードレッド「あー、照れたか;やっぱ慣れないかなー;」






ガウェイン「モードレッド、なぜか今朝からずっと怒っていますね。何か理由を知っていますか?」
ランスロット「うーん;分からない;」


現在の時間軸、一方キャメロット城ではモードレッドがまだ機嫌が悪かった。今日は円卓議決で一応は出席はしたがガウェインとランスロットは対応に難しいと感じながらもトリスタンは彼女からその理由が「シルクと喧嘩したこと」を聞いて知っていた。


トリスタン(あれはモヤモヤした気持ちですね。いい加減ウジウジと悩んでないで探せばいいものを・・・)






シルク「イゾーさん、皿洗い手伝う!」


一方の乱麻達の住む寮ではシルクが以蔵の皿洗いなどを手伝っていた。シルクのテキパキと手伝いをこなす様子を見て以蔵が頭を撫でながら褒める。


以蔵「助かるぜよ!わしんとこにはサエカさんや松平や小夢しかまともに手伝ってくれる奴がおらんから今日はこんなに早く終わるぜよ〜」
シルク「えへへ〜」


もちろん以蔵だって本気で言ったわけじゃないとわかっている。それは自分を忌み嫌うものではなく、一番頭を撫でて欲しかった人がいることをわかっていたからだった。以蔵もそのことについては承知していた。


サエカ「以蔵はああ見えて自分を律していますね」
松平「あの男はバカではあるが自分を律する時は律するところがあるからな。シルクを一番大切に思っているのは自分じゃないってわかっているんだ。ただちょっと極端なところはあるが」


すると、シルクを寮の飼犬のキャバリアのチャンタとプーリーのモッシュが遊びたがりそうに見ていた。


以蔵「こいつら、おまんと仲良くしたがっちょるんじゃ。二匹とも噛んだりしないから遊びとうせ」
シルク「!うん」


シルクはチャンタとモッシュと楽しそうに遊ぶのを見たサエカはその様子に写メりながら呟いた。


サエカ「あの男は小さい子に対しての接し方が上手いですね」
松平「だから、子供組からの評価も案外高かったりするよな」
以蔵「なんで写メっちょるんじゃ・・・;」






モードレッド「よし!今日からここがお前の部屋だ」


モードレッド達と神戸に住むことになったリオルはその郊外にある屋敷の綺麗さに思わず驚くだけでなく、その同じ土地にある別宅のある自分の部屋までも用意してくれたことに思わず立ちすくみそうになった。すると、月島家のメイドのルドヴィカがそこにやってきた。


ルドヴィカ「モードレッド、帰っていたのですね。ん?どうしました、そのリオルは」
モードレッド「オレが拾った。今日からオレらの仲間だ!」
ルドヴィカ「確か拾って来たものに対しては斬り捨てることが月島家にはありましたね」
リオル「!!?」
モードレッド「えっ!!?」
ルドヴィカ「・・・なんて、そういうのが昔の掟に存在しましたけど。今がどうなったのかわかりませんからいいではありませんか?圭一郎様には私から伝えますし、貴方もあいり様と出会った時に同じことになっていましたし」
リオル(あいりさま?)
モードレッド「ありがとう、ルドヴィカ!いつも助かるぜ!」


リオルはそのルドヴィカの波動を見てやや強引だが悪い人ではないことを感じた。モードレッドはリオルの頭をポンポンと撫でながら話しかける。


モードレッド「よし、今日は一緒に寝るか!今日は来たばかりなんだし、一人じゃ不安だろ?」
リオル「えっ、えっ!?(本当に変わった不良の騎士だなぁ・・・ジョーイさんからセイバークラスの英霊で円卓の叛逆の騎士だと聞いたけど、赤い波動を少しも感じれないなんて」


その夜にモードレッドは気付いたらリオルを抱きしめながら眠っていた。彼女はそこでその兜の下の素顔を見ることになるが、美しい顔立ちを持つ少女であり普通の感受性の高い子供とはあまり変わらなかった。


リオル(まるでぬいぐるみを抱くような・・・いや、守ろうとするかのようだ。まるで家族だとも言ってるかのように・・・ずっと・・・ここに、いたいな・・・)


その翌日、リオルよりも遅く起床したモードレッドは何やら美味しそうな匂いがしていたのを気付いた。


モードレッド「ルドヴィカ、来てんのか?なあ、リオルは知らないか?」
リオル「あっ!」


すると、モードレッドは食卓にオムライスとシーザーサラダとミネストローネが並べてあったのを見た!その後ろにはルドヴィカが用意してくれた小さなエプロンを着けたリオルだった。


リオル「来ちゃダメ!その・・・ルドヴィカさんにレシピを教えてもらった上に綺麗なお屋敷の豪華な食事には及ばないから・・・」
モードレッド「これ、お前が作ったのか!?美味そうじゃねーか!」
リオル「!」


モードレッドが椅子に座ってオムライスを頬張り、リオルも座って自分の分のオムライスをそっと食する。すると、その美味しさに感激した。


リオル「美味しい!」
モードレッド「そりゃお前が作ったものだからな!」


リオルはそれまでオムライスを食べたことはなかった。育て屋では美味しいポケモンフードなども食べていたが、ポケモンハンターには捕まってからは粗末な食事しか出されていなかったからだ。だからちゃんとした食事を食べることは久しぶりだった。なんてことない、自分が作ってモードレッドと一緒に食べたあのオムライスが今もなお自分が一番美味しいと思う料理だった。
完食した後にリオルは皿を片付けようとして椅子から立ち上がった。


リオル「じゃあ、片付けておくよ」
モードレッド「ああ。って、あぶねえそこはまだ片付けてねー杖がある!」
リオル「えっ?」


すると、リオルは杖に足が引っかかって転がってしまうが運良く近くにあったシルクハットに下から被ったおかげで大事に至らずに済んだ。なお落ちかけた皿は全てモードレッドがキャッチしてくれたので割らずに済んだ。


モードレッド「ごめん片付けてなかった;って、シルクハットに下からかぶってるな。ピッタリ入ってるぞ」
リオル「うう・・・;」


モードレッドはリオルがシルクハットにピッタリ入ったのを見て彼女のニックネームが浮かんだ。


モードレッド「あ、今の響きがいいな。「シルク」はどうだ?お前、よく見ればカッコ可愛いしその方がピッタリだよ!」
シルク「シルク・・・シルク!」
モードレッド「よし!これからよろしくな、シルク!」


「シルク」と名付けられたリオルは心から嬉しそうな顔をしていた。そしてその日からシルクと名乗り、モードレッドのポケモンもとい仲間としての道を歩むことになった・・・

こっちを向いて、愛してると言って!(その3) ( No.164 )
日時: 2023/10/14 12:13
名前: 桜 (ID: kfsDt.o/)

モードレッド「・・・・・・」


現在の時間軸、キャメロット城の壁の隅で佇んでいるモードレッドはまだ機嫌が悪そうだった。そこにキャメロット城を訪ねた彼女のマスターであるあいりが声をかけた。


あいり「モーさん?なんかまたガウェインと喧嘩がありましたの?」
モードレッド「あいりか。違うが、なぜ聞くんだ?」
あいり「トリスタンに「モードレッドがシルクと喧嘩してるらしいからそのマスターの貴女がせめて詳細を聞いてやってくれませんか」って頼まれましたのよ」
モードレッド「トリスタンの奴は余計なこと・・・いや、オレもモヤモヤする暇はないだろって自分でも思うな。シルクが昨日家出した後に落ち込まなきゃいいのに・・・」
あいり「シルクちゃんとなんかありましたか?」


あいりは自分特製のショコラショーをモードレッドに渡して一緒に飲む中で喧嘩の理由を聞いた。


あいり「シルクちゃんがいい加減にスマブラ屋敷の人達に馴染んでほしくて先走りした結果逆に嫌がられた?」
モードレッド「ああ。オレもシルクの人見知りを少しでも直したくてちょっと強引に行きすぎたんだが、その後に言われた言葉がショックだったな。もちろん本心じゃないってわかってるし、怒れないけどな・・・」
あいり「たまにありますわよ。私達だって喧嘩すること。私はドラケロ防衛隊とはよく言い合っていますが嫌ってはいませんし、むしろバカの割にあんなすごい力を見せれるのかと思わず舌を巻くことも多いですわ。モーさんだってシルクちゃんに対してそうじゃないですの?」
モードレッド「おい、なんでそうな「だって今でもシルクちゃんを探そうか悩んでる」


モードレッドはあいりからの言葉にはっとした。昨日シルクにあんなこと言われたのは悲しかった。それは激昂する気持ちよりもあった。今でも探そうか悩んでいた。結局モードレッドは、心底ではシルクを大切に思っていたのだ。


モードレッド「・・・そうだな。うだうだ悩んでる場合じゃねーな。今は落ち込むよりも探さなきゃシルクはもっと泣くな」
あいり「うん!私も一緒に探しますわ!」


一方の乱麻達の住む寮はシルクがモッシュとチャンタと遊びはてた末に疲れて来ていた。稽古三昧で鍛えた自分でもへばるほどだったようだ。


シルク「眠い〜・・・」
以蔵「おん。少し遅いがお昼寝するか(そろそろモー公に連絡するか。今頃探しに行っておるろうな・・・」


以蔵は寝落ちしかけているシルクを天井にある自室に連れて行き事前に敷いといた自分用の予備の布団に寝かせて自分が添い寝する形で寝かしつけようとしていた。


以蔵「事前に子守歌歌っとう。〜♪」
シルク(子守り歌か・・・でも、あれも子守歌じゃないけど、よく眠れたな・・・)






過去の時間軸、あれから時間が経ち、シルクはとある日にムロタウンでそこにあるムロジムのジムリーダーであるトウキとの技の稽古を受けていた。ジョーイにモードレッドのポケモンの技や知識面における師範として紹介された彼だが、まだまだ発展途上だが成長著しい二人の抜群のコンビネーションとシルクの筋の良いバトルセンスに感銘を受けて以降は技の修練を磨かせたりたまにジム戦とは関係なしで模擬戦を開始したりもしていた。


トウキ「いやー、シルクちゃんは筋がいいな!キミもあの珍しいポケモンをよく手にしたね」
モードレッド「珍しいからじゃねーよ。ただあの時に見た瞳には暗いがどこか光るものを感じただけだ」
トウキ「ふーん。それだけじゃないと思うけど」
モードレッド「・・・ったく、相変わらず失礼な奴だ!」


モードレッドとトウキは言い合いこそはするが本音で言い合っているためそこまで嫌い合っているのではなく今でも喧嘩友達でもある。シルクもトウキが悪い人物ではないことを波動で感じ取っていた。


ハリテヤマ「シルク、かわらずのいしをいつのまに持っていたのか?モードレッドさんに言わなくていいのか?」
シルク「うん。このままの方がいい!」


シルクはいつのまにか手に入れたかわらずのいしで進化を止めているがそれでも楽しい日々を過ごしていた。
とある日にシルクはたまに神戸の別荘にやってきてはモードレッドを付け狙う月島グループが運営する系列会社の女性社員の存在をルドヴィカに顔を膨らませながら報告するなどしていた。


ルドヴィカ「なんですか、モードレッドを付け狙う女ですか?」
シルク「そー!」
ルドヴィカ「あの女性社員ですか・・・確かにあの女は過激な気があるし、あいり様達にも嫌味を言ってますからね・・・よろしい、何かあると困るからあの女性社員を圭一郎様に言ってマークするようにしましょう」
シルク「!」


ルドヴィカはか弱い乙女を自称している割にはやや強引なたくましい性格で行動力が抜群に高いがなんだかんだでシルクのことを受け入れていた。しかし、彼女達が度々口にする「あいり様」については知らないままだった。
その夜にモードレッドに子守歌代わりにチェロでマズルカを弾いていた時にそれを聞かれたモードレッドは優しく話しかける。


モードレッド「そうか、まだ会ってなかったか。学校で忙しいからな、セレブリティの校風だし。でも、そろそろ会わせようかと思ってるぜ。今度の冬休みに」
シルク「!ほんと!?」
モードレッド「ああ、あいつの双子の弟にも。アタランテやしおんはもう会っているからな、あいつも同伴だな」


この頃にはシルクと暮らし始めて少し経った後月島家に引き取られたアタランテやしおんとも少しずつ馴染むようになった。アタランテはとある悪い研究所から唯一脱出した後捕まった奴隷商から高額の値段で買われてきたアーチャーのサーヴァントで、しおんは外の世界に興味を持ったことで故郷の里を飛び出したのを誘いに乗る形で迎え入れられた雪女であり、最初はツンケンとしていた彼女達からも気にかけてくれていることはシルクもわかっていた。


シルク「あいり様とその双子の弟がどんな人かわからないけど・・・約束だからねっ」
モードレッド「ああ、約束だ。続きを弾いてやるからもう寝ろ」


モードレッドが製作したチェロから奏でられる音色に癒されて眠りに落ちたシルクの顔はとても幸せそうだった・・・






それから数日後。シルクは慌てながらモードレッドのところに駆け出そうとしていた。理由は「あの出来事」で約束を破られたことではなく、それで起因した彼女の心情を気がかりだったからだ。
入った部屋にいるモードレッドはシルクに気付き、睨むことはないがどこか悲しそうな表情だったのを気付いたシルクは彼女の名を呼ぶ。


シルク「モードレッド・・・」
モードレッド「シルク・・・オレを罵倒したりしないのか?」


すると、モードレッドはシルクの両肩に手を乗せながらあることを頼んだ。


モードレッド「頼む。約束を破ったオレを恨んでくれないか?」
シルク「モードレッド・・・?」
モードレッド「オレはあいりに抱く周囲の恨みを察知できなかった。その後に起きる出来事も予見できなかった。結果シルクとの約束を破った・・・恨まれて当然だッ!!」


モードレッドが慟哭の波動を抱いてるのもわかる。誰も悪くないのに、そうするしかできなかった事実が彼女を苦しめている。シルクは静かに声をかける。


シルク「恨まないよ。だってあの時にわたしをポケモンハンターから助けてくれたのはモードレッドだから・・・」
モードレッド「・・・!」
シルク「わたしはそれまでずっとひとりぼっちだった。私を丁重に育ててくれた育て屋さんももういない。ポケモンハンターに捕獲されていた時は辛いことばかりだった。人間を信じられなかったわたしをモードレッドが見つけてくれた。だから・・・」


シルクは涙ながらモードレッドに自分の気持ちを伝えた。


シルク「わたしは絶対に恨まないし、離れない・・・!」


そんなシルクにモードレッドは優しく抱きしめた。彼女から小さく「ありがとう」と言っているのが聞こえる。あいりと引き離され悲しみに打ちひしがれたモードレッドにとってシルクの存在が光になっていた。ブリテンへの叛逆で同胞の血に塗れながら騎士王と刺し違いになった自分にはその心にある「影」に惹かれ、その心にある「光」に憧れるのだ・・・






そしてあれから1年の月日が流れ、急遽自分達のお目付役に任する白魔導師の葉樹も含めたモードレッド達と共に東京の白金にある月島家所有のマンションに引っ越し、新世界で保護したタママと出会ったことを機にクルーク達とも交流をするようになり、針音ノ時計塔(ハートビート・クロックタワー)やイチゴの国(ベリールーン)、決着の地となった白亜の城(キャメロット)におけるガウェイン達や傷だらけの三つ巴悪魔との死闘、その途中であいりとあおいがそれぞれ正式にモードレッドとアタランテのマスターになったこと・・・どれも自分には眩いほどの輝きであり、自分が羨望を抱くものだった。それが自分でも知らず知らずのうちに不満として蓄積していたようだった。だからあんな喧嘩をしてしまった・・・。
シルクがすやすやと寝ていることを確認した以蔵の元にさっき起きたマキノが訪れる。


マキノ「ようやく寝てくれたか」
以蔵「マキノ。今はそっとしとうせ。よほど疲れておったんじゃろう」
マキノ「それでその間にモードレッドに連絡するのか?」
以蔵「おん。わしにも懐いちょるとわかるき。ただシルクの一番はわしじゃないと感じちょる」


以蔵は自分のスマホで電話をかけようとしたが、乱麻からの不在着信の通知があったことを気付き、すぐさまかけた。


以蔵「なんじゃ?」
乱麻「以蔵、助けてくれないか?実は・・・(ゴニョゴニョ」
以蔵「はぁっ!?委員会で二人とも遅くなったから迎えに来い!?ったく、世話の焼ける奴じゃのう;マキノ、すぐ戻るからシルクを見ちょれ」


以蔵が乱麻と弓弦を迎えに行くために自室を出て行ったあと、マキノはシルクをじっと見ようとしたが、元来低血圧の彼は次第に眠くなってきていた。


マキノ「眠いな・・・」


そしてマキノもまた眠るが、その直後に部屋に入る音がした。その影は寮生でも今はチャンタ達の散歩に行っているサエカ達使用人でも寮母の理子でもない。ニヤッと笑いながらシルクの前に立っていた・・・






シルク「ん・・・」


シルクは気付いたら薄暗い場所で目を覚ましていた。異変に気付いたシルクははっけいで扉を確認しようとしていた。


シルク(なんとか扉が確認したら、はどうだんで破壊できるかも・・・)


シルクはそう思っていた・・・あの声を聞くまでは


???「・・・はっけいでも扉を破壊しようとするのはできるんだねぇ」
シルク「!!?」


この声はシルクは知っていた。神戸の別荘で暮らしていた時に危ない目でモードレッドに言い寄ってきた月島グループの系列会社の女性社員だ。


女性社員「別に扉を破壊しても構わないけど・・・言わせてもらうね。あんたみたいなリオルが本当に、モードレッド様と対等の立場でいられると思ったわけ?勘違いしているようだけど、モードレッド様は英霊のホムンクルスでもちゃんと人であんたはただの下等生物のポケモンだから。モードレッド様に本当に可愛がられているなんて思わないでくれる?扉を破壊するのは勝手だけど」






女性社員「モードレッド様があんたを一番愛しているなんてないよ。これからもね」






女性社員が高笑いしながら立ち去ったあと、シルクは立ちすくんでしまい嗚咽を上げながら泣き出してしまった・・・


シルク「う・・・ぅ、うぅ」


同時にシルクはモードレッドと喧嘩した理由を思い出した。それはモードレッドが自分の人見知りを直そうとピカチュウ達と出かけるように言ったこと。彼女としては善意からだったが、人見知りのシルクはこれに怒って食ってかかってしまう。その後に言ってしまったのだ。






シルク『そんなのモードレッドがシルクと離れたいだけでしょ!!?』






モードレッドはこれにショックを受けてしまったのだ。こんな自分には彼女のそばにいる資格はない・・・シルクは声を抑えながら泣くしかなかった・・・






バン!!!


モードレッド「シルク!!」






突如扉が開かれ、シルクは自分を見つけたモードレッドの表情を見る。その後ろには一緒に探してくれたあいりとシルクが連れ去られたと連絡した以蔵がいた。


あいり「シルクちゃん、大丈夫ですか!?」
以蔵「すまんシルク、わしが用事に行っちょったから・・・!!マキノも謝ったき!!」


モードレッドはシルクを優しく、そして強く抱きしめた。


モードレッド「よかった・・・オレも悪かった。お前のためだと思って・・・でも、お前に何かあったらと思うと・・・」
シルク「モードレッド・・・ごめんなさい・・・!」


シルクはすっかり安堵しながら思った。あの女はモードレッドの何を知っていたのだと。自分をどれだけ愛しているのかを・・・

こっちを向いて、愛してると言って!(その4) ( No.165 )
日時: 2023/10/14 12:15
名前: 桜 (ID: kfsDt.o/)

その翌日の白金にあるマンション。シルクが帰って来た後昨日の件で訪ねに来たルドヴィカはモードレッドに謝っていた。


ルドヴィカ「いやー、先日はごめんね。あの女性社員をマークしておきながら対応に遅れたこっちに責任があるわ。あ、それと圭一郎様がちゃんと処分下したから」
モードレッド「ありがとう!今度からオレも少しずつ・・・」
ルドヴィカ「でも、シルクちゃんのおかげなのよ」
モードレッド「えっ?」
ルドヴィカ「シルクちゃんが私に伝えてくれたのよ。それがあるからこそ社内風紀をさらに考えるきっかけになったって圭一郎様が太鼓判押してたわ。きっとあなたを一番信頼してるからなのね」


ルドヴィカの言葉にモードレッドは嬉しそうな顔が滲み出ていた。その後、シルク特製のパンプキンパイを食べていたモードレッドは味の感想を伝えた。


モードレッド「今日はいつもよりさらに美味いじゃねーか!」
シルク「えへへっ」


すると、モードレッドはふとシルクの手を優しく触った。まるでシルクと名付けた日を思い起こしたかのように・・・


シルク「どうしたの?」


シルクが思わず笑顔になりながら訊ねられたモードレッドはにっと微笑いながら答えた。






モードレッド「なんでもねーよ。ただ触ってみたくなっただけだ」






おわり






「後書き」
今回はモードレッドとシルクの二人の過去話。そこには第四部後半で明かされていたあいりとの間に起きた決定的な出来事を少しだけ掘り下げてみたり。
モードレッドは別にリオルのままでもルカリオに進化しても内心では可愛いと思っていますが、シルクちゃんがかわらずのいしを持っているのには気付いていません。だが、知ったとしてもシルクちゃんを大事に想っているのは変わらないと思います。
いつかシルクちゃんがルカリオを師匠と呼ぶようになりさらに鍛錬に励むお話も書きたいと思いますが、話作りには難航するね;それでも時間が空いた時に気ままにマイペースに書きたいのですが・・・;






感想OK