二次創作小説(紙ほか)
- 雪の輝き、小さな夢(その1) ( No.345 )
- 日時: 2024/12/11 17:12
- 名前: 桜 (ID: Zp53hDuK)
今回は以蔵さんとオリキャラの一人、小夢ちゃんの回想を混じったお話。回想はシリアスなのですよ。
星ノ宮学園中等部の吹奏楽部。オーボエパートと合同で練習しているクラリネットパートでは小夢がそのパートリーダーを務める小麦が演奏について助言していた。
小麦「小夢ちゃん、ここのスラーはもうちょっと音を伸ばしながら演奏した方がいいと思うの。できるわね?」
小夢「はい!」
小麦(なかなかの実力はある子なんだけどね・・・)
バスクラリネットを演奏する小夢は吹奏楽部に所属する1年生達の中でもなかなか優秀な演奏技術を持っており、それは彼女が属する音楽科からも有望株と期待されている学生だ。小夢はそれにも胡座をかいたりせずに練習していたら、外で雪が降っていたのを気付いた。
小夢(雪・・・)
それを見て小夢は自分が以蔵や後に義姉となる乱麻達と出会った出来事を思い出していた・・・。
- 雪の輝き、小さな夢(その2) ( No.346 )
- 日時: 2024/12/11 17:15
- 名前: 桜 (ID: Zp53hDuK)
ーーーーーそれは、2年前の奈良にある街の冬。その街の一角にあるファミレスでとあるシングルマザーの女性が働いていた。
後輩女性「先輩〜、お子さんもまだ手がかかるんだし、再婚を考えたことあります?」
シングルマザー「うーん、考えたことないわ。私にはあの子の世話で手一杯なわけだし」
そのシングルマザーは働き者かつ一人娘のこともよく気にかけて、上司にも後輩にも信頼されるほどできた女性だった。一部の男性からも好意を寄せられてもいるが、何らかの事情から再婚のことを考えていなかった。
そんな日々が続いた時、ファミレスにはある人物達が入って来ていた。
乱麻「ファミレスで何食うのか?」
弓弦「うーん、まだ考えてません・・・」
以蔵「わしは和食じゃな」
乱麻達三人の雰囲気がいかにもアレと繋がってそうにしていたため、一部から陰口も聞こえていた。後輩女性はこれから彼らに対して注文を伺いに行く先輩のシングルマザーを心配する。
後輩女性「先輩!気をつけて下さいね、何言われるかわかったもんじゃないので・・・」
シングルマザー「わかってる、注文を伺いに行って来るわ」
そのシングルマザーが三人に対して注文を伺いに行く同時にお水が入ったコップを渡した。
シングルマザー「お水をどうぞ。ご注文は・・・」
以蔵「おまん。指、大丈夫か?」
突如以蔵から放たれた問いにシングルマザーは顔をぱっとあげる。それを聞いた以蔵を乱麻がたしなめた。
乱麻「以蔵。女性に対して無神経なこと聞くなよ」
以蔵「うぐっ;」
弓弦「すみませんでした・・・;」
シングルマザー「いえ。では改めてーーーーー」
ご注文の伺いが終わったシングルマザーに後輩女性が声をかける。
後輩女性「先輩!そういえば、いつも手袋してましたけどまさか手を怪我してますか?」
シングルマザー「ううん。単に私の趣味なだけよ」
その数分後、シングルマザーが乱麻達がそれぞれ注文したメニューを運んだ。
シングルマザー「お待たせしました。和風ハンバーグ定食、ネギトロ丼定食、焼き鮭定食です」
乱麻「おお」←和風ハンバーグ定食を注文した人
三人がそれぞれ注文したメニューで食事を楽しんでいた時、弓弦が何やら話し込んでいた。
弓弦「へー。意外と魚の骨を綺麗に取り除けるんですね」←ネギトロ丼定食を頼んだ人
以蔵「そりゃ江戸の人間やからの」
どこか不思議な言動をする以蔵に対してシングルマザーは遠目でその様子を見ていた。
シングルマザー(さっき私の手を心配したり、江戸の人間とか発言したり・・・悪ぶってそうな割にはどこか不思議な人・・・)
そしてお会計のレジの際に以蔵はファミレスの店長に対して何かを聞いて、店長はそれに対して頷いていた。お会計を済ませた三人が帰った後、店長がシングルマザーに聞く。
ファミレスの店長「さっきのお客さん、キミのことを気にかけたみたいだ。普通はただちょっと手袋してるだけで気付かないんだけどね・・・」
シングルマザー「そうですか(普通はちょっとした陰口をするだけでなんとも思わないのに・・・」
それからも三人は時々、このファミレスで昼食を食べに来ていた。その度にシングルマザーが対応するうちにすっかり顔見知りの関係になっていった。後輩女性がそれを気にかける。
後輩女性「先輩、気に入られてるじゃないですか!特にあの見た目がゴロツキそうな彼!先輩のこと好きなんじゃないですか?」
シングルマザー「そんなんじゃないと思うわ」
気にかけてくれたのは伝わっているが、それは恋ではないことがシングルマザーにはわかっていた。それとは別の・・・
とある日にシングルマザーに対して三人が今度の休みの日に会うという誘いを持ちかけてくれ、彼女はそれを了承した。しばらくして来たる休みの日にシングルマザーは自分の娘を連れていた。
弓弦「この子は・・・」
シングルマザー「ええ、私の娘よ」
そのシングルマザーの後ろに隠れる女の子が、後に快刀家の養女となる小夢だった。
キーンコーンカーンコーン・・・
現在の時間軸、あれから合奏練習を経て今日の吹奏楽部の練習が終了し、部員達も全員帰路に着いていた。しかし、小夢はこれからやることがあった。それは自分達が住む学生寮近くにあるバスクラ教室での個人レッスンだ。ちなみにこのバスクラ教室を営む森内ちづるはトリマー兼学生寮の管理人代理人を務める御影理子の中学校からの同級生だ。
ちづる「上手に吹けたから、この曲は丸を付けるわね。次はこの曲をレッスンしましょう」
小夢「はーい」
ちづる「あ、それと理子ちゃんもだけど、以蔵ちゃんや乱麻ちゃん達は元気かしら?」
小夢「元気ですー。最近たくさんの友達ができてて、そのうちの何人かが学校の先輩達とも親しい仲らしくて・・・」
ちづる「何だかよくわからないけど、個性的な友達ができたのねぇ」
笑って飛ばしてくれるちづるに対し、小夢は少し苦笑いを浮かべていた。そりゃいろんなことが終わったら衝撃的だもんな;
過去の時間軸、目的地である奈良公園に着いた後、ベンチに座る際に以蔵に缶コーヒーを渡されたシングルマザーは彼に明かす。
シングルマザー「小夢は人見知りはするけど、しっかりしてる子なの。仕事から帰って来た私に夕ご飯を作ってくれたり、学校に行く前でも家事してくれたり」
以蔵「ほー」
シングルマザー「最近は亡き旦那の形見のバスクラも吹くようになっちゃっててね、もうめきめきと上手くなっちゃってるの!独学だから癖をついちゃってるところもあるだろうけどっ」
以蔵「おまんが大切にする娘は可愛いんかぁ」
以蔵の言葉にシングルマザーは座りながらコートの裾を少し握りしめながら言う。
シングルマザー「だからこそ、たまに思う時があるの。もし私がいなくなったら、あの子はどうしていくんだろうなって」
以蔵「親戚を頼る手もあるじゃろ」
シングルマザー「それができたら苦労しないわ。だって、私は周囲からの反対を押し切ってまで亡き旦那と駆け落ちしたんだもの」
シングルマザーの言葉に以蔵は少し驚く。
シングルマザー「私がもしいなくなった際に私の両親や親戚達はなんとしてでもあの子を家政婦として引き取るつもりでしょうね。そうなればあの子は自由の時間もなくなり、奴隷同然の生活を送ることになる。だから、よほどのことがない限り、私が離れることはできないの」
シングルマザーの真剣に語った言葉には嘘がなく、以蔵もこれ以上は何も言えないほどだった。
以蔵「ほうか・・・」
シングルマザー「でも、万が一そうなったらあなた達が引き取ってくれたらそれでいいんだけどね」
すると、小夢があるものを持って二人のところに駆け寄った。鹿の小さなストラップだ。
小夢「はい。あなたにも」
以蔵「わしにもか?」
乱麻「自分のお母さんと以蔵にあげたいそうだ」
それを聞いたシングルマザーの女性はそれをもらいながら言う。
シングルマザー「・・・ありがとう、小夢。私もあなたが大好きよ」
小夢「うん!」
小夢が幸せになってくれたらそれでいい。それが彼女の母であるシングルマザーのたった一つの願いだった。
現在の時間軸、小夢がレッスンから帰った際に近所に住む主婦である沢田のおばちゃんが声をかけに来てくれた。
沢田のおばちゃん「あ、小夢ちゃん?今レッスンの帰り?ちょっと寄って行ってよ」
小夢「うん」
家に招かれた小夢が沢田のおばちゃんに渡されたのは野菜と新鮮な魚、和菓子の最中が入った大きな箱だった。
沢田のおばちゃん「ちょっと多くもらいすぎちゃったからおすそ分けよ。あ、一人じゃとても無理だから私も一緒に運ぶわね?」
小夢「ありがとう、沢田のおばちゃん」
沢田のおばちゃん「理子ちゃんから聞いたけど、最近以蔵ちゃんや乱麻ちゃん達に多くの友達ができたんですって?私が言うのもなんだけど、万一のことがあった際には相談して欲しくてね・・・」
小夢「いや、みんな案外頼もしいし、いい人だから多分大丈夫だよ。その一部は一癖二癖あるけど」
沢田のおばちゃん「本当?まあそれなら大丈夫そうねー」
ここまでくるまで小夢にも多くの出会いや少しの別れがあった。あの時のことがなければ、今の自分はなかったと思うぐらいに・・・
過去の時間軸、バスクラを演奏する小夢に以蔵が聞いていた。
以蔵「おー、独学で意外と吹けちょる」
小夢「近所にあった楽器屋さんに吹き方とか教えてくれたりしたよ」
以蔵「あー、最初はそれが基本かぁ。わしの剣術でも少しは・・・」
以蔵と小夢はすっかり仲良くなり、それを乱麻や弓弦、小夢の母のシングルマザーも微笑ましく見るほどだった。
弓弦「仲の良い兄妹のようですねぇ」
乱麻「ああ、以蔵はあんなんでも子供に対する面倒見はいい」
シングルマザー「そうね。それがダメでもやっぱりあの人みたいなのが小夢にとってはいいわね・・・」
シングルマザーが小さく咳払いをしていたのを乱麻が気付いた。
乱麻「大丈夫か?風邪?」
シングルマザー「ううん。すぐ治る風邪だから大丈夫よ。心配しないで」
弓弦「それならいいんですけど・・・」
弓弦はシングルマザーがさっきから何やら手紙らしきを書いてるのを見つけた。
弓弦「さっきから思いましたが、誰かへのお手紙ですか?」
シングルマザー「いいえ。これは最近後輩達の間で話してた、願いが叶う小瓶よ。この小瓶に願いが書かれた羊皮紙を入れて、それで海に流すらしいの。私も書いてるのよ」
乱麻「ああ、そういえば学校の女子達も度々話題にしていたな」
シングルマザー「そうなのよー。もうおばさんなのに乙女みたいでしょ〜?」
乱麻はちらっとその羊皮紙には「小夢がいつかプロのバスクラリネット奏者になるなりして幸せになりますように」が書かれていたのを見ながら言う。
乱麻「そんなことはない。叶うといいな」
シングルマザー「ええ(もう願いが叶わないのは、わかってるけど・・・」
その数日後、ファミレスに出勤したシングルマザーに店長が声をかけてくれた。
ファミレスの店長「おはよう。キミが前から言ったことなんだけど・・・」
シングルマザー「ーーーーーはい。それでよろしくお願いします」
それから1週間が過ぎた頃、ファミレスの店長はとある電話に対応していた。
ファミレスの店長「はい。娘さんにはすぐに伝えないで欲しいと。お願いします」
ーーーーーそして、季節は冬から春に移り変わっていった。
- 雪の輝き、小さな夢(その3) ( No.347 )
- 日時: 2024/12/11 17:17
- 名前: 桜 (ID: Zp53hDuK)
現在の時間軸、おすそ分けを一緒に持ってきてくれた沢田のおばちゃんと共に寮に帰ってきた小夢は管理人代理である理子と乱麻と小夢の専属メイドのサエカが出迎えてくれた。
理子「おかえりー、遅かったわね」
サエカ「小夢様、おかえりなさいませ」
小夢「ただいま。いぞ兄は?」
サエカ「以蔵なら今、トリスタン殿とアサト殿らに連れられる形で出かけています。多分夜には帰って来るかと思いますが」
小夢「そう、わかった」
理子「沢田のおばちゃん、おすそ分けをありがとねー」
沢田のおばちゃん「いいのよー。普段から親しくしてるご近所同士なんだもの」
サエカはふと小夢をじっと見ながら言う。
サエカ「でも、小夢様は変わりましたね」
小夢「そう?」
サエカ「少しは大人になったってことです。やはり以蔵を好いてるからでしょうか?」
小夢「も、もう!いぞ兄はそんなんじゃないから!」
しかし、小夢が以蔵に好意を持つようになったのはあの出来事であった・・・。
過去の時間軸、春の季節に移り変わって中学三年生に進級した乱麻と弓弦は以蔵を連れながらシングルマザーのいるファミレスに向かおうとしていた。
乱麻「ほら、早くしろ」
以蔵「なんがウキウキしちょるな;」
弓弦「そりゃそうですよ。あれから期末テストや僕達の進級もあってあの親子には一度も会えてなかったんですから」
ここに至るまで期末テストや進級する際の忙しさがあって会えていなかったため、久しぶりの休みの際にシングルマザーや小夢の親子に久しぶりに会いに行こうとしていた。そのファミレスの中にカランコロンと入ると、シングルマザーが働いている姿はなかった。
乱麻「あれ・・・?いないな。休みか?」
すると、そこに憔悴しきった様子のシングルマザーの後輩女性が三人にこそっと話しかけてきた。
後輩女性「あの、少しいいですか?」
以蔵「おん?」
後輩女性にファミレスの裏口に呼び出された三人はその態度が尋常ではないことを感じ取った。
弓弦「こんなファミレスの裏口に呼び出してまで、どうしました?彼女が風邪を引いているのは知っていますが、もしやそれがこじれて・・・」
後輩女性「先輩は2週間前、亡くなりました」
以蔵「・・・は・・・?」
突然意味がわからなかった。シングルマザーが死んだというのが唐突に告げられていたのだ。
後輩女性「先輩は筋力が弱っていく病気にかかっていました。私達から見ても普通に動いていましたし、手袋を付けていても仕事には支障がないからいいかなと思いましたが・・・」
乱麻「待て!じゃあ、あの手袋は・・・!」
後輩女性「そこの彼の質問は正しかった。そうなれば、流石にわかりますよね?」
以蔵(やっぱりなんがあったんか・・・!)
唖然となった以蔵は、はっと何かに気付いて問い詰めた!
以蔵「待て!小夢は!?どこにおるんじゃ!?」
後輩女性「先輩の娘さんはうちの店長がすぐにでもあなた達に引き渡すつもりでした。先輩の、自分の娘をあなた達に引き渡すよう言った遺言を守ろうとして。でも、店長が向かう前に複数の男達にさらわれたんですよ・・・!」
弓弦「さらわれ!!?一体誰が・・・!!」
以蔵はそれを聞いて思い出したのを聞いた。
以蔵「小夢の親戚にか?」
その問いに後輩女性はこくんと頷いた・・・。
乱麻「小夢の親戚にって・・・?」
以蔵「小夢のお母ちゃんは両親や親戚の反対を押し切って死んだお父ちゃんと駆け落ちしたと聞いちょる。自分が死んだら、そいつらが間違いなく小夢を引き取ろうとして来るとも。あの時の言葉は・・・!」
弓弦「我らへのSOSですか・・・!」
それを聞いた以蔵はすぐさま裏口から出ようとしていた!
乱麻「どこに行くんだ」
以蔵「小夢を迎えに行く!あんな奴らに小夢を渡せんか!」
以蔵が出ようとした瞬間、ファミレスの店長が来ていた!
以蔵「なんじゃあ!?」
店長「それなら協力する。彼女はこのファミレスの大切な仲間だからね。運転や娘さんの居場所の案内での最低限のことしかできんが」
乱麻「!感謝する・・・」
一方、さらわれた小夢は殴られたのか全身傷だらけで両手を紐で縛られたまま、軟禁された地下牢から脱出しようとしていた。
小夢(早く。早く出なくちゃ・・・)
そんな小夢にある人物が蔑むような笑顔をしながら訪ねてきた。小夢の祖母だ。
小夢の祖母「あら。あれだけ殴られたのにまた逃げようとしてるのね。そんな怪我だらけなのに」
小夢「お願いだからここから出して。みんなに会いたい」
小夢の祖母「まだそんなこと言ってるのね!!」
小夢の祖母は実の孫に平手打ちした後、ため息を吐きながら言う。
小夢の祖母「それなら最近、ここら辺で殺人事件が起きているらしいから警察にも癒着を与えた上であなたにその冤罪を被せましょう」
小夢「・・・!」
小夢の祖母「喜びなさい、あなたはここから出たいのでしょう?あなたは母親のあれと同じ、底辺の世界で生きるのがお似合いよ」
小夢「ま・・・」
小夢の祖母「あ、ついでにあのバスクラはもう売ったから戻ってこないわ」
嘲笑する小夢の祖母が地下牢から出て行った後、小夢は今までの思い出を微かに思い返していた。
小夢「・・・っ」
その度に小夢は嗚咽を上げながら涙を流していた・・・
現在の時間軸、小夢はマイ楽器であるバスクラを見ながら言う。
小夢「いぞ兄らが助けてくれなかったら、買い戻せなかったなぁ・・・」
小夢は部屋で一人バスクラを吹く。その音を理子は聞こえた。
理子「これは・・・」
サエカ「小夢様のです。たまに吹くのですよ・・・曲はまちまちで」
理子「でも、綺麗な音ね。ちづるが目にかけるはずだわ」
それをBGMにサエカは洗濯物を畳み、理子は自分の愛犬であるプーリーのモッシュのブラッシングに勤しんでいた・・・。
過去の時間軸、ファミレスの店長によって小夢の居場所を案内された三人はその純和風の大きな家を遠目から見て思わず目をやってしまった。
弓弦「古いですけど、大きな家ですね・・・」
店長「彼女の実家は古くから続いているいわゆる名家だ。と言っても最近は衰退気味でね、その打開策として名家の娘である彼女を現当主である夫妻が決めた男と結婚させようしてたんだけど、彼女が恋人との間に娘さんを身ごもって、その恋人である娘さんの父親と駆け落ちしたことで頓挫したんだそうだ」
乱麻「要するにその恨みで小夢を引き取って奴隷同然に扱おうとしたわけか。いや、逆恨みで正しいか(でも、あの家はなんかどこかで見たような・・・?」
以蔵「親の決めた結婚はわしらの生きた時代では普通じゃったが、現代はもう・・・ん?」
すると、以蔵は車越しからある男を見た。
男「なんでか警察が俺を追わないでくれたけど・・・どちらにしろ、あのガキに俺が犯した殺人の冤罪を被せれるからラッキーだなぁ」
以蔵(!!?なんじゃて!?)
男「確か小夢って言うんだったか?警察も地に落ちたな・・・」
その直後、男に剣が向けられた。
以蔵「その話、詳しく聞かせとうせ・・・」
男「ヒィ!!!」
一方、小夢はパトカーに到着したことで自分が冤罪で警察に連れて行かれるのを感じた。
近所の人A「あの子が殺人事件の犯人だってよ。人をナイフで大量に殺したっていう・・・」
近所の人B「あんな小さな子供が・・・世の中、何があるかわからないわねぇ」
それを見ていた人達は蔑む視線と陰口と罵倒ばかりで誰も助けようとしていなかった。
小夢(ああ・・・誰も話を聞いてくれないまま、暗闇に落ちるのか・・・)
小夢はあえなくそれを受け入れようとしたが・・・
以蔵「おい聞いちょるか!犯人こっちじゃあ!しっかり調べちょれクソが!!」
小夢を抱き寄せると同時に殺人事件の本当の犯人であった男を警察にバンと引き渡した以蔵を見た大半の全員は驚愕する!その男がボロボロになった状態で泣きながら全てを自供し、小夢の祖母が怒り心頭で彼に問い詰める!
小夢の祖母「誰よあんた!部外者が勝手にでしゃばって来て・・・」
以蔵「ババア、これを見ちょれ」
以蔵に叩き渡された名刺を見た小夢の祖母は驚愕した!
小夢の祖母「快刀金融・・・!どうしてバレて「うちの親父達が最近探していた、うちから借金していた家はあんたらのだったか」
その直後、快刀金融の厳つい社員達が大勢でぞろぞろと出てきた!
乱麻「親父達にいい情報提供をした形になってよかったな」
小夢の祖母「あんたら・・・!借金のカタとしてこれを引き取るつもり!!?」
乱麻は振り向きながらそれに答えた。
乱麻「この子は確かに引き取るが、お前らの借金のカタとしてじゃない。私の妹で・・・私達の家族としてだ」
小夢「・・・!」
小夢は以蔵に抱きしめられ、彼は小夢の祖母に静かに告げる。
以蔵「あと、次に小夢をこれとか言ったら斬っちゃる」
三人が小夢を連れて出て行った後、彼女はおずおずと聞く。
小夢「どうして助けてくれたの・・・?」
以蔵「おまんのお母ちゃんが、わしらに頼むように遺言があった。いや、遺言がなくともわしらはおまんを引き取ったんじゃ」
小夢の怪我に気付いた弓弦が救急箱が入ったカバンを開けながら聞く。
弓弦「痛かったでしょう・・・今手当しますから」
小夢「あ・・・」
すると、以蔵がポンと頭を撫でながら言う。
以蔵「よく・・・耐えちょった」
三人がその社会の人だって分かりつつも、自分を助けてたり優しく気遣ってくれたのを見て小夢はポロポロと涙を流した。
小夢「うん・・・!」
それからいろんなことがあった。快刀家が正式に小夢と養子縁組をしたり、以蔵が走り回って探した末にようやく小夢のバスクラを見つけて買い戻してくれたり、星の宮学園の中等部音楽科への受験の際に当時京都に在住していたちづるが受験用のレッスンや音楽用語や知識の習得が目的とする指導を親身に見てくれたり、乱麻達と一緒に夏休みのイベントやクリスマスなどを一緒に過ごせたりなどいろいろあったことで小夢は現在に至ったのだ・・・
- 雪の輝き、小さな夢(その4) ( No.348 )
- 日時: 2024/12/11 17:19
- 名前: 桜 (ID: Zp53hDuK)
そして現在の時間軸、受験が合格したことで星ノ宮学園中等部の音楽科1年生となった小夢は吹奏楽部に入部し、同じ部活の子やドイツのチェロ留学から編入して来たミイを始めとした同じクラスの子の友達もできた。当初は美少女ではあったが儚げな雰囲気を放つ高嶺の花という印象だったが、それも徐々に変わってきている。同じ科であり、吹奏楽部の現部長である金城景吾のトロンボーンのハイレベルな演奏技術に心を潰されかけて一時的に彼を恐れたことや金城と同じく音楽科で部活の先輩である木津雅也に気に入られたりしていたが、クルーク達との出会いも含めた数多くの出会いや思い出は以蔵達と出会わなければなかったのだろう。
そう思えるほど、小夢は以蔵には淡い恋心を抱いているのだ。あの時に助けてくれた時からずっと。
サエカ「小夢様、乱麻様達がもうすぐお帰りになるそうです。あと、以蔵もです。土産を持ってくるそうですよ。珍しく博打に勝っただけのものでしょうけど」
小夢「はーい」
小夢は以蔵や義姉の乱麻達が帰って来るのを心待ちにしていた。そんな学生寮に窓越しからのノックである人物が訪ねてきた。理子の同級生かつ松乃いのりの漫画雑誌クローバーでの担当編集者を務める中田だ。
中田「よー、元気にしてるかー?」
小夢「中田君。また〆切明け?」
中田「そうなんだよ、俺が担当する漫画家がまた仕事から逃げ出したから捕まえたと同時に〆切終わるまで見張ったんだ」
小夢「また中田君の得意の操縦かー。それでまたいぞ兄が作った食事をタカリに?」
中田「よくわかったな。あ、御影には上手く言ってくれないか?」
小夢「その漫画家さんが〆切明けだったらしょうがないなー」
すると、サエカがやってきていた。
サエカ「小夢様、三人が帰って来ました。同じタイミングだったそうです。他の寮生もすぐ帰って来るそうですが・・・あら、中田様」
中田「あ、どうもー」
小夢は駆け足気味に玄関の方まで駆けつける。いつものように出迎えるために・・・
以蔵「小夢、もんてたたき!」
おしまい
「後書き」
今回は去年の乱麻ちゃん視点の以蔵さんとの出会い話の別verとなります。これらを見比べてみると面白いかも。
以蔵さんは金や女絡みになるとろくなことにはならないけど、小さい子供達にとってはヒーローになるのが良き。だからなんだかんだでみんなに認められるし、慕われるし、好かれるんだね(その一部はまた厄介なのが・・・)
小夢ちゃんメインのお話は書くのは初だったので新鮮でした。また書きたい気持ちはあるのでネタができたらやってみたいと思います。
感想OK